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学 位(博士-甲)論 文 審 査 結 果 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 ・(本籍) 吹谷 由美子(秋田県)

専 攻 分 野 の 名 称 博士(医学)

学 位 記 番 号 医博甲第 871 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 26 年 9 月 29 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学系研究科医学専攻

学 位 論 文 題 名 Synergistic effects of loxoprofen and glycine on the micturition reflex in conscious rats

(覚醒下ラットにおけるロキソプロフェン及びグリシン併用投与による排尿機 能抑制の相乗効果)

論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 尾 野 恭 一

(副査) 教授 島 田 洋 一 教授 長谷川 仁志 Akita University

(2)

学位論文内容要旨

論 文 題 目

覚醒下ラットにおけるロキソプロフェン及びグリシンの 排尿機能抑制効果と併用投与による相乗効果

申請者氏名 吹谷 由美子

研 究 目 的

プロスタグランジン(PG)合成阻害薬であるロキソプロフェンは、痛みや炎症を緩和するだけでなく、夜 間頻尿にも効果があることが報告されている。動物実験では、PGE2は排尿反射を促進することが報告されて おり、ロキソプロフェンはその効果を抑制することが報告されている。また、グリシンは、脊髄の侵害受容過 程の抑制や、排尿反射も抑制することが知られている。

本研究では、ロキソプロフェンによるラットの排尿行動に及ぼす影響を観察した。また、覚醒条件下でロキ ソプロフェン及びグリシンの単独ならびに併用投与による排尿機能に対する影響について検討した。

研 究 方 法

実験動物は10−12週齢のSD系雌性ラット(体重200−250 g)を使用した。排尿行動実験は、ラットを代謝 ケージに入れ、3日間環境に順化させた後、1日目と2日目に溶媒(0.5%トラカントガム溶液)を強制経口投 与し、ベースとなる排尿回数及び排尿量を記録した。ロキソプロフェンは3日目に経口投与し、溶媒群と比較 した。測定はゲージの下に天秤を設置し、天秤上の容器に尿を直接落下させ累積的に測定し、その重量変化を パソコンに記録した。膀胱内圧測定は、膀胱内注入と内圧測定のため、イソフルラン麻酔下で膀胱頂部よりカ ニューレ留置後,ボールマンケージに拘束し,覚醒下にて生理食塩水を2.4 ml/hrの速度で灌流し,膀胱内圧 を連続的に測定した。尚、薬物は静脈内投与のため、投与用カニューレを頸静脈に挿入した。膀胱内圧は圧ト ランスデューサを介して記録し、薬物投与前の3回の排尿サイクルの平均値をコントロール値として投与後20 分後から3回の排尿サイクルの各パラメーター(排尿間隔、最大排尿圧)を解析した。

研 究 成 績

ロキソプロフェン(3及び10 mg/kg)経口投与は、3及び10 mg/kg群において6時間後の排尿回数が溶媒 投与群と比較して有意に減少し、排尿量はロキソプロフェン10 mg/kgのみ4および6時間後に、溶媒投与群 と比べて有意に低下した。膀胱内圧測定において,ロキソプロフェン(0.1–3 mg/kg)静脈内投与は最大排尿 圧に変化がなかったが、排尿間隔が用量依存的に延長し,1及び3 mg/kgで溶媒と比較して排尿間隔が有意に 延長した。グリシン(30及び100 mg/kg)静脈内投与も最大排尿圧に変化がなかったが、排尿間隔の有意な延

長が100 mg/kgのみで認められた。また、ロキソプロフェンとグリシンの併用投与は最大排尿圧に変化がなか

ったが、高用量ロキソプロフェン(3 mg/kg; 50.9%)及びグリシン(100 mg/kg; 24.3%)の併用投与によって 著明な排尿間隔の延長(98.5%)を示し,単独投与と比較しても有意な排尿間隔の延長を示した。さらに、低 用量ロキソプロフェン(0.1 mg/kg; 10.1%)及びグリシン(30 mg/kg; 11.2%)の併用投与もまた有意な排尿間 隔の延長(34.3%)を示した。

結 論

ラットの排尿行動実験により高用量ロキソプロフェンは排尿回数および排尿量をともに減少したことから、

夜間頻尿患者を対象とした研究で報告されたように、ロキソプロフェンが腎臓における尿生産の減少に関与し ていることが示唆された。しかし、低用量ロキソプロフェンは排尿回数が有意に減少したものの、排尿量にお いては有意な変化が認められなかったため、尿生産の抑制以外の働きがあると考え、膀胱内圧測定実験を行っ た結果、ロキソプロフェン及びグリシン静脈内投与は排尿機能において抑制効果を示し、両薬物の併用投与が 相乗効果を示すことが明らかとなった。グリシンは排尿反射を脊髄求心路で抑制することが報告されており、

ロキソプロフェンとの併用投与により相乗効果が得られたことから、ロキソプロフェンとグリシンは脊髄求心 性経路で排尿反射を抑制することが推察される。

Akita University

(3)

学 位(博士-甲)論 文 審 査 結 果 の 要 旨

主 査: 尾 野 恭 申請者: 吹 谷 由

論文題名: Synergistic effects of loxoprofen and glycine on the micturition reflex in conscious rat.

(覚醒下ラットにおけるロキソプロフェン及びグリシン併用投与による排尿機 能抑制の相乗効果)

要旨

著者の研究は、論文内容要旨に示すように、プロスタグランジン(PG)合成酵素阻害薬及 びグリシンの排尿機能抑制効果と併用投与による相乗効果を明らかにするため、10-12 週齢 雌性ラットを用い、ボールマンゲージに拘束して膀胱灌流実験をおこなったものである。ま た、排尿行動を観察するために、代謝ゲージを用いて排尿回数及び排尿量の測定を行った。

その結果、1)排尿行動実験からは高用量ロキソプロフェンが排尿回数及び排尿量を減少させ ること、2) 膀胱灌流実験からは、ロキソプロフェン及びグリシンが用量依存的に排尿間隔を 延長し、両者の併用はさらに著明な排尿間隔延長をもたらすことが明らかとなった。以上に より、ロキソプロフェンとグリシンは脊髄求心性経路で排尿反射を抑制することが示唆され た。

本論文の斬新さ、重要性、実験方法の正確性、表現の明瞭さは以下の通りである。

1) 斬新さ

年齢と共に増大する排尿障害、とりわけ過活動膀胱は夜間頻尿をもたらすことで患者 QOLを著しく低下させる。PG合成酵素阻害薬は夜間頻尿を軽減することが臨床的に も知られており、過活動膀胱に対する治療薬としてその臨床応用が期待されているもの の、作用機序については明らかにされていない。本研究の斬新性は PG 合成阻害薬が尿

量及び排尿間隔を用量依存的に減少させることを実験的に明らかにしたことにある。さ らに、脊髄における抑制性神経伝達物質であるグリシンを併用投与することにより、排 尿間隔が著しく延長することを見出したことは、臨床応用へつながる貴重な情報として 注目される。

2) 重要性

PG合成阻害薬の投与はしばしば浮腫をもたらすことが知られている。本研究で示され たロキソプロフェンによる尿量減少はこのことと密接に関連しているのかもしれない。

一方、尿量抑制を来さない濃度においても排尿間隔の延長が見られることから、PG合成 阻害薬や腎以外に排尿反射への直接作用を有することが明らかとなった。排尿反射にお ける PG の役割を明らかにする上で重要な所見と考えられる。また、臨床上問題となっ ている過活動膀胱の原因を探る上でも重要であると考えられる。今後の研究の発展を期 待したい。

3) 実験方法の正確性

自由行動下での動物実験は環境の変化をできるだけ抑えるなど細心の注意が必要であ る。著者らは代謝ゲージを用いて、予め馴化期間を設けたうえで薬物投与をおこなうな ど、丁寧な実験が行われたことが伺える。また、膀胱灌流実験は、著者らのグループが これまでに報告してきた方法を用いている。膀胱内圧データはオンラインでコンピュー タに記録され、いずれも統計学的検討を加えており、客観的な評価法で正確性に何ら問 題はない。

4) 表現の明瞭さ

研究の背景、研究方法・方法・結果および考察が明瞭に記載されている。

以上述べたように、本論文は学位を授与するに十分値する研究と判定された。

Akita University

参照

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