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博 士 ( 水 産 学 ) 黄 斗 湊

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 学 ) 黄

  

斗 湊

学 位 論 文 題 名

音 響 を 用 い た 底 魚 資 源 量 の 推 定 に 関 す る 基 礎 的 研 究

【目的】

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

今日、音響学的手法を用いた水産資源量の推定技術は計量魚群探知機 の出現により実用段階にある。しかしながら、その多くは表中層性の多 獲性魚類を対象としており、底棲魚類を対象とした音響資源調査はあま り成果が現れていない。その理由は、底魚(そこうお)の音響資源調査に はぃくっかの障害があり必要な精度が得られないからである。底魚の音 響資源調査法がより高精度化し普及するためには、早急に解決しなけれ ばならない

3

つの問題点がある。

  

第1 は、生物の特性に起因する問題である。魚の形状、鰾の有無、魚群 の 分 布形 態 など の生 態 的な 特徴 は 音響 資源 調 査に 大き く 影響 する 。

  

第2 は、魚群探知 機の技術的な問題である。魚探信号の海底識別や海 底 オフセットの決 定方法、魚種判別 などは未だに不確 定要素が多い。

  

第3 は、物理的な 問題である。特に、船底装備の単一ビームトランス デューサを用いた計量魚群探知機では、海底上のデッドゾーンとぃわれる 探知不能域の発生は避けられず、底魚資源量の推定に大きな誤差をもた らす。

  

本論文は、音響的手法を用いて底魚資源調査を行う際に問題となる、

こ れら

3

つの問 題点を明らかにす るとともに、誤差を軽減するための方 法を論じたものである。

【方法】

  

束シナ海において着底トロールで漁獲された魚のうち主要魚種につい

て、魚体形状の分類や鰾の有無の調査を行い、そのうち3 魚種(ボラ、アイ

(2)

ナ メ 、 メ イ タ ガ レ イ ) の タ ー ゲ ッ ト ス ト レ ン グ ス を 水 槽 に お い て 測 定 し 、 そ の 姿 勢 特 性 と 体 長 依 存 性 を 調 べ た 。 ま た 、 若 底 ト ロ ー ル で の 漁 獲 デ ー タ と 計 量 魚 群 探 知 機 に よ る 音 響 デ ー タ を 比 較 し 、 そ の 両 者 か ら 魚 の タ ー ゲ ッ ト ス ト レ ン グ ス を 推 定 し 、 魚 種 別 、 海 域 別 に そ の 値 の 検 討 を 行 っ た 。   次 に 、 海 底 エ コ ー の 形 成 過 程 を 理 論 的 に 検 討 し 、 従 来 の 魚 探 技 術 で 使 わ れ て い る エ コ ー レ ベ ル 法 に よ る 海 底 識 別 の 不 安 定 さ を 調 べ た 。 そ し て 、 海 底 エ コ ー 波 形 の 立 ち 上 が り の 傾 き が 変 化 す る こ と か ら 、 海 底 エ コ ー 波 形 の 微 分 波 形 に 注 目 し 、 こ の 微 分 波 形 に よ る 海 底 識 別 法 お よ び 魚 群 エ コ ー の 積 分 層 の 下 限 を 決 め る 海 底 オ フ セ ッ ト に つ い て 検 討 し た 。 そ し て 、 現 場 デ ー タ に 対 し て 、 こ れ ら 両 方 法 で の 海 底 識 別 を 行 い 比 較 を 行 っ た 。

  次 に 海 底 デ ッ ド ゾ ー ン に 関 し 、 そ の 体 積 の 理 論 的 計 算 を 行 う と と も に 、 海 底 エ コ ー に マ ス ク さ れ た 魚 群 エ コ ー 波 形 を 、 海 底 直 前 の エ コ ー 波 形 の 形 状 を 用 い て 求 め る こ と に よ り 海 底 デ ッ ド ゾ ー ン で 失 わ れ る 魚 群 量 を 推 定 し 、 こ れ を 用 い て 底 魚 の エ コ ー 積 分 値 の 補 正 を 行 っ た 。

【結果】

1. 音 響 資 源 調 査 で 問 題 と な る 底 魚 類 特 有 の 生 物 的 特 徴 は 、 魚 体 形 状 や 鰾 の 有 無 な ど の 個 体 の 形 態 的 特 徴 と 、 魚 群 の 規 模 や ゛密 度 な ど魚 群 の分 布 形 態 の 特 徴 に 分 け ら れ る 。

2. 音 響 散 乱 の 主 要 因 は 鰾 と さ れ て い る が 、 底 魚 類 に は マ ナ ガ ツ オ 、 ク   サ ウ オ 、 ア イ ナ メ 、 カ レ イ な ど の よ う に 無 鰾 魚 が 比較 的 多く 、 その タ ー ゲ ッ ト ス ト レ ン グ ス は 浮 き 魚 に 比 べ て 一 般 に 小 さ い 。 3. 底 魚 を 紡 錘 型 、 側 扁 型 、 縦 扁 型 、 延 長 型 に 分 類 す る と 、 後3者 が 比 較   的 多 い 。 そ の タ ー ゲ ッ ト ス ト レ ン グ ス の 姿 勢 特 性 は 魚 体 形 状 に よっ て 大   き な 特 徴 を も ち 、 扁 平 な 体 形 の 魚 ほ ど 、 そ の 反 射 指 向 性 が 鋭 い 。 4. 東 シ ナ 海 に お け る 着 底 ト ロ ー ル の 漁 獲 量 と 体 積 後 方 散 乱 強 度SVか ら 算 出 し た 体 重lkg当 た り の タ ー ゲ ッ ト ス ト レ ン グ スTSAigは 、 海 域 に よ っ   て異なり25kHzの低周波で‑35〜  ‑25 dB、lOOkHzの高周波で‑40r―28 dBであっ   た 。 な お 、 魚 群 密 度 とSVの 相 関 は 悪 く 、 多 魚 種 の 混 在 に よ るTSの 不 均   一 性や漁獲効 率の不安定 性がその理 由と考えら れた。

(3)

   フセット値の曖味さは、底魚資源量推定の誤差要因のーつである。エ    コーレベルの閾値で海底検出を行う場合、閥値が大き過ぎると海底検    出 不 能 回 数 が 増 え 、 小 さ 過 ぎ る と 海 底 誤 検 出 回 数 が 増 え る 。 6 .海底エコー波形 は音響パルス波形関数、トランスデューサの指向性    関数,そして海底の音響反射特性によって決まる。その立ち上がりの電    圧変化率が最大になる点は唯一明確で、かつ船体動揺や海底傾斜によ    るレベル変動や濃密魚群の出現に対して安定な海底基準となる。また    こ の と き 海 底 オ フ セ ッ ト 値 を 最 小 に す る こ と が で き る 。 7 .噴火湾および東シナ海で得られた海底エコー波形を、従来の方法と、

   本研究で考 案した電圧最大変 化率法の2 種類の海底処理を行って比較    したところ、新しい海底基準による魚群エコーのSV が従来の海底処理    によるものと比べて4 c‑,6clB 増加した。

8 .底魚の音響資源 調査において、海底上の魚群エコーが海底エコーに    マスクされるデッドゾーン体積は、音響パルス長とビーム幅および水    深の物理的関係で決まる。

9 .海底上の魚群分 布密度の変化パターンは発散型、平行型、収束型に    分類することができ、海底上のエコー波形の形状から、そのいずれか    を推定し、デッドゾーン内の魚群エコー波形を外挿することができる。

10. 現 場の音響資源調査 のデータを用いてデッドゾーン補正を行い、再    評価したところ、噴火湾のスケトウダラ魚群で 2 v3clB 、東シナ海の着    底魚群では最大17dB も増加した。このことはデッドゾーンによる過小    推定誤差は着底魚群で重大であり、デソドゾーン補正が不可欠なこと    を示した。

   これらのことから音響的手法を用いて底魚の音響資源調査を実施する ためには、まず海底エコーの識別を確実なものにし、魚群を海底から明 確に分離して、魚群エコー積分のための海底オフセットを最小に設定す ることが必要である。さらに、デッドゾーン補正を行えば、従来実用的な 精度を得ることのできなかった、底魚の資源量の推定が可能になる゛であ ろう。

   今後さらに、魚の散乱周波数特性を利用した魚種判別や曳航式のトラ

ンスデューサなどを用いた船体動揺による測定誤差の軽減などが課題と

して残された。

(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    梨 本 勝 昭 副査    教授   天下井    清 副査    助教授    飯田浩二

学 位 論 文 題 名

音 響を用 いた底魚 資源量の推定に関する基礎的研究

  現 在、 地球 規模 で環 境を 保全 することの重要性が論議される中で、環境を破壊する こと なく 、海 洋生 物資 源を 合理 的に管理しながら有効的に利用することが強く求めら れて いる 。そ のた めに は対 象と する海洋生物資源の生物的特性と同時に、その資源の 量的 、質 的な 評価 を正 確に 行う ことが最も重要である。しかし、対象は水中に生活す る 生 物 で あ り 、 絶 対 量 、 体 長 組 成 な ど を 知 る こ と は 容 易 で は な い 。   今 まで 資源 量を 推定 する 方法 としては直接計数法と間接推定法によって行われ、前 者で は資 源の 一部 を目 視や 部分 観察、産卵数、魚群探知機などによって計数して全体 の資 源量 を推 定す る方 法が とら れ、後者では資源量と関連する情報(体長組成の変化

、単 位漁 獲努 力当 たり の漁 獲量 )を得て、比あるいは回帰によって推定するものであ る。 広範 囲に わた って 、迅 速に 、連続的に、正確な資源量を評価することが大きな課 題と なっ てい る。

  最 近の 電子 技術 の発 達に 伴っ て、音響学的手法を用いた海洋生物資源量を推定する 技術 が大 いに 注目 され 、1980年 代になって計量魚群探知機の出現によって実用的段階 にな って いる 。し かし 、現 在の ところ、多くはニシン、イワシなどの表中層性の多獲 性魚 類を 対象 とし てお り、 底棲 魚類を対象とした音響資源調査については十分な成果 が得 られ てい ない のが 現状 であ る。この原因として次に挙げるような三つの大きな問 題 点 が あ っ て 、 十 分 な 推 定 精度 を 得 る こ とが できな いた めで ある 。第1は 生物の 特 性に 起因 する 問題 で、 魚の 形状 、鰾の有無による音響学的特性、また魚群の分布形態 など の生 態学 的特 性は 音響 学的 資源 調査 に大 きく 影響 する。 第2は計量魚群探知機の 技術 的問 題で 、魚 群探 知機 の信 号の海底識別や積分の下限値となる海底オフセットの 決定 方法 、魚 種判 別な どに つい ては 未だ に十 分な 技術 として 確立されていない。第3 は物 理学 的問 題で 、特 に船 底に 装備した単一ビームトランスデューサーを用いた計量 魚群 探知 機で は海 底上 の一 定の 空間領域は探知が不能となり、底魚資源量を推定する 場合 には 大き な誤 差を 生ず るこ とになる。これらの諸課題を急いで解決することが強

(5)

  申請者はまず音響学的手法を用いて底魚資源調査を行って、資源の量的、質的評価 を行う場合の調査法の課題について考察した。次に東シナ海を対象に着底式トロール 網と計量魚群探知機を使って調査を行い、漁獲された底魚の主要魚種について魚体の 形状の分類、鰾の有無を調べ、代表的な3魚種(ボラ、アイナメ、メイタガレイ)の ターゲットストレングスを無反響水槽内において測定し、姿勢特性と体長の影響につ いて明らかにした。また、調査で得られた漁獲資料と音響資料を使って魚種別、海域 別にターゲットストレングスを推定し、その妥当性について検討した。海底エコー波 形の形成過程を理論的に考察し、エコーレベル法による海底識別の不安定さを指摘し た。そして、海底エコー電圧波形の微分値の最大部分は常に海底基準を表すことに注 目して、正確な海底基準と海底エコーの積分層の下限値を決定する海底オフセットに ついて検討した。さらに、魚群探知機の機能上から生ずる探知不能な空間領域(デッ ドゾーン)内の魚群量を推定する方法について提案し、音響を用いた底魚資源量の推 定 方法 の 課 題 と 推 定 精 度 を 向 上す る ための 技術 的方 法に ついて 論じ てい る。

  審査員一同は以下の諸点を高く評価した。

1.東シナ海における底魚類はマナガツオ、クサウオ、アイナメ、カレイなど無鰾魚 が多く 、夕 ーゲ ット ストレ ング スは 浮魚 に比較 して小さいことを指摘した点。

2.底魚の体型として側扁型、延長型が比較的多く、ターゲットストレングスは姿勢

、魚体形状によって大きな特徴を示すこと。また、扁平な体型の魚ほど反射特性は鋭 いことを指摘した点。

3.海底エコー電圧の波形は音響パスル波形、トランスデューサの指向特性、海底の 音響反射特性によって変化するが、この波形の電圧変化率の最大を示すところは船の 動揺、海底傾斜に影響を受けず、常に真の海底を示すことに注目して、正確な海底基 準 の 決 定 と 海 底 オ フ セ ッ ト を 最 小 に す る こ と を 可 能 に し た 点 。 4.海底付近において海底エコーにマスクされた魚群エコー波形を海底直上のエコー 波 形 か ら 予 測 し て 、 デ ッ ドゾ ー ン 内 の 魚 群 量 を 推 定 して 補 正 し 得 た こ と 。   以上の諸点は音響を用いて底魚資源量を正確に算定する技術的発展に大いに寄与す る た め の 重 要 な 基 礎 的 知 見 を 得 た も の と し て 高 く 評 価 で き る 。   よって審査員一同は本論文が博士(水産学)の学位論文として価値あるものと認定 した。

参照

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