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Title の有用性 ― グループ学習を用いた授業実践における質的データから

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Title の有用性 ― グループ学習を用いた授業実践における質的データから

Author(s) 今, 竜一; 村上, 孔輔; 竹花, 樹菜; 山本, 理人

Citation

Issue Date 2022‑02

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12426

Rights

(2)

中学校の体つくり運動領域における学習内容としての「エアロビック」の有用性

―グループ学習を用いた授業実践における質的データから―

今  竜一・村上 孔輔・竹花 樹菜**・山本 理人***

三笠市立萱野中学校

北海道根室高等学校

**月形町立月形中学校

***北海道教育大学岩見沢校スポーツ教育学研究室

TheUsefulnessofAerobicsinLearningPhysicalEducationContent inJuniorHighSchool

―BasedonQualitativeDatafromaGroupStudyinaPracticeClass―

KONRyuichi,MURAKAMIKosuke,TAKEHANAJuna**andYAMAMOTORihito***

MikasaKayanoJuniorHighSchool

HokkaidoNemuroHighSchool

**TsukigataJuniorHighSchool

***LabolatoryofSportPedagogy,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation

概 要

本研究では,中学校の学習指導要領における「体つくり運動」に準拠し,楽しく全身持久力 を向上させることを意図したエアロビックの授業を単元として実施した.その際,「主体的・

対話的で深い学び」を視点としたグループ学習を通して,生徒たちがどのような学びを経験す るのかについて,質的なデータの分析による仮説生成を目的とした.その結果,エアロビック におけるステップの組み合わせを基に,一斉指導などで一定の運動量を確保することで,「動 きを持続する能力を高めるための運動」となり,その特性を生かしたグループ学習を取り入れ ることで,エアロビックの楽しさを感じながら「主体的・対話的で深い学び」が生成されるこ とが示唆された.

  キーワード:体つくり運動,エアロビック,グループ学習,楽しさ,対話的な学び

(3)

Ⅰ.緒 言

平成29年告示の学習指導要領(以下,「現学習 指導要領」)では,これから益々激動する現代社 会を背景に,これまでの「生きる力」を一層育む ため,育成すべき資質・能力を「知識・技能(運 動)」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向か う力・人間性等」の3つに編成し,「主体的・対 話的で深い学び」の重要性が示されている。また,

かつての体操領域が体つくり運動領域に代わって 約20年が経つが,子どもたちの体力低下を背景に,

現学習指導要領では小学校5・6年生及び中学校 1・2年生において,「動きを持続する能力を高 めるための運動」の例示としてエアロビクスが挙 げられた。令和3年度から完全実施となる中学校 では,平成20年告示の学習指導要領に引き続き,

各学年7時間以上の体つくり運動を設定すること が求められている。エアロビクスの代表格ともい えるエアロビック注1)は,全国的に小・中学校で 実践されつつあり,(公社)日本エアロビック連 盟が主催する教員向けの講習会なども開催されて いる。今日では,コロナ禍の自宅用運動プログラ ムとして活用される事例もある。

渡部(2014)の愛知県を中心とした報告では,

98.8%の教員が体つくり運動の重要性を認識しつ つも,実際には45.7%しか単独の単元として実施 しておらず,66.6%の教員が単独の単元としては 実施しにくいと回答している。これには,本研究 の事前調査(2018)として北海道空知管内の小・

中学校の教員を中心に行った質問紙調査におけ る,「時数や単元の組み方など,どんなことをやっ ていいかが分からない」「体つくり運動そのもの で疲れる子と,体力がある子との差が激しいため,

内容設定に工夫が難しい」などという声と同様の 背景がある。つまり,体つくり運動への期待は大 きいものの,その実践については行い難い状況に ある。

一方,エアロビックを授業で取り扱った報告に ついては,大学生を対象としたものが多く,どれ も一定の体力的効果が認められており,金築ら

(1984)の調査では63.5%が「エアロビックダン スは楽しかった」と回答している。また,「リズ ム的な運動が好きになった」「自分の体のコンディ ションに関心をもつようになった」「その日体調 がわかるようになった」などの効果があり,授業 に関しても「クラスの雰囲気が良くなった」「仲 間との連帯感がわいた」など,集団の社会性の向 上も効果としてみられたとしている。また,池田 ら(2008)は,「すっきりする」「ストレスが解消 される」など,エアロビックダンスの授業後は,

授業前に比べ情緒が安定し,疲労が軽減されるこ とが明らかとなったとしている。さらに,松岡

(2017)は,エアロビックダンスのステップの多 くが幼児のリズムダンスに適用でき,創作におい てはそのステップを活用することで,創作自体が 簡便になることを明らかにしている。

そして,小林ら(2017)の中学生を対象にした 調査では,93.1%が「エアロビックの授業を楽し い又はやや楽しい」と回答し,3分間の準備運動 として取り扱う際には,楽曲のBPMを140に設定 することが運動強度として望ましいことを報告し ている注2)。しかし,その他の児童・生徒を対象 とした報告は少なく,特に現学習指導要領で求め られる「主体的・対話的で深い学び」の視点に立っ た,体つくり運動におけるエアロビック授業の報 告は見当たらない。

そこで,本研究では,中学校の現学習指導要領 における「体つくり運動」に準拠し,楽しく全身 持久力を向上させることを意図したエアロビック の授業を単元として実施し,「主体的・対話的で 深い学び」を視点としたグループ学習を通して,

生徒たちがどのような学びを経験するのかについ て,質的なデータの分析から仮説を生成すること を目的とした。

Ⅱ.方 法

1.インタビュー調査 1)対象校

2019年11月に,前年度までにエアロビックの授

(4)

業を受けたことがある北海道の空知管内に所在す るQ中学校を対象に,各学年全7時間のエアロ ビック授業を実施した。翌月には,オホーツク管 内に所在するX中学校において,Q中学校で実践 した学習指導案と学習カード,VTRと同一の機 材を基に,同内容の授業を実施した(表1)。両 校の授業者は,日本スポーツ協会公認のエアロ ビックコーチ1 の資格を有しているため,エア ロビックの専門的知識及び指導技術については同 等であると判断した(表2)。また,教員経験年 数による指導力の差を埋めるため,単元開始前に Q中学校の授業者(以下,「授業者1」)が直接X 中学校の授業者(以下,「授業者2」)に対し,指 導上の留意点を踏まえた授業全体の手引きやリ ハーサルを行った。

2)インタビュー方法

インタビュー調査の対象者を抽出するにあたっ ては,両校における授業の1時間目と7時間目(最 終回)に,林ら(2000)による「ダンスの授業に おける楽しさを規定する要因」,佐々木(2004)

による「中学生の体育授業における社会的スキル の分析」を基に質問紙調査を実施した。結果に変 化が見られたQ中学校6名の生徒及びX中学校9 名の生徒を対象に,エアロビックの授業に対する 意識と対話的な話し合い活動について,一人当た り20分程度の半構造化インタビュー調査を実施し た(表3)。インタビュー調査の実施に際しては,

両校それぞれの授業者が自ら行い,緊張感を緩和

させるために90度型で行うこととした。

3)分析方法

分析には,生徒のインタビュー内容の情報が容 易に共有でき,少数であっても本研究目的に迫る うえでの貴重な意見を探るため,KJ法(川喜田,

1986)を用いた。ただし,両校の授業者がともに エアロビックに関する専門的知見を有しているこ とから,その作業に恣意性や偏りが生じないよう,

授業者1・2以外に体育科教育学を専門とする大 学教員及び大学院生との間で定期的に議論を重ね 表1 授業実施期間と調査対象生徒数

中学校 実施時期 1年生 2年生 3年生 合計

Q 2019年11月14日~12月2日 4 8 4 16 X 2019年12月4日~12月18日 37 29 33 99

表2 授業者の教員経験年数とエアロビックに関する事項

中学校 授業者 性別 教員年数 専門競技 エアロビック競技歴 資格

Q 1 男 12年目 陸上競技 なし エアロビックコーチ1

X 2 女 3年目 ダンス 大学3年間 エアロビックコーチ1

表3 インタビュー対象者の内訳と実施時間 中学校 生徒 性別 学年 所要時間

Q

A 女 2 17分17秒 B 女 2 10分04秒 C 男 3 12分39秒 D 女 3 18分37秒 E 男 3 16分01秒 F 男 1 12分17秒

X

G 女 2 22分37秒 H 女 1 19分53秒 I 女 1 18分40秒 J 女 3 24分03秒 K 女 2 19分02秒 L 女 1 21分19秒 M 男 3 26分12秒 N 女 3 27分35秒 O 男 2 26分20秒

(5)

た。

4)授業内容

現学習指導要領の「体つくり運動」における「知 識及び運動」に準拠し,1学年では「自身の体力 に応じて,学習したステップを独自に組み合わせ る」(表4),2学年では「学習したステップと独

自で考案した上肢の動きを用い,他の単元の特性 に応じた準備運動を作成する」(表5)ことを学 習内容とした。3学年では,「自身の体力に応じ たステップの組み合わせを用い,他者をリードす るためのキューイング」(表6)を学習した。各 学年の3時間目までは主に個人思考,4時間目以 降は集団思考を中心とした授業構成とし,7時間

表4 1年生の単元計画

時数 主な学習内容 主な評価観点

知 思 学 1 オリエンテーション,歴史,ローインパクトのステップの習得 ◎ ○

2 ハイインパクトのステップの習得,上肢の動きの考案 ◎ ○

3 ルーティンの作成(32c×5) ○ ◎

4 グループ内でルーティンの発表,グループ内での意見交流 ○ ◎

5 ルーティンの完成(32c×10) ◎ 〇

6 学年内発表,グループ内・グループ間での意見交流 ○ ◎

7 全校発表,学年内・学年間の相互評価 ◎ 〇

表5 2年生の単元計画

時数 主な学習内容 主な評価観点

知 思 学 1 オリエンテーション,歴史,ローインパクトのステップの習得 ◎ ○

2 ハイインパクトのステップの習得,上肢の動きの考案 ◎ ○

3 種目別のグルーピング,個人での準備運動(32c×5)の構成 ○ ◎

4 グループ内で準備運動の発表,グループ内での意見交流 ○ ◎

5 各自の準備運動を合成,準備運動の完成(32c×10) ◎ 〇

6 学年内発表,グループ内・グループ間での意見交流 ○ ◎

7 全校発表,学年内・学年間の相互評価 ◎ 〇

表6 3年生の単元計画

時数 主な学習内容 主な評価観点

知 思 学 1 オリエンテーション,歴史,ローインパクトのステップの習得 ◎ ○ 2 ハイインパクトのステップの習得,ルーティンの作成(32c×5) ◎ ○

3 キューイングの習得,ペアでの練習 ○ ◎

4 グループ内で練習・意見交流 ○ ◎

5 ビジュアル・プレビューの習得,グループ内で練習・意見交換 ◎ 〇

6 総練習,学年内発表,グループ間での意見交流 ○ ◎

7 代表者による全校発表,学年内・学年間の相互評価 ◎ 〇

(6)

目には各学年の学習成果を発表する機会として,

両校ともに全校体育を実施した。また,毎授業の 冒頭には,既習ステップの復習や未習ステップの 習得を兼ねて,授業者による一斉指導を行った。

その際,一斉指導前後に脈拍数を測定し,運動前 と運動後における変化の確認を行った。

このように,本研究における授業は現学習指導 要領に基づき,「動きを持続する能力を高める」

ことを主眼としながらも,エアロビックの取り組 み方によって「体ほぐしの運動」の視点に立った

「心身の状態への気付き」や「仲間と積極的・自 主的に関わり合う」資質・能力を高められるので はないかと考えている。つまり,スポーツクラブ などにおけるレッスン形式のように,ただ模倣し て楽しみ,体力を向上させて終わるのではなく,

生徒自身がエアロビクスの理論を学び,考え,体 力向上のための手立てを「エアロビックの体験の 中で学ぶこと」をねらいとしている。また,リー ドする側の立場にも立って学習させることによ り,他者の状況も考えながらプログラムを展開し,

運動のポイントやリードの方法を工夫し,生徒自 身の実生活においても運動の計画ができるように なるのではないかと考える。さらに,それらの活 動は,体力の向上を目的とした運動の側面のみな らず,リーダーとして活動する上でも重要な基本 的な要素を多く含んでおり,結果的に社会的スキ ルの向上も期待できるのではないかと考えてい る。そこで,本授業では第一に,踊る・創る・リー ドする楽しさや,リズムに乗って運動する心地よ さを体験させることで体力の向上を図り,次いで,

それらを各々の思考に基づき他者に伝えたり,他 者から学んだりすることで,コミュニケーション スキルの向上を図ることも意図している。

なお,授業内容については,エアロビックを現 学習指導要領に基づいて教材化する上で組織的に 活動している,(公社)日本エアロビック連盟の 資料「中学校体育の授業づくり」(2011)を一部 参考にした。

2.データ収集における倫理的配慮

データ収集に際しては,インタビュー時に音声 ICレコーダー,授業時にビデオカメラ(iPhone)

を用いることから,Q中学校・X中学校ともに,

授業の開始までに各学校長と「研究倫理遵守に関 する誓約書」を交わし,個人情報の保護に努める ことと,生徒に不利益が生じないことを確認し た。また,授業者1及び授業者2は,授業開始時 に生徒に対して動画撮影をすること,並びにイン タビュー調査対象者へは音声録音をする許可を とった。なお,本研究は,北海道教育大学の倫理 委員会による承認(2019115001号)を得て実施し た。

Ⅲ.結 果

1.インタビュー調査より

インタビュー調査によって,約74,000文字のテ キストデータが得られた。各カテゴリについては,

生徒の発話内容を要約したラベルを作成・整理 し,表の通りにサブカテゴリとしてまとめること で生成した。

1)楽しさ

エアロビック授業を楽しいと感じる生徒の割合 が多いことは,小林ら(2017)や山本(2018)の 報告から推察できる。本研究のラベルの整理では,

エアロビックが持つ楽しさの要素として,「ダン ス要素」「音楽性」「創造性」「取り組みやすさ」「体 力要素」に整理され,仲間との交流から派生する 楽しさの要素としては,「話し合い活動」「発表」

が挙げられた。そして,楽しさを構成する概念を

「エアロビックの特性」と「仲間との交流」に分 類した(表7)。

・「ダンス要素」について

「N108:ダンスが好きだから,エアロが魅力 的に感じるのかもしれない」などのように,当初 からダンス領域をはじめとする踊りそのものに興 味・関心があり,楽しさを感じたとする発話内容 を「踊ること自体が好き」として整理した。

「G2:ハイとローがあり,さほど難しくなく

(7)

楽しかった」などのように,エアロビックとして 規定されている各ステップや,それらをローイン パクトとハイインパクトに分類していることに楽 しさを感じたとする発話内容を「ステップの特徴」

として整理した。

「D17:カウントの取り方は最初よりは分かる ようになったと思う」などのように,他者に動き を伝える技法のキューイングについて楽しさを感 じたとする発話内容を「キューイング」として整 理した。

そして,「踊ること自体が好き」「ステップの特 徴」「キューイング」の3つのサブカテゴリは,

ダンス特有の運動や技法であることから「ダンス 要素」のカテゴリとして生成した。

・「音楽性」について

「I52:決まったリズムがあるため音楽にのり やすい」などのように,エアロビック独特の8ビー トを刻みながら踊ることに楽しさを感じたとする 発話内容を「曲・リズムの特徴」として整理した。

「M67:エアロの授業によって普段から音楽を 聴くようになった」などのように,今回の授業を 通して音楽に対する興味・関心が高まり,楽しさ を感じたとする発話内容を「音楽への関心の高ま り」としてまとめた。

そして,「曲・リズムの特徴」「音楽への関心の 高まり」の2つのサブカテゴリは,エアロビック 独自の音楽によるものであることから「音楽性」

のカテゴリとして生成した。

表7 エアロビック授業の「楽しさ」を構成する要素

概念 カテゴリ サブカテゴリ 出現数

楽しさ

エアロビックの特性

ダンス要素

踊ること自体が好き 7

ステップの特徴 13

キューイング 4

音楽性 曲・リズムの特徴 10

音楽への関心の高まり 2

創造性

創作活動 11

オリジナリティ 10

個性の出しやすさ 4

改良のしやすさ 3

動きの組み合わせ 4

取り組みやすさ

新規性 9

難易度の低さ 14

模倣 14

ポジディブなイメージ 3

体力要素 ウォーミングアップの効果 13

運動強度の実感 19

仲間との交流

話し合い活動

他者と話す機会 4

話しやすさ 5

新たな人間関係 5

反復による慣れ 4

話し合う時間の確保 2

発表

学年間の発表 14

達成感 1

自信 7

笑顔 7

称賛 2

(8)

・「創造性」について

「J4:自分で振り付けを考えて,仲間に教え たり教わったりすることが楽しかった」などのよ うに,上肢の動きやステップを用いながら動きを 創作しているときに楽しさを感じたとする発話内 容を「創作活動」として整理した。

「L57:他の人がしないような独特の組み合わ せを見ているのが楽しかった。その人らしい動き だなと思った」などのように,動きを組み合わせ たり創作する上で,他者が思いつかないような発 想や動きに対して楽しさを感じたとする発話内容 を「オリジナリティ」として整理した。

「L56:他の仲間の個性が出ている動きを見て いるのも楽しかった」などのように,各ステップ に対する個性的な上肢の振り付けや動きについて 楽しさを感じたとする発話内容を「個性の出しや すさ」として整理した。

「O13:先生から習ったステップを少し改良し て,楽しかった」のように,新しく学習したステッ プの動きや他者との交流を踏まえて,上肢の動き やその組み合わせを改良することに楽しさを感じ たとする発話内容を「改良のしやすさ」として整 理した。

「H7:自分で動きを組み合わせることが楽し かった」などのように,既習ステップを基に,動 きを組み合わせてルーティンを作成することに楽 しさを感じたとする発話内容を「動きの組み合わ せ」として整理した。

そして,「創作活動」「オリジナリティ」「個性 の出しやすさ」「改良のしやすさ」「動きの組み合 わせ」の5つのサブカテゴリは,エアロビックの 動きづくりにおける創造力を活用した内容である ことから,「創造性」のカテゴリとして整理した。

・「取り組みやすさ」について

「N2:エアロは普段やらない動きなので,新 しいことを学べて楽しかった」などのように,エ アロビック競技をしていたり,スポーツクラブな どに通わない限り,なかなか体験したことがない 真新しい感覚や学習内容に楽しさを感じたとする 発話内容を「新規性」として整理した。

「M54:ダンスが不得意な人でもできるのでは ないかと思う。難易度は低いだと思った」などの ように,ダンス領域と比較して各ステップの特徴 やその組み合わせの簡単さについて楽しさを感じ たとする発話内容を「難易度の低さ」として整理 した。

「I83:話し合いよりも真似をする方が楽し かった」などのように,他の単元ではなかなか体 験できない,ある程度の時間を割いた授業者の動 きを真似することに楽しさを感じたとする発話内 容を「模倣」として整理した。

「O1:エアロの授業前は辛そうなイメージ だったが,やってみたら楽しい気分を味わえた」

のように,当初のエアロビックに対する認識は問 わず,授業を受ける過程で前向きなイメージを持 つことにより楽しさを感じたとする発話内容を

「ポジティブなイメージ」として整理した。

そして,「新規性」「難易度の低さ」「模倣」「ポ ジティブなイメージ」の4つのサブカテゴリは,

エアロビックの授業を肯定的に展開されるうえ で,起点となる要素を多く含んでいることから「取 り組みやすさ」のカテゴリとして生成した。

・「体力要素」について

「J87:ウォーミングアップはストレッチにな るし,ラジオ体操より何倍も楽しい」などのよう に,各ステップ復習や習得のための一斉指導を通 して,創作活動への基礎となることも含めて楽し さを感じたとする発話内容を「ウォーミングアッ プの効果」として整理した。

「I23:スタミナや体力がついたという実感が あり楽しかった」など,エアロビックの“動き続 ける”という運動特性により,体力の向上を実感 できたことに楽しさを感じたとする発話内容を

「運動強度の実感」として整理した。

そして,「ウォーミングアップの効果」「運動強 度の実感」の2つのサブカテゴリは,エアロビッ クを通して健康の保持・増進を図る上で,全身持 久力等に関わる内容であることから「体力要素」

のカテゴリとして生成した。

・「話し合い活動」について

(9)

「J62:エアロの授業によって,他人にダンス を発表したり意見を言う機会が増えた」などのよ うに,アドバイスを相互的に行うなどの話し合い の機会を通して楽しさを感じたとする発話内容を

「他者と話す機会」として生成した。

「F24:ステップが決まっていて,ステップの 動きもみんな分かっていることを前提に話し合う から,エアロでは意見を述べやすかった」などの ように,一斉指導において規定のステップを学習 し,それを基にした話し合いが展開されることに 安心感や,楽しさを感じたとする発話内容を「話 しやすさ」として整理した。

「K16:普段話さない仲間にも,上半身の動き や上半身と下半身の動きの組み合わせについてア ドバイスをした」などのように,個人間やグルー プ間での話し合う活動を通して,それまで話した ことがない友人との新たな関係性が築けたことに 嬉しさや楽しさを感じたとする発話内容を「新た な人間関係」として整理した。

「J93:仲間達とよく踊っていたので,無意識 にエアロに慣れていったと思う」などのように,

何度も自他の動きを交流しながら話し合いを重ね ることで安心感や,楽しさを感じたとする発話内 容を「反復による慣れ」として整理した。

「C20:普段の授業よりは時間を取ってくれた ので,アドバイスをし合ったり,書きやすかった」

のように,グループ内の一人一人が意見を出すこ とができる時間を保障したことにより,話し合う ことに楽しさを感じたとする発話内容を「話し合 う時間の確保」として整理した。

そして,「他者と話す機会」「話しやすさ」「新 たな人間関係」「反復による慣れ」「話し合う時間 の確保」の5つのサブカテゴリは,仲間との言語 的な話し合いに関する内容であることから「話し 合い活動」のカテゴリとして生成した。

・「発表」について

「K42:他学年からの感想やアドバイスを通し て,次もエアロがあったら言われたことをもっと 生かして踊ってみたいと思った」などのように,

最終回の7時間目に全校体育での発表を行うこと

で,他学年の学習内容や努力の成果を知ることが でき楽しさを感じたとする発話内容を「学年間の 発表」として整理した。

「N37:不安だったので発表後には達成感が あった」のように,発表に対する緊張感から解き 放たれてやりがいを楽しさとして感じたとする発 話内容を「達成感」とした。

「E26:みんなの前で踊る自信が少しついた」

などのように,仲間の前で自分の思考に基づいて 構成したルーティンで踊ることやキューイングで 仲間に踊ってもらうことで発表に対する自信がつ き,楽しさを感じたとする発話内容を「自信」と して整理した。

「M1:思いついた新しい動きをやったら皆が 大爆笑してくれた」などのように,自他の踊り方 をはじめ,そのミスについても肯定的に笑い合う 雰囲気に楽しさを感じたとする発話内容を「笑顔」

として整理した。

「I36:自分が大きく動こうと表現したことを 分かってもらえてうれしかった」のように,拍手 や肯定的な表情で認められたり,褒めてもらえた ことに嬉しさや楽しさを感じたとする発話内容を

「称賛」として整理した。

そして,「学年間の発表」「達成感」「自信」「笑 顔」「称賛」の5つのサブカテゴリは,グループ や学年内,学年間での発表に関する内容であるこ とから「発表」のカテゴリとして生成した。

2)対話的な学び

グループ活動をはじめとする対話的な活動を通 すことで,エアロビックダンスの授業から生成さ れる自分(自己)に関する要素として,「寛容」「批 判的思考」「メタ認知」「自信」「学習意欲」が挙 げられ,他者(仲間)に関する要素としては,「受 容」「協力」「共感的理解」「発表・交流」が挙げ られた。また,学習環境に関する要素としては,

「学習の手立て」「ネガティブイメージ」「不安」

が挙げられた(表8)。

・「寛容」について

「F10:アドバイスに対して嫌な気持ちにはな

(10)

らなかった」などのように,自分が他者からのア ドバイスを受け入れることができ,対話的な学び になったとする発話内容を「アドバイスの受け入 れ」として整理した。

「K13:アドバイスを生かして,練習の時から 大きく動くことで本番では小さくならないように 意識をした」などのように,他者からのアドバイ スを練習や本番に生かすことができ,対話的な学 びになったとする発話内容を「アドバイスの受け 入れ」として整理した。

「E17:自分がアドバイスをするときは,ガツ ガツ言わないよう良いところも伝えるように気を 付けた」などのように,円滑な仲間との交流のた めの心配りや努力をすることができ,対話的な学 びになったとする発話内容を「他者への発言の配 慮」として整理した。

そして,「アドバイスの受け入れ」「アドバイス の活用」「他者への発言の配慮」の3つのサブカ テゴリは,自分が広い心を持って相手の意見を受 け入れる態度であることから「寛容」のカテゴリ 表8 エアロビック授業の「対話的な学び」を構成する要素

概念 カテゴリ サブカテゴリ 出現数

対話的な学び

自分

寛容

アドバイスの受け入れ 7

アドバイスの活用 2

他者への発言の配慮 3

批判的思考 アドバイスした具体的な内容 4

メタ認知

アドバイスされた具体的な内容 5

思考の言語化 3

課題の発見 4

自信 積極性の高まり 4

自己主張 3

学習意欲 苦手意識軽減 3

体育授業への意欲 3

他者

受容 仲間の傾聴 5

協力

仲間との雰囲気づくり 1

仲間の積極性 2

仲間との団結 4

仲間の変化 1

共感的理解

仲間への感謝 1

称賛 4

思考の類似 1

提案の採用 2

発表・交流

学習活動の慣れ 4

グループメンバーとの関係 2

学びの転用 4

学習環境・もの

学習の手立て 運動の視覚化 3

男女共修 2

ネガティブイメージ ステップを覚える苦労 5

負の情報 4

不安

恥ずかしさ 8

緊張 5

注目 5

失敗 6

(11)

として生成した。

・「批判的思考」について

「H44:より大きく動くよう,仲間にアドバイ スをした」などのように,自分が他者へアドバイ スをすることができ,対話的な学びになったとす る発話内容を「アドバイスした具体的な内容」と して整理した。

そして,「アドバイスした具体的な内容」は,

相手の動きやその組み合わせに対する自分の意見 や視点を持つということから「批判的思考」のカ テゴリとして生成した。

・「メタ認知」について

「L28:練習の時は少し動きが小さかったか ら,もう少し腕伸ばすよう仲間からアドバイスを もらった」などのように,自分が他者にアドバイ スをすることができ,対話的な学びになったとす る発話内容を「アドバイスされた具体的な内容」

として整理した。

「D26:アドバイスをされたことは自分でも 思っていたことだった」などのように,他者から のアドバイスによって自分の思考を言語化するこ とができ,対話的な学びになったとする発話内容 を「思考の言語化」として整理した。

「E12:アドバイスによって自分では気づけな いところが分かるからいいと思う」などのように,

他者からのアドバイスにより新たな課題を見つけ ることができ,対話的な学びになったとする発話 内容を「課題の発見」として整理した。

そして,「アドバイスされた具体的な内容」「思 考の言語化」「課題の発見」の3つのサブカテゴ リは,客観的な自己理解につながることから「メ タ認知」のカテゴリとして生成した。

・「自信」について

「K72:グループには普段から仲の良い子もい たし,普段はあまり話せない人もいたが,積極的 に自分の意見を話した」などのように,自分の意 見を積極的に発信することができ,対話的な学び になったとする発話内容を「積極性の高まり」と して整理した。

「J2:踊りを見せることは自己主張が一番し

やすいと思った」などのように,踊ることをひと つの自己主張として捉え,対話的な学びになった とする発話内容を「自己主張」として整理した。

そして,「積極性の高まり」「自己主張」の2つ のサブカテゴリは,自分で自分の能力や価値など を信じることにつながることから「自信」のカテ ゴリとして生成した。

・「学習意欲」について

「B18:エアロを通して,人前に出ることの苦 手意識を少しは克服できた」などのように,対話 的な学びを通すことで当初より抱いていた苦手意 識を軽減させることができたとする発話内容を

「苦手意識軽減」として整理した。

「G52:体育は疲れたり面倒くさいものと思っ ていたけれど,体育にも楽しいのがあると思うこ とが出来た」などのように,対話的な学びを通す ことで自分の体育授業に対する姿勢を前向きに変 化させることができたとする発話内容を「体育授 業への意欲」として整理した。

そして,「苦手意識軽減」「体育授業への意欲」

の2つのサブカテゴリは,学びたい意欲やそれに 努めようとする気持ちの表れから「学習意欲」の カテゴリとして生成した。

・「受容」について

「I41:自分が言ったアドバイスを仲間は受け 入れてくれた」「H68:話し合い活動で,仲間は アドバイスを聞き入れてくれた」などのように,

他者に対するアドバイスを受け入れてもらうこと ができ,対話的な学びになったとする発話内容を

「仲間の傾聴」として整理した。

そして,「仲間の傾聴」は,仲間の受容的な態 度であることから「受容」のカテゴリとした。

・「協力」について

「B22:授業中仲間が楽しい雰囲気を作ってく れた」のように,居心地の良い空間をつくること ができたことが,対話的な学びにつながったとす る発話内容を「仲間との雰囲気づくり」とした。

「O44:他のメンバーは積極的に意見を出して いた」のように,以前に比べて仲間の積極的性を 感じることができ,対話的な学びになったとする

(12)

発話内容を「仲間の積極性」として整理した。

「G4:グループが一致団結していく過程が楽 しかった」などのように,仲間との関係性を深め ることができ,対話的な学びになったとする発話 内容を「仲間との団結」として整理した。

「G15:普段は遊んでばかりの男子が前向きに 取り組んでいて,成長を感じて驚いた」のように,

仲間の活動に対する前向きな変化を感じることが でき,対話的な学びになったとする発話内容を「仲 間の変化」とした。

そして,「仲間との雰囲気づくり」「仲間の積極 性」「仲間との団結」「仲間の変化」の4つのサブ カテゴリは,仲間との力を合わせて物事にあたる 内容であることから「協力」のカテゴリとして生 成した。

・「共感的理解」について

「I38:グループで振り付けをまとめるとき,

仲間に『ありがとう』とお礼を言われてうれしかっ た」のように,仲間から感謝されることで,対話 的な学びにつながったとする発話内容を「仲間へ の感謝」とした。

「M5:エアロでは仲間に褒められることが出 来,面白くて楽しいと思った」などのように,仲 間から褒めてもらうことができ,対話的な学びに なったとする発話内容を「称賛」として整理した。

「B9:他の人との考えが似ていることが嬉し く楽しかった」のように,仲間の考えが自分と似 ていることで前向きな気持ちになることができ,

対話的な学びになったとする発話内容を「思考の 類似」とした。

「B5:自分の動きや考えを取り入れてくれた ときや見本に採用してくれたときが嬉しかった」

のように,自他の提案やアイディアを採用し合う ことが,対話的な学びにつながったとする発話内 容を「提案の採用」として整理した。

そして,「仲間への感謝」「称賛」「思考の類似」

「提案の採用」の4つのサブカテゴリは,互いの 思考を理解し認め合うことから「共感的理解」の カテゴリとして生成した。

・「発表・交流」について

「F21:意見を述べるためにかかる時間が減っ た」などのように,反復することで学習活動に慣 れることができ,対話的な学びになったとする発 話内容を「学習活動の慣れ」として整理した。

「J26:仲のいい人達とのグループ活動があっ たおかげで,別のメンバーとのグループ活動でも 緊張せずに自己主張することが出来た」のように,

良好な人間関係でグループ活動を行うことがで き,対話的な学びになったとする発話内容を「グ ループメンバーとの関係」として整理した。

「N106:しっかりと授業を受けていた人は,

エアロで身に着けた人前で発表する力を他の機会 にも生かすことが出来ると思う」などのように,

発表・交流の仕方を他の機会にも生かすことがで きると実感することができ,対話的な学びになっ たとする発話内容を「学びの転用」として整理し た。

そして,「学習活動の慣れ」「グループメンバー との関係」「学びの転用」の3つのサブカテゴリは,

話し合い活動や発表から生成される内容であるこ とから「発表・交流」のカテゴリとして生成した。

・「学習の手立て」について

「L42:動画を見ると,自分では動いていたつ もりだけど動きが小さいなと思った。目立つ人が いて,それに比べたら全然踊れていないなと思っ た」などのように,ICTを活用して自他の動きを 客観的に振り返ることができ,対話的な学びにつ ながったとする発話内容を「運動の視覚化」とし て整理した。

「N80:グループに男子がいる方が思っている ことを言えた」のように,異性がいることによっ てよりグループ活動を活発化させることができ,

対話的な学びになったとする発話内容を「男女共 修」として整理した。

そして,「運動の視覚化」「男女共修」の2つの サブカテゴリは,授業者が設定する物理的な学習 環境であることから「学習の手立て」のカテゴリ として生成した。

・「ネガティブイメージ」について

「M23:ステップを覚えることに一番苦戦し

(13)

た」などのように,授業者のリードに合わせて確 実にステップを習得しようとすることが対話的な 学びになったとする発話内容を「ステップを覚え る苦労」として整理した。

「I9:エアロのイメージはピチピチの水着の ようなものを着て踊るイメージがあった」などの ように,単元当初に抱いていたエアロビックに対 する否定的なイメージを払拭することができ,対 話的な学びにつながったとする発話内容を「負の 情報」として整理した。

そして,「ステップを覚える苦労」「負の情報」

の2つのサブカテゴリは,学習を阻害する思考に よるものであることから「ネガティブイメージ」

のカテゴリとして生成した。

・「不安」について

「E8:いっぱい練習をして何も考えずにスラ スラできるようになれば恥ずかしくないが,少し でもうろ覚えだと恥ずかしいと感じる」などのよ うに,人前で発表することの恥ずかしさを乗り越 えることで,対話的な学びにつながったとする発 話内容を「恥ずかしさ」として整理した。

「O39:はじめは,あまり話すことのないメン バーだったので緊張した」などのように,発表・

交流に対する緊張感を乗り越えることで,対話的 な学びにつながったとする発話内容を「緊張」と して整理した。

「L7:動きの組み合わせにはセンスの良い悪 いがあるから,それを周りに見られることが苦手 だった」などのように,周囲の視線が気にならな いようになることで,対話的な学びにつながった とする発話内容を「注目」として整理した。

「E21:みんなの前ではあまり失敗したくな い」などのように,人前で失敗したくないという 気持ちを克服することで,対話的な学びにつな がったとする発話内容を「失敗」として整理した。

そして,「恥ずかしさ」「緊張」「注目」「失敗」

の4つのサブカテゴリは,学習を阻害する負の心 理状態の内容であることから「不安」のカテゴリ として生成した。

Ⅳ.考 察

1.現学習指導要領におけるエアロビック授業の 意義

先行研究と同様,本研究におけるエアロビック 授業においてもインタビュー調査から,生徒たち は「楽しさ」を感じる傾向にあることがうかがえ た。また,「仲間との交流」を図ることでその感 覚が助長されることが見てとれた。その背景には,

まず「取り組みやすさ」が挙げられるのではない かと考える。80・90年代に日本国内で社会現象ま でになったエアロビックを目にする機会がほとん どなかった現代の生徒たちにとって,それは「新 規性」の高い運動として捉えられたのではないだ ろうか。また,エアロビックの特徴であるリーダー の動きを「模倣」する行為は,各ステップを覚え る上での「容易さ」であり,後の「創作活動」の 基盤をつくる上での重要な要素となったと考え る。それに加え,「音楽性」は金ら(2014)など の先行研究からも,直接的に「学習意欲」へ関与 し,ステップなどの「ダンス的要素」は全身持久 力などの「体力的な要素」に結びつくことを生徒 たちが身をもって感じていることがうかがえた。

そして,それらをベースとした「学習の手立て」

では,大型ミラーがない代わりにICT機器を用い ることで,自他の動きを客観的に把握できるなど 学習活動がより鮮明化し,自他に対する「批判的 思考」を生みやすくなることが考えられる。また,

その交流においては,前述の「新規性」や「創造 性」によるオリジナリティという側面から,自然 と生徒の間で「安心感」が生まれ,他者のアドバ イス等を素直に受け入れる「寛容」的な姿勢や,

他者がしっかりとした傾聴の態度を示す「受容」

が身に付いたこともうかがえた。その社会的スキ ルは,後に各活動における「協力」や「共感的理 解」という形となって表れ,自己の思考や心身の 状態を高次に認知する「メタ認知」と併せて,有 意義な「話し合い」や「発表」などの交流につな がったと推測する。そして,生徒たちはそれらの 反復を通して徐々に「自信」を高め,それが更な

(14)

る「学習意欲」の向上につながり,結果的に体力 の向上や社会的スキルの向上につながる「主体 的・対話的で深い学び」に,より一層の広がりや 深まりが生成されることが示唆された。(図1)

つまり,エアロビックダンスにおけるステップ の組み合わせを基に,一斉指導などで一定の運動 量を確保することで,「体の動きを高める運動」

の「動きを持続する能力を高めるための運動」と なるほか,そのプログラム構成によっては「体の 柔らかさを高めるための運動」や「巧みな動きを 高めるための運動」「力強い動きを高めるための

運動」となることが考えられる。そして,「体ほ ぐしの運動」の内容としても,エアロビックの特 性を生かしたグループ学習を取り入れることで,

子どもたちが自他の心身の状態に気付き,積極的 に仲間と関わり合い,新たな自己の課題を発見し,

仲間とともに協力し合いながらその解決に当たろ うとする姿勢が見られる傾向にあることがうかが えた。また,その過程では,自然と「仲間の学習 を援助」しようとする気持ちが芽生え,「一人一 人の違いに応じた動きを認めようとする態度」が 養われたと考える。

図1 単元として行った本授業におけるカテゴリの関係性

(15)

2.単元として取り扱う意義

金築(1984)は,「大学生を対象に70% Vo₂max の強度で15分間のプログラムを週2回行っても持 久性のトレーニング効果は見られない」と報告し ている。つまり,帯状でエアロビックを取り扱う ことで,単純にステップを習得し,それらを組み 合わせることは可能だが,「『動きを持続する能力 を高めるための運動』となり得るのか」という疑 問が残る。また,個人的な思考に基づく他者との 対話的な活動においては,その内容を各個人に フィードバックすることで,結果的に「分かる」

が「できる」に結びつき,最終的に学習意欲の向 上につながるとするならば,一定のまとまった時 間の確保が必要となり,単元で実施する意義にも なり得ると考える。

このように,単元として系統性のあるエアロ ビック授業の中で,対話的な活動を繰り返すこと は,生徒の課題解決の機会やコミュニケーション スキルの向上に大きく貢献できるものと考えられ る。また,同一グループ内である程度まとまった 時間を確保することで,生徒は自他の変容を縦断 的に捉えやすくなり,更なる自他の課題に気付く こともできるようになるのではないかとも考え る。もちろん,単に多くの時間を費やせばよいわ けではないが,本授業では生徒たちに単元として の時間に限りがあることの見通しを持たせること によって,『最終回までに目標を達成させよう』

とする意欲が感じられた。特に,生徒たちにとっ ては,学年発表や全校体育が少なからずのプレッ シャーになりつつも,大きなモチベーションの一 つにもなり,各活動を集中して取り組むことがで きていた。また,授業者2によれば,本来的では ないが,体育の授業時間を超えて,休み時間や放 課後にも丹念に個人的な練習やグループの話し合 いを意欲的に進める生徒たちもいたという。まさ に,これらのすべてが「主体的・対話的で深い学 び」によるものであり,単元計画として取り扱っ たことによる複合的な学習の成果であると考える。

Ⅴ.結 語

本研究は,中学校体育の「体つくり運動」領域 において,エアロビックの授業を単元として実施 し,「主体的・対話的で深い学び」を視点とした グループ学習を通して,生徒たちがどのような学 びを経験するのかについて,事例的に検討するこ とであった。

エアロビックにおけるステップの組み合わせを 基に,一斉指導などで一定の運動量を確保するこ とで,「動きを持続する能力を高めるための運動」

となる。

エアロビックの特性を生かしたグループ学習を 取り入れることで,「主体的・対話的で深い学び」

が生成される。

しかしながら,エアロビックにおける各ステッ プは基本的に規定されていることから,生徒や授 業者にとっても「取り組みやすさ」がある反面,

いくら上肢の動きがフリーであっても下肢の動き や運動全体としての広がりに限りが生じてしま う。ある程度は動きの組み合わせによってその課 題を克服できるが,「体力」の全体的なバランス を考える際,常に「弾みながら動くことを前提」

とするエアロビックでは,柔軟性などを高めよう とする場合などにおいて偏りが生じてしまうこと が考えられる。

また,授業者の指導スキルや授業時数の問題と して,本研究における授業者2名はいずれも有資 格者であるため,知識やキューイングなどの指導 技術が当初から備わっていることから,単元とし ての構成がしやすく,生徒の「運動」も容易に見 とることができた。さらに,今日ではGIGAスクー ル構想により,今後は生徒一人一人にタブレット 端末などのICT機器が貸与され,これまで以上に 手元で自他の動きの確認や情報の共有ができるよ うになれば,授業全体の効率性が高まり,生徒の 学びも更に深めることが可能になる。つまり,授 業者のエアロビックダンスの指導スキルの向上の 他,ICT機器の効果的な使用についても併せて学 び続ける必要がある。

(16)

そして,本研究ではエアロビック授業の可能性 を検討するために,質的データを授業者や大学教 員及び大学院生とともに分析してきたが,物理的 にすべての生徒の意見が反映されてはいない。ま た,授業構成や授業者の資質によって少なからず 生徒の捉え方も変わる可能性がある。そこで,本 研究の成果を検証する意味も含め,今後は定量的 な調査も行う必要があると考える。

注1)エアロビックは,ケネス・H・クーパーが提唱し たエアロビクス(有酸素運動)理論を基に誕生した,

ダンス形式の運動プログラムが競技体系化したもので あり,エアロビックダンスとも呼ぶ。

注2)本研究における授業では,小林ら(2017)が推奨 するBPM140では生徒が動きについていけず,逆に運 動強度を落とす可能性に鑑みて,BPM135前後での実 施とした。

注3)インタビュー調査の発話内容におけるアルファベッ トは生徒,数字は発言数を指す。

謝 辞

本研究を行うにあたり,対象者として調査に協 力していただいた生徒の皆様や学校関係者の皆様 に心から深く感謝申し上げます。

付 記

調査資料の収集にあたっては,科学研究費補助 金,「『体つくりの運動遊び』領域における学校と 地域が連携した学習支援システムの構築(基盤研 究C:課題番号19K11613)の補助を受けた。

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(村上 孔輔 北海道根室高等学校教諭)

(竹花 樹菜 月形町立月形中学校教諭)

(山本 理人 岩見沢校教授)     

参照

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