学 位 論 文 題 名
工 学 博 士 栄 坂 俊 雄
バ ラ メ ー タ 変動 に 対 す る ロバ ス ト 制 御 系 設計 法 に 関 す る研 究
学 位 論 文 内 容 要 旨
設 計 と は 合 成 さ れ た シ ス テ ム が 、 全 体 と し て 望 ま し い 特 性 を も っ よ う に 、 与 え ら れ た シ ス テ ム に 付 加 す べ き シ ス テ ム を構 築 す る こ とで あ る 。 こ の とき 与 え ら れ たシ ス テ ム に 関 す る 情 報 が あ る 程 度 不 正 確 でも 、 合 成 後 のシ ス テ ム の 特 性が 設 計 時 の 目的 を 満 た してい ること が望ま れる 。帯I亅往 卩系の 設計に おいて は、 与えら れる制 御対象 のモデ ル は 、(1)係 数 パ ラメ ー タ の 同 定誤 差 、(2)高 周 波数 領域 の同定 誤差、 (3)低次 の制御 器 を 設 計 す る た め の 簡 略 化 、(4)非線 形 要 素 や 雑 音の 無 視 、(5)環 境 の 変化 な ど に よ る 変 動 、 な ど によ り 実 際 の 制往 卩 対 象 と は異 な る ( 以 下、 こ れ ら 相 違 を変 動ま たは不 確かさ と 総 称 す る ) 。 し た が っ て 、 実 際 の 制御 対 象 が 設 計時 に 用 い た モ デル と 異 な っ ても 所 期 の 制 御 性 能 が 保 存 さ れ る こ と が 実 用上 極 め て 重 要で あ る 。 こ の とき 、 よ り 大 きな 制 御 対 象 の 変 動 に 対 し て 着 目 す る 制 御 特性 の 変 化 が 少な い 程 、 制 御 系は そ の 制 御 特性 に 関 してロ バスト である という 。
制 御 対 象 の 変 動 は 大 き く 構 造 的 変 動(structured uncertaint,ies)と 非 構造 的 変 動 (unstructured uncertainties)に分 類 さ れ る 。前 者 は 状 態 方程 式 の 係 数バラ メータ の変 動 や 特 異 摂動 な と . あ る種 の 構 造 的 特徴 を 保 存 す る変 動 で あ り 一 般に 時間 領域で 扱うた め 時 変 ・ 非 線 形 変 動 を 考 慮 で き る 。 ー方 後 者 は 変 動の 構 造 を 規 定 せず 、 そ の 大 きさ だ け が 制 約 を 受 け る 変 動 で あ り 、 そ の 意味 で は ク ラ スが 広 い が 、 周 波数 領 域 で 記 述さ れ る た め 時 変・ 非 線 形 変 動を 扱 い に く い。 保 存 す べ き制 御 特 性 と し て、(a)定常特 性、(b) 有 限 ( ま た は 全 ) 周 波 数 帯 域 に お け る 信 号 伝 達 特 性 、(c)安 定 性 、 が 重 要 で あ る 。 変 動 の ク ラ ス や 保 存 す べ き 制 御 特 性 を さ ら に 特 定 し て 多 数 の ロ バ ス ト 制 御 系 設 計 法 ・ 解 析 法 が 研 究 さ れ て い る が 、 最 も基 本 的 な 変 動で あ る バ ラ メ ー夕 変 動 に 対 し制 御 特 性(a)〜 (c) を同 時にか つ適切 に考慮 できる 汎用 的なロ バスト 制御系設計法に関する研 究 はほと んと ないよ うに思 われ る。
本 研 究 の 目 的 は 、 制 御 対 象の 状 態 方 程 式に お け る 係 数 パラ メ ー 夕 変 動に 刔 し 、 上 記 のrり 御特 性(a)〜 (c) の保 存の度 合いを 適切に 考慮できる汎用的かつ実用的な口バスト
制御系設計法 を構築することである。以下 に論文の構成に従い、本研究の主要な成果 を示す。
第1章 は緒諭であり、 本研究の背景、動機、目的 、意義を明らかにし、論文の 構成 を示す。
第2章では従 来の主な口バスト制御系設 計法↓こついて概観し、分類する。またこれ に基づぃて本 研究の位置付けを示す。さら に、ロバスト制御系の設計法として重要と 思われる条件 を(a)べースとする設9f法、(b)ロバスト制御方策、それぞれについてつ ぎのようにま とめた。すなわち、(a)べースとする設計法に望まれる性質として、(1) 多 様な 変動のクラスが 表現できること、(2)広いク ラスの制御系を包含し、理論 限界 ま での 制御特性を実現 できること、(3)与えられた 口パスト性実現条件を満足す る制 御 器を 容易に導出でき ること、(4)従来の研究で得 られた結果を容易に取り入れ られ ること、(b)ロ バスト制御方策に望まれる性質として、(1)広いクラスの実際的な変動 に 効果 があり、その効 果の度合いを調節できること 、(2)与えられた変動のクラ スに
(保守的にならず)必要かつ十分に対応するロパスト性実現条件であること、(3)ロバス ト性と他の制御仕様が設計上(できれぱ制御器の構造上も)分離できること、(4)実用上 重要な次の言 昔問題、すなわち、制御器の 次数の指定、過大なゲインや操作量飽和、
デ イジ タル 化に 伴 う問 題、 現場 での調整、などに 適切な対応(必要なら合理的 なト レードオフ) ができること、が重要である 。またこの観点から本研究で開発した設計 法の特徴を示した。
第3章 では最小位相特 性を持つ制御対象のパラメ ー夕変動に対する実用的なロ バス ト制御系設言「法であるロパスト・モデル・マッチングを体系的に整理し、残されている 問 題を 指摘 する 。 さら に非 最小 位相特性を持つ制 御対象に適用できるように拡 張す る。すなわち、3.1においてロバスト・モデル・マッチングの目的・原理・特徴を示し、3.2 で 設計 に必要な基本的 概念の定義を行う。これらの 準備のもとで、3.3で最小位 相系 の制御対象に 対する設計法の標準的設計手 順を示す。さらに実用上重要ないくっかの 応 用的 問題を扱う。ま た3.4では従来提案されてい るHoo制御や2‑Delay制御の手 法を 用い、非最小 位相特性を持つ制御対象に適用できるロバスト・モデル・マッチング設計 法を提案する。
第4章ではデュアル・モデル・マッチングによる新しい口バスト制御系設計法を提案 する。まず、4.1でデュアル・モデル.マッチングの原理を示す。っぎに4.2では、これ に基づぃてロ バストな定常特性を得るため の制御器の必要十分条件を導出し、従来得 られていた安 定有理関数行列による既約分 解表現による必要十分条件と比較してその 特徴を示す。さらに4,3において口バスト・モデル・マッチングの原理を、一般的2自由
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度制御系設計法であるデュアル・モデル・マッチングによって実現するロバスト制御系 設計法を提案する。
第5章では 第3章お よび第4章で示し た設計法を用い、電気位置サ―ボのロバスト制 御系 設計法 を確立 する。5.1で電気 位置サ―ボ系におけるロバスト制御問題について 整理し従来の研究を紹介する。5.2でロバスト・モデル・マッチングおよびデュアル・モ デル.マッチングを適用した設計手順をまとめる。5.3では前節の設計手順を現実のDC モータに適用した実際の設計例を示す。5.4で本設計例について数値シミュレーション およ び実験 によっ て検討 する。5.5では新たにEdge定理に基づくロバスト安定性の必 要十分条件を導出した。これを用い電気位置サーボ系は、ロバスト・モデル・マッチン グおよびデュアル・モデル・マッチングの適用によって、任意の有界なパラメー夕変動 に対 して、 常にロバスト安定化可能であることを明らかにする。また5.6で従来の設 計 法 と の 比 較 を 行 い 本 設 計 法 の 特 徴 を 示 す 。5.7は 本 章 の ま と め で あ る 。 第6章では これまでと立場を替え、デイジタル市u御系の制御器の有限語長実現によ る量 子化誤 差を扱う。有限語長実現は制御器のパラメータ変動として捉えることがで き、その対策は制御器に関するロバスト市Ij御系構成問題として位置付けることができ る。 すなわ ち自分自身の変動に対してロバストな制御系構成問題であり、制御対象の 変動に対するロバスト帛lJ御系構成問題より難解な問題である。まず6.1で問題を整理 する 。っぎ に6.2で制御系における2種類の量子化誤差を定義する。6.3で設計の考え 方を 提示し 、6.4でそ の1つの 実現法 を示す 。6.5で2つの設計 例を用いた数値シミュ レ ― シ ョ ン に よ っ て そ の 有 効 性 を 検 討 す る 。6.6は 本 章 の ま と め で あ る 。 第7章 は 結 言 で あ り 研 究 の 成 果 を ま と め 、 今 後 の 課 題 に つ い て 述 べ る 。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨
主査 教授土谷武士 副査 教授長谷川淳 副査 教授島 公脩
副査 教授田川遼三郎(旭川工業高等専P1 学校長)
制 御 系 の 設 計 に お い て は 、 与 え ら れ る 制 御 対 象 の モデ ルは 、1 兼々 な 嬰 因 によ り実 際の 制御 対 象と は異 なる 。し たがって、実際の制
i恥J .象が設計 時 に 用 い た モ デ ル と 異 な っ て も 所 期 の 制 御 性 能 が 保 存 さ れ る 、 い わ ゆ る ロ バ ス ト な 制 御 系 を 実 現 す る こ と が 実 用 上 極 め て 重 要 で あ る 。
これま で、制御対象のモデルの変動のクラスや保存すべきiliI 亅御特性を 特定して多 数のロノくスト制御系設言11 法および解析法が研究され ているが、
最 も 基 本 的 な 変 動 で あ る 制御 対象 の状 態方 程式 にお ける バラ メー 夕変 鋤 に 対 し、 次の 基本 的制 御 特性 、す なわ ち、
(a)定常特性、(b) 過渡特性、(c) 安 定 性 、 を 同 時 に 適 切 に 考 慮で きる 汎用 的な 口バ スト 制御 系設 計法 は提 案 さ れていない 。
制 御 対 象 の バ ラ メ ー 夕 変 動 に よ る 制 御 系 の 内 部 変 数 の 変 化 は 、 あ る 種 の 外 乱 に よ っ て 等 価 的 に 置 き 換 え る こ と が で き る 。 し た が っ て 、 こ の 等 価 外 乱 か ら 制 御 量 ま で の 伝 達 関 数 行 列 を で き る だ け ゼ 口 に 近 づ け る こ と
( 近 似 ゼ ロ イ ン グ ) に よ っ て 、 ロ バ ス ト な 制 御 系 を 得 る こ と が で き る 。
本 論 文 は 、 こ の こ と に 着 目 し 、 希 望 す る 目 標 値 応 答 特 性 を 実 現 す る と と も に 、 制 御 系 の 自 由 度 を利 用し て、 等価 外乱 に対 する 近似 ゼ口 イン グ を 達成するこ とによって、′ヾラメー夕変動に対し、上記の制御特性(a )〜(c ) を 適切 に考 慮で きる 汎 用的 かつ 実用 的な ロバスト制御系設計 法をヰ雑築した ものである 。
第
1章は 緒論 であ り、 本研 究の 目的 、意 義を明らかにし、論文のt 尚成を 示している 。
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第2章 で は 、 従 来 の 主 な 『 」 バ ス ト4iIj御 系 設 計 法 に つ い て 概 観 し 、 本 研 究 の 位 置 付 け を 示 す と と も に 、 口 バ ス ト 制f0系 設 計 法 の 、 考 慮 す べ き 重 要 な観点に ついて考察している。
第3章 で は ま ず 、 最 小 位 相 特 性 を 持 つ0iI川I対 象 の バ ラ メ ー 夕 変 動 に 対 す る 実 用 的 な 口 バ ス トlilj御 系 設 計 法 で あ ろ 口 バ ス ト , モ デ ル ・ マ ッ チ ン グに つ い て 、 多 入 力 多 出 力 系 の標 準 的設 計‑T:lilttを ・ よと めて いる 。 さら に、 以下 の 拡 張的 問題 、 すな わち 、(1) 非厩 小位 棚 系のi川j.1|対 象へ の適 用 、(2)厳 密に ロ バ ス ト な 定 常 特 性 の 実 現 方 法 、 (3) 口 バ ス トim賞 器 の 低 次 元 化 、(4) 制 御 器 の 榊 造 の 改 良 、 に つ い て 考 察 し 、 そ れ ぞ れn♀ 決 方 法 を 提 案 し て い ろ 。 第4章 で は 、 線 形 制 御 系 を 包 含 す る 設 計 法 で あ ろ デ ュ ア ル ・ モ デ ル ・ マ ツ チ ン グ を 基 に 、H2お よ びI‑Iooノ ル ム を 導 入 し た 新 し い 口 バ ス ト ホlJ御 系 設 計 法 を 提 案 し て い る 。 ま た 一 般rJル フ イ ー ド ′ ヾ ックi川3・0系 にお いて ロバ ス トな定常 特性を実現する方法を明ら かにしている。
第5章 で は 、 第3章 およ び 第4牽 で 示し た設 ゑ| 法 をJ;卩 い 、新 たに 口バ ス ト 安 定 化 の た め の 必 要 十 分 条 件 を 導 入 し て 、 電 気 位 遙 サ ー ボ の 口 バ ス ト 制 御 系 設 計 法 を 確 立 し て い る 。 ま た 、rI. 鏘 : 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と 実 験 に よ り 、 摩 擦 や ト ル ク 外 乱 な ど の 非 線 形 要 素 に 対 す る 効 釆 も 含 め 、 提 案 し た 設 計 法 の 有 効 性 を 確 認 し て い る 。 ま た 、 第3章 お よ び 第4章 で 示 し た 設 計 法 の特徴を 諭じている。
第6章 で は 、 デ イ ジ タ ルif0御 系 に お い て 、iIiUi卸 器 の 有 限 語 長 実 現 に 起 因 し て 発 生 す る 量 子 化 誤 差 を 、J粲f1E畳 に ヵ ‖ わ る タ.1乱 とみ な すこ とに より 、 量 子 化 誤 差 の 影 響 を 受 けに く い4ilJij;IJアル ゴ リズ ムの 設計 指 針を 与え 、計 算 機シミュ レーションによりその有効1坐を検i正している。
第7章 は結言であり本研究の成果を 総括している。
こ れ を 要 す る に 、 本 論 文 は 、 パ ラ メ ー 夕 変 動 に 灯 す る 新 し い 体 系 的 口 バスト iliU iitli系設言1書I法を提案したものであり、4il鬮1工学の遊展に寄与すると こ ろ 大 で あ る 。 よ っ て 著 者 は 工 学1噂‑1の ギ :f立 を 授 与 さ れ る 資 キ 各 あ るも の と認める 。