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2008年10月

平 成

20

年 度

47

平 成

20

年 度

48

広域水産資源管理推進事業

豊予海峡周辺におけるマアジ、マサバの資源生態に関する研究

(国庫交付金)

真田康広・尾上静正・西山雅人・山田英俊

事業の目的

佐賀関沖合の豊予海峡付近はマアジ・マサバの好 漁場として古くから知られており、一本釣り漁業に より漁獲され佐賀関に水揚げされる良型魚は「関あ じ・関さば」として高い市場評価を得ている。しか し、近年では漁場利用を巡って漁業調整上の問題が 発生することが多く、秩序ある漁場の適正利用を構 築することが急務となっており、そのための基礎資 料となるマアジ・マサバの資源生態を解明してほし いとの要望が漁業者および行政機関から強く寄せら れている。

そこで、本事業において当該海域に分布するマア ジ・マサバの回遊経路や産卵場などの資源生態的な 特徴を解明し、秩序ある漁場の適正利用を構築する ための基礎資料とするため、バイオテレメトリー調 査、産卵・成熟調査、マアジ卵

DNA

分析を行った。

事業の方法

1.バイオテレメトリー調査

マサバの短期的な行動生態を把握する目的で、

2008

4

月、

12

月及び

2009

3

月に豊後水道の佐賀関 地先において、マサバ数尾に発信機(

VEMCO

社製 コード化ピンガー)を装着し

6

時間ないし

19

時間連 続して行動を追跡調査した。

2.産卵・成熟調査 1)卵稚仔調査

伊予灘から豊後水道にかけて毎月調査船で実施し ている卵稚仔調査のサンプルの内、

2008

4

月~

2009

3

月まで計

31

回、延べ

727

点のネット調査(定線調 査点を含む)により、卵稚仔の濃密出現箇所及び産 卵期のピークを調べた。卵稚仔の分析は日本エヌ・

ユー・エス(株)に委託した。

採集したマアジ卵の一部については、発生ステー ジ(

A,B,C

)別に分け

DNA

分析試料に供した。

2)成熟調査

2008

4

月から

2009

3

月まで、定期的にマサバ

290

個体、マアジ

252

個体を大分県漁協佐賀関支店他か ら入手し、生物測定するとともに成熟状況を調べた。

3)産卵親魚調査

春季に佐賀関地先(沖ノ瀬)に産卵のために集群 するマアジを対象に、魚体および卵の採集を試みた。

いずれも夜間から翌朝にかけて、マアジは一本釣り、

卵は

LNP

ネットにより採集した試料を実験室に持ち 帰り処理を行った。魚体は生物測定し、卵は外部形 態からマアジ卵を選別し、シャーレ内で初期発生時 の形態的特徴を観察した。

3.マアジ卵DNA分析

査定したマアジ卵の一部は卵径測定後に

99

%エタ ノールで保管し、各採集日、ステージから任意に抽 出した標本について

DNA

分析を行った(

2008

25

検体)。分析は、シトクローム

b

cytb

)部分領域を

PCR

法により増幅後塩基配列を決定し、「水産生物情報 データベース」に登録されているマアジ属魚類、マ ルアジ属魚類、メアジ属魚類の塩基配列と比較検討 し最も類似する魚類を魚種とした。分析は日本エヌ

・ユー・エス(株)に委託した。

事業の結果

1.バイオテレメトリー調査

追跡記録から、マサバは昼夜で深浅移動を行い日 中は深い漁場に移動し夜間は浅い漁場に移動する傾 向がみられ、移動は海底に沿って遊泳する特徴がわ かった。

2.産卵・成熟調査 1)卵稚仔調査

マサバ マサバ卵は

4

月下旬から

7

月下旬まで豊予 海峡、伊予灘および別府湾の内海域で少数ながら散 発的に出現した。第

1

の出現のピークは

5

月中旬、第

2

のピークは

6

月上旬にみられ卵の分布の中心は別府 大 分 県 水 試 事 業 報 告

48

大 分 県 水 試 事 業 報 告

49

湾であった。第

3

の出現は

7

月下旬で豊予海峡でまと まって採集された。

マアジ マアジ卵は

4

月上旬から

7

月上旬まで豊予 海峡、伊予灘、別府湾および豊後水道の広く沿岸域 で出現した。特に豊予海峡において

4

6

月に集中し て分布する特徴がみられ、出現のピークは

2007

年度 と一致しており、当該海域がマアジの主産卵場とな っている可能性が示唆された。

2)成熟調査

精密測定したマサバ雌

157

尾およびマアジ雌

134

尾 について、生殖腺熟度指数の変化を図

1

2

に示した。

マサバは成熟・産卵の目安である

KG5

以上の雌が

4

月 か ら

6

月 に 、 マ ア ジ は 成 熟 ・ 産 卵 の 目 安 で あ る

GSI30

以上の雌が

4

月から

5

月に多く出現した。

図1 マサバ雌の熟度指数の変化

図2 マアジ雌の熟度指数の変化

3)産卵親魚調査

外部形態からマアジと査定した卵の卵径は、

0.875

1.000mm

、モードは

0.925

0.950mm

であった。油 球数は

1

で、発生が進んだ個体では胚体の前方に位 置していた。卵黄は粗に亀裂しており、亀裂はホル マリン固定後の未発生卵(

A

ステージ)でも明瞭で あった。黒色素胞は

B

ステージ始めに胚体背面、油 球胚体側に小さな樹枝状色素が出現し始め、発生後 期(

C

ステージ)になると、胚体背面前方では

2

列、

後方では列を成さずに散在した。なお、胚体頭部に 黒色素胞はほとんど出現しない。

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月

平成20年4月~21年3月 N=134 0

5 10 15 20 25 30 35

456789101112123

佐賀関

姫島 平成20年4月~21年3月

N=157

3.マアジ卵DNA分析

決定された塩基配列にマアジ属魚類、マルアジ属 魚類、メアジ属魚類の塩基配列を加え分岐図を作成 した。全ての卵はマアジと同一のクラスターを形成 したことからマアジと判定した。このことから、外 部形態によりマアジ卵を判別できることが明らかと なった。

図3 形態により査定したマアジ卵(2008 01~25)

と他アジ類魚類の塩基配列から作製した分岐図

(分析した図中の横バーは、遺伝距離を示す)

今後の課題

マサバの行動追跡調査は、遊泳速度が速いため現 在のところ長時間に亘って追跡することは困難であ ると判断された。そのため、タグ標識放流を充実さ せるなど、中長期的な移動の把握に力点を置く必要 がある。卵稚仔調査を継続し、マサバおよびマアジ の産卵・成熟生態にかかる知見の集積を図るととも に、産卵親魚の年齢構成を調査していくことが望ま れる。マサバに関しては瀬戸内海における漁獲動向 を把握するとともに、太平洋系群及び対馬暖流系群 と比較するためのマーカーの捜索、及び地域群とし ての可能性について遺伝学的手法等による検討の可 否について見極めていくことが必要である。

0.1

Selar.crumenophthalmus Decapterus.kurroides Decapterus.tabl Decapterus.macrosoma

Decapterus.macarellus Decapterus.maruadsi Decapterus.russelli Trachurus.murphyi

Trachurus.picturatus Trachurus.mediterraneus Trachurus.trecae Trachurus.lathami

Trachurus.trachurus 2008 07

2008 06 2008 10 Trachurus.japonicus 2008 23 2008 22 2008 20 2008 19 2008 17 2008 15 2008 04 2008 11 2008 02 2008 03 2008 12 2008 01 2008 05 2008 08 2008 16 2008 14 2008 09 2008 13 2008 18 2008 21 2008 25 2008 24

平 成

20

年 度

49

平 成

20

年 度

50

新漁業管理制度推進情報提供事業-1

漁海況予報事業

(交付金)

山田英俊・真田康広

事業の目的

伊予灘・別府湾及び豊後水道域での海況及び漁況 の変動を解析し、漁業関係者等に漁海況の予報を提 供する。併せて、浮魚を主とした漁業資源の合理的 利用を図るための基礎的知見の収集を目的とした。

事業の方法

沿岸定線調査では、豊後水道海域において図

1

に 示した

22

定点で、毎月中旬に調査を行った。調査 項目は

CTD

SeaBird

社製)による底層までの

1m

間隔の水温と塩分(但し、表層についてはデジタル 水温計、鶴見精機社製電気塩分計による計測)、透 明度、改良型ノルパックネット垂直曳き(水深

150

0m

)と丸稚ネット水平曳き(

5

分間)による卵 稚仔魚の採集、気象観測および計量魚群探知機(カ

図1 調査地点

浅海定線調査

(ナ-セ-9線)

沿岸定線調査

(ナ-5-2線)

1 2 3

5 8 7 9

1�

11 12 13 14 16 15 17

18 19 2�

21 22 23 2524 26 1 2827 29 3�

31

32 33 34

35 36

1 2

3

4 5

6

7 8

9

1� 11

12 13

14 15 16

17 18

19

2� 21

22

���

���

���

���

���

A B

豊後水道北部 別府湾

伊予灘

豊後水道中部

豊後水道南部

イジョーソニック社製

KFC-3000

)による魚群分布 量とした。

浅海定線調査では、国東半島沖合域および別府湾 内において図

1

に示した

29

定点で、毎月上旬に調 査を行った。調査項目は沿岸定線調査の項目に加え、

COD

NH-N

NO-N

NO-N

PO-P

DO

量 とした。なお、水温、塩分についてはコンパクト

CTD

(アレック電子社製)で測定した。調査に使用した 船舶は、いずれの調査も漁業調査船「豊洋」(

75t

) である。

漁獲量調査では、大分県漁協鶴見支店、米水津支 店および蒲江支店にまき網漁業の水揚げ状況報告を 周年依頼した。また、佐賀関支店についても、釣り 等による漁獲状況の報告を同様に依頼した。

事業の結果

Ⅰ 結果の公表方法

調査結果の概要は、「速報」として漁業者と関係 機関にファクシミリ及び郵送により通報した。また、

海洋観測結果は、中央水産研究所海洋生産部および 関係県試験研究機関等へ伝達した。さらに、

6

ヶ月 ごとに海況とマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイ ワシ、マアジ及びさば類の漁況の見通しを「長期漁 海況予報」として漁業者と関係機関に前記の方法で 通報した。併せて、これらの結果を当試験場のホー ムページ上で公開した。

Ⅱ 海況 1.水温

浅海定線調査:月別に調査定点平均水温の推移を 図

2

に、平年偏差の評価を表

1

に示した。

2008

年前期(

1

6

月)の伊予灘・別府湾では、

3

月と

6

月の伊予灘、

4

月の別府湾で「平年並み」と なった他は、概ね「やや高め」~「高め」傾向で推 移した。

大 分 県 水 試 事 業 報 告

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