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日本内科学会雑誌第104巻第3号

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はじめに

血栓性微小血管症(thrombotic microangiopa-thy:TMA)は,微小血管障害性溶血性貧血,破 壊性血小板減少,血小板血栓形成による微小血 管閉塞で発症する臓器障害を 3 主徴とする症候 群であり,その代表的な疾患としては血栓性血 小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytope-nic pupura:TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemo-lytic uremic anemia:HUS) の 2 つ が 挙 げ ら れ る.両者は臨床症状が類似しており,その鑑別 が困難な症例も散見されることから,以前は TTP/HUSとして 1 つの疾患単位として取り扱わ れることもあった.しかし,1998年に止血因子 であるvon Willebrand因子(VWF)を特異的に 切断し,その分子量サイズを減ずる作用を持つ VWF 切 断 酵 素(VWF-cleaving protease: VWF-CP),学術名ADAMTS13(a disintegrin-like domain, and metalloprotease, with thrombospon-din type 1 motifs 13)によって両者が鑑別でき ることが報告された.すなわち,TTPでは同酵 素活性が著減しているが,HUSではほぼ正常で あることが示された.これ以降,TTPにおいて はADAMTS13 とその基質であるVWFを主軸と した病態解析が行われ,その病態はADAMTS13 酵素活性著減により超高分子量VWF重合体の 蓄積が引き起こされ,その結果として生ずる VWF依存性血小板凝集の亢進による全身性血

TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)の

病態と治療

八木 秀男1)  松本 雅則2) 要 旨 TTPは臨床症状として微小血管性溶血性貧血,血小板減少,精神神経症状,腎機能障害,発熱の 5徴候をその特 徴とし,その病態はvon Willebrand因子(VWF)を特異的に切断し,その分子量サイズを減ずる作用を持つ ADAMTS13 酵素活性著減により蓄積された超高分子量VWF重合体によるVWF依存性血小板凝集の異常亢進に よる全身性血栓形成である.その発症様式から先天性(家族性)であるUpshaw-Schulman症候群(USS)と後 天性(非家族性)に分類され,前者ではADAMTS13 遺伝子異常によるADAMTS13 の先天的欠損が,後者では この酵素に対するIgG型自己抗体の産生がその病因である.治療として,USSにはADAMTS13 酵素の補充を目 的とした新鮮凍結血漿の輸注療法が有効であり,後天性TTPでは血漿交換療法に抗体産生の抑制を目的にステロ イド療法が併用され,再発および難治例ではリツキシマブの併用が有望視されている. 〔日内会誌 104:607~614,2015〕 Key words TTP,ADAMTS13,VWF,USS,TMA

1)近畿大学奈良病院血液内科,2)奈良県立医科大学輸血部

The Cutting-edge of Medicine;Pathophysiology and Management of thrombotic thrombocytopenic purpura.

Hideo Yagi1) and Masanori Matsumoto2)1)Department of Hematology, Nara Hospital, Kinki University School of Medicine, Japan and 2)

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栓形成であることが判明した. 一方,TTPとの鑑別が必要となるHUSはその ほぼ 90%が乳幼児や小児に好発する腸管出血 性大腸菌による下痢症に続発する下痢関連HUS で,健康な小児が罹患する急性腎不全の最も多 い原因疾患となっている.その病態は同菌が産 生するShiga-toxin(Stx)(別名ベロ毒素)によ る腎臓を標的臓器とした組織障害と血小板血栓 形成で,感染患児の約 10%がHUSに進展する. また,下痢を伴わない非典型的HUSは全体の 5 ~10%程度認められ,atypical HUS(aHUS)と 呼ばれている.aHUSの病因として肺炎球菌感 染,マイトマイシンCを代表とする抗がん薬に よる薬物性,臓器移植などが知られている.し かし,最近ではaHUSの 70%の症例は,補体制 御因子や血管内皮細胞膜蛋白の遺伝子異常によ るものであることが判明している.

1.TTP

TTPは 1924 年にMoschcowitz1)により初めて 報告された.その症例は16歳の女性で,上肢の 脱力感を初発症状として発症し,貧血と発熱, さらに上下肢不全麻痺と顔面麻痺が出現し,最 終的には 1 週間の経過で肺水腫と昏睡にて急死 している.本症例の病理解剖で肺を除く脳,心, 肝,腎など全身諸臓器の細小血管に血栓が形成 されており,この結果から当時はヒアリン膜血 栓症と命名されていた.しかし,その後も同様 の 症 例 報 告 が 相 次 い だ こ と か ら,1966 年 に AmorosiとUltmann2)が,自検例16例と既報告の 類似する 255 例を解析し,特徴的な臨床症状と して微小血管性溶血性貧血,血小板減少,精神 神経症状,腎機能障害,発熱の 5 徴候を呈する 疾患をTTPと命名した.しかし,その病因並び に 病 態 は 長 ら く 不 明 で あ っ た が,1982 年, Moakeら3)は慢性再発性TTP患者4症例の検討に より,患者血漿中には正常ヒト血漿中に存在す る高分子量VWF重合体(large VWF multimer: L-VWFM)よりはるかに大きな超高分子量VWF 重 合 体(unusually large VWF multimer:

UL-VWFM)(図 1)が寛解期に出現し,急性期 もしくは再発時には消失することを発見した. そして,新鮮凍結血漿もしくはクリオ上清を用 いて血漿交換療法を行うとUL-VWFMは消失す ることから,TTPの病態にはUL-VWFMが重要な 役割を果たしており,患者ではこれらを分解す る酵素活性の低下が関係していることを推察し た.この未知の酵素こそが,後に同定された ADAMTS13 で あ る. 現 在,TTPの 診 断 に は ADAMTS13活性の著明低下(10%以下)が重要 視されている.その発症様式から先天性(家族 性)であるUpshaw-Schulman症候群(USS)と後 天性(非家族性)に大別され,さらに後者は原 発性と基礎病態として妊娠,薬剤,膠原病,悪 性腫瘍,造血幹細胞・臓器移植,HIV(human immunodeficiency virus)などの感染症などに関 連して発症する二次性とに分類されている.先 天性TTPではADAMTS13 の先天的欠損が,後天 性TTPではこの酵素に対するIgG型自己抗体の 産生がその病因であることが判明している.し 図1 VWFマルチマー解析 TTP患者では健常人(NP)には存在しない超高分 子量VWF重合体(unusually large-VWF multim-ers:UL-VWFM)が検出される. 500 15,000 kDa NP TTP Unusually large von Willebrand factor multimers(UL-VWFM)

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かし,二次性のTTPではADAMTS13 活性が著減 しない場合が多く,同活性非著減例はTTPでは なく,TMAと診断されるようになっている.

2.ADAMTS13

ADAMTS13 は,亜鉛型のメタロプロテアーゼ で主な産生細胞は肝星細胞であり,その他にも 血小板,血管内皮細胞,腎臓の糸球体上皮細胞 (podocyte)などで産生されている.本酵素は 1,427アミノ酸残基からなる分子量約19万ダル トンの巨大糖蛋白で,マルチドメイン構造を呈 し,その活性中心は亜鉛キレート領域を含身す るメタロプロテアーゼドメインであり,基質で あるVWFサブユニットのほぼ中心に位置する A2 ドメイン内の 1,605 番目のチロシンと 1,606 番目のメチオニン間のペプチド結合を切断す る.しかし,この切断部位はVWFが非活性型の 球状構造ではA2ドメイン内に埋没しており,高 ずり応力下で活性型である伸展構造になって初 めて外部に露出し,切断可能となる.また, ADAMTS13の立体構造解析の結果から,VWFの 切断にはメタロプロテアーゼからスペーサード メイン(MDTCS)が必須であることが判明して いる.これは,ディスインテグリンドメインと スペーサードメインがVWFのA2 ドメインと結 合することで基質であるVWFを捕捉し,メタロ プロテアーゼドメインによる切断効率を高めて いるものと考えられている.さらに,トロンボ スポンジンやCUBドメインは血管内皮細胞への 結合に重要と考えられている(図2).最近では ADAMTS13 がC末 端 部 分 を 通 じ てVWFと 結 合 し,血液中にVWF/ADAMTS13 複合体として存 在していることが示された. ADAMTS13遺伝子は染色体 9q34 に存在し, 29 個のエクソンから構成されている4).現在ま での先天性TTP(USS)患者の遺伝子解析の報告 から多くのADAMTS13遺伝子異常部位が同定さ れ,これらの変異はエクソン3からエクソン29 にわたって存在し,変異するドメインとしては メタロプロテアーゼドメインとシスリッチドメ インに多く存在することが報告された.しか し,これらの変異はほぼ全てのドメインにわ たって認められていることから,他のドメイン も本酵素の産生ならびに分泌,そして酵素活性 の発現に必要であることが予想されている. USSの遺伝形式の多くは,一方のアレルに1つの ADAMTS13遺伝子異常が存在し,他方には全く 異なる遺伝子異常が存在する複合ヘテロ接合体 であり,少数例ながら,血族結婚により同じ遺 伝子異常により発症するホモ接合体も認められ ている.また,de novo遺伝子異常を示す患者も 図2 ADAMTS13のドメイン構造とその機能 ADAMTS13のドメイン構造並びにその機能を図に示す.S:シグナルペプチ ド,P:プロペプチド,MP:メタロプロテアーゼ,D:ジスインテグリン様 ドメイン,C:Cys-richドメイン,Sp:スペーサードメイン,CUB:CUBド メイン,Thrombospondin-1の繰り返し構造は1~8の番号を付けている.

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報告されている. 一方,ADAMTS13の基質であるVWFは血管内 皮細胞や骨髄巨核球で産生される止血因子であ り,2,050 ア ミ ノ 酸 残 基 か ら な る 単 一 サ ブ ユ ニットがジスルフィド結合によりN末端同士,C 末端同士の様式で多数結合した多重体(マルチ マー)構造を持ち,ずり応力によって球状から 線状の伸展構造となることで活性型となり,血 小板と結合する.その血小板との結合能は, VWFの分子量が大きいほど強いのが特徴であ る.基本となるVWFサブユニット上には,凝固 第VIII因子結合ドメイン,コラゲン結合ドメイ ン,そして 2 種類の血小板結合ドメインが存在 する.VWFは血液中で凝固第VIII因子の「キャ リアー蛋白質」として働くとともに,障害血管 壁ではその修復機転である血小板粘着反応にお ける「分子糊」としての機能を担っている.さ らに,いったん血管が傷害されて出血が生じた 場合には,生体からの血液流出を防ぐために血 管破損部位における止血を目的とした血小板血 栓形成が行われる.このまま血小板血栓が血管 内腔に向かって無限に成長・増大すると,か えって血管を閉塞することによって血流が遮断 され,臓器障害が引き起こされるが,ADAMTS13 はVWFの分子量を制御することで生体にとっ て有害となる過剰な病的血栓形成を阻止してい る.しかし,先天性ならびに後天性原発性TTP 患者ではADAMTS13酵素活性が著減しているた めに,分解されないUL-VWFMはそのまま循環血 中に存在し,微小血管内に生ずるずり応力に よって活性化され,血小板表面に存在するVWF のレセプターであるGPIbを介して血小板と結 合する.引き続いて生ずる細胞内シグナル伝達 により血小板が活性化され,堅固な血小板凝集 塊が形成される.そして,形成された血小板凝 集塊は微小血栓として血管を狭小化するため, 消費性血小板減少の傍ら臓器障害が引き起こさ れ,さらにそこを通過する際に赤血球が破砕さ れ,溶血性貧血が引き起こされる. 浅田ら5)は,TTP患者 23 例と播種性血管内凝

固(disseminated intravascular coagulation:DIC) 患者10例について,各臓器の血栓を抗フィブリ ノゲン抗体と抗VWF抗体で免疫組織染色し, TTP患者での血管内血栓と血管内皮細胞下ヒア リン物質は抗フィブリノゲン抗体では軽度にし か染色されないが,抗VWF抗体では濃染される ことを示した.さらに,電子顕微鏡を用いてTTP 患者で認められた血栓の大部分は脱顆粒し,変 型した血小板から形成されていることを確認し た.一方,DIC患者の血栓はTTPのそれとは全く 逆で,抗フィブリノゲン抗体では強度に,また 抗VWF抗体では薄く染色される像が観察され た5).これらの結果からも,TTPではVWFと血小 板が反応して血小板血栓が形成されていること が証明された.さらに,造血幹細胞移植や悪性 腫瘍に合併する二次性TTP(TMA)においては, その多くがインヒビター陰性で酵素活性もほぼ 正常であるため,その病因としては血管内皮細 胞障害が推定されている.生体内では,血管内 皮細胞はUL-VWFMを産生・放出する一方で,こ れが高ずり応力下で効果的に分解されるには UL-VWFMが内皮細胞表面に部分的に固相化さ れることが必要と考えられている.この結合に は内皮細胞のWeibel-Palade体からVWFととも に細胞表面に発現されるPセレクチンや血管内 皮細胞表面に発現しているintegrin αvβ3 が重要 であると考えられている.しかし,何らかの原 因により広範な内皮細胞障害が加わると,同細 胞 内 のWeibel-Palade体 に 貯 蔵 さ れ て い る UL-VWFMが一挙に循環血中へと大量放出され るも,血管内皮細胞上には結合し得ないために ADAMTS13による効果的な分解が起こらないた め,TTP(TMA)が発症すると推定されている.

3.血小板血栓形成のメカニズム

USSは先天性疾患であるが,成人後に診断さ れる症例が多数存在し,その代表的な誘因とし

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て妊娠がある.USSでは,常にADAMTS13 活性 が著減しているが,妊娠中期~後期にTTP発作 が出現する.これは,非妊娠期と比較してVWF 濃度が増加することにより血小板血栓が形成さ れるためであり,ADAMTS13 のみならず,その 基質であるVWFによってTTPの発症が規定され ていることが推察された. さらに,我々の検討では,全血流動状況下で の壁血栓形成について,ADAMTS13中和活性を 持つ抗ADAMTS13 モノクローナル抗体(A10) を用いて検討を行ったところ,ADAMTS13欠乏 下ではVWF濃度依存性に血小板凝集並びに血 栓 形 成 が 亢 進 す る こ と が 判 明 し た. ま た, ADAMTS13存在下では水平方向に血栓が増大す るのに対して,欠乏下では垂直方向への成長が 顕著で巨大化する傾向が認められた(図3).こ れらの結果から,ADAMTS13は血流の垂直方向 への血栓成長を抑制することにより,血栓の過 剰形成を防ぐ働きを持つことが示唆された.さ らに,志田らは,ADAMTS13によるVWF切断で 露出するVWF A2 ドメインのTyr1605 を特異的 に認識するモノクローナル抗体(N10)を用い て,全血流動状況下での壁血栓形成における ADAMTS13 のVWF切断作用の発現部位解析を 行った6).この結果,ADAMTS13 はVWF依存性 血小板血栓が形成される高ずり速度(1,500 s-1 をさらに上回る12,000 s-1という極めて高いず り速度において,血流に直接暴露され,かつ血 栓成長の前線である血栓表面部位で優先的に VWF切断を行っていることが判明し,この作用 はずり速度依存性に亢進していることが明らか となった.すなわち,細小動脈が傷害されると 直ちに生命維持を目的とした生体からの血液喪 失を防ぐために,高ずり速度下でのVWF依存性 の血小板粘着並びに初期相の血小板血栓形成が 行われる.しかし,このまま血栓が血管内腔に 向かって大きく成長・増大すると,血管を閉塞 することによって血流が遮断され,臓器障害が 引き起こされる.そのため,ADAMTS13 は血栓 の成長によって狭小化した血管内腔に生ずる極 めて高いずり速度下では,VWFを切断すること によって血栓のさらなる成長・増大を抑制し, 血管閉塞機転を回避していると考えられた.こ のように,ADAMTS13は血栓の成長によって変 化するずり応力によってVWFの分子量を制御 し,その機能を調節することで過剰な血栓形成 図3 フローチャンバー実験系を用いた壁血栓形成の3Dイメージ 上段はADAMTS13活性正常で下段は欠乏状態.ADAMTS13欠乏状態では血栓形成がADAMTS13活性正常に比 して増加しており,VWF濃度依存性に血栓形成が著しく亢進している.そして,前者ではガラス板表面を覆 うように血栓が成長するのに対して,後者では垂直方向へ巨大化する傾向が認められた. VWF 100% VWF 250% VWF 500% ADAMTS13:AC < 0.5% ADAMTS13:AC 100% -A10 + A10

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を回避していることが明らかとなった.

4.TTPの治療

先天性TTP(USS)の治療方針が比較検討され た 臨 床 研 究 は な い も の の, そ の 病 態 か ら ADAMTS13酵素の補充を目的とした新鮮凍結血 漿(frozen fresh plasma:FFP)の輸注療法が一 般に行われている.具体的には,血小板数を指 標にして,FFP 5~10 ml/kgを 2~3 週間ごとに 定期投与することによって,TTPの発症を予防 していることが多い.しかし,症例によっては ADAMTS13活性が低下しているが,通常は無症 状の患者も存在し,症状出現時にのみFFPの投 与が行われている症例もある.この場合にも, 腎障害が進行する症例もあることから慎重な経 過観察が必要である7) 一方,後天性TTPの急性期の治療としては血 漿交換療法が通常行われている.カナダのグ ループの前向き研究の結果,血漿交換群は生存 率において有意に血漿輸注群を上回っており, 前者は後者に比して死亡リスクを約 1/3 に減じ ることが認められた.また,治療有効率は血漿 交換群が血漿輸注群の1.85倍と明らかな血漿交 換療法の優越性が示された.一方,血漿交換に おける使用血漿製剤の種類,投与量,さらに施 行回数の検討では,生存率ならびに有効率にお いて統計学的な有意差は認められなかった.こ の結果から,後天性TTP患者の標準治療は血漿 交換療法であることが明らかとなった.その有 効性の理由として,①ADAMTS13 酵素の補充, ②ADAMTS13に対する自己抗体の除去,③正常 なサイズのVWFの補充,④UL-VWFMの除去,⑤ 過剰なサイトカインの除去などが想定されてい る.英国のガイドラインによれば,血漿交換療 法は可及的速やかに導入し,当初は連日施行す ることが推奨されている.その後,血小板数, LDH(lactate dehydrogenase),ヘモグロビンな どの値を指標とし,精神神経症状の改善がみら れ,これらの数値が正常範囲内に回復した後, さらに血漿交換を 2 日間継続し,病状の再燃が な け れ ば 治 療 間 隔 を 広 げ て い く と さ れ て い る8).本邦でも一般には治療開始後 3~5 日間は FFP 50~80 ml/kg/日の血漿交換を連日行い,病 勢が落ち着いた時点で隔日施行に延長してい る.しかし,保険診療では血漿交換の施行回数 は月12回程度までの上限があり,十分な回数が 行えないことが多い.なお,自己抗体の力価が 低いなどの理由により血漿輸注のみで軽快する 症例も散見されるが,施設の都合や重篤な合併 症などで緊急避難的に血漿交換への橋渡しとし て行うこと以外は推奨されていない.さらに, 急性期に血小板数の低下を是正するための血小 板輸血はかえって血栓症を惹起して病状の悪化 を招く可能性が高いため,出血症状によりどう しても必要な場合以外には推奨されない. 抗血小板薬の有用性については,後天性TTP 患者 72 症例を対象に血漿交換療法+ステロイ ド療法を行い,抗血小板療法としてアスピリン とジピリダモールを併用した群(併用群)と併 用しない群(非併用群)の生存率と有効率が後 方視的に比較検討されている9).その結果,後 天性TTP患者の急性期における治療効果の有効 率は併用群で91.4%,非併用群で75.6%と併用 群にて良好であった.15病日における生存率は 併用群が97.2%,非併用群で86.5%と併用群が 有意に予後良好であった.さらに,TTPの再発 予防を目的にチクロピジンを投与された群での 1 年再発率は 6.25%で,非投与群の 21.4%に比 して有意に低かった.この結果から,後天性TTP 患者に対する血漿交換療法とステロイド治療に おいて抗血小板薬であるアスピリン(バイアス ピリン錠®)やジピリダモール(ペルサンチン 錠®)の併用が有効であること,さらに,再発予 防としてのチクロピジン(パナルジン錠®)が有 効であることが明らかとなった.しかし,チク ロピジンは薬剤性TTPの原因薬物の 1 つである こと,さらに,少数例ではあるが併用によって

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重篤な出血症状の合併が報告されているため, 実際には低容量のアスピリンを血小板数が 5 万/μl以上に回復してから投与することが推奨 されている. ADAMTS13に対する自己抗体の産生を抑制す る目的としては血漿交換療法に免疫抑制療法が 併用され,初発例においてはステロイド療法(メ チルプレドニゾロン:1~2 mg/kg/日もしくは パルス療法 1 g/日×3 日間)が行われるのが一 般的である.しかし,再発もしくは難治例に対 しては,初発時のステロイド治療に替わって, シクロスポリン(ネオーラルカプセル®:4~ 6 mg/kg,保険適用外),シクロホスファミド (エンドキサンP錠®:100 mg/日,保険適用外), 硫酸ビンクリスチン(オンコビン注®:初回1~ 2 mg/週 静注,保険適用外)などの投与が経 験的に行われてきた.最近では,再発並びに治 療抵抗性の後天性TTPに対して悪性リンパ腫な どの治療薬であるリツキシマブ(リツキサン 注®:375 mg/m2,保険適用外)の有用性が報告 されている.本剤は抗CD20キメラ型モノクロー ナル抗体であり,細胞表面にCD20を発現してい るBリンパ球に結合し,細胞傷害を与える薬剤 である.当初,CD20陽性のリンパ増殖性悪性疾 患がその治療対象であったが,最近では自己抗 体産生によって引き起こされる特発性血小板減 少性紫斑病や自己免疫性溶血性貧血,さらに後 天性血友病の治療にも有効であることが報告さ れている.海外では標準治療である血漿交換療 法+ステロイド療法に抵抗性の再発および難治 性の後天性TTP25症例を対象としてリツキシマ ブを血漿交換療法との併用で週 1 回投与を計 4 回行い,その有用性と安全性を後方視的に検討 したところ,全25症例で寛解が得られ,寛解到 達日は中間値で初回のリツキシマブ投与から 11病日目であった10).治療に必要であった血漿 交換の施行回数はリツキシマブ投与前の 13 回 に対して,投与後は 9 回に減少した.最終的に 25 症例中 21 症例(84%)でADAMTS13 活性は 正常化し,20 症例で自己抗体が著明に減少し た.投与後の観察期間は中央値 10 カ月(最長 33 カ月)と比較的短期間ではあるが,再発は 1 例も認められなかった.リツキシマブ投与時の 副作用は通常予防に用いられている前処置にて 対処可能であり,感染症の合併も認められな かった10).このように,リツキサン治療が有効 である理由としては,ADAMTS13 に対するIgG 型自己抗体を産生している特異的Bリンパ球を 傷 害 し, 排 除 す る こ と に よ り, 早 期 か ら ADAMTS13活性の回復が得られ,その状態が長 期間維持されるためと推察されている.

おわりに

最新の知見によりTTPの病因並びにその病態 が解明されているが,いまだ不明な点は多く, 今後もさらなる研究によりその全貌が明らかに なっていくことが期待されている.治療につい てはリコンビナントADAMTS13 製剤が開発さ れ,海外にて臨床試験が開始されている.リツ キシマブについては,本邦でも再発および難治 性の後天性TTP治療として医師主導臨床試験が 現在進行中であり,早期の承認が得られること が期待されている. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:松本雅則;講演 料(旭化成ファーマ)

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文 献

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4) Levy GG, et al : Mutations in a member of the ADAMTS gene family cause thrombotic thrombocytopenic purpura. Nature 413 : 488―494, 2001.

5) Asada Y, et al : Immunohistochemistry of vascular lesion in thrombotic thrombocytopenic purpura, with special reference to factor VIII related antigen. Thromb Res 38 : 469―479, 1985.

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参照

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