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偶発性低体温症の3例

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Academic year: 2021

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仙台市立病院医誌 28,99−100,2008   索引用語 偶発性低体温症

偶発性低体温症の3例

久保田 洋 介,亀 山 元 信,村 田 祐 二

庄 子   賢,野 上 慶 彦,鈴 木 惇 子

はじめに

 偶発性低体温症(accidental hypothermia)と は何らかの原因で深部体温が35℃以下になった 状態を言う(AHAの定義では36℃以下).ここで 言う偶発性(accidental)とは意図的な低体温(麻 酔や治療)ではないものという意味である.厳密 な定義では甲状腺や敗血症などの内因性疾患によ る低体温症も偶発性と言える.但し一般的には環 境因子による低体温にたいして“偶発性低体温 症”ということが多い.寒冷地の冬季に多く見ら れるが,体温調節機能が低下するような基礎疾患 (アルコールや外傷,高齢)がある場合にはその限 りではない.今回我々は入院加療を要した偶発性 低体温症を3例経験したので報告する. 症 例

 症例1:69歳男性,天気曇り,最低外気温

一〇.7℃  飲酒後窓を開け放したまま寝ていたという.朝 になり冷たく固まっているところを家人が発見し 救急通報する.  来院時現症:体温(直腸温)27.4℃,JCS 30, Bp 86/−mmHg, Pulse 45 bpm SpO2測定不能.側 臥位で床に接していたと思われる右大腿,右肘か ら上腕にかけて紫斑を認める.  来院後経過:加温輸液と電気毛布,加温水の吸 入を施行したところ,0.8℃/hで復温可能であっ た.復温とともに意識状態も改善した.また,経 過中に不整脈の出現も見られなかった.翌日には 正常体温に復帰した.採血上高CK血症を認め,長 期側臥位の圧迫による筋挫傷によるものと考えら 仙台市立病院救命救急部 れたが補液のみにて徐々に改善,特に腎機能,電 解質異常を来たすことなく経過良好で退院とな る.  症例2:82歳男性 曇り・最低気温10.2℃  胃癌にて近医入院中に夜間行方不明となり,隣 アパートの敷地内で倒れているところを発見され た.オムツ1枚の状態だったという.  来院時現症:体温(直腸温)27.7℃,JCS 300, Bp 110/60, P87 bpm, SpO2測定不能  来院時検査結果:Na 126 mEq/1, K 5.O mEq/1, Cl 93 mEq/1, BS 147 mg/dl, pH 7.018, BE−19.8  来院時心電図はノイズが強く評価困難であっ た.  来院後経過:電気毛布・加温輸液・気管挿管に よる人工呼吸管理(SIMV)にて復温した結果, 1.4℃/hで復温された.復温とともに血糖・電解 質・アシドーシスも改善し,翌日抜管して第2病 日に退院となる.  症例3:53歳男性 天気晴れ 最低気温9.7℃  インターネットで購入した内容不明の薬剤を服 用し母親の墓前で凍死しようとしたという.寒く なり自ら友人に救助を求めるメールをした.友人 から救急要請される.  来院時現症:体温(直腸温34.7℃),JCS 1, Bp 118/62,P58 bpm,全身の震えを認める.  来院時検査結果:Na 137 mEq/1, K 3.8 mEq/1, Cl lO4 mEq/1, BS 137 mg/d1  尿中からベンゾジアセピン系を検出(定性)  来院時心電図所見:洞調律,narrowQRS, QT 延長なし,ST−T変化認めず  来院後経過:軽症偶発性低体温症と薬物中毒症 と自殺企図からは入院が妥当と判断した.電気毛 布と加温輸液500ml(以後通常維持輸液)で管 理したところ,0.2℃/hで復温された.経過良好で Presented by Medical*Online

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100 翌日精神科受診後退院となる. 考 察  偶発性低体温症の重症度分類に関して2008年 1月の時点では統一見解はないが,おおよそ軽症・ 中等症・重症で各34℃・31℃・28℃以下で分類さ れていることが多いようである.31℃以下になる と震えが起こらなくなることから,自ら体温を回 復させる機転を失う境界を中等症としている.ま た,心室細動などの重篤な不整脈が起こりうると されている28℃以下を重症としている.偶発性低 体温症の治療は加温療法が中心となるが,保温・ 表面加温・中心加温の組み合わせを患者の状態に 応じて施行する.意識がありバイタルサインが安 定しているときには非侵襲的な方法をとる場合が 薦められている.すなわち毛布・乾燥衣類への着 替え,また,表面加温として電気毛布・ヒーター の使用・湯たんぽなどがある.また,心肺停止症 例にたいしてはPCPS・胸腔洗浄などの侵襲的な 中心加温が取られることもある.  今回我々が経験した3例はいずれも非侵襲的加 温療法により良好な復温を得ることが出来た.ま た,低温では人体内の酵素活性が全般的に低下す るために,電解質異常や血糖異常などが起こると いわれており,症例2では電解質異常を認めたが 復温とともに正常化した.このことに関して,重 症低体温ではインスリンやエピネフリンが無効で あるために高血糖や心肺停止症例に対してこれら の薬剤の投与は復温しなければ無効と言われる. また,除細動に関しては重症低体温に対しての成 功症例の報告があることからAHAガイドライン では1度だけのtria1を推奨している.  今回我々の経験した症例はいずれも重篤な合併 症を起こすことなく軽快したが,偶発性低体温症 の治療に関して,低温と酵素活性不全から起こる 恒常性の破綻という一般の臨床診療ではあまり経 験しない要素を考慮しなければいけないと言う点 で意義があると考え報告した. Presented by Medical*Online

参照

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