• 検索結果がありません。

博士(農学)寺島和寿 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(農学)寺島和寿 学位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(農学)寺島和寿 学位論文題名

ナラタケ属における分子系統および遺伝的変異に関する研究

学位論文内容の要旨

  担子 菌の ナラタケ属(Armillarta)は樹木に対して根腐れ病を引き起こすことが知ら れ てい る。 また 、白 色腐 朽、 ラン科 植物 との共生、他の菌類への寄生などの生態的特 徴 を 有 レ て お り 、 森 林 生 態 系 に お い て 重 要 な 位 置 を 占 め て い る と 思 わ れ る 。   ナラタケ属のArmillaria mellea sensu latoは形態的および生態的に非常に変化の富 ん だ種 とし て認 識さ れて いた 。その ため 、この種は生物学的種の概念により種の再検 討 が 為 さ れ 、 現 在 、 世 界 的 に 約30種 、 日 本 では9種の 生物 学的 種に 再編 成さ れて い る 。本 研究 では 、ま ず、 日本 のナラ タケ 属の系統学的位置を決定するためにりボソー ムDNAの 遺 伝 子 間スペ ーサ ー(IGS)領域 に基 づく分 子系 統学 的解 析を 行な った 。そ し て 、IGS領域 の制 限酵 素断 片長 多型 (RFLP)およびAFLP (amplified fragment length polymorphism)の 解 析 に よ り 、 種 内 お よ び 種 間 の 遺 伝 的 変 異 の 解 析 を 行 な った 。

1〕 リ ボ ソ ー ム DNAの IGS領 域 の 塩 基 配 列 に 基 づ く 分 子 系 統 学 的 解 析   日 本の ナラタ ケ属7種 のIGS領域の塩基配列を決定し、その塩基配列とョーロッパお よび 北ア メリカ の種 の既 知の 塩基配列とを、近隣結合法により分子系統学的解析を行 なっ た。 その結 果、 ナラ タケ 属の12種 は3っ のク ラス 夕‑  (A. ostoyaeクラスターヽ A. gaILLcaクラスターおよびA. melleaクラスター)に分かれることが示された。日本 のA. ostoyaeはA. ostoyaeクラスターに、A. jezoensis、A. singula、A. sinapina、 A. cepistipesおよびA. gallicaはA.gallicaクラスターに位置することが明らかになっ た。これにより、日本のみで報告のあるA. jezoensisおよびA. singulaの系統学的位置 が初 めて 明らか とな った 。ま た、日本のA. mellea subsp. nipponicaはョーロッパお よび北アメリカのA. meLlea sensu strictoと共にA. melleaクラスターに位置している ことが示唆された。

2) IGS領 域の 制限 酵素 断片 長多 型(RFLP)

  ナ ラタケ属の生物学的種の同定には、新鮮な単胞子分離菌株が必要である。レかし

(2)

ながら、ナラタケ属の多くの種では子実体の栽培が難しく、新鮮な単胞子分離菌株を 得ることは困難である。そのため、ヨ一口ッパおよび北アメリカにおいて、IGS領域の RFLPの解析による生物学的種の簡易同定が検討されてきた。本研究では、北海道の6 種 に対してIGS領域のRFLPの解析を行なった。その結果、制限酵素AluIおよびDdeI を用いたIGS領域のRFLPの解析により、A. mellea subsp. ntpponica、A. ostoyae、 A. gallicaお よ びA. stngulaの4種 を 同 定 で き る こ と が 明 ら か に な っ た 。

3)AFLPによる種内の遺伝的変異の解析

3‑1. Armillaria ostoyae(ヘテ口夕リズムの生活環)における遺伝的変異の解析   単 胞子 分 離菌株 および同一 林内の菌株 に対して、AFLP (amplified fragment length polymorphism)の適用を検討した。その結果、単胞子分離菌株同士は全て区 別でき、更に、特定林内において同一の菌株が分布レている範囲を決定することが可 能であった。

  AFLPの ナラタケ属 への適用は本研究が初めてであり、RAPD (random amplified polymorphic DNA)に比べて、より多くのDNA断片を再現性良く検出可能であった。

本研究でのAFLPの検出には、Texas Redで螢光標識した選択的プライマーを用いてお り 、 従 来 の 方 法 よ り 容 易 に プ ラ イ マ ー の 条 件 設 定 が 可 能 と な っ た 。

3‑2. Armtllana mellea subsp. nipponfca(ホモタリズムの生活環)における遺伝的 変異の解析

  種内の遺伝的変異は、その種の生活環に大きく影響を受ける事が予想される。その ため、単胞子分離菌株と子実体分離菌株のAFI´Pを比較することにより、この種の生活 環の中で不明な点について検討レた。その結果、両者のAFLPパターンは、ほぼ同一で あり、この種は擬似的な無性的生活環(二次的ホモタリズム)ではなく、完全に無性 的な生活環(一次的ホモタリズム、アポミクシスなど)を持つこ―とが示唆された。

  日本各地から採取された11菌株に対レて、AFLPパターンに基づく平均距離法による 解析および主座標分析を行なった結果、日本において無性的に分布域を広げた遺伝的 に 異 な る 5っ の グ ル ー プ が 存 在 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    寺澤    實 副査    教授    三浦    清 副査   助教授   小島康夫

学 位 論 文 題 名

ナラタケ属における分子系統および遺伝的変異に関する研究

  本 論 文 は6章 か ら な り 、 図25、 表10、 文 献93を 含 む 頁 数113の 和 文 論 文 で あ り 、 別 に 参 考 論 文2編 が 付 さ れ て い る 。

  ナ ラ タ ケ 属(Armdlaria)は 世 界 中 に 広 く 分 布 レ て お り 、 樹 木 に 対 し て 根 腐 れ 病 を う き 起 こ す 担 子 菌 で あ る 。 ま た 、 森 林 生 態 系 に お い て 様 々 な 働 き を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る 。

  ナ ラ タ ケ 属 のArmilLarLa mellea sensu lato1980年 代 以 降 、 生 物 学 的 種 の 概 念 に よ り 種 の 再 検 討 が 為 さ れ て き た 。 現 在 ま で に 、 世 界 的 に は30種 、 日 本 で は9種 の 生 物 学 的 種 が 報 告 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 、 ま ず 、 日 本 の ナ ラ タ ケ 属 の 系 統 学 的 位 置 を 決 定 す る た め に り ボ ソ ー ムDNAの 遺 伝 子 間 ス ペ ー サ ー(IGS)領 域 に 基 づ く 分 子 系 統 学 的 解 析 を 行 な っ た 。 そ し て 、IGS領 域 の 制 限 酵 素 断 片 長 多 型(RFLP)お よ びAFLP (amplified fragment length polymorphism)の 解 析 に よ り 、 種 内 お よ び 種 間 の 遺 伝 的 変 異 の 解 析 を 行 な っ た 。 研 究 成 果 は 、 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。

1) リ ボ ソ ー ム DNA IGS領 域 の 塩 基 配 列 に 基 づ く 分 子 系 統 学 的 解 析   日 本 の ナ ラ タ ケ 属7種 のIGS領 域 の 塩 基 配 列 を 決 定 レ 、 そ の 塩 基 配 列 と ョ ー 口 ッ パ お よ び 北 ア メ リ カ の 種 の 既 知 の 塩 基 配 列 と を 、 近 隣 結 合 法 で 分 子 系 統 学 的 解 析 を 行 な っ た 。 そ の 結 果 、 ナ ラ タ ケ 属 の12種 は3っ の ク ラ ス 夕 一(A. ostoyaeク ラ ス タ ー ヽ A gallicaク ラ ス タ ー お よ びAmelLeaク ラ ス 夕 一 ) に 分 か れ る こ と が 示さ れ、 日本 の み で 報 告 が あ るA.  jezoens西 お よ びAsingulaAgallfcaク ラス 夕一 に位 置す るこ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た 、A. mellea subsp.nLppontcaは ヨ ー 口 ッ パ お よ び 北 ア メ リ カ のA. mellea sensu strictoと 共 にA. melleaク ラ ス タ ー に 位 置 し て い るこ とが 示唆 さ れ た 。

2 IGS領 域 の 制 限 酵 素 断 片 長 多 型(RFLP)

(4)

  ナラタケ属の生物学的種の同定には、新鮮な単胞子分離菌株が必要である。しかレ ながら、ナラタケ属の多くの種では子実体の栽培が難しく、新鮮な単胞子分離菌株を 得ることは困難である。ヨーロッパおよび北アメリカにおいては、IGS領域のRFLPを 用いた生物学的種の簡易同定が検討されてきた。本研究では、北海道の6種に対して IGS領域のRFLPの 解析を行な った。その 結果、この 方法によりA. meLlea subsp.

nipponica、A. ostoyae、A. gallicaおよびA. stngulaの4種を同定できることが明らか になった。

3)AFLPによる種内の遺伝的変異の解析

3‑1. ArmdlarLa ostoyae(ヘテ口夕リズムの生活環)における遺伝的変異の解析   単胞子分離菌株および特定林内から分離された菌株へのAFLPの適用を検討した。そ の結果、単胞子分離菌株同士は全て区別できた。更に、特定林内において同一の菌株 が分布している範囲が決定できた。

  AFLPのナラタケ属への適用は本研究が初めてである。また本研究でのAFLPの検出 には、Texas Redで螢光標識した選択的プライマーを用いており、従来の方法より容 易にプライマーの条件設定が可能となった。

3‑2. Armillaria mellea subsp. ntppomca(ホモタリズムの生活環)における遺伝的 変異の解析

  単胞子分離菌株と子実体分離菌株のAFLPを比較することにより、この種の生活環の 中で不明な点について検討した。その結果、両者のAFLPはほぼ同一であり、この種は 擬似的な伽!I性的生活環(二次的ホモタリズム)ではなく、完全に無性的な生活環(‑

次 的 ホ モ タ リ ズ ム 、 ア ポ ミ ク シ ス な ど ) を 持 つ こ と が 示 唆 さ れ た 。   更に、日本各地から採取された11菌株のAFLPを解析した結果、日本において無性的 に分布域を広げた遺伝的に異なる5っのグループが存在していることが明らかになっ

  日本のナラタケ属の分子系統学的解析は、ナラタケ属における系統分類の確立のた めの重要な知見である。また、IGS領域のRFLPの解析は、簡易で正確な種の同定を可 能とし、ナラタケ属の引き起こす根腐れ病の診断に大きく貢献すると考えられる。更 にAFLPの解析は、ナラタケ属の樹木への感染経路の解明および種内の詳細な遺伝的変 異の解析に有効な手段である。これらの解析方法および得られた知見は、ナラタケ属 の樹木病理学的研究また生態学的研究に対して、より深い理解もたらすものと期待さ れる。

  よって審査員一同は、寺島和寿が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有す るものと言忍めた。

参照