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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 小 田 元 樹

学 位 論 文 題 名

Absorbance measurements in turbid media by the time‑of‑fiight method and       its application to biological systems

(光 子飛 行時間計測による光散乱媒質内吸光 物質の定量測定とその生物系への応用)

学位論文内容の要旨

  生体 組織 など に代 表さ れる の光 の多 重散 乱 媒質 内で は、光は散 乱を繰り返しながら 媒 質内 を伝 搬す る。 この ため 光学 測定 を行 っ たと き、 実際に光が 進行してきた光路長 が 物理 的な 距離 と一 致し ない 。よ って 、透 明 溶液 での 吸光 度測 定に 用い られ るBeer‑

Lambert則 が適 用 でき ない ため に、 光の 多重 散乱 媒質 内で は定 量的 な光 吸 収測 定が 困 難 とな って いる 。ピ コ秒 領域 の時 間分 解計 測 は光 の飛 行時間を直 接計測できることか ら 、生 体組 織の 近赤 外分 光計 測に 定量 性を 持 たせ る有 カな手法の ーっである。一方、

生 体 組 織 は600‑1300nmの 波 長 領域 の近 赤外 光に 対し て比 較的 高い 透過 性 を示 し、 ま た 透過 光強 度が 生体 組織 の酸 素代 謝状 態に 応 じて 変化 する。これ は、生体組織内に存 在 する ヘモ グロ ビン 、チ トク ロー ムオ キシ ダ ーゼ 等の 生体の酸素 代謝に関連する物質 の 吸光 度が 酸素 濃度 に依 存し て変 化す るた め であ る。 よって、生 体組織内の定量的な 吸光度測定により生体 組織内の酸素代謝測定が可能になる。

  本 研 究 で は 近 赤 外 分 光 計 測 に時 間分 解計 測を 導入 する 事に より 定量 的 な生 体組 織 内 酸素 代謝 計測 (生 体組 織内 ヘモ グロ ビン 濃 度計 測) 法の実現を 目指し、光多重散乱 媒 質 内 の 定 量 的 光 吸 収 計 測 法 の確 立と それ を用 いた 生体 組織 の近 赤外 領 域に おけ る 光吸収特性の測定を通 してその可能性を検討した。

  最初に、 光散乱物質としてイースト菌(1−3%)を用いた混濁液 に吸光物質として血 液 より 精製 した へモ グロ ビン を加 えた もの を ファ ント ムモデルと して用意し、時間分 解 測 定 を 行 っ た 。 光 パ ル ス 光 源 と し て モ ー ド 同 期 式Nd:YAGレ 了 ザ 励 起 色 素 レ ー ザ (690−710nm), 、測 定に はス トリ ーク カメ ラ を時 間分 解測定系と して用いた。ファン ト ムモ デル に光 パル スを 入射 して 、フ ァン ト ムモ デル 内での多重 散乱により時間的に 拡 がっ た光 パル スを 光フ ァイ バー で集 めス ト リー クカ メラに導い た。測定は主に反射 型 で行 い光 パル スの 入射 点よ り3cm離れたところに反射してきた光 /くルスを受光用フ ァイバーで集めた。そ して、ファントムモデル内のへモグロビンが酸素化状態(Hb02)、

脱 酸 素 化 状 態(Hb)の 時 を 比 較 した 。測 定結 果の 解析 はTime‑Resoived Beer‑Lambert Law:

    /l (t)〓foA(′)exp(ーPaA¥ ct)  (1)

(h(t)、んぇ(t):光 散乱媒質によって時間的に拡カiった光ノくルスの波長えにおける 時 間プロフ ァイルと、光吸収がない場合の時間プロファイル、メロ え:吸光物質の波長 え にお ける 吸光 係数 、レ :吸 光物質濃 度、c:媒質内の光速度、′ :時間)を多波長計 測に拡張した以下に示 す式を用いた:

54 ‑

(2)

    AAbs.え2‑え1 [ln fi(t)/f(′))]/c′=(メロスっ―メロえ1)レ、  (2) ここで、△イ65.え2−え1は波長えっ、え1間の吸光度差であるっ時間分解測定結果を(2) 式 によ って 解 析し 、△ イ6s.690−710… の値を算出した ところ、酸素化状態のときの

△イ6s.690ー710胴はへモグロビン濃度に関係なく一定(△イ6J.690−710門m三O)であり、

脱酸素化状態では△イ6s.690−710′″の値がヘモグロビン濃度に比例して増加したュここ で 、 測 定 を 行 っ た690―710nmの波 長領 域で は波 長変 化 に対 して 酸素 化ヘ モグ ロビ ン

(Hb02)は ほ とん ど変 化せ ず、 脱酸 素化 ヘモグロビン(Hb)は大きく変化する。脱酸 素化状 態の△イ6s.690−710…の値はへモグ口ビン透明溶液を 分光光度計より得られた 値 とよ く一 致 し、 ニの 測定 シス テム で光 散乱媒質中の吸 光物質濃度が定量測定できる ことが確認された。

  同じ 測定 シ ステムでラット (9‐12週齢)頭部の測定を 行いラット頭部内の脱酸素化 ヘ モグ ロビ ン (Hb)濃 度を 決定 した 。そ して、ラッ卜頭 部内の全ヘモグロビン濃度を O.32mM(文 献値 )と 仮定 して 、血 液酸 素 飽和度(S02) を導いたところ通常の呼吸状 態(吸 入酸素濃度(Fi02)20.9% )では約60%、Fi02100%と してラットヘの酸素供給 増 加さ せた と きで は約80% であ った 。こ れにより、ラッ ト頭部内の酸素代謝状態の定 量 的 な 評 価 が 時 間 分 解 測 定 を 用 い る こ と に よ っ て 可 能 な こ と が 示 さ れ た 。   次に 、パルス光源を波長730‐860nmで発生可能なん゛レーザ 励起Ti:Sapphjreレーザ を 用い た時 間 分解 測定 シス テム を構 成し てラ ット 頭部 の時 間分 解測 定を行い、800nm における時間分解測定結果を基準に730.860nユニnの波長領域での△イぬ.えー800門mの変化 ス ベク トル を 決定 した 。こ の波 長領 域は 酸素化ヘモグロ ビン(Hb02)、脱酸素化ヘモ グ ロビ ン(Hb)と も吸 光ス ベク トル が大 きく変化し両吸 光物質の濃度定量が可能であ る。

  この シス テ ムを 用い てラ ット 体内 の血 液を 人工 血液 (FC143、 乳白 色)に置き換え た ラッ トと 通 常の ラッ トの 頭部 で時 間分 解測定を行った 。測定は730‐860nmの波長領 域 で 約10nmお き に 行 い 、800nn1で の 測 定 を 基準 にし て(2)式 によ って ラッ ト頭 部 の 吸 光 ス ベ ク ト ル を 決 定 し た 。 は じ め に 、 血 液 一FC43置 換 ラ ッ ト の 場 合 で は 、 95%02十5%C02を吸入したと きのラッ卜頭部の吸光スベクトルは水(H20)によるもの と 考え られ ス ベク トル 回帰 によ って ラッ ト頭部内の水含 有量は60―70%と見積もられ た 。 そ し て 、95%N2十5%C02を吸 入し てラ ット 頭部 内 を脱 酸素 化す ると780m以上 で 光 吸収 の減 少 がみ られ 、こ れは ラッ ト頭 部内のチトクロ ームオキシダーゼの還元が原 因 であ る。 こ の減 少量 よル ラッ ト頭 部内 のチ 卜ク ロー ムオ キシ ダー ゼの濃度は約5uM と 見積 もら れ た。 一方 、通 常の ラッ トで はラット頭部内 の水含有量を70%と仮定した ス ベク トル 回 帰よ り酸 素化 ヘモ グ口 ビン (Hb02)と脱酸 素化ヘモグ口ビン(Hb)濃度 が 決 定 で き 、 ラ ッ ト 頭 部 内 の 酸 素 飽 和 度 (S02) が 決 定 可 能 で あ っ た 。   最後 にピコ秒/くルス光源に半導体レーザ、時間分解測定部 に単光子検出時間相関法 を用い た移動可能な3波長(755,779,831nrn)時間分解測定システムを構成した。そし て、フ んントムモデルと人前腕部での測定を行.ったところそ れぞれの酸索状態をよく 反映し良好な結果を得た。

  従来 、光 散 乱媒 質内 の光 吸収 計測 にピ コ秒領域の時間 分解測定を導入する率によっ て 、従 来困 難 であ った 定量 計測 が可 能で あることが示さ れた。本研究ではもっとも身 近 な光 散乱 媒 質で ある 生体 への 応用 を試 みた。現在、均 一系から不均一系へのアプ口 ー チと して 、 光に よる 断層 イメ ージ ング の実現への試み が始まっている。ー方、実験 で も 示 し た よ う に時 間分 解測 定シ ステ ムは 持ち 運び 可 能な 装置 とし てま とめ るこ と が可能であり、医療分野での有カな診断法へと発展させたい。

‑ 55ー

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨 主 査    教 授    田 村    守 副 査    教 授    喜 多 村    昇 副 査    教 授    下 村 政 嗣

学 位論文題名

Absorbance measurements in turbid media by the time‑of‑flight method and

      its application to biological systems

(光子飛行時間計測による光散乱媒質内吸光物質の定量測定とその生物系への応用)

  生体組織に代表される多重散乱系において、光は散乱を繰り返しながら媒質内を伝搬す る。このため光学測定に際し、実際に光が進行してきた光路長が物理的ナょ距離と一致しな い。よって、透明溶液での吸光度測定に用いられるBeer−Lambert則が適用できないために、

光 の 多 重 散 乱 媒 質 内 で は 定 量 的 な 光 吸 収 測 定 が 困 難 と な っ て い る 。   本研究では近赤外分光計測に時間分解計測を導入する事により定量的な生体組織内酸素 代謝計測(生体組織内ヘモグロビン濃度計測)法の実現を目指し、光多重散乱媒質内の定 量的光吸収計測法の確立とそれを用いた生体組織の近赤外領域における光吸収特性の測定 を試みた。

  最初に、光散乱物質としてイースト菌(1−3%)を用いた混濁液に吸光物質として血液 より精製したへモグロピンを加えたものをファントムモデルとして用意し、時間分解測定 を行った。光パルス光源としてモード同期式Nd:YAGレーザ一励起色素レーザ(690―710nm)、 測定にはストリークカメラを時間分解測定系として用いた。ファントムモデルに光パルス を人射して、ファントムモデル内での多重散乱により時間的に拡がった光パルスを光ファ イバーで集めストリークカメラに導いた。測定は主に反射型で行い光パルスの入射点より 3 cm離れたところに反射してきた光パルスを受光用ファイバーで集めた。そして、ファン トムモデル内のヘモグロビンが酸素化状態(Hb02)、脱酸素化状態(Hb)の時を比較した。

そ の 結 果 、Time―Resolved Beer−Lambert Lawが 成 立 す る こ と を 確 認 し た 。   パルス光源を波長730−8 60nmで発生可能なAr゛レーザ一励起Ti:Sapphireレーザを用いた 時間分解測定システムを構成してラット頭部の時間分解測定を行い、800nmにおける時間 分解測定結果を基準に730−860nmの波長領域での吸収スペクトルを決定した。この波長領 域は酸素化ヘモグロビン(Hb02)、脱酸素化ヘモグロビン(Hb)とも吸光スペクトルが大 きく変化し両吸光物質の濃度定量が可能であった。

  次にピコ秒パルス光源に半導体レーザ、時間分解測定部に単光子検出時間相関法を用い た移動可能な3波長(755,779,8 31nm)時間分解測定システムを構成した。そして、ファ ントムモデルと人前腕部での測定を行ったところそれぞれの酸素状態をよく反映し良好な 結果を得た。

    ―56−

(4)

  以上の結果、光散乱媒質内の光吸収計測にピコ秒領域の時間分解測定を導入する事によ り、従来困難であった定量計測が可能であることが示された。

  よって申請者は北海道大学・博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認める。

‑ 57―

参照

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