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博士(工学)陳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)陳 学位論文題名

遺伝的 アルゴリ ズムの 原子炉異常診断および      放 射線防護 最適化 への応用

学位 論文内容の要旨

火火

  遺伝的アルゴリズム(GA)は,ダーウィンの進化論の発想に基づいて生物進化の過程を抽 象化したアルゴリズムであり,多点情報を利用した確率的探索法の一種である.80年代後 半から90年代に入ってから,遺伝的アルゴリズムは新たな最適化または探索手段として,

さまざまな研究分野への試みが多くなってきた.原子力工学においても,GAの特有な探 索能カを発揮できるような問題が多数存在する,しかし,現状では,このような応用例は まだ非常に少ない.本論文では,原子炉異常診断システムにGAで学習させたニューラル ネットワークを診断手段として用いる問題,および被曝作業場所の作業員配置最適化問題 に、複数の評価関数とハードな制約条件を用いた遺伝的アルゴリズムを適用した,それら の応用を通じて,原子力工学分野における遺伝的アルゴリズムの有効性を実証したもので ある.

  本 論 文 は5章 か ら 構 成 さ れ て お り , 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .   第1章は序論として,本論文の研究背景と目的にっいて述べた,原子力工学分野におけ る新しい学習・探索手法の応用状況を概説し,そしてGAの原子力分野への導入の可能性 および妥当性を説明した.具体的に,本論文は以下に示す原子力工学における非常に重要 な問題にGAを適用した.

OGAを学習手段としたニューラルネットワーク(NN)を原子炉異常診断システムへの応用.

◎放射線被曝作業の作業員配置最適化問題へのGAアプローチ.

  第2章で は, 遺伝的アルゴリズムの基本的な構成,動作例,現在の応用状況およびGA をバックアップする基本的な理論「スキーマ理論」にっいて詳述した.GAの動作例とし て ,国 際放 射線 防護 委員 会報 告(ICRP) 37の 付録Aにある「放射線源に対する単純な平 板遮蔽体の設計による放射線防護の最適化の代数の例」を用いて,GAの動作状況を説明 し,そして従来の複雑な微分計算による手法と比較して,GAの簡易性と有効性を確かめ た.

  第3章で は,GA学習NNの 原子 炉異 常診 断シ ステ ムヘ の応 用に っい て述 べた.ニュ‥

ラルネットワーク(NN)の原子炉異常診断への応用は,炉雑音解析法に基づいて,原子炉出 力雑音のパワースベクトル分布に現れるどークやレベルの高低をNNで識別することによ って,原子炉異常状態の診断を行うことが多い.しかし,NNは基本的に局所探索であり,

解空間の現在点の近傍から次の探索点を探索する方法である.よって,局所解に落ち込み やすい,収束速度が遅いなど問題点がある.一方,GAは探索過程中,角畢空間上に複数の

622ー

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  探索点を設け,選択淘汰,交叉.突然変興など遺伝子操作によって次の探索点群を生成す   る,そこで,GAのこの全域的な多点探索の特徴を活かして.NNのfおJ題点を改良するため   に,NNの学習手段にGAを用いた.

    本 研 究 に用 いら れたGA学習 の尖 数表 現法 では ,NNのパ ラメ ー夕 (ノ ード のし きい値   と りン クの 重み )を ある 一定 の順 序で並 べ,得られた一次元の実数配列をGAの染色体と   す る, 評価 関数 には ,NNの学 習誤 差自乗 和(TSSE)を用いる.進化過程の初期集団は,密   度分布関数がe  IIxuである乱数系列によって発生する.遺伝予操作としては,ノードによる交   叉とノードによる突然変異を取り入れた.

  本 研 究 は ,GA学 習NNの 原 子 炉 異 常 診 断 へ の 応 用 の 一 例 と し て , 高 速 増殖 実験 炉「常 陽」 のシ ミュ レー タを 用い て, 制御 棒異常 振動と冷却材異常流動の診断を行った.学習さ せ た ニ つ のNNに そ れぞ れ 検 証 パ タ ー ン を 与 えて ,と もに100% 診断 に成 功す るこ とがで き た . ま た 本 研 究 は, 比 較 の た め , 同 じ 構 造 の 制 御 棒 異 常 診 断NNに 対 して ,GA学習法 と2種類 のバッ クプ ロパ ゲー ショ ン法 (逐 次修 正法 と修 正モ ーメ ント法 )との学習効率の 比 較 を 行 っ た. 比較 から ,GA学 習法 は局 所解 に落 ち込 みに くい ,学 習精 度が 高い ,また ある 一定 の世 代に 至っ てか らの 収束 速度が 速くなることがわかった.このことから比較に 使用 した2っの 方法 より 正確 に診 断す るこ とが 可能 であ った .問 題が複 雑性になると,こ れらの利点がより顕著になることが期待できる.

  第4章 では, 放射 線被 曝作 業の 作業 員最 適配 置問 題へ のGAアプ ローチ にっいて述べた.

放射 線防 護に 関す る最 適化 問題 は, 従来主 に費用一便益解析法に基づいて取り上げられて きた .し かし ,放 射線 防護 の実 施に おける 現実的な問題においては,顧慮すべき制約条件 が多 く, 莫大 な探 索空 間を もた らす .その 上,金銭で換算し難しい条件もあるし,互いに 矛盾 する 条件 が存 在す る可 能性 もあ る.単 一の金銭という評価基準による最適化が難しい で あ る こ と が普 通で ある .本研 究は ,GAが複 数点 探索 がで きろ こと ,問 題に 対し て厳密 な数 学表 現を 必要 とし ない こと ,最 適解探 索に発見的な考えやエキスパートの知見を容易 に取 り入 れる こと がで きる など の特 徴を利 用して,放射線作業者の作業配置の最適化問題 に対して適切な進化モデルを提案した,

  本 研究 は, 実際 の配 置中 に考 慮す べき制 約条件に基づいて,放射線作業配置モデルに次 のような制約条件を考えた:1)各作業の作業時間に関する要求:2)作業員の線量限度の制 限:3)作業場所の線量拘束値の制限:4)集団線量を最小化にする要求;5)作業員の作業時 間の制限:6)特殊技能の要求;7)悪環境の作業時間の制限;8)作業経験の要求;9)作業中の 作業場所移動を最小化する要求.

  GAを 適 用 する とき に, 探索空 間を 縮小 する ため に, ハー ドな 制約 条件 の概 念を 取り入 れた.ハーードな制約条件は,進化過程中すべての染色体が満足しなけれぱならない条件で ある .そ れ以 外の 条件 をソ フ卜 な制 約条件 とし,問題に対する重要度によって優先度をつ け た . 作 業 場 所x作 業 員 の 二 次 元 行 列 をGAの 染色 体と した .評 価関 数と して ,優 先権順 序で 以下 のニ つの関数を用いた:a)違反された制約条件の違反の程度にそれぞれの優先度 を乗 じた もの の総 和:b)作 業中 作業 場所 移動の回数.遺伝子操作には,3種類の突然変異 と1種類 の交叉 を取 り入 れた .ニ こに 用い られ た突 然変 異は ,親 染色体 のサブマトリック スを 再配 置す るこ とに よっ て行 うこ とが特 徴である.また,ハードな制約条件を維持する た め , 初 期 化 過 程 と 遺 伝 子 操 作 に そ れ ぞ れ の 修 正 ア ル ゴ リ ズ ム を 取 り 込 ん だ .   本 手 法 を20人 の 作 業 員 を10ケ 所 の 作 業場 所 に , お よ び12人 を5ケ 所に 配 置 す る 問 題 に適 用し ,そ の有 効性 を確 かめ た. また, 目標計画法邦よびシブレックス法と比較するこ と に よ っ て ,GAアブ ロー チが, 放射 線防 護管 理者 にと って はよ り望 まし い手 法で あるこ

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とを確認した.本手法によって,GA は制約条件の厳しい問題にも適用できることを証明

し .

GA

は 原 子 力 工 学 分 野 の 数 多 く の 最 適 化 問 題 に 応 用 で き る こ と を 示 す .

  

5

章 は 結 論 で あ り , 本 論 文 の 各 章 に お い て得 ら れ た 結 果 を 総 括 し て いる .

  

本研究は.遺伝的アルゴリズム特有な全域的な多点探索手法を利用し,原子炉異常診断

システムと放射線被曝作業の最適化配置問題に適用した.そして,それぞれの従来の方法

との比較によって,GA の優越性を示した.それらの応用を通じて,GA は原子力工学分野

にも十分通用できることを確かめた.

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学 位論文審査の要旨

主 査  教 授  成 田 正 邦 副 査  教 授  榎 戸 武 揚 副 査  教 授  沢 村 貞 史

副 査  教 授  成 田 裕 一 ( 秋 田 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 )

学 位 論 文 題 名

遺伝的 アルゴリ ズムの 原子炉異常診断および 放射線防護最適化への応用

  原子 カ シス テム にお いて は、多くの制約のもとで近似的な 最適解や最良の探索解を必要 と する こ とが 多い 。そ の中 でも、原子炉の異常診断と放射線 防護の最適化は、現在の最も 重 要な 探 索問 題の2つ の例 であ る。 本 論文 では 、こ の2つの 例に 、 最近 、活 発に 研究され てい る遺伝的アルゴリズム(GA)を適用したものである。

  遺伝 的 アル ゴリ ズム は, 生物遺伝子の次世代への伝達を模 擬した、確率的探索法の一種 で あり 、 多点 探索 の新 しい 最適 化ま たは 探索 手段 であ る。 原子 力 工学 へのGA応 用は、最 近活 発化してはいるが、特有な探索能カを発揮できる問題へ の応用例はまだ非常に少なぃ。

本 論文では,原子炉異常診断シス テムにGAで学習させたニューラルネットワ丶一Iクを診断 手 段と し て用 い, また 被曝 作業場所の作業員配置最適化問題 に複数の評価関数とハードな 制 約条 件 を用 いた 遺伝 的ア ルゴリズムを適用した。それらの 応用を通じて、原子力工学分 野に おける遺伝的アルゴリズムの有効性を証明している。

  本論 文 は5章か ら構 成さ れて いる 。1章 、2章 は研 究背 景とG八 の 概要 を放 射線 の平板遮 蔽 体 遮 蔽 板 の 厚 さ 決 定 を 例 に 説 明 し た も の で あ る 。著 者 の独 白のGAの 応用 は、3章 と4 章に 示されている。

  3章では、GAを学習手段としたニューラルネットツーク(NN)のお,l『、子炉異常診断シス テ ムヘ の 応Juにつ いて 述べ ている。診断方法は、原子炉出力 記録に現れる興常雑音を検出 す るこ と であ る。 出力 信号 のパ ワー スペ クト ル分 布に 現れるピークや形状のパターンをN Nで 識 別 す る こ と に よ っ て, 尿子 炉状 態の 診断 を行 う。 こ の際 、NNが局 所探 索に 陥る こ と を 避 け る た め に 、NNの 学 習 手 段 と し てGAを 利 用 し て い る 。GAを 学 習 手 段 に 使 用 す る ため に 、NNのノ ード とり ンク の1次 元配 列法 、評 価関数、 初!朝集団の発生などに独自 の 方法 を 導入 して いる 。こ のような独自の方法を用いた結果 、高速実験炉「常陽」シュミ レ ー タ に よ る2つ の 実 験 、 制 御 棒 異 常 振 動 と 冷 却 材 異常 流動 の診 断に100% の診 断を 得

‑ 625

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ている。

比較のために行った,同じ構造の制御棒異常診断NNに対して,GA学習法はバックプロパ ゲーション法と比べて局所解に落ち込みにくい,学習精度が高い,またあるー定の世代に 至ってから,収束速度が速くなるという知見が得られている。

  4章では、放射線被曝作業の作業員配置最適化問題へGAを適用している。国際放射線 防護委員会は、放射線防護体系は正当化、最適化、線量限度の順に充たされなければなら ないと勧告している。最適化は2番目に充たすべきであり、これには,従来、主に費用―

便益解析法に基づぃて行われてきた。  

  本論文はGAが複数点探索ができること,問題に対して厳密な数学表現を必要としない こと,最適解探索に発見的な考えやエキスパートの知見を容易に取り入れることができる などの特徴を利用して、放射線作業者の作業配置の最適化問題に対して適切な進化モデル を適用し成功している。

  実際の作業者の配置中に考慮すべき制約条件は非常に多いが本論文では9個の制約条件 に基づく例を解析している。GAの染色体は二次元行列を採用している.評価関数は,優 先権順序をっけたのニつの関数を用いている。進化過程中すべての染色体が満足しなけれ ばならない条件をハードな制約条件として取り入れ、探索空間を縮小することに初めて成 功している。それ以外のソフトな制約条件には,問題に対する重要度によって優先度をつ けている。また突然変異は,親染色体のサブマトリックスを再配置することによって行う という試みも行っている。

  以上のような新しい試みを、放射線作業員の作業場所配置問題に適用し成功している。

その結果は、目標計画法およびシプレックス法と比較することによって、GAアプローチ が , 放 射 線 防 護 管 理 者 に と っ て は 望 ま し い 手 法 で あ る こ と を 示 し て い る 。   第5章は結論である。

  以上のように本論文は、遺伝的アルゴリズムを原子炉異常診断の雑音スペクトルのパタ ーン認識のための学習手段に用いて良好の結果を導き、また放射線作業の最適配麗問題に も適用して実用上、他の手法に比較して迅速に近似解が兄っかることを示したもので原子 力 工 学 及 び 数 理 解 析 学 の 進 歩 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照