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博 士 ( 水 産 科 学 ) 佐 藤 圭 一

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 佐 藤 圭 一

     学 位論 文題名

    Phylogenetic systematics of the deep‑water     catshark genus ノゆ 〆おf 勿〆 勿 S

(ChondriChthyeS , CarCharhiniformeS ,SCyliorhinidae )

( ヘ ラ ザ メ 属 魚 類 の 系 統 分類 学的 研究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

ヘ ラ ザメ 属魚 類はメジ口ザメ目トラザ メ科に属し、現在34有効種からなる大きな分類群で、全 世界に分布する深海性魚類である。本属魚類については、これまでに種分類に関する多くの研究(例 え ばSpringer,

1979; Compagno

1984)

があるが、系統分類学的研 究は数少ない(例えばNakaya

1975; Compagno

,1988)。また、 近年ヘラザメ属内にいくっかの種グループが存在するこ とが報告 さ れ( 例 えば

Nakaya and Sato

,1999)、本属魚類について系統分類学的見地から再検討 する必要 が ある 。

そこで本研究は へラザメ属の系統分類を確立することを目的として、以 下の研究を行った:1) 形態的データの分岐学的解析による、本属魚類 の単系統性および近縁群との系統類縁関係の推定;

2

) 分岐 仮説 に基 づく へラ ザメ属魚類の分類体系の提唱;3)系統仮説に基づく本属の生物地理お よ び形 質進 化 の考 察。

材料 と方 法: 本研 究で は、 ヘラ ザ メ属

15

種 を含 むト ラザ メ科 の13属31種、 およ び卜 ラザメ科 の姉 妹群 とみ なさ れた タイワンザメ亜科の2属

3

種を対象として比較解剖を 行い、形態観察を行っ た。 筋肉 ・骨 格 系、 頭部 感覚 器官、および外部形態から計45変換 系列を得て、コンピュータープ ログラムPAUP ver.3.Osを用い、トラザメ科の系統解 析を行った。ヘラザメ属には、すべての変換 系 列 が 一 致 す る 種 によ り構 成さ れる

5

つの

Morphotype

を 定義 し、

Morphotype

単 位で 解析 を 行っ た 。分 岐分 析の 結果 、12本の 最節 約的 な分 岐 図( 樹長

59

、一致指数0.80)が得られたが、いずれ

(2)

の最節約樹においても、ヘラザメ属とその近縁群の姉妹群関係およびへラザメ属内の分岐関係が一

致 し た こ と か ら 、 こ れ ら の 厳 密 合 意 樹 を 系 統 解 析 の 結 果 と し て 採 用 し た ( 図 1) °

  系 統 類 縁 関 係 : 厳 密 合 意 樹 か ら 判 断 す る と 、 ト ラ ザ メ 科 内 に は 以 下 の4つ の ク レ ー ド ( 系 統 群 )

が 存 在 す る 。 ク レ ー ド1 Schroederichthys、 ナ ヌ カ ザ メ 、 ト ラ ザ メ 、Poroderma属 ; ク レ ー ド2:

AulohalaelurusAtelomycterus属 ; ク レ ー ド3Asymbolus、 ヤ モ リ ザ メ 、 イ モ リ ザ メ 、 ヘ ラ ザ メ 、 ナ

ガ サ キ ト ラ ザ メ 、HaploblepharusHolohalaelurus属 ; ク レ ー ド4:イ モ リ ザ メ 属 の 一 種P

melanobranchus。 し か し 、 こ れ ら の4ク レ ー ド は 多 分 岐 と な り 、 各 ク レ ー ド 間 の 系 統 類 縁 関 係 は 未

解 決 と な っ た 。 こ れ ら の ク レ ー ド の う ち 、 ヘ ラ ザ メ 属 を 含 む ク レ ー ド3は 、Asymbolus. ヤ モ リ ザ

メ ・ イ モ リ ザ メ ・ ヘ ラ ザ メ 属 か ら な る ク レ ー ド と、 ナ ガサ キト ラ ザメ .Haploblep轟ロr恥・ チ′ 。 め舶 血emrHs

属 か ら な る ク レ ー ド に 二 分 岐 す る 。 こ の う ち 、 前 者 の ク レ ー ド の 分 岐 関 係 か ら へ ラ ザ ヌ 属 に 関 す る

以 下 の 系 統 仮 説 が 導 か れ た 。1) ヘ ラ ザ メ 属 は イ モ リ ザ メ 属 にmefロ 門D6′ ロncHsを 除 く ) と 姉 妹 群 を

な し 、 こ れ ら は 胸 鰭 のmetapterygialaxisが 伸 長 す る こ と 、spiracularisが 存 在 し な い こ と な ど の4

の 共 有 派 生 形 質 で 支 持 さ れ る ;2) ヘ ラ ザ メ 属 は 、 前 眼 窩 突 起 が 細 長 い こ と 、 動 眼 筋 の 上 斜 筋 と 下

斜 筋 が 基 部 で 接 す る こ と な ど の8個 の 共 有 派 生 形 質 で 支 持 さ れ る 単 系 統 群 で あ る ;3) ヘ ラ ザ メ 属

Morphotype13、 お よ びMohotype45か ら な る2つ の ク レ ー ド に よ り 構 成 さ れ 、 そ れ ぞ れ7個 お

よ び4個 の 共 有 派 生 形 質 で 支 持 さ れ る ; 4Morphotype13の ク レ ー ド は 、Mohotype12お よ び

Morphotype32つ の ク レ ー ド に よ り 構 成 さ れ る 。

  分 類 体 系 : 本 研 究 で は 上 述 の 系 統 仮 説 に 基 づ き 、 ヘ ラ ザ メ 属 内 に2亜 属 を 認 め る 以 下 の 新 分 類 体

系 を 提 唱 し た 。

Genus Apristurus Garman, 1913   /¥7jメ属

       Type species: Scylliorhinus indicus Brauer, 1906       SubgenusApristurus subgen. nov., manuscript name    l¥ 7 iメ 亜 属        Type species: Scylliorhinus indicus Brauer, 1906       Morphotype 4 : 8

      Morphotype 5 : 4

      Subgenus Parapristurus Fowler, 1934, nom. nov., manuscript name    7 7メ 1¥ 7iメ亜属        Type species: Catulus spongiceps Gilbert, 1895       Morphotype l : 1

       ‑  101 ‑

(3)

    Morphotype2

:1種

    Morphotype3

:11種

さ らに 本 研究 で系 統解 析に 用い るこ との でき なか った 本属 魚類

9

種は、既知の 記載情報などから

Morphotype

の 所 属 は 不 明 で あ る が 、 す べ て へ ラ ザ メ 亜 属 に 属 す る も の と 判 断 さ れ た 。

  

生 物地理:トラザメ科魚類の棲息域は大陸プレートに限定 され、海洋プレートにはほとんど棲息 しな いことが報告されている(Springer,1982)。本研究では、世界の海洋をプレートの分布に基づき

9

区 分し 、ヘラザメ属魚 類の分布データから、Wiley (1988)などによる分断生物 地理的手法を用い て 地域 分 岐図 を求 めた 。そ の結 果、 ヘラザメ属魚類の分布域は以下の4地域に区分された:1)東 ユ ーラ シ ア地 域;

2

) イン ド洋 地域 ;

3

) アフ リカ 地域 ;4) 西ユーラシア―南 北アメリカ地域。

地域 分岐図および各種の分布状態から、上述の東ユーラシア ―インド洋地域と西ユーラシア一南北 アメ リカ地域の問に、強い生物地理的な障壁があると推定さ れた。この障壁の主な要因として、ユ ー ラシ ア およ びイ ンド プレ ー卜 と太 平洋プレートの間に存在する超深海域によ ることが示唆され た。

  

本 属魚類の分布バターンをクレードごとに検討した結果、 それぞれの亜属レベルでは全世界的に 分 布す る が、2亜属のい ずれにおいても亜属内のそれぞれのMorphotypeレベルで 、東ユーラシア・

イン ドプレートの低緯度海域に分布するグループと、全世界 の高緯度海域に分布するグループが認 めら れた。

  

ま た、本研究の系統仮説から、ヘラザメ属の共通祖先は、 東ユーラシアまたはインドプレート上 のあ る地域に起源すると推定された。現生のメジ口ザメ目魚 類は新生代の第三紀、始新世に起源し たと 考えられている(Compagno,

1990)

ことから、ヘラザメ属 は始新世に東ユーラシアまたはインド プレ ート上で起源し、それぞれの亜属、Morphotypeに分化し た後、世界各地に分布域を拡大したと 推定 される。

  

形 質進化:本研究で系統分析に用いなかった、胴長、吻長 、唇褶長、腸の螺旋弁数、卵殻の形態 形質 について、得られた系統仮説を基にそれぞれの形質進化 を考察した。胴長は属内で連続性を示 すが 、胴長が10tz以下の短胴種は主にインド太平洋やカリブ 海メキシコ湾などの低緯度地域に限定

(4)

して分布 し、それぞれの亜属で独立して出現したと推定された。 吻長はへラザメ属内のMorphotype

1‑2

で顕 著に 伸長 し、 系統 樹上 で1回だけ生じたと 推定された。唇褶長はMorphtype l‑2および4‑5 で、下顎 の唇褶長が上顎のものより相対的に短い。しかしそれら の唇褶を支持する骨格系の状態が 異なるこ とから、Morphotype1−2と4‑5に見られる唇褶の状態は、相同ではないと判断された 。腸 の螺 旋弁 数は 、ヘ ラ ザメ 亜属 では

12

以 上、 アラ メヘ ラザメ亜属では12以下であり、後者の1種テ ン グヘ ラザ メの み例外的に12以上であった。テン グヘラザメでは腸が他の種よりも短く、それを 機能的に補填するために 二次的に螺旋弁数が増加したと推定された。卵殻の形態については、トラ ザメ類の卵 殻は一般に両端にtendrilをもっが、ヘラザメ属魚類ではtendrilが退化・消失する傾向が 認められた。その要因として、砂泥質の海底や緩やか で安定した水流など深海底の環境に適応した 形態であることが推定された。

ナヌカザメ属 卜 ラ ザ メ 属

ヤモリザメ属

イモリザメ属

ヘラザメ属

ナガサキ卜ラザメ属

図1.本研究で示されたトラザメ科の分岐関係(厳密合意樹)

103

(5)

学 位 論文 審 査 の 要旨 主 査    教 授    仲 谷 一 宏 副 査    教 授    山 本 弘 敏 副 査    助 教授    矢部    衛

     学位論文題名

    Phylogenetic systematics of the deep‑water     catshark genus/4 ウダぬ f 勿〆銘S

(ChondriChthyeS ,CarCharhiniformeS ,SCyliorhinidae )

(ヘラザメ属魚類の系統分類学的研究)

  

ヘラザヌ属魚類はメジ口ザメ目トラザヌ科に属し、現在34有効種からなる大きな分類 群である。本属は扁平な吻部や尾鰭と接する長い臀鰭基底を持つことなどで特徴づけら れ、極海を除く全世界に分布する深海性魚類である。本属魚類の種分類に関しては、多く の研究があるが、極めて混乱した状況にあり、また系統分類学的研究は数少ない。近年で はヘラザメ属内にいくつかの種グループが存在することが報告されているが、系統分類学 的な根拠は示されておらず、本属魚類を系統分類学的見地から再検討し、系統関係を反映 した分類体系を構築する必要がある。

  

そこで本研究は、ヘラザメ属の形態的データに基づく単系統性を検証し、近縁群との系 統類縁関係を推定し、さらにその結果に基づいて、系統関係と整合するへラザヌ属の分類 体 系 の 提 唱 し 、 生 物 地 理 およ び 形 質 進 化 の 考 察 す る 事 を目 的と して 行わ れた 。

  

本研究では、ヘラザヌ属15種を含むトラザヌ科の13属31種、およびタイワンザヌ亜 科の2属3種を用い、筋肉・骨格系、頭部感覚器官、および外部形態を比較検討し、得 られた45形質に基づき、分岐分類学的手法により、系統解析を行った。ヘラザメ属はす ぺて の変 換系 列が 一致 する

5 Morphoype

か ら構 成されていることが判明したため、

MO

やhotype単位で解析を行った。その結果、12本の最節約的な分岐図が得られたが、

ヘラザヌ属内および近縁群との関係は何れの分岐図でも一致したため、その厳密合意樹を 構築し、系統解析の結果として採用した。

  

本研究の結果を要約すると以下の通りである。

1

)トラザヌ科内には4つのクレ―ド(系統群)が存在し、ヘラザヌ属はヤモリザヌ属、ナ ガサ キト ラザ ヌ属 等を 含む クレ ード に属 する 。2) ヘラ ザヌ 属は イモ リザ ヌ属Q.

melan

〇branchu量を除く)と姉妹群をなし、これらは胸鰭のmetapteB伽1a姐sカミ伸長す ること、sp】raa】]ansが存在しないことなどの4個の共有派生形質で支持される。3)ヘ ラザヌ属は、前眼窩突起が細長いこと、動眼筋の上斜筋と下斜筋が基部で接することなど の8個の共有派生形質で支持される単系統群で、更に本属は7個および4個の共有派生形 質で支持される2つのクレードにより構成される。4)ヘラザヌ属内の2クレードは、

(6)

分類学的には亜属のランクと考えられ、ヘラザメ亜属釟ユbgenus△靈幽皿usおよびアラ ヌヘラザヌ亜属Sul)genus瓰堕Qd≦也凹なる新亜属を創設し、ヘラザメ属の新分類体 系を提唱した。また、地域分岐図および各種の分布状態から、5)ヘラザメ属魚類の分布 域は4地域に区分され、東ユーラシアーインド洋地域と西ユーラシア一南北アヌリカ地域 の問に何らかの強い生物地理的な障壁があると推定した。この主な要因として、ユーラシ アおよびインドプレートと太平洋プレートの間に存在する超深海域を考えた。6)創設 した2亜属各々には、東ユーラシア・インドプレートの低緯度海域と、全世界の高緯度海 域に分布する2グループが認められた。7)ヘラザヌ属は、始新世に東ユーラシアまたは インドプレート上で起源し、それぞれの亜属、Morphot沖eに分化した後、世界各地に分 布域を拡大したと推定した。更に得られた系統関係や分布などから、8)胴長は属内で様々 で、短胴種は主にインド太平洋やカリブ海ヌキシコ湾などの低緯度地域に限定して分布し ているが、それぞれの亜属で短同種が独立して出現したと推定した。9)長吻種はアラヌ ヘラザヌ亜属に見られ、これらは系統樹上で1回だけ生じたと推定した。10)唇褶長に関 し ては 、下 顎の 唇褶 長が 上顎 のも のより相対的に短い状態が異なるmophoCpeに見ら れたが、支持する骨格の状態が異なることから、これらは相同ではないと判断した。n) 腸の螺旋弁数は、ヘラザメ亜属では12以上、アラヌヘラザヌ亜属では

12

以下であるが、

アラメヘラザヌ亜属に属するテングヘラザメには12より多い状態が見られた。これは本 種の腸が他の種よりも短いために螺旋弁数が二次的に増加したと推定した。12)トラザヌ 類の卵殻は一般に両端にtendrnをもっが、ヘラザヌ属魚類ではtendmが退化・消失する 傾向が認められた。これは砂泥質の海底や緩やかで安定した水流など深海底の環境に適応 した形態であると推定した。

  

以上により申請者の研究成果は魚類系統分類学及び水産学の分野に大いに貢献したもの と高く評価され、審査員一同は本研究の申請者が博士(水産科学)の学位を授与される十 分な資格を有すると判定した。

参照

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