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未明の青色光短時間照射がエンドウの生育に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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Mem. Schoo l.B. O. S.  T.  Kinki University  No. 14 : 17 ~ 22 (2004)  17 

未明の青色光短時間照射がエンドウの生育に及ぼす影響

堀 端 章I, 伊 東 卓 爾1, 渡 辺 俊 明2, 松 本 俊 郎2

要旨

自然光と青色光補光を組み合わせた新しい作物生産システムの技術的基礎を構築するため、青 色蛍光灯と透光性太陽電池からなる照明装置を考案した。エンドウ(Pisumsativum L.  'きしゅうう すい, )幼植物に、夜明け前の 30分間青色光を照射したところ、照射した青色光の相対強度が強 くなるにつれて草丈、主茎節数ならびに新鮮重が有意に増加した。未明の青色光短時間照射はエ ンドウの成長を促進することが示された。

1 .緒論

近年著しい発展を遂げた分子生物学は、アメリカを中心とする諸外国では、遺伝子組換えとい うかたちで作物育種に積極的に利用されている。ところが、我が国では、消費市場における組換 え作物への不安感が著しく

5

齢、ため、組換え作物はほとんど普及していなし""0さらに、組換え作 物に対するこのような感情は、社会的な出口を失った分子生物学の発展自体を阻害する要因とさ えなってきている。このような現状に鑑み、筆者らは、分子生物学から得られる有用な知見を遺 伝子組換えとは異なる方法で作物の特性改良につなげ、研究成果の社会への還元を果たそうと考

えた。

植物に青色、赤色あるいは遠赤色の単色光を照射すると、特定の光を受容する受容体からのシ グナノレを受けて活性化される一群の遺伝子の発現パターンが変化し、植物の形態、発育生理、含 有する成分の組成などが変化することが知られている(1)(2)。単色光照射にともなう植物の生理的変 化や遺伝子の活性化に関する詳細な研究が進められた結果、一部の遺伝子については活性化の機 作も明らかになってきているが、これらの研究の多くは1種類の単色光のみσ)科)あるいは複数の 単色光を組み合わせて(5)植物に照射したときの植物の反応を見たものである。しかしながら、作 物の生産を産業として考えるとき、極めて付加価値の高い一部の作物を除けば、栽培環境を完全 な制御下におくこのような方法では経済的に自立し得ない。すなわち、照射によって新しい特性 を獲得した作物の生産を産業として確立するためには、人工光と自然光との混合が不可欠である。

そこで、筆者らは、多くの園芸作物を視野に据えて、遺伝子発現のシグナルとして働く単色光と 自然光とを混合した環境下で、付加価値の高い新形質植物の生産を行うことを考えた。

府高受付 2

4625

1.  民阿位阻聞剛1tofB蜘,io恥 加O110gildSd血白崎,回IUf悶句ity

2.  De]:nentofJntelligentMechanics, K Universi,y1Wakayna649‑64兜,Japan

(2)

また筆者らは、植物が太陽光の全てを生産に利用しているわけではないことに着目し、近年開 発された透光性太陽電池(太陽工業(附 KN38)を用いて、植物が利用していない光を電気エネルギー に変換し、そのエネノレギーを用いて単色光補光を行えば、全体としてエネルギー効率の高い自立 型の生産システムを構築できるのではなし¥かと考えている。図 lは、このシステムの概念図であ

シグ、ナルとして用いる単色光には、

青色光、赤色光、遠赤色光などが考え られる。このうちの赤色光と遠赤色光 では、これらの光を照射することによ って生じるフィトクロム分子の可逆 的変化が遺伝子の発現制御に関わっ ているため、大過剰の自然光条件下で 多少の補光を行ったとしても十分な 効果が得られないと考えられた。これ に対して、赤色光と遠赤色光にみられ るような可逆的反応が関与しない青 色光では、補光の効果が顕著に現れる と期待される。高等植物に青色光のみ を照射した実験では、伸長抑制効果(6)、 気孔開口の促進(7)(8)のほか、開花の抑 制、リンゴ酸の蓄積、アントシアニン 合成の誘導など多様な効果が認めら れている(2)

本研究は、以上の観点から行う研究の端緒として、自然光条件下で栽培されているエンドウに

透光性太陽電池 (出力30W/ば)

太陽工業(槻.KN38 

占竺 L

│ト透過光 く ケ (約10覧)

単色蛍光灯 ational • FL40SBなど

図1 透光性太陽電池と単色光補光を用いた 作物生産システムの概念図

青色蛍光灯を用いて短時間の補光を行ったときの生育の変化を調査して、青色光の補光がエンド ウの発育に与える影響を解析したものである。

2.材料および方法

実験には和歌山県の基幹作物品種の一つであるエンドウ品種 きしゅううすい'を供試した。

2004年11月21日、昼温250

C /

夜温200

C

(12時間/12時間)、湿度750/0に設定した屋外型グロ ースキャビネット内で催芽させたエンドウ種子を育百箱26個に2粒ずつ播種した。そのまま4日

間育苗した後、青色光の照射実験を開始した。青色光の照射時間は、過剰な自然光の存在下では 単色光照射の効果が顕著に現れない可能性、ならびに、実際の栽培におけるコストを考慮して、

未明の5:30から6:00の30分間とした。実験機材の配置は、図2に示すとおりである。スチール

(3)

1 9  

製ラックの上段と下段にそれぞれ

1 2

個ずつの育苗箱を、対照区として同じ室内の青色光が当たら ないところに

2

個の育苗箱をそれぞれ配置した。青色蛍光灯(N

a t i o n a lF L 4 0 S B )

をラック右側に

3

本設置し、このときの各育苗箱における青色光の相対強度は、図3に示すように、最大と最小で 約

2 0

倍の差があった。用いた蛍光灯の分光分布は、図

4

に示すように、約

440nm

に大きなピー クをもち、

4 9 0 n m

以下の紫色や青色の成分が全体の

70%

程度を占めるが、

490nm

以上の緑色から 赤色の成分も30%程度含まれている。単色光の光源としては、分光分布の点で発光ダイオードの 方が優れているが、本研究では実

栽培における導入コストを考慮、

して単色蛍光灯を採用した。

栽培期間中は2 日制こ

t

雇汰したG

10  cmほど生長しところで支柱を立 て、生長に合わせて茎を誘引した。

主茎機擦を容易にするため、日夜芽 は全て取り除し、た。 11月

2 9

日から

185cm 

実験機材の配置 図2

1 2

2 9

日までの問、5日毎に士出擦の 第 l節から主茎先端までの長さ(草 丈)と、主茎の知榔につく 1cm~こ満 たない葉を除いた葉数を調査した。

この主茎の葉数は主茎節数に相当す る。 1月9日に地上部の菊漁主主を誹j 査した。

1 0 0  

80  60 

4 0   2 0  

( ポ

)l hv

mh m 70 

60  世(

50

寸ゎ40 4

← 

30

屯]20 E

10 

7 0 0  

用いた青色蛍光灯の分光分布

( n

600 

m )  

波長 図4

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫   育苗箱の位置

育 苗 箱 の 位 置 と 照 射 さ れ る 青 色 光の相対強度

図3

(4)

3.結果およ

t

賭 察

青色光補光開始後、草丈および、主茎節数は時間の経過とともに概ね直線的に増加したが、青色 光の相対強度が異なる区の間ではその差が次第に拡大した。播種35日後(12月29日)には、図 5に示すように、草丈および主茎節数と青色光の相対強度との聞には5%水準の有意な正の相関が 認められた。このことは、照射した青色光の相対強度が強くなるほど草丈と主茎節数が増加する ことを示している。さらに、草丈および主茎節数は、青色光の相対強度が20までは顕著に増加す るが、相対強度が20を超えたところでほとんど増加が認められなくなる傾向を示していたが、こ の点に関しては、統計上の有意性を検定するに足るデータが得られなかった口

一方、 1月9日における地上部の新鮮重を青色光の相対強度が

5

齢、②および、④と弱し1⑪および

⑫との間で比較したところ、表lに示すように、②および④の新鮮重は⑪および⑫に比べて50%

以上増加を示し、両者の差は

1%

水準で、有意で、あった。

70 

1 4  

トー‑‑ ~‘二.-

e ・ 4~ ・

1 3   吉

60 卜多~----

4 ベ 55

frnt 

50 

語 1 2 1 1  

r=O.56 

45 

40  9 

o  1020 30 40 50 60 70  o  1 0  20 30 40 50 60 70 

青色光の相対強度

図5 播種35日後における草丈および主茎節数と照射した青色光の相対強度との関係

表1.エンドウ地上部の新鮮重 青色光の相対強度

新鮮重

( ρ

処理区

(平均値)

②および④ 52.6  4.36 

⑪および⑫ 3.3  2.73 

以上のように、未明の青色光姐朝間補光がエンドウの生長を有意に偲隼することが明らかになった。そ こで、このような生長倍隼と青色光補光の関係にっし1て考察をすすめた川本実験における青色光の照射

(5)

21 

時聞がわずか30分であり、かっ照射エネルギー量も太陽光に比べて著しく低く 50%を超える素晴糧の増 加を説明するほどではないことから、照射した青色光が単純に光合成

l

こ利用され協吉果として生長量が増 加したとは考えられなしも一方、草丈の伸長と主茎節数の土勧日が同時に認められ、どちらかへの樹齢偏 りがなかったことから、系聞包の伸長と器官分化の俗隼が同組支に進んでいることがわかる。すなわち、こ の生長量の増加は、車問包の伸長と分裂のどちらか一方が主な要因となっているので、はなく、植物体全体の 大きさの増大にほかならないと考えられる。既述のように、青色光の照射は気孔の開度を増すことが知ら れている何例。このことから、未明の青色光補光によって気孔が聞き、日の出直後からのガス交換が俗隼

され首吉果として生長量が勅日したのではなし、かと考えてしも。

成と高野は、キュウリ仰とエゴマ(10)を用いて本研究と同様の詐験を試み、青色光補光による葉面積、ク ロロフィル含量、素晴糧ならびに知l癌度の顕著な土酬を報告している。特に、葉面積と気子L密度の増加 はともに光合成量の増大に貢献し、植物の生長を強く促すと考えられる。青色光照射にともなうこれらの 変化もエンドウの生長量を増加させた可能性もあるが、本実験では、青色光昭射にともなう気子

i

癌度の増 力日は観察されなかった(デLータは示していない)。

4. 帝苦命

本研究の結果、未明にわずミか30分の青色光補光を行うことによって、エンドウの生長量が500/0増力仕す ることが明らかになった。相対強支20程度の補光であれば、耕音面積1m2あたり 40W蛍光灯を2'''' ..3本設 置 付Lばよく、またその点肝剖習も1日あたり30分であることから、システムの導入と運営にかかるコス トは極めて小さいと言える。葉菜類であれば、 50%もの生長量の増加はこのコストを負担し得ると考えら れる。したがって、この捌?の導入は、補光設備のための初期コストを補助する施策があれ除けに検討

~~{直する。

一方、青果防では、生産量の増加だけではなく、食味、鮮度の側寺など品質に関わる部分における罰咽 も要求される。成と高里子9)(10)が樹商しているような気手

L

密度の増加が起こるとすすUま、貯蔵性の面でデメ リットとなる可能性もある。また逆に、葉菜類の葉面積が増加して葉が薄くなれば、ソフトな食感をもっ 新しい食材として脚光を浴びる可能性もある。今後は、青色光の照射によって生育量以外の面で、どのよう な変化が生じるのれまたその変化にともなう市場性の変化に着目して検討を続ける必要がある。

なお本研究は、財団法人樹胡購溜嫡振興財団ならびに近畿大学生物理工学部戦略白銅烈I種)の各 研究助成を受けて実砲したものである。助成を賜った関系創立に厚く御ネしを申し上げる。

5.参考文献

(1)長谷あきら (2001)  フィトクロム研究のたどってきた道、 植物の光センシング"和田正三、

徳富哲、長谷あきら、長谷部光康監修、 pp.34‑38、秀潤社(東京)

(2)飯野盛利 (2001)  青色光受容体研究のたどってきた道、 植物の光センシング"和田正三、

(6)

徳富哲、長谷あきら、長谷部光康監修、 pp.8898、秀潤社(東京)

(3)木村守、鈴木茂敏 (2002)  インゲンマメ初生葉の蒸散と光合成に及ぼす青色光照射処理の影 響、名城大農学報36:1‑6

(4)木下俊則、島崎研一郎 (2002)  青色光による気孔開口と細胞膜H+‑ATPアーゼ、植物の成 長調節37:37‑43

(5)羽生広道 (1992)  光質侭:FR比や青色光など)と植物の光形態形成、農業電化52:27

(6) Goto, N., Yamamoto, K.  .,TWatanabe, M. (1993) Action spec forinhibition of hypocotyl growth of  wild‑句rpeplan andof the hy2 long‑hypocotyl mutant of Arabidopsis thaliana L. Photochem.  Photobio. l57:867‑871 

(7) Sharkey,工D.,Raschke .,K. (1981) Effect of light quality on stomatal opening in leaves of Xanthium  strumarium L. Plant Physiol. 68: 11701174

(8) Karlsson

, 

E. (1986) Blue light regulatiQn of stomata in wheat seedlings. 1. Influence of red background  illumination and initial conductance leve l.Physiologia Plantarum 66:202206.

(9)成日慶、高野泰吉 (1997)  日の出前の青色光と赤色光補光がキュウリ苗の生育と生理反応に 及ぼす影響、生物環境調節35:261‑265

(10)成日慶、高野泰吉 (1997)  人工光下でのエゴマの成長に及ぼす日の出前の青色光、赤色光 補光の影響、植物工場学会誌9:175181

英文抄録

E f f e c t  o f  t h e  S h o r t

圃白

n e I r r a d i a t i o n  o f B l u e  L i g h t   i n   t h e  Dawn  o n  t h e  Growth o f P e a  P l a n

( P i s

umsa的JumL.)

Akira Horibata, Takuji Itoh, Toshiaki Watanabe and Toshiroh Matsumoto 

To construct the technical foundation ofthe new cropping system using short‑time irradiation ofblue light  in addition ωthe natural daylight, we designed the irradiation equipment that consisted of blue fluorescence  light and translucent solar cell. The additional irradiation ofblue light to plantlets of pea (Pisum sativum L.  cultivar Kisyu‑Usui) for a halfhour before daylight influenced the growth ofthe pea plan臼.百四plantheight,  number of nodes on the main stem and fresh weight of the pea plants were significantly increased with the  increase of relative intensity of町adiatedblue light.  The short‑time irradiation of blue light in吐ledawn  might accelerate仕leplant growth of pea. 

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