博 士 ( 歯 学 ) 二 宮 隆 明
学 位論 文 題名
Reconstruction of IVIasseter IVIuscle R/Iodel from 3D ‐ CTData
(3 次元CT データからの咬筋モデルの作製)
学位論文内容の要旨
[目的]
手 術シ ミュ レー ショ ンの ため に, 現在CTやMRIを 用い て, 多く の研 究が され てお り ,Rapid prototyping (RP) technologyもそのうちのひとつである.我々の教室でも,RP technologyを用い て 頭蓋 骨模 型を 作成 し, 顎 矯正 手術 の際 の手術シミュレーションに活用してきた.骨組織 に対 するこれらの 応用は実用の域に達している.
こ れ ま で の 方 法 で は ,CTの ス ライ スデ 一夕 から 同一 平面 内の2次元 的に 骨の 境界 のみ を検 出 して きた .こ のた め, 個 々の スラ イス デ一夕間の相互関係は考慮されておらず,従来法 によ る前頭面断の 画像は不連続であった.
更に ,咬 筋や 皮膚 その 他 の軟 組織 は, 顎矯正手術前後で変化していると考えられており ,術 後 の後 戻り の原 因の ーつ と なっ てい る可 能性がある.また,軟組織を抽出し,変化を計測 する こ とは 現在 まで のと ころ 非 常に 困難 であ った.軟組を織抽出し,その変化を知ることで術 後の 顎 機 能 変 化 を 解 明 で き る こ と を 期待 して いる .本 研究 の目 的は ,CTデ一 夕か ら3次 元的 な咬 筋の境界を抽 出する方法の検討である.
[方法]
今 回使 用し た三 次元CTデ一 夕は 、顎 変形 症に よる 咬合 不全 の改 善を 目的 とし て 、本 学附属 病 院 に お い て1996年4月 に 顎 矯 正 手 術 を 受 け た27歳 女 性 の デ 一 夕 を 使 用 し た . 本 デ ー タ は 手 術 か ら2年 後 の1998年3月 に , 同 附 属 病 院 のCT装 置 で あ る シ ー ヌ シ ス 旭 ヌ デ ィ テ ッ ク社製SOMATOM PLUSSを用いて撮影された。
抽 出に 先立 ち, 各ス ラ イス ごと の咬 筋と その 周囲 の各 ボク セル のCT値と その 座 標を 詳細に 検討した.その結果として咬筋のCT値を15〜95とした.
今 回用 いた 方法 では , 各々 のポ クセ ル( 画素 )に つい て, 注目 点の ボク セル のCT値 が筋組 織 を 示 す 値 の 範 囲 内 (CT値15〜95)にあ る場 合に は, この ボク セル は咬 筋を 示 すと 考え る.
注目 点を 含め その 三次 元 的な 周囲26近 傍の ボク セル をー つの 検索 単位 とし て定 義 する と,一 つの検索単位内において、注目点を通り 対称の位置にあるポクセル対は、13通りある。ここで、
対を なす ボク セル のう ち ,一 方の ボクセルのCT値が咬筋を示す15−95の範囲内にあり、かつ、
他方 がそ れ以 外の 値を と るよ うな ボクセル対 が、13通りのうちーつでも存在する場合、注目点 のポクセルは咬筋の境界を示す、と判断 し抽出を試みた,
[ 結果 ]
1)従 来法 では ,咬 筋の 境界 は単 一ポ クセ ルの 線と し て抽 出さ れた のに 対しI本 方法では,
幅 を持 った 線と して 抽出 さ れた ,両 方法 共にCTの 原画 像と 比較 して ,そ の外 周は ほぼ適正と
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恩われた.
2)近似したCT値を持ち近接する耳下腺との境界は,両方法で,比較的明瞭に示された.
3) 両 方 法 共 に , 部 分 的 に 骨 周 囲 を 咬 筋 の 境 界 と 誤 っ て 抽 出 し た . 4)前頭面断の画像上で従来法と本方法を比較すると,従来法では,境界線は,特に水平的 な変化が大きいところで,不連続になっていた.これに対し,本方法では境界は,完全にっな がった線として抽出された.
5)本方 法は,従来 法よりも 約20%処理 に多くか かったが ,100秒を越 えるものではな かった.
[考察]
CT値について
今回の 研究の結果,咬筋を示すと考えられるCT値の範囲は,当初15‑130であるとわかっ た,このうち,CT値100以上を示す部位は,咬筋の前方部のごく一部に限られており それ 以外の大半の部位はCT値15‑95の範囲内にあった.更に,咬筋の境界となりうるボクセルは,
原画像と比較して,15‑95の範囲内に存在していた,
CT値100以上を示すポクセルは骨周囲にも存在する.これらは,骨から周囲組織に移行す る部位のうち,ボクセルの一部に骨組織を含み,結合組織のCT値よりも大幅に高くなってい るものである,今回の研究では最終的に,これらの余剰デ一夕を自動処理のみで完全に除去す ることは出来なかったが,外部との境界の正確さを最重要と考え,骨周囲のCT値100‑250の 部位を可能な限り除くため咬筋のCT値を15‑95とした.
軟組織のCT値は骨等のアーチファクトの影響を強く受けるため,咬筋を抽出するための敷 居値は,他の筋,特に他の領域の筋群には適用できない可能性がある.現在のところ,炎症や 年齢,個人差の影響ついての検討は,今回行ってあらず,また,唾液腺に対するそれらの影響 に つ い て も , ま だ わ か っ て い な い , こ れ ら は , 今 後 の 検 討 課 題 と 考 え て い る . 咬筋の境界について
水平面において原画像と比較すると,従来法と本方法の両方で適切な境界線の外周が得られ ていると考えられる.両方法の境界の外周はほぼ同じ形態をしており,これは,同一の敷居値 を用い,二次元と三次元の差はあるが,同様の原理を用いた抽出法であるためと考えられる,
両方法共に,咬筋境界は骨の周囲に繋がる余剰デ一夕を伴っていた.、これらを手作業により 除 去 す る こ と は 出 来 た が , そ れ に は 客 観 性 を 低 下 さ せ る と い う 問 題 が あ る . 本方法では,上下スライス間の境界をも検討している.この違いによって,本方法による境 界線が幅を持っていると考えられる.従来法によって処理された連続する3画像と,それらの うちの中心の処理画像に相当する本方法による処理画像を比較する.従来法による処理画像に おいて,中心の処理画像の咬筋の境界線の内側に,上下処理画像の咬筋の境界線が位置してい るとき,本方法ではこの差とほぽ同型の幅を持った境界を抽出している,これに対し,従来法 の中心処理画像の境界線よりも外側に上下処理画像の境界線が存在するとき,本方法では,こ の差を境界とは判断していない.これは,本方法が,上下処理画像間の境界も同時に検出して いるためであると考えられる.
これと同じことを,前頭面断に再構成した画像においても観察することが出来る.従来法に よる画像では,境界線は,水平的に大きく変化しているところでは不連続になっているのに対 し,本方法では,完全に連続した線として抽出されている・
今回は,積層造形装置を用いて模型作製する際には,本方法の最外周のみのデ一夕を用いた.
しかし,ある組織をひとつのオプジェクトとしてとらえるためには,その境界が三次元的に閉 じていることが重要で,連続性を持っデ一夕を得ることが出来る今回の方法を顎顔面領域のコ ンピュ一夕上での手術シミュレーションに応用することは,非常に有益であると考えられる.
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処理時間について
今回の研究によって,処理時間も大幅に短縮された.ニユンピュ一夕による処理時間だけを比 較すると,今回の方法の方が約20%多く時間がかかっているが,三次元的な連続性を保っため の手作業による修正が不要となり,ト一夕ルの処理時間では,本方法の方が,大幅に時間が短 縮されていることになる.
[結論]
今回用いた方法では,パーソナルコンピュ一夕上で半自動的に境界が検出され,得られたデ
―夕は,手作業によるデ一夕の修正なしに上下スライス間の連続性を保持しており,従来法と 比べてト一夕ルのデ一夕処理時間を大幅に短縮できた,また,得られたデ一夕から,咬筋及び 咬筋付き頭蓋骨模型を作製できた.
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学位論文審査の要旨
学位 論文 題 名
Reconstruction of IvIasseter IvIuscle IVIodel from 3D‑CTData
(3 次元CT データからの咬筋モデルの作製)
審査は ,大畑, 吉田及び 中村審 査委員全 員が出 席のもと で,学 位申請者 から本論 文の概 要 に ついて 説明さ せた後, 各審査 委員から 口頭試 問の形式 で行われ た.以 下に提出 論文の 要旨 と審査の内容を述べる.
[目的]
手術シ ミュレー ションの ために ,現在CTやMRIを 用いて, 多くの 研究がさ れてお り,Rapid prototyping (RP) technolog)′もそのうちのひとつである.我々の教室でも,RP technology;を用い て 頭蓋骨 模型を 作成し, 顎矯正 手術の際 の手術 シミュレ ーション に活用 してきた .骨組 織に 対するこれらの応用は実用の域に達している.
こ れま で の 方法 で は ,CTの スライス デ・ー タから同 一平面内 の骨の 境界のみ を2次元的に 検 出して きた,こ のため, データ の走査方向に抽出結果が依存する傾向が強かった.しかし,
軟 組 織 を 抽 出 し , 変 化 を 計 測 す る こ と は 現 在 ま で の と こ ろ 非 常 に 困 難 で あ っ た . 本研究 の目的は ,術後の 後戻り の原因の ーつと 考えられ る咬筋 の術前術 後の変化 につい て 臨 床 的 検討 を 行 うた め に ,CTデ ー タか ら3次元 的 な 咬筋 の 境 界を 自 動 抽出 す る 方 法を考 案 することである.
[方法 ]
今 回 使 用 し た 三 次 元CTデ ー タ は 、 本 学 附 属 病 院 に お い て1996年4月 に 顎 矯 正 手 術 を 受 け 同 附 属 病 院 のCT装 置 で あ る シ ー ヌ ン ス 旭 ヌ デ ィ テ ッ ク 社 製SOMATOM PLUSSを 用い て 撮 影 され た 。 抽出 に 先 立ち , 各 スライス ごとの 咬筋とそ の周囲 の各ポク セルのCT値 と そ の 座 標 を 詳 細 に 検 討 し た . そ の 結 果 と し て 咬 筋 の CT値 を15〜 95と し た , 今 回 用い た 方 法 では 各 々 のポ ク セ ル( 画 素 )に つ い て, 注 目 点の ポ ク セ ルのCT値が 筋 組 織 を 示 す値 の 範 囲 内(CT値15 ‑95)にあ る 場 合に は , この ポ ク セ ルは 咬 筋 を示 す と 考え る. 注 目 点 を含 め そ の三 次 元 的な 周 囲26近傍の ポクセル をーつの 検索単 位として 定義す る とーつ の検索単 位内に おいて、 注目点を 通り対 称の位置 にある ポクセル 対は、13通りある。
ここ で 、 対 をな す ポ クセ ル の うち , 一 方の ポ ク セル のCT値 が 咬 筋 を示す15195の範 囲内に
昇 光
保
重
太
畑 田
村
大 吉
中
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
あ り、か つ、他方 がそれ 以外の値 をとるよ うなポ クセル対カゞ、13通りのうちーつでも存在す る 場 合 、 注 目 点 の ポ ク セ ル は 咬 筋 の 境 界 を 示 す 、 と 判 断 し 抽 出 を 試 み た I
[ 結果と 考察]
今 回の 研 究 の 結果 , 咬 筋を 示 す と考 え ら れるCT値の 範 囲 は, 当 初15‑130である とわか っ た が , 外部 と の 境 界の 正 確 さを 最 重 要と 考 え,骨周 囲のCT値100‑250の 部位を可 能な限 り除 く ため咬 筋のCT値を15ー95とし た.
水 平面 に お いて 原画像と 比較す ると,従 来法と本 方法の 両方で適 切な境 界線の外 周が得 ら れ ている と考えら れる. 両方法の 境界の外 周はほ ぽ同じ形態をしており,これは,同一の閾値 を 用いた ためと考 えられ る.両方 法共に, 咬筋境 界は骨の周囲に繋がる余剰デ一夕を伴ってお り ,手作 業にデ一 夕の修 正カ泌要 であった .従来 法によっ て処理 された連 続する3画像と,そ れ らのう ちの中心 の処理 画像に相 当する本 方法に よる処理画像を比較すると,本方法による境 界 線 の 幅が 従 来 法による 境界の差 を示し ているこ とがわ かる.こ のこと から,本 方法が上 下 ス ライス 間の境界 をも抽 出してい るといえ る.
こ れと 同 じ こと を,前頭 面断に 再構成し た画像に おいて も観察す ること が出来る .従来 法 に よる画 像では, 境界線 は,水平 的に大き く変化 しているところでは不連続になっているのに 対 し,本 方法では ,完全 に連続し た線とし て抽出 された
コ ンピ ュ ー タに よる処理 時間だ けを比較 すると, 今回の 方法の方 が約20% 多く時間 がかか っ て い るが 三 次 元約な連 続性を保 っため の手作業 による 修正が不 要とな り,トー タルの処 理 時 間 で は , 本 方 法 の 方 が , 大 幅 に 時 間 が 短 縮 さ れ て い る こ と に な る . ま た,本 方法で得 られた デ・ータ を用い て,光造 形法により咬筋モデルを作製しシミュレー シ ョン等 の臨床応 用が可 能である ことも確 認した .
各審査員が行った主な質問は以下の通りである.
1)本研究 による 精度は従 来法と比較してどの様に変わったか 2)本;研 究によ る方法の 禾憶は 何か
3) 耳 下 腺 と の 境 界 は ど の 被 験 者 で も 検 出 可 能 か 4)他の咀 嚼筋の 抽出はこ の方法 で可能か
5)本デ.‑夕を用い た理由t蜘い
6)MRIデ 一 夕 か ら 咬 筋 を 抽 出 す る こ と は 考 え な か っ た か 7)今後の 研究を 進める予 定
こ れらの質 問に対 して,論 文申請者 から明 快な回答 及び説 明が得ら れた審 査委員は 全員,
本研究 が学位論 文とし て十分値 し,申 請者が博士(歯学)が学位授与される資格を有するもの と認め た。