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ロゴマ ー クの変遷 について

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(1)

ロゴマ ー クの変遷 について

著者 高橋 美穂

雑誌名 論文集 / 金沢大学人間社会学域経済学類社会言語

学演習 [編]

巻 13

ページ 81‑96

発行年 2018‑03‑22

URL http://doi.org/10.24517/00050893

(2)

金沢大学人間社会学域経済学類

社会言語学演習『論文集』第13巻2018年3月

ロゴマークの変遷について

経済学類4年高橋美穂

< 概 要 >

近年、テレビや携帯電話などをはじめ数多くの業界でコモデイティ化が深刻になってきている。

これに伴い、企業は価格や品質・サービスの他に、ブランディングによって差別化を図るように なった。ブランディングの方法は様々であり、本研究では企業の顔となるロゴマークについて注 目した。これまで激しい市場競争をしてきた大企業を対象に、各企業のロゴマークの変遷をみる ことで、歴史的背景及び社会情勢との関係を調べていく。本研究では、日本企業のロゴマークは、

更新されるにつれて複雑なものからシンプルなものへとデフォルメ化されているのではないか、

日本企業のロゴマークは、1960年代以降カラーテレビの普及した時期とともに、色彩が使われ

るようになったのではないか、という2つの仮説を立て、分析した。

< キ ー ワ ー ド >

ロゴマーク、角彩、変遷

'ararellO7m@gmail・com

(3)

< 目 次 >

1 . は じ め に

2.研究の背景・目的

3.先行研究

4.仮説

5.調査方法・分析対象

6.調査結果

6‑1.自動車メーカー、総合電機メーカーの結果 6‑2.食品メーカー、化学メーカーの結果

7.考察

8.おわりに

(4)

1.はじめに

近年、めざましい技術革新とサービス向上により、深刻なコモディティ化が起きている。例え ば、テレビやスマートフォン等といった高機能な電子機器を販売する総合電機メーカーや、コン ビニ業界、食品業界は、もはや商品及びサービス自体の性能や品質にはほとんど差がなくなって きており、顧客は価格によって商品の購入を決めることが多くなった。価格競争が激しくなる中 で、多くの企業がブランデイングに力を入れ、差別化を図るようになった。白石弘幸(2016)は著 書において、ブランドの重要性を説いている。企業は、ブランドを付けて生産・販売することで、

注文の処理がしやすくなり、ブランド・ロイヤルティにより収益性向上というメリットが受けら れると述べている。さらに著書ではコーポレート・ブランドの重要性についても説かれており、

製品は一般的にコーポレート・ブランドのイメージから逃れることは難しく、取り扱う製品には その会社としてのイメージがつきまとうという。「コモディティ化が進んでいる製品の場合、機 能や性能等の属性で独自のイメージを形成することは難しく、当該形成においてコーポレート・

ブランドが大きな役割を果たす」と述べており、製品の差別化においてブランディングが非常に 重要であるということがわかる。

世の中には様々な企業が存在するが、ほとんどの企業がそれぞれロゴマークを所有している。

例えば、TM(トレードマーク)や③(登録商標)がついたマークを見たことがあるだろう。これが ロゴマークであり、各企業によってシンボルマーク、CI(コーポレートアイデンティティ)、コ ーポレートロゴ等と呼び方が違う。ロゴマークには、図形のマークもあれば社名をそのまま文字 として登録している企業もある。また、色使いも様々であり、ロゴマークにはその企業や団体等 の組織を象徴するコーポレートカラーが使用されている場合が多い。ロゴマークの形や色は、他 企業との差別化をはかるために、各企業の特色や企業理念、アイデンティティを示す重要な役割

を持っており、顧客に対する企業の強い思いが込められている。

本稿では、まず日本の大企業を対象に、ロゴマークの"形の変遷"と"色の変遷"について考察し ていく。次に、変遷がみられた企業を基に、1960年代のカラーテレビ登場が影響してロゴマー クに色彩が取り入れられたのか、また形についてはグローバル化に伴いシンプルなものになって きているかどうかを論じていく。

2.研究の背景・目的

昨年の共同研究において、現在使用されているロゴマークの色彩については調査したが、各 企業における過去のロゴマークとの比較までは研究できなかった。ロゴマークの変遷には、社会 的な背景が影響していると考えられる。そのため、ロゴマークの形と色の変遷をたどることにし

また、ロゴマークには企業によって様々な表現があるため、トレードマーク、コーポレートア イデンティティ、コーポレートブランドロゴ、シンボルマーク等をまとめてロゴマークと表現す ることとする。さらに、本来ロゴマークとは、単に図案化・装飾化された文字・文字列のことを 指すが、ここでは商標登録がなされているものを"ロゴマーク"と定義づけることとする。

(5)

3.先行研究

昨年の共同研究では、色彩がもつイメージが人に影響を与えると論じた。さらに、坂本和子 (2010)は、消費者の購買意向について、色の影響について述べている。坂本和子(2010)は、人に 見られる場面で使用する製品、自分の部屋で使用しそれほど人目に触れない製品について、色・

模様、見た目、価格、機能性、素材、周りの評価、使いやすさ、環境配慮、安全性、ブランドの 10項目の購買要因を順位づけてもらう調査を行った。その結果、家電や家具といったプライベー トな製品では色や模様があまり重視されないが、洋服や携帯電話といった身に付ける製品では、

重視されることがわかった。さらに、携帯電話のカラーバリエーションやトレンドカラーについ て調査しており、色のネーミングの重要性についても述べられている。

また、木全(2007)は、企業のロゴマークの形を忘れても、色を覚えているケースがあると述べ ている。色がその製品のイメージを決めてしまうことがあるなど、色が形より先に認識されてい ると論じている。つまり、製品自体の色彩はもちろん重要ではあるが、ロゴマークによる色彩イ メージも大きな影響を及ぼしており、重要な役割を担っていると考えられる。

4.仮説

I・日本企業の商標マークは、更新されるにつれて複雑なものからシンプルなものへとデフ

ォルメ化されている

II.日本企業の商標マークは、1960年代以降カラーテレビの普及した時期とともに、色彩が

使われるようになった

5.調査方法・分析対象

1960年代のカラーテレビ普及の影響を調査するために、比較的歴史が長いと思われる大企業

を対象とする。企業について、以下のランキングから対象企業を選定した。

①ヤフーファイナンス(1月13日調べ)の「連結従業員数ランキングトップ15」

②就職四季報2017年版の「就職人気企業ランキング300」

前者のランキングのみでは、企業の業界に偏りがみられたため、両者のランキングから対象企業 を絞ることとする。前者では、主に自動車メーカー、総合電機メーカーを対象とし、後者では300 社から食品メーカー30社と、化学メーカー8社を選定し調査する。次に、選定した企業の公式ホ ームページから沿革を調べ、創業時から現在までのロゴマークとコーポレートカラーについて調

査する。

6.調査結果

6‑1.自動車メーカー・総合電機メーカーの結果

③ヤフーファイナンス(1月13日調べ)の「連結従業員数ランキングトップ15」

(6)

車メーカー・総合電機メーカーの結果

企業名 形の変遷 色の変遷

1位 トヨタ自動車

2位 日立製作所

3位 日本電信電話 × ×

4位 パ ナ ソ ニ ッ ク

5位 日本郵便 × ×

6位 住友電気工業 × ×

7位 ホ ン ダ △ △

8位 ヤマトホールディングス × ×

9位 キ ヤ ノ ン ×

10位 デンソー × ×

11位 富士通

12位 東芝

13位 ブリヂストン × ×

14位 イ オ ン × ×

15位 三菱電機

「連結従業員数ランキングトップ15」(以下、同ランキング)における15社すべての公式ホー ムページを調べたところ、15社中6社についてロゴマークの形または色の変遷がみられた。ホ ンダについては、ロゴマークの変遷についての情報は得られたが、公式ホームページには記載が 確認できなかった。

以下は、ランキングの内、形または色に変遷がみられた6社のロゴマークの変遷を西暦ごとに 並べたものである。

(7)

1940〜 1960〜 2000〜

1920〜 1980〜

ヨ タ

動 車 ③TOYO1X

溺灘諺議

︾一

パブーソニッ

… ■ 膳

キ ヤ ノ ン

少富士通鰯③

富 士 通

鍾罰雲

FUIITSu

医東芝屡

東芝

鐸#灘 謹霊醗鑿鱒

TOSHIBAL … … 力 》

し 三

三 菱

菱 電 機 躍

図1:自動車メーカー、総合電機メーカーのロゴマークの変遷

同ランキングの中で、自動車メーカー、総合電機メーカー6社に変遷がみられた。ホンダにつ いては、ロゴマークもしくはエンブレムの変遷はみられたが、公式ホームページにおいて記載は 確認できなかった。以下では、6社のロゴマークについての変遷を述べていく。

トヨタ自動車は、1935年にTOYOTAと書かれた初めてのロゴマークを制定した。翌年には、

全国からロゴマークを募集し、カタカナ書きの「トヨタ」を円で囲んだ赤色のマークが採用され た。それから約50年の間このロゴマークを使い、1989年には現在のローマ字書きの「TOYOTA」

と、エンブレムにも使用されている洗練されたマークが採用された。このトヨタマークはトヨタ ブランドを示すマークであり、トヨタ車の先進性と信領性を象徴する統一的なマークとして新た に設定された。このマークについて、公式ホームページによると、「全体のデザインを楕円で統 一している。楕円は2つの中心を持つ曲線であって、お客様の心と車づくりの心が一体になった 信頼感を表している。タテとヨコに組み合わせた2つの楕円はトヨタの「T」であり、背後の空 間は、トヨタの先進技術のグローバルな広がりと未来・宇宙に翔ける無限の可能性を表している。」

と述べられている。初期に比べると、グローバル化を意識したわかりやすいロゴマークヘ変わっ ていることがわかる。

パナソニックは、1918年に松下電器器具製作所を設立し、パナソニックではなくナショナル として商標登録をした。パナソニックというブランド名が登場したのは、1955年であり輸出用 スピーカーに採用された。また、国内用高級スピーカーには、Technicsというブランドが採用さ れ、1960年代から2007年までこの3つのブランドロゴマークが使用され続ける。現在のシンプ ルな文字列のロゴマークに変わったのは1980年代であり、色彩が取り入れられたのは2007年か

らである。

キヤノンは、1933年に精機光学研究所が設立され、カメラの最初の試作機は「KWANON(力

(8)

ンノン)」と名づけられた。この名前は、「観音様の御慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る 夢を実現したい、との願いを込めたもの」である。当時はロゴマークとして千手観音が描かれ、

火焔をイメージしたKWANONの文字がデザインされていた。1935年に、現在の社名である Canon(キヤノン)の文字列ロゴタイプに変更される。現在のキヤノンよりも細字であったが、徐々 に太字で強調されたフォントになり、今の形にバランスが整えられた。

富士通は、1935年に当時親会社であった富士電機製造(株)のマークを、最初のロゴマーク とした。富士電機製造(株)の社名の由来である、古河の「f」とドイツのシーメンスの「S」を 組み合わせたものである。1961年に略称社名を「富士通」に変更し、ロゴマークにもその社名 を採用した。社名の上には「通信工業部」と「電子工業部」の二部制から、「通信と電子の」と いうキャッチフレーズを記載されている。1972年に、青色の「平和」、赤色の「情熱」、白色の

「純潔」というコンセプトのもと新たなロゴマークを制定する。そして1989年に国際化に伴い、

現在の英字表記のロゴマークとなる。カラフルな三色のものから、F叩TSUレッド(赤色)に

より、チャレンジ、人間的、エキサイティングな企業を象徴している。

東芝は、田中製作所と白熱舎が統合され、1939年に東京芝浦電気となる。統合前から、家紋 のような白黒のロゴマークがいくつかあったが、統合により「東芝」という文字によるロゴマー クとなる。その後、筆記体のようなおしやれな文字列から、1969年に現在のゴシック体のシン プルなTOSHIBAに変わった。そして2006年に赤の色彩が取り入れられた、現在のロゴマーク になった。

三菱電機は、1921年に創業し、1955年に正式な社名書体を決定した。御手洗流(ミタラシ流)

と呼ばれる書体で、1963年まで使用された。1964年には、現在の3つの菱形を使ったロゴマー クに、企業スローガンである「今日もあなたと共に」を上部に書いたものを制定した1969年か らは国内用と海外用にロゴマークがわけられた。1985年から2013年までは、国内においては三 菱グループ内での個性化を狙い「青のMITSUBISHI」を制定し、海外向けには知名度の高い「赤 のスリーダイヤ」をロゴマークに使用した。そして2014年に国内外で使い分けていたものを、

海外用のロゴマークに統一し、現在の形となっている。

以上から、形の変遷については、トヨタ自動車、パナソニック、キヤノン、東芝、三菱電機の 5社においては、徐々にデフォルメ化されシンプルになってきていると言えるが、富士通では仮 説と少々異なる結果となった。色の変遷については、パナソニック、富士通、東芝、三菱電機の 4社においては、1960年代を境にロゴマークに色彩が取り入れられたと言えるが、その他の企業 では仮説と異なる結果となった。

6‑2.食品メーカー、化学メーカーの結果

④就職四季報2017年版の「就職人気企業ランキング300」

表2:食品メーカーの結果

企業名 形の変遷

1 明治グループ

色の変遷

×

(9)

2 カ ゴ メ

3 味の素

4 キ ッ コ ー マ ン △ ×

5 サ ン ト リ ー ホ ー ル デ ィ ン×

グス

6 日清食品 × ×

7 キリン △ △

8 キ ュ ー ピ ー × ×

9 アサヒ飲料 × ×

10 ア サ ヒ ビ ー ル △ △

11 サントリー食品インター × ×

ナ シ ョ ナ ル

12 森永製菓

13 ヤクルト本社 × ×

14 森永乳業 × ×

15 ハウス食品

16 伊藤園 × ×

17 ロ ッ テ グ ル ー プ × ×

18 カ ル ピ ス × ×

19 カ ル ビ ー × ×

20 サ ッ ポ ロ ビ ー ル △ △

21 ノ、一ゲンダッッジャパン × ×

22 グ リ コ グ ル ー プ △ △

23 山崎パン × ×

24 日清製粉グループ × ×

25 ブ ル ポ ン × ×

26 永谷園 × ×

27 敷島製パン

28 不二家 × ×

29 ヱスビー食品

30 日本食研 × ×

(以下、同ランキング)の内、業種が「食品」とされる企業は、

30社すべての公式ホームページを調べたところ、30社中1 300社中30社の企業が該当した。30社すべての公式ホームページを調べたところ、30社中13 社についてロゴマークの形または色の変遷がみられた。13社のうち、キリン、アサヒビール、サ

ッポロビールについては、企業のロゴそのものではなく、主力商品であるビールに付されている ラベルの変遷がみられた。同様に、製菓メーカーのグリコについても、主力商品のひとつである ビスコについての変遷は公式情報にて確認することができた。

(10)

以下は、食品メーカーの内、形または色に変遷がみられた10社のロゴマークの変遷を西暦ご とに並べたものである。

1900〜 1920〜 1940〜1960〜1980〜2000〜

一一叫嘩一い燕︑︾一△●岬

癖モーン

聴勃マ

L﹄pFL﹄宣伝

︷一

無 き 鑿 j

・ ・ L ・ 『■■

、 ■ q ■ ■

■ ■ ■ r ■ ■ Pp p r L

■ず.

■ ■

■ け . . ■ さ ・ ・ b

■ロ

■■▲ず■

命議綱リ胤

J説

G恥セロe蛍b肺EL喝7,斗輔 鮒粕熊羊から蛤柳1鄭

鏡繍鋼、今離

認 霊 畷 窯

鈍立錦5unTcnY L 一

S U n T O R Y

鶴 ︾︾

響︾

11

翰 鴬 蟻

鱒や

一一

醗醗

違〆

可型司4

. ÷ 固 唾

・●

− 露 塵

霧勝

≦篭

図1:食品メーカーのロゴマークの変遷

食品メーカーでは、30社中13社に変遷がみられた。グリコについては、代表的な商品である ビスコの「ビスコ坊や」の変遷はみられたが、ロゴマークについての記載は確認できなかった。

また、13社のうち、キリン、アサヒビール、サッポロビールの3社については、ビールラベル の変遷はみられたが、ロゴマークについての記載は確認できなかった。以下では、10社のロゴマ ークについての変遷を述べた後、ビールメーカー3社のラベルについての変遷を述べていく。

まず、上の図にある10社の変遷をみていく。明治グループは、1916年に明治製菓の前身とな る東京製菓を設立し、1917年に明治乳業の前身となる極東練乳を設立した。それぞれ東京製菓 は赤い朝日マークの中心に白字のTとKを組み合わせたもの、極東練乳は烏が描かれたものが、

当初のロゴマークであった。その後、1924年に東京製菓の商号を明治製菓株式会社に変え、ロ ゴマークもMとSを組み合わせたものへと変わった。さらに1940年に極東練乳の商号を明治乳 業株式会社に変え、ロゴマークは朝日の中心に「乳」と書かれたものへと変わった。その後、そ れぞれMejiの文字をロゴマークとしたが、いつごろ変更したかは確認できなかった。そして、

2009年に明治製菓と明治孚僕を経営統合し、現在のロゴマークに統一した。

力、ゴメは、1899年に創業し、1917年に初めてロゴマークを登録した。当初考案されたロゴマ

(11)

−クは、マルの中に陸軍のシンボルマークである"五角の星,'であった。しかし、これでは許可が おりず、何度か再申請を繰り返し、三角を二つ組み合わせたマークを"籠の目"のようだというこ

とで、カゴメ印として申請し許可がおりた。その後、1963年に社名を「カゴメ株式会社」と改 称し、カゴメのトレードマークであるトマトをモチーフにした赤い図に、カゴメ印と社名をいれ たロゴマークを制定した。ちょうどカラーテレビ普及と、ロゴマークに色彩を取り入れたタイミ

ングが同じだといえる。続いて1983年に、シンプルな赤字のKAGOMEへとロゴマークを変更 した。2003年には、「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」をブランド・ステートメントに、

現在の赤・黄色・緑の3色を取り入れたロゴマークになる。

味の素は、1907年に創業し、1908年に「味の素③」の美人印を商標登録した。これが初めて のロゴマークである。その後間が空き、1999年にAJINoMoToという赤色のシンプルな文字 列へと変更される。2017年には、グローバル化を意識した「世界中の人々に親しみやすく記憶 に蓄積しやすい」図的なロゴマークヘと変わり、現在に至る。

キッコーマンとサントリーホールデイングスは、ロゴマーク制定が1960年代よりも後であり、

今回の仮説には該当しなかった。

森永乳業は、1905年に最初のエンゼルマークが誕生する。その後何度も改変され1986年まで 天使のモチーフはほとんど変わっていないが、線がくっきりとわかりやすく描かれ、その周りに は英語が取り入れられている。その後1986年に制定されたロゴマークには色彩が使われ、今ま でのエンゼルマークよりもかなりシンプルになっている。「長く親しまれた伝統的なエンゼルマ ークに、国際性や力強さを併せ持たせるという意図」で、現在のエンゼルマークの原型が完成し た。中心にはエンゼルの顔が残っており、その周りは森永のイニシャルである「M」と大きく羽 ばたこうとする翼を表している。

ハウス食品は、創業時のロゴマークについての記載はなかったものの、1980年に白黒の家の ロゴマークから、現在使われている赤色の「h」をモチーフにした非常にシンプルなロゴマーク に変わっている。

敷島製パンは、ロゴマークの変遷は確認できるものの、いつごろかの情報は得られなかった。

以下にロゴマークの変遷を拡大したものがある。中部・関西地方では、最初のころは白黒で桜の マークが描かれていた。その後、色彩がとりいれられPascoというシンプルなロゴマークに変わ った。東京では、Pascoというシンプルなマークであることに変わりはないが、初期は白黒であ

り2代目以降色彩がとりいれられている。

(12)

騨鴬灘謹灘鶏

臣 。■鶚巽

慰 … 晶 鐸 伽

胸葬シマ}

pasco

| 東 京 I

図2:敷島製パンのロゴマークの変遷

ヱスビー食品は、1930年に「太陽(Sun)」と「烏(Bird)」を図案化したヒドリ印を商標に登 録した。そして2003年に「スパイス&ハープ」の新しいコーポレートシンポルを定め、現在のロ ゴマークに至る。

以上から、形の変遷については、明治グループ、カゴメ、味の素、森永製菓、ハウス食品、敷 島製パン、ヱスピー食品の7社においては、徐々にデフォルメ化されシンプルになってきている と言えるが、その他の企業では仮説と異なる結果となった。色の変遷については、カゴメ、味の 素、森永製菓、ハウス食品の4社においては、1960年代を境にロゴマークに色彩が取り入れら れたと言えるが、その他の企業では仮説と異なる結果となった。

続いて、13社のうち、キリン、アサヒビール、サッポロビールの3社において発見した特徴 について述べていく。3社ともロゴマークの変遷は確認できなかったが、主力商品であるビール のラベルについては、各社それぞれ変遷がみられた。また、サッポロビールの公式サイトでは、

エビスビールについても記載があったため、4つのラベルを比較していく。ラベルの変遷につい ては、以下のとおりである。

1 8 8 0 〜 1 9 0 0 〜 1 9 2 0 〜 1 9 4 0 〜 1 9 6 0 〜 1 9 8 0 〜

リン

シ飾磨蜜

)'サヒヒ 、 − ル

○ 一

鯨j剛

☆ 騒

郵罰蝿部雷・皇

サ ツ ボ ロ ヒ − ル

躍箪

』 【

図3:ビールメーカーのロゴマークの変遷

(13)

4つとも歴史が長く、1880年代からラベルが誕生している。どれも最初から色彩が使われてお り、複雑なものが多い。

キリンは、ラベルの中心に東洋の想像上の動物である「騏麟」が描かれている。1888年に作

られた初代のラベルは騏麟が小さく描かれていたが、1889年の2代目以降わかりやすく大きめ に描かれるようになっている。その後微々たる変化はあるものの、1889年からほとんどラベル の変化はない。

アサヒビールは、創業当初、社名のとおり朝日をモチーフとしたマークがラベルに描かれてい

る。その後1985年にCI(コーポレート・アイデンティティ)つまりロゴマークが導入され、現在

のシンプルなラベルに変わった。朝日マークは消え、アサヒの社名の文字を羅列したシンプルな ものへとデフォルメ化されている。色は、朝日の赤色が主であったものから、飲料メーカーには 大切な"水"を表す青色へと変更された。

サッポロビールは、五稜郭をモチーフとした星のマークが描かれている。星マークはそのまま

に、周りの文字が消えすっきりしたものへと変わった。色は赤色のままである。同じ会社から発 売されているエビスビールは、1890年に作られてからほとんどラベルの形・色ともに変わって

おらず、お馴染み七福神のひとりである恵比寿様が描かれている。

したがって、形の変遷については、アサヒビールとサッポロビールにおいては徐々にデフォル

メ化されシンプルになってきていると言えるが、キリンとエビスビールは仮説と異なる結果とな

った。また、色の変遷については、4つとも仮説と異なる結果となった。

表3:化学メーカーの結果

企業名 形の変遷 色の変遷

1 旭化成グループ × ×

2 花王

3 富士フィルム

4 ユ ニ ・ チ ャ ー ム × ×

5 住友化学 × ×

6 ラ イ オ ン △ ×

7 宇部興産 × ×

8 積水化学工業 × ×

化学メーカーでは、8社中2社のみ変遷がみられた。ライオンについては、商品に描かれてい るライオンマークの変遷はみられたが、ロゴマークについての記載は確認できなかった。以下、

花王と富士フィルムのロゴマークの変遷についてそれぞれ述べていく。

(14)

表4:花王のロゴマークの変遷

1890 1897 1912 1925 1943 1948 1953 1985 2009

一 』 一 ■

K a

花王は、1887年に創業して現在に至るまで、8回ロゴマークを変えている。花王株式会社の広 報部伊藤有希さんによると、初代のロゴマークは創業者長瀬冨郎が考案したものを基にしたとい う。初期のロゴマークは現在と逆向きの月マークであり、吹き出しとその左上に星の図案が描か れていた。1912年になると、それらは消え月だけのロゴマークとなった。月の表情は同じで、

何か言いたげな顔をしている。1925年には表情がかわり、現在のような微笑んだ顔に変わった。

そして1943年には向きが変わり、現在と同じ左向きになる。なぜ左向きになったのかについて、

広報部の伊藤さんは、「左向きの月はこれから満月に向かう上弦(じょうげん)の月で、その方が縁 起が良いから、という考えから」向きを変えたと述べている。1948年には、今までとは違い女 性らしい顔つきになっていることがうかがえる。線も太くなり、初期よりもだいぶ見やすくなっ てきたことがわる。そして1953年ではついに色彩が取り入れられた。カラーテレビが普及され たのは1960年以降のため、少し時期がずれている。

したがって、形の変遷については、徐々にデフォルメ化されシンプルになってきていると言え るが、色の変遷については、仮説と異なる結果となった。

表5:富士フィルムのロゴマークの変遷

1934創業 1960 1980 1985 1992 2006 なし

1

2

FUJIFILM mFUJIFILM FUJIHLM

富士フイルムは1934年に創業したが、1960年頃までのロゴマークは確認できなかった。その ため、変遷とカラーテレビの普及の関係性を確認することはできなかった。しかし、カラーテレ ビの普及によって、CMなどにロゴマークを使用するようになったため、ロゴマークに力を入れ だしたとも考えられる。変遷をみると、形については1980年ごろと2006年とを比べると、マー クから文字だけのややシンプルになっているといえる。ただ、色については最初のロゴマークか らだんだん色使いが減っている。

したがって、形の変遷については、ややデフォルメ化されシンプルになってきていると言える が、色の変遷については、仮説と異なる結果となった。

7.考察

以上の調査結果から、考察を述べていく。最初に、ヤフーファイナンスのランキングトップ15 では、日立製作所、東芝、パナソニック、三菱電機など、総合電機メーカーにおいて、ロゴマー

(15)

クの変遷についての情報が多く確認できた。これは、これらの企業が1960年代にカラーテレビ

を普及した一人者であることも関係していると考えられる。一方で、日本電信電話や日本郵政な

ど、1980年以降に民営化されたものについては歴史が深い企業であってもロゴマークについて

の記載は確認できなかった。これは、民営化によって他の企業と差をつけるためのブランディン

グが必要でなくなったからではないかと推測する。

食品メーカーでは、明治や森永といった製菓メーカー、カゴメや味の素といった調味料メーカ

ーにおいて、ロゴマークの変遷についての情報が多く確認できた。また、ビールメーカーにおい ては、ラベルの変遷が確認できた。これは、それぞれの企業が持つ創業時からの主力商品、例え ばチョコレート、トマト、カレー、瓶ビール等のイメージを強く植え付けるためのブランディン グとして、ロゴマークに力を注いでいるためと考えられる。また、製菓メーカーにおいては、イ メージキャラクターがついているものもあり、子供向けに親しみやすくするためと考えられる。

一方で、キューピー、カルビー、グリコ、不二家など、ロゴマークよりイメージキャラクターの 印象が強い企業についてはロゴマークについての記載は確認できなかった。また、ロッテグルー プやブルポンは、製菓メーカーではあるもののロゴマークの変遷が確認できなかった。

化学メーカーでは、花王や富士フィルムといった、化粧品を扱う化学メーカーにおいて、ロゴ マークの変遷についての情報が多く確認できた。このランキング外ではあるが、同じ化粧品を取 り扱う業界の資生堂もロゴマークの変遷がみられる。これは、取り扱う商品と消費者の距離が近 いため、商品のロゴマークを重視しているからといえる。一方で、旭化成グループや宇部興産の ように、ケミカル事業や建築事業、医薬品を扱う企業では、化粧品に比べて頻繁に購入するもの ではないため、消費者との距離も遠く、ロゴマークをそれほど重視していないといえる。

全体を通して、形の変遷がみられた企業では、ロゴマークのデフォルメ化と英字化が目立った。

これはグローバル化が影響し、世界中のだれが見ても認識しやすいようにしているためと考えら れる。色の変遷については、総合電機メーカーにおいて最も仮説と合う結果となった。以下、調 査結果を割合にして表したものである。()内は、○と△を合わせた数字である。

表6:調査結果

形の変遷(社) 色の変遷(社) 形の変遷(%) 色の変遷(%)

自動車・総合電機 6 5 40% 33.3%

(15 (8) (7) (53.3 (46.6

食品(30社) 7 6 23.3% 20%

(13 (10) (43.3 (33.3

化学(8社) 2 2 25% 25%

(3) (37.5

計(53社) 15 13 28.3% 24.5%

(24 (19 (45.2 (35.8

(16)

8.おわりに

これまでロゴマークの変遷について述べてきた。各業界によって特徴があり、ロゴマークを重 視する企業とそうでない企業にわかれた。今回企業を調査していく中で、ロゴマークによるブラ

ンデイングの他に、主力商品別に設けられているカテゴリーブランドによるブランドの確立を図 る企業も多いことがわかった。

また、本研究を進めていく中で、問題と言える点が3つ挙げられる。1つ目は、特にビールメ ーカーや製菓メーカーにおいて、企業のロゴマークではなく主力商品のラベル・パッケージに重 きを置いていることがうかがえた点である。2つ目は、グリコのゴールインマーク・ビスコ坊や と同様に、キユーピーのキューピー人形、不二家のペコちゃん等のように、古くから愛されてい るイメージキャラクターが存在する場合もあるという点である。本稿では図形及び文字の組み合 わせによる企業のロゴマークのみを取り上げてきたが、この場合文字列によるロゴマークよりも、

キャラクターのデフォルメに関する変遷の方が特徴的であることがわかった。3つ目としては、

創業年数がそもそも1960年以降の企業や、1960年以降からロゴマークを制定している会社が含 まれてしまい、研究の妨げとなったことである。今回ヤフーファイナンスと就職四季報を用いて、

比較的大きな企業を取り扱ってきた。大企業を選定した狙いは、歴史が深く国民から長く親しま れている企業が多いのではないかと考えたからである。しかし、大企業であってもその子会社や カテゴリーブランドがランキングに含まれていることもあり、選定がうまくいかなかったといえ

今後は、カテゴリーブランド、及び主力商品、イメージキャラクターについても考慮しながら、

研究をすすめていきたい。また、対象企業の選び方についても、より自分の研究に合うサンプル が見つかるように、選定基準を定めていきたい。

参考文献

山縣裕一郎(2016)『就職四季報2017年版」東洋経済新報社.

白石弘幸(2016)『脱コモデイテイヘのブランデイング』創成社.

木全賢(2007)『売れる商品デザインの法則』日本能率協会

坂本和子(2010)「購入意向を高めるための色彩戦略(<特集>色彩戦略とカラーデザイン)」『日本色彩学会誌』

34(3),pp.292‑297.

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キリン公式サイト(2018/1/13アクセス)

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https://www.morinaga.co.jp/company/about/hiStory.html ハウス食品公式サイト(2018/1/13アクセス)

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m p : / / w W W ・ s a p p o r o b e e r . j p / c o m p a n y / h i s t o r y /

グリコ公式サイト(2018/1/13アクセス)

http:/www.gHco・co.jp/bisco/about/history.html 敷島製パン公式サイト(2018/1/13アクセス)

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https://www.sbfbods.co.jp/cOmpany/profile/history/index.html 花王公式サイト(2018/1/13アクセス)

http://www.kao.co.jp/white/history/01/ なぜ花王のロゴには''月"が描かれているの?

‑広報さんに聞いてみた‑マイナビニュース(2018/1/13アクセス)

https://news.mynavi.jp/artide/20130707‑kOl 富士フィルム公式サイト(2018/1/13アクセス)

http:/www.fUjifilm.co.jp/co印orate/aboums/logo/index.htm

参照

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