• 検索結果がありません。

フ ラ ン ス 憲 法 院 判 決 の 進 展

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "フ ラ ン ス 憲 法 院 判 決 の 進 展"

Copied!
30
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ょ‑

︶マ

l

( I y

` !

J, 9立より概観 ニ^.つり憲法院判決 結 び に 代 え て

フ ラ ン ス 憲 法 院 判 決 の 進 展

新聞事業の集中排除に関する二判決を中心に

一九 七

7  3•4 ‑585 

(香法

' 8 8 )

(2)

こ ︒ 合応性判断の方法も含め︑ 近年︑フランスにおいて新聞事業に対する規制︑すなわち新聞事業の集中排除をめざす立法が立続けに制定された︒

新聞については︑従来から︑種々議論はあったが︑新立法にまではなかなか到達しなかった︒しかし︑

とも

に︑

成立した左翼政権が一九八四年に抜本的な新聞事業に対する規制立法を制定した︒その後︑

一九八六年新らたな規制法が成立をみた︒さらに︑同年十一月前示法律を補八四年法の見直しがはじまり︑

完する法律も制定された︒

これらの立法過程において︑憲法院はそれらの法律の合憲性審査のために二度関与した︒すなわち︑前ポ八四年法

でも

ない

この展開の萌芽につき

この二件の判決︑特に前者の判決には憲法院判決の展開にとって非常に重要と思わ この点については︑既に︑樋口教授によるすぐれた論文がある︒本稿も多くの教示をそこから受けたことは言うま

ところで︑筆者は︑最近公刊された﹁フランスの慮法裁判﹂という論稿で︑

由についての階統化への新らたな展開の萌芽がみられることを︑甚だ簡単ながら︑指摘した︒

いま少し詳細に検討する必要性を前ポ論稿の脱稿以来感じていた︒筆者が本稿で論じよう

とする観点は︑前示樋口教授の論文と相当異なると思われるので︑敢えて︑素材は共通だが︑稿をまとめることとし れる判示が少なくない︒ および八六年法についてである︒

は じ め に

一九八四年判決には権利・自 一九八六年の政権交代と 一九八一年に

一九

7-3•4-586 (香法'88)

(3)

フランス憲法院判決の進展

一 新 聞 事 業 の 集 中 排 除 に 関 す る こ 判 決 を 中 心 に 一 ( 矢fI) 

年人権宣言一 を全体的に問題とするのではなく︑

一九

とり敢えずは一九八四年法の沿革を知ればよい︒したがって︑

一条の趣旨を具体化したといわれる︑出版に関する一八八一年七月二九日法からみていけば十分と思わ

一般

に︑

一七

八九

新聞事業に対する規制の歴史も︑古くは︑

(2 ) 

フランス革命にまで遡る必要がある︒しかし︑ここでは︑この種の立法史

日 前 史

のが便宜であろう︒ 業の規制においている︒それに対する憲法院の判決を検討する本稿では︑ このように︑新聞事業の自由は新聞の自由の一っである︒ フランスでは新聞事業の自由は新聞の自由

( l a

l i b e r t e   d e 

l a  

p r e s s e )  

その活動およびそれに関係する人の多種多様性から︑広義に理解される︒例えば︑この自由を構成

するものとして︑新聞事業の自由︑ジャーナリストの自由︑付加的活動の自由および助成される自由の四つを挙げる︒

一般

に︑

新聞事業に関する立法の概観

( l )

m

﹄︑または﹃公正﹄の代償ー^九八四年のフランス新聞法制を素材としてー﹂慮法と行政法︵小嶋和司博 じ束北大学退職記念︶五.八貞ー五一

1一七貞(‑九八七年︶︒これは︑国家からの自由と国家による自由の:つの自由の問題をフラ ンスの新聞事業に関する法およびそれについての憲法院の判決を通して提ポし︑それをわが国の問題状況と対照し︑さらにこつの 自由の対抗関係を法・政冶思想の領域で展開するという大変スケールの大きい論文である︒

( 2

)

拙稿﹁フランスの屯法裁判

L

芦部信喜編慮法訴訟講座第^巻・四五貞ー/七七頁

( 1

リヴェロ教授は︑

一九八四年および一九八六年の二法はその中心を新聞事

まず

それらの法律の内容を概観しておく に含まれる︒そして新聞の自由は︑

7  ‑ 3 ・ 4  ‑ ‑ 5 8 7  

(香法

' 8 8 )

(4)

あ っ

た ︑

ドナンスの最大の欠陥は行効に働かなかったことである︒そしてその理由は︑企業や会社の法的・経済的実態にオル トナンスが適応していなかったところおよび理論的には厳しいがが明確でかつ複雑な規定で規制をめざしたところに

)

と し j

このように︑

/几四四年オルドナンスには︑

Un

  j o

u r n a

l )  

の原則が採用された︒

っ て

張りの館﹀

( m

a i

s o

n d

e   v

e r r e

)  

の必要性がさけばれるようになり︑

し か

し ︑

本法は︑既にその多くの諸規定が廃止されているが︑依然としてフランスの新聞法の基礎といわれる︒意見の自由 と自由な出版の権利を保障する本法は︑

自由である﹂ れ

る ︒

後にみる法律に取り人れられた規制が多くみられる︒

本オル

二 紙

﹂ ︵

Un

ho

mm

それまでの政府とジャーナリストの長い戦いを終結させた︒

特色は新聞の独立を侵ず恐れのあるあらゆる圧力から新聞を保護するところにある︒

と規定し︑新聞や定期出版物も︑公刊の地の検事局への印紙貼付の旨の届出を除く︑

なしに公刊できる︑とする︒このような国家からの自由の原則は第ご一共和制初期の自由主義に基づくものといえよう︒

したがって︑本法では新間事業に関する規制は全く若慮の外にあった︒

この法の最大の その第一条では﹁印刷と出版は こ十世紀とともに︑技術革新並びに新聞事業の集中が登場し︑新らたな規制︑特に新聞事業についての法

1

九四四年オルドナンスの制定をみる︒本オルドナンスは︑新聞事業を︽ガラス

に変えることによって︑金権に基づく秘密裡の影粋をなくすことをめざした︒

それには透明性

( t r a

n s p a

r e n c

e )

こ)

t

についての多くの諸規定が含まれる︒名板貸しの禁止︑株式の記名性︑新間 巾業の所有者および法的または事実上の管理者の氏名存の公開︑並びに毎年度の経営計算書︑貸借対照表の公開など︑

後の法律によって引きつがれた多くの諸規定が存した︒また︑多応性の確保に関しても﹁.人︑

いかなる事前許可 ︱ 1

0 0  

7 ‑‑3・4 ‑‑‑588 (香法'88)

(5)

フランス憲法院判決の進展

一新聞事業の集中排除に関する..判決を中心に一(矢IJ) 

前者の目的のために︑本法は︑

又は発行する自然人又は法人などをいう︒

本払ー﹁新聞事業の集中を制限し︑かつ︑その財政上の透明性およびその多元性を確保するための法律﹂がその正 式名称であるー制定の背景にはきわめて多くの要素がみられる︒その錯綜した要素のために︑本法ほど成立までに時 間を費やしたものは他にないであろう︒

エルサン氏という新聞じの存在がある︒彼は保守系の国民議会議員でもあり︑

1九八四年甘時で︑全国紙:細紙と地方紙^五紙を有していた︒このような↓定のグループヘの新聞

業の集中傾向が顕著にみられた︒そこで︑新法の制定の動きはこの種の独占グループの解体をめざすこととなり︑そ のことが︑前示事情から︑左翼政権と保守派の厳しい対立を惹起することとなり︑

議会議員の総選挙が予定され︑

さら

に︑

0

それに勝利するためには各政党がそれぞれ新聞に対して一定の配慮を払わざるをえな いという事情が加わった︒このような種々の要素がかさなり︑本法はまれにみる難産の結果成立をみたのである︒

しかし︑前示のような政治的要素だけをあまりに過大視することも正当ではない︒前述のように︑新聞事業の集中 化傾向に対して一九四四年オルドナンスのもつ欠陥︑

すなわち︑社会・経済状態に適応していないことおよびオルド ナンスの規定自体からくる非適用性にも本法制定の原因をみることはできる︒

︳九八四年法は︑前示の名称通り︑新聞事業体の財政上の透明性と多元性の確保をその目的とする︒ここで︑新聞 事業体というのは︑定期的に少なくとも月一回刊行される政治的・一般的情報に関する出版物を一又は二以上編集し

一九四四年オルドナンスに含まれた諸規定の多くを再び採用している︒

彼のグループは︑ り改正があったからである︒他方で︑

そも

そも

︑ 本法の制定り直接的端緒は.几八.年いミヅテラン大統領の誕生にある︒

(6 ) 

↓九

八四

年︱

0

月.:日法律

マスクレ教

一九八六年の春には国民

彼の政策提はい

qつに新聞法

7‑ 3•4 ‑589 

(香法

' 8 8 )

(6)

0 ニ

授によれば︑本法の﹁透明性に関する諸規定はー経験によるのだが

1一九四四年オルドナンスのそれより明確でかつ

(9 ) 

より適確な全体を構成している︒﹂

まず︑新聞事業体の所有者あるいはそれを支配している者が明らかにされねばならない︒そのために︑名板貸しの

禁止および株式の記名性が定められる︒この記名性については︑詳細で︑新聞事業体の資本︑株式および議決権の少

なくとも二

0

%を直接又は間接に保有する会社の株式の記名性が課されると同時にその閲覧が一定の者に許される︒

当該新聞事業体の株式の記名性等については後述する︒

つぎに︑新聞事業体に関する種々の情報の公開も透明性にとって不可欠である︒この種の規定は若干複雑である︒

第一に︑読者に公開されるものからみていくと︑全ての新聞事業体はその定期的出版物の各号において︑次の事項を 報知しなければならない︒①当該事業体が法人格をもたない場合︑所有者又は共同所有者である自然人の氏名︑②法 人格を持つ場合︑その形態︑存続期間︑名称又は商号︑所在地︑資本金の額並びに法定代表者および主要な社員ご名

の氏名︑③発行人および編集責任者の氏名︑④発行部数︒出版物の各号ではなく︑一年に一度九月期に掲載が義務づ

けられるものとして︑前年の平均発行部数︑平均販布部数︑経営計算書︑貸借対照表および管理者の氏名等がある︒

さらに︑定期ではないが︑新聞事業体の資本等の少なくとも二

0

%を直接または間接に保有することとなる株式等の

^ヶ月以内にその旨を当該事業体の発行する一または二の出版物に広告しなければならない︒

第二に︑﹁新聞の透明性および多元性のための委員会﹂︵以下︑単に委員会という︶に通知すべき事項がある︒それ

は︑①刈該事業体の所有者の氏名並びに上位︱

1 0

名の

株︑

E又は持分保有者のリストおよび株式または持分の数②管

理者または管理・経営機関の構成員の氏名③出資者総会の記録①︱つの新聞事業体の資本または議決権の二

0%

( 1 0 )  

を︑直接であれ間接であれ︑保有する人からの株式の取得又は譲渡⑤新聞の紙名の譲渡の場合にはその旨と受領者 譲

渡は

7 ‑ 3・4 ‑590 (香法'88)

(7)

フランス憲法院判決の進展

一新聞事業の集中排除に関する罪り決を中心に一(矢 lI) 

いと

され

る︒

後者の目的︑すなわち多元性の確保に関する諸規定は︑その適用範囲が︑透明性の諸規定の場合と異なり︑政治的・

( 1 2 )  

^般的情報を掲載する日刊紙に限られる︒それらの規制は大きく二つに分けられる︒

他の団体であれ︑ひとりの者が所有また支配できる限界を定めたことであり︑

第/の規制は非常に詳細︑複雑である︒三つの場合が存する︒①全国紙については︑人は︑二以上の日刊紙を︑そ

の販布

( d i f f u s i o n ) 部数の全部が同種の日刊全国紙全体の販布部数の一五%を越えない限り︑所有しまたは支配でき る︒②地方紙に関しても︑同様に︑一五%の限界が定められる︒③一また二以上の日刊全国紙および地方紙の両方を

人が所有または支配できるのは︑当該日刊全国紙の販布部数の合計が同種の全国紙全体の販布部数の一

0

%を

越え

ず︑

また当該地方紙の販布部数の合計が同地域の地方紙全体の販布部数の一

0

%を越えない場合である︒この各上限の算

定は当該所有権または支配権の取得の月の前月以前︱ニケ月からなる同一の期間について行われる︒この算定方法は︑

本法公布時の現状を規制する場合にも同じとする規定があったが︑

i t  さ

こ ︒ t  一定程度の資本等の保有者は︑支配および資金調達に関して︑委員会の要求に対し情報提供

さらに︑新聞事業体の所有権または支配権を譲渡しまたは取得する者は︑

第一一の新聞事業体の組織に関する規制として︑

日刊紙全てに職業ジャーナリストからなる固有の常設編集局の設置

を義務づけるものがある︒そして︑この編集局は当該日刊紙の理念の自律性を保証するに足るものでなければならな 員会へ届け出なければならない︒ るものである︒ の氏名である︒他にも︑

( 1 1 )  

義務を負う︒

0

その規定は憲法院による違憲の判断に基づき削除

その取引の前に︑その旨を前示委 いま.つは新聞事業内部の組織に関す ︱つは︑自然人であれ法人その

7  ‑ 3•4 ‑591 

(香法

' 8 8 )

(8)

にみていくこととしよう︒ 考え方の相異である︒

また

︑ 思われる︒すなわち八四年払は︑慮法院の違慮判決をうけ︑

その違古とされた部分を除いて︑公布された︒従って︑

^ i L

四四年のオルドナンスの相崎部分を残存させることとなり︑法状況が不明確とならざるをえなかった︒

八六年法によっても結局満たされなかった︒同様に︑実現されなかった意図と しては︑多元性の確保を新間事業に対する国の経済的補助によって実現することであった︒

からみられるが︑結局は︑今後の課題として残された︒

八六年法も八四年法と規制の大筋においては二奴しているいで︑

況の明確化の要請は︑後述のように︑

八四年法と比較しながら︑

八六年法い内容を簡巾 この種の︑E張も相%以伯 この法状

きが

中ー

然存

する

そし

て︑

( 1 6 )  

かかる改正の背景には︑政権交代によって八四年法に反対する党派が多数派を形成することから生ずる見直しい動

この動きを指導するのは︑前法の介人︑E

義に対する自由主義の復活という新間についての より;般的には︑新聞事業を規制する法状況の不明確性の克服という必要性も存しだと

であ

る︒

と政権交代がなされる︒

こ ︑

 

ここ

要な権限が委員会に付与されていたが︑

LJ 

(1

/九八六年八月1日法律 一般的に情報収集︑資料閲覧および立入検査等に及ぶ︒

これは憲法院の違芯判決により削除された︒

¥J

/几八四年法が施行されてご年足らずの  

1九八六年三月に総選挙が行われ︑

その結果︑社会党政権から保守政権へ 八四年法に変る新法の制定が日程にのぼり︑約四ヶ月後に制定をみたのが八六年法

この点については後述する︒ である︒本委員会の権限は︑前述のもの以外に︑いま︱つ重

同時に本法施行を監視するための独立委員会を設置した︒

t

のような透明性および多元性のための諸規制を実効的にするために︑本法は義務違反に対する罰則を定めると

この委員会が﹁新聞の透明性および多元性のための委員会﹂

1

0

7 ‑‑3•4 ‑592 (香法'88)

(9)

フランス憲法院判決の進展

一新聞事業の集中排除に関するこ判決を中心に一(矢「])

他にも若干の改正がみられる︒ つ

ぎに

財政上の透明性についての本法の特色は︑前二法に比べ︑ ここでは︑出版物の定期性についての限定を二切認めず︑

二 0

五 その規制の簡素化と義務の軽減化にある︒透明

まず︑適用範囲についてだが︑八六年法は︑従来の法に比べ︑その適用範囲を簡潔に定義し︑拡大している︒すな

わち︑定期的なあらゆる出版物︑より正確にはかかる出版物を編集︑出版するあらゆる事業体をその適用範囲とする︒

また出版物の内容による区分も一切排除される︒さらに︑

9

,

テレマティクを使った相吐的役務

( s

e r

v i

c e

s t

e l

e m

a t

i q

u e

s   i

n t e r

a c t i

f s )

にも本法は適用されるといわれる︒なお︑多

元性に関する諸規定の適用範囲は八四年法と同様である︒

性の前提である名板貸しの禁止並びに出版物の各号において読者へ報知される事項としての所有者等の氏名︑発行人 および編集責任者の氏名および法人格をもつ場合の法人についての種々の情報は本法においても八四年法と基本的に 同じである︒唯一︑報知事項から除かれたのは発行部数である︒また︑最大の軽減は︑前法で年に一度読者に公開を 義務づけられていた前年の平均発行部数以下の諸事項の掲載の廃止にみられる︒

また委員会が廃止されたので︑

︱つは株式の記名性について︑前法では新聞事業を支配・管理する会社にもこの要

請は及んだが︑本法は新聞事業体にのみ適用されることから︑その記名性も新聞事業体にのみ課せられる︒

は︑資本や株式等の譲渡や財産等の名義換えの公開の範囲が変更された︒

を︑同じ人︑グループあるいは法人が所有︑支配または編集できない︑

し)

つ 八四年法では︑当該新聞の資本または株式

等の二

0

%を越える譲渡または取得は委員会への報告が義務づけられたが︑本法ではその限界を

1/3

に引

き上

げ︑

そのことは直接読者に公開されることとする︒

さらに︑多元性の確保については︑本法は︑前法の詳細な区分を棄て︑規制の簡素化と軽減をもたらした︒すなわ ち︑政治的・一般的情報を掲載する日刊紙の全国での販布部数の三

0

%を越えた販布部数をもつ複数の同種の日刊紙

とする︒本条項は︑後で指摘するように︑

7  ‑ ‑3 ・ 4  ‑ ‑ 5 9 3  

(香法

' 8 8 )

(10)

業に関する立法は明確となり︑ 九八六年十一月二七日法によって補完されたものである︒ほぼ同旨だが規定の仕方が不十分な条項が憲

法院によって違憲とされたためである︒また︑多元性の確保を補完するものとしての自主原則については︑本法では︑

八四年法で定められた常設の編集局の設置義務は廃され︑新聞事業体の株式のあらゆる譲渡が経営あるいは管理機関

の承認にふされるとされる︒

最後に︑これらの諸規制に対する強制は︑

とい

うの

は︑

八四年法とは異なり︑逆に一九四四年オルドナンスと同様に︑本法では

もっぱら司法裁判官による罰則の適用に委ねられる︒要するに︑

以上︑新聞事業の規制に関する立法状況を簡単ながらみた︒結局︑後の二つの法はいずれも前法の廃止をめざした

が︑それぞれ憲法院の違憲判決そしてその後︑当該法の再審議を議会にはかることなく︑違憲とされた条項を除き︑

八四年法そして八六年法は公布された︒従って︑各前法の一部が有効のまま残り︑不明確で︑錯綜した法状況が現出

八六年法の公布により︑三つの法の混在という状況が生まれ︑

が必要となる︒本法は︑八六年法に対する憲法院の違憲判決を十分考慮しつつ違憲とされた条項を修正することによ

り︑八六年法を補完した︒その結果︑ここにはじめて︑

しかしながら︑このようにして完結した八六年法の有効性につき既に疑問が呈される︒それは︑前述のところから

明らかなように︑本法の実効性に関してである︒本法は本法の定める義務や禁止の遵守を︑違反の場合に罰則を適用 し

た︒ 四

小 括

れに類する機関は排除された︒

一応の完結をみる︒

それを解消するために︑

一九四四年オルドナンスおよび八四年法は廃止され︑新聞事

︵ 翌 一九八六年

t

月二七日法 八四年法にみられたような独立行政委員会またはそ 二

0

7  ‑ 3 ・ 4  ‑594 

(香法

' 8 8 )

・こ・~~~ "血・ '"'""""'"""'""""'""""""""""""""""""'"""'""'""""""""""""'""""'""""'"""""" 

(11)

フランス憲法院判決の進展

一新聞事業の集中排除に関する二判決を中心に一(矢LJ)

することによる司法的統制に委ねた︒これは一九四四年オルドナンスと同じ方式であって︑

分に機能せず︑実効性に欠けるという批判がなされた︒本法についても同じ批判があたるといわれる︒

本法にも一九四四年オルドナンスと同様不明確な概念が少なくないことおよび検察の捜査・訴追における慎重さとい

( 2 3 }  

う伝統があるからである︒制定後未だ日が浅く︑適用はこれからである︒実際を注目しよう︒

( 2 4 )  

最後に︑自由な伝達に関する↓九八六年九月三

0

日法についてもふれておこう︒この法により︑新聞事業に対して

も一定の制限が課せられたからである︒それは他のコミュニケーション手段への参加の制限である︒

同法によると︑政治的・一般的情報を掲載する一または複数の印刷日刊紙を編集または支配する人は︑

の日刊紙が同じ性質の印刷日刊紙の全国販布部数の二

0

%以上の販布部数を占める場合︑

ツ波テレビ放送︑

0

いう

のは

︑ 一定の上限を越えて︑

ラジオ放送そしてケーブルラジオーテレビ放送の三つの活動の一っ以上を同時に行うことが禁止さ

いわゆる﹁四分の二状況﹂といわれる︒この原則は一定の地域に限定しても適用される︒この原則は︑逆に︑

このように︑今日︑技術革新による情報手段の多様化に伴い︑種々の情報手段相互間の規制も問題となってきてい ( 1

)  

J .  

R i

v e

r o

,   L

es

  li b

e r t e

s   p u

b l i q

u e s ,

  P . U

. F . ,

  1 97 7,

T .

 

 

2

.,

  p p

192.  

21 2.

( 2 )

この点については︑山本桂一﹁フランスにおける表現の自由

H

﹂国家学会雑誌七0巻︱‑.︱二号一頁ー四三頁(‑九五六年︶︑

特に二五頁ー三八頁を参照︒

( 3

)

C od es

e t  

L o

i s

  u s

u e l s

C ,  

od

es

  d'

a u

d i

e n

c e

̀ 

 

D a l l

o z ,  

19 79 , 

p p .  

534539

H載のものを利用した︒また︑解説としては

E .

D e

r i

e u

x ,

a  L

  J o

i   d

u 

2 9  j u

i l l e

1t  

88 1,

R•  

D . P .

` 

 

19 81 , 

p p .  

1501

15 48 .がある︒芙呈合によれば︑本法は新聞の自由の原則︑具体的には︑

る ︒ テレビやラジオ事業体にも︑無論︑適用がある︒

れた

もしそれら そこではかかる強制が十

7  ‑ 3•4 ‑595 

(香法

' 8 8 )

(12)

この点については樋口陽.︑前掲論文および加藤典洋︑前掲解説に詳しい論述があるのて︑参照︒

J ' C .   Ma

sc

le

t,

 

p .  

c i t .

,   A.].D.A••

Do

ct

ri

ne

,  1

9 8

4 ,

  p .   6 4 5 .   注⑧に実体の共干の紹介がある︒また︑テバッシュ教授によれは︑

ングループは全国紙で.1.九%、地方紙で一四%を占めるとされる。Ch•

De

bb

as

ch

  et  

G .

  D

ro

uo

t,

 

p .  

cit••

D a

l l

o z

.   1 9 8 5 .   p .  

5 6 .   より

.般的には若F

古いか

P . A

l b

e r

t .

  La   pr

es

se

r a   f r n ; a i s e ,

ot

es

  et  

Et

ud

es

  Do

cu

me

nt

ai

re

s.

  no s  4 

72

9‑

4  7 3 0 ,   1 9 8 3 .   p p .

1   7

6 . を

参凸 叫 (9 )J 'C .  M

as

cl

et

.  o

p .  

c i t   ••

A .

J .

D .

A .

,   D

oc

tr

in

e.

 1 9 8 4 ,  

p .  

6 5 2 .   かかる取得または譲渡い公開には︑正確にはさらに

1.つの要件がある︒かかる取得等が甘該事業体の承認にかかり︑また←ー該取得

者か当該事業体の資本可の

. .

 

0

%以上を保有することとなる場合てある︒

なお︑透明性の規定のう化に︑外国人の取扱いの規定が含まれているか︑本文で省略した︒簡単に言えば︑特別な国際的取極りあ る場合を除き︑外国人は新間事業体の資本等の少なくとも:

0

%以卜を直接または間接に保有てぎないし︑また一.以

L

り新間巾笠 体に直接資本参加てぎない︒

マスクレ教授は︑最近増加傾向にある週間の新聞を排除したことは多元性の保持にとり間題てある︑という︒

J ‑ C . l ¥ l a s c l e

t .  

p .

i t   c   : 

( 1 2 )

 

( 1 1 )  

( 1 0 )

  国家機関の最小限の関与と事後制裁を定める︒

( 4 ) 本法は

La Se ma in e  Ju

r i

d i

q u

e ,

T  

ex

te

s,

o  N .  0 0 0 0 0 0   0 .   1 9 4 4

.   に掲載のものを利用した︒

( 5 ) 本 オ ル ド ナ ン ス は 個 人 業 と し て の 新 聞 事 薬 を そ の 対 象 の 中 心 に お い て い た の で

︑ 会 社 グ ル ー プ や 持 株 会 社 の 実 態 を と ら え ら れ な

かった︒また︑﹁↓人︑1L

といった場合︑:人が自然人だけなのか︑法人も含むのか不明確であると同時に同紙名で複数

U 聞を併合することも可能であった︒これらの点については︑

J ' C .

Ma

sc

le

t,

a  L   l o i   s

ur

e s   l   en

t r

e p

r i

s e

s   d e  p r e s s e

.  

A.J•

D.A••

Do

ct

ri

ne

19

  0 0 4 ,   p

p.

64

4‑

66

5.

x

 に

p p

6 .

4 4

‑ 6

4 5

.   また︑ドゥリ上ー教授は本オルドナンスは全く十分には適用も遵守もされてこなかった︑とい

•R•

D . P . ,   1 9  0 0 7 ,   p p .  

32

4

3 2

5 . う ︒

E .

De

ri

eu

x.

e  L   no

uY

ea

u  s

t a

t u

t   d e  l a   c

om

mu

ni

ca

t1

0n

(6)本法はA.J•

D .

A .

,   L e g

i s

l a

t i

o n

,   1

9 8 4 ,   p p . 1   7

0 ー

71

2 に掲載のものを利用した︒また︑本法の紹介として小早川光郎﹁新聞支肘

0規 制 日仏法学︵/几八六任︶じ五貞ー七八頁並びに本法の適確な解説および翻訳として加藤典洋﹁出版事路適正化法ー外国い

L I L I L ^

. 丘

巻:.号(‑九八八什︶

.  

^しハ貞ー::九頁がある︒フランス語の解説としては︑

J ' C .

Ma

sc

le

t.

  o p . i t   c

. .  

A.J•

D .

A .

,   D

oc

tr

in

e.

  19

8 ‑

L  

( 8 )  

(7ー ︶

A.J•

D. A : 

Do

ct

ri

ne

1 9 8

‑ ‑ l .   p .   6~3

ll, 

p p

.   6

4 4

‑ 6

6 5

,  

Ch•

De

bb

as

ch

  et  

G .

  D

ro

uo

t,

a  L   l o i   d u  2 3  O

ct

ob

re

  19 8

・ 1  

e t  

l a   l

i b

e r

t e

  de   la   p r e s s e ,

a   D

ll

oz

,  1

9 8

5 ,

  p p

.  

4964~

0 八

7 ‑ 3・4 ‑596 (香法'88)

(13)

虚)睾二添記

8

l罹且旦起↑文゜

P. Albert.  op.  cit.,  N.E.D  ..  p.  53

旦→心J'姦巨さ臼這鱈,1翌~,

Bl

菩奎宗(I'‑Iド,\パ心皿器...:;)

孟)旦丑ぐ~diffuserわミ心゜逗い\J'翌瞑起旦竺奎廿筐刈~"'IJ丑二心日~,0'~'diffusion8相寺

fQ

羮ざも茫呪ギ氾ミる習う‑叫如

奎妃叫

文゜

(二)社¥(ii;rrffil;ぐ店がくぷふ心ぐ心゜

華虻痣窒江や全ぐい'

(臼)社ささr 鼻討'

王如速迎竺又垣涯団出癒ぐ甘翌認'

芯'苓如茫やヤ心゜ど毎竺笑lii-\'.J~氾゜ ・日却溢翌辛'

,¥ギ\吋.'i卜ぶS歪辛江'岩税認立江9

.Li,・;

ぅぐ字言

(~)

哀︶ ([l

ーり因

亡心完写 lrI

[54IbiJ

一姦翠廿磁([裂誓室姦

I'

酪要︵

定写鋸図函 P

[X L 入→

1't-'G澁写\J~

へ 0 G.  Pepy,  La  reforme  du  regime  juridique  de  la  presse,  A.].D.A  ..  Doctrine,  1986,  pp.  527-536• Annexes 

pp.536‑538

旦翌挙:;;...;:, ミ伶孟三己べc

。<山ヤ出竺塔王Sllli厨,..IJ_j\--J':i;±5:;$8k'.--写湮迂'<巨と垢くミ区芯'こ云エ燦8~忘谷.Lf,~ 巴ミ菜淀孟定忌

S

忌討鱈さ祁

:t'.

~!

ミ心゜

G. Pepy,  op.  cit. 

A.J .D.A.,  Doctrine  1986,  p.  528. 

心)氾ギ苓

GK‑

宦湮

:t:'!2

::.:̲令=叶ー添怒旦サ

0

\--J..;;>祀捏的~t-0°E.

Derieux.  op  cit.,  R.D.P.,  1987,  p.  325. 

形文翌区↑ご三

g;.i‑ ャ←

十八i‑<8匡芯遮袋全旦:\--J..;;>癒浬ク合~t--0゜り8.1.Q!0こい竺'S.

Hubac  et  ]‑E.  Schoettl.  La  situation  des  groupes  de  presse  a  la  suite  de  la  decision  des  10  et  11  octobre  du  Conseil  constitutionnel  et  de  la  promulgation  de  la  Joi  du  23  octobre  1984, 

Revue  de  Ia  science  criminelle  et  droit  penal  compare,  1985,  pp. 

4-11如~\\匪゜

(~) 1

忌坦や竺症旦

publication

..lJ

いこ文芯'社迅や竺

publication de  presse 

..lJ

‑k t‑0

゜逗西竺湮合旦舟"芯'毒

⇒ t≪ 

ペt-0~蔀.;;:,(‑,¥

こ勾田~•("'\Qや王堵藝や垢:ど゜

JJ',:‑出旦廿ご召'(;:;) 1~<i

1w‑..μrrr:: 

i-1=芍コ坦坦..µ~r;;翌女心ぎ姿竺ヽャ3翌毎迂る心1

↑'I卜←ーヘ旦廿内丑三桑桑ふ心匂杓ミ氾゜G.

Pepy,  op.  cit.,  A.J.D.A.,  Doctrine  1986,  p.  529. 

(目)

E.  Derieux,  op.  cit..  R.D.P.,  1987,  p.  327.  G.  Pepy,  op.  cit.,  A.J.D.A  ..  Doctrine,  1986,  p.  531. 

ば)~~笞継旦巨兵肉苓芭

‑<8

臣塞竺姿坦旦→要櫻初,;;

‑+‑! 

全’竺..J,J-<勾<臣母坦-\J戸口や~i-0゜又初ど王砥竺'<巨母由心f's'I',\

‑K:8

塗乏苓囲

‑<:;ti

ぐ砂芸祗叫̲)

‑t‑! 

王姿蕊呈い二い竺習庄蛍苓ふ杓,;;

‑+‑! 

芯'社坦やさ全

‑R

i-0淀要ど吾逆さ些丑X1J~心゜

ぼ)辻坦竺].0.,

1986.  11.  28.  pp.  14297‑14300

旦翌挙S;..,;μ8如己王̲)

‑t‑! 

啜) G.  Pepy,  op.  cit  ..  A.].D.A.,  Doctrine,  1986.  p.  531. 

(苫)社坦ざ

La semaine  juridique,  Textes,  1986,  59250. 

旦翌溢8..;;i 

G‑1<

韮忘王

文゜

(8OOC

さ如︶

L6S 1t.E│12 ー︐

110 兵

(14)

違反についてその構成要件が明確でないとか︑

この種の申し立てに対し︑

株 式 の 記 名 性 に 違 反 を し た 場 合 に 罰 せ ら れ る 事 実 卜 の 役 員

(d ir  

八四年法と八六年法の二つが憲法院の違憲審査に付された︒

会議員および元老院議員によって申し立てがなされた︒

この二つの判決内容を

1瞥しつつ︑次節でふれることのできない若干の興味ある論点についてもみておこう︒

一九八四年

;Q

1

0 .  

1日判決

本判決は憲法院判決のうちでも大部なものの

1

つである︒判決は大きく六つに分かれる︒すなわち︑立法手続︑透 明性およびそれに関わる強制︑多元性︑透明性および多元性のための委員会︑刑事制裁そしてその他の諸規定である︒

なお︑立法手続およびその他の諸規定についての判示部分には︑目新しいものもなく︑

まず︑透明性については同院は︑

その目的が新聞の自由に対立したりあるいはそれを制限したりするのではなく︑

その自由の有効な行使の強化に資すると判断する︒具体的な諸規定につき︑第↓に注目されるのは種々の規定が人権 宣言八条の罪刑法定玉義原則の要請である明確性を欠くとして︑違憲の申し立てがなされたことである︒名板貸しい i g

e a n t s ) の観念の不明確性および新聞事業体の資本等の:

0

%以上を直接または間接に保有することとなる株式の譲 渡等の公開につき︑直接または間接という文言は不明確であるとか︑

とんど﹁十分明確な方法で定義されている﹂ である︒同院は︑ また紙数の関係もあり︑

として︑合慮判断を下した︒唯

1︑同院は先の最後の例にある公開義務

ではふれない︒

ここ

(一)

いずれも一部違憲の判決である︒本節では︑ 前節で指摘したように︑

二 ︑

二つの憲法院判決

また︑同様に︑ いずれも六

0

名以上の国民議

︱ ︱

1 0  

7  ‑ 3 ・ 4  ‑598 

(香法

' 8 8 )

(15)

フランス憲法院判決の進展

一新聞事業の集中排除に関する二判決を中心に一(矢IJ)

る ゜ よ の場合︑誰が罰せられるか不明確であるとして︑

れ ば

その罰則規定を違憲とした︒

いわゆるプライバシー権に基づく違憲の主張である︒申し立てに

第一一に注目されるのは︑私生活の尊重への権利︑

かかる権利の不可欠の要素として取引

( a f f

a i r e

s )

および資産の秘密の権利があるから︑新聞事業体の株式等

の 二

0

%以上を保有する会社の株主等が当該会社の記名の株式薄を閲覧できるという規定および新聞事業体の↓

: o  

% 

以上の資本等を保有するものは委員会による一定の情報請求に応答する義務があるという規定は違芯と

t 張された︒

これに対し︑同院は︑

これらの規定がいかなる憲法的価値の原理あるいは原則とも祇触しないとし︑

イバシーの権利に何ら言及することなく︑違憲の主張を斥けている︒

かかる判示の意味も必ずしも明確ではないが︑

カイゼール教授の指摘するように︑事業の自由がプライバシーの権利の一部と一般に考えられていないということで

(3 ) 

あろう︒このように︑透明性に関するほとんどの規定を同院は合憲とした︒

つぎに︑多元性に関する判示部分をみてみよう︒ここには︑注目すべき判示が少なくない︒

人権 宣言 一

一条の保障する思想および意見の自由な伝達が基本的自由

( L i b

e r t e

f o

n d

a m

e n

t a

l e

)  

よび一般的・政治的情報を掲載する日刊紙の多元性の保持が︑

の判断はその適用の場合を勘案して行われる︑

プラ

そのなかでも︑特に︑

であるという指摘お それ自体︑憲法的価値を有する目的であるという宣示 前節でみたように︑本法は︑多元性の保持のために詳細な販布部数の制限を設けたが︑同院はかかる制限の合憲性

とする︒上限の算定方法は二つに分けられる︒第一の場合は︑上限は 当該所有権または支配権の取得の月の前月以前︱ニヶ月からなる同一の期間についてなされる︒第二の場合は︑本法

公布時の現況の規制をめざすもので︑そこでは上限は本法公布に先だっ︱︱一ヶ月からなる同一の期間においてなされ は重要である︒この点は後の節で詳しくみるので︑

ここではその他の判示部分を概観する︒

. 般

的 に

7  ‑ 3•4 ‑599 

(香法

' 8 8 )

(16)

かかる公的自由に関する状況の

第一の場合については︑同院はいわゆる留保付き合憲の手法を使い︑適用領域を限定した︒それに従うと︑将来に わたっても︑本上限の適用は新たに発刊された新聞あるいは所有権または支配権の取得以外の理由による販布部数の 発展の場合には排除される︒これは本法適用のディレクティブといえよう︒

つき重要な革新である一点だけは指摘しておく必要がある︒それは本判決ではじめてディレクティブがその本文で明 示されたことである︒すなわち︑判決本文の二は﹁上に述べた解釈という厳格な留保のドで︑本法の他の諸条項は古

法に反しない﹂

とした︒従来︑ディレクティブについてはその既判力につき議論があったが︑

(5 ) 

答を提示したといえよう︒

第二の場合について︑同院は違憲と判断した︒その理由は︑公的自由について公布時の現況を問題とする場合は次

の二つの場合に限られるからである︒

その場合というのは︑現況が違法に獲得された場合とそうすることが古法的目 的の実現のために実際上必要な場合である︒そして︑本件の場合はこの二つのいずれの場合にもあたらないとされる︒

この判ホの理解については︑見解は分かれる︒現況の変更についての立法権限の制限と解するもの︑これと近いも ので︑現況を将来にわたって変更するという即時効原則に対する制限とするものおよび法律の不遡及原則い:適用と

解するものがある︒樋口教授によれば︑

裁量を限定する﹂ものである︒ この判示は﹁﹃公の自由に関する現存の状態の変更﹄そのものについての立法

この点でフランク教授の見解が大変興味深い︒彼はここでの公的自由に関する状況は︑憲法的価値を有する刑法い 不遡及原則と立法的価値をもつその他の法の不遡及原則の間にあるとする︒そして︑

規制規範の不遡及原則は︑前示二つの例外をもつが︑同院によって憲法的性格が承認され︑

なお

本判決には︑この他にも多くのディレクティブがみられるが︑

それは刑法のそれとほと

ここに同院は明確な解

ここでは特にとりあげない︒しかし︑しこ

こオー

7~··3·4 ‑600 (香法'88)

(17)

フランス憲法院判決の進展

一新聞事業の集中排除に関するこ判決を中心に一(矢 Il) 

の一定の期間を定めることができる︒そして︑ という主張も斥りぞけられた︒ 性の保持の必要性に基づき︑財産権のいかなる剥奪も︑いかなる他の行使態様も禁じていないとして︑

ここ

;末に反する

また

かかる制限は多元

これらの諸規定は違布

んど同様に侵かされない︑

と︑本判ぷが立法府の権限を制限するものであることに変りはなく︑

この判ぷでいま 9

つ興味をひくものがある︒判決は︑甘該規定が も︑また既に失われた実効的多元性を再構築する必要性によっても正崎化されない︒従って︑

であ

る︒

﹂と

いう

ここでは、立法府の正出~化の試み、要するに、挙証の努力のなかったことが非難されているようド

思える︒仮にそうであるとすると︑公的自由の現況の規制については︑

は違慮とされるという立場を同院が採用したことになる︒

自主編集原則の違反の場合︑委員会は︑ その正崎化を立法府が負い︑

あろうか︒﹁本件において︑中臨法院はこのような状況︵違法に獲得されたーカッコ内は筆者ー︶にいかなる言及もない

ことを認めえただけであった︒﹂

この上限の確定およびその適用が企業活動の自由に反するという主張に対して︑同院は︑

それがない場合 りぞけた︒同時に︑自主編集原則に基づく職業ジャーナリストからなる編集局の創設義務が人権官吾

r‑

この主張を斥

最後に︑本法の一大特色である透明性および新聞の自由のための委員会の創設に関わる諸規定についてみる︒

で︑争われたのは委員会の次のような権限の合憲性である︒多元性の保持のための前示販布部数の上限の蹄越および

その違反事実を確認し︑関係人に必要な排除措置を命ずるとともにそのため

かかる措置が期間満了後も不履行の場合は︑その事実を確認し︑

事件の書類を検察庁に引き渡すこととなるが︑前示確認は税および郵便に関する新聞事業に対する優遇措置の剥奪を

その

﹁これらの状況の違法性には及することによって

るL 

とさ

i

この判示の意味は今後の判決で明らかになっていくと思うが︑

またそこに本判ポの重要性も存する︒

ビアンヴニ上教授の次の指摘はこのことを指しているので

いかに解しよう

7  ‑ 3•4 ‑601 

(香法

' 8 8 )

(18)

って自由になされると判.

I J す

る︒

まず

適用範囲についてだが︑

慮法

院は

違憲を宣した︒なお︑この理由の直後に︑この権限が人権宣言一 このような権限に対し︑慮法院は︑それが人権宣言︱一条が禁止している事前許可と同視しうる効果をもっと認め︑

一条の意味での濫用を排するためと仮定しても︑﹁そ

の抑制は行政機関に与えられない﹂

2)   (1  

ると考えることもできる︒

と同院はいう︒ここから︑違憲の理由として︑権力分立原則違反も示唆されてい 以上のように︑本判決には今みた委員会の権限および多元性のための販布部数の上限を本法公布時の現況に適用す

る規定の違慮およびそれと不

分に関係する若Q J

r

の条項の違慮が含まれる︒

.九八六年七月こ九日判決 本判決は︑八四年判決ほど大部ではないが︑大別すると︑適用範囲︑財政的透明性︑多元性︑罪刑法定原則︑前

1 ・

法の廃止およびその他の諸規定からなる︒本判決は︑

えば甘然だが︑本判決は八四年判決の原則を再確認したといえる︒

つぎに︑財政上の透明竹につき︑前述のように︑本法は前法より簡素化︑軽減化をはかった︒この点で︑同院は︑

より厳格でない新たな諸規定はそれ自体で違慮の理由とはならないとし︑

提供があることを承認した︒

白な過誤がない﹂

そして﹁透明性という目的を実現する態様について立法者によってなされた判断には明

と判断された︒ここで︑

直ちにしかも自動的にもたらす︒

その重要部分について八四年判決と全く同じである︒崎然とい 一般的に︑法律の適用範囲の決定は芯法を遵守する限りで︑立法府によ

また透明性のための欠くべからざる情報の 八四年判決にはみられなかった﹁明白な過誤﹂

の基準が使われているのが 注意をひく︒最後に︑多応性の保持に関する諸規定の判ぷをみる︒この点でも︑本法には相当の簡素化がみられたが︑

二︱四

7 ‑ 3・4 ‑602 (香法'88)

(19)

フ ラ ン ス 慮 法 院 判 決 の 進 展

一 新 聞 事 業 の 集 中 排 除 に 関 す る ・̲判決を中心に一 IJ) 

(l

) 

自然人またはグループがこの卜限によって対抗されることなしに既存の複数の日刊紙の完

そ の

結 果

R e

c u

e i

l   d

e s

  d e c

i s i o

n   d

u  c

o n s e

i l   c

o n s t

i t u t

i o n n

e l ,  

(~F

R . D .

C . C .

.  

fす ︶

19 84 . 

p p .  

78

9 3.  

( 2 ) 申 し 立 て 書 は

J . O .

,

19 84 .1 0. 13  I

n f

o r

m a

t i

o n

s   p

a r l e

m e n t

a i r e

s ,   p

p .  

32063212

にあ る︒

( 3

)  

P .   K

ay

se

r 

̀ 

L

e  c

o n s e

i l   c

o n s t

i t u t

i o n n

e l   p r o t e c t e u r

u  d

  se c

r e t  

de

  l a

  v i

e   p r i v e e  

l '

e g a r

d d  

e s

  l o i s ,

  Me

la

ng

es

f f   o

e r t s

 

P .   Ra

yn

au

d,

 

D a

l l

  oz  

̀ 1

98 5,  p p

329.  

34 8,

p p .

343-344~

( 4 ) リヴェロ教授は:.つりディレクティブの類型を学げるが︑これはそいうちの適用ディレクティブ

( d i r

e c t i

v e s

d ' a p

p l i c

a t i o

n ) すな わち適用機関に対し採用すべき行動を示すものに該当しよう︒ちなみに︑他の二つは解釈ディレクティブと指導ディレクティブが ある

R J .

i v

e r

o .

  A u

to

ur

  de

  la  

J o i  

s e c u

r i t e

  e t  

l i b e

r t e  

" F

i l t r

e   l e  

m o

u s

t i

q u

e   e

l a t  

i s s e

r   p a s s e r

e     l

ch

am

ea

u"

  A.J•

D . A .

,   D o

c t r i

n e ,  

19 81 . 

p .  

277

( 5 ) 従 来

︑ 憲 法 六 二 条 の 判 決 の 効 力

︑ す な わ ち 既 判 力

( a u t

o r i t

d e

e  c

h o

s e

  j u g

e e )

が 判 決 本 文 以 外 に も 認 め ら れ る か 議 論 が あ り

︑ そ の 後一九六二年一月一六日判決で︑﹁本文の必要な根拠﹂にも既判力はあるとされた︒それ以来﹁本文の必要な根拠﹂とは何かにつ き種々議論があったが︑本件で判決本文中に留保を人れたことにより︑この議論は一応結着がついたといえよう︒

ファボルー・フィリップ両教授の見解︒

L . F

av

or

eu

  e t  

L .  

P h i l

i p ,  

Le

s  gr

a n

d e

s   d

e c i s

i o n s

  du

  co n

s e i l

  c o n

s t i t

u t i o

n n e l

.   (以ドG•D·

( 6 )  

c . c .  

と略 す︶

4e

包 .

9 D a

l l o z

.   1 98 6.

P .  

  6 57 . 

定が不卜分として違慮とされ︑

それと密接不可分の若

r の条項も違慮とされた︒

二︱五

本判決のその他の部分については︑

特に言及を要しないと思われる︒

以上のように︑

本判決では多元性のための規

違心と判ぷされた︒ 全な所有者になりうる︑ ︒

J

したがって︑

このような新聞の多元性の保持の態様は実効的性格をもたなくなり︑

いる場合がある︒

判 決

は ︑

買収者と法的には別個の自然人あるいはグループが存在し︑

買収者はそれらの権威の下にあるいはそれらに依存して そのなかで販布部数の卜限の遵守者をもっぱら買収者とした点が忍法院の非難をうけた︒すなわち︑本規定によれば︑

7  ‑ ‑ ‑3 ・ 4  ‑603 

(香法

' 8 8 )

参照

関連したドキュメント

うことが出来ると思う。それは解釈問題は,文の前後の文脈から判浙して何んとか解決出 来るが,

「文字詞」の定義というわけにはゆかないとこ ろがあるわけである。いま,仮りに上記の如く

攻撃者は安定して攻撃を成功させるためにメモリ空間 の固定領域に配置された ROPgadget コードを用いようとす る.2.4 節で示した ASLR が機能している場合は困難とな

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

(( .  entrenchment のであって、それ自体は質的な手段( )ではない。 カナダ憲法では憲法上の人権を といい、

を受けている保税蔵置場の名称及び所在地を、同法第 61 条の5第1項の承

高(法 のり 肩と法 のり 尻との高低差をいい、擁壁を設置する場合は、法 のり 高と擁壁の高さとを合

荒天の際に係留する場合は、1つのビットに 2 本(可能であれば 3