複合有機非線形光学材料に関する研究
著者 陳 定宇
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 13
ページ 166‑167
発行年 1992‑03‑30
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1743
氏名。
(本籍 ) 陳 定 宇 (中 国
)学 位 の種 類 工 学 博 士 学 位 記 番 号 工博甲第 61 号
学位授与の日付 平 成 3年 3月 23日 学位授与の要件 学位規則第 5条 第 1項 該当
響 ゲЪ ど 赤 電子科学研究科 電子応用工学専攻
=学位論文題目 複合有機非線形光学材料 に関する研究
論 文 審 査 委 員 (動 員 量
)篠
原 茂 信 教 授 神 藤 正 土
教 授 池 田 弘 明 教 授 岡 本 尚 道
助教授 松 島 良 華 助教授 田 坂 茂
論 文 内 容 の 要 旨
有機非線形光学材料が ,従 来用いられてきた無機材料と比較 して ,二 次の非線形性が極めて大きく
,かつその応答も高速であるという優れた特長を持つことが明らかにされて以来 ,高 感度の光第 2高調 波発生 (SHG)素 子や光変調素子への応用を目指 して ,研 究が盛んに行われている。本論文の目的 は ,よ り大きな非線形性を示す有機非線形光学材料の開発であるが ,特 に ,異 なる有機材料の複合化 によってそれを実現 しようとするものである。
第 1章 では ,本 論文における研究の背景 と目的について述べている。
第 2章 では ,非 線形光学の基礎について述べる。まず非線形現象の機構 と記述か ら出発 し ,二 次の 非線形媒質中における光波伝搬 と波長変換に関する理論を述べ ,最 後に位相整合条件 とその方法につ
いて述べている。
第 3章 では ,材 料の非線形性を評価する一方法である粉末法の理論や ,実 際の粉末試料の測定に最 適な測定系を検討 している。種々の測定条件が SHG活 性度の測定値 に与える影響 について検討 し
,粉末試料から放射する高調波を極力集光検出でき ,よ り信頼性の高い SHG活 性度を与える測定系 を 提案 している。即ち ,散 舌
Lによって粉末試料の透過率が非常に低いために ,積 分球と光電子増倍管を 試料の反射側に ,小 型の反射鏡を透過側に配置 した浪
1定系を用いて厚い試料 とする場合が ,最 良の測 定値を与えることが述べ られている。特に ,複 合有機非線形低分子材料では普通大きな結晶が得にく いため ,粉 末法でその SHG活 性度を測定するのに最適な測定系と思われる。
第 4章 では ,有 機非線形材料パラニ トロアニ リン (pNA)の N一 アルキル誘導体を合成 し ,そ の
SHG活 性度を測定 している。即ち ,立 体障害に十分なりうる N― アルキル基を ,そ れ自身 は不活性 である pNAの アミノ基に導入することが ,SHG活 性度にどのように影響するか調べることが目的で ある。種々の誘導体について ,粉 末法で SHG活 性度を評価 したところ ,N― ブチルー 4‑ニ トロア ニリン (BuNA)が 最大の活性度を示 した。また ,BuNAの SHG活 性度の粒子径依存性か ら BuNA
は位相整合可能な材料であることを明 らかにしている。さらに ,BuNAの SHG活 性度 は ,再 結晶溶 媒に強 く依存 し ,シ クロヘキサンとエーテルの混合溶媒を用いた場合に ,尿 素比 14倍 の SHG活 性度 が得 られている。
第 5章 では、 有機非線形材料 BuNAと 各種高分子の複合薄膜を作製 し ,そ の SHG活 性度を測定 し ている。即ち ,BuNAの SHG活 性度は ,再 結晶溶媒に強 く依存することにヒントを得て ,BuNAと
各種高分子の複合材料化が SHG活 性度に与える影響を調べることが目的である。 この複合材料薄膜 を直流電界を印加 して作製することにより ,非 線形材料分子がある程度配向された薄膜が得 られてい る。中でも ,BuNAと ポリスチレンの複合膜は , μ mォ ーダーの薄 さで厚 さ
l lnmの尿素粉末試料 の 6.4倍 の SHG活 性度を示すことが明 らかにされている。
第 6章 は ,骨 格の似た低分子有機非線形材料同志を複合材料 とした場合 の ,SHG活 性 について研
究 したものである。
まず ,N一 アルキル誘導体と pNAの 複合材料について検討 している。この複合材料 は ,原 材料 自 体が SHG非 活性か弱活性であるのに対 して ,極 めて大きな活性度を示す。中で も ,N一 イソプロピ
ルー 4‑ニ トロアニリン (PriNA)と pNAの 複合材料は、 粉末法による測定ではこれまでの非線形 材料の最大値である尿素比 1670倍 の活性度 となることを明 らかにしている。この原因は ,pNA力 渡 一
アルキル誘導体の結晶表面から相互作用を受け ,非 中心対称の SHG活 性な pNA結 晶を形成す るた めと考えられる。 しか し ,こ の複合材料の SHG活 性は ,加 熱昇温によって減少 し ,室 温で試料 を保 存 した場合には ,約 3000時 間後にはほぼ不活性 となった。
次に ,非 活性な pNAを 活性な 2‑メ チルー 4‑ニ トロアニリン (MNA)に 添加 した複合材料 を 検討 している。その結果 ,pNAと MNAの 重量比が 1対 40の 試料 は ,尿 素比で 520倍 の活性度 の増加 を示 した上に ,熱 的に安定であり ,室 温で保存 した場合には ,約 1500時 間内は経時変化がない。従 っ て ,こ の複合材料は ,室 温以上における導波形光デバイスの作製に必要な有機非線形多層膜の作製用 の材料 として有望であることを明 らかにしている。
更に ,pNAと その N一 アルキル誘導体の複合蒸着膜の作製を試み ,そ の SHG活 性を調べたところ
,N―
アルキル誘導体の基板上に ,pNAを 蒸着 した膜のみが大 きな SHG活 性を示 した。 この結果 よ り
,N―
アルキル誘導体は ,pNAの 非中心対称性の結晶成長の成長場 としての役割を担 っていると考える。
なお ,pNAと イソプロピル NAの 多層膜は尿素比約 300倍 の SHG活 性を示 した。
第 7章 では ,本 論文の結論及び今後の課題について述べる。
最後に付録では ,有 機非線形材料における非線形性の起源と ,分 子設計指針について述べ ,そ の成 果を表にまとめた。
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