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九州大学学術情報リポジトリ

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

電子供与体(D)-受容体(A)系の光誘起電子移動反応と 超分子構造制御の効果に関する研究

米村, 弘明

https://doi.org/10.11501/3105036

出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

『司冒

第5章 D - A 連結化合物の光誘起電子移動反応における時間分解E S R

5 - 1 序

通常の磁場変調を用いるc w -E S Rは100k Hz 程度の磁場変調を行い、 マイ クロ波のシグナルを位相検波する方法で測定を行う。 時間分解能はかける磁場変 調に依存し、 サブミリから数十マイクロ秒程度である。 近年、 磁場変調による時 間分解能の壁を破る方法として、 時間分解E S R浪IJ定法が誕生した。 この方法は 磁場変調を行わない直接検波法であり、 感度は悪いが後で述べるスピン分極によ

って、 この問題は解消できる。 この方法の時間分解能はサブマイクロから数十ナ /秒であり、 本研究で行う光誘起電子移動を十分追跡できる。 ここで、 スピン分 極とはレーザ一光や電子線照射で生成したラジカルにおいてゼーマン分裂した準 位がボルツマン分布からずれる現象である。 また、 静磁場方向に異常に大きなこ スピン分極を生じることをC 1 D E P (Chemically Induced Dyna凹ic Electron

PO 1 a r i z a t i 0 n )という。 このスピン分極は直接検波による感度の悪さを補うのみ

ならず、 反応前駆体、 反応初期過程などの反応機構の詳細な知見を得ることがで きる1 ). 2)。

実際、 C 1 D E Pは光誘起電子移動反応で生成したラジカル対の動力学を検討 するのに非常に有用であり、 均一溶液でのD - A 系3 )やD - S - A 3元系-1)につ いていくつかの研究グループで研究成果が報告されている。

また、 松尾らは反応場として逆ミセルを用いてポルフィリンーヒオローゲン連 結化合物の光誘起電子移動反応で生成したラジカル対の挙動をC 1 D E Pによっ て検討している5 )。

そこで、 本章ではこの時間分解E S R測定法を用いて、 第4章で行った起分子 構造を反応場とする光誘起電子移動反応に対する磁場効果に関する機構について 検討を行った。

218

(3)

『司-

5-2 CIDEPの機構1)・2) 6) ー8 )

序で述べた様にレーザ一光や電子線照射で生成した ラジカル(不対電子スピン〉

はラジカルのゼーマン準位 分布が熱平衡からずれ〈スピン分極〉を生じている。

C 1 D E Pとは、 この様に、 静磁場方向に異常に大きな電子スピン分極を生じる

事をいう。 C 1 D E Pが起こる機構には次のような機構が考えられている。

5 -2 - 1 励起三重項機構9)-13)

一般に、 ゼロ磁場において励起一重項から励起三重項副準位への項間交差の速 度は副準位によって異なる。 このため、 静磁場中の励起三重項分子はボルツマン 分布(熱分布 〉からのずれ〈スピン分極)を生じている。

励起三重項を経由する反応において、 励起三重項からおこる反応が励起三重項 のスピン分極の緩和と競合する程度に速い場合は、 生成するラジカルに励起三重 項状態のスピン分極が受け継がれる。 そして、 生成するラジカルのE S R共鳴点 においてマイクロ波の吸収( absorption)または放出(emission)として時間分

解E S R測定で観測される。 さらに、 各超微細構造線の縮重度がそのスペクトル

の相対強度を決定する。 これに対して、 励起三重項からおこる反応が励起三重項 のスピン分極の緩和に比較 して十分遅合はこの機によるC 1 D E P観測 できない。 これが、 Wan らによって提唱された励起三重項機構(T r i p 1 e t �I e c h a -

nisrn : T M )であるく図5 - 1) 9)。

少し具体的に見ていこう。 例としてカルボニル化合物を考える(図5 - 1 )。

いくつかのカルボニル化合物(キサンテンなど)はゼロ磁場で励起一重項から励 起三重項目IJ準位T zへの項間交差が他の副準位( T x、 T y)より優先的に起こる。

静磁場を印加した場合、 3つのゼーマンサブレベル(Ti, i-l.O.-l)は次式て-表 せる。

Ti = L nCin (8) T n 一 (5 - 1 )

ここで、 溶液中の励起三重項分子は室温で非常に速く運動している(分子回転 相関時間: て = 10-12 ,..__ 10-11 s)ので、 C i n 2 の回転平均値は十分大きな磁

219

(4)

司司・g

51

hv

So

Q_ T+ D-f:

fSC O Tz

\コ Q_ Tv

....

0 To A

一一一一�

Q_

Tx

3D安 。 T

H=O 3D大#

Hと0.330 T

3D大 + A D-f: + A:

図5-1 úliJ 起3重項機械(

T M

)の概念図

D

:例えばキサンテン誘導体

220

+

(5)

『司・・E

場では1/3になる。 この場合、 Tiにはスピン分極はあらわれない。 しかしなが ら、 通常のXノ〈ンドのE S R測定ではゼーマン分裂(...0.3 crn-1)が三重項分子 のゼロ磁場分裂(0.1...1.0 crn-1) に比して十分に大きくない。 それ故、 H ...

�. 33 TにおいてC 11.がC 1 xやC 1 yより大きくなることが可能である。

励起三重項分子のスピン分極の緩和は室温においては磁場の有無にかかわらず 非常に速い(て rel=10-10 ,.._, 10-8 s)、 それ故、 分極した励起三重項 ( 3 D ·つ はすぐにボルツマン 分布に従う分極していない励起三重項になる。 ここで、 ラ

ジカルの生成が3 D ・8の τ r・lに拾抗する速度で進行すれば、 3D #の分極は生成し たラジカルに受け継がれる。 すなわち、 生成するラジカルD +.とA -・では α スピ ンが過剰になる。 従って、 ラジカルD +.とA -・のそれぞれの共鳴点においてマイ

クロ波の放出(ernission)が時間分解E S R測定で観測される。 これに対して、

うジカルの生成が3 D ・aの τ r e 1に比較して遅いならば、 TMのC I D E Pは期待 できない。

5 - 2 - 2 ラジカル対機構14)-16)

2つのラジカルが相互作用している場合、 この2つのラジカルをまとめてラジ カル対という。 ラジカル対は必ず一重項状態もしくは三重項状態をとる。 ラジカ ル聞の交換相互作用-J (r) {(1/2) +SI ・ S2}のため、 三重項ラジカ ル対と一重項ラジカル対のエネルギーは分裂する(図4 - 3 )。 通常、 J (r) は負で、 一重項のほうが三重項よりも安定である。 エネルギ一分裂2 J (r)は

rが大きくなると指数関数的に減少すると考えられているが、 r依存性の詳細は 不明である。 rが大きくなると一重項と三重項のエネルギーは近づくが、 強磁場 ではゼーマン分裂のため、 rの大きいと ころではSとT0のみ縮重が起こる。 今、

うジカル対が三重項として生成したとする。 対を形成したラジカルは拡散のため 離れた後再び出会うことになる。 この時間の間に、 磁気的相互作用のためI T 0 >

とI S >の混合が起きる。

ここで、 ラジカル対の波動関数はSとT 0状態の基底関数を用いて解くと (5 - 2 )式のようになる。

221

(6)

『咽a

v

{Cs (t) I S> +CT(t) I To>}

-ナι ふL

Q Q

η η s s

、、Illi-- 、、IIlli-- hu- hu- - Q 。一 Q Q 一 Q 一 ,,,IEPEi--1、 ,F'''all--且店、、

nu nU Ta Fa c c

一 一

、llip--,J 、lll〉IllJ

4gb 4giu

Q Q

n n cu cu

、、、111111'F,, 、、1111111tI J

Q J

Q I''EEhfpPEEI、 ,,tlEEEEl--s、、

一 一

art aTt

Q Q

S S 0 0 c c

fli--、 flit--L

ハU nu p、d Ta c c

一一 一一 ふL ふ,L b

伊、“

伊,

戸し fν

2π r

1 I \

T J

Qab == ._

�V i

t

(

9 1

-

9

2 ) β H一( 乞(AliIl i -A2jI2j) ) Q =イQab2+J2

ー(5-2 )

l】 J 2 '7)

ここで、 Q abは共鳴振動数の差 である。 この差の原因はh f c機構とムg機構 がある。 また、 Jはラジカル対の交換相互作用である。 そして、 この時のスピン 分極は(5 - 3 )式で表される。

J Qab

p =た{Cs (0)

2_CT

(0)

2}

イI Qab I 一

( 5 - 3 )

ここで、 kは比例定数である。

以上の様に、 一重項ラジカル対と三重項ラジカル対の閣の混合によって生じる 分極機構のことをラジカル対機構(R P M : Radical Pair Mechanisrn)という。

うヅカル対機構 によるスピン分極 は次の簡単な規則でまとめることができる

(図5 - 2 )。

1 )ムgのみが S-To rnixing に関与する場合(net effect) (図5 - 2 (a)) r ne t = μ J ð. g r net > 0 A

r net くO E - (5- 4)

2) h f cのみが S-T 0 rnixing に関与する場合(multiplet effect)

(図5 - 2 (b ))

r m u 1 t μ J r mult > 0 A/E

E/A - (5 - 5 ) r m u 1 t くO

ここで、 μはprecursor(前駆体) がtripletまたは free radicalの時は+で、

Singletの時はーである。 Jは交換相互作用の符号である。 ムg = gl - g2 g 1 :観測して いる ラジカルの g 値である。

一般にこれま で述べた励起三重項機械とラジカル対 機構は単独で作用するもの でなく、 これらが重なった形で実際のC1 D E Pスペクトルに作用することが多 い(図 5 - 2 (c))。

222

(7)

『司-

μ) 0

J

(

0

a

) 1'R2

-811

g2

b ) .R21

宝υ

91 = 92

c

)

州一

宝d

g2

g1

図5

-

2 ラジカル対機構( R P M )のCIDEP スペクトル2 )

( a) h f c機構のみ、 ( b) ð g機構のみ、 ( c) h f c機構とム

g機構が作用。 ここで、 ・ R 1は等価なプロトン2個、

.

R 2はプロト

ンl個である。

223

(8)

『咽冒

5 - 2 - 3 スピン相関ラジカル対機構17),18)

先に述べた励起三重項機構とラジカル対機構では観測されるものはスピン分極 を記億したフリーラジカルである。 ミセルを反応場とする場合もしくはDとAを つないだD - A連結系においてはラジカル対のスピン分極が直接観測される場合 がある。 これが McLauchlanらとClossらによって報告されたスピン相関ラジカル 対機構である (図5 - 3 )。 観測されるラジカル対の各h f線はそれぞれほぼ

2 J に 分 裂 、 ( 5 - 5 )式に従ってE/AもしくはA/Eパターンが観測される。 以

下にMcLauchlanらの場合を例にとって簡単に説明する。

ESR角周波数ωAとωBを持ったかっ簡単な g 値、 h. f. 値、 核スピン配置を持つ 二つのラジカルAとBを考える。 そこで、 一重項/三重項基本スピンハミルトニ ア ン(角周波数単位)は

ω - 斗」B A l ω ω ぺ 値

i有=固

Q と

、>

ω ーー

>

s o J Q O +態 川 状 fu 有 川は 固

l の川J =ン

T 一

0

0 0 ω ア ー ω

、ニ で ト こ ル

T。 〉 T -1 >

。 。

Q 。

- J 。 ( 5 - 6 )

。 一ω- J

1 > ー T + 1 > α) 1

2 > cos 4 s > + sln φ To> α) 2 =

3 > sln ゆ s > + cos 中 To> W 3

4 > T - 1 > 。)4

J + ω

Q

Q - (5-7)

J - ω

こ こ で、 Q 2 二 J 2 t ω2 と tan 2ゆ 二 Q / J

4つの可能なESR遷移の周波数 ωi j (ωi - ωj ) と 遷移確率 P i jは

α) 1 2 - αJ Q P 12 sin2 ψ

ω34 = ω Q t J P 34 cos2 ψ

α) 1 3 = w Q P 13 二 cos2 中 ( 5 - 8 )

α) 2 4 = w + Q t J P 24 S 1 n - ψ

- 224

(9)

『司贋

1 T+1>

9μBH

1 To>

1 S>

T_1

中= 3 Q=土(ωA-ωB)

2

IW1 >= IT+>

1 W2 > = COS中1 S >

+

sin引To >

1 W3> = -sin中IS>

+

COS中1 To >

|叫>= I T_ >

図5 - 3 スピン相関ラジカル対機構の概念図

225

(10)

._.,

三重項から生成するラジカル対のESR スペクトルを計算するために分布の相違 によって遷移確率を浪IJる。 T+ 1 、 T。、 T- 1は等しく生成するとすると、I 1 >

とI 4 >状態の占有確率はともに 1/3で、 12> とI 3 >はそれぞれ(113 )

s i n 2 ゆと(1/3) cos2 ゆである。

P1 = (1/3)

P 2 = (1/3) sin2 ψ P 3

P 4

(1/3) cos2 ψ ( 113 )

- (5 - 9 )

C1 D EP強度1 i i は

必句。avEEaA

-一d“匂司内,T目目目A

-一得。l yz'A

この'bl ,EEEA (1/6) cos2 ゆ si n 2 ゆ

- (5-10) : (1/12) sin2 2ゆ = Q2/12Q2

C1 0 S Sら の方法では(5 -9 )式の代わりに次式を用いて解析 を行っている。

P1 = (1/3)

P2 = (1/3) (Q2/2Q2)

P 3 (113) (1 -Q 2/2Q 2) ,,rl、、 Fhd 可lム 1ょ 、、JJ P4 = (1/3)

励起三重項機構の寄与を考慮すると、 次式で解析する必要がある。

P1 = (1/3) + α P 2 = (1/3)sin2 ゆ P 3 = (1/3)cos2 ψ P4 = (1/3) 一 α

安積らは励起三重項機械の寄与と12> と13> の間の速い緩和を考慮する機 一 ( 5 - 1 2 )

摘により、 実際のシミュレーシ ョ ンを行っている1 9 )。

5 - 2 - 4 各サブレベルのスピン緩和過程を考慮、したスピン相関ラジカル対機 構20)

- 226

(11)

『司回

Closs らは各サブレベルのスピン緩和過程を考慮したスピン相関ラジカル対機 構を考察している。

最初の分布が化学反応によって反磁性の生成物がなくなり、 スピン緩和によっ

て各状態に再分配される。 一核のレベルダイアグラムを図5-4に示した。

ここで、 一重項性のパラメーターをえれ 三重項性のパラメーターをえTとし、 そ れぞれ、 Closs らは、 え0= (q2/2Q2)、 McLauchlanらは、 えo -COS 2 ψ に なると仮定した。

時間平均密度マトリクス要素は次式のように表せる

dρ++

d t

dρss d t

dρ00 d t

d P-- d t

k+s -kss h k kos k-sk

(

ρ ρs s I

たt kos -koo kt ρ。。

k d2 - k -s k t - k-- ρ-

kt =た+0+たd1

た++

=

k r入++た+0+たけ+kdl+kd2+ksoc k ss こたr入s+たos+k-s+た+s

た。o= k r入。+2k +0+たos+2kdl+ksoc

(

5-13)

た一一 =たr入- +た-0+た-S+kd!+kd2+ksoc 入s

=

1 (入+ + 入。 + 入一) dPkk

一一一一 = K.ρJtJt

d t - (5-14)

この方程式を解いて、 各レベルの分布を求めている。

本章のシミュレーシ ョ ンでは、 上記のパラメータにおいて励起三重項機械の寄 与を入れ、 W1とW4の間の緩和(k d 2 ) とW1とW4からの基底状態への遷移

( Æ +, ぇ一)を無視した(図5-5 )。

すなわち、 ρ + ... =f::.ρo 0 =f::. ρ-ー、 え+=;{-=O、 k+o=k-o=(1-;{0) krel、

k + s = k _ s = ;{ 0 k re 1、 kd1=kdz=ksoc=Oとした。 そして、 �I c L a u c h 1 a n ら

によるt aη2θ

子、Q=j(ω。ーωb

) 入o

=

c 0 S 2 θを用いたo 従って、

未知のパラメータはρぃとρ。。とPーの比、 k re 1、 kr、 k so、 Jで行った。

- 227

(12)

『司圃

k rA+

1/3 ご』

k

r

r À

0

1/3

-

À S 〉 i v

1

I

k r A S

えS 〉》

k入一 r

1/3 7〉 7〉

図5

- 4

緩和を考慮、したスピン相関ラジカル対機構の概念図

228

(13)

『・g

I T+1>

J

IO�

I S>

I T_1>

gμsB。 (1・λ)

kre1 λ�el λk

..

ー刈ト 州krø, T T

�n

I

. 司,.同与 ,司.. -ー・』司�

λ�el

z

I \lf1 > = I T + >

I \lf2 >コcose 1 S >

+

sine 1 TO >

I \lf3 >ご-sine IS >

+

cosel TO>

|叫> = I T_ >

I \lf1 >

I '*'2 >

I '*'3 >

1\lf4>

WOE3 Q(ωa -ωb) λ= cos2e

図5 - 5 本章で行ったスピン相関ラジカル対機構の概念図

229

(14)

ー司司圃圃

5 - 3 逆ミセルに担持したフ ェノチアジンービオローゲン連結化合物の光誘起 電子移動におけるC 1 D E P

(実験) AOT逆ミセル(溶媒イソオクタン[AOT] = 0.1M、 [H20] = 1 M" w= [H2

O]/[AOT] =10)中にPHnV(0.1 rnM)を担持させ真空脱気後窒素置換した。 この 試料をNd:YAG レーザーの第三高調波( 355 n田〉 にて光励起して、 時間分解ESRを 室温で測定した(V Tキャビティー使用〉。

(結果及び考察)

フェノチアジンービオローゲン連結化合物(PHnV;n=4,6, 8,10,12)のA 0 T逆 :セル系のCIDEPを測定した。 代表として、 PHI0Vの時間分解ESR を図5 - 6に示 した。 ブロードなernissionスペクトルが時間の経過に伴って単調に減衰した。 同 様なCIDEP シグナルがPHnV(n=6, 8,12) で得られた。 しかしながら、 PH4V では CI DEPシグナルは観測されなかった。 この事はレーザーフ ォトリシスの実験にお

1てラジカル対の吸収が得られないことと一致した(4-4-2参照〉。

次に、 一番シグナル強度の強い 327.1""'" 327.2 田TでのCIDEP シグナルの時間変化

をPH8V, PH10V, PH12V それぞれについて図5 - 7に示した。 CIDEPシグナルは単

調に減少し、 シグナルの減衰はl次速度式で解析できた。 4 rnWのマイクロ波強度 でのCIDEPシグナルの減衰速度と過渡吸収スペクトルにおける高磁場時(1 T時〉の うジカル対の減衰速度定数を3つの連結化合物について比較した(表5 - 1 )。

表5 - 1より、 両者の値が近い値を示すことより、 高磁場時ではラジカル対の減 表はスピンー格子緩和が支配的になっていると考えられる。 言い換えれば、 逆ミ セル系の磁場効果がこのCIDEPの測定よりスピン緩和機構(律速過程がスピン -格 子緩和過程)であることが確かめられた。

次に CIDEP スペクトルの形に及ぼすメチレン鎖長の効果を比較した。 PH8 V.

PH 1 0 Y P H 1 2 V ともにブロードなe田issionスペクトルを示した〈図5 - 8 )。 また、

明瞭なE/Aもしくは A/E パターンを示さず、 そして明瞭な超微細構造を示さなか った。 但し、 PH12V のスペクトルにおいてはPH8VとPHIOVにおいては観測されない 低磁場側(325""'" 326 mT)にernissionの肩が観測された。

- 230 -

(15)

--町

6・・ Aりfo 「1 111111 Q】μa ,,,t

戸圃画、

玄 40

申d

ω z

申dω z

Em Abs.

322 324 326 328

HfmT

図5 - 6 PHIOVの逆ミセル系でのCIDEPスペクトル

[PHIOVJ

=

0.1 mM, [AOTJ

=

0.1 M 、 ド1 0のイソオクタン溶液 マイクロ波 9.17471 G Hz、 4 mW, 室温、 VTキャビティー

表5 - 1 AOT逆ミセノレ系で、の過渡吸収スベクトノレ測定における高磁場時( 1 T時)でのラジカノレ対の減衰速度定数(k d 1 ; s -1)とCIDEPシクマナノレの減衰速 度定数(k d 2 ; s -1)

k d1

'

S-1

k d2;s-l

= b F D 一 nU 一 ハU

V一 4l一 4l

h 一×一×

U1 一 nO 一 QU rr - nO 一 ro - 圃 ・ 7 一 6

P H10V 1.12 x 106 1.13 x 106

P H12V 1.90 x 106 9.48X105

(16)

--

-20

,圃..

王国? -40

ω z

喝ωz .

-20

-40 Em. -60

I

-80

-20

-40

-60

。 2

tlμs

PH8V

PH10V

PH12V

4

図5 - 7 CIDEPシグナルの時間変化に及ぼすメチレン鎖長の効果 マイクロ波強度 4 rnW、 室温、 VTキャビティー

PH12V:H=327.215 mT, Freq. =9.1744 GfIz

PHIOV:H=327.196 rnT, Freq. =9.17471 GHz PH 12V: H=327. 085 rnT, Freq.二9.17822 GHz

232

(17)

--

...-;

E国

T

ω z z d

-20

-40

ー20 Abs

-40

-60

。i

-20

-40

-60

324 326 328

HJmT

PH8V

PH10V

PH12V

330

図5 - 8 CIDEPスペクトルに及ぼすメチレン鎖長の効果

マイクロ波 PH12V:9.1744 G Hz、 PHIOV:9.17471 GHz、 PH8Y:

9.1782 2GHz、 4 rnW, 室温、 VTキャビティー

レーザ一光励起後0.4---0.5μsのCIDEPスペクトル

233

(18)

司司・・a

E/A/E/Aパターンが観測されずernissionのみが観測されるので、 3つの連結 化合 物は共にフ ェノチアジン励起三重項が緩和する前にビオローゲンへ電子移動し、

生成するラジカルが励起三重項の分極を引き継ぐという励起三重項機構(T YI )

の寄与がかなり含まれることがわかった。 フ ェノチアジンービオローゲン非連結

系ではCIDEP スペクトルが強いe田issionスペクトルを与えることからもこの事は 支持される。 ここで、 レーザーフォトリシスでは、 この時間域ではラジカル対の 吸収が得られ、 また、 この時間域ではラジカル対の減衰に対して磁場効果が観測 される(4-4-2)。 したがって、 ここで観測されたCIDEP スペクトルはフ ェ

/ チ アジンカチオンラジカレ(g = 2.0052) 21)とビオローゲンカチオンラジカ

ル(g = 2.0036 ) 22)の重なり、 すなわちラジカル対のCIDEP スペクトルと考え

られる。

以上の結 果より、 ここで得られたCIDEPスペクトルはMcLauchlanら及びにCloss らよって報告されたスピン相関ラジカル対機構(SCRPM) 17).18)と考えられ る。 この機構に励起三重項機構(T M )の寄与を含んだ機構(5-2-4)によ ってCIDEP スペクトルのシミュレーシ ョ ンを行った。

シミュレーシ ョ ンの結 果を図5 - 9と図5 -1 0に示す。 PH12VとPH8V は共に 励起三重項機構の寄与をかなり大きくいれないとスペクトルを再現できなかったo PH 12 Yでは実際のスペクトルで得られる emission の肩よりJ値は -0.4 '""0.6

日付近と考えられる(図5 - 9 )。 また、 PH8V では大きなJ値で得られる低磁 場側のemissionと高磁場仰IJのabsorptionがS/N で判別できなくなるJ値(ー 2.0 rnT)より負に大きいと考えられる(図5 -1 0 )。

シミュレーシ ョ ンによって得られたJ値の絶対値はメチレン鎖の減少に伴って 大きくなった。 この結 果は過渡吸収スペクトルにおけて議論したゼロ磁場でのラ ジカル対の減衰速度に対するメチレン鎖長依存性の説明(4 -6参照〉が正しい 事を示している。

こ こで、 ポルフ リンービオローゲン連 結 化 合物のメチ レン鎖が長い場合(メ テレン鎖長6または8)では、 C 1 D E Pを測定するとスピン相関ラジカル対機 構で説明できるE/A/E/Aパターンが観測されている5 )。 上記と向様にシミュレーシ

ヨンを行うと、 ラジカル対のJ値はメチレン鎖長6の化合物において- O. 4 m Tで

234

(19)

-

コ Em.

、』旬

圃 d -20

ω z 噌ωd

c -40

-60

324 326 328

H/mT

330

� Abs.

斗-

0

-;

.

.

Em.

、、- 暗・e〉、

J

= -0.6

mT

ωCωWC

圃1.0

324 326 328 330

H /mT

図5

- 9 PH12Yにおける逆ミセル系でのCIDEPスペクトルのシミュレーシ ョ ン 上図:実際のCIDEPスペクトル(t = 0.4'""0.5μs)

下図: シミュレーシ ョ ンスペクトル(J = 0.6 mT) .t=0.5μS Freq. =9.1744 GHz. ρ ++=0.5333. ρ 。0=0.3333. ρ ーー=0.1333

kr二3.15x107 s-l.kso=7.88x 106 s-l.krel=9.5 x 105 S-I

235

(20)

『司司回

コ O

ro

4t

Em.

暗〉圃 , ω z

喝CcaJ -20

-40

324 326 328 330

H/mT

fで O

� �

Em

骨è:

ω c J=ー2.0 mT

暗。c

-1.0

324 326 328 330

H/mT

図5

- 1 0 PH8V逆ミセル系でのCIDEPスペクトルのシミュレーシ ョ ン

上図:実際のCIDEPスペクトル(t = 0.5"-'0.55μs)

下図: シミュレーシ ョ ンスペクトル( J = 2.0 mT) ,t=0.5μS Freq. =9.1782 GHz, ρ ++=0.5333. ρ 。0=0.3333, ρ ー-=0.1333

kr=3.15x 107 s-1.kso=1.74x 106 s-1.krel=9.5 x 105 S-l

236

(21)

『司'

あった。 このJ値は上記のPH12YのJ値(-0.4 ---0.6 rnT )と同程度であった。 D - A間の距離は同じくらいなので、 求まったJ値は妥当な値であると考えられる。

さらに、 シミュレーシ ョ ンを行ったパラメーターについての妥当性を確認する ために、 代表して、 PH12Y のCIDEP スペクトルの時間変化についてシミュレーシ ョンを行った(図5 -11) 0 ] = - 0.6 rnTと固定し、 測定結果より考えられ る妥当な値krel, k SO, k rを固定した。 すなわち、 k re 1はマイクロ波強度4 m vV の時のCIDEP シグナルの減衰速度定数krel = 9.5 x 105 S-I, k SOはレーザーフ ォトリシス測定で求められるゼロ磁場でのラジカル対の減衰速度定数kd = 7.88

X 106 S-1と同じとし、 一重項性ラジカル対から基底状態に電子移動してもどる 速度定数をk r = 4 x k d --- 3.15 X 107 S-1とした。

上記のようにパラメーターを固定し、 各時間についてCIDEP スペクトルをシミ ュレーシ ョ ンした。 図5 -1 1 よりスペクトルの形、 強度変化ともに良く実際の スペクトルを再現でき、 パラメーターについての妥当性を確認できた。

従って、 以上のCIDEP スペクトルについての考察よりA0 T逆ミセル系では高 磁場時のラジカル対の減衰(D -A連結系の逆電子移動反応)がスピン -格子緩 和によって支配されていることが明らかになった。

また、 低磁場での逆電子反応 速度定数(k d)に対する磁場効果を測定したが、

T -- sレベル交差(4 - 3 - 2参照)を観測することはできなかった。 一方、 ポ ルフィリンービオローゲン連結化合物を用いた場合においてもT - - sレベル交差 は観測されいない。 ここで、 AOT逆ミセルを用いても完全にDとAの配向まで は固定できない。 それ故、 スペーサのc -c結合の回転で生じるいくつかのコン ホマーの集 合がT - - sレベル交差を観測しにくくしていると考えられる。

237 -

(22)

『司咽圃薗

O九".;.む/>f'..A...ι

�I'v\,.

/ノ

tlνγ、d

(・コ ・ 伺〕〉JFPωcωJFC コ・伺)去一ωC2c

0.5 - 0.55 凶

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1.0 -1.05 μS

川~川Wへ{I�が仰州.�内内ヘ,旬\\い\川、hヘ、\h'l/川.吋///V////ノ\1)rWV'

1…5トい一…~斗J川1日叩5臼5 凶

|

1.5μS

324 326 328

H/mT

330 324 326 328

H/mT

330

図5

-

1 1 PH12Yにおける逆ミセル系でのCIDEPスペクトルの時間変化を含めた

シミュレーシ ョ ン

左図:実際のCIDEPスペクトル

右図: シミュレーシ ョ ンスペクトル( J

=

0.6 mT)

Freq. =9.1744 GHz, ρ ++=0.5333, ρ o 0ニ0.3333, ρ ーー=0.1333 kr=3.15x 107 s-1,kso=7.88x 106 s-1,krel=9.5 x 105 S-1

238

(23)

ー司咽圃

5 - 4 Through-Ring C D 錯体系でのフ ェノチアジン ービオローゲン連結化合 物の光誘起電子移動におけるC 1 D E P

AOT逆ミセル系での CIDEP スペクトルは励起三重項機構の寄与が大きくブロー ドな emission のみしか観測されなかった。 そこで、 PHnYの連結メチレン鎖にシ クロデキストリン(C D )を包接させた(Through-Ring C D 錯体〉系において は連結メチレン鎖が延びたコンホメーシ ョ ンを取り得るため、 上記の寄与を少な くできると期待される。

(実験) PHnY (8.10.12) (1 mM)に α -C D (20 mM)を添加し、 充分 C D を

諸化させた後、 真空脱気後窒素置換した水溶液を試料とした。 CIDEP 測定は流通 式かつ室温で行った。 サンプルが水溶液であるので、 通常の測定条件ではCIDEP スペクトルを得るのが困難である。 そこで、 測定は偏平セルを用いて流通式でか つ濃度は AOT逆ミセル系の十倍で行った。 また、 測定はRTキャビティーで行っ

(結果及び考察)

まず、 PH12V の測定結果を図5 - 1 2に示した。 AOT逆ミセル系での CIDEP ス ペクトル(図5 - 6 )と異なり、 明瞭なE/A/E/Aパターンを示した。 時間が経過し て もシグナルの形はほとんど変化せず、 単調にシグナルは減衰した。 レーザーフ ォトリシスの結果(4 - 4 - 1参照)よりラジカル対に帰属される吸収が得られ ているので、 得られた CIDEP スペクトルはフ ェノチアジンカチオンラジカル ( g 二 2.0052 ) 21)とビオローゲンカチオンラジカル(g = 2.00 36) 22)の重な

りと考えられる。 さらに、 明瞭な超微細構造を示さないブロードなシグナルが得 られることより、 ラジカル同士が相関したスピン相関ラジカル対機構にてCIDEP シグナルが発現されていると考えられる。

同一のメチレン鎖である PH12Y の AOT逆ミセル系では単調でかつブロードな

emissionスペクトルである。 一方、 Through-Ring C D 錯体系ではC D が連結メ チレン鎖に錯化するため、 連結メチレン鎖が延びたコンホメーシ ョ ンになる。 そ

- 239

(24)

『司圃

10

a

了 �

Abs.

:と →- 0

2 ↓ Em.

T

C

-10

t

/μs

4

8

334 336 338

H/mT

図5 - 12 PH12Y- α ーC D系でのCIDEPスペクトル

[ PH12Y] mM、 [α - C D] = 20 mMの水溶液

340

マイクロ波 9.44843 GHz、 4 rnW, 室温、 RTキャビティー

240

(25)

『咽

のため、 フェノチアジンの励起三重項の分極がほぼ緩和した後にビオローゲンに 電子移動反応が起こると考えられる。 結果として、 Through-Ring C D 錯体系で は励起三重項 機械の寄与がほとんどなくなるので、 明瞭なE/A/E/Aパターンを観測 されると考えられる。 これらの結果より、 分子組織体のミクロ環境によって励起 三重項機構の寄与が変化することがわかった。

次に、 メチレン鎖の短いPH8V及びPHIOVではPH12Vの CIDEP スペクトルと異なり、

明瞭なE/A/E/A パターンを示さず、 ブロードな ernission スペクトルが単調に減 表した(図5 - 1 3 )。 この結果はAOT逆ミセル系での測定結果と同様であった。

さらに、 CIDEPスペクトルの形を3つのメチレン鎖長の異なる化合物で比較した

(図5 - 1 4 )。 レーザーフ ォトリシスの結果(4 - 4 - 1参照〉より、 PH12Vの 場合と同様に、 他の2種の連結化合物とも、 この時間域においてラジカル対の吸 収が観測されているので、 フェノチアジンカチオンラジカル(g = 2.0052) 21) とビオローゲンカチオンラジカル(g = 2.0036) 22)の重なりによるCIDEP スペ クトルと考えられる。

PH 12 Vの場合ではメチレン鎖が長いため、 フェノチアジン励起三重項からビオロ ーゲンへの電子移動が遅く、 フェノチアジン励起三重項の分極がほぼ緩和した後 に、 ラジカル対を生成したと考えられる。 このため、 得られるCIDEPスペクトルに は強いemissiveな分極を持つフェノチアジン励起三重項の分極がラジカル対に受 け継がれないため、 典型的なスピン相関ラジカル対機構にて観測されるE/A/E/A パターンを示したと考えられる。 これに対して、 PH8V 及びPH10Vはメチレン鎖の 短いためフェノチアジン励起三重項からビオローゲンへの電子移動が速く、 強い

em i s s i veな分極を持つフェノチアジン励起三重項の分極がラジカル対に受け継が

れる。 結果として、 ブロードなemission シグナルのみが観測されたと考えられる。

すなわち、 励起三重項からビオローゲンへの電子移動速度はメチレン鎖長に伴っ て減少することが間接的に示された事になる。 蛍光測定によって明らかにされる

励起一重項から電子移動速度に及ぼすメチレン鎖長の効果(図4 - 2 0参照〉が 励起三重項の電子移動消光過程についても成り立つことがわかった。

C1 DEPシグナルの時間変化に及ぼすメチレン鎖長の効果を検討した(図5 - 1 5 )。

シグナルは最も強いemission ピークを選んだ。 PHIOV及びPH12Vのシグナルは単調

241

(26)

唱司-

-‘. 40

、ct嗣3

-' c

20

4c Q) -'

Abs. 。

t /μs

334 336 338 340

H/mT

_. 20

、、句- 4

・ 4 ω 10

E 4Gc d

Abs. O

図5 - 1 3

t /μs

334 336 338 340

H/mT

PH10Y- α - C DとPH8Y- α - C D系でのCIDEPスペクトル

[PHnY (n=8. 10) ] = 1 mM、 [α ーC D ] = 20 rnMの水溶液 マイクロ波 、 4 mW、 室温、 RTキャビティー

上図: PIII0Y- α - C D系、 PHIOY:9.45378 G Hz 下図: PH8Y- α ーC D系、 PH8Y:9.44708 GHz

242

(27)

(・コ・悶)kC一ωzωさ -10

『・圃

?叫叫rl、ω

\\.山川\

PH10V ー20

-40

10

圃10

338 340 H/mT 336

334

トルに及ぼすメチレン鎖長の効果 CIDEPスペク

4 図5 - l

Hz, PH8V:9. 44708 G

GHz, PHIOV:9. 45378 PH12V:9.44843

マイクロ波

トノレ RTキャビティー

1. 0 '"" 1. 1μsのCIDEPスペク 室温、

レーザ一光励起後 4 rnW、

GHz、

(28)

『司.

lこ減衰し、 この減衰はl次の動力学で解析できた。 しかしながら、 PH8Vではシグ ナルの立ち上がりが観測され、 減衰は1次の動力学で解析できなかった。

P H 1 0 V及びPH12Vの場合については、 種々のマイクロ波強度で測定を行った。 測 定結果については各マイクロ波強度で測定したCIDEP シグナルの減衰をl次の動 力学で解析し、 得られた速度定数をマイクロ波強度に対してプロ ットした。 代表 して、 PH12Vの場合についてCIDEP シグナル(337.07 rnT)の時間変化をについて 解析した結果を図5 - 1 6に示した。

ここで、 ラジカル対のスピンー格子緩和時間(T 1 )はマクロ波強度をOに外掃 することで求めることができる。 図5-1 6 よりスピンー格子緩和速度(k re 1) は2.2 X 105 S-1 であることがわかった。 PHIOYについても同様に解析を行い、

レーザーフォトリシス測定においての高磁場時(> 0.3 T)でのラジカル対の減 衰速度定数と共に表5 - 2に示した。 上記の方法で求めたラジカル対のT1の逆数 とレーザーフォトリシス測定で求めたk dは良く一致しており、 高磁場時 ( >

Q. 3 T)でのラジカル対の減衰はスピン一格子緩和過程が支配的であることがわか

った。

PH n Yのスペクトルパターン〈図5-1 4 )はスピン相関ラジカル対機構にてシ :ュレーシ ョ ン可能と思われるので、 AOT逆ミセル系で行った方法でシミュレー ショ ンを行った。 。

シミュレーシ ョ ンはスピン相関ラジカル対機構(SCRPM)17) ・ I 8)に励起三 重項機構(T M )の寄与を含んだ機構(5-2- 4参照、)で行った。 PH12Vの場合 について実際のCIDEP スペクトルとの比較を行った(図5-1 7 )。 シミュレー ショ ン結果 よりPH12V ではJ値を - 0.4 '" 一 0.6田Tに見積もると実際のCIDEP スペクトルを 良く再現できた。 。 この値はAOT逆ミセル系で行ったPH12Y のシミ ュレーシ ョ ン結果( J = - 0.6 mT )とほぼ一致した(図5- 9 )。

メチレン鎖長の短いPHIOVとPH8Yではブロードなemissionスペクトルのみで厳密 な議論はできないが、 PH12Y のシミュレーシ ョ ンに励起三重項機構( T M )の寄 与をかなり考慮することでシミュレーシ ョ ンを行った。 PIIIOVの場合について実際 のC1 D E P スペクトルとの比較を行った(図5- 1 8 )。 低磁場側のemissionの肩 が観測されないので、 J値は -1.5 mTより負に大きい値と考えられる。

- 244

(29)

-

。 -5

-10

,..陶句.、

,.. I 'v PH8V

、旬ー-- 闇 , ω c 暗CdJ c

圃20

-40

Em. PH10V

o

�/\M J

-.・ー

-5

圃10

-15 PH12V

。 4 8

t /μs

図5 - 1 5 CIDEPシグナルの時間変化に及ぼすメチレン鎖長の効果

マイクロ波、 4 mW, 室温、 RTキャビティー PH12V:H=337.076 mT, 9. 4 4 839 GHz、

PH10V:H=337.069 mT, 9. 4 5 4 17 GHz、

PH8V: 11=337.058 mT, 9. 4 4 708 GHz、

2 4 5

(30)

!1i il/

1 1

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4.0

3.0

FEω \m

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-

2.0

0 20 30

P (mW)

10

PH12Y- α - C D系でのCIDE Pシグナノノに及ぼすマノクロ彼強段仏./f竹二

表5 - 2 Through-Ring

CD錯体系での過渡吸収スベクトノレ測定における高磁場

時(1 T時) でのラジカノレ対の減衰速度定数(k

d 1 ; s

-1) とCIDEPシグナノレの 減衰速度定数(k

d 2 ; s

-1)

6 図5 l

一5 一5

FF 一 nu 一 ハU

可司L-AIB一Als h一×一×

引っ一5一21

・ :

・ 41 一 円Jι

P HaV 1.3 x 105

づ 一

(31)

ー咽咽匝

10

... 町.、、 圃10

、c'c官J

・←� 334

(f) 亡.

咋GcーJ'

10

-10

334

336 338

H / mT

J = -0.4 mT

336 338

H/mT

340

340

図5 - 17 PHI2Y- α - C D系でのCIDEPスペクトルのシミュレーシ ョ ン 上図:実際のCIDEPスペクトル(t = 1. 0 1. 1μ s)

下図: シミュレーシ ョ ンスペクトル(] =- 0.4 mT)

Freq. =9. 44843 GIIz, p ++=0.3666, ρ 。0=0.3333, ρ ーー=0.3000 kr=2. 2 X 107 S-1、 krel=3.0x 105 S-l、 kso=5. 5 x 106 S-l

247

(32)

-

さらに、 シミュレーシ ョ ンを行ったパラメーターについての妥当性を確認する ために、 PH12V のCIDEP スペクトルの時間変化についてシミュレーシ ョ ンを行っ た(図5 - 1 g) 0 J = - 0.4 mTと固定し、 測定結果より考えられる妥当な値

k rel. k 80, k rを固定した。 すなわち、 k re 1はマイクロ波強度4mWの時のCID

EPシグナルの減衰速度定数krel = 3.0 X 105 8-1、 k 80はレーザーフ ォトリシ ス測定で求められるゼロ磁場でのラジカル対の減衰速度定数 k d = 5.5 x 106

s -Iと同じとし、 一重項性ラジカル対から基底状態に電子移動してもどる速度定数 をk r = 4 x k d = 2.2 x 107 8 - 1とした。

上記のようにパラメーターを固定し、 各時間についてCIDEP スペクトルをシミ ュレーシ ョ ンした。 図5 - 1 9よりスペクトルの形と強度変化ともに良く実際の スペクトルを再現でき、 パラメーターについての妥当性を確認できた。

従って、 以上のCIDEP スペクトルについての考察よりThrough-Ring C D錯体系 では高磁場時のラジカル対の減衰( D - A連結系の逆電子移動反応〉がスピンー 格子緩和によって支配されていることが明らかになった。 さらに、 厳格なる結果 にするためには3パルスE S R法を用いて直接的にスピン-格子緩和時間を測定 する必要がある。

- 248

(33)

ー司-

圃40

,.-ー.

、旬同国,

喝〉圃.

ω c

4。c d

J = -1.5 mT

-10

334 336 338 340

H/mT

図5 - 1 8 PH10V系でのCIDEPスペクトルのシミュレーシ ョ ン

上図:実際のCIDEPスペクトル(t = 1.0---1.1μs) 下図: シミュレーシ ョ ンスペクトル(J = 一 1. 5 m T )

Freq. =9.45378 GHz. ρ ++=0.4333. ρ 。0=0.3333. ρ ーー=0.2333 kr=2. 2 X 107 S-l、 krel=3.5x 105 S-l、 kso二4.2x 106 S-l

249

(34)

『咽咽R

0.5 -0.6 μs

V

ε七〉、 、r』旬J

r�円J1fh

334 336 338 340

H/mT

(/) C

C

- 0

1

Abs

334 336

VWY. 3.0μs

338 H/mT

340

図5 - 1 9 PH12VにおけるThrough-Ring C D錯体系でのCIDEPスペクトルの時間

変化を含めたシミュレーシ ョ ン 左図:実際のCIDEPスペクトル

右図: シミュレーシ ョ ンスペクトノレ(J=- 0.4田T)

Freq. =9. 44843 GHz, ρ ++=0.3666, ρ 。0=0.3333, ρ ーー=0.3000 kr=2. 2x 107 S-1、 krel=3. 0 X 105 S-1、 kso=5.5x 106 S-1

250

(35)

-

5-5 CIDEPによる磁場効果に及ぼすミクロ環境効果の検討

4 - 7においてD- A連結系の逆電子移動反応の磁場効果に及ぼすミクロ環境 効果を検討したが、 さらに詳細な議論を行うためCIDEP スペクトルに及ぼすミク ロ環境効果についても検討し、 両者の比較を行った。

ここでは、 代表してフ ェノチアジンービオローゲン連結化合物 ( PH12V )の

Through-Ring C D 錯体系とAOT 逆ミセル系の2つについて比較を行った。 まず、

過渡吸収スペクトルの結果について、 両者ともレーザ一光励起によって生成する ラジカル対の減衰速度定数( k d)は磁場の増加に伴って減少し、 0.2'""0.3 T以上 で一定値になった。 高磁場( H>O.2'""O.3 T)のkd はメチレン鎖に関係なくほぼ 同じ値が得られた。 この結果より、 両者の磁場効果は本質的にスピン緩和機構で 説明でき、 高磁場でのラジカル対の減衰はスピン緩和が支配的であると考えるこ とができた。

一方、 高磁場時( 1 T時〉ではThrough-Ring C D 錯体系の方がAOT 逆ミセル 系に比較して減衰速度定数が約1 0分のlになった。 これに対して、 ゼロ磁場で は両者のラジカル対の減衰速度はほとんど変わらなかった。 したがって、 高磁場 時CH>O.3 T)のラジカル対の寿命は両者で大きく異なることがわかった。 高磁 場時でのラジカル対の寿命はD - A対が置かれている分子組織体のミクロ環境に 強く依存していると考えることができた。

そこで、 磁場効果に及ぼす2つの分子組織体が提供するミクロ環境効果を吟味 するために、 kd(H)/kd(O)という比を用いて磁場効果の大きさを評価した〈図5

- 2 0 )。 磁場効果の大きさはThrough-Ring C D錯体系の方がAOT逆ミセル系よ り約1 0倍程度大きくなった。 言い替えれば、 磁場効果の大きさの相違は分子組 織体中のラジカル対のスピン-格子緩和過程によって決定されていると推定でき る。

以上の過渡吸収スペクトルの結果を踏まえて、 ラジカル対のスピン -格子 緩 和

過程が測定できる時間分解 ES R での比較を行った。 この章で検討した様に

Through-Ring C 0錯体系とAOT逆ミセル系は共に励起三重項機構の寄与の程度は

異なるが、 同じスピン相関ラジカル対機構によってCIDEPスペクトルを説明できた。

251

(36)

『ー

-園、 -0.4

、-

• • • •

、、、

• • • •

"...園、

、国".,.,

�. 0.2

。。

0.6 0.8

。 0.2 0.4

H/T

図5 - 2 0 PH12Yにおけるラジカル対の減衰速度に対する磁場効果(k d ( H )

/kd(O) )に及ぼす分子組織体の影響 o : PH12Y- α - C D系、 ・: PH12Y逆ミセル系

表5-3 過渡吸収スベクトル測定における高磁場時(1 T時)でのラジカノレ 対の寿命(τ1 ' μ s) とCIDEPにおけるラジカノレ対のT 1 (μ s )

て 1 ' μ s

AOT逆ミセノレ系 0.5 1.1

一糸一 体一 錯一

g一 Fhd 一「 0 ・m一 6 一 4

r一

T1 ' μ s

252

(37)

-

また、 この機構によってシミュレーシ ョ ンすると交換積分J値は -0.4----0.6 rnT が見積られた。 したがって、 両者は媒体は異なるが同じ距離にフ ェノチアジンと ビオローゲンが固定されていると考えられる。 また、 CIDEP シグナルの減衰速度 のマイクロ波強度依存性より求めたラジカル対のT1は過渡吸収より求めた高磁場

時のラジカル対の寿命とほぼ一致した。 従って、 高磁場時 (H>O.3T)のラジカ jレ対の寿命はスピン ー格子緩和過程によって支配されている事がわかった。

このCIDEP スペクトルから求めたラジカル対のT1をThrough-Ring C D錯体系 とAOT逆ミセル系で比較した(表5 - 3 )。 ラジカル対のT1はThrough-Ring C D 錯体系の方がAOT逆ミセル系より約5倍程度大きくなり、 スピン -格子緩和速度は Through-Ring C D錯体系の方がAOT逆ミセル系より約5倍程度遅いことがわかっ

以上述べた過渡吸収スペクトルとCIDEP スペクトルの結果から磁場効果に及ぼ す2つの分子組織体が提供するミクロ環境効果を吟味した。 ラジカル対の減衰速 度に及ぼす磁場効果の大きさはThrough-Ring C D錯体系の方がAOT逆ミセル系よ

り約1 0倍程度大きくなった。 また、 CIDEP スペクトルより求めたラジカル対の LはThrough-Ring C D錯体系の方がAOT逆ミセル系より約5倍程度大きくなった (表5 - 3 ) 0 2つの結果は良く一致しており、 磁場効果に及ぼす分子組織体の 効果はスピン-格子緩和過程に及ぼす媒体の効果であることが明らかになった。

- 253 -

(38)

司�

5 - 6 結論

本章では時間分解E S R測定を行い、 C 1 D E Pを解析することで光誘起電子 移動反応に対する磁場効果の反応機構を詳細に調べた。 メチレン鎖長1 2のフ ェノ

チアジンービオローゲン連結化合物のThrough-Ring C D錯体系の時間分解E S R を測定するとE/A/E/AパターンのC 1 D E Pシグナルが観測された。 このスペク

トルはラジカル対の状態のスピン分極を示すスピン相関ラジカル対機構によって 説明できた。 従って、 レーザーフォトリスで観測されている2つのラジカル(フ ェノチアジンカチオンラジカルとビオローゲンカチオンラジカル〉はラジカル対 として振る舞っていることがこのC 1 D E Pスペクトルによって確かめられた。

また、 C 1 D E Pをこの機構によってシミュレーシ ョ ンすると求められた交換 積分Jの絶対値はメチレン鎖長の増加に伴って小さくなった。 この結果は第4章 の4 - 6で述べたゼロ磁場での逆電子移動反応速度がJ(スピン交換積分〉のD - A間距離依存性によって支配されているという説明と一致した。

また、 C 1 D E Pシグナルの減衰速度のマイクロ波強度依存性より求めたラジ カル対のT I (スピン -格子緩和速度)は第4章で行った過渡吸収法より求めた高 磁場時のラジカル対の寿命とほぼ一致した。 従って、 高磁場時 (H>O.3T)のラ ジカル対の寿命はスピン -格子緩和過程によって支配されている事がわかった。

従って、 この磁場効果が “ スピン緩和機構" であることがC 1 D E P測定によっ て確かめられた。

AOT逆ミセル系ではブロードなemissionスペクトルが観測された。 励起三重

項機構の寄与を多く入れることでC D系と同様な機構で説明できた。

2つの系(C D系とA 0 T逆ミセル系〉で観測されたとCIDEP スペクトルの機 構がスピン相関ラジカル対機械という結果より、 超分子構造でのラジカル対はl 重項と3重項が混じりあったラジカル対として存在することがわかった。 従って、

磁場の無い状態では、 超分子構造でのラジカル対の寿命(逆電子移動反応〉はl 重項と3重項が混じったラジカル対の磁気的性質(交換相互作用の距離依存性) で支配されることが初めて示すことができた。

第4章の過渡吸収 法による結果と本章のC 1 D E Pの結果の比較を行い、 フ ェ

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(39)

四司咽圃

ノチアジンービオローゲン連結化合物のThrough-Ring C D錯体系とA 0 T逆ミセ jレ系を例にとり、 磁場効果に及ぼすミクロ環境効果を検討した。 ラジカル対の減 衰速度に及ぼす磁場効果の大きさとC 1 D E Pより求めたラジカル対のT1 はTh rough-Ring C D錯体系の方がA 0 T逆ミセル系より同程度大きくなった。 従って、

磁場効果に及ぼす超分子構造の効果はスピンー格子緩和過程に及ぼす媒体の効果 であることが明らかになった。

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第5章 参考文献

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参照

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