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「デジタルネイティブと異文化理解」

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Academic year: 2021

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村上正行  ここ数年、大学での授業のみならず、中高

生や小中高の教員、大学の教職員に向けて「デ ジタルネイティブ」についての講演を依頼さ れることが増えた。デジタルネイティブとは、

“生まれたとき、または物心がつく頃にはイン ターネットやパソコンなどが普及していた環 境で育った世代”(デジタル大辞林)のことで あり、日本では商用インターネットが1990年 代半ばより普及したため、おおむねこれ以降 に生まれた世代を指す。対して、IT普及以前 に生まれてITを身につけようとしている世代 を“デジタルイミグレイト”と呼ぶ。私は、1973 年生まれなので、ばりばりのデジタルイミグ レイトと言えるだろう。

 パソコンの父と呼ばれるアラン・ケイは「テ クノロジーは発明される前に生まれた人に とってのみテクノロジーとして意識される」

と言っている。よく授業で事例に出すのは、

私が小学生の頃に、テレビで好きなアニメ(当 時、流行っていた「キン肉マン」)を見たいのに、

母親に「スイミングスクールに行きなさい!」

と言われて、強硬に反抗するもののスイミン グスクールに連れて行かれる、という話であ る。今の学生にとっては、なぜそんなに反抗 したのか理由がわからないであろうが、40代 以上であれば、おそらく経験があるはずであ る。当時はまだビデオがなく、放送されるそ の瞬間にテレビの前にいなければその番組を 見ることができなかったからである。“チャン ネル争い”などという言葉もあったように、テ レビは一家に一台、家族で何の番組を見るの か、を決定することは一大事(といえば言い 過ぎではあるが)だったわけである。今や、

テレビの番組を複数録画することも容易にな り、スポーツ中継などでなければ、テレビを リアルタイムに見る必要がなくなってきてい る。

 逆に、そもそも、若者がテレビを見なくなっ ている、という状況もある。ソニー生命保険

が発表した「中高生が思い描く将来について の 意 識 調 査2017」(http://www.sonylife.co.jp/

company/news/29/nr_170425.html) の結果に よると、中学生男子が将来なりたい職業の第3位 がYouTuberである。高校生男子、中学生女 子でも10位となっている。2016年に大阪府内 のある小学校が調査した4年生男子の将来の夢 でも、YouTuberが3位になって話題となった。

上記の意識調査は、インターネットリサーチ で行われているので、ネット関係の職業が高 めに出ている、という事情はあるとは思うが、

実際に小中学生の多くが日常的にYouTubeな どのインターネットの映像を見て楽しんでい る、というのは事実である。この話を授業で すると、今の大学生はYouTuberの映像は見る けれど、自分がなることは考えていないよう で、多くはびっくりしている感じである。つ まり、5 ~ 10歳の年齢差があれば、大きく文 化は変わっている、ということでもある。大 学教員としては、5年後にこういう志向をもっ た子どもが大学生として入学してくる、とい う心の準備が必要であると言える。

 このようにICT(Information Communication Technology:情報通信技術)が進化、普及し ていくことにより、生活スタイルも大きく変 化してきている。自分が経験してきたことが 他人にとって、とりわけ、他の世代にとって 当たり前というわけではない、ということを しっかりと理解しておく必要がある。異文化 理解、というのは、外国だけではなく、日本 国内におけるコミュニケーションにおいても 重要だし、当然、学生にとっても、教職員にとっ ても大事なことだと言える。一度、自分の身 の回りを見渡し、コミュニケーションを振り 返ってみるのもいいのではないだろうか。

 むらかみ まさゆき

(教授・教育工学・大学教育学)

「デジタルネイティブと異文化理解」

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