高知県公立高校入試過去問題(H・)国語〔古典編〕
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一、次の文章を読み、後の(1)~(3)の問いに答え一、次の文章を読み、後の(1)~(3)の問いに答えなさい。【H】なさい。【H】
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〔ある人が、梅雨の晴れ間のある夜、川の土手に沿った今は昔、比叡の山の西塔に実因僧都といふ人ありけり。 ひえじついんそうづ①
道を歩いていた。月は薄い雲につつまれ、草におりてい小松の僧都とぞ言ひける。顕密の道につきてやむごとなか けんみつ
る露は宝石のように輝いていた。〕りける人なり。それに、いみじく力ある人にてありける。僧都、昼寝したりけるに、若き弟子ども、師の力ある由 よし
芦もまばらにかる沢の、あやめも分ぬところに、堤を沿を聞きて試みむがために、胡桃を取りて持て来たりて、僧 あしわかくるみ
ふて白犬あり。礫をもつて追へばひたもの逃ぐ。静かにゆ都の足の指十が中に胡桃八つをはさみたりければ、僧都は つぶてa
けば犬も静かに、とどまれば犬もとどまれり。かくて追ふ虚寝をしたりければ、うち任せてはさまれて後、寝伸びを そらね
と思ひつつ、十四五町ゆくに、一声ほゆる事もなし。それするやうにうちうむめて足をはさみければ、八つの胡②b③
より江の堤には沿はず、我ゆくみちは横なりしに、犬見え桃一度にはらはらと砕けにけり。ずなる。こはいかにと又もとのかたへもどりて見れば犬あ(『今昔物語集』による)り。ふしぎのおもひをなすに、何の別の事もなし。濁水に べちにごりみづ①
くもりし月の影うつろひしなり。犬と思ひしときは月と見(注)比の叡山…比叡山延暦寺をさす。 ひえいえんりゃく
えず。月とがてんして、なにほど犬に見なさんとせしかど西塔…比叡山三塔の一つ。も、犬とはかつて見えざるなり。一念の赴くところいな実因僧都…比叡山の僧で、小松の僧都とも称す。 おもむ②
ものにて、十四五町まよへり。しりて後は、まよふて見顕密…仏教における教えの種類で、顕教と密教のこと。③④
んと思ひしかども、まよはれずとかたれり。やむごとなかりける…極めて立派な。(『御伽物語』による)虚寝…寝たふりをすること。 おとぎものがたり
(注)芦もまばらにかる沢…芦をまばらに刈り取った水辺。うむめて…うめいて。
あやめも分ぬ…者の区別もつかないこと。
礫…小石ひたもの…ひたすらかくて…このように(1)文章中の線部①の「今は昔」の意味として適切
十四五町…およそ千五百メートル。江…川なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
いかに…どうしたことか。別の事…特別なこと。ア、今と昔を比べてみると(1)文章中の線部①に「ふしぎのおもひ」とあるが、イ、今も昔のままであるが文章中の「ある人」が不思議なことと思うようになったウ、今となっては昔のことだが直接のきっかけはどのようなことであったか。その説明エ、今を昔と考えるならばとして適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。(2)文章中の線部aの「はさみたりければ」とbのア、どんなに追い払っても、逃げることもなく「はさみければ」の行為を行った者は、それぞれ誰か。犬がつきまとってくることその組み合わせとして適切なものを、次のア~エから一イ、横道にそれると犬は見えなくなるが、つ選び、その記号を書け。もとのところにもどると犬が見えることウ、静かに歩いていくと犬も静かに歩き、ア、a―弟子どもb―弟子ども立ち止まると犬も立ち止まることイ、a―弟子どもb―実因僧都エ、物の区別もつかないところに、白い犬がウ、a―実因僧都b―弟子どもいるのが見えることエ、a―実因僧都b―実因僧都
(2)文章中の線部②の「一念の赴くところ」は、すっ(3)文章中の線部②の「するやうに」を現代仮名遣かり犬と思いこんでいたといくことである。文章中のいに直して、線部全部をひらがなで書け。「ある人」は、何を犬と思いこんでいたのか、適切なものを次のア~エから一つ選び、その記号を書け。ア、流れる水が立てる白い波イ、月を包んでいる薄い雲ウ、まばらに刈られた芦の影(4)文章中の線部③に「八つの胡桃一度にはらはらエ、濁った水に映った月の光と砕けにけり」とあるが、このことから実因僧都についてどのようなことが確かめられたか。「こと」の(3)文章中の線部③の「まよへり」を現代仮名遣い形になるように、内に当てはまる言葉を、文章に直して、線部全部をひらがなで書け。中から七字でそのまま抜き出して書け。
こと
(4)文章中の線部④に「まよふて見んと思ひしかども、まよはれず」とあるが、このことを具体的に述べている一文を文章中から探し、その初めの三字を書け。
高知県公立高校入試過去問題(H・)国語〔古典編〕解答
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一、次の文章を読み、後の(1)~(3)の問いに答え一、次の文章を読み、後の(1)~(3)の問いに答えなさい。【H】なさい。【H】
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〔ある人が、梅雨の晴れ間のある夜、川の土手に沿った今は昔、比叡の山の西塔に実因僧都といふ人ありけり。 ひえじついんそうづ①
道を歩いていた。月は薄い雲につつまれ、草におりてい小松の僧都とぞ言ひける。顕密の道につきてやむごとなか けんみつ
る露は宝石のように輝いていた。〕りける人なり。それに、いみじく力ある人にてありける。僧都、昼寝したりけるに、若き弟子ども、師の力ある由 よし
芦もまばらにかる沢の、あやめも分ぬところに、堤を沿を聞きて試みむがために、胡桃を取りて持て来たりて、僧 あしわかくるみ
ふて白犬あり。礫をもつて追へばひたもの逃ぐ。静かにゆ都の足の指十が中に胡桃八つをはさみたりければ、僧都は つぶてa
けば犬も静かに、とどまれば犬もとどまれり。かくて追ふ虚寝をしたりければ、うち任せてはさまれて後、寝伸びを そらね
と思ひつつ、十四五町ゆくに、一声ほゆる事もなし。それするやうにうちうむめて足をはさみければ、八つの胡②b③
より江の堤には沿はず、我ゆくみちは横なりしに、犬見え桃一度にはらはらと砕けにけり。ずなる。こはいかにと又もとのかたへもどりて見れば犬あ(『今昔物語集』による)り。ふしぎのおもひをなすに、何の別の事もなし。濁水に べちにごりみづ①
くもりし月の影うつろひしなり。犬と思ひしときは月と見(注)比の叡山…比叡山延暦寺をさす。 ひえいえんりゃく
えず。月とがてんして、なにほど犬に見なさんとせしかど西塔…比叡山三塔の一つ。も、犬とはかつて見えざるなり。一念の赴くところいな実因僧都…比叡山の僧で、小松の僧都とも称す。 おもむ②
ものにて、十四五町まよへり。しりて後は、まよふて見顕密…仏教における教えの種類で、顕教と密教のこと。③④
んと思ひしかども、まよはれずとかたれり。やむごとなかりける…極めて立派な。(『御伽物語』による)虚寝…寝たふりをすること。 おとぎものがたり
(注)芦もまばらにかる沢…芦をまばらに刈り取った水辺。うむめて…うめいて。
あやめも分ぬ…者の区別もつかないこと。
礫…小石ひたもの…ひたすらかくて…このように(1)文章中の線部①の「今は昔」の意味として適切
十四五町…およそ千五百メートル。江…川なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
いかに…どうしたことか。別の事…特別なこと。※「今は昔」は『今昔物語』のア、今と昔を比べてみると書き出しに必ず使わ(1)文章中の線部①に「ふしぎのおもひ」とあるが、イ、今も昔のままであるがれる言葉で、「今とウ文章中の「ある人」が不思議なことと思うようになったウ、今となっては昔のことだがなっては昔のこと直接のきっかけはどのようなことであったか。その説明エ、今を昔と考えるならばだが」という意味である。として適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。(2)文章中の線部aの「はさみたりければ」とbのア、どんなに追い払っても、逃げることも※本文の赤字部「はさみければ」の行為を行った者は、それぞれ誰か。なく犬がつきまとってくること分の要約となその組み合わせとして適切なものを、次のア~エから一イ、横道にそれると犬は見えなくなるが、っているのはつ選び、その記号を書け。もとのところにもどると犬が見えることウ、静かに歩いていくと犬も静かに歩き、イア、a―弟子どもb―弟子ども立ち止まると犬も立ち止まることイ、a―弟子どもb―実因僧都エ、物の区別もつかないところに、白い犬がウ、a―実因僧都b―弟子どもイいるのが見えることエ、a―実因僧都b―実因僧都
(2)文章中の線部②の「一念の赴くところ」は、すっ(3)文章中の線部②の「するやうに」を現代仮名遣かり犬と思いこんでいたといくことである。文章中のいに直して、線部全部をひらがなで書け。「ある人」は、何を犬と思いこんでいたのか、適切なものを次のア~エから一つ選び、その記号を書け。するようにア、流れる水が立てる白い波※「ある人」が犬と思いこんでイ、月を包んでいる薄い雲いたのは「濁水にくウ、まばらに刈られた芦の影もりし月の影うつろエ(4)文章中の線部③に「八つの胡桃一度にはらはらエ、濁った水に映った月の光ひしなり」とあるよと砕けにけり」とあるが、このことから実因僧都につい
うに、「エ」である。てどのようなことが確かめられたか。「こと」の(3)文章中の線部③の「まよへり」を現代仮名遣い形になるように、内に当てはまる言葉を、文章に直して、線部全部をひらがなで書け。中から七字でそのまま抜き出して書け。
まよえりいみじく力あること
(4)文章中の線部④に「まよふて見んと思ひしかど※足の指の間にはさんだ八個の胡桃が、伸びをしただけでばらばらも、まよはれず」とあるが、このことを具体的に述べてに砕けてしまったことから、僧都がたいそう力が強いということいる一文を文章中から探し、その初めの三字を書け。が確かめられたもである。
※これを具体的に述べている一文は、「月と
がてんして~見えざるなり。」である。月とが