第 4 章 アンケート調査結果(1)−企業担当者―
4.2 外国人従業員の雇用状況
(1)グローバル人材の確保
今後、新卒採用において、グローバルに活躍できる人材を獲得したいと考えているかと いう質問に対し、72.8%の企業が獲得を考えているとの回答が得られた。グローバルな人 材に対する関心が
7
割強の企業から得られたということは、企業の国際化に対する関心の 高さが窺える。図表 4‑5 新卒採用におけるグローバル人材の獲得希望の有無
72.8%
27.2%
はい いいえ
N=283
(2)グローバル人材の属性
上記の問に対し、獲得したい属性については、「海外留学し、大学等を卒業した日本人」
(43.9%)と「日本に留学し、大学等を卒業した外国人」(37.0%)の数がいずれも
4
割前 後と拮抗している。図表 4‑6 獲得したいグローバル人材の属性
37.0%
6.9%
43.9%
12.1%
日本に留学し、大学・大学 院を卒業した外国人 左記以外の外国人 海外留学し、大学・大学院 を卒業した日本人 その他
N=289
(3)元留学生の採用実績
アンケートの回答のあった企業の約半数が元留学生の新卒採用経験があった。
図表 4‑7 元留学生の新卒採用実績の有無
50.7%
49.3%
ある ない
N=286
(4)採用理由
採用実績のある企業に対し、その採用理由について回答を求めたところ、国籍に関係な く優秀な人材の確保を行うという理由が最も多くあげられた。これは、ヒアリング調査の 結果とも一致し、優秀な人材であるということが企業における新卒採用の最優先事項とな りつつあることを示していると考えられる。
図表 4‑8 採用理由
3 4
23 32
36 36 41
112
0 20 40 60 80 100 120
その他 日本人では確保しにくくなった専門分野を補うため 日本人への影響も含めた社内活性化のため 自社(又はグループ)の海外法人との
調整業務を行うため 新規に海外進出(工場、現地法人立ち上げ等)
する際に発生する業務を行うため 自社(又はグループ)の海外法人における
将来の幹部候補として 海外の取引先に関する業務を行うため 国籍に関係なく優秀な人材を確保するため
N=287
(5)主要業務内容
従事する業務内容としては、技術系の開発・設計と事務系の販売・営業の
2
つが突出し ている。図表 4‑9 主な業務内容(上位 10 項目)
9 11
12 12
15 24
26 28
33
64 66
0 10 20 30 40 50 60 70
情報システム 物流管理 人事管理 購買・
原価管理 その他 製造・生産
・品質管理 研究・調査 経理・会計
・財務 企画関連 開発・設計 販売・営業
N=318
(6)採用のポイント
採用のポイントとしては、「日本語能力」、「専門知識」、「日本語以外の語学力」が上位を 占めており、採用の際、日本語能力を重視していることが明らかとなった。日本語以外の 語学力としては、英語力、留学生の母語を期待する傾向にあり、グローバル人材として日 本と海外をつなぐ語学力を期待している傾向も強いと考えられる。これら結果は、ヒアリ ング調査で明らかになった点と一致する。
図表 4‑10 採用したポイント
6 12 12 12
19
40 42
48 54
74
96
0 20 40 60 80 100 120
年齢 学歴・資格 人脈・紹介 その他 日本の文化・社会に関する
一般教養的知識 性格 異文化への適応 向上心 日本語以外の語学力 専門知識・能力 日本語能力
N=415
(7)元留学生に対する評価
他の外国人人材と比較した上で、元留学生に対しては日本人とのコミュニケーションを 円滑にとっていることを高く評価している。この点は、(6)の結果とも関連しており、採 用時に日本語能力を重視した結果、日本語での円滑なコミュニケーションに対して高く評 価していると考えられる。
図表 4‑11 他の外国人人材と比較して元留学生が評価できる点
2 10
14 21
33 42 42
65
93
0 20 40 60 80 100
人脈が豊富である その他 長期的な人材育成に対する理解が得やすく、
キャリアパスが比較的作りやすい 専門知識が豊富である 日本人への愛着が高く、企業への愛着にも繋
がりやすい
長期雇用に対する理解が比較的得やすく、定 着が期待できる
日本人にも好影響を与えることができ、社内 がより活性化される
日本企業における働き方に理解が得やすい 現場における日本人とのコミュニケーションを
上手にとることができる
N=322
(8)採用時から就業後までに重視する項目の経過
採用時、入社時、入社後という3つの時間軸で比較し、各時点で重視する項目に変化が 見られるかどうかを調査した結果、採用時においては、前述の通り「日本語能力」を重視 している。一方、入社後に企業独自で育成していきたい項目としては、「専門知識」をあげ た企業が最も多く、次いで、傾聴力や柔軟性等の「チームで働く力」や課題発見力や計画 力等の「考え抜く力」といった社会人としての行動能力を挙げている5。専門知識について は、学生時代の専門だけにとらわれない考え方、入社後に企業独自のカラー、方針で育成 していきたいという日本企業の特徴が影響していると考えられる。また、これらの項目に ついては、入社時点で企業が求めていた能力との差が大きいことから、入社後の課題とし ても考えられる。
図表 4‑12 採用時、入社時、入社後に重視する項目
2
75 75 53 50 24
83 15
19
3
36 32
37 40
58 37
77 47
0
63 51 47
54 66 54
108 58
0 25 50 75 100 125
その他 チームワーク力 考え抜く力 前に出る力 日本企業文化・働き方への対応力 日本語文化・社会への対応力 専門知識 日本語力 母語を含む日本語以外の語学力
①採用時に重視する 項目(N=501)
②入社時点で企業が 求めていた基準に達し ていた項目(N=367)
③入社後に企業として 育成したい項目 (N=396)
5 経済産業省「社会人基礎力研究会」の定義する「社会人基礎力」に基づき分類した。「社会人 基礎力」とは、「職場や地域社会の中で多様な人々と共に仕事も行っていく上で必要な基礎的な 能力」のことであり、「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで 働く力(チームワーク)」の