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明日を拓く漁業創出のための技術開発事業
平澤敬一・白樫 真・田北寛奈・尾上静正
1.マハタ
事業の目的
マハタを新規養殖魚種として県内魚類養殖業者へ 普及するため、人工種苗の生産技術を確立する。事業の方法
親魚養成 親魚は2007 年 6 月に発生した赤潮で生き残った 5 尾と2008 年 1 月に新たに購入した 52 尾の合計 57 尾 を水産試験場地先の海面小割網生簀(5×5×5m)で養 成したものを用いた。平均体重は6.8kg であった(表 1)。全ての親魚はピットタグで個体識別した。餌料 はモイストペレット(サバ:イカ:アミ:配合飼料=1:1:1:3 に大豆レシチン1.5%、SD ミックス 0.5%、ダイペッ トC1.0%を添加)を週 2 回飽食給餌した。採卵 1 ヵ月 前からはE フィードオイル 0.5%を添加した。 人工授精 1 回次は独立行政法人水産総合研究センター養殖 研究所上浦栽培技術開発センターから受精卵30 万粒 を受け入れた。2、3 回次は当試験場の保有親魚のう ち、雌はカニューレで卵径がおおよそ 450μm 以上の 卵巣卵が採取できた個体、もしくは生殖孔の突起か ら肉眼で成熟が判別できた個体、雄は腹部を圧搾し て放精した個体を親魚に用いた。2 回次は 6 月 2 日 (水温20.6 ℃)に雌 7 尾、雄 2 尾、3 回次は 6 月 10 日(水温20.5 ℃)に雌 8 尾、雄 2 尾の背筋部にヒト 胎盤性生殖腺刺激ホルモン(HCG)(ゴナトロピン :帝国臓器製薬株式会社)を約 500IU/kg 注射した。 表1 親魚の体重 購入年度 飼育尾数 体重範囲 平均体重 (年度) (尾) (kg) (kg) 1994 2 7.4~8.1 7.8 2003 2 5.4~7.0 6.2 2006 1 6.1 6.1 2007 52 5.2~15.2 7.1 合計(平均) 57 (6.8) ホルモン注射48 時間後に圧搾法、乾導法により人 工授精した。受精卵は洗卵後メスシリンダーに移し、 浮上卵のみを卵管理水槽(200L アルテミアふ化槽)に 収容し、10 ~ 15 回転/日の換水で卵管理を行った。 水温は、卵を飼育水槽へ収容するまでに徐々に22 ℃ まで加温した。翌日沈下卵を取り除き、浮上卵はオ キシダント海水(0.3mg/L)に浸漬した後、各飼育水 槽にバケツで収容した。得られた受精卵のうち、採 卵数が多く浮上卵率の高かったものを種苗生産に用 いた。 ウイルス性神経壊死症(VNN)対策として、雌は 卵巣卵もしくは卵巣内液、雄は精液を用いてRT-PCR および nested-PCR により親魚のウイルス検査を行っ た。 仔稚魚飼育 飼育には 45kL 長方形コンクリート水槽を 3 面使 用した。通気及び飼育水循環の方法を図1 に示した。 水槽の No.6 と No.7 は昨年と同様に水槽四隅底部に 設置した長さ 1m のユニホースにより時計回りの水 流をつくり、さらに中央付近に配置したエアースト ーンで上下混合を起こした(以下、エアーブロック 水槽)。水槽 No.5 は通気はおこなわず、水槽中央底 層部に設置した水中ポンプ(ポンスター PX650:株 式会社工進、最大吐出量 260L/min)から飼育水を吸 水して水槽四隅底層部からシャワーで吐出すること により時計回りの水流をつくった(以下、ポンプ水 槽)。なお、吐出口のシャワーは長さ 1m の硬質塩化 ビニールパイプVP13 にφ 5mm の穴を 100mm 間隔 で開けたものを用いた。 ふ化仔魚数及びふ化率は、飼育水槽における柱状 サンプリングの結果から算出した。照度は水槽から 図1 通気及び飼育水循環の方法 エアーブロック水槽(水槽No.6,7) ポンプ水流水槽(水槽No.5) エアーストーン 見た目の水流の向き エアーブロック ポンプ吸入口 注水位置 ポンプ吐出口 酸素 酸素 45kL水槽 45kL水槽 平 成20 年 度 7 平 成 20 年 度8 3m ほど上に張った半透明ビニールシートで直射日光 を防ぎ、蛍光灯により水面がほぼ 1,000Lux 以上にな るよう調節した。飼育水は光触媒方式による殺菌海 水を飼育水槽の中層から注入し、換水は日齢21 まで は止水、それ以降は1 日 5%から開始し、徐々に 100% まで増加させた。また、市販の淡水クロレラ(生ク ロレラV12:クロレラ工業株式会社)12mL/kL を 30L の海水に希釈し飼育水槽へ毎日添加した。水温は徐 々に加温し26 ℃とした。 飼育水のDO は 5 ~ 7mg/L を維持するようにし、 日齢 6 からは酸素発生装置を用いて中央のエアース トーンから酸素を供給した。 飼育時は底質改善を目的に貝化石5 ~ 20g/kL を殺 菌海水に溶かして、日没後に飼育水へ添加した。日 齢40 からは週に 1 ~ 5 回サイホン方式により底掃除 を行った。 餌料は、開口前日から日齢 40 まで S 型ワムシを 合計 20 個体/mL になるよう給餌した。日齢 31 から アルテミア幼生、日齢36 から配合飼料を順次重複さ せながら給餌した。ワムシは淡水クロレラ(HG 生 クロレラ V12:クロレラ工業株式会社)で培養し、 強化剤は使用しなかった。アルテミア幼生は強化剤 (バイオクロミス:クロレラ工業株式会社)で栄養 強化した。 養殖試験 2005 年 9 月に開始した 6 カ所で養殖試験を継続し た。
事業の結果
採卵・採精および人工授精 採卵・採精などの結果を表 2 にまとめた。養成を 開始してから半年たらずの親魚からも順調に採卵で き、2、3 回次合わせて雌 12 尾から合計 1,719 万粒を 採卵した。VNN を PCR 検査で調べた個体はすべて 陰性であった。1 回次は独立行政法人水産総合研究 センター養殖研究所上浦栽培技術開発センターから 受け入れた30 万粒を用い、2 回次は水産試験場で得 た受精卵のうち46 万粒を用いて種苗生産をおこなっ た。 仔稚魚飼育 仔稚魚飼育結果を表 3 に、生残率と成長を図 2 に 示した。日齢5 で生残率は 45.2 ~ 83.8%、平均全長 は2.7mm、日齢 56 ~ 59 の取り揚げ時には、生残率 は0.9 ~ 3.3%、平均全長は 24.2mm、合計 11,380 尾 であった。飼育途中のPCR 検査は陰性であった。 ポンプ水槽は、ふ化前後に卵またはふ化仔魚がポ ンプ吸入口のネットに大量に付着してしまったため、 孵化率は 53.9%と低い値であった。しかし日齢1か らは、ポンプをタイマー制御で稼働10 分、停止 5 分 を繰り返すようにしたところ、ネットへの仔魚の付 着は見られなくなった。また、日齢40 に水槽内底層 の沈殿物を底掃除で回収したところ、ポンプ水槽は エアーブロック水槽と比較して硫化物の堆積が少な かったことから、底層への飼育水及び酸素の循環効 果が高いと考えられた。 養殖試験 試験開始から41 ヵ月が経過した 2009 年 1 月時点 で平均全長403 ~ 483mm、平均体重 979 ~ 1,806g、 生残率78.8 ~ 93.6%であった(表 4)。今後の課題
水槽 No.6 は日齢 30 で、飼育水が白濁し硫黄臭が 漂い、仔魚の斃死がみられた。斃死後、底層へ沈下 した個体は腐敗していたため斃死尾数は把握できな かったものの、水槽内のワムシ20 個体/mL が 1 日で 0 個体/mL になっていたことから、生物の生存に不 適な環境であったと考えられる。DO、pH 等に異常 値は認められなかったが、硫化物の堆積した底質が 急激に巻き上がったことが原因と考えられる。底質 の状況によっては底掃除をもっと早い時期におこな う必要がある。 (平澤敬一) 図2 生残率と全長の変化 0 10 20 30 0 20 40 60 80 100 0 10 20 30 40 50 平 均 全 長 (m m ) 生 残 率 ( % ) 日齢 生残率(水槽No.5) 生残率(水槽No.6) 生残率(水槽No.7) 平均全長 大 分 県 水 試 事 業 報 告 8 大 分 県 水 試 事 業 報 告9 表2 採卵及び人工授精結果 表3 仔稚魚飼育結果 表4 2005年群の2009年1月時点での養殖試験状況 個体No. 親魚購入 年度 体重 (kg) 1 6月2日 1回次は上浦栽培技術開発センターから受入れた受精卵を使用 陰性 7 0466 2000 6.5 521 254.5 184.0 72.3 陰性 5、6 046D 2007 6.6 526 137.6 76.0 55.2 陰性 1271 2007 7.0 476 129.0 99.0 76.7 陰性 1B0F 2007 5.5 採取できず 103.5 60.0 58.0 陰性 2974 2007 5.7 採取できず 57.0 14.0 24.6 陰性 0C45 2003 5.4 474 115.0 33.0 28.7 陰性 合計(平均) 796.6 466.0 (52.6) 6B04 2007 5.2 採取できず 112.6 78.7 69.9 陰性 3931 2007 5.8 529 231.5 194.0 83.8 陰性 0D07 2006 6.1 採取できず 88.6 88.6 100.0 陰性 6374 2007 7.4 469 270.8 237.8 87.8 陰性 7E20 2007 7.7 598 47.3 47.3 100.0 陰性 2935 2007 5.8 500 171.1 127.1 74.3 陰性 合計(平均) 921.9 773.5 (86.0) 親魚 HCG打注時 の卵径 (μm) Nsted-PCR 収容 水槽 No. 総採卵数 (万粒) 浮上卵数 (万粒) 浮上卵率 (%) 3 6月12日 2 6月4日 回次 採卵日 1 7 通気 44 30 18.9 63.0 4,295 58 27.5 5,700 3.0 2 6 通気 44 23 17.9 77.8 4,068 59 22.7 1,620 0.9 2 5 ポンプ 44 23 12.4 53.9 2,818 56 22.4 4,060 3.3 76 31.3 (64.9) (3,727) (24.2) 11,380 (2.4) 取り揚げ時 ふ化仔魚数 (万尾) 生残率 (%) 全長 (mm) 回次 量 (kL) 卵数 (万粒) 収容時 尾数 (尾) 日齢 飼育水の 循環方法 密度 (尾/kL) 水槽 ふ化率 (%) No. 合計(平均) 生残率 (%) A 臼杵湾 416 ± 18 1,238 ± 143 93.6 B 佐伯湾 403 ± 24 979 ± 190 欠測 C 佐伯湾 483 ± 14 1,806 ± 263 80.2 D 米水津湾 409 ± 17 1,059 ± 191 88.6 E 猪串湾 459 ± 20 1,675 ± 186 欠測 F 入津湾 442 ± 25 1,559 ± 277 78.8 435 1,386 85.3 平均 養殖場 海域 平均全長 (mm) (g) 平均体重 平 成20 年 度 9 平 成 20 年 度
10 大 分 県 水 試 事 業 報 告
2.カワハギ
事業の目的
カワハギの人工種苗の生産技術を確立する。事業の方法
親魚養成 親魚は県内の養殖業者から2008 年 1 月 25 日に 68 尾(平均体重379g)、同年 3 月 28 日に 197 尾(平均 体重 344g)を購入し、水産試験場地先の海面小割生 簀(5×5×5m)で養成した。餌料はモイストペレット を週2 ~ 5 回飽食給餌した。 成熟度調査 採卵時期を知るため、1 月購入親魚の雌 4 ~ 5 尾 について、毎月 1 回体重と生殖腺重量を測定し、1 ~8 月と 12 月については卵巣卵径を測定した。卵径 は実体顕微鏡下で測定し、卵径が最も大きい卵30 粒 の平均を平均卵径とした。 HCG濃度と卵径の経時変化に関する試験 ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン(HCG)(ゴナトロ ピン:帝国臓器製薬株式会社)のカワハギへの有効 性を明らかにするため、4 月 22 日に 3 月購入親魚の 雌 9 尾について卵巣卵をカニューレで採取後、背筋 部にHCG をそれぞれ 500,1000IU/kgBW 注射した区 と HCG を注射しない区(対照区)の計 3 試験区を 設け、0.5kL パンライト水槽に 3 尾ずつ収容した。注 射から 24、36、48、60 及び 72 時間後にカニューレ により卵巣卵を採取した。卵巣卵を採取した個体は もとの水槽に戻し、毎回同一個体の卵巣卵径を測定 した。 採卵 採卵は 3 月購入親魚を適宜陸上水槽へ収容し、水 槽内での自然産卵とした。親魚を収容した水槽の飼 育水はろ過海水を流水にして自然水温(19.5 ℃前後) で行った。 1 回次は 5 月 21 日に親魚 28 尾を陸揚げし、7kL 円形キャンバス水槽2 面に雌 7 尾、雄 7 尾ずつを収 容した。各水槽には産卵基質の選択性を調べるため、 硬化塩化ビニル板、コンクリートブロック、黒砂、 黄砂を設置した。2 回次は 5 月 28 日に親魚 8 尾を陸 揚げし、0.5kL パンライト水槽 2 基に雌 2 尾、雄 2 尾ずつを収容した。産卵基質にはアワビ波板を設置 した。3 回次は 6 月 3 日に親魚 20 尾を陸揚げし、 0.5kL パンライト水槽 5 基に雌 2 尾、雄 2 尾ずつを 収容した。産卵基質には硬化塩化ビニル板を設置し た。4 回次は 6 月 9 日に親魚 20 尾を陸揚げして背筋 部にHCG を 500IU/kgBW 注射し、0.5kL パンライト 水槽5 基に雌 2 尾、雄 2 尾ずつを収容した。産卵基 質には硬化塩化ビニル板を設置した。 種苗生産 2 ~ 4 回次の採卵で得られたふ化仔魚を用い、6kL 円形キャンバス水槽3 面、10kL 円形キャンバス水槽 1 面で種苗生産を行った。ふ化仔魚はサイホンまたは バケツで収集し、バケツ輸送で各飼育水槽に収容し た。飼育水は紫外線殺菌海水を使用した。換水は日 齢10 頃までは止水、それ以降は1日 5%から 200 %ま で徐々に増加させた。通気は中央にエアーストーン を 1 個と周囲に樋を 4 基設置し、仔魚の沈下を防ぎ ながら飼育水全体が対流するようにした。底質改善 を目的に貝化石10 ~ 20g/kL を殺菌海水に溶かして、 日没後に飼育水へ添加した。また、市販の淡水クロ レラ(120 億 cells/mL)を毎日、朝と昼の 2 回、飼育 水1kL あたり 10 ~ 12 mL ずつを 30L の殺菌海水に 希釈し飼育水槽へ添加した。水温は自然水温から徐 々に26 ℃まで加温した。飼育水の DO は 5 ~ 7mg/L を維持するように酸素を供給した。日齢30 からは週 に1 ~ 5 回サイホン方式により底掃除を行った。 餌料は、開口前日から日齢30 までは S 型ワムシを 飼育水槽内で10 ~ 25 個体/mL になるよう給餌した。 日齢 12 頃からアルテミア幼生を、日齢 15 頃から配 合飼料を順次重複させながら給餌した。ワムシは淡 水クロレラ(生クロレラ V12:クロレラ工業株式会 社)で培養し、強化剤(スーパー生クロレラ V12: クロレラ工業株式会社)で栄養強化した。アルテミ ア幼生は強化剤(バイオクロミスパウダー:クロレ ラ工業株式会社)で栄養強化した。 現地養殖試験 生産した種苗のうち 4,400 尾をヒラメ用陸上水槽 での養殖試験として、2005 年 11 月 17 日に県内の養 殖業者 1 経営体に配布した。種苗の輸送は活魚車を 用いた。事業の結果
成熟度調査 卵巣卵径と生殖腺重量指数(GSI=生殖腺重量× 100 /体重)の平均を図 1 に示した。卵径は 5 月と 6 月 が 480µm 前後で年間で最も大きかったが、GSI は 5 月に最も高い値となった。 10 大 分 県 水 試 事 業 報 告11 平 成20 年 度 HCG濃度と卵径の経時変化に関する試験 HCG 注射濃度と注射後の卵巣卵径の経時変化を図 2 に示した。卵径は 1000IU 区 3 尾、500IU 区 2 尾、 対照区 2 尾で経過時間とともに増大傾向を示したが (単回帰分析、P<0.05)、500IU 区 1 尾では変化は認 められなかった(P>0.05)。また、対照区では 1 尾が 試験開始24 時間後に死亡した。 採卵 採卵結果を表 1 に示した。1 回次では産卵しなか ったため、産卵基質の嗜好性をみることはできなか った。2 回次は目視で産卵を確認できなかったが、5 月31 日にふ化仔魚 37,500 尾が得られた。3 回次は 6 月4 日に水槽 1 基で産卵を確認し、6 月 7 日にふ化 仔魚 35,571 尾が得られた。他の 4 基の水槽は 6 月 5 日に産卵を確認したが、いずれも未受精卵であった。4 回次は6 月 10 日、11 日、12 日にそれぞれ水槽 1 基 で産卵を確認し、6 月 13 日にふ化仔魚 5,000 尾、6 月 14 日にふ化仔魚 8,565 尾、6 月 15 日にふ化仔魚 10,808 尾が得られた。さらに 6 月 15 日に水槽 2 基で 産卵を確認し、水槽1 基では 2 回目の産卵を確認し、6 月18 日に合わせてふ化仔魚 30,104 尾が得られた。5 回次は産卵せず、親魚が異常遊泳行動を示したため 処分した。 種苗生産 得られたふ化仔魚のうち、6 月 15 日ふ化群を除く 合計 117,740 尾を用いて種苗生産を行った。生残率 を図3 に、成長を図 4 に示した。日齢 33 ~ 37 の取 り 揚 げ 時 に は 合 計 22,701 尾 で 、 生 残 率は 7.9 ~ 36.2%、平均全長は 17.0 ~ 24.9mm であった。形態異 常はみられなかった。取り揚げ後も引き続き陸上水 槽で飼育したが、へい死が多く全長 5cm の段階で 6,800 尾にまで減耗した。へい死魚について PCR 検 査を行ったがVNN は陰性であり、取り揚げ時のハン ドリングによるストレスなどがへい死の主な原因と 考えられた。 現地養殖試験 現地養殖試験の成長と生残を図 5 に示した。輸送 直後からへい死がみられ、2009 年 3 月時点での生残 率は 61.2 %、平均体重は 26.9g であった。生残率が 低かったのは輸送時のスレなどが原因と考えられた。
今後の課題
採卵にHCG の有効性は認められなかった。仔稚魚 飼育では取り揚げ後の減耗が課題となった。取り揚 げ時期やハンドリングについて改良する必要がある。 (田北寛奈) 表1 採卵結果 ※親魚収容尾数は雄2尾、雌2尾 図1 卵巣卵径とGSIの推移 回次 ふ化仔魚回収月日 0.5t親魚 水槽数※ ふ化仔魚数 (尾) 収容水槽容量 2 5月31日 1 37,500 6kL(水槽1) 3 6月7日 1 36,571 6kL(水槽2) 6月13日 1 5,000 6月14日 1 8,565 6月15日 1 10,808 収容せず 6月18日 3 30,104 10kL(水槽4) 6kL(水槽3) 4 11 平 成 20 年 度12 図2 HCG濃度と卵巣卵径の経時変化 図3 仔稚魚の生残率 図4 仔稚魚の成長 図5 現地養殖試験の成長と生残 大 分 県 水 試 事 業 報 告 12 大 分 県 水 試 事 業 報 告
13 平 成20 年 度
3.シマイシガニ
事業の目的
シマイシガニは大分県南部で漁獲され、市場で高 値で取引されるため、漁業者から種苗放流の要望が 多いが、本種に関する種苗生産の知見は無い。そこ で 、 本 種 が栽 培 対 象種 と し て有 効 で ある か を 検討 していくため、種苗生産技術を確立する。事業の方法
親ガニ養成 佐伯湾で小型底曳網により漁獲された抱卵したシ マイシガニを2008 年 9 月 4 日と 5 日に合計 11 尾購 入した。親ガニは屋内に設置した 0.5kL 円形 FRP 水 槽に 1 尾ずつ収容し、ろ過海水を流水にして自然水 温で無給餌・微通気にて飼育した。 ふ化幼生の飼育 ふ化直後の幼生をバケツで各飼育水槽に収容し、 幼生飼育を開始した。飼育水槽は 10kL 円形キャン バス水槽と45kL 角形コンクリート水槽を使用した。 10kL 円形キャンバス水槽では、中央にエアースト ーンを1 個と周囲に樋を 4 基設置、45kL コンクリー ト水槽では、中央にエアーストーン 1 個と 4 隅にユ ニホースを設置し、幼生の沈下を防ぎながら飼育水 全体が流動するように通気した。飼育水は 10kL 円 形キャンバス水槽では紫外線殺菌ろ過海水、45kL 水 槽ではろ過海水を使用し、止水状態から開始してメ ガロパ幼生に脱皮した後に徐々に換水量を増やした。 水面直下が1,000Lux 以上になるように水槽上面に蛍 光灯を配置した。水温は26 ℃に加温した。 ふ 化 幼 生を 収 容 後ワ ム シ の栄 養強 化 を 目的 に 、 DHA 強化淡水濃縮クロレラ(スーパー生クロレラ -V12:クロレラ工業製)もしくは濃縮ナンノクロロ プシス(マリーンフレッシュ:アイエスシー製)を 海水で希釈して飼育水へ滴下した。ふ化幼生収容後 からスーパー生クロレラ-V12 で栄養強化した S 型ワ ムシを 10 ~ 30 個体/mL になるように成長に伴って 適宜増加しながら給餌した。第 4 齢ゾエア幼生から は栄養強化剤(バイオクロミス:クロレラ工業製) で強化したアルテミア幼生を0.1 ~ 0.5 個体/mL 給餌 し、第5 齢ゾエア幼生から配合飼料(えづけーる M、 えづけーるL:中部飼料(株)製)を併用した。 3/4希釈海水を用いた真菌症防除の検討 ガザミ類の種苗生産過程でしばしば発生し、幼生 の大量死亡の原因となる疾病のひとつに真菌症があ る。この対策として、淡水を混ぜての 3/4 希釈海水 で飼育することで真菌症の感染を防除できる可能性 が示唆されている。1) そこで、10kL 円形キャンパ ス水槽 2 基を用いて、海水区と 3/4 希釈海水区を設 け、9 月 6 日にふ化した幼生を収容し飼育を行った。 飼育水槽へはZ4 までは濃縮ナンノクロロプシスを、 Z4 以降は DHA 強化淡水濃縮クロレラを滴下した。 その他の飼育は上述のふ化幼生の飼育で記述したと おりに行った。 量産試験 9 月 7 日と 9 月 8 日にふ化した幼生を用い、45kL 角形コンクリート水槽での飼育を行った。飼育水へ 添加するプランクトンには濃縮ナンノクロロプシス を用い、1 日あたり 1,000 ~ 2,000ml 添加した。飼育 水槽へは取り揚げまで濃縮ナンノクロロプシスを滴 下した。その他の飼育は上述のふ化幼生の飼育で記 述したとおりに行った。事業の結果
親ガニ養成とふ化 親ガニの測定データとふ化幼生数を表1 に示した。 購入した11 尾のうち、抱卵した卵が黒色を呈してい た5 尾はいずれも収容後 2 ~ 4 日後に産仔した。ま た、卵が黄色を呈していた 6 尾については 1 尾が収 容5 日後に産仔したのみであった。 3/4 希釈海水を用いた真菌症防除の検討 希釈海水区では日齢 2 の朝には大部分が底に沈降 した状態で生きていたが、日齢 3 にはほとんど観察 されなくなったため飼育を中止した。真菌症への希 釈海水の効果については判断することができなかっ た。海水区ではこのような著しい沈降は見られなか ったため、海水を希釈したことで比重が小さくなり 沈降したものと考えられるが、減耗原因については 不明である。 量産試験 45kL 角形コンクリート水槽 2 面を用いて量産試験 を行った。飼育結果を表 2 に、成長の推移を図 1 に 示した。取り揚げは飼育個体の大部分が C1 に変態 したのを確認して行った。ふ化幼生からの生残率は 0.02 ~ 0.05 %であった。 13 平 成 20 年 度14 大 分 県 水 試 事 業 報 告
今後の問題点
今年度使用した親ガニのうち、黒色を呈した卵を 抱卵した親ガニからはいずれもふ化幼生を得ること ができた。しかしメガロパへの変態時、またメガロ パ変態後の共食いなどによる減耗が激しく生残率は 0.02 ~ 0.05 %に留まった。 ガザミ類では n-3 高度不飽和脂肪酸(n-3HUFA) を含有する淡水クロレラを過剰に添加すると、ワム シとそれを摂取した幼生の n-3HUFA 含 量が高くな り、形態形成が過剰に進行してメガロパへ正常に変 態できず大量死亡するとされている。2) 種苗の安定量産を可能にするためには、幼生の栄 養状態を適正に調整する技術の開発と疾病対策を講 じる必要がある。 (白樫 真)文
献
1)安信秀樹.ガザミ種苗生産における Halocrusticida okinawaensis 真 菌症の希釈海水飼育による防除の可 能性.兵庫農技総セ研報(水産) 2008; 40: 97-100. 2)Hamasaki K.Effects of dietary n-3 highly unsaturated fatty acids on larval serrata(Crustacea ,Decapoda, Portunidae),Suisan Zosyoku 2002; 50: 333-340. 表1 ふ化状況 表2 量産試験結果 図1 量産試験における成長の推移 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 背額棘 間長(mm) 日齢 45kL-① 45kL-② Z3 Z4 Z5、Z6 Z1 Z2 M(メガロパ) C1 甲幅 (mm) 卵色 産卵日 産卵後体重 (g) ふ化幼生数 (千尾) 137.5 若干黒 9月8日 514.3 1,447 149.0 黄色 産卵せず 135.5 黒 9月7日 451.0 421 145.2 黒 9月6日 502.6 836 132.0 黒 9月7日 376.3 786 146.5 黒 9月7日 569.3 1,030 119.2 黄色 産卵せず 119.5 黄色 産卵せず 125.5 黄色 産卵せず 126.0 黄色 産卵せず 129.5 黄色 9月10日 398.1 -45kL水槽① 45kL水槽② 収容幼生数(千尾) 2,077 1,478 背額棘間長(mm) 1.2 1.3 飼育日数 29 28 取上時甲幅(mm) 4.3 3.8 取上尾数 400 761 生残率(%) 0.02 0.05 14 大 分 県 水 試 事 業 報 告15 平 成20 年 度
4.アコヤガイ
事業の目的
1997 年に顕在化したアコヤガイ赤変病は感染症が 原因とされているが、未だ病原体の特定には至って いない。当試験場では、県南部の赤変病多発漁場で の真珠養殖を再生するため、耐病貝の選抜育種を進 めてきた。本年度も、耐病貝を種苗生産し、養殖試 験を行った。事業の方法
1.品種改良試験 1)親貝選抜と人工授精 今年度の採卵は 6 月に 2 回、7 月に 1 回行った。 用いた親貝は養殖業者から譲り受けたもので、殻幅 比が大きい2006 年産の貝、殻が厚い 2006 年産の貝、 殻が厚い2007 年産の貝の 3 系統である。さらに形状、 色合い、殻の厚さ、刃先の伸びが良く閉殻筋の赤色 度が低いものを、それぞれの系統から選抜したもの を親貝に用いた。雌雄の系統の組合せは表 1 に示す とおりである。人工授精は切開法により行った。 2)種苗生産 種苗生産は屋内の 0.5kL 水槽を用いた。水温を 25 ℃に加温し、水槽換えを 3 ~ 5 日の間隔で行いなが ら随時ネットを用いて幼生の大小を選別し、大小で 水槽を分けて飼育した。餌料はChaetoceros calcitrans を適量与えた。日齢17 で付着器(20×60cm の黒色の 遮光幕)18 枚を水槽に垂下し、浮遊幼生を付着させ た。付着器の投入後は水槽換えを行わず、25 ℃の精 密ろ過海水で毎日1 回全換水した。採卵から 50 日経 過後に袋型の稚貝沖出しネットに付着器を入れ沖出 しした。 2.現地養殖試験 2007 年に種苗生産した耐病貝 3 系統(表 2)につ いて、2008 年 4 月もしくは 5 月から 12 月まで赤変 病多発地区である蒲江町猪串湾の小蒲江沖で養殖試 験を行った(図 1)。養殖試験は各系統について月 1 回10 個ずつ、殻高、殻幅、全重量、閉殻筋重量を測 定後、色査計を用いて閉殻筋の a 値(赤変度)を測 定した。また、生残率を調査するために月 1 回へい 死数を調べた。へい死個体はその場で廃棄した。事業の結果
1.品種改良試験 幼生の成長、着底は順調であった。海面への沖出 し時の殻長は1.5 ~ 3.0mm で、各水槽の付着幼生数 は4 ~ 7 万個体であった。これら 3 系統の品種改良 貝は沖出し後、2007 年 10 月に養殖業者による現地 養殖試験用として県南部の真珠養殖業者 6 経営体に 配布した。 2.現地養殖試験 各系統とも7 月まで順調に成長したが、7 月から 8 月にかけて閉殻筋重量の低下が観察された(図 2 ~ 4)。赤変貝の出現率は 11 月が最も高かったが、系統 による差はみられなかった(図 5、クラスカルウォ リス検定、P>0.05)。試験終了時の生残率は A 系統 が98 %、B 系統が 100 %、C 系統が 97%であった(図 6)。今後の課題
2007 年産耐病貝の現地養殖試験では全ての系統で 生残率が高く、赤変度も系統による差はみられなか った。この原因として、赤変病が発生しにくい環境 であった可能性が高い。赤変病多発漁場に適した品 種を作出していくには、赤変度による耐病性の比較 だけでなく、挿核試験まで行って生産された真珠の 品質を比較する必要がある。 (田北寛奈) 表1 人工授精に使用した親貝 採卵日 系統 雌雄 個体数 平均重量(g) 2006年産貝(殻幅比大) 雄 4 34.0 2006年産貝(殻幅比大) 雌 4 30.3 2006年産貝(殻幅比大) 雄 6 -2006年産貝(殻厚) 雌 10 -2007年産貝(殻厚) 雄 7 44.7 2007年産貝(殻厚) 雌 7 42.8 親貝 2008年6月19日 2008年6月20日 2008年7月11日 耐病貝 耐病貝 耐病貝 15 平 成 20 年 度16 大 分 県 水 試 事 業 報 告 表2 現地養殖試験に使用した親貝 系統 種苗生産年月 親貝の特徴 養殖試験期間 A 2007年2月 耐病貝、通常形状 2007年4月~12月 B 2007年2月 耐病貝、殻幅比大 2007年4月~12月 C 2007年6月 耐病貝、通常形状 2007年5月~12月 図1 試験漁場 図3 全重量の推移 図5 生残率の推移 図2 殻高の推移 図4 閉殻筋重量の推移 図6 赤変度(a値)の推移 16 大 分 県 水 試 事 業 報 告
17
ヒラマサ種苗生産技術開発事業
白樫 真・平澤敬一・田北寛奈・尾上静正
事業の目的
2003 年の農林水産統計では本県のヒラマサ養殖は 全国 2 位の生産量であるが、養殖用種苗は天然種苗 に依存しているため、種苗の価格や供給が不安定で ある。さらに2005 年秋には中国産の天然種苗を用い た養殖カンパチにおいてアニサキスの寄生が確認さ れ、同様に天然種苗に依存するヒラマサについても、 アニサキスの寄生が危惧される。 本事業ではアニサキスが寄生する心配のない、安 心・安全な「大分ブランド」のヒラマサ養殖を推進 するため、良質で安価な人工種苗の生産技術を確立 する。事業の方法
親魚養成 親魚は 2007 年 12 月 11 日に県内の養殖業者から 5kg サイズの養殖魚を 85 尾購入し、水産試験場地先 の 5×5×5m 小割網生簀で養成したものを使用した。 搬入後からモイストペレットを週 5 回飽食給餌し た。個体識別のため背筋部内にピットタグを装着し た。 また、2008 年 12 月 16 日に新たに県内の養殖業者 から3 ~ 5kg サイズの養殖魚 60 尾を購入し、同様に 飼育した。 成熟度調査 採卵時期を把握するため、2008 年 1 月 27 日、2 月 28 日、3 月 26 日、4 月 25 日、5 月 15 日、5 月 29 日 に尾叉長と体重を測定し、成熟度を調べた。成熟度 はピットタグにより個体識別した特定の10 個体から カニューレによって採取した卵巣卵の最大卵径群 30 粒について、卵径を実体顕微鏡を用いて測定した。 この平均を平均卵巣内最大卵径として、成熟度の指 標とした。 また、親魚を養成している生簀の近くの水深 2.5m にメモリー式水温計(ONSET 社製 TidbiT)を設置し、1 時間ごとの水温を記録した。 採卵 成熟度調査における平均卵巣内最大卵径が5 月 15 日に 531μm、5 月 29 日には 535μm と卵径の増大が みられなかったため、6 月 6 日にヒト胎盤性生殖腺 刺激ホルモン(HCG)を注射し、陸上屋内コンクリー ト50kL 水槽 2 面に雌雄 8 尾ずつ合計 32 尾(平均体 重 5.4kg)を収容した。HCG 注射量は 600IU/kg と 1,000IU/kg の 2 群を設けた。この日の生簀近くの水 温は 19.9 ℃であった。産卵水槽は加温をせず、砂ろ 過海水を 4 回転/日の割合で注水のうえ産卵を待った が、3 日経過後も両群とも産卵や腹部の膨満が見ら れなかったため、6 月 6 日に 1,000IU/kg の HCG を注 射した群に、6 月 9 日にさらに 1,000IU/kg 注射し再 度産卵を待ったが産卵は見られなかった。事業の結果
親魚養成 2007 年購入群は周年にわたって 2 週間に 1 度の頻 度でマリンサワー SP30(株式会社 片山化学工業研 究所)による薬浴と淡水浴を交互に行うことで親魚 の健康を維持することができた。2008 年 12 月購入 群については搬入後、口腔内にCaligus spinosus の 寄 生が多数みられ、摂餌不良や下顎のスレが見られた が、上記と同様に薬浴と淡水浴を交互に行うことで 健康を維持することができた。 成熟度調査 平均卵巣内最大卵径と水温を図 1 に示した。平均 卵巣内最大卵径は 2 月 28 日の調査から徐々に増加 し、4 月 25 日には 370μm、5 月 15 日には 531μm に 達したことから成熟の進行はみられた。しかし、2 週間後の 5 月 29 日の調査では 535μm と卵径の増大 が見られず、退行変性卵が観察された。 採卵 今年度は親魚養成期間が約半年と短く、年齢も 2 歳と昨年使用した親魚より 1 年若かったためか、ブ リ で HCG 注 射適期とされる平均卵巣内最大卵径 700μm には達しなかったと考えられる。さらに HCG 平 成 20 年 度 17 平 成 20 年 度18 注射時には退行変性卵が多く、注射後3 日目の 6 月 9 日に再び採取した卵巣卵も両群とも過熟卵ばかりで あり、採卵には至らなかった。 表1 成熟度調査時の魚体の大きさ (平均値±標準偏差) ♀ 68.0 ± 2.1 4.4 ± 0.4 14.0 ± 0.9 ♂ 66.7 ± 2.5 4.2 ± 0.4 14.0 ± 1.4 ♀ 68.2 ± 2.1 4.7 ± 0.4 14.9 ± 1.2 ♂ 66.7 ± 2.3 4.4 ± 0.5 14.8 ± 1.4 ♀ 68.4 ± 2.2 4.8 ± 0.5 14.8 ± 2.4 ♂ 66.9 ± 2.3 4.5 ± 0.5 15.0 ± 1.3 ♀ 68.9 ± 2.2 5.2 ± 0.5 16.0 ± 1.3 ♂ 67.8 ± 2.7 4.8 ± 0.6 15.6 ± 1.9 ♀ 69.3 ± 2.0 5.5 ± 0.4 16.6 ± 1.2 ♂ 67.9 ± 2.3 5.2 ± 0.6 16.6 ± 1.5 ♀ 70.3 ± 2.3 5.8 ± 0.5 16.7 ± 1.1 ♂ 68.8 ± 2.4 5.4 ± 0.6 16.5 ± 1.4 尾叉長 (cm) 体重 (kg) 肥満度 2008/5/29 2008/1/27 2008/2/28 2008/3/26 2008/4/25 2008/5/15
今後の問題点
種苗生産を進めるにあたっては、採卵の適時を 明らかにするとともに、適正な親魚養成が必要であ る。 図1 水温と平均卵巣内最大卵径 15 17 19 21 23 25 27 100 200 300 400 500 600 1月3日 2月2日 3月3日 4月2日 5月2日 6月1日 7月1日 水 温 ( ℃ ) 平 均 卵 巣 内 最 大 卵 径 (μ m ) 月日 卵径 1月 2月 3月 4月 5月 6月 大 分 県 水 試 事 業 報 告 18 大 分 県 水 試 事 業 報 告19
資源増大技術開発事業
カサゴ放流技術開発
白樫 真・尾上静正・田北寛奈・平澤敬一
事業の目的
大分県沿岸海域におけるカサゴの漁獲量は年々減 少傾向にあり、大分県漁協佐賀関支店ではカサゴ類 は1997 年の 43 tをピークに、2008 年には 4 tに まで落ち込んでいる。このカサゴの資源量を増大さ せることを目的に 2003 年度から人工種苗の放流技 術開発に取り組んでいる。特に、回収率の精度向上 を図りながら放流効果を明らかにするとともに、放 流手法を確立することを目的としている。事業の方法
1.標識放流 大分県漁業公社で生産したカサゴ人工種苗を腹鰭 抜去標識し、10 月 9 ~ 10 日に標識放流した(表 1、 図 1)。今年度は適正放流サイズを知るために、平 均全長85mm(大型群)17,934 尾を左腹鰭抜去、72mm (小型群)17,975 尾を右腹鰭抜去とした。放流にあ たってはおよそ200 尾ずつをフタ付きのカゴ(外寸 W×D×H:65×35×10cm)に入れて海底まで沈め、ダ イバーがカサゴの生息適地にカゴを移動し、フタを 開けて放流した(写真 1)。カゴの沈下時間は海面 から水深11m の海底まで約 75 秒であった。放流海 域に 100 mのロープを 6 本設置し(図 1)、10m 間 隔毎に約 600 尾づつ、1 本のロープ当り 6,000 尾程 度になるようにして放流尾数が放流海域内でできる だけ均一になるようにした。 2.放流効果調査 1)佐賀関 2003 ~ 2007 年度に標識放流した佐賀関では、小 黒地先において三重刺網(中網の目合いが6 節、5.5 節を 4 反ずつ計 8 反)による試験操業を 2008 年 4 月に 1 回実施した。また、2004 年 3 月から継続し ている大分県漁協佐賀関支店魚市場での調査は、 2008 年 4 月~ 2009 年 3 月に 15 回実施し、調査時 に市場に水揚げされた全てのカサゴについて標識の 有無を調べるとともに一部について全長を市場で測 定した。 2)上浦 今年度放流した佐伯市上浦では刺網試験操業、カ ゴ試験操業、潜水調査を2008 年 9 月から 2009 年 2 月までそれぞれ概ね月に1 回ずつ上浦地先で実施し た。刺網は三重刺網(中網の目合いが6 節)2 反と 一重刺網(目合い10 節)2 反を用い、夕刻投網し、 翌早朝に揚網した。カゴは高さ85cm、底の直径 88cm の釣り鐘型のものを1 回に 7 個使用し、カタクチイ ワシを餌として放流海域内に1 晩設置した。潜水調 査は、放流海域に200m の調査ロープを固定し、毎 回このロープに沿って片側1m の範囲の中のカサゴ の大きさと数、出現位置を野帳に記入した。潜水観 察後は調査ラインの外でヤスを用いてカサゴを採集 し、精密測定を行い、胃内容物などを調査した。 3)標識に関する飼育試験 前年度までの飼育試験を継続するとともに、今年 度放流群から無作為に200 尾を抽出して同様に飼育 し、成長、生残および標識の有効率を2 ヵ月に 1 回 程度調べた。標識の有効率は、左右の腹鰭のうち片 側を抜去しているので、目視で左右の腹鰭の不揃い さが確認できるものを標識として有効であるとし た。 4)回収率の推定 腹鰭抜去した佐賀関放流群のうち、刺網標本船お よび市場調査で確認した再捕尾数から、回収率を推 定した。回収率は、確認した標識魚の数を飼育試験 で求めた標識の有効率および調査率で補正したもの を放流尾数に対する割合とした。 3.放流直前の天然餌料馴致の効果 放流前に生物餌料を与えることで、放流後の摂餌 などの行動が向上するかどうかを明らかにするた め、生物餌料を給餌する群(馴致群)と配合餌料の みを給餌する群(非馴致群)の 2 群を設けて、23 日間陸上水槽で飼育後に各群888 尾ずつを 11 月 20 日に禁漁区の佐伯市上浦地先保護水面に放流した。 平 成 20 年 度 19 平 成 20 年 度20 両群は左と右の腹鰭を切り分けることによって識別 した。放流後は、海底に固定した100m の調査ロー プに沿って片側 1m の範囲を潜水調査によって両群 を識別しながら個体数を調べた。個体数を調べた後 は観察区域外においてヤスでカサゴを採集した。採 集した個体について胃内容物を調べた。なお天然餌 料馴致群に給餌した生物餌料は、ネトロンネットで 作成した直径 15cm、長さ 82cm の筒にカキ殻を充 填し、207 日間水深 8m の海底に設置して集めた。 採集餌料として軟体動物ではフトコロガイ科、甲殻 類ではワタリガニ科、コシオリエビ科、棘皮動物で はマヒトデ科、魚類ではハゼ科が主であった。これ ら天然餌料に加えて釣り具屋から購入したゴカイ類 も適宜給餌した。 4.大型カサゴからの捕食に対する腹鰭抜去の影響 標識として腹鰭を抜去することで、魚食性魚類に 捕食されやすくなるかどうかを明らかにするため、 天然の大型カサゴ 6 尾(全長 128 ~ 282mm)を収 容した水槽(W×D×H:290×190×60cm)に片側の腹 鰭 を 抜 去 し た カ サ ゴ 種 苗 ( 抜 去 区 : 平 均 全 長 65±15mm)と腹鰭抜去をしないカサゴ種苗(通常 区:平均全長67±10mm)をそれぞれ 15 尾ずつ収容 し、無給餌で飼育した。1 回の飼育試験は 3 ~ 9 日 間とし、試験終了毎に全てのカサゴを取り上げて計 数のうえ、胃内容物を調べた。
事業の結果
1.放流効果調査 1)佐賀関 再捕尾数 2009 年 3 月末までの再捕尾数を放流群別、調査 方法別に表 2 に示した。今年度は 2004 年度放流群 が4 月 14 日に試験操業で 1 尾(全長 172mm)、6 月 13 日に市場調査で 1 尾(全長 164mm)が確認され た。 放流魚の成長 佐賀関で放流した標識魚の放流時および再捕時の 全長を、個体毎に放流群に分けて図2 に示した。今 年度に再捕された 2004 年度第 1 回放流群は 90mm で放流したもので、放流後およそ1 年で 120mm、2 年半から3 年で 140mm、3 年半で 165mm に成長し た。 再捕場所 放 流 地 点 の 刺 網 試 験 操 業 に よ っ て 1 尾(全長 172mm)が再捕され、放流から約 3.5 年経過しても 放流地点に留まっている個体がいることが明らかと なった。 2)上浦 再捕尾数 2008 年度佐伯市上浦で放流した群は 2009 年 3 月 末までに刺網試験操業で5 尾、カゴ試験操業で 3 尾 が再捕され、いずれも大型群であった。また、潜水 採集では大型群が33 尾、小型群が 7 尾再捕された。 刺網で小型群が再捕されなかったのは、刺網の目合 いが大きかったためと考えられる。また、潜水採集 で小型群が少なかったのは、ヤスによる採集では小 型群の採集が困難であったためと考えられる。 放流後の摂餌 放流 18 日後に潜水採集した大型群 9 尾のうち 2 尾でヒトデの脚や甲殻類などの摂餌が放流後初めて 確認された。刺網で再捕された5 尾のうち、放流後 64 日目までに再捕された 3 尾はいずれも空胃であ ったが、放流160 日後以降に再捕された 2 尾はいず れも摂餌が確認された。刺網および潜水調査で採集 したカサゴの摂餌個体数は、放流魚全体では 45 尾 中9 尾(摂餌率 20%)、放流魚と同程度のサイズで ある10cm 以下の天然カサゴでは 4 尾中 1 尾(摂餌 率 25%)、天然魚全体では 35 尾中 14 尾(摂餌率 40%)であった。このことから、天然カサゴに比べ て放流直後のカサゴは餌を獲る能力が低いことが示 唆された。さらに、放流後の日数の経過とともに摂 餌個体の割合が高くなったことから、環境に適応し て摂餌能力が向上した可能性が考えられる。 食害 カゴと刺網の試験操業で漁獲された魚食性魚類は クロアナゴ131 尾、天然の大型カサゴ 88 尾であっ た。これらのうち明らかにカサゴを捕食していたの はクロアナゴ1 尾であった。放流したカサゴが食害 にあっている可能性は高いが、その量は今回の結果 ではさほど多くはないものと考えられる。 潜水観察による放流後の個体数変化 潜水調査で観察された放流種苗および天然カサゴ の観察された位置と個体数を図3 に示した。種苗は 放流 6 日後の調査では水深 10m 以浅の岩盤域に多 く、時間の経過とともに水深 15m 前後の転石帯で 多く観察されるようになった。また砂地では観察さ れなかった。大型群、小型群いずれも同所的に存在 し、観察される個体数に大きな違いはなかった。放 流 61 日後の 12 月 10 日以降は、放流種苗および 10cm 以下の小型の天然カサゴの個体数が減少した 大 分 県 水 試 事 業 報 告 20 大 分 県 水 試 事 業 報 告21 が、この要因については不明である。 3)標識に関する飼育試験 飼育試験による放流年度毎の腹鰭抜去の標識有効 率と生残率を表3 に示した。いずれの年度の放流群 についても4 ヵ月~ 3 年以上の飼育で 90 %以上の 標識有効率であった(表3)。生残率は腹鰭抜去後 3 ヵ月までとしたが、今年度の放流群の生残率は 90 ~92 %であり、その他の年も 78 ~ 100 %の生残率 であった。このことから腹鰭抜去はカサゴの標識と して問題はないと考えられる。 4)回収率の推定 佐賀関に放流した 2003 ~ 2007 年度放流群のう ち、今年度の佐賀関支店魚市場での調査で 2004 年 度放流群が1 尾(全長 164mm)、釣りで漁獲された のを確認した。さらに 2004 年度放流群は前年度ま でに刺網標本船で7 尾、市場調査で 1 尾確認した。 また、佐賀関におけるカサゴ類の漁法別平均漁獲量 割合は、刺網 6.7%に対して釣りが 93.3%であった (2004 年から 2006 年の 3 ヵ年平均値)。 2004 年度の放流翌月から 2008 年 12 月までの市 場のカサゴ類総漁獲量は 25,092kg であり、そのう ち釣りによる漁獲量は 23,411kg と推定される。ま た、外観および PCR-RFLP 法を用いて試算した佐 賀関におけるカサゴ類の魚種別重量割合では、カサ ゴ類の 91.5%がカサゴであり、1) 2004 年 11 月か ら 2008 年 6 月までに市場に水揚げされたカサゴの 一部を測定して算出した 1 尾当たりの平均体重は 123g であることから、カサゴ単独の釣りによる漁 獲尾数は174,154 尾となる。そのうち 34,912 尾を調 査したので、2004 年度放流群は佐賀関魚市場で釣 りにより漁獲されたカサゴ全体の中に 10 尾含まれ ていると推定される。さらに、刺網標本船調査から 試算した佐賀関における刺網全体での回収率 1)と合 わせると、2004 年度放流群の回収率は 0.3%となる。 3.天然餌料馴致による初期摂餌の効果 放流後の5 回の潜水調査で確認した放流種苗の個 体数を図4 に示した。放流 6 日後の 11 月 26 日の調 査では非馴致群が多く観察された。また、潜水して 採集した放流種苗は合計22 尾であり、そのうち 18 尾が非馴致群であった。放流直後の観察個体数およ び潜水採集した個体数はいずれも非馴致群が多く、 これは馴致群が動きが機敏で採集が困難であった か、あるいは遠方へ移動したためと考えられる。摂 餌が確認されたのは放流20 日後および 34 日後に非 馴致群でそれぞれ1 尾のみであった。また、放流 20 日後の12 月 10 日以降、馴致および非馴致群のどち らも観察される個体数が減少した。このように、今 回は馴致の効果を明らかにできなかった。 4.大型カサゴからの捕食に対する腹鰭抜去の影響 腹鰭抜去群と通常群の生残率を図 5 に示した。4 回の試験とも抜去群と通常群で生残率に差はなく、 腹鰭抜去をしたことで魚食性魚類から食べられやす くなるということはなかった。4 回の試験毎に捕食 された個体と生き残った個体の全長組成を図6 に、 さらにそれぞれの試験で使用した大型カサゴの全長 を表 4 に示した。152 ~ 242mm のカサゴを使用し た1 回目および 2 回目の試験では主に全長 70mm 以 下の種苗が、282mm という大型のカサゴを使用し た 4 回目では 72mm 以上の種苗が捕食された。こ れらのことから 128 ~ 282mm のカサゴは 51 ~ 82mm サイズのカサゴ種苗を捕食することが明らか となった。
今後の問題点
佐賀関での回収率が低い原因を明らかにするた め、今年度は放流場所を佐伯市上浦沖へ移し、食害 の影響などについて室内実験と野外実験を行った。 今後は、定期的な試験操業を実施するとともに遊漁 による漁獲実態などもあわせて調べ、カサゴの放流 効果を明らかにして栽培対象種としての適正を判断 する必要がある。文
献
1)田北寛奈, 平澤敬一, 東馬場大, 白樫真, 尾上静正. 資源増大技術開発事業カサゴ放流技術開発.平成19 年度大分県水試事業報告 2009: 24-26 平 成 20 年 度 21 平 成 20 年 度22 大 分 県 水 試 事 業 報 告 表1 2003年度から2008年度まで実施した標識放流の概要 図1 放流場所 (左:2003~2008年度、右:2008年度放流場所の等深線図 黒太線が潜水放流ライン) 写真1 カサゴ種苗放流状況(左:カゴ収容、中央:カゴ沈降中、右:カゴから種苗放流) 100m 放流尾数 平均全長 平均体重 放流時年齢 (尾) (mm) (g) (満歳) 第1回 2003年07月08日 17,000 130 39 佐賀関小黒 スパゲティ(赤) 1 第2回 2003年10月29日 9,700 90 13 佐賀関小黒 腹鰭抜去(右) 0 第3回 2003年10月30日 1,400 86 12 佐伯市上浦 ビーズ 0 第1回 2004年09月21日 32,000 91 14 佐賀関小黒 腹鰭抜去(左) 0 第2回 2004年10月31日 1,100 97 17 佐伯市上浦 アンカータグ 0 500 135 45 佐賀関小黒 スパゲティ(緑) 1 18,000 90 13 佐賀関小黒 腹鰭抜去(右) 0 第2回 2005年11月21日 2,400 123 36 佐伯市上浦 スパゲティ(橙) 1 2006 第1回 2006年10月03日 20,867 90 13 佐賀関権現バエ 腹鰭抜去(左) 0 2007 第1回 2007年08月21日 38,261 76 8 佐賀関権現バエ 腹鰭抜去(右) 0 17,934 85 - 腹鰭抜去(左) 0 17,975 72 - 腹鰭抜去(右) 0 放流年度 放流群 放流年月日 放流場所 標識方法 2003 佐伯市上浦沖 2004 2005 第1回 2005年09月20日 2008 第1回 2008年10月9~10日 佐賀関小黒 佐賀関権現バエ 佐伯市上浦 2003~2005年 2006~2007年 2003~2005年 2008年 22 大 分 県 水 試 事 業 報 告
23 表2 標識魚の再捕状況(2009年3月末まで) 図2 放流群別の放流後の経過日数と再捕時の全長(mm) 図3 200mの潜水調査ラインで観察された放流魚(上)と天然魚(下)の個体数と調査月日 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 全 長 (m m ) 経過日数 2003年度第1回放流群 2003年度第2回放流群 2004年度第1回放流群 放流尾数 平均全長 (尾) (mm) 刺網 試験操業 刺網標本船 市場調査 再捕報告 カゴ試験操業 潜水採集 第1回 17,000 130 佐賀関小黒 スパゲティ(赤) 56 1 0 0 - -第2回 9,700 90 佐賀関小黒 腹鰭抜去(右) 4 0 0 0 - -第3回 1,400 86 佐伯市上浦 ビーズ - - - 0 - -第1回 32,000 91 佐賀関小黒 腹鰭抜去(左) 5 7 2 0 - -第2回 1,100 97 佐伯市上浦 アンカータグ - - - 0 - -500 135 佐賀関小黒 スパゲティ(緑) 0 0 0 0 - -18,000 90 佐賀関小黒 腹鰭抜去(右) 0 0 0 0 - -第2回 2,400 123 佐伯市上浦 スパゲティ(橙) - - - 0 - -2006 第1回 20,867 90 佐賀関権現バエ 腹鰭抜去(左) - 0 0 0 - -2007 第1回 38,261 76 佐賀関権現バエ 腹鰭抜去(右) - - - 0 - -17,934 85 腹鰭抜去(左) 5 - - 0 3 33 17,975 72 佐伯市上浦沖 腹鰭抜去(右) 0 - - 0 0 7 放流場所 標識方法 再捕尾数 2004 2005 第1回 2008 第1回 放流 年度 放流群 2003 200 160 120 80 40 0 9/10 10/16 10/28 11/7 11/29 12/10 ’09/1/7 調 査 ラ イ ン の 調 査 位 置 (m ) 調 査 ラ イ ンの 調 査 位 置 (m ) 調査月日 天然魚の観察個体数 放流魚の観察個体数 放流魚(小型・大型合計) 小型放流群(平均全長72mm) 大型放流群(平均全長85mm) 10cm以下の天然カサゴ 10cm以上の天然カサゴ 凡例:尾数 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 200 160 120 80 40 0 2/26 9月10日 10月16日 10月28日 11月7日 11月29日 12月10日 '09年1月7日 2月26日 平 成 20 年 度 23 平 成 20 年 度
24 表3 飼育試験による標識有効率および生残率 図4 天然餌料馴致群および非馴致群の放流後の潜水観察による個体数の推移 図5 大型カサゴからの捕食に対して腹鰭抜去区と通常区の生き残る割合 0 20 40 60 80 100 1回目 2回目 3回目 4回目 抜去区 通常区 生 残 率 ( % )
0
5
10
15
20
25
6
20
34
49
99
非馴致群
馴致群
不明(天然の可能性有り)
放流6日後 11月26日個
体
数
(
尾
)
放流20日後 12月10日 放流34日後 12月24日 放流49日後 '09年1月8日 放流99日後 2月27日 標識時全長 飼育日数 飼育3ヶ月後の (mm) (日) 全長(mm) 標識有効率(%) 生残率(%) 2003 腹鰭抜去(右) 86 1,202 185 90 -2004 腹鰭抜去(左) 69 1,060 194 100 78 2005 腹鰭抜去(右) 90 639 142 93 99 2006 腹鰭抜去(左) 95 273 106 96 100 2007 腹鰭抜去(右) 76 507 134 96 -2008 腹鰭抜去(左) 85 96 96 92 腹鰭抜去(右) 72 137 86 97 90 飼育日数後の測定値 放流年度 標識方法 大 分 県 水 試 事 業 報 告 24 大 分 県 水 試 事 業 報 告25 図6 大型カサゴに捕食された個体および生き残った個体の全長組成 表4 4回の捕食試験に用いた大型カサゴの全長 0 2 4 6 8 10
開始時
終了時
0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 10 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 個 体 数 ( 尾 ) 個 体 数 ( 尾 ) 全長(mm) 全長(mm) 1回目 2回目 3回目 4回目 捕食された個体 生き残った個体 試験回次 1回目 242 200 204 156※ 158※ 168 2回目 162 152 186 178 178 180 3回目 208 176 178※ 182 148 128 4回目 214 282 172 176 246 221 ※は胃内容物に被食魚が確認できた個体 全長(mm) 平 成 20 年 度 25 平 成 20 年 度26
新漁業管理推進総合対策事業
クルマエビ資源回復
尾上静正・平澤敬一・白樫 真・田北寛奈
事業の目的
大分県の豊後水道域ではクルマエビの漁獲量の減 少が著しいため、大分県は「大分県豊後水道域クル マエビ資源回復計画」を2005年8月に公表した。本 事業では、クルマエビ資源の増大に関する取り組み を行うとともに、資源の動向をモニタリングする。事業の方法
本県豊後水道域の臼杵から蒲江までの海域におい て、体長約5cmのクルマエビ種苗が今年度は計1,127 千尾が無標識で放流された(表1)。放流種苗は米水 津~蒲江放流群は陸上水槽で中間育成され、他の放 流群はいずれも養殖池で中間育成された。臼杵湾、 津久見湾、佐伯湾では、輸送後の種苗を放流地点に 設置した目合5mmの囲網の中へ収容し、1昼夜ほど 馴致させてから囲網を撤去することによって放流さ れた。囲網は、臼杵湾と佐伯湾では比較的遠浅の場 所に満潮時の海面よりも高い位置までを囲う従来の 囲網が用いられたが、津久見湾では海岸が急深で従 来の囲網では設置が困難なため、今年度は囲網の天 井部にも網を付けて完全に海面下へ沈める沈下式の 囲網が用いられた。 資源の動向を調べるため、大分県漁協鶴見支店の クルマエビ取扱量の資料を整理した。また、臼杵、 佐伯、鶴見の魚市場において4月から3月まで月に1 ~7日、早朝せりが始まるまでの間に出荷されてい るクルマエビについて、雌雄を判別し体長を0.1cm 単位で測定した。出荷個体数が少ない時には全数を 調べ、多い時には一部を調べた。1年間の調査日数 は臼杵で40日、佐伯で33日、鶴見で43日であった。 市場調査には大分県中部振興局の協力を得た。本報 では2008年4月から2009年3月までのデータを集計し た。事業の結果
Ⅰ 津久見での沈下式囲網 沿岸に浅い所が少ない場所でのクルマエビの短期 馴致を目的に、海面下に水没させる沈下式の囲網を 製作した。囲網は目合い5mm目のモジ網を用い、 縦15m、横15m、高さ1.5mで、側面と天井に網を付 け海底接地面には網がない構造とした。天井網縁辺 には小型フロートを付けて浮力を持たせ、海底接地 面にはチェーンと土嚢で隙間が生じないようにし た。天井部には1×1mのチャック式開閉部を設け、 内部へダイバーが出入りできるようにした。囲網を 設置した場所は津久見市仙水の距岸20m、水深5m で底質は砂泥であった。種苗は海岸に停めた活魚ト ラックから直径50mmのホースで囲網の中へ移送し た。種苗受け入れの前日に囲網を設置し、1日馴致 して放流した。設置、受け入れ、撤去はスキューバ 潜水で行った。囲網の中に、害敵生物としてウミヘ ビ類2尾とマゴチ1尾が見られた。全長82cm、体重 432gのウミヘビ類の胃内容物に約25尾のクルマエビ 種苗が認められた。害敵生物を完全に除去できなか ったが、沈下式囲網は設置から放流まで問題はなか った。 Ⅱ 漁獲量の動向 県漁協鶴見支店のクルマエビ取扱量の年変化を図 1に示した。2001年の5.0トンからは2004年の11.9ト ンまで年々増加したが、2005年に6.7トンまで減少 した。2006年は2004年なみに回復したが、2007年以 降はやや減少し2008年は7.5トンであった(図1)。 Ⅲ 魚市場調査 測定した個体数と平均体長を表2に示した。体長 は刺網が底曵網より小さく、市場間では鶴見の刺網 で漁獲されたものが小さかった。底曵網は臼杵がや や小型で佐伯と鶴見はほぼ同じ大きさであった。今後の問題点
今年度は津久見で沈下式囲網を導入した。この効 果を明らかにする必要がある。資源動向を知るため には少なくともCPUEを知る必要がある。 大 分 県 水 試 事 業 報 告 26 大 分 県 水 試 事 業 報 告27 表1 豊後水道域における2008年度のクルマエビ種苗放流 表2 漁業種類別の測定個体数と平均体長 図1 大分県漁協鶴見支店のクルマエビ取扱量の年変化 2 4 6 8 10 12 14 16 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 漁 獲 量 ( ト ン )
臼杵湾
大分県漁協臼杵支店
6月25日
53.0
101
囲網で1日馴致
津久見湾
大分県漁協津久見支店
6月28日
49.7
98
囲網で1日馴致
佐伯湾栽培漁業推進協議会
7月15日
50.5
301
囲網で1日馴致
佐伯湾栽培漁業推進協議会
7月18日
51.4
268
囲網で1日馴致
佐伯湾栽培漁業推進協議会
7月22日
52.1
165
囲網で1日馴致
米水津~蒲江 豊南クルマエビ栽培推進協議会
8月5日
52.1
95
直接放流
豊南クルマエビ栽培推進協議会
8月20日
52.0
100
直接放流
合計
1,127
放流場所
事業主体
放流日
備考
佐伯湾
体長(mm) 数(千尾)
個体数 体長(cm)
個体数 体長(cm)
個体数 体長(cm)
刺網
856
15.8
105
16.2
39
13.8
底曵網
513
17.0
1,842
17.8
3,323
17.8
不明
35
17.4
29
17.7
6
19.1
合計(平均)
1,404
16.3
1,976
17.7
3,368
17.7
臼杵
佐伯
鶴見
漁業種類
平 成 20 年 度 27 平 成 20 年 度28
磯根資源増殖推進事業
アワビ種苗放流効果調査
尾上静正・平澤敬一・白樫 真・田北寛奈
事業の目的
本県では1980年代からアワビ人工種苗の放流が本 格的に始められ、2000年以降は毎年700千個前後が 放流されているが、漁獲量は1980年の249トンをピ ークに1987年から大きく減少し、2005年には36トン となっている(図1)。そのため、放流の効果を明ら かにし、放流方法の改善によって放流効果を高める ことが重要な課題となっている。 本事業では、放流方法の改善に関する基礎資料を 得るため、放流時のアワビの大きさと放流方法の違 いが放流から約7ヵ月後までのアワビの再捕率にお よぼす影響を、野外での放流試験によって調べた。事業の方法
試験場所 放流試験は津久見市仙水と佐伯市蒲江サエゴヤで 行った(図2)。いずれも通常は磯根資源の漁獲が禁 止されている場所である。クロメやホンダワラ類が 疎生する水深5m前後の転石地に、仙水では7×17m、 蒲江では12×12mのロープを海底に設置して試験区 とし、この中へアワビを放流した。 放流アワビと放流方法 放流したアワビはいずれも地元で中間育成された 図1 大分県におけるアワビ類の漁獲量と種苗放流 数の推移 (漁獲量:農林水産統計、放流数:大分県水産振興課資料) 0 200 400 600 800 1,000 0 50 100 150 200 250 300 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 放流数 漁獲量 漁 獲 量 ( ト ン ) 放 流 数 ( 千 個 ) 人工種苗のメガイアワビで、放流時の殻長を5mm ごとに仙水では25mmから55mmまでを6段階、蒲江 では25mmから50mmまでを5段階に区分した。さら に、仙水では潜水放流と付着板放流、蒲江では潜水 放流とばらまき放流、の各地区2種類の方法で放流 した。潜水放流は、スキューバ潜水で岩の隙間にア ワビをまばらに置くことによって放流した。付着板 放流は、陸上水槽で49×35cmの半透明付着板8枚に アワビを付着させ、アワビを付着させたまま付着板 を潜って海底に置くことによって放流した。ばらま き放流は、スキューバ潜水で海面近くから放流区の 中へアワビを撒布することによって放流した。 このように、放流するアワビの大きさと放流方法 を組み合わせて試験群を設定し、各試験群は異なる 番号を刻印したステンレス製標識(アバロンタグ) で識別した。試験群ごとの標識放流数の合計は、仙 水は12群、2,374個体、蒲江は10群、1,465個体であ った(表1)。これらに加えて、標識が脱落した個体 が仙水では74個体、蒲江では223個体であった。標 識は4月に装着し、1ヵ月ほど陸上水槽で飼育した後 に、死亡個体数と標識脱落個体数を計数のうえ放流 した。放流にあたってはそれぞれの試験群をほぼ均 一に混ぜて放流した。また、放流までに標識が脱落 した個体も標識個体とともに放流した。 図2 試験場所 N 0 10km 佐伯市 津久見市 蒲江 仙水 ■ ■ サエゴヤ 大 分 県 水 試 事 業 報 告 28 大 分 県 水 試 事 業 報 告29 表1 試験群ごとの標識放流数 (標識脱落個体は除く) 表2 放流後の調査日 項 目 津久見市仙水 佐伯市蒲江 標識装着 4月10日 4月8~10日 放流 5月15日 5月8日 第1回調査(放流後日数) 7月19日(65) 7月10日(63) 第2回調査(放流後日数) 8月4日(81) 7月29日(82) 第3回調査(放流後日数) 9月2日(110) 8月26日(110) 第4回調査(放流後日数) 12月17日(216) 12月3日(209) 潜水放流 付着板放流 潜水放流 ばらまき放流 25-30 172 174 45 52 30-35 145 178 271 227 35-40 267 260 301 259 40-45 341 328 141 140 45-50 191 219 15 14 50-55 54 45 合計 1,170 1,204 773 692 殻長範囲 (mm) 津久見市仙水 佐伯市蒲江 放流後の調査 放流から約2ヵ月後の7月を第1回調査とし、12月 までにそれぞれの地区で4回ずつ調査した(表2)。 調査では、1~2名がスキューバ潜水で試験区とその 周囲およそ5mまでの範囲で見つけたアワビをすべ て採集した。採集したアワビは船上において、グリ ーンマークと標識番号を確認のうえ殻長をノギスで 測定した。測定後のアワビは試験区内には戻さず、 試験区から100mほど離れた場所へ再放流した。