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中国語母語話者による日本語のテンス・アスペクトの誤用研究

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Academic year: 2021

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(1)

中国語母語話者による日本語のテンス・アスペクト

の誤用研究

著者

朴 麗華

学位名

博士(言語コミュニケーション文化)

学位授与機関

関西学院大学

学位授与番号

34504甲第567号

URL

http://hdl.handle.net/10236/00025147

(2)

関西学院大学大学院

言語コミュニケーション文化研究科

博士学位論文

中国語母語話者によ る

日本語のテンス・アスペクトの誤用研究

朴 麗華

2015 年 3 月

(3)

i

博士学位 論文

中国語母 語話 者に よ る

日本語の テン ス・ア スペクト の誤 用研究

朴 麗 華

論文審査 委員

主 査 :

副 査 :

副 査 :

副 査 :

(4)

ii

謝 辞

本 博 士 論 文 の 作 成 な ら び に 研 究 に あ た り 、 多 く の 方 々 か ら ご 指 導 と ご 支 援 を 賜 り ま し た 。ま ず は 、こ れ ま で 5 年に渡り、指導して下さった于康教授に心よりお 礼 を 申 し 上 げ ま す 。 修 士 課 程 か ら 于 ゼ ミ に 入 り 、 研 究 と は 何 か を 先 生 が 一 か ら 教 え て く だ さ い ま し た 。 研 究 の 基 礎 を 固 め る た め 、 修 士 の 段 階 か ら 中 国 語 学 と 日 本 語 学 の 両 方 の 研 究 分 野 を 視 野 に 入 れ た 指 導 を し て 下 さ り 、 そ の お 陰 で 、 現 在 の 誤 用 研 究 と 第 二 言 語 習 得 研 究 に 携 わ る こ と が で き ま し た 。 本 研 究 に お い て も 、 テ ー マ の 決 定 を は じ め 、 用 例 の 分 析 、 論 文 の 執 筆 な ど す べ て に お い て ご 指 導 を し て 下 さ い ま し た 。 ま た 、 研 究 に 関 す る こ と は 勿 論 、 人 間 性 が 第 一 、 学 問 は 第 二 と い う ゼ ミ の モ ッ ト ー の 元 、 人 間 性 の 大 切 さ も 教 え て く だ さ り 、 先 生 か ら “ 言 傳 身 教 ” に よ っ て 教 わ っ た も の も 多 々 あ り ま す 。 先 生 の 教 え は こ れ か ら も 自 分 に と っ て の 成 長 の 糧 に な り ま す 。 ま た 、 論 文 を ご 精 読 い た だ き ま し た 審 査 委 員 の 神 崎 高 明 教 授 、 大 高 博 美 教 授 、 岸 本 秀 樹 教 授 に 深 く 感 謝 い た し ま す 。 先 生 方 か ら い た だ い た 貴 重 な ご 意 見 を 今 後 の 研 究 に 活 か し 、 励 み と さ せ て い た だ き ま す 。 そ し て 、 大 学 時 代 の 指 導 教 官 で あ る 小 倉 肇 教 授 、 本 研 究 科 の 森 本 郁 代 教 授 、 客 員 教 員 と し て 本 研 究 科 に 赴 任 さ れ て い た 彭 広 陸 教 授 、 林 璋 教 授 、 張 威 教 授 、 王 怡 准 教 授 、 張 佩 霞 教 授 に も お 礼 を 申 し 上 げ ま す 。 そ の 他 、 本 論 文 の 執 筆 に あ た っ て 、 先 輩 の 苞 山 武 義 さ ん か ら 建 設 的 な 意 見 を い た だ き ま し た 。 そ し て 、 苞 山 武 義 さ ん 、 蔵 薗 和 也 さ ん 、 野 村 登 美 子 さ ん 、 高 山 弘 子 さ ん に は 日 本 語 の 修 正 に ご 協 力 い た だ き 、 誠 に 感 謝 し て お り ま す 。 英 文 要 旨 の 翻 訳 を 快 諾 し て く だ さ っ た 傅 建 良 先 生 に も 心 よ り 感 謝 し て お り ま す 。 ま た 、 林 春 さ ん 、田 中 良 さ ん を は じ め 、ゼ ミ の 先 輩 と 後 輩 の 方 々 に 感 謝 い た し ま す 。最 後 に 、 日 本 で お 世 話 に な っ て い る 周 绍 文 氏 ・ 林 彦 昆 氏 ご 一 家 、 応 援 し て 下 さ っ た 太 田 克 彦 ご 夫 婦 、青 木 祐 子 さ ん 、西 口 知 邦 さ ん 、中 野 恭 志 さ ん 、團 藤 哲 郎 さ ん 、そ し て 、 長 年 の 留 学 を 支 え て く れ た 家 族 と 友 人 に 心 よ り お 礼 を 申 し 上 げ ま す 。 ど う も あ り が と う ご ざ い ま し た 。

(5)

iii

ABSTRACT

A Study of Errors

Regarding Tense and Aspect in Japanese

Committed by Chinese Learners of Japanese

by

Piao Lihua

Linguistically, Japanese is quite different from Chinese in tense

and aspect system especially in such a manner that a Japanese tense

or aspect marker usually expresses multiple meanings. This

ambiguity contributes to difficulty for Chinese learners of Japanese

in understanding and utilizing the language, thus many errors

committed by the learners regarding the Japanese tense and aspect

system are found. In order to reduce the above-mentioned errors, it

is necessary to analyze the reasons for the errors and make the

mechanism of the errors clear. The purposes of this study are (a) to

clarify the mechanism by classifying the errors and the reasons for

the errors, and (b) to relate the above errors to relevant content in

Japanese textbooks.

In this research,

Corpus of Errors Committed by Chinese

Learners of Japanese, created and developed by Professor Yu Kang of

Kwansei Gakuin University, is employed and a rough sketch of all

errors concerning the Japanese tense and aspect system is obtained.

Among various types of errors, two pairs of errors are selected as the

(6)

iv

object of the research according to error frequency in the

Corpus.

The four types of errors are *

ru-ta, *ta-ru, *ru-teiru, and *teiru-ru.

The reasons for the errors are classified into three types, negative

language transfer, over-generalization, and compound errors.

Firstly, among errors of *ru-teiru and *ru-ta types, due to

negative language transfer from the learners’ mother tongue, many

of them are related to continuation of a resultative state and a past

situation. Continuation of a resultative state is encoded by the

marker

teiru in Japanese but by complement instead of the marker

zhe in Chinese. A past situation is expressed by the tense/aspect

marker

ta in Japanese, i.e. the past form of Japanese verbs.

However, in Chinese, a past situation is expressed by laying a focus

on a certain part of a past situation since there is no tense marker in

Chinese. To sum up, these two types of errors are closely related to

disagreement in the Japanese and Chinese aspect markers.

Negative language transfer is not so obvious in errors of

*teiru-ru type as in the above mentioned two types, thus emphasis is

placed on errors concerning expressions of change or transition.

Use of the Japanese aspect markers in change expressions usually

depends on contexts while in Chinese the aspect marker

le is

employed at the end of a sentence. Therefore, errors of *

teiru-ru

type are also considered to be related to negative language transfer.

Secondly, many errors of *teiru-ru and *ta-ru types, due to

overgeneralization, are found in the

Corpus. The results illustrate

that learners understand well that

te-iru expresses continuation of

an action or a state and

ta expresses completion of an action but fail

to understand how a situation is perceived in terms of tense and the

correct use of a relevant sentence pattern.

(7)

v

It is observed that sentence patterns of koto ni naru and koto ni

suru are overused in sentences with errors of *ru-teiru and *ru-ta

types. The overuse is mainly due to a process when resultative

meaning in the sentence patterns is over extended and further due to

a mismatch with usage of the marker

teiru and how the tense is

perceived.

Fig. 1 Compound Errors

The final type in this study is called compound errors referring

to errors related to multiple reasons as illustrated in Fig. 1 above.

Among compound errors, there are errors such as *ru-teiru type

caused by one single reason and others such as *

teiru-ru, *ru-ta, and

*ta-ru types caused by more than one reason. The former is not due

to negative language transfer but due to how a situation is perceived

as a state or as a result. The latter shows that one reason does not

always have priority over the others. In case of errors of *

teiru-ru

type caused by negative language transfer and variety in perceiving

a situation, the main reason is the inability to correctly perceive a

situation as a state or as a result. Negative language transfer in

*ru-teiru

due to how a situation is perceived as a state or as a result

*teiru-ru

・negative language transfer + variety in perceiving a situation

・confusion in reference point + lack of grammatical knowledge

*ru-ta

・due to how a past event is perceived ・variety in perceiving a situation + negative

language transfer

*ta-ru

・lack of grammatical knowledge + negative language transfer + variety in perceiving a

situation

Compound Errors

(8)

vi

this type, not being the most essential reason, refers to transfer in

vocabulary selection.

Furthermore, what different patterns have in common is

summarized as follows. First, in the case of errors of *

ru-teiru and

*teiru-ru types, the main reasons lie in the difference between

stative reading and resultative reading. Then, in the case of errors

of *ru-ta and *ta-ru types, the reason in common is negative

language transfer. Finally, in errors of almost all types, how a

situation is perceived is a key in common for most reasons

specifically in terms of whether to recognize the situation as a result

or as a state, whether to recognize it as a past situation or as a

present situation, and recognition of the situation in question.

Taking into consideration the tendency and characteristics of

learners’ errors and content concerning the Japanese tense and

aspect system in textbooks, methods for learning the Japanese tense

and aspect system are suggested. The new methods are not a

summary of relevant content in the present textbooks but a

presentation of various usages of the Japanese tense and aspect

markers and their differences in various contexts and cases. The

methods urge learners to understand the situation well and then be

aware of the candidate tense and aspect markers that can be used.

Learners are required to distinguish those candidate markers from

each other as well.

(9)

vii 目 次 論 文 審 査 委 員 ⅰ 謝 辞 ⅱ 英 文 要 旨 ⅲ 凡 例 ⅳ 序 論 1 0.1 はじめに 1 0.2 研究対象及び使用データ 2 0.3 研究の目的 6 0.4 研究の方法と用語の説明 7 0.5 誤用例の出典 8 0.6 本研究の構成 9 第 1 章 先 行 研 究 13 1.1 はじめに 13 1.2 日本語と中国語におけるテンス・アスペクトの形式と意味のつながり の 相 違 に つ い て 13 1.3 日本語の第二言語習得におけるテンス・アスペクトの研究 18 1.4 まとめ 23 第 2 章 母 語 の 負 の 転 移 に 起 因 す る 誤 用 26 2.1 はじめに 26 2.2 「*る→ている」に見られる母語の負の転移 27 2.3 「*ている→る」に見られる母語の負の転移 38 2.4 「*る→た」に見られる母語の負の転移 42 2.5 「*た→る」に見られる母語の負の転移 49 2.6 まとめ 54 第 3 章 過 剰 般 化 に 起 因 す る 誤 用 56

(10)

viii 3.1 はじめに 56 3.2 「*る→ている」に見られる過剰般化 56 3.3 「*ている→る」に見られる過剰般化 63 3.4 「*る→た」に見られる過剰般化 70 3.5 「*た→る」に見られる過剰般化 73 3.6 まとめ 80 第 4 章 ね じ れ 誤 用 に 起 因 す る 誤 用 82 4.1 はじめに 82 4.2 「*る→ている」に見られるねじれ誤用 83 4.3 「*ている→る」に見られるねじれ誤用 88 4.4 「*る→た」に見られるねじれ誤用 95 4.5 「*た→る」に見られるねじれ誤用 108 4.6 まとめ 111 第 5 章 中 国 語 母 語 話 者 に よ る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 の 傾 向 と 教 科 書 と の 関 わ り 114 5.1 はじめに 114 5.2 誤用パターン「 *る→ている」と「*ている→る」について 115 5.3 誤用パターン「*る→た」と「*た→る」について 142 5.4 テンス・アスペクトの学習の改善について 151 5.5 まとめ 156 結 論 158 参 考 文 献 167

(11)

ix 凡例 本 研 究 に お け る 各 記 号 の 意 味 は 以 下 の 通 り で あ る 。 *:非文法性であることを示す。 *X→Y: X の使用が非文法性であり、Y を使用した方が自然な表現となること を 示 す 。 ?:意味がおかしいまたは不自然であることを示す。

(12)

1

序論

0.1 はじめに 日 本 語 の テ ン ス と ア ス ペ ク ト は 「 時 」 に 関 す る 表 現 で あ る 。( 金 田 一 1955、 奥 田 1977、寺村 1984、町田 1989、工藤 1995、日本語記述文法研究会 2007 な ど )。テ ン ス・ア ス ペ ク ト の 表 現 は 話 し 手 の 時 に 対 す る 捉 え 方 に 関 わ り 、そ し て 「 時 」 に 関 す る 言 語 形 式 は 形 式 一 つ に 対 し て 意 味 が 複 数 含 意 さ れ る 。 し た が っ て 、 第 二 言 語 と し て 、 目 標 言 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト 表 現 を 学 習 す る 際 に 、 学 習 者 の 母 語 と 目 標 言 語 と の 言 語 的 発 想 が 異 な り 、 両 言 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 形 式 と 意 味 が 一 対 一 の 対 応 を し て い な い た め 、 学 習 者 に と っ て テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 学 習 は 困 難 な も の と な る 。 例 え ば 、 中 国 語 母 語 話 者 が 書 い た 作 文 中 に 以 下 の よ う な テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト に 関 す る 誤 用 が 見 ら れ た 。 ( 1 ) 毎 朝 よ く 朝 寝 坊 す る 男 性 た ち は 、 い つ も 朝 ご は ん を 食 べ な が ら 何 冊 か の 本 だ け を 持 ち 、 ぎ り ぎ り に 教 室 に 着 い た1 ( 2 ) 首 都 圏 で 災 害 が 起 こ れ ば 、 災 害 に よ る 被 害 を 大 き く し て い る 。 こ の 大 き な 被 害 は 全 国 に 及 ぶ に 違 い な い 。 ( 3 ) そ し て 、 生 物 資 源 か ら 開 発 さ れ た 医 薬 品 な ど の 新 商 品 は 人 類 に と て も 大 き な 利 益 を も た ら し て い た だ ろ う 。 ( 4 ) 隣 に 住 ん だ 人 を 知 ら な い こ と も あ る 。 孤 独 死 が 発 生 し た こ と は 理 解 で き る 。 ( 5 ) 小 さ い 時 か ら 、 父 は 今 後 ぜ ひ 大 学 生 に な っ て ほ し い と 希 望 し た 。 ( 6 ) 高 校 時 代 兄 の よ う な 彼 と 仲 が 良 か っ た 。 彼 の こ と だ か ら 絶 対 大 丈 夫 だ と 私 は か た く 信 じ て い る 。 八 ヶ 月 後 、 夏 休 み を 利 用 し て 塾 を 開 い た 彼 は 1000 元 を 返 し て き た 。 1 誤 用 例 に お い て テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト 以 外 に も 誤 用 が 含 ま れ る 可 能 性 が あ る が 、 こ こ で は テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 部 分 の み を 対 象 と す る 。

(13)

2 用 例( 1 )の 下 線 部 の「 着 い た 」の よ う に「 た 」形 が 用 い ら れ て い る が 、「 着 く 」 の よ う に 「 る 」 形 を 用 い る と 、 母 語 話 者 に と っ て 、 違 和 感 が な く な る 。 用 例( 2 )の 下 線 部 の「 し て い る 」の よ う に「 て い る 」形 は や は り 違 和 感 が あ り 、 「 す る 」 の よ う に 「 る 」 形 に す る と よ い 。 用 例 ( 3 ) は 「 も た ら し て い た 」 と 「 て い た 」形 で 書 か れ て い る が 、「 も た ら す 」の よ う に「 る 」形 が よ い 。用 例( 4 ) は「 住 ん だ 」の「 た 」形 は「 住 ん で い る 」の よ う に「 て い る 」形 に 、用 例( 5 ) は 「 希 望 し た 」 の 「 た 」 形 は 「 希 望 し て い た 」 の 「 て い た 」 形 に 、 用 例 ( 6 ) は 「 信 じ て い る 」 の 「 て い る 」 形 は 「 て い た 」 形 に 、 そ れ ぞ れ 修 正 し た 方 が よ り 自 然 な 言 い 方 に な る 。 よ っ て 、 こ の よ う な 誤 用 が 生 じ る 要 因 を 解 明 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 0.2 研究対象および使用データ 本 研 究 で は 日 本 語 学 習 者 の 中 で も 特 に 中 国 語 母 語 話 者2に よ る テ ン ス・ア ス ペ ク ト の 誤 用 例3を 対 象 と す る 。以 下 、全 体 的 な 誤 用 パ タ ー ン に つ い て 考 察 し た 上 で 、 本 研 究 の 対 象 に つ い て 述 べ る 。 テ ン ス・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 パ タ ー ン に つ い て 、于(2011)は『中国語母語話 者 の 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス Ver.1』に基づいて図 1 のように誤用パター ン を ま と め て い る 。 対 象 と な る 誤 用 例 は 962 例である。 図1 誤 用 の 特 徴 ( Ver.1)( n=962)( 一 部 修 正 ) 2 本 研 究 の 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 は 個 人 、 学 校 教 育 機 関 を 除 き 、 主 に 大 学 な ど の 高 等 教 育 機 関 で の 学 習 者 を 指 す 。 3 本 研 究 に お け る 誤 用 例 は 口 頭 、発 音 の 誤 用 で は な く 、主 に 作 文 に 見 ら れ る 誤 用 例 で あ る 。 11.0% 31.0% 8.6% 23.4% 0.5% 1.2% 2.3% 8.8% 3.2% 5.3% 2.2% 2.5% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0%

(14)

3 図 1 を誤用の発生比率が高い 誤用パターンの順に並べ替えると図 2 のように な る4 図 2 誤 用 の 特 徴 ( Ver.1)( n=962) 同 コ ー パ ス は 更 新 さ れ 、 デ ー タ 量 も 追 加 さ れ た た め 、 本 研 究 で は 『 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス Ver.8』に基づ いて、 誤用パ ターン の頻 度 を 再 調 査 し た も の が 図 3 である。誤用例総数は 1796 例に上っている 。 図3 誤 用 の 特 徴 ( Ver.8)( n=1796) 4 こ こ で 言 う 「 る 」 形 は 「 走 る 」「 食 べ る 」 の 他 、「 動 く 」「 聞 く 」 や 「 走 り ま す 」「 食 べ ま す 」 も 含 み 、 助 動 詞 「 だ 」、「 で あ る 」、「 で す 」 も 含 む も の と す る 。「 た 」 形 、「 て い る 」 形 、「 て い た 」 形 も 同 様 に 普 通 体 だ け で は な く 、 丁 寧 体 も 含 ん で い る 。 31.0% 23.4% 11.0% 8.8% 8.6% 5.3% 3.2% 2.5% 2.3% 2.2% 1.2% 0.5% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 35.2% 20.9% 13.8% 8.1% 7.0% 5.6% 2.2% 1.9% 1.9% 1.5% 1.4% 0.4% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0%

(15)

4 図 2 と図 3 を比較してみると、誤用のデータ量が増加したにも関わらず、各 誤 用 パ タ ー ン の 発 生 比 率 に は 大 き な 変 化 が 見 ら れ な い 。特 に 上 位 3 パターンの 誤 用 頻 度 の 順 位 は 同 じ で あ る 。 一 方 、 誤 用 パ タ ー ン に よ っ て 誤 用 の 比 率 が 異 な る こ と か ら 、 中 国 語 母 語 話 者 に よ る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 は 、 均 等 的 な も の で は な い と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 誤 用 し や す い も の と 誤 用 が 現 れ に く い も の と が あ る と い う こ と で あ る 。 こ の よ う な 分 布 は 、 学 習 の 困 難 点 を 明 ら か に す る た め の 手 掛 か り に な る で あ ろ う 。し か し 、図 3 における各誤用パターンを全 て 研 究 の 対 象 に す る 必 要 が あ る の で あ ろ う か 。 も ち ろ ん 、 誤 用 が 出 現 し た と い う こ と は 、 学 習 者 が 学 習 内 容 を 完 全 に 把 握 し て い な い こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 た だ し 、 誤 用 パ タ ー ン の 一 般 化 を 図 る に は 、 典 型 的 且 つ 主 な 誤 用 、 言 わ ば 出 現 頻 度 が 高 く 、 よ く 見 ら れ る も の を 対 象 と し て 絞 る 必 要 が あ る の で 、 本 研 究 で は 誤 用 の 頻 度 の 高 い も の を 中 心 に 考 察 す る 。 そ こ で 、改 め て 図 3 の誤用パターンに注目すると、各 誤用パターンのパーセ ン テ ー ジ の 数 値 に は ば ら つ き が 見 ら れ る 。 こ の よ う に 数 値 で 表 す と 客 観 性 を 持 ち 、 具 体 的 に ど の 数 値 を 判 断 の 基 準 に す る か は は っ き り 言 い 切 れ な い が 、 図 3 に お い て 10%以上のものは主な 誤用パターンであると考えられるであろう。「* る → た 」 は 35.2%、「*る→ている」は 20.9%、「*た→る」は 13.8%であり、 他 の 誤 用 パ タ ー ン に 比 べ て 数 値 が 圧 倒 的 に 高 く な っ て い る 。 す な わ ち 、 こ れ ら の パ タ ー ン の 誤 用 は 学 習 者 に と っ て 最 も 学 習 難 易 度 が 高 い も の で あ り 、 そ の 原 因 の 解 明 が な さ れ る べ き 対 象 で も あ る 。さ ら に 、10%以上の誤用パターン では 「*る→た」と「 *た→る」は互いにペアを成している。すなわち「る」形と「た」 形 の 使 用 に は 総 体 的 に 誤 用 が 多 く 生 じ て い る 。 一 方 、「*る→ている」の 誤用パ タ ー ン は 20.9%を占め、それとペアになる「*ている→る」の誤用パターンは 8.1%となっている。「*ている→る」の数値は 10%に達していないが、誤用の 発 生 比 率 で い う と 第 4 位であり、「*る→ている」の 誤用パターンとペアとなる。 そ の た め 、「 る 」形 と「 て い る 」形 の 使 用 を 考 察 す る に は 、二 つ の パ タ ー ン を 共 に 取 り 上 げ た 方 が 分 析 に 有 効 で あ る と 思 わ れ る 。 本 研 究 で は 以 上 の 誤 用 パ タ ー ン に 基 づ き 、 誤 用 の 発 生 頻 度 が 高 く 、 そ し て 誤

(16)

5 用 パ タ ー ン と し て 双 方 ペ ア に な っ て い る「*る→た」、「*た→る」、「*る→ている」、 「*ている→る」という四つの誤用パターンのみを対象とする。 そ の 一 方 、 研 究 対 象 以 外 の 誤 用 パ タ ー ン に も 目 を 向 け る 必 要 が あ る 。 パ ー セ ン テ ー ジ の 数 値 か ら 見 る と 、 研 究 対 象 以 外 の 誤 用 パ タ ー ン の 発 生 比 率 は か な り 低 い が 、 各 誤 用 パ タ ー ン に お い て は 互 い に ペ ア を 成 す も の が 含 ま れ て い る 。 例 え ば 、「*た→ていた」と「 *ていた→た」、及び「 *た→ている」と「 *ている→ た 」 の よ う な 誤 用 に つ い て 、 具 体 的 に ど の よ う な 使 用 場 面 に お い て 誤 用 が よ く 生 じ る の か 、 誤 用 の 要 因 及 び 誤 用 の メ カ ニ ズ ム は 何 な の か 、 テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 の 全 体 像 を 明 ら か に す る に は 、 こ れ ら の 誤 用 パ タ ー ン に つ い て も さ ら に 考 察 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 ま た 、 日 本 語 記 述 文 法 研 究 会 (2007:118-119)が「テンス形式によって文 が 表 す 事 態 は 時 間 軸 上 に 位 置 付 け ら れ る が , 基 準 と す る 時 点 は 主 文 末 と 従 属 節 と で 異 な り が あ る 。 主 文 末 で は , 非 過 去 形 と 過 去 形 は , 発 話 時 を 基 準 と し て 事 態 を 時 間 軸 上 に 位 置 付 け る5。」と 述 べ て い る の に 対 し 、従 属 節 で は 、「 主 文 の 述 語 の 成 立 時 を 基 準 と す る 場 合 と 発 話 時 を 基 準 と す る 場 合 と が あ る6。」 と 述 べ て い る 。 こ の よ う に 、 主 文 と 従 属 節 に お け る テ ン ス の 意 味 に は 相 異 が あ る た め 、 誤 用 を 分 析 す る 際 に 主 文 末 と 従 属 節 を 分 け て 分 析 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る が 、 本 研 究 で は 主 文 末 に お け る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 に 限 定 し 、 主 に 動 詞 述 語 文 の 主 文 末 に 見 ら れ る 「*る→た」、「*た→る」、「*る→ている」と「 *てい る→る」7の 誤 用 に 限 定 し て 考 察 す る こ と に す る 。 5「( 4 )佐 藤 の 家 に 遊 び に 行 く{ 行 く / 行 っ た }。( 5 )鈴 木 家 さ ん は 会 議 室 に{い る / い た }。 ( 4 )に お い て 、非 過 去 形「 行 く 」は 発 話 時 よ り あ と に 事 態 を 位 置 づ け ,過 去 形『 行 っ た 』 は 発 話 時 よ り ま え に 事 態 を 位 置 づ け て い る 。 ま た ,( 5 ) に お い て , 非 過 去 形 『 い る 』 は 発 話 時 を ま た い で 事 態 を 位 置 付 け ,過 去 形「 い た 」は 発 話 時 よ り 前 に 事 態 を 位 置 づ け て い る 。」( 日 本 語 記 述 文 法 研 究 会 2007: 118)。 6「( 6 ) 佐 藤 の 家 に 遊 び に{行 く / 行 っ た }と き , 鈴 木 に 初 め て 会 っ た 。( 7 ) 鈴 木 さ ん が 会 議 室 に{い る / い た }と き , 呼 ん で き た 。( 6 ) は 非 過 去 形 も 過 去 形 も 主 文 の 事 態 の 成 立 時 を 基 準 と す る 例 で あ る 。 非 過 去 形 「 行 く 」 は 事 態 を 主 文 の 事 態 の 成 立 以 後 に 位 置 づ け , 過 去 形 「 行 っ た 」 は 事 態 を 主 文 の 事 態 の 成 立 以 前 に 位 置 づ け て い る 。 一 方 ,( 7 ) は 非 過 去 形 が 主 文 の 事 態 の 成 立 時 を 基 準 と し , 過 去 形 が 発 話 時 を 基 準 と す る 例 で あ る 。 非 過 去 形 「 い る 」 は 主 文 の 事 態 の 時 点 を ま た い だ も の と し て 事 態 を 位 置 づ け , 過 去 形 「 い た 」 は 発 話 時 よ り ま え に 事 態 を 位 置 づ け て い る 。」( 日 本 語 記 述 文 法 研 究 会 2007: 119) 7 こ こ で 言 う 「 る 」、「 た 」、「 て い る 」、「 て い た 」 に は 普 通 体 だ け で は な く 、 丁 寧 体 も 含 ん で い る 。

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6 0.3 研究の目的 学 習 対 象 言 語 の 誤 用 分 析 の 目 的 に つ い て 、 長 友 ・ 迫 田 (1988:145)は次の よ う に 述 べ て い る 。 誤 用 分 析 の 目 的 は , 大 き く 分 け る と , ま ず 二 つ に 分 け ら れ る 。 一 つ は ,( ⅰ ) 誤 用 分 析 を 通 し て ,誤 用 を 生 み 出 す 原 因 と な る 学 習 者 の 言 語 習 得 過 程 を 明 ら か に し よ う と す る も の で あ り , も う 一 つ は ,( ⅱ ) 誤 用 分 析 を 通 し て , そ の 対 象 と な る 言 語 の 内 部 構 造 ,つ ま り ,文 法 の 体 系 的 規 則 を 明 ら か に し よ う と す る も の で あ る 。 つ ま り ,誤 用 分 析 は 一 方 で 言 語 学 習 者 の 内 部 を 明 ら か に し よ う と し ,も う 一 方 で 言 語 そ の も の の 内 部 を 明 ら か に し よ う と す る の で あ る 。( 中 略 ) 誤 用 分 析 の 基 本 的 な 目 的 は ,上 述 し た よ う な 二 つ の 目 的 に 分 け ら れ る が ,誤 用 分 析 に 何 ら か の 教 育 的 意 義 を 見 い だ そ う と す る 場 合 ,さ ら に 第 三 の 目 的 が 必 然 的 に 出 て く る 。そ れ は ,誤 用 分 析 に よ っ て 明 ら か に な っ た こ と を 教 育 の 場 で 生 か す た め の 方 策( 例 え ば ,新 し い 教 育 方 法 や 教 材 )を 提 示 す る と い う こ と で あ る 。 特 に ,言 語 教 育 に 携 わ る 者 と し て 誤 用 分 析 と 取 り 組 む 場 合 , こ の 第 三 の 目 的 を 果 た す こ と が 当 然 望 ま れ る 。 本 研 究 は 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト そ の も の に つ い て 研 究 す る も の で は な く 、 上 記 の 引 用 の う ち 、 第 三 の 目 的 に 相 当 す る 研 究 で あ る 。 す な わ ち 、 学 習 者 に よ る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 の 要 因 を 明 ら か に し て 、 教 育 の 場 に 生 か す こ と が 主 な 目 的 で あ る 。 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 及 び 学 習 に つ い て は 生 越 (1991)、 猪 崎 (1994)、 黒 野 ( 1995、 1998)、 魚 住 ( 1998)、 白 井 ( 1998)、許 ( 2005)、 菅 谷 (1999)、小山( 2004)など多くの先行 研 究が ある。しかし、 中 に は「てい る 」 形 の よ う な 個 別 の 研 究 が 多 く 、 テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト 形 式 の 誤 用 を 体 系 的 に 研 究 し た も の は 多 く な い の が 現 状 で あ る 。 ま た 、 誤 用 の 要 因 に 関 し て は 、 多 く が 母 語 の 負 の 転 移 に よ る も の と 指 摘 さ れ て い る が 、 母 語 の 負 の 転 移 だ け が 誤 用 の 要 因 と は 考 え ら れ な い 。 そ こ で 、 母 語 の 負 の 転 移 以 外 の 要 因 に つ い て 、 母 語 を 限 定 し た 上 で 、 さ ら に 詳 細 に 分 析 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 ま た 、 教 育 現

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7 場 で テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト に 関 す る 表 現 形 式 と 意 味 の 関 係 や 形 式 間 の 使 い 分 け を ど の よ う に 教 え れ ば よ い か と い っ た 問 題 を 考 え る 際 に 、 根 拠 も し く は 基 準 と な る も の が 必 要 で あ る 。 そ の た め に は 、 誤 用 パ タ ー ン と 教 科 書 と の 関 わ り に つ い て の 研 究 も 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 本 研 究 に お け る 研 究 の 目 的 は 以 下 の 2 点 で あ る 。 1 )研 究 対 象 で あ る 誤 用 パ タ ー ン に お け る 誤 用 の 要 因 を 分 析 し 、誤 用 の メ カ ニ ズ ム を 解 明 す る 。 2 ) 研 究 対 象 で あ る 誤 用 パ タ ー ン に 基 づ い て 教 科 書 の 改 善 案 を 提 案 す る 。 0.4 研究の方法と用語の説明 前 述 の と お り 、 本 研 究 の 2 つ の 目 的 を 実 現 さ せ る た め の 詳 細 な 方 法 に 関 し て 、 ま ず 母 語 の 負 の 転 移 、 過 剰 般 化 、 ね じ れ 誤 用 、 文 法 知 識 の 欠 如 な ど 主 な 誤 用 の 要 因 を 区 別 す る 。 そ し て 、 各 要 因 に お け る 詳 細 な 誤 用 パ タ ー ン に つ い て 分 析 す る 。 分 析 に あ た っ て 、 日 本 語 学 及 び 日 本 語 と 中 国 語 と の 対 照 研 究 の 見 地 か ら も 考 察 す る 。 本 研 究 に お け る 用 語 に つ い て は 、 以 下 の 先 行 研 究 の 定 義 を 援 用 す る 。 母 語 の 負 の 転 移 :

「 母 語 か ら の 転 移 (transfer from L1 あ る い は L1 transfer)」 と は 、 私 達 が 第 二 言 語 を 学 習 す る 際 に 、 母 語 の 特 性 に 影 響 を 受 け る こ と を 言 う 。 転 移 は 、 さ ら に 正 の 転 移 (positive transfer) と 負 の 転 移 ( negative transfer) に 下 位 区 分 で き る 。 正 の 転 移 と は 、 母 語 か ら の 影 響 が 習 得 上 良 い 方 向 に 働 く 場 合 で 、 そ の た め 習 得 を 促 進 さ せ る と 一 般 に 考 え ら れ て い る 。 負 の 転 移 と は 、 母 語 の 特 性 が 第 二 言 語 に 悪 い 方 向 に 働 く 場 合 で 、 別 名 、 干 渉 (interference) と も 呼 ば れ 、 習 得 を 遅 延 さ せ る 場 合 が 多 い と 考 え ら れ て い る 。 母 語 か ら の 転 移 は 、 音 声 の 領 域 、 語 彙 の 領 域 、 形 態 ・ 統 語 の 領 域 、 意 味 の 領 域 な ど 、 言 語 の あ ら ゆ る 領 域 に さ ま ざ ま な 形 で 生 じ 得 る 。( 白 畑 な ど 2010: 2) 過 剰 般 化 : 過 剰 一 般 化 は 、 過 剰 般 化 あ る い は 過 般 化 と も 呼 ば れ る 。 言 語 内 エ ラ ー の 一 種 で 、 あ る

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8 1 つ の 規 則 を 別 の 語 へ も 適 用 で き る と 考 え て 広 く 一 般 化 す る こ と で あ る 。( 迫 田 2002: 30) ね じ れ 誤 用 : 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 は 、 中 国 語 に な い 文 法 規 則 の 適 用 に つ い て 自 分 の 判 断 に 基 づ い て 行 う の で 、 そ の 判 断 の 過 程 に お い て は 、 使 用 者 の 理 解 と 文 法 規 則 の 予 期 す る 内 容 と で は ミ ス マ ッ チ が 生 じ る こ と に よ っ て 、 現 れ て く る 誤 用 の こ と で あ る 。( 于 2012: 43) 0.5 誤用例の出典 本 研 究 の 全 て の 誤 用 例 は 『 中 国 語 母 話 話 者 の 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス Ver.8』から抽出し たも のである。『中 国語母 話話者の 日本語学 習者 の誤用コー パ ス 』 は 関 西 学 院 大 学 の 于 康 氏 に よ っ て 誤 用 研 究 の た め に 開 発 さ れ た コ ー パ ス で あ る8。 于 (2011、 2012) に よる と 、同 コ ー パ ス は 対象 を 中国 語 母語 話 者 に 限 定 し た 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス で あ り 、 主 に 中 国 国 内 の 大 学 生 や 院 生 に よ る 作 文 を 中 心 と し て い る 。 こ こ で い う 『 作 文 』 と は 、「 感 想 文 、 研 究 計 画 書 、 レ ポ ー ト 、 宿 題 、 メ ー ル 、 翻 訳 、 外 交 通 訳 の 録 音 資 料 、 卒 業 論 文 、 修 士 論 文 、 と い っ た 文 章 化 さ れ た も の で 、 話 し 言 葉 の 記 録 で は な い も の 」( 于 2012: 36) を 指 す 。 ま た 、 コ ー パ ス に お け る タ グ に つ い て ( 于 2011:80)は、「性別、学 年 別 、 日 本 語 学 習 年 数 別 、 滞 日 年 数 別 、 文 章 の パ タ ー ン 別 の 他 に 、 誤 用 の 種 類 別 を 設 け 、 正 誤 例 も 同 時 に 表 示 す る よ う に し て い る 」 と 述 べ て い る が 、 本 研 究 で は 研 究 内 容 に 応 じ 、 性 別 情 報 を 省 き 、 以 下 の よ う に 用 例 に 示 し た 。 学 習 者 情 報 の 例 : 中 国2 年/学習歴 1 年/滞日 0/感想文 学 習 者 情 報 に お い て 、学 年 別 の「 中 国2 年」は中国の大学 2 年生であること を 表 し て い る 。日 本 の 大 学 で 学 習 す る 場 合 、「 日 本 2 年」のように示している。 8 『 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス 』 の 詳 細 な 内 容 に つ い て 、 于 (2011、 2012) を 参 照 さ れ た い 。

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9 こ の よ う に 、 学 習 者 の 学 習 年 数 と 背 景 な ど の 情 報 も タ グ と し て 付 与 さ れ 、 各 学 習 段 階 に お け る 誤 用 の 状 況 な ど に つ い て 考 察 す る こ と が で き る 。 現 時 点 で 同 コ ー パ ス はVer.8 に更新され、誤用ファイル数は 14721 になって い る 点 に 注 意 さ れ た い 。 コ ー パ ス の 容 量 か ら 見 る と 、 必 ず し も 十 分 と は 言 い 切 れ な い が 、 全 く 少 な い と も 言 い 切 れ な い で あ ろ う 。 よ っ て 、 中 国 語 母 語 話 者 を 限 定 し て 誤 用 研 究 を 行 う に は 、 誤 用 の 傾 向 性 と 誤 用 に つ い て 分 析 す る に は 有 効 で あ る と 言 え よ う 。 こ の よ う な コ ー パ ス を 用 い た 第 二 言 語 習 得 に つ い て 、迫 田(2009:31)は「日 本 に お け る 第 二 言 語 習 得 研 究 が 拡 大 と 深 化 を 遂 げ て い る 現 在 で も 、 公 開 さ れ て い る 学 習 者 コ ー パ ス は 極 め て 少 な い ( 鎌 田 2006)。その背景には、量的にも質 的 に も デ ー タ 収 集 が 難 し い 点 が 挙 げ ら れ る 。 中 で も 年 月 を か け て 特 定 の 学 習 者 を 研 究 対 象 と す る 縦 断 研 究 の 公 開 コ ー パ ス は ほ と ん ど 見 ら れ な い 」 と 述 べ て い る 。そ の た め 、日 本 語 教 育 の 研 究 分 野 に お い て 、『 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス 』 は 大 変 有 意 義 な も の で あ る 。 0.6 本研究の構成 本 研 究 の 構 成 は 次 の と お り で あ る 。 序 論 第 1 章 先 行 研 究 第 2 章 母 語 の 負 の 転 移 に 起 因 す る 誤 用 第 3 章 過 剰 般 化 に 起 因 す る 誤 用 第 4 章 ね じ れ 誤 用 に 起 因 す る 誤 用 第 5 章 中 国 語 母 語 話 者 に よ る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 の 傾 向 と 教 科 書 と の 関 わ り 結 論 各 章 の 内 容 に つ い て は 、 以 下 の と お り で あ る 。 序 論 で は 、 本 研 究 の 前 提 と し て 、 テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 に 関 す る 先 行 研 究 に お い て 問 題 は な い の か 、 問 題 が あ れ ば 、 ど の よ う な 問 題 が あ る の か 、 そ し

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10 て 本 研 究 の 必 要 性 に つ い て 言 及 す る 。 具 体 的 に は 、 ま ず 問 題 提 起 、 研 究 対 象 と 研 究 の 目 的 に つ い て 述 べ る 。 次 に 、 研 究 の 方 法 、 用 語 の 説 明 及 び 本 研 究 の 誤 用 例 の 出 典 で あ る 『 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 の 誤 用 コ ー パ ス 』 を 使 用 す る 有 効 性 に つ い て 述 べ る 。 最 後 に 本 研 究 の 構 成 、 各 章 の 内 容 に つ い て 概 説 す る 。 第 1 章ではテンス・アスペクトにおける主な 先行研究について、議論の 対象 を 取 り 上 げ 、 未 解 決 の 問 題 点 を 明 ら か に す る 。 本 研 究 は 中 国 語 母 語 話 者 に よ る 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 に つ い て 研 究 す る た め 、 ま ず 学 習 対 象 言 語 で あ る 日 本 語 と 母 語 で あ る 中 国 語 に お い て テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト は ど の よ う に 表 現 さ れ て い る か に つ い て 述 べ る 。 両 言 語 の 表 現 を 比 較 し や す く す る た め 、 主 に コ ピ ュ ラ 文 、 存 在 文 、 形 容 詞 述 語 文 と 動 詞 述 語 文 を 中 心 に 用 例 を 取 り 上 げ な が ら 、 両 言 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 表 現 に は 形 式 と 意 味 の つ な が り に ど の よ う な 相 違 点 が 見 ら れ る か を 明 ら か に す る 。ま た 、本 研 究 は 誤 用 研 究 の 一 環 で あ り 、 第 二 言 語 習 得 の 研 究 に も 関 わ る た め 、 先 行 研 究 は 第 二 言 語 習 得 に お け る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 研 究 に 関 す る も の も 含 め て 考 察 す る 。 第 2 章 か ら 第 4 章 は 研 究 対 象 の 誤 用 例 に つ い て 、 主 に 各 誤 用 の 要 因 を 中 心 に 詳 細 な 分 析 を 進 め て い く 。 こ こ で は 誤 用 が 母 語 の 負 の 転 移 、 過 剰 般 化 、 ね じ れ 誤 用 の 三 つ に 起 因 す る こ と を 論 じ る 。 第 2 章 は 母 語 の 負 の 転 移 に 起 因 す る 誤 用 を 対 象 に 考 察 す る 。 誤 用 の 要 因 と し て 、 な ぜ 母 語 の 負 の 転 移 だ と 判 断 で き る の か 、 母 語 で あ る 中 国 語 の 表 現 と 比 較 対 照 し た 上 で 、 中 国 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 表 現 は 学 習 に お い て ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し て い る の か に つ い て 検 討 す る 。 そ し て 、 誤 用 例 を 分 析 し た 上 で 、 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 表 現 に お い て ど の よ う な 用 法 が よ く こ の 種 の 誤 用 に 見 ら れ る の か に つ い て 考 察 し 、 母 語 の 負 の 転 移 に 起 因 す る 誤 用 の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に す る 。 第 3 章 は 過 剰 般 化 に 起 因 す る 誤 用 例 を 対 象 に 考 察 す る 。 誤 用 の 要 因 を 分 析 す る に あ た っ て 、 ま ず 学 習 歴 な ど の 学 習 者 情 報 か ら 誤 用 の 要 因 が 単 純 ミ ス に 起 因 す る か 否 か を 判 断 し 、 そ の 後 母 語 の 負 の 転 移 と 関 連 が あ る か ど う か に つ い て 検 証 す る 。 こ の よ う に 、 日 本 語 と 中 国 語 を 比 較 対 照 し な が ら 、 誤 用 の 要 因 と 考 え

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11 ら れ る 要 素 を 排 除 し て い く 方 法 で 過 剰 般 化 に よ る も の で あ る か ど う か に つ い て の 分 析 を 行 う 。 ま た 、 テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト マ ー カ ー を 過 剰 に 使 用 す る 要 因 に つ い て 検 討 す る 。 第 4 章 は ね じ れ 誤 用 に 起 因 す る 誤 用 を 考 察 す る 。 ね じ れ 誤 用 に つ い て 、 于 (2012:43)は「学習者 は、マーカーを選択するかどうかの際に、これまで蓄 積 し て き た 母 語 と 目 標 言 語 の 知 識 を 駆 使 し な が ら 自 分 な り に 解 釈 し て マ ー カ ー の 選 択 を 行 っ た こ と に 起 因 す る か と 思 わ れ る 。 し た が っ て 、 母 語 の 干 渉 や 過 剰 般 化 の 影 が か す か に 見 え る も の の 、そ れ ぞ れ の ど れ か に 起 因 す る も の で は な い 。」 と 指 摘 し て い る 。そ し て 、ね じ れ 誤 用 の 定 義 と し て 、「 こ こ で 言 う『 ね じ れ 誤 用 』 と は 、 中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 は 、 中 国 語 に な い 文 法 規 則 の 適 用 に つ い て 自 分 の 判 断 に 基 づ い て 行 う の で 、 そ の 判 断 の 過 程 に お い て は 、 使 用 者 の 理 解 と 文 法 規 則 の 予 期 す る 内 容 と で は ミ ス マ ッ チ が 生 じ る こ と に よ っ て 、 現 れ て く る 誤 用 、 の こ と で あ る 。」 と 述 べ て い る 。 つ ま り 、 ね じ れ 誤 用 は 単 純 な 母 語 の 負 の 転 移 あ る い は 過 剰 般 化 に よ っ て 生 じ る 誤 用 で は な く 、 複 雑 な 要 因 が 絡 み 合 っ て 生 じ た 誤 用 で あ る と 言 え よ う 。 と こ ろ が 、于(2012)はねじれ誤用の現象について は指摘にとどまり、誤用の中に ど の よ う な 要 因 で ね じ れ て い る か 、 ね じ れ 誤 用 の 傾 向 と 特 徴 に つ い て の 詳 細 な 分 析 は 行 っ て い な い 。 し た が っ て 、 ね じ れ 誤 用 だ と 思 わ れ る 誤 用 に お い て 、 誤 用 の 要 因 と し て 具 体 的 に ど の よ う な 要 素 が 含 ま れ て い る の か 、 多 く の 要 素 が あ る 場 合 、 ど の よ う な パ タ ー ン が 見 ら れ る の か 、 こ れ ら の 問 題 を 解 決 す る た め 、 そ し て 、ね じ れ 誤 用 の 実 態 を 明 ら か に す る に は 、「 ね じ れ 」誤 用 の 現 象 に つ い て 再 検 討 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 そ こ で 、本 研 究 で は「*る→ている」、「*ている→る」、「*る→た」、「*た→る」 と い う 四 つ の 誤 用 パ タ ー ン を 対 象 に 、ど の よ う な 誤 用 を ね じ れ 誤 用 と 見 な す か 、 そ し て 複 雑 な 要 因 と は そ れ ぞ れ ど の よ う な も の な の か 、 さ ら に ど の よ う な 誤 用 の パ タ ー ン が 見 ら れ る か を 考 察 し 、 ね じ れ 誤 用 の 実 態 を 明 ら か に し て い く 。 第 5 章 で は 、 第 2 章 か ら 第 4 章 で 考 察 し た 中 国 語 母 語 話 者 に お け る 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 の 観 点 か ら 、 日 本 語 学 習 者 用 の 教 科 書 に 対 し て 、 提

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案 を 行 う 。 つ ま り 、 研 究 対 象 の 誤 用 例 を 中 心 に 、 学 習 者 に よ る 誤 用 の 傾 向 性 と 特 徴 に 基 づ き 、 教 科 書 に お け る 説 明 の 内 容 を 考 察 し た 上 で 、 日 本 語 教 育 に お け る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 教 育 方 法 に つ い て 提 案 す る 。

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1 章 先行研究

1.1 はじめに 日 本 語 の テ ン ス と ア ス ペ ク ト に 関 す る 研 究 は 、 日 本 語 学 を は じ め 、 第 二 言 語 習 得 、 対 照 分 析 、 誤 用 分 析 な ど 数 多 く の 研 究 分 野 で 行 な わ れ て い る 。 本 研 究 は 中 国 語 母 語 話 者 に よ る 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 例 を 対 象 と し 、 誤 用 の 要 因 と 誤 用 の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。 そ の た め に 、 ま ず 日 本 語 と 中 国 語 に お け る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 形 式 と 意 味 の つ な が り の 相 違 に つ い て 述 べ 、 次 に 日 本 語 の 第 二 言 語 習 得 に お け る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 先 行 研 究 に つ い て 考 察 す る 。 1.2 日本語と中国語におけるテンス・アスペクトの形式と意味のつながりの 相 違 に つ い て テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト は 主 に 述 語 に 関 わ っ て い る た め 、 日 本 語 と 中 国 語 に お け る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 形 式 と 意 味 の 相 違 を 明 ら か に す る に は 、 両 言 語 の 述 語 文 に つ い て 見 る 必 要 が あ る 。 以 下 に コ ピ ュ ラ 文 、 存 在 文 、 形 容 詞 述 語 文 と 動 詞 述 語 文 を 中 心 に 、 日 本 語 と そ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 用 例9を 取 り 上 げ る 。 コ ピ ュ ラ 文 の 用 例 ( 7 )a 彼は去年学生だった。 b 他去年是学生。 ( 8 )a 彼は今年学 生だ。 b 他今年是学生。 ( 9 )a 彼は来年学 生だ。 b 他明年是学生。 存 在 文 の 用 例 (10)a 昨日、本が机の上にあった。 b 昨天书在桌子上。 (11)a 今日、本が机の上にある。 b 今天书在桌子上。 9( 7 ) ~ (21) の 各 用 例 は 作 例 で あ る 。

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14 (12)a 明日、本が机の上にある。 b 明天书在桌子上。 (13)a 昨日、教室に学生が二人いた。 b 昨天教室里有两个学生。 (14)a 今日、教室に学生が二人いる。 b 今天教室里有两个学生。 (15)a 明日、教室に学生が二人いる。 b 明天教室里有两个学生。 形 容 詞 述 語 文 の 用 例 (16)a 以前キャンパス は綺麗だった。 b 以前校园很漂亮。 (17)a 現在キャンパスは綺麗だ。 b 现在校园很漂亮。 (18)a 将来キャンパス は綺麗だ。 b 将来校园很漂亮。 動 詞 述 語 文 の 用 例 (19)a 彼は昨日この本を読んだ。 b 他昨天看了/过这本书。 c 彼は昨日この本を読んでいた。 d 他昨天看了/过这本书。 (20)a 彼は今この本を読んでいる。 b 他现在在看这本书。 (21)a 彼は明日この本を読む。 b 他明天看这本书。 日 本 語 の 用 例 を 見 る と 、 コ ピ ュ ラ 文 、 存 在 文 と 形 容 詞 述 語 文 の 過 去 を 表 す 場 合 の 述 語 の 部 分 は そ れ ぞ れ 「 学 生 だ っ た 」、「 あ っ た 」、「 い た 」、「 綺 麗 だ っ た 」 の よ う に 「 た 」 形 が 使 わ れ て い る 。 一 方 、 現 在 と 未 来 を 表 す 場 合 は 「 学 生 だ 」、 「 あ る 」、「 い る 」、「 綺 麗 だ 」 の よ う に 「 る 」 形 が 使 わ れ て い る 。 そ し て 、 動 詞 述 語 文 に お い て 、 過 去 を 表 す 場 合 は 「 た 」 形 と 「 て い た 」 形 が 用 い ら れ 、 現 在 と 未 来 を 表 す 場 合 は そ れ ぞ れ 「 て い る 」 形 と 「 る 」 形 が 用 い ら れ て い る 。 こ れ ら の こ と か ら 、 日 本 語 の 各 述 語 文 に は テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト を 表 す マ ー カ ー が 存 在 し て い る こ と が わ か る 。 日 本 語 に お け る テ ン ス・ア ス ペ ク ト マ ー カ ー に 関 し て 、工 藤(1995:36)は 「 ス ル 」、「 シ タ 」、「 シ テ イ ル 」、「 シ テ イ タ 」と い う 4 つの単語レベルの形態論 形 式 に よ る ア ス ペ ク ト ・ テ ン ス 体 系 を 考 察 の 対 象 と し て い る 。 そ の な か で 、 奥 田(1977)及び鈴木(1979)によって体系化された ものを〈基本的なアスペク

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15 ト ・ テ ン ス 体 系 〉 と し て 捉 え な お し 、 表 1 の よ う に 提 示 し て い る 。 表 1 基 本 的 な ア ス ペ ク ト ・ テ ン ス 体 系 ア ス ペ ク ト テ ン ス 完 成 相 継 続 相 非 過 去 ス ル シ テ イ ル 過 去 シ タ シ テ イ タ こ こ で 重 要 な こ と は 、 ア ス ペ ク ト と テ ン ス が 密 接 し て 関 連 し て い る こ と で あ る 。 こ の こ と に つ い て 、 工 藤 (1995:36)は以下のように述べている。

① ア ス ペ ク ト も テ ン ス も ,marked form と unmarked form の 相 補 的 対 立 関 係 に よ る 一 般 的 文 法 的 意 味 で あ る 。 ② ア ス ペ ク ト と テ ン ス は ,〈 内 的 時 間( の 様 態 )〉か〈( 発 話 と の )外 的 時 間 〉か で 対 立 し つ つ , 同 時 に ,〈 時 間 〉 を 表 わ す 点 で 統 一 し て い る 。 以 上 の 体 系 に つ い て 、工 藤(1995:37)は「スル(シタ)とシテイル(シテ イ タ ) に よ っ て 表 現 さ れ る 〈 完 成 性 ― 継 続 性 〉 の 対 立 が , 現 代 日 本 語 の 最 も 基 本 的 な ア ス ペ ク ト の 対 立 で あ る 」 と 指 摘 し 、 ス ル 形 式 ( 本 研 究 に お け る 「 る 」 形 )と シ タ 形 式( 本 研 究 に お け る「 た 」形 )に つ い て 、「 ス ル 形 式 ,シ タ 形 式 は , 単 な る 非 過 去 形 , 過 去 形 で は な く , 完 成 相 非 過 去 形 , 完 成 相 過 去 形 で あ っ て , ア ス ペ ク ト 的 把 握 ぬ き に , テ ン ス 的 意 味 を 実 現 す る こ と は で き な い の で あ る 。 形 態 論 的 形 式 に お け る , ア ス ペ ク ト 的 把 握 と テ ン ス 的 把 握 の 統 合 性 を 認 め て お か な け れ ば な ら な い 。」( 工 藤 1995:37)とも述べている。 一 方 、 中 国 語 の 用 例 を 見 る と 、 コ ピ ュ ラ 文 、 存 在 文 、 形 容 詞 述 語 文 に は そ れ ぞ れ “ 是 ”、“ 在 ” と “ 有 ”、“ 漂 亮 ” と い う 述 語 が 使 わ れ て い る こ と が わ か る 。 そ し て テ ン ス と し て の 語 形 変 化 は 見 ら れ な い 。 ま た 、 動 詞 述 語 文 に お い て 、 過 去 を 表 す 場 合 に は 、“ 看 了 ”あ る い は“ 看 过 ”と い う 表 現 の 中 に 、“ 了 ”と“ 过 ”

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16 と い う ア ス ペ ク ト マ ー カ ー が 使 わ れ て い る 。 そ し て 、 現 在 を 表 す 場 合 に は “ 在 看 ” と い う 表 現 の よ う に “ 在 ” と い う ア ス ペ ク ト マ ー カ ー が 使 わ れ 、 未 来 を 表 す 場 合 は 単 独 形 式 “ 看 ” そ の ま ま の 形 と な っ て い る 。 こ の よ う に 用 例 を 見 比 べ て み る と 、 中 国 語 に は テ ン ス を 表 す マ ー カ ー は 存 在 し な い が 、 ア ス ペ ク ト マ ー カ ー は 存 在 し て お り 、 さ ら に 動 詞 述 語 文 の 過 去 と 現 在 を 表 す 場 合 に し か 使 わ れ て い な い こ と が わ か る 。 中 国 語 で 過 去 、 現 在 と 未 来 の よ う な テ ン ス を 明 確 に 表 す 場 合 、 用 例 に 用 い ら れ た “ 去 年 ”、“ 今 年 ”、“ 明 年 ”、“ 昨 天 ”、“ 今 天 ”、“ 明 天 ” な ど の 時 間 詞 で 表 現 す る 。そ れ に 対 し 、過 去 の 動 作・行 為 を 表 す 場 合 に は 、(19b)と(19d)の“了” と“ 过 ”の よ う な ア ス ペ ク ト マ ー カ ー が 存 在 す る 。“ 了 ”は 動 作・行 為 の 完 了 あ る い は 実 現 の 意 味 を 表 し 、“ 过 ”は「 か つ て あ る こ と を し た こ と が あ る 」を 意 味 す る ( 劉 他 1996:320)。そして、現在の動作・行為を表す場合には 、(20b) に 使われている“在”がある。この“ 在”は木村(1982)10、刘 他(2001)11 が 述 べ て い る よ う に 、 副 詞 の “ 在 ” は 動 作 の 進 行 中 と い う 意 味 を 表 し て い る 。 一 方 、(22) の よ う に 、 中 国 語 に は “ 着 ” と い う 日 本 語 の 「 て い る 」 に 相 当 す る ア ス ペ ク ト マ ー カ ー も あ る 。 (22)她的眼里闪动着泪花。(彼女の目には涙が光っている。) “ 在 ”と“ 着 ”の 相 違 に つ い て 、劉 他(1996:316-317)は「“着”は主に一 種 の 持 続 的 状 態 を 表 す 。た と え ,あ る 動 作 が 持 続 し て い る こ と を 表 し て い て も , そ れ は 多 く の 場 合 , あ る 事 物 が お か れ て い る , 或 い は 呈 し て い る 状 態 を 説 明 , 描 写 す る た め で あ る 。 す な わ ち ,“ 着 ” の は た ら き は 描 写 す る こ と に あ る12。」 と 述 べ て い る 。 一 方 、“ 着 ” に 関 し て 「“ 着 ” は 動 作 の 進 行 を 表 す “ 在 ” と は 異 な っ て い る 。“ 在 ”の は た ら き は 動 作 の 進 行 を 叙 述 す る こ と に あ り ,描 写 に あ る 10「『 在 』は 話 者 が 起 点 と す る 中 心 的 時 点 即 ち『 相 対 的 現 在 』と 出 来 事 の 実 現 と が 同 時 で あ る こ と を 示 し 、 昨 天 我 来 的 时 候 、 他 在 吃 午 饭 。( 昨 日 私 が 来 た 時 、 彼 は ち ょ う ど 昼 食 を 食 べ て い る と こ ろ だ っ た ) 如 果 一 刻 钟 后 找 他 、 他 一 定 在 吃 午 饭 。( も し 十 五 分 後 に 彼 を 訪 ね た ら 、 き っ と 昼 食 を 食 べ て い る と こ ろ だ ろ う )」( 木 村1982: 21) 11副 词 “ 在 ” 表 示 动 作 的 进 行 。」( 副 詞 「 在 」 は 動 作 の 進 行 を 表 す 。)( 刘 他2001:232) 12例 え ば 、① 赵 永 进 静 静 地 听 着 ,一 声 也 不 响 。( 趙 永 進 は じ っ と だ ま っ て 聞 い て い て 一 言 も 言 わ な か っ た 。) ② 她 的 眼 里 闪 动 着 泪 花 。( 彼 女 の 目 に は 涙 が 光 っ て い る 。) ③ 交 通 艇 飕 飕 地 向 前 疾 驰 着 。( 交 通 艇 が 音 を た て て 疾 走 し て い る 。)」( 劉 他1996: 316-317)

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17 の で は な い13。」 と 述 べ て い る 。 ま た 、菅 谷(1999)では日本語と中国語の動詞 を意味素性とアスペクトの観 点 か ら 比 較 し 、 以 下 の よ う な 表 を 提 示 し て い る 。 表 2 日 中 動 詞 の 意 味 素 性 に よ る 対 照 及 び ア ス ペ ク ト の 対 照 ( 菅 谷 1999: 36)14 「V- テ イ ル 」 日 本 語 動 詞 中 国 語 動 詞 中 国 語 ア ス ペ ク ト 〈 進 行 中 〉 「 + 過 程 」「 - 限 界 」 待 つ 、 歩 く 笑 う 、 遊 ぶ 聞 く 、 見 る 「 + 過 程 」「 - 限 界 」 等 , 走 笑 , 玩 「 + 過 程 」「 + 限 界 」 听 , 看 在 《 進 行 す る 前 景 》 着 《 進 行 す る 背 景 》 了 《 継 続 》 《 実 現 ・ 気 づ き 》 〈 結 果 の 状 態 〉 「 - 過 程 」「 + 限 界 」 立 つ 、 握 る 生 え る 、 咲 く 並 ぶ 、 植 わ る 「 - 過 程 」「 - 限 界 」 「 + 状 態 」 站 , 握 长 , 盛 开 着 〈 状 態 の 持 続 〉 「 + 過 程 」「 + 限 界 」 「 + 状 態 」 摆 , 种 穿 , 戴 ( 眼 镜 ) 「 + 過 程 」「 + 限 界 」 着 る 、( 眼 鏡 を ) か け る 「 - 過 程 」「 + 限 界 」 死 ぬ 、 抜 け る 「 - 過 程 」「 + 限 界 」 死 , 掉 了 〈 結 果 の 持 続 〉 13「 ④ 小 明 在 打 篮 球 。( 明 く ん は バ ス ケ ッ ト ボ ー ル を し て い ま す 。) ⑤ 一 班 在 上 课 , 二 班 在 进 行 课 堂 讨 论 。(1 組 は 授 業 を し て お り ,2 組 は ク ラ ス 討 論 を し て い ま す 。)」( 劉 他 1996: 317) 14 「 そ れ ぞ れ の 動 詞 が 持 つ 複 数 の 素 性 の う ち 、太 字 で 示 し た 動 詞 の 意 味 素 性 が そ れ ぞ れ の ア ス ペ ク ト 形 式 と 結 合 し て 日 本 語 の 『V- テ イ ル 』 に 対 応 す る 中 国 語 の ア ス ペ ク ト を 表 す 。」( 菅 谷1999: 36)

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18 表 2 を 見 る と 、 日 本 語 と 中 国 語 の 動 詞 で は 意 味 素 性 が 異 な る こ と が わ か る 。 特 に 、〈 進 行 中 〉と〈 結 果 の 状 態 〉の 意 味 を 表 す 場 合 、日 本 語 で は「 て い る 」で 全 部 対 応 で き る が 、 中 国 語 で は 複 数 の ア ス ペ ク ト マ ー カ ー と 共 起 す る こ と に な る 。 す な わ ち 、 動 詞 の 種 類 に よ っ て 、 共 起 す る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト マ ー カ ー が 異 な る 。 こ の よ う に 、 コ ピ ュ ラ 文 、 存 在 文 、 形 容 詞 述 語 文 、 動 詞 述 語 文 を 中 心 に 、 日 本 語 と 中 国 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 表 現 に つ い て 比 較 し て み る と 、 各 述 語 文 に お け る 両 言 語 の 制 約 が 異 な っ て い る こ と が う か が え る 。 日 本 語 は 体 系 的 に 機 能 す る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト マ ー カ ー を 持 っ て い る 。 一 方 で 、 中 国 語 は テ ン ス を 表 す マ ー カ ー は 存 在 せ ず 、 ア ス ペ ク ト マ ー カ ー の み が 存 在 す る 。 た だ し 、 ア ス ペ ク ト マ ー カ ー に つ い て 、 日 本 語 と 中 国 語 の 形 式 は 一 対 一 に 対 応 し て い な い た め 、 用 い ら れ る 場 面 及 び 用 法 に 相 違 が 見 ら れ る 。 こ れ ら の 相 違 が 見 ら れ る 要 因 は 、日 本 語 と 中 国 語 の 時 間 表 現 に お け る 発 想 の 違 い の 反 映 で あ る と 考 え ら れ る 。 1.3 日本語の第二言語習得に おけるテンス・アスペクトの研究 渋 谷(1988)と長友(1993)によると、第二言語習得の研究は 1960 年代の 誤 用 分 析 を き っ か け に 始 ま っ た が 、 日 本 語 教 育 に お け る 習 得 研 究 に 関 し て は ま だ 十 分 に 発 達 し て い な い と い う 。 さ ら に 、 渋 谷 (1988:184)は日本語教育に お け る 誤 用 研 究 は 、一 般 的 に「 誤 用 の 発 見 」と「 誤 用 の 分 類 と そ の 原 因 の 解 明 」 と い う 進 め 方 の も と で 行 わ れ る と し て い る 。 ま た 、 そ の 応 用 段 階 に は 二 つ の 段 階 が あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 一 つ は 「 教 授 ( 法 ) へ の フ ィ ー ド バ ッ ク ( 前 以 て 説 明 す る ,強 化 を 行 う ,な ど )」で あ り 、も う 一 つ は「 対 照 研 究 も 含 め た 日 本 語 研 究 」を 指 向 す る も の で あ る 。そ こ で 、以 降 で は 渋 谷(1988)の方法論にの っ と っ て 日 本 語 の 第 二 言 語 習 得 に お い て ど の よ う な テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト 研 究 が 行 わ れ て い る か を 概 観 す る た め に 、 主 な 先 行 説 を 確 認 し て い く 。 ま ず 、 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト に お け る 誤 用 、 習 得 過 程 及 び 使 用 実 態 に つ い て 、 生 越 (1991)、石田(1991)、猪崎( 1993)、黒野(1995、1998)、菅 谷 (1999)の研究を取り上げる。

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19 ま ず 、生 越(1991)は韓国人学習者の作文を対象に 、テンス、アスペクト及 び ヴ ォ イ ス に 関 す る 誤 用 の 分 析 を 行 っ て い る 。 そ し て 、 誤 用 の タ イ プ を 「 タ → ( ル )15」、「 ル → ( タ )」、「 テ イ ル → ( ル )」、「 ル → ( テ イ ル )」 及 び 「 そ の 他 」 に 分 類 し た 。そ の 中 で も「 テ イ ル →( ル )」と い う タ イ プ の 誤 用 が 最 も 多 く 、そ の 次 に 多 い の は「 タ →( ル )」と い う タ イ プ の 誤 用 で あ る と 結 論 付 け て い る 。誤 用 の 要 因 に つ い て は 、 母 語 か ら の 干 渉 に よ る も の は 少 な く 、 学 習 者 の 習 熟 度 の 不 足 に よ る 誤 り が 多 い と 述 べ て い る 。 次 に 、菅 谷(1999)は中国語母語話者の作文を対象とし、連体修飾節におけ る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 に つ い て 分 析 を 行 っ た 。 分 析 に 際 し て 、 作 文 中 に 見 ら れ た 誤 用 を 5 つの型(Ⅰ型:タ形とするべきところをル形とした誤用。Ⅱ 型 : ル 形 と す る べ き と こ ろ を タ 形 と し た 誤 用 。 Ⅲ 型 : テ イ ル 形 ( テ イ タ 形 も 含 む ) と す る べ き と こ ろ を ル 形 ( タ 形 も 含 む ) と し た 誤 用 。 Ⅳ 型 : ル 形 ( タ 形 も 含 む ) と す る べ き と こ ろ を テ イ ル 形 ( テ イ タ 形 も 含 む ) と し た 誤 用 。 Ⅴ 型 : そ の 他 の 誤 用 。) に 分 類 し 、 分 析 の 結 果 に つ い て 以 下 の よ う に 述 べ て い る 。 ( 1 )Ⅰ 型 の 誤 用( タ 形 に す る べ き と こ ろ を ル 形 に す る )は 、連 体 修 飾 節 で は 動 作 動 詞 に お い て 、 文 末 で は 状 態 的 述 語 に お い て 出 現 し た 。 ( 2 )Ⅲ 型 の 誤 用( テ イ ル 形 に す る べ き と こ ろ を ル 形 に す る )は 、連 体 修 飾 節 で は 動 作 動 詞 に お い て 見 ら れ 、文 末 で は 進 行 相 で は な く 結 果 状 態 相 を 作 る 瞬 間 動 詞 と 恒 常 的 な 動 作 を 表 す 動 詞 に 現 れ た 。 ( 3 ) タ 形 の 形 容 詞 的 用 法 の 誤 用 ( Ⅰ 型 や Ⅴ 型 )や 動 詞 使 用 の 回 避 ( Ⅴ 型 )は 品 詞 の 選 択 や 動 詞 の 類 型 の 混 同 と し て 現 れ た 。 さ ら に 、 誤 用 の 支 援 の 方 法 に つ い て 、 ア ス ペ ク ト の 文 法 形 式 を 選 択 す る 前 提 と し て 、 述 語 の ア ス ペ ク ト 的 意 味 を 明 確 な 形 で 体 系 的 に 把 握 で き る 必 要 が あ る と 指 摘 し て い る 。 ま た 、 誤 用 が 多 く 見 ら れ た 類 型 の 混 同 や 類 型 を 意 識 化 し て い 15 「 表 の 『 タ → ( ル )』 は 、 本 来 タ 形 を 用 い る べ き と こ ろ に ル 形 を 用 い た 誤 り と い う 意 味 で あ る 。」( 生 越1991: 45)

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20 な い 述 語 に つ い て 、 指 導 に お い て 注 意 を 払 い 、 意 識 化 で き る よ う な 支 援 を 提 案 し 、 そ の 必 要 性 を 主 張 し た 。 さ ら に 、石 田(1991)はフランス語の日本語学習者の 口頭表現を文字化 して、 日 本 語 の 習 得 過 程 を 知 る と い う 目 的 で 分 析 を 行 っ た 。 考 察 の 対 象 に は 正 用 ・ 誤 用 の 概 観 、音 声・音 韻 上 の 誤 用 、助 詞 、「 … て 」形 、語 彙・表 現 の 誤 用 、時 制 ・ ア ス ペ ク ト 関 係 の 誤 用 、 構 文 と そ の 他 、 会 話 技 能 と い う 内 容 が 含 ま れ て い る 。 テ ン ス・ア ス ペ ク ト の 分 析 結 果 に お い て 、「 Ⅰ16で は 時 制 の 誤 用 が 多 い の に 対 し , Ⅱ 以 降 で は ア ス ペ ク ト の 誤 用 が 増 え て い る 。( 中 略 ) Ⅲ 以 降 多 い の は 、『 思 っ て い る 』,『 考 え て い る 』の 誤 用 で あ る( 例:あ の 建 物 は 何 だ と 思 っ て い ま す か 。)。」 と 述 べ て い る ( 石 田 1991:70-71)。 ま た 、 猪 崎 (1993)は多言語の母語話者と 3 名の中国語母語話者を対象に、 学 習 者 の 作 文 と イ ン タ ビ ュ ー に 見 ら れ る ヴ ォ イ ス ・ ア ス ペ ク ト ・ ム ー ド の 習 得 に つ い て 分 析 し た 。 多 言 語 の 母 語 話 者 に お け る ア ス ペ ク ト の 分 析 結 果 で は 、 ほ と ん ど が「 て い る 」で 示 さ れ て い る 。一 方 、3 名の中国語母語話者の場合、「~ て い る 」の 過 剰 使 用 や「 欠17」も 多 く 見 ら れ た 。「 欠 」が 見 ら れ た の は ①「 似 て い る 」「 優 れ て い る 」な ど 物 事 の 様 子 ,性 質 ,形 状 や 印 象 な ど を 表 す 形 容 詞 を 用 い る 場 合 、 ② 従 属 節 に お け る 行 為 の 継 続 を 表 す 「 ~ て い る 」 を 使 用 し て い な い 場 合 、 ③ 動 作 ・ 作 用 の 結 果 の 継 続 の 表 現 と 関 連 す る 副 詞 と の 不 一 致 に よ る 誤 用 の 場 合 、 ④ 動 作 ・ 作 用 の 結 果 の 状 態 が 続 い て い る こ と を 表 す 「 ~ て い る 」 を 用 い る 場 合 の 5 つ の 場 合 で あ っ た 。イ ン タ ビ ュ ー の 結 果 で は 、「 ~ て い る 」の 種 類 と 各 々 の 意 味 を 把 握 で き て い な い 場 合 が あ っ た と い う 分 析 結 果 と な っ て い る 。 黒 野 (1998)では多言語 の 母 語 話 者 3 名 の イ ン タ ビ ュ ー の デ ー タを 分 析 し 、 多 言 語 の 母 語 話 者 に 見 ら れ る テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 使 用 実 態 に つ い て 報 告 し て い る 。そ し て 、分 析 結 果 を 黒 野(1998: 123-124)において以下のようにまとめ て い る 。 16Ⅰ 、Ⅱ 、Ⅲ は そ れ ぞ れ 学 習 の 段 階 Ⅰ( 会 話 ク ラ ス 50 分 ×約 30 回 学 習 後 )、段 階 Ⅱ( 会 話 ク ラ ス50 分 ×約 50 回 学 習 後 )、段 階 Ⅲ( 会 話 ク ラ ス 50 分 ×約 20 回 学 習 後 )を 指 す 。」 ( 石 田 1991: 65) 17 「『 欠 』 は 使 用 す べ き 場 面 で 使 用 し て い な い も の と 見 な し て い る 。」( 猪 崎 1994: 198)

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21 ( 1 ) テ ン ス の 使 い 分 け に 誤 用 は あ ま り 見 ら れ な い 。 ( 2 ) 過 去 の 事 象 を 語 る と き に 非 過 去 形 を 用 い て し ま う 誤 用 は 、 述 語 が 状 態 性 の と き に 同 一 発 話 に 「 今 ま で 」 と い う 単 語 が あ る と き に 多 く 見 ら れ た 。 ( 3 ) 第 1 回 目 の 調 査 時 点 で 、「 - テ イ - 」 の 誤 用 は 全 体 の 2 割 か ら 4 割 程 度 見 ら れ た が 、10 か 月 後 の 第 4 回 目 の 調 査 時 点 で は 、 誤 用 数 は 減 少 し た 。 一 方 、「 - テ イ - 」 の 正 用 数 は 10 か 月 間 で 増 加 し た 。 ( 4 )第 1 回 目 の 調 査 時 点 で 、正 し く 用 い る こ と が で き る「 - テ イ - 」の 用 法 は 、「 習 慣 的 に 継 続 し て い る 動 作 あ る い は 行 為 」 を 表 す 用 法 と 「 住 ん で い る 」、「 持 っ て い る 」、「 知 っ て い る 」 で あ っ た が 、 第 4 回 目 の 調 査 時 点 で は 、 こ れ ら に 加 え て 「 何 か の 出 来 事 あ る い は 行 為 の 結 果 生 じ た 状 態 」 を 表 す 用 法 も 使 え る よ う に な っ た 。 次 に 、 日 本 語 の テ ン ス ・ ア ス ペ ク ト の 誤 用 研 究 に お い て 、 特 定 の マ ー カ ー を 中 心 に 研 究 す る 先 行 説 に つ い て 考 察 す る 。こ こ で は 、野 沢(1981)、魚住(1998)、 黒 野 (1995)、許( 2005)、インモウテッ( 2011)の研究を取り上げる。 ま ず 、野 沢(1981)は日本語の「している」が中国語でどのように表現され る か を 探 り 、「 て い る 」 と 中 国 語 の ア ス ペ ク ト マ ー カ ー と の 相 違 に つ い て 分 析 し た 。魚 住(1998)は初級修了後の日本語学習者を対象に、自然発話 における 「 ~ て い る 」の 用 法 と 習 得 状 況 に つ い て 追 跡 調 査 を 行 っ た 。黒 野(1995)は初 級 日 本 語 学 習 者 に 文 法 性 判 断 テ ス ト を 用 い て 、「 て い る 」 に お け る 「 動 作 の 継 続 」 と 「 結 果 の 状 態 」 と い う 用 法 の 習 得 過 程 に つ い て 分 析 し た 。 ま た 、許(2005)は「ている」と「ていた」の習得過程を解明するため、具 体 的 に 6 つの目的を設定し、分析を行った。各目的における分析結果は次のよ う で あ る 。1 つ目の目的は日本と台湾にいる中・上級の台湾人日本語学習者を 対 象 に 、「 絵 を 用 い た オ ー ラ ル プ ロ ダ ク シ ョ ン 」と「 文 法 テ ス ト 」を 行 い 、分 析 の 結 果 、 母 語 か ら の 正 と 負 の 転 移 が 「 て い る 」 の 習 得 に 影 響 を 与 え て い る こ と を 明 ら か に し た 。2 つ目は学習環境の違いにより、習得に相違が見られた。日 本 で 学 ぶ 学 習 者 は 台 湾 で 学 ぶ 学 習 者 よ り 、「 結 果 の 状 態 」も「 動 作 の 持 続 」も 習

Fig. 1 Compound Errors

参照

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