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日本内科学会雑誌第107巻第1号

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Academic year: 2022

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はじめに

 本 邦 で は,B型 肝 炎 ウ イ ル ス(hepatitis B virus:HBV)に感染したHBVキャリア(HBs抗 原陽性者)は 130~150 万人存在し,既往感染 者(HBs抗原陰性,かつHBc抗体またはHBs抗体 陽性)は 65 歳以上の 2~3 割を占める.HBV感 染患者において免疫抑制・化学療法等により HBVが再増殖することをHBV再活性化と称す る.HBV再活性化による肝炎は重症化しやすく,

死亡例も存在する.また,原疾患に対する治療の 中断もしくは中止を余儀なくされ,予後が悪化 する.よって,現時点では再活性化の発症を阻止 することが重要である.本稿では,HBV再活性化 のリスク因子,その対策について紹介する.

1.B型肝炎の疫学

 HBV持続感染の多くは出生時の母子感染によ り成立する.幼少期はHBVに対して免疫寛容で あり,HBV DNA(deoxyribonucleic acid)は高値 で,ALTは正常なHBe抗原陽性無症候性キャリア として経過し,成人期になると肝炎を発症し,

HBV DNAが低下し,HBe抗原陰性非活動性キャ リアとなる.

 一方,成人でのHBV感染例では,本邦に多い ゲノタイプBとCに感染した場合は大半が一過 性の急性肝炎を発症し,経過でHBs抗原,血中 HBV DNAは陰性化し,HBs抗体が陽性となり,臨 床的な治癒と考えられる既往感染となる.しか し,既往感染者の肝臓内ではHBVの複製中間体 である閉鎖環状DNA(covalently closed circular DNA:cccDNA)が検出されており,ウイルスの複 製が持続し続けている潜伏持続感染状態であ

B型肝炎再活性化の対策

要 旨

梅村 武司  免疫抑制・化学療法によりB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)

が再増殖することをHBV再活性化と称する.HBV再活性化による肝炎は 重症化しやすく,原疾患の治療を困難にさせる.発症そのものを阻止する ことが最も重要であり,日本肝臓学会からガイドラインが発行されてい る.近年,C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting anti- viral:DAA)の治療中にもHBV再活性化の症例が認められており,注意 が必要である.

〔日内会誌 107:26~31,2018〕

Key words HBV DNA,de novo肝炎,核酸アナログ製剤

信州大学内科学第二教室(消化器内科学)

Basics and Clinics on Viral Hepatitis in the era of Viral Elimination. Topics:III. Management for reactivation of hepatitis B virus.

Takeji Umemura:Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Medicine(Department of Gastroenterology),Shinshu University School of Medicine, Japan.

(2)

る.つまり,免疫抑制の状態に陥るとHBV DNA が急速に増殖し,肝炎を起こす危険性がある.

2.HBV再活性化の機序

 HBV再活性化の定義とは,キャリアでは血中 HBV DNA量が増加した場合,既往感染者では治 療前には陰性であったHBV DNAが陽性化した 場合を指す.既往感染者からの再活性化による 肝炎は「

de novo

B型肝炎」と称される.

 既往感染者から発症する再活性化は,図 1の ように 3 段階に分けることができる.まず,第 1 段階では,化学療法・免疫抑制療法が開始さ れると,免疫抑制により潜伏持続感染している 肝細胞内でHBV複製が急速になり,血中にHBV DNAが検出され,その量は増加していく.しか し,ALTの上昇は認められない.第 2 段階では,

化学療法・免疫抑制療法の中断もしくは終了に 伴い,免疫機能が回復してくることにより,肝 障害が出現する.細胞表面にウイルスペプチド を提示したHBV感染肝細胞が機能を回復したT 細胞によって排除されるため,肝細胞壊死を引 き起こす.回復した免疫応答によりHBV DNAは

減少していく.臨床的にはALTの上昇が認めら れ,肝炎を発症する.肝障害の程度によって重 症肝炎を発症し,急性肝不全から死亡する例も 存在する.第3段階では,肝炎は落ち着き,HBV DNAも陰性化し,回復に向かう.

3.de novo B型肝炎の背景

 HBV再活性化のリスクは,主にウイルスの感 染状態と免疫抑制の程度に規定されている.ウ イルスの感染状態では,慢性活動性肝炎,非活 動性キャリア,既往感染者に分類される.HBV 再活性化のリスクはこの順に高い.慢性活動性 肝炎,非活動性キャリアからのHBV再活性化が 高率に生じることは,1975年頃から既に報告が されていた.一方,既往感染者からの再活性化 については注目されていなかったが,2000年代 になると,HBV再活性化を起こして急性肝不全 に陥った症例の報告が散見されるようになっ た.そこで,日本肝臓学会認定施設に対してア ンケート調査を行い,新規HBs抗原陽性症例の 頻度・劇症化・死亡率について検討を行った1). 登録された 552 例のうち 96%が急性B型肝炎,

図 1 HBV 再活性化の 3 段階

血清ALT値(IU/l) 血清HBV DNA量(IU/ml)

化学療法

25 50 100 200 400 800

20 106

HBV DNAの増加 肝炎発症 回復

HBV DNA ALT

105 104 103 102

(3)

4%に

de novo

B型肝炎の発症が認められた.劇 症肝炎は

de novo

肝炎(22%)で急性肝炎(9%)

と比較して有意に高率に発症した.劇症化した

de novo

肝炎では全例死亡しており,急性肝炎の

42%と比較して有意に高率であった.背景疾患 では悪性リンパ腫が多く,R-CHOP(リツキシマ ブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビ ンクリスチン+プレドニゾロン)療法との関連 性が示唆された.さらに,

de novo

肝炎を発症し てから核酸アナログ製剤を投与しても救命でき ないことも判明した.

4.HBV再活性化への対策

1)再活性化対策のガイドライン

 

de novo

B型肝炎による劇症化死亡例を予防

することを目的として,2009年1月,厚生労働 省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」

班及び「「肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治 療の標準化に関する研究」班が合同で「免疫抑 制・化学療法により発症するB型肝炎対策」を 策定した.図 2に最新のガイドラインとその注 釈を掲載する(日本肝臓学会肝炎診療ガイドラ イン作成委員会編:B型肝炎治療ガイドライン

( 第 3 版 ).2017 年 8 月,78―80 頁 よ り 引 用:

http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_

guidlines/hepatitis_b).

 基本となるのは,免疫抑制・化学療法施行前 に全ての症例においてHBVのスクリーニング検 査を施行することである.まずHBs抗原を測定 し,陽性者ではHBe抗原,HBe抗体,HBV DNA 検査を実施する.再活性化の高リスク群である ことから,免疫抑制・化学療法前に肝臓専門医 にコンサルトする必要がある.一方,HBs抗原 陰性者ではHBc抗体とHBs抗体検査を実施し,

HBc抗体またはHBs抗体陽性の既往感染者と確 認できた場合には,血中HBV DNAの測定を行 う. 血 中HBV DNAが 20 IU/ml(1.3 LogIU/ml)

未満の場合は,治療開始後,定期的(1~3カ月 毎)にHBV DNAの測定を行い,モニタリングを 継続する.

2)免疫抑制薬の種類によるリスクの違い  リツキシマブ(±ステロイド)を含む治療法 は,HBV再活性化のリスクが高い.既往感染者 に発症したB細胞リンパ腫に対するR-CHOP療法 施行時のHBV再活性化の前向き観察試験では 8.3%/1.5 年~41.5%/2 年と高率にHBV再活性 化が認められている2,3).HBV DNA陽性化を認め た時点で核酸アナログ製剤投与を開始すること で肝炎の発症は予防可能であった.さらに,再 活性化のリスク因子として,治療前のHBs抗体 価10 mIU/ml未満が検出された.メタ解析4)にお いても,血液悪性疾患に対する化学療法で発症 する再活性化はHBs抗体陽性者ではリスクが約 1/5になることが明らかになった.よって,HBs 抗体陰性者にはHBワクチン接種を受けること を推奨している.免疫抑制効果の強いフルダラ ビンを用いる化学療法,造血幹細胞移植はHBV 再活性化の高リスクであり,注意が必要であ る.治療中及び治療終了後少なくとも12カ月の 間,HBV DNAを月 1 回モニタリングする.造血 幹細胞移植例は,移植後長期間のモニタリング が必要である.

 通常の化学療法及び免疫抑制作用を有する分 子標的薬の併用の場合,HBV再活性化の頻度は 少ないながら,発症のリスクがある.HBV DNA 量のモニタリングは1~3カ月毎を目安とし,治 療内容を考慮して間隔及び期間を検討する.血 液悪性疾患については慎重な対応が望ましい.

 副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬,免疫抑制 作用あるいは免疫修飾作用を有する分子標的治 療薬による免疫抑制療法でも,HBV再活性化の リスクがある.免疫抑制療法では,治療開始後 及び治療内容の変更後(中止を含む)少なくと も 6 カ月間は,月 1 回のHBV DNA量のモニタリ ングが望ましい.なお,6カ月以降は3カ月毎の

(4)

図 2 免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎ガイドライン

(日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会編:B 型肝炎治療ガイドライン(第 3 版).2017.8,78-80 より引用:

http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b)

補足:血液悪性疾患に対する強力な化学療法中あるいは終了後に,HBs 抗原陽性あるいは HBs 抗原陰性例の一部において HBV 再活性化により B 型肝炎が発症し,その中には劇症化する症例があり,注意が必要である.また,血液悪性疾患また は固形癌に対する通常の化学療法およびリウマチ性疾患・膠原病などの自己免疫疾患に対する免疫抑制療法においても HBV 再活性化のリスクを考慮して対応する必要がある.通常の化学療法および抑制療法においては,HBV 再活性化,肝炎 の発症,劇症化の頻度は明らかでなく,ガイドラインに関するエビデンスは十分ではない.また,核酸アナログ投与によ る劇症化予防効果を完全に保証するものではない.注 1)免疫抑制・化学療法前に,HBV キャリアおよび既往感染者をス クリーニングする.まず HBs 抗原を測定して,HBV キャリアかどうか確認する.HBs 抗原陰性の場合には,HBc 抗体およ び HBs 抗体を測定して,既往感染者かどうか確認する.HBs 抗原・HBc 抗体および HBs 抗体の測定は,高感度の測定法を 用いて検査することが望ましい.また,HBs 抗体単剤陽性(HBs 抗原陰性かつ HBc 抗体陰性)例においても,HBV 再活性 化は報告されており,ワクチン接種歴が明らかである場合を除き,ガイドラインに従った対応が望ましい.注 2)HBs 抗原 陽性例は肝臓専門医にコンサルトすること.また,すべての症例において核酸アナログの投与開始ならびに終了にあたっ て肝臓専門医にコンサルトするのが望ましい.注 3)初回化学療法開始時に HBc 抗体,HBs 抗体未測定の再治療例および 既に免疫抑制療法が開始されている例では,抗体価が低下している場合があり,HBV DNA 定量検査などによる精査が望ま しい.注 4)既往感染者の場合は,リアルタイム PCR 法により HBV DNA をスクリーニングする.注 5)a.リツキシマブ

(±ステロイド),フルダラビンを用いる化学療法および造血幹細胞移植:既往感染者からの HBV 再活性化の高リスクであ り,注意が必要である.治療中および治療終了後少なくとも 12 か月の間,HBV DNA を月 1 回モニタリングする.造血幹 細胞移植例は,移植後長期間のモニタリングが必要である.b.通常の化学療法および免疫作用を有する分子標的治療薬を 併用する場合:頻度は少ないながら,HBV 再活性化のリスクがある.HBV DNA 量のモニタリングは 1~3 か月ごとを目安 とし,治療内容を考慮して間隔および期間を検討する.血液悪性疾患においては慎重な対応が望ましい.c.副腎皮質ステ ロイド薬,免疫抑制薬,免疫抑制作用あるいは免疫修飾作用を有する分子標的治療薬による免疫抑制療法:HBV 再活性化 のリスクがある.免疫抑制療法では,治療開始後および治療内容の変更後(中止を含む)少なくとも 6 か月間は,月 1 回 の HBV DNA 量のモニタリングが望ましい.なお,6 か月以降は 3 か月ごとの HBV DNA 量測定を推奨するが,治療内容に 応じて高感度 HBs 抗原測定(感度 0.005 IU/ml)で代用することを考慮する.注 6)免疫抑制・化学療法を開始する前,で きるだけ早期に核酸アナログ投与を開始する.ことに,ウイルス量が多い HBs 抗原陽性例においては,核酸アナログ予防 投与中であっても劇症肝炎による死亡例が報告されており,免疫抑制・化学療法を開始する前にウイルス量を低下させて おくことが望ましい.注 7)免疫抑制・化学療法中あるいは治療終了後に,HBV DNA 量が 20 IU/ml(1.3 LogIU/ml)以上 になった時点で直ちに核酸アナログ投与を開始する(20 IU/ml 未満陽性の場合は,別のポイントでの再検査を推奨する).

また,高感度 HBs 抗原モニタリングにおいて 1 IU/ml 未満陽性(低値陽性)の場合は,HBV DNA を追加測定して 20 IU/ml 以上であることを確認した上で核酸アナログ投与を開始する.免疫抑制・化学療法中の場合,免疫抑制薬や免疫抑制作用 のある抗腫瘍薬は直ちに投与を中止するのではなく,対応を肝臓専門医と相談する.注 8)核酸アナログは薬剤耐性の少な い ETV,TDF,TAF の使用を推奨する.注 9)下記の①か②の条件を満たす場合には核酸アナログ投与の終了が可能である が,その決定については肝臓専門医と相談した上で行う.①スクリーニング時に HBs 抗原陽性だった症例では,B 型慢性 肝炎における核酸アナログ投与終了基準を満たしていること.②スクリーニング時に HBc 抗体陽性または HBs 抗体陽性 だった症例では,(1)免疫抑制・化学療法終了後,少なくとも 12 か月間は投与を継続すること.(2)この継続期間中に ALT(GPT)が正常化していること(ただし HBV 以外に ALT 異常の原因がある場合は除く).(3)この継続期間中に HBV DNA が持続陰性化していること.(4)HBs 抗原および HB コア関連抗原も持続陰性化することが望ましい.注 10)核酸ア ナログ投与終了後少なくとも 12 か月間は,HBV DNA モニタリングを含めて厳重に経過観察する.経過観察方法は各核酸 アナログの使用上の注意に基づく.経過観察中に HBV DNA 量が 20 IU/ml(1.3 LogIU/ml)以上になった時点で直ちに投与 を再開する.

スクリーニング(全例)

HBs抗原

HBe抗原,HBe抗体,

HBV DNA定量

核酸アナログ投与

通常の対応 20 IU/ml

(1.3 LogIU/ml)以上

20 IU/ml

(1.3 LogIU/ml)以上 20 IU/ml

(1.3 LogIU/ml)未満

HBs抗原(+) HBs抗原(-)

HBc抗体,HBs抗体

HBc抗体(-)かつHBs抗体(-)

HBc抗体(+)またはHBs抗体(+)

HBV DNA定量

モニタリング HBV DNA定量 1回/1 ~ 3か月

AST/ALT 1回/1 ~ 3か月

(治療内容を考慮して間隔・期間を検討する)

20 IU/ml

(1.3 LogIU/ml)未満

注1)

注2)

注3)

注4)

注5)a,b,c 注6)

注6)

注7)

注2),8),9),10)

(5)

HBV DNA量測定を推奨するが,治療内容に応じ て高感度HBs抗原測定(感度 0.005 IU/ml)で代 用することを考慮する.5 mg/日以上の副腎皮 質ステロイドかつ/または免疫抑制薬を使用し ているリウマチ性疾患患者の前向き試験では,

再活性化のリスクは低いことが明らかにされ た5).本試験でもHBs抗体 10.0 mIU/ml未満が再 活性化発症のリスク因子である.

 その他にも添付文書上にHBVの増殖が注意喚 起されている薬剤は数多くあり,新規薬剤に関 するHBV再活性化に関する情報は,独立行政法 人 医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)による副 作 用 情 報(https://www.pmda.go.jp/safety/info- services/drugs/adr-info/0001.html)等を参考に するとよい.

3)核酸アナログ製剤投与開始と終了時期  核酸アナログ製剤の投与開始は,HBVキャリ ア例では免疫抑制・化学療法開始前にできるだ け早期に行い,HBV DNA量を低下させてから治 療に入ることが望ましい.一方,既往感染者で は,免疫抑制・化学療法治療中・治療終了後に HBV DNAが20 IU/ml(1.3 LogIU/ml)以上になっ た時点で直ちに投与を開始する.免疫抑制・化 学療法中の場合は,免疫抑制薬や抗腫瘍薬を直 ちに投与を中止せず,肝臓専門医と対応を相談 することを推奨している.使用する核酸アナロ グ製剤は薬剤耐性の少ないエンテカビル,テノ ホビル,テノホビル・アラフェナミドの使用が

推奨されている.

 核酸アナログ製剤投与終了の決定について は,ガイドラインを参考に肝臓専門医と相談し たうえで行う.核酸アナログ製剤投与終了後,

少なくとも12カ月間は,HBV DNAモニタリング を含め,厳重に経過観察をする必要がある.経 過観察中にHBV DNA量が 20 IU/ml(1.3 LogIU/

ml)以上になった時点で直ちに投与を再開する 必要がある.

5. C型肝炎に対するDAA療法とHBV再活性化  最近,HBV再活性化の話題が再び注目を浴び ることになった.C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)感染患者の治療薬として直接作用 型抗ウイルス(direct-acting antiviral:DAA)が 開発された(トピックスV参照).DAAの投与中 にHCV RNA(ribonucleic acid)が陰性化してい るにもかかわらず,ALT値が急に上昇する症例 のなかにHBV再活性化を起こしている症例があ り,重症肝炎発症例や死亡例まで存在すること が判明した.本邦の検討では,DAA治療を施行 した既往感染者からのHBV再活性化率は約 3~

6%であった(表)6~8).再活性化を起こした症例 はHBV DNAの増殖,ALTの上昇は軽度な症例が 多かった.さらに,HBV再活性化のリスク因子と しては治療前もしくは治療終了時のHBs抗体が 低力価の場合,治療前のALT値が高値な症例で 発症率が高いことが明らかとなった.ただし,イ ンターフェロン治療を行った症例群ではHBV再 表 DAA 治療施行 C 型慢性肝炎患者における HBV 再活性化

報告者 既往感染者数 HBV 再活性化 治療内容 リスク因子

Ogawa, et al 63 4(6.3%) SOF/LDV SOF+RBV 治療前 HBs 抗体陰性もしくは低力価 Doi, et al 147 5(3.4%) SOF/LDV SOF+RBV 治療前 HBs 抗体低力価 ALT 高値 Kawagishi, et al 84 5(5.9%) DCV+ASV SOF/LDV

SOF+RBV 治療終了後 HBs 抗体低力価

SOF:sofosbuvir,LDV:ledipasvir,RBV:ribavirin,DCV:daclatasvir,ASV:asunaprevir

(6)

活性化は報告されておらず8),DAA治療とHBV再 活性化発症の機序解明は今後の課題である.

おわりに

 医療の進歩によって,今後も新薬の開発が行 われ,新しい化学療法・免疫抑制療法が施行さ れる機会が増加することが予想される.最近で

は,C型慢性肝疾患に対するDAA療法中のHBV再 活性化という新しい問題もあり,注意が必要で ある.既往感染者におけるHBV再活性化のリス ク因子はHBs抗体が低力価であることが明らか となっており,予防法としてのHBVワクチン接 種も重要な課題と考えられる.

著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし

文 献

1) Umemura T, et al : Mortality secondary to fulminant hepatic failure in patients with prior resolution of hepatitis B virus infection in Japan. Clin Infect Dis 47 : e52―56, 2008.

2) Seto WK, et al : Hepatitis B reactivation in patients with previous hepatitis B virus exposure undergoing ritux- imab-containing chemotherapy for lymphoma : a prospective study. J Clin Oncol 32 : 3736―3743, 2014.

3) Kusumoto S, et al : Monitoring of Hepatitis B Virus(HBV)DNA and Risk of HBV Reactivation in B-Cell Lym- phoma : A Prospective Observational Study. Clin Infect Dis 61 : 719―729, 2015.

4) Paul S, et al : Role of surface antibody in hepatitis B reactivation in patients with resolved infection and hemato- logic malignancy : A meta-analysis. Hepatology 66 : 379―388, 2017.

5) Fukuda W, et al : Incidence of hepatitis B virus reactivation in patients with resolved infection on immunosup- pressive therapy for rheumatic disease : a multicentre, prospective, observational study in Japan. Ann Rheum Dis 76 : 1051―1056, 2017.

6) Ogawa E, et al : Potential risk of HBV reactivation in patients with resolved HBV infection undergoing direct-act- ing antiviral treatment for HCV. Liver Int, 2017.

7) Doi A, et al : Frequency of, and factors associated with, hepatitis B virus reactivation in hepatitis C patients treated with all-oral direct-acting antivirals : analysis of a Japanese prospective cohort. Hepatol Res, 2017.

8) Kawagishi N, et al : Comparing the risk of hepatitis B virus reactivation between direct-acting antiviral therapies and interferon-based therapies for hepatitis C. J Viral Hepat, 2017.

 

参照

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38) Comi G, et al : European/Canadian multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled study of the effects of glatiramer acetate on magnetic resonance imaging-measured