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平成18年度経済産業省委託事業「日本企業における外国人留学生の就業促進に関する調査研究」報告書

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平成18年度

構造変化に対応した雇用システムに関する調査研究

日本企業における外国人留学生の

就業促進に関する調査研究

報告書

平成19年3月

財団法人 海外技術者研修協会

平成18年度

経済産業省委託事業

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この報告書は、財団法人海外技術者研修協会が経済産業省より平成 18 年度受託事業とし て委託を受け実施した「平成 18 年度構造変化に対応した雇用システムに関する調査研究(日 本企業における外国人留学生の就業促進に関する調査研究)」の成果です。

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目次

第 1 章 調査の背景と目的... 1 第 2 章 調査概要 2.1 調査内容及び実施方法 ... 2 2.2 ヒアリング調査概要... 3 2.3 アンケート調査概要... 4 2.4 文献調査概要... 6 第 3 章 ヒアリング調査結果 3.1 企業の留学生採用に関するニーズ ... 7 3.2 元留学生の業務内容と課題 ...11 3.3 元留学生に対する上司の見解... 19 3.4 考察... 22 第 4 章 アンケート調査結果(1)−企業担当者― 4.1 調査対象企業の属性... 25 4.2 外国人従業員の雇用状況... 26 4.3 今後の活用方針... 33 4.4 就業に向けた留学生在学中の研修 ... 35 4.5 企業が求める能力 ... 37 第 5 章 アンケート調査結果(2)−元留学生― 5.1 元留学生の属性... 40 5.2 元留学生の就職時状況 ... 42 5.3 元留学生の職務内容... 43 5.4 外国人が就業する際に必要な能力 ... 49 第 6 章 文献調査結果 6.1 ビジネス日本語コースにおけるコース設計 ... 55 6.2 ビジネス日本語コースの実践報告と現状、課題... 57 6.3 ビジネス日本語コースにおける教師の資質 ... 62 6.4 ビジネス日本語コースにおける評価設計... 65

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6.5 ビジネス日本語教材... 68 6.6 考察... 76 第 7 章.調査結果の分析と考察 −留学生の就業を促進するに当たっての課題− 7.1 留学生側の課題... 77 7.2 企業側の課題... 83 7.3 課題克服のための方策 ... 86 第 8 章.おわりに... 88 参考文献 ... 89 添付資料 1)検討委員会 委員名簿 2)アンケート調査票①:企業担当者向け 3)アンケート調査票②:元留学生向け 4)文献調査リスト

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第1章 調査の背景と目的 我が国企業の海外展開を取り巻く情勢は刻々と変化している。2004 年度末時点の現地法 人数は 14,996 社、そのうち、地域別に見ると、アジア地域が 8,464 社(地域別シェア 56.4%) と全世界の 6 割弱を占めており1、アジア地域の占める割合は年々増加している。さらに、 前述した我が国企業のグローバル展開の加速に加え、我が国の人口減少、海外企業による 国籍を問わず優秀な人材の確保等、企業を取り巻く環境は厳しさを増している。このよう な環境の変化に伴い、産業界の人材ニーズは、日本と現地の橋渡しができる人材、企業の グローバル化促進の中核となることができる人材、研究開発等新しいイノベーションに必 要な人材など、多岐にわたっており、それら人材ニーズへの担い手として、日本の大学・ 大学院に在籍する外国人留学生に対する期待が大きい。 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調査2によると、平成 18 年 5 月 1 日現在の 留学生総数は 117,927 人、前年度に比べ 3,885 人(3.2%)減ではあるが、平成 15 年以降 10 万人以上の留学生を受け入れている状況が続いている。そのうち、アジア地域からの留 学生が 109,291 人(92.7%)を占めている。したがって、海外進出企業、留学生ともにア ジア地域の占める割合が非常に高く、産業界のニーズに対応できる留学生数と人材確保に 向けた基盤が整いつつあると言える。 一方、「留学」及び「就学」の在留資格を有する外国人が我が国の企業等へ就職する際に は在留資格変更許可申請が必要となるが、平成 17 年の許可数は 5,878 人である。この数 は、前年の許可数 5,264 人より 614 人(11.7%)の増加となっているものの、留学生総数 と比べその数は少ない3。そこには社会制度上の課題をはじめ、日本企業の文化・習慣、ビ ジネスに必要な日本語能力の問題等、さまざまな課題が就職者数増加を阻害する要因とし て存在することが予想される。 このような状況において、省庁、関係機関による留学生の就職状況に関する実態調査は 散見されるものの、就業に際して課題となっている要因の分析およびその課題に対応した 留学生への就職支援のあり方に関する包括的な研究は管見では存在しない。そこで、本調 査では、日本企業における外国人留学生の就業に際する課題調査を行うとともに、今後の 外国人留学生の就業促進に向けた研修のあり方についての検討を行うことを目的とする。 本調査により、外国人留学生の就業を促進する支援策の策定につなげたい。 1 経済産業省(2007)『第 35 回我が国企業の海外事業活動海外事業活動基本調査 −平成 16(2004)年度実績/平成 17(2005)年 7 月 1 日調査 −』参照。 2 独立行政法人日本学生支援機構(2006)「留学生受入れの概況(平成 18 年版)」参照。 3法務省入国管理局(2006)「平成 17 年における留学生等の日本企業等への就職状況について」 参照。

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第 2 章 調査概要 本調査では、外国人留学生の就業促進に向けた研修のあり方について検討を行うために、 ヒアリング及びアンケート調査を通して企業側と日本の大学・大学院出身の外国人社員側 (以下、元留学生とする)の両面から課題調査を行うとともに、既存の文献調査を併せて 実施する。 2.1 調査内容及び実施方法 本調査の内容は、以下の通りである。 図表 2-1 調査実施フロー (1)仮説立案 企業ヒアリング調査を先行して行うことにより、企業が求める日本語能力、日本 企業文化に関する仮説を構築する。 (2)実態調査 国内企業・元留学生に対し、ヒアリングおよびアンケート調査を行うことにより 留学生の就業促進にあたっての課題についての実態を把握する。 企業ヒアリング調査 (先行調査) ①ヒアリング調査 ・ 人事部門 ・ 元留学生 ・ 元留学生の上司 ②アンケート調査 ・ 人事部門 ・ 元留学生 ③ビジネス日本語に関す る文献調査 外国人留学生向けの就業 促進のための研修のあり 方に関する検討 (1)仮説立案 (2)実態調査

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①日本企業で働いている元留学生及び企業(人事部門及び元留学生の上司)に対す るヒアリング調査 企業で就労している元留学生に対し、元留学生の立場から見た日本企業が求め る日本語能力の要件、日本企業文化等について調査すると同時に、企業の人事部 門及び元留学生の上司に対してもヒアリングを行い、双方からの意見の分析を行 う。 ②企業(人事部門)および元留学生に対するアンケート調査 日本企業の潜在的な留学生ニーズを把握するとともに、日本企業が求める日本 語能力の要件、日本企業文化等に関する要件・水準を調査するため、企業(人事 部門)および元留学生に対しアンケート調査を実施し、双方向からの意見の分析 を行う。 ③文献調査 ビジネスに必要な日本語能力、ビジネス日本語教育についての先行事例や研究 を把握する。また、企業が求める日本語能力を習得する上で有用と思われるテー マプロジェクト型の日本語学習法についての先行事例や研究なども合わせて把 握する。 2.2 ヒアリング調査概要 2.2.1 実施期間 2006 年 11 月から 2007 年 2 月に実施した。 2.2.2 調査対象企業および対象者 いずれも日本国に法人格を有する民間企業 18 社で、業種は以下のとおりである。 (1)製造業 12 社 (2)サービス業 2 社 (3)情報通信業 2 社 (4)卸業・小売業 1 社 (5)建設業 1 社 調査対象者は以下の通りである。 (1)企業の人事担当者 7 社 / 7 名 (2)元留学生 13 社 /14 名 (3)(2)の担当管理職 9 社 / 9 名

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図表 2-2 ヒアリング協力企業 企業名 業種 (1)人事部門 (2)元留学生 (3) (2)の上司 A 製造業 ● B 卸業・小売業 ● C 製造業 ● D 製造業 ● E 製造業 ● F 製造業 ● ● ● G 建設業 ● ● ● H 製造業 ● I 製造業 ● ● J 情報通信業 ●(2名) K 製造業 ● ● L 製造業 ● M サービス業 ● N サービス業 ● ● O 製造業 ● ● P 製造業 ● ● Q 製造業 ● ● R 情報通信業 ● ● 2.2.3 調査方法 企業への訪問調査を行った。 (1)人事担当者 各担当者につき、約 30 分程度、元留学生の採用実績とその基準、企業の求める外国人 人材像等を中心に質問した。 (2)元留学生 調査対象となった元留学生には、事前に数日分の業務日誌を記入の上、調査担当者への 送付を依頼した。調査当日は、提出された業務日誌を基に元留学生が直面したビジネス場 面の実態とそこで生起する問題点について質問した4。所要時間は約1時間であった。 (3)(2)の上司 (2)の調査で得られた情報を基に、元留学生が直面しているビジネス場面の実態とそ こで生起する問題点について約 30 分程度質問した。 2.3 アンケート調査概要 2.3.1 実施期間 2007 年 2 月から 2007 年 3 月に実施した。 4 本調査手法は、インターアクション・インタビューと呼ばれ、対象者に参加していたインタ ーアクションの時点まで遡って記憶に残っている出来事や行動を報告してもらい、実際の言語 行動についてのデータとして収集する方法である(村岡 2002)。外国人社員の企業内での言語 活動については、参与観察や録音・録画が困難なため、この手法を採用した。

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2.3.2 調査対象 証券取引所へ株式を公開している国内企業のうち、3,500 社を無作為に抽出した。対象 となった業種及び社数は以下の表の通りである。 図表 2-3 企業向け/元留学生向けアンケート調査表 送付先一覧 業種 中分類 社数 農業 農業 2 原油・天然ガス鉱業 非金属鉱業 職別工事業 総合工事業 設備工事業 食料品・飼料・飲料製造業 たばこ製造業 繊維工業 衣服・その他の繊維製品製造業 木材・木製品製造業 家具・装備品製造業 パルプ・紙・紙加工品製造業 出版・印刷・同関連産業 化学工業 石油製品・石炭製品製造業 ゴム製品製造業 皮革・同製品・毛皮製造業 窯業・土石製品製造業 鉄鋼業、非鉄金属製造業 金属製品製造業 一般機械器具製造業 電気機械器具製造業 輸送用機械器具製造業 精密機械・医療機械器具製造業 ペン・鉛筆・絵画用品・その他の事務用品製造業 卸売業(1) 卸売業(2) 代理商、仲立業 各種商品小売業 織物・衣服・身の回り品小売業 飲食料品小売業 飲食店 自動車・自転車小売業 家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業 その他の小売業 銀行・信託業 中小商工・庶民・住民等金融業 補助的金融業、金融付帯業 証券業、商品先物取引行 保険業 保険媒介代理業、保険サービス業 投資業 不動産業 不動産業 109 鉄道業 道路旅客運送業 道路貨物運送業 水運業 航空運輸業 倉庫業 運輸に付帯するサービス業 郵便業、電気通信業 電気業 ガス業 物品賃貸業 旅館、その他の宿泊所 洗濯・理容・浴場業 その他の個人サービス業 映画・ビデオ制作業 娯楽業 放送業 自動車整備業、駐車場業 その他の修理業 広告・調査・情報サービス業 その他の事業サービス業 専門サービス業 医療業 保健衛生、廃棄物処理業 教育 社会保険、社会福祉 3500 合計 350 137 23 583 6 190 1348 752 金融・保険業 運輸・通信業 電機・ガス・水道・熱供給 サービス業 鉱業 建設業 製造業 卸売・小売業、飲食店

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2.3.3 調査方法 3,500 社に対し、以下の 2 種類の調査票を送付した。 (1) 人事担当者向け調査票 1通 (2) 元留学生向け調査票 1通 回答は郵送またはFAXによる返却とした。 2.4 文献調査概要 2.4.1 実施期間 2006 年 11 月から 2007 年 2 月に実施した。 2.4.2 調査対象 日本企業での長期的就労に必要な日本語能力について、主に以下の 5 つの観点から調査 を行った。 (1)ビジネス日本語コースにおけるコース設計、理論 (2)ビジネス日本語コースの実践報告および現状、課題 (3)ビジネス日本語コースにおける教師研修 (4)ビジネス日本語コースにおける評価設計 (5)ビジネス日本語に関する教材 2.4.3 調査方法 上述の観点に該当する文献を調査し、リストおよび要旨を作成した上で、日本での就業 を希望する留学生向けの研修への示唆という点から、3 段階の評価を行った。

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第 3 章 ヒアリング調査結果 本章では、企業と日本の大学・大学院出身の外国人社員(以下、元留学生とする)に対 して実施したヒアリング調査結果から、元留学生が直面したビジネス場面の実態とそこで 生起する問題点について概観する。調査方法については、2.2 を参照されたい。 図表 3-1 ヒアリング協力企業 企業名 業種 (1)人事部門 (2)元留学生 (3) (2)の上司 A 製造業 ● B 卸業・小売業 ● C 製造業 ● D 製造業 ● E 製造業 ● F 製造業 ● ● ● G 建設業 ● ● ● H 製造業 ● I 製造業 ● ● J 情報通信業 ●(2名) K 製造業 ● ● L 製造業 ● M サービス業 ● N サービス業 ● ● O 製造業 ● ● P 製造業 ● ● Q 製造業 ● ● R 情報通信業 ● ● 3.1 企業の留学生採用に関するニーズ インタビューに協力をいただいた企業すべてにおいて元留学生の新卒採用実績があり、 海外への事業展開を積極的に推進している企業であった。 3.1.1 採用動機 各社とも、優秀な人材の確保という点が採用動機として最も高くなっており、国籍を問 わず、優秀であれば採用するという傾向にある。さらに、元留学生に対しては、海外事業 展開を視野に入れ、グローバル化に対応できることをあわせて期待しており、日本と現地 側のブリッジ的な要素のみならず、企業内の「内なるグローバル化」という観点から、企 業内の活性化、日本人社員への好影響を期待する企業も見られた。 図表 3-2 元留学生の採用動機 採用動機 A社 国籍によらない優秀な人材の確保が最も大きな理由となっているが、企業内の多 様性の推進、各国に展開している海外事業や関連企業との取引増加等に対応すべ

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く、ブリッジ人材としての位置づけも併せ持っている。 B社 日本人と同じ基準での人材の確保を進めている。 C社 海外事業展開の足がかりとして、採用を行っている。 D社 各国に展開している海外拠点のマネジメントを主眼としたブリッジ人材の育成が 急務となっているため、積極的に採用を進めている。 E社 日本人と同等の基準で、国籍に寄らない優秀な人材に主眼を置いている。 F社 国籍に関係なく優秀な人材の確保という視点から採用を行っている。 G社 日本人と同じ基準での人材の確保を進めている。 3.1.2 職種 前述の通り、各社とも優秀な人材の確保という観点からの採用のため、職種を問わず採 用する傾向にあるが、理系の総合職、研究職を中心に採用している企業も見られる。 図表 3-3 元留学生の採用職種 職種 A社 総合職全般、研究職を問わず、優秀な人材の確保を進めている。 B社 文系、理系を問わず、総合職全般での採用を行っている。 C社 文系、理系を問わず、総合職全般での採用を行っている。 D社 主に文系総合職を中心に採用している。 E社 主に理系総合職を中心に採用している。 F社 職種を問わず、文系及び理系総合職全般、研究職で採用している。 G社 理系総合職全般を中心に採用している。 3.1.3 採用基準 採用基準において、外国人採用のために別途枠を設けることはせず、日本人と同様の採 用基準が活用されているケースが多い。日本語能力だけではなく、本人の資質、専門性を 重視する点は新卒採用の特徴といえる。また、理系の場合、学校推薦による採用も行われ ている。 図表 3-4 元留学生の採用基準 採用基準 A社 現地採用ではなく日本採用の際は日本人と同様の基準でもって採用している。日 本語能力もさることながら、高い専門性、本人の資質、能力を見極めた採用を行 っている。また、技術系の場合は学校推薦による採用も散見される。 B社 基本的には、日本人と同様の採用基準を採用しており、別途留学生向けの枠は設

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けていない。日本語能力については、日本語能力試験1級レベルは最低限必要で あると考え、日本語のレベルが一定のレベルに達していないと判断した場合には 不採用としている。また、専門性についても採用の際重視している。 C社 日本人の新卒社員採用時と同様の基準で行っているが、外国人留学生の場合は、 日本語能力について重視している。 D社 何よりも本人の人格を重視している。日本企業で働く以上、日本語能力について はできるだけ高いレベルが望まれる。また、組織人として働く際には、チームワ ーク力が非常に重要となるため、採用の際にはその点についても注目をしている。 E社 日本人と同様の採用基準だが、企業に対する忠誠心についても採用の際に重視し ている。 F社 採用の際の基準は日本人と同様で、外国人を対象とした別基準は設けていない。 専門性、人格、企業風土への順応性、年齢等、総合的に判断している。また、大 学との共同研究を行っており、大学からの推薦もある。 G社 日本人と同様の基準でもって採用している。日本語能力については、日本語能力 試験1級レベルは最低限必要であるが、高い専門性も期待している。 3.1.4 日本語能力 日本語能力については、採用時のポイントとしている企業も多く、各社ともに職種を問 わずネイティブレベル、または業務に支障をきたすことのない高いレベルの日本語能力を 求める傾向にある。ただし、技術職採用の場合、採用基準において日本語能力よりも専門 性に対するウェイトが高い。 図表 3-5 採用時に期待する日本語能力 日本語能力 A社 職種によるが、技術系の場合、採用時には専門性をより重視する。営業職の場合 は、ネイティブレベルの日本語能力がないと本人が苦労する。 B社 日本語能力試験1級レベルの日本語能力を期待しているが、特に幅広いビジネス 場面で対応できるだけの高度なコミュニケーション能力を求めている。また、助 詞や待遇表現などの精度をできうる限り向上してほしい。 C社 日本語能力については、ネイティブレベルの高度な日本語能力を期待している。 D社 高度なコミュニケーション能力は必要となる。 E社 日本語能力については、ネイティブレベルの高度な日本語能力を期待している。 F社 すべてネイティブレベルで対応できる日本語能力を期待することはないが、ビジ ネス場面で必要となる幅広いコミュニケーション能力は習得していることが望ま しい。 G社 幅広いビジネス場面での高度なコミュニケーション能力を期待する。

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3.1.5 外国人留学生への要望 現在雇用している外国人留学生に対して企業が抱える課題や採用時の基準を踏まえ、さ まざまな観点から意見が寄せられた。これら意見を集約すると、以下の3点となる。 (1)日本語能力 各社とも、高い日本語能力を期待しているため、在学中に高度かつ実践的な日本語運用 能力をできる限り高めてほしいというニーズが高い。特に、新聞や資料といった情報収集 時の読解能力、資料作成、敬語等の待遇表現といった点のニーズが多い。 (2)日本に対する理解 優秀な人材の確保という観点からの採用基準ではあるが、外国人人材に対する不安要素 として、この点を挙げる企業は少なくない。日本で働く上で、日本人のものの考え方、日 本企業特有の企業風土、日本社会全般に関して深い理解が求められると企業側は認識して いる。 (3)日本企業に勤務する社会人として求められる行動能力 帰国せずに日本で働く意義、目的を明確にする必要性、さらに、その際には短期的では なく、中長期的な視点に立って検討する必要性を挙げている。ビジネスマナーに関しては、 在学中に基本的な点は習得しておくほうがよいと考える企業が大半を占めている。また、 インターンシップやアルバイトを通した就業経験を重視する企業が見られた。 図表 3-6 外国人留学生への要望 外国人留学生への要望 A社 短期間でスキルアップをしたいという意識を強く持つ人材が散見される。また、 中長期的な視野で働くという前提がないため、離職する人材もいる。日本で働く 以上は、理由は問わないので日本で働く目的を明確にしておくべきである。また、 インターンシップは積極的にやってほしい。数週間でも経験していることは非常 に大切である。さらに、アルバイトの経験を採用時に質問し、その経験から得た ものなども採用時の参考としている。在学中に、わかりやすい資料の作成、ビジ ネスマナー、敬語等の待遇表現を積極的に習得してほしい。 B社 採用時だけではなく就業後も日本語能力を重視しており、在学中に日本語レベル を高めてほしい。 C社 日本での就業のため、日本社会への深い理解が必要となる。 D社 ビジネスのための実践的な日本語能力とビジネスマナーを在学中に習得するこ と、また、新聞等の読解・要約などを通して日本語能力の向上と企業を取り巻く 状況への理解を深めることを期待する。

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E社 日本人と日本企業のものの捉え方をはじめとする日本社会に対する理解を深めて ほしい。 F社 日本企業文化、習慣等の理解を通して、組織的な仕事の仕方への理解を深めてほ しい。また、ビジネスのための日本語やマナーを習得していることを期待したい。 G社 ビジネスマナー、コミュニケーション能力の向上を期待したい。 3.2 元留学生の業務内容と課題 次に、元留学生に対して実施したインタビュー調査について報告する。インタビューの 際は、事前に記入済の数日分の業務日誌を基に、元留学生が直面したビジネス場面の実態 とそこで生起する問題点について調査を行った。以下に、業種、職種別に記載する。 な お、F 社∼Q 社までの 12 社は日本の大学・大学院出身の外国人社員について概観するが、 R社については、12 社との比較対象として、母国の大学を卒業した外国人社員のインタビ ュー結果について報告する。R社に勤務する外国人社員は、母国の大学を卒業し、在学中 に 2 年間日本語を学習した経験を持つ。大学在学中、インターン学生として同社で学んだ 経験を持っている。 3.2.1 業務で日本語を使用する場面 R社を除いては、業種・職種を問わず、業務全般にわたって日本語を使用している。一 部は、業務上海外との折衝、現地取引先との連絡において母語、英語を使用するケースも 見られた。 図表 3-7 業務で日本語を使用する場面 業種 職種 業務で日本語を使用する場面 F社 製造業 研究職 研究開発に関する業務全般にわたり、日本語を使用する。 G社 建設業 業務全般にわたって日本語を使用している。 H社 製造業 業務全般にわたり日本語を使用する。海外現地の取引先や グループ会社との打ち合わせや連絡の際に通訳として同席 し、中国語を使用することがある。 I社 製造業 業務全般にわたり、日本語を使用している。 J社 情報通信業 取引先への訪問、開発案件の仕様書と付随する打ち合わせ、 開発に必要な情報、要員の提案等の業務で日本語を使用し ている。 K社 製造業 技術職 業務全般にわたり、日本人と同様に日本語を使用している。 L社 製造業 事務職 海外の取引先への販売および営業が主要業務であり、海外 企業との連絡では英語や中国語を使用することもあるが、

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業務の大半は日本語を使用している。 M社 サービス業 業務全般にわたって日本語を使用している。 N社 サービス業 業務全般にわたって日本語を使用している。 O社 製造業 業務全般にわたって日本語を使用している。 P社 製造業 業務全般にわたって日本語を使用している。上司、同僚、 社内連絡についてはすべて日本語を使っている。 Q社 製造業 業務全体の7割程度は日本語で行っており、残り3割は中 国語を使用する。 R社 情報通信業 技術職 基本的に英語で業務することが前提であり、開発会議以外 で日本語を使用する場面は現在のところほぼない。 技能別に見ていくと、口頭コミュニケーション(話す・聞く)では、社内/社外を問わ ず、会議、打合せ、電話応対といった場面が多い。また、プレゼンテーションや来客応対 を日本語で遂行する場面も散見される。一方、書記コミュニケーション(読む・書く)で は、職種を問わず、資料読解及び作成、メールでの連絡が必須となっている。特に、技術 職、研究職においては、口頭での日本語に劣らず、書記での日本語の比重も高くなる傾向 にある。 図表 3-8 口頭コミュニケーション(話す・聞く) 業種 職種 業務で日本語を使用する場面−口頭コミュニケーション− F社 製造業 研究職 商品化に向けた他部署との会議、上司との打合せは常時日 本語で行われる。電話を利用する頻度は少ない。 G社 建設業 施主から協力会社まで、業務上関係のある機関との連絡は 日本語で行っている。 H社 製造業 社内連絡、グループ会社および取引先企業への連絡や打ち 合わせの際は、基本的にすべて日本語で行う。来客応対や 電話での会話については、学生時代のアルバイトの経験で 克服している。 I社 製造業 社内で行われる打ち合わせや連絡については、日本語で行 っている。 J社 情報通信業 取引先へ訪問し、開発案件に関する打ち合わせを行うこと が多い。 K社 製造業 技術職 主に、会議での打ち合わせ、報告、プレゼン、来客応対を 日本語で行っている。 L社 製造業 事務職 社内での上司や同僚との業務連絡、国内の取引先との電話、

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業務に付随して発生する外部との折衝、発注等はすべて日 本語で行っている。また、国内での展示会への出展、デモ ンストレーションに関しても業務を一部担当している。 M社 サービス業 取引のある企業との応対、面接等を日本語で行なっている。 N社 サービス業 外国人学生や海外関係先へは英語等で対応するが、それ以 外の社内外の応対は全て日本語で行う。 O社 製造業 現地関係機関への対応は母国語で行っているが、現地駐在 員などとは全て日本語で行っている。 P社 製造業 国内展示会の手配および開催に関わる業務を全て日本語で 行っている。 Q社 製造業 現地法人の事業計画及び統括管理業務を行う上で必要とな る現地法人及び本社関連部署との連絡が主となる。 R社 情報通信業 技術職 開発会議のみ日本語を使用する。 図表 3-9 書記コミュニケーション(読む・書く) 業種 職種 業務で日本語を使用する場面−書記コミュニケーション− F社 製造業 研究職 専門書籍の読解、研究報告書の執筆やプレゼンテーション 資料の作成をはじめ、書記コミュニケーションの比重が高 い。メールについては、社内からの連絡が大半を占めてい る。 G社 建設業 検討書の作成を日本語で行っている。 H社 製造業 仕様書、製品情報に関する資料は日本語で書かれているも のが中心となっている。また、メールでの連絡は必須。 I社 製造業 仕様書、製品情報に関する資料、技術文書の読解、週報の 作成を日本語で行うため、高い専門性と専門的な日本語能 力が必要となっている。 J社 情報通信業 プログラマーの場合、仕様書等書記コミュケーションが中 心となる。そのため、口頭コミュニケーションに対して苦 手意識を持つことが多い。 K社 製造業 技術職 工業製品の分析(依頼、検討、コスト計算)、会議資料作成、 メール処理が中心である。ただし、メールを作成する際は、 日本人従業員の2倍時間がかかる。 L社 製造業 事務職 メールでの連絡、他部署への書類、出荷依頼等は日本語で 行っている。輸出に関する手配等では、英語を使用するこ ともある。

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M社 サービス業 メールや文書作成、プレゼンテーション資料の作成などは すべて日本語で行う。 N社 サービス業 ポスターの作成、メールによる外部への依頼文書の作成は 全て日本語で行う。 O社 製造業 予算資料作成、役員会等に提出する上程文書の作成など、 業務の全般において日本語を使用する。 P社 製造業 予算資料作成、契約書管理の際に日本語を使用する。 Q社 製造業 事業計画の立案、市場調査、調査報告用資料作成の際、日 本語を使用する。 R社 情報通信業 技術職 なし。 3.2.2 就職後の課題 (1)日本語能力に関する課題 まず、日本語能力に関する課題が圧倒的に多い。今回の調査対象者は非常に日本語のレ ベルが高く、インタビューの際にコミュニケーションに支障をきたすことはないレベルで あったにもかかわらず、敬語など相手との関係、状況、場面に応じて使い分けが求められ ると、非常に困難を感じるという意識が強い。この点に加え、電話応対、メール連絡等、 日常的に多用する非対面型のコミュニケーションツールに対し、不安を覚える元留学生が 多く見られた。また、ビジネス上の日本語以外に、同僚との日常会話、営業先での世間話、 勤務先の方言等、人間関係を円滑に保つためのコミュニケーションの重要性を認識してい る元留学生も見られた。R社の社員は基本的には英語で業務を遂行しているが、英語のみ で日本国内で勤務する際の限界を感じていることから、日本企業で勤務する際に、日本語 能力が1つのキーとなることは必至である。 (2)日本企業文化に関する課題 社内の上下関係、年齢、職歴に偏重した業務配分、徹底した「報・連・相」といった日 本企業の特徴に対して、当初違和感を覚えたが、現在は文化的な差異として受け止めてい る元留学生は多い。また、R社の外国人社員からも日本企業の組織構造、仕事の進め方の 差異について指摘があることから、外国人人材にとって言語面のみならず、企業特有の風 土に対する理解も大きな障壁の1つといえる。 (3)外国人人材に求める人材像とのギャップ 日本人社員の中でグローバルな考え方をあわせもつ人材の不足に加え、中長期的なスキ ルマップが企業側から明示されておらず、外国人としての特性を生かした業務へ従事した いと希望する元留学生が散見された。一方、現在海外事業関連に従事する元留学生につい ては、同様の点を生かせていると自己評価しており、仕事への満足度も比較的高かった。

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(4)社会人としての行動能力に関する課題 相手を尊重した言動、適切に情報の収集および取捨選択ができる能力が挙げられている。 図表 3-10 就職後の課題 業種 職種 就職後の課題、苦労した項目 F社 製造業 研究職 報告書やプレゼンテーション用資料の作成に苦労する。ま た、理系の場合、日本人で留学経験のある人材が少ないた めか、多文化的な視点やグローバルな考え方を持つ人材が 周囲に少ないように感じる。 G社 建設業 電話、ビジネスメールといった日常的なツールで使用する 日本語、また、場面や状況による日本語の使い分け、具体 的には、同僚との日常会話と業務上の会話との使い分け、 交渉や報告文書における言い回し表現等に苦労することが 多い。業務経験とそれから得られるスキルの蓄積も必要。 H社 製造業 相手の立場、状況に合わせて日本語の表現を選ぶ際に非常 に気を使う。現地企業との打ち合わせで技術内容を日本語 に通訳する際に、職位の高い方と同席することが多いので、 直訳せずニュアンスを意訳するように心がけている。 I社 製造業 電話での企業名、氏名の聞き取りが難しい場合がある。社 内での上下関係に馴染むことが求められる。 J社 情報通信業 IT業界という性質上、専門用語や外来語の習得が困難。 また、相手との関係や場面に応じて待遇表現を使い分ける ことが難しい。社内で使用する敬語と社外のそれとは相違 するため、非常に苦労する。打ち合わせや営業の際、仕事 の内容以外の世間話、日常会話の場面では諺やジョークが 飛び交うことが多く、外国人にはハードルが高い。 K社 製造業 技術職 上司や顧客に敬語を多用するが、意識すると間違うのでな るべく丁寧体を使って切り抜けている。敬語の多用に加え、 会社の社風や同僚と仲良くやっていくためには、その土地 の方言を覚えて使わなければならなかった。また、日本人 と同様に資格取得を奨励され、資格を取得したことも就職 後苦労した。 L社 製造業 事務職 電話応対の際、先方の企業名や名前が聞き取れないことが ある。また、日本企業特有の企業風土に違和感を覚えるこ とがある。具体的には、先輩よりも得意な業務であっても 先輩が担当することがあり、能力よりも年齢、職歴に比重

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が置かれている点、スキルマップが見えず、コピーやお茶 汲み等の雑務が多いので、より専門や外国人としての特性 を生かした業務へ従事したい点、直接部長へ報告するので はなく、必ず課長から部長への報告を行うというように、 職制を通して「報・連・相」を行わなければならない点、 という3点が挙げられる。 M社 サービス業 敬語に非常に苦労する。また、クレーム処理のお詫び文書、 雑誌に掲載する広告等、文書作成の際は必ず上司にチェッ クを依頼している。 N社 サービス業 上司、取引先の顧客といった相手や場面に応じた言葉の使 い分けに非常に苦労する。また、同僚とのコミュニケーシ ョンについても同様である。助詞については誤用が多く、 上司に訂正されることがある。 O社 製造業 社内用語や専門用語等、目的に応じた語彙とその運用につ いて困難な場面がある。 P社 製造業 電話での企業名、氏名の聞き取りが難しい場合がある。ま た、現在、海外関連業務には直接携わっておらず、外国人 の特性を生かした人事配置を希望する。 Q社 製造業 単なる日本語能力だけではなく、相手を尊重した上で自ら の意見を述べること、現場からの声を引き出すことができ るコミュニケーション能力の必要性を感じている。また、 収集した情報の必要性を取捨選択できる能力についても、 社会人として求められる。自己の役割や立場に即した意見 の伝達ができるコミュニケーション能力が必要である。 R社 情報通信業 技術職 言語面では、英語で業務を遂行することが前提となってい るが、社内の情報に乗り遅れること、同僚・上司と複雑な 話、ハイレベルな業務の話をしようとすると、英語ではや はり限界もある。日本企業の特性という面では、課長、部 長等の職位の細かい分類、母国と異なる日本企業の組織構 造について理解が必要である。また、仕事の進め方の差異 があり、日本人はイエスノーが曖昧で、かつ、時には細か い問題に焦点を絞り過ぎるために、問題の根源を見逃す傾 向があると感じている。

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3.2.3 在学中に取り組むべき課題、要望 在学中に取り組むべき課題としては、3.2.2 に記載した、ビジネス日本語能力の向上、 日本企業文化に対する理解、社会人としての行動能力の 3 点に加え、日本での就職及び就 職活動への理解として、就職に対する目的の明確化、就職活動に関する情報提供、インタ ーンシップ、就職試験対策を求める元留学生が多く見られた。 (1)ビジネス日本語能力の向上 相手との関係や目的に応じて適切に使い分ける日本語能力の向上、電話応対やメールな どの非対面型のコミュニケーション能力の向上、業務で必要となる文書の読解能力および 作成能力の向上、という3点が多く指摘された。 (2)日本企業文化に対する理解 日本社会全体の業界分布と希望業界に対する理解、日本企業の組織構造や仕事の進め方 に対する理解等、業務を進める上で必要となる日本企業に関する背景的知識に対する理解 を在学中に取り組むとよいと示唆する元留学生が多く見られた。 (3)社会人として求められる行動能力の向上 ビジネスマナーに加え、プレゼンテーション能力、情報収集能力といったコンピテンシ ーの向上に期待が寄せられた。 (4)日本での就職活動に関する理解 就職活動そのものに対する情報不足、在留資格や年金などの就職に付随する社会制度へ の理解といったインフラ面の整備に加え、日本人と同様の筆記試験、面接試験対策を事前 に受ける必要性を痛感している元留学生は多い。また、就業目的の明確化、専門性やスキ ル向上の一環として資格取得を推奨する声も挙げられた。 図表 3-11 在学中に取り組むべき課題、要望 業種 職種 在学中に取り組むべき課題、要望 F社 製造業 研究職 資料の作成や発表スキルを含めたプレゼンテーション能力 の向上と、研究報告書や論文など文書作成について、在学 中に取り組むとよいのではないか。 G社 建設業 年金等、就職に付随する社会制度に関する情報が必要であ る。また、ビジネスマナーについても在学中に取り組んで おくとよい。 H社 製造業 技術職 社内で使用するビジネス日本語および企業内の習慣、文化 について事前に習得していると、就職後スムーズに業務に

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入ることができる。また、就職活動する際に、日本社会全 体の業界分布を知らずメーカーに限定して応募していたの で、日本における主要業界の分類や分布について在学中に 知る機会があるとよい。 I社 製造業 就職試験は日本人と同じ内容および基準で実施されること が大半となっているため、就職試験に向けた筆記テスト及 び面接対策が必要である。 J社 情報通信業 業界によって用語や風土が異なるため、就職を希望する業 界に関する理解を深める必要がある。 K社 製造業 資格取得の重要性を在学中から認識しておく必要がある。 また、自己や得意分野をアピールできるプレゼンテーショ ン能力、企業に関する情報収集能力を習得しておくとよい。 L社 製造業 外国人留学生の場合、日本での就職活動に関する情報・理 解が不足している。就職活動の開始時期、就職活動に必要 な準備、試験や面接の対策等、就職活動全般に関する情報 提供が急務である。また、ビジネス日本語能力を高めるた めに、JETROビジネス日本語テストの対策講座を学内 で受講できるとよい。自らの強みは、専門性と語学力(母 語・日本語・英語)の2つを持ち合わせている点であると 感じているので、在学中にどちらもスキルアップしておく と強みとなるのではないか。 M社 サービス業 留学生が就職時に在留資格を切り替える際、学生時代の専 門や出身国との業務上の関わりについて問われることが多 いため、貿易関係を希望する傾向が強い。在留資格という 外形的な要因によって就職活動の幅を狭めるのではなく、 自らの希望する業種や日本で就職する目的を明確にした上 で、就職活動に臨むことが必要である。 N社 サービス業 インターンシップを経験し、企業での就業の疑似体験をし ておくとよい。また、学生の場合、大学という環境内でビ ジネス場面を経験、想定することが困難なため、ビジネス 場面とそれに付随する日本語について経験しておくことが 重要である。 O社 製造業 実践的、具体的な内容のビジネス教育を受けるとよい。 P社 製造業 希望業種でのインターン、アルバイト経験があるとよい。 Q社 製造業 事務職 自らの専門性やキャリアパスと業務内容とのギャップが生 じないよう、企業が留学生に求める人材像の明確化が必要

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である。現状では、企業がどのような人材を必要としてい るかが学生側に十分伝わっていない。 R社 情報通信業 技術職 日本の組織構造の特徴、日本人の仕事の進め方について、 在学中に取り組むとよい。 3.3 元留学生に対する上司の見解 次に、3.2 の調査で得られた情報を基に、元留学生が直面しているビジネス場面の 実態とそこで生起する問題点について、日常業務において元留学生と接することの多 い上司による見解を以下に報告する。 3.3.1 必要となる日本語能力と求められる行動 英語での業務遂行を基本としているR社を除き、日本語能力に関しては、業務全般で必 要となるため、あらゆる場面で高いコミュニケーション能力が必要とされる。また、社会 人としての行動という観点では、背景理解や周辺情報の咀嚼、コスト意識、プロジェクト 管理能力、確実な「報・連・相」、チームワーク力を求める企業が多い。特に技術系におい ては、論理性と専門性が高く求められる傾向にある。 図表 3-12 必要な日本語能力及び行動能力 業種 職種 必要な日本語能力及び行動能力 F社 製造業 研究職 業務全般で日本語が必要となり、上司や同僚とはすべて日 本語で会話している。特に、プレゼンテーションの資料作 成・実施、研究報告書や論文の執筆が日本語で行えること が重要となる。また、研究職ということもあり、論理性と 高い専門性が求められる。 G社 建設業 業務全般において日本語を使用している。日本語能力はネ イティブレベルが望ましい。上司への「報・連・相」の徹 底、業務経験から必要知識を帰納する能力、先方にわかり やすい資料作成が求められる。 I社 製造業 議事録、社内説明書、特許申請等の書類作成をはじめ、業 務全般で日本語が必要となり、上司、同僚とはすべて日本 語で業務を行っている。日本語だけでなく、英語も含めた 対外的なコミュニケーション能力およびプロジェクト管理 能力が求められる。 K社 製造業 技術職 業務全般において日本語を使用している。日本語能力はネ イティブレベルが望ましい。

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N社 サービス業 業務全般で日本語が必要となり、上司、同僚、取引先とは すべて日本語で行っている。また、会議の議事録作成も担 当している。上司や目上の人への配慮を含んだ表現、社会 人としてオンとオフの使い分け、丁寧な表現が日本語で遂 行できることが必要となる。 O社 製造業 海外進出における法務、契約手続き、海外拠点の統括管理 等、業務全般で日本語を使用している。業務を行う上で、 背景理解や周辺情報の咀嚼が十分行えることが求められ る。さらに、役員会等上程に対応する日本語等、状況に応 じた日本語の使用が必要となる。 P社 製造業 契約書および予算管理、展示会の開催、運営に関わる業務 全般において日本語を使用する。上司、同僚とはすべて日 本語で会話をしている。指示が分からない場合は確認をす る、業務内容を理解しないまま進めない、といった上司や 同僚への「報・連・相」の徹底が必要である。 Q社 製造業 事務職 海外事業展開に関する関連業務全般において日本語を使用 している。日本語能力はネイティブレベルが望ましい。ま た、自社および取引先の利益を最優先に考えた行動、さら に、日本と現地をブリッジする人材として誠実で明るく前 向きな人格とチームワーク力が求められる。 R社 情報通信業 技術職 外国人社員に対する日本語能力は不問であるが、プロジェ クト管理能力、エンジニアとして求められる論理性、担当 領域における日本人社員と同等の専門性を期待する。 3.3.2 現在の日本語能力 現在部下として迎えいれている元留学生の日本語能力に関しては、総じて非常に高い評 価を得ている。ただし、細かな誤用や書類上のチェック等、必要に応じて訂正、フォロー を行っている企業が多い。R社については、英語での業務が基本ではあるが、打ち合わせ の大意をつかむレベルの日本語能力を持っており、全く日本語ができない人材ではない。 図表 3-13 現在の日本語能力 業種 職種 現在の日本語能力 F社 製造業 研究職 会話に関しては、ほぼ問題はない。プレゼンテーションの 資料や報告書の作成に苦労しているように感じる。 G社 建設業 技術職 非常に高く、現在のところ問題はない。

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I社 製造業 コミュニケーション上問題はない。 K社 製造業 会話、社内メール、社内報告ではほとんど問題ない。重要 な顧客や契約書作成の場合は上司のチェックを受ける。 N社 サービス業 電話応対に関しては問題なく行っている。助詞の使い分け に苦労しており、訂正することが多い。 O社 製造業 コミュニケーション上特に問題はない。 P社 製造業 非常に日本語能力は高いが、どんなに流暢であっても上司 の意図が伝わらない場面はある。 Q社 製造業 事務職 非常に高く、現在のところ特に問題はないと考えている。 R社 情報通信業 技術職 限定的であり、基本的に英語で業務をこなしている。ミー ティング等一部の業務は日本語で行われているが、ミーテ ィング内容の大意を聞き取る程度の日本語力はある。ミー ティング後、英語の分かる日本人社員にまとめて質問し、 疑問点を解消させることで対応している。 3.3.3 外国人留学生への要望 管理者という立場から外国人留学生に対する要望としては、元留学生の視点から在学中 に取り組むべき課題として3.2.3 に記載した、(1)ビジネス日本語能力の向上、(2)日 本企業文化に対する理解、(3)社会人としての行動能力の3点と重複する点が多い。 (1)ビジネス日本語能力の向上 相手との関係、状況、目的に応じた使い分けができるレベルの日本語能力、業務で使用 する資料や文書の読解能力および作成能力の向上を求める企業が多い。 (2)日本企業文化に対する理解 日本文化に対する一般的な理解に加えて、日本企業の組織構造や仕事の進め方に対する 理解、法律等業務を進める上で必要となる背景知識の理解を希望する企業が多く見られた。 (3)社会人として求められる行動能力の向上 チームワーク力、調整能力、情報収集・集約能力、プレゼンテーション能力、規律意識 といったコンピテンシーの涵養を求める声が多数聞かれた。また、事務職の場合は、高い 日本語能力をすでにもった人材が多いため日本語以外の語学力や専門的なスキル・資格を、 技術職の場合は、エンジニアとしての論理性及び専門性を期待する傾向が強い。

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図表 3-14 外国人留学生への要望 業種 職種 外国人留学生への要望 F社 製造業 研究職 ロジックの構築とプレゼンテーションスキルが在学中に習 得できていると望ましい。また、文理問わず、幅広く基礎 と教養を学生のうちに身につけることが重要である。 G社 建設業 コミュニケーション能力の涵養と専門知識を在学中に身に つけておくとよい。 I社 製造業 日本企業で働く上で、日本人的な考え方の情報を事前に提 示しておくと、入社後のカルチャーショックが軽減できる のではないか。 K社 製造業 技術職 日本の法律に対する見方の理解、業務にリンクした専門に 関するカリキュラム、さまざまな専門の資格試験に合格す る学習と意欲が必要である。 N社 サービス業 在学中に就職を意識したアルバイト経験やインターンシッ プ等を通じてビジネス場面を経験することが必要である。 また、日本語能力だけでなく、専門+αのスキルを在学中 に習得しておくことが望ましい。 O社 製造業 留学生の場合、日本人よりも目的意識が高い。 P社 製造業 情報収集及び集約能力と基本的なPCスキルは在学中に習 得しておくべきである。また、納期を徹底する等、規律管 理の意識を高めて欲しい。 Q社 製造業 事務職 日本社会の常識、マナーの習得は必須であるが、ブリッジ 人材としての素養、具体的には、現地と日本とのチームワ ーク力、調整能力を研鑽しておくとよい。また、日本語能 力もさることながら、日本語以外の語学と資格取得等専門 スキルの獲得を在学中に行うことが好ましい。 R社 情報通信業 技術職 日本の組織構造の特徴、日本人の仕事の進め方、意欲さえ あれば、それ以外は特にない。 3.4 考察 以上、①企業の人事担当者、②元留学生、③元留学生の上司、という立場の異なる 3 者に対する調査の結果を概観した。これら 3 者の調査から、企業が求める人材像と元 留学生の就業促進に向けた課題について、以下に述べる。 3.4.1 元留学生に対して企業が求める人材像 人事部門に対する調査から、元留学生に対して、職種、国籍を問わず優秀であること、

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そして、グローバル化に対応できる素質、能力を備えていることの 2 点に大きく期待した 上で採用する傾向にあることが明らかになった。したがって、企業は元留学生を「高度グ ローバル人材」として活用することに主眼を置いて採用する傾向が強いといえよう。また、 日本企業での採用の際は、中長期的な視野での人材育成、スキルマップを想定しているこ とから、この点に関する理解と日本で就職する意義の明確化を就職時に求めている。 一方、採用された元留学生からは、企業が元留学生に対してどのような期待、キャリア パスを想定しているのか明示されていないという指摘がなされた。元留学生自身も自らが 備え持つグローバルな視点、能力を十分に発揮できる人事配置を求めていることからも、 企業側の意向が十分に伝わっていない可能性が高い。したがって、企業側が元留学生に対 して求めている人材像を明確に発信する必要があると言える。 3.4.2 就職後の課題 企業側、元留学生側双方の調査から、3.4.1 の人材像に加え、大きく以下の3点が課題 として指摘された。企業側は以下の項目についての研鑽を求める一方、元留学生側も就職 後に苦労した項目として同様の項目を指摘している。したがって、双方とも方向性として は共通の問題意識といえる。特に、日本語やマナー等、表面化しやすい問題については、 双方の見解が比較的一致している。しかしながら、企業文化、行動能力といった言語面に 比べ必ずしも明示的でない項目に関しては、企業が社会人として求めるレベルと元留学生 が自身の課題として認知している課題の間には差異があり、企業の求めるレベルが元留学 生側の問題意識として顕在化していない傾向にある。 (1)ビジネス日本語 この点については、業務を遂行する上で表面化しやすい課題のため、双方の問題意識が 一致しており、大きく3点に集約される。 ① 相手に応じて使い分けるコミュニケーション能力 まず、相手との関係、場面、目的に応じて適切に使い分けるコミュニケーション能力で ある。特に、社内と社外、上司と同僚等、ビジネス場面で使用される敬語や丁寧語などの 待遇表現に関する指摘が多い。 ② 非対面型コミュニケーション能力 次に、電話応対やメール等、非対面型のツールに対応するコミュニケーション能力であ る。打ち合わせなど、対面してコミュニケーションをとる場合、言語面だけではなく、非 言語面をも駆使することが可能であるが、電話やメールの場合、言語面による情報伝達に 比重が高くなるため、日本語が母語ではない元留学生にとって負担が大きいと言える。

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③ 文書読解能力および作成能力 3 点目は、業務上必要となる文書の読解能力および作成能力である。職種や業種に応じ て、必要となる文書は異なるものの、読む・書くという能力は共通して必要となる。 (2)ビジネス文化・知識への理解 元留学生側は、社内の上下関係、「報・連・相」をはじめとする日本企業特有の習慣、文 化、特質に関する指摘が多い。一方、企業側は、上述の点に加え、企業を取り巻く背景理 解や周辺情報の咀嚼、コスト意識、チームワーク力、コスト意識を挙げており、留学生側 の問題意識よりも強い。 (3)社会人としての行動能力 この点についても、(2)と同様に、元留学生側の問題意識と、企業の求めているレベル にギャップが生じている。留学生側は、ビジネスマナー、プレゼンテーション能力、情報 収集能力を課題としてあげている。一方、企業側は、留学生側と同様の問題意識に加えて、 調整能力、情報収集・集約能力、規律意識、プロジェクト管理能力、確実な「報・連・相」、 チームワーク力、と幅広い能力を求める企業が多い。特に技術系においては、論理性と専 門性への期待が強い。

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第4章 アンケート調査結果(1)−企業担当者― 第 4 章および第 5 章では、アンケート調査の結果に基づき、日本企業における外国人留 学生の雇用実態を把握する。アンケート調査票の配布数 3,500 社のうち、回答総数は 352 (回収率 10.0%)であった。まず、第 4 章では、企業担当者向けのアンケート調査票(回 答数 288)の結果を踏まえ、外国人留学生の就業促進における課題を明らかにする。 4.1 調査対象企業の概要 (1)業種 今回の調査で回答のあった企業を業種別に見ると、「製造業」の割合が最も高くなってい る(67.0%)。続いて、「卸売・小売業」(15.3%)、建設業(5.9%)となっている。 図表 4-1 業種別企業数 業種 回答数 割合 農業 0 0.0% 林業 0 0.0% 漁業 0 0.0% 鉱業 0 0.0% 建設業 17 5.9% 製造業 193 67.0% 電気・ガス・熱供給 1 0.3% 情報通信業 5 1.7% 運輸業 5 1.7% 卸売・小売業 44 15.3% 金融・保険業 4 1.4% 不動産業 1 0.3% 飲食店・宿泊業 1 0.3% 医療、福祉 0 0.0% 教育、学習支援業 1 0.3% 複合サービス業 2 0.7% サービス業(他に分類されないもの) 7 2.4% 分類不能の産業 4 1.4% その他 3 1.0% 合計 288 100.0% (2)資本金 「10∼50 億円未満」の割合が最も高くなっている(31.7%)。次いで、「1∼10 億円未満」 (23.5%)、「50∼100 億未満」(16.4%)となっている。 図表 4-2 資本金別企業数 1.1% 23.5% 31.7% 16.4% 16.0% 11.4% 1億円未満 1億∼ 10億円未満 10億∼ 50億円未満 50億∼ 100億円未満 100億∼ 500億円未満 500億円以上 N=281

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(3)従業員規模 今回回答が得られた企業の正規従業員数は、「100∼499 人」の規模が 38.2%と最も多く、 次いで「1,000∼4,999 人」の規模(26.3%)、「500∼1,000 人」の規模(16.5%)となって おり、やや幅が見られた。 図表 4-3 従業員数 2.5% 4.6% 38.2% 16.5% 26.3% 6.0% 6.0% 0∼ 49人 50∼ 99人 100∼ 499人 500∼ 999人 1,000∼ 4,999人 5,000∼ 9,999人 10,000人 以上 N=283 (4)全体の売上に占める海外事業の比率 海外事業実績のある企業のうち、企業全体の売上に対して海外事業が占める割合が 1 割 以下の企業が約半数見られた。 図表 4-4 全体の売上に占める海外事業の比率 46% 14% 10% 8% 4% 3% 5% 5% 3% 2% 0∼9% 10∼19% 20∼29% 30∼39% 40∼49% 50∼59% 60∼69% 70∼79% 80∼89% 90∼100% N=168 4.2 外国人従業員の雇用状況 (1)グローバル人材の確保 今後、新卒採用において、グローバルに活躍できる人材を獲得したいと考えているかと いう質問に対し、72.8%の企業が獲得を考えているとの回答が得られた。グローバルな人 材に対する関心が 7 割強の企業から得られたということは、企業の国際化に対する関心の 高さが窺える。

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図表 4-5 新卒採用におけるグローバル人材の獲得希望の有無 72.8% 27.2% はい いいえ N=283 (2)グローバル人材の属性 上記の問に対し、獲得したい属性については、「海外留学し、大学等を卒業した日本人」 (43.9%)と「日本に留学し、大学等を卒業した外国人」(37.0%)の数がいずれも 4 割前 後と拮抗している。 図表 4-6 獲得したいグローバル人材の属性 37.0% 6.9% 43.9% 12.1% 日本に留学し、大学・大学 院を卒業した外国人 左記以外の外国人 海外留学し、大学・大学院 を卒業した日本人 その他 N=289 (3)元留学生の採用実績 アンケートの回答のあった企業の約半数が元留学生の新卒採用経験があった。 図表 4-7 元留学生の新卒採用実績の有無 50.7% 49.3% ある ない N=286

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(4)採用理由 採用実績のある企業に対し、その採用理由について回答を求めたところ、国籍に関係な く優秀な人材の確保を行うという理由が最も多くあげられた。これは、ヒアリング調査の 結果とも一致し、優秀な人材であるということが企業における新卒採用の最優先事項とな りつつあることを示していると考えられる。 図表 4-8 採用理由 3 4 23 32 36 36 41 112 0 20 40 60 80 100 120 その他 日本人では確保しにくくなった専門分野を補うため 日本人への影響も含めた社内活性化のため 自社(又はグループ)の海外法人との 調整業務を行うため 新規に海外進出(工場、現地法人立ち上げ等) する際に発生する業務を行うため 自社(又はグループ)の海外法人における 将来の幹部候補として 海外の取引先に関する業務を行うため 国籍に関係なく優秀な人材を確保するため N=287

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(5)主要業務内容 従事する業務内容としては、技術系の開発・設計と事務系の販売・営業の 2 つが突出し ている。 図表 4-9 主な業務内容(上位 10 項目) 9 11 12 12 15 24 26 28 33 64 66 0 10 20 30 40 50 60 70 情報システム 物流管理 人事管理 購買・ 原価管理 その他 製造・生産 ・品質管理 研究・調査 経理・会計 ・財務 企画関連 開発・設計 販売・営業 N=318

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(6)採用のポイント 採用のポイントとしては、「日本語能力」、「専門知識」、「日本語以外の語学力」が上位を 占めており、採用の際、日本語能力を重視していることが明らかとなった。日本語以外の 語学力としては、英語力、留学生の母語を期待する傾向にあり、グローバル人材として日 本と海外をつなぐ語学力を期待している傾向も強いと考えられる。これら結果は、ヒアリ ング調査で明らかになった点と一致する。 図表 4-10 採用したポイント 6 12 12 12 19 40 42 48 54 74 96 0 20 40 60 80 100 120 年齢 学歴・資格 人脈・紹介 その他 日本の文化・社会に関する 一般教養的知識 性格 異文化への適応 向上心 日本語以外の語学力 専門知識・能力 日本語能力 N=415

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(7)元留学生に対する評価 他の外国人人材と比較した上で、元留学生に対しては日本人とのコミュニケーションを 円滑にとっていることを高く評価している。この点は、(6)の結果とも関連しており、採 用時に日本語能力を重視した結果、日本語での円滑なコミュニケーションに対して高く評 価していると考えられる。 図表 4-11 他の外国人人材と比較して元留学生が評価できる点 2 10 14 21 33 42 42 65 93 0 20 40 60 80 100 人脈が豊富である その他 長期的な人材育成に対する理解が得やすく、 キャリアパスが比較的作りやすい 専門知識が豊富である 日本人への愛着が高く、企業への愛着にも繋 がりやすい 長期雇用に対する理解が比較的得やすく、定 着が期待できる 日本人にも好影響を与えることができ、社内 がより活性化される 日本企業における働き方に理解が得やすい 現場における日本人とのコミュニケーションを 上手にとることができる N=322

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(8)採用時から就業後までに重視する項目の経過 採用時、入社時、入社後という3つの時間軸で比較し、各時点で重視する項目に変化が 見られるかどうかを調査した結果、採用時においては、前述の通り「日本語能力」を重視 している。一方、入社後に企業独自で育成していきたい項目としては、「専門知識」をあげ た企業が最も多く、次いで、傾聴力や柔軟性等の「チームで働く力」や課題発見力や計画 力等の「考え抜く力」といった社会人としての行動能力を挙げている5。専門知識について は、学生時代の専門だけにとらわれない考え方、入社後に企業独自のカラー、方針で育成 していきたいという日本企業の特徴が影響していると考えられる。また、これらの項目に ついては、入社時点で企業が求めていた能力との差が大きいことから、入社後の課題とし ても考えられる。 図表 4-12 採用時、入社時、入社後に重視する項目 2 75 75 53 50 24 83 15 19 3 36 32 37 40 58 37 77 47 0 63 51 47 54 66 54 108 58

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50

75 100 125

その他 チームワーク力 考え抜く力 前に出る力 日本企業文化・働き方への対応力 日本語文化・社会への対応力 専門知識 日本語力 母語を含む日本語以外の語学力 ①採用時に重視する 項目(N=501) ②入社時点で企業が 求めていた基準に達し ていた項目(N=367) ③入社後に企業として 育成したい項目 (N=396) 5 経済産業省「社会人基礎力研究会」の定義する「社会人基礎力」に基づき分類した。「社会人 基礎力」とは、「職場や地域社会の中で多様な人々と共に仕事も行っていく上で必要な基礎的な 能力」のことであり、「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで 働く力(チームワーク)」の 3 つの能力から構成される。

(37)

4.3 今後の活用方針 (1)今後の活用意向 2006 年度と比較した上で、今後の元留学生の活用方針について質問したところ、「2006 年度よりも積極的に活用したい」企業が 10.9%、「2006 年度と同様の活用」を考えている 企業が 14.0%となっており、今後の活用を前向きに検討している企業(18.6%)と合わせ ると 4 割強の企業が、留学生の採用に前向きな見解を示している。その一方、ほぼ同数と なる 43.9%の企業が今後の採用については「未定」となっている。 図表 4-13 2006 年度と比較した今後の元留学生採用方針 10.9% 14.0% 18.6% 12.6% 43.9% 2006年よりも積極的 に活用したい 2006年と同様に活 用したい 今後できれば活用し たい 活用の予定はない 未定である N=285 (2)採用希望の留学生の属性 文系、理系とも、大学卒業時の採用を考えており、続いて日本の大学を卒業した大学院 修了者を考えている。企業のニーズとしては、文系出身の元留学生よりも理系出身者のほ うが若干上回っている。 図表 4-14 採用したい留学生の属性 10 15 24 47 60 87 119 122 152 0 50 100 150 200 短大・高専・専門学校 その他 博士課程修了者 院卒(文系・海外の大卒) 院卒(文系・日本の大卒) 院卒(理系・海外の大卒) 院卒(理系・日本の大卒) 大卒(文系) 大卒(理系) N=636

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(3)外国人活用時の不安要因 日本人学生と比較し、外国人を活用する際に不安な要素として挙げられている項目には、 「定着/離職率」、「組織への順応性」、「日本語能力」の順となっている。離職の不安につ いては、ヒアリング調査時にも企業側から挙げられた課題のひとつであった。日本企業の 場合、中長期的雇用を考えているため、離職が増加することで企業の雇用形態や人材育成 方針に多大な影響があることが一因と推察される。また、組織への順応性、日本語能力に 関する不安については、外国人特有の課題であり、文化的背景の違いによる影響を懸念し ていると考えられる。 図表 4-15 外国人が就業する際に日本人と比べて不安な点 3 5 5 10 17 26 36 45 79 80 84 148 149 165 0 50 100 150 200 学歴・資格 日本語以外の語学力 その他 向上心 専門知識・能力 年齢 性格 顧客対応 協調性 雇用手続き 日本の文化・社会に関する 一般教養的知識 日本語能力 組織への順応性 定着/離職率 N=852

図表 2-2  ヒアリング協力企業  企業名 業種 (1)人事部門 (2)元留学生 (3) (2)の上司 A 製造業 ● B 卸業・小売業 ● C 製造業 ● D 製造業 ● E 製造業 ● F 製造業 ● ● ● G 建設業 ● ● ● H 製造業 ● I 製造業 ● ● J 情報通信業 ●(2名) K 製造業 ● ● L 製造業 ● M サービス業 ● N サービス業 ● ● O 製造業 ● ● P 製造業 ● ● Q 製造業 ● ● R 情報通信業 ● ● 2.2.3  調査方法  企業への訪問調査を
図表 3-14  外国人留学生への要望  業種  職種  外国人留学生への要望  F社  製造業  研究職  ロジックの構築とプレゼンテーションスキルが在学中に習 得できていると望ましい。また、文理問わず、幅広く基礎 と教養を学生のうちに身につけることが重要である。  G社  建設業  コミュニケーション能力の涵養と専門知識を在学中に身に つけておくとよい。  I社  製造業  日本企業で働く上で、日本人的な考え方の情報を事前に提 示しておくと、入社後のカルチャーショックが軽減できる のではないか。  K社
図表 4-5  新卒採用におけるグローバル人材の獲得希望の有無  72.8%27.2% はい いいえ  N=283  (2)グローバル人材の属性  上記の問に対し、獲得したい属性については、 「海外留学し、大学等を卒業した日本人」 (43.9%)と「日本に留学し、大学等を卒業した外国人」 (37.0%)の数がいずれも 4 割前 後と拮抗している。  図表 4-6  獲得したいグローバル人材の属性  37.0% 6.9%43.9%12.1% 日本に留学し、大学・大学院を卒業した外国人左記以外の外国人 海外留学
図表 4-24  現在の日本語能力と業務上必要なレベル(複合的コミュニケーション能力)  (複合) 3.8 3.93.83.93.53.63.53.7 3.2 3.4 3.6 3.8 418.会議理解と報告作成17.議論理解と意見発信16.資料作成とプ レゼン 実施15.プ レゼン 理解と要点作成 現在の能力 求められる能力 (3)ビジネス場面における社会人としての行動能力の必要性    社会人として求められる行動能力 6 のうち、いずれの項目も「おおむね問題ないレベル」 を期待しているにもかかわらず、現在
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