20
〔臨床実験〕
(東京女医大野・第23巻第3号頁78−81目召禾口?8年 8 月)再生:不能性貧,血の一一』刮:検仮1
東京女子医科大学小児科教室 (主任磯田教授) 河 村 美 代 子 カワ ムラ 1 ヨ コ (受付 昭和28年3月2El )L 緒 言
本病はエールリツヒが1888年に命名したもので 彼は高度の貧血で幼若赤血球出現の乏しい症例に 遭遇し,骨髄の萎縮を予想し,琵後剖検して予想 が適中したので,之にAp玉a§tische Anamieの名 を与えた。爾来種k・の名称が提唱され,Aleukia haemorrhagica (Frank), Panmyelophthiese(Mdckel), Aregenerative Anilmie (Naegeli)
又Asthenische AnamSeとも呼ばれるq本症は
その血液所見が幼若赤血球を欠如せる著明の貧血 で,白/fiL球及i位小板減少を伴い,淋IE球は比較的}N酬年
増多を示し,’その主要なる臨床症候は高度の蒼白, 出血性素因を現わし,有熱を以て経過し,予後不 良なることを特徴として居り,可成稀な疾患に属 している。 本症の報.告例は大正6年の入沢;古賀氏以来年 平均5,6例つつで,熊大内科の統計的報告による と昭和ユ7年迄に我国の報告例はユ80例を算ぺ,そ の内小児はユ9例である。昭和ユ7年以後の報告例を 探求したる処56例を得たがその中に小児が縫例あ .つた。即ち私の知る範囲では本邦に於ける小児期 の報告例ば今迄に総計30例で,此の内剖検例は昭和8年以来は僅かに6,7例に過ぎない。
1 2 3 4 5 e6 7 8 9 10 11 ユ2 13 14 15’第1表 小・児期の報告例
蘭勲嘉陣到酬N酬年冨「轍者陣N
隊正1脚法
’ ゲ 13年 昭和2年 ll .t tl ゲ ヴ ll lf t/ 11 tf r/ r1 3年 6年 6年 7年・ s年 8年 9年 9年 10年 11年 12年12
厭
惇
窟
橋 置 山 鍋 里 崎 岡本・佐多1北
村 8年1.1(三
豊 ・仲 渡 詫 川 上 田 ± 辺 摩 江 13j 13j 2m 12j 4m lj IO.m 7j’ 4m 8j 5m 4i 11m 10j 5m 2j 31 10j 10」 4j 11m 13j 7m 5j 1rr. i si}一 1劉
9
9
e
e
合8
・8 舎e
6−e
16 17 18 19 20 ?.1 22 23 24 25 26 27 28 29 30昭和12年伏
〃 12年 ‘冨 金〃12年1”
〃12年1太.
レ』〃・2剣松
ゲ 12年 ;宮1 f
グ fl ヴ ヴ ll グ ll I/ t/ ユ3年 16年 16年 17年 17年 18年 18年 26年 26年 神 詣 i ti 菅 i横 i門 大 1福 tt 性江・・214m ♂
原 ユ1j . … ♀4j 9m Gi
・ r l田 611m .♀i
本 12j 5m l ♂ !原ゴ前・・」・皿一♂1
71 sm 1 9 i12」3,ni舎
原 9j l♂
Lli I 3J di:・m 1 [{P一脇・2j・mi♀}
矢 7j ・, ts 1田 2」3m、♂{
,i i 61
78 一21 遇k’本年5月本症と思われる症例に遭遇し剖検に 依て確め得たので鼓に報告する。
2・症
例
(患者)久0雄03才5ケ月の男児(昭和23年10月 5日生) (初診)昭和27年5月28日(死亡)同年8月4E、 (主訴)全,身蒼白及四肢に於ける皮膚出血 (家族歴)父母共に健在。・母方の伯母漆激症の・イマ チスで死亡して居る他,血族に、血液疾患,』出血性素質 を認めず,結核性疾患,梅毒も否定された。兄弟3入 で患児は末子,他は健在である。 (既往歴)生後2時聞にして繍出」血があり容易に止り 難く,輸血して漸く止ったそうである。その後特に出 血性素質は見られなかった。生後6ケ月の頃重症消化 不良症を,1才頃肺炎を患ってサルファ剤を使用した が一時的であったと云う。生来色白な点が他の兄弟と 異っていた。 (現症歴)本年2月下旬,顔色が黄味を帯びて来たこ とに気付き寄生虫病を疑われたが虫卵無き為そのまま 放置しておいた。3月下旬転んで鼻を打ち,靱血多量 あり,其後毎日少量つつ続き,血液検査により赤血球 減少と琳巴球増多があると云われた。4月16目より輸 血50ccつつ6回行.・劔血は止った。4月下旬脊負うと 下肢に出血斑を現す様になり,5月中旬再び多量の隙 白あり輸血に依って止った。その後も輸血を1乃至3 日おき一lc続けた。5月下旬より発熱37。C∼38DC,食 慾不振となり5月16日靱血あ1) ,輸血の為上肢を繋っ た時その前方に点状出血多数現れた。その頃より発熱 39。Cにも及ぶ様になり15月27日当科に入院した。 (入院時所見)栄養状態不良,疲労様顔貌を呈し 稽爵痩せているが呼吸脈搏には異状ない。皮膚は 蝋様蒼白で点状出血が下顎頬部に2∼3コ,前回に 多数見られた。口唇及爪IC lir,.色なく結膜亦貧.翻犬 で舌に白苔を認める。歯齪出血なく咽頭正常,体 温β9。C,淋巴腺腫張なく,頸部に:独楽音著明,心 臓に収縮期雑音を聴取したがX線では異常を認め ない。一肺は肩幅打診X線で正常,肝白熊に触れす。 四肢の関節には異常を認めなbo 並L液は赤血球ユ30万,白.血球壬000,血色素(ザ 」リー)37鬼,血色素係数ユ.4,血小板ユ8、400,出 血持闇23分IO秒,凝固時制4分。白血球分布は中 性嗜好36%,淋巴球63%エオジン嗜好ユ%で,塩 基性嗜好白血球,有核赤血球,網状織球を認めな い。ヘマbクリツト値ユ4%,赤」血球容積ユ08立方 ミクPン,」血型0型。 (入院後の検査事項)ルンペルレーデ氏現象陽 性,赤血球抵抗は正常(e・4%・一〇.28%)謡旺ユ02∼ 54mm/Hg,便の潜tht反応弱陽性,ユ2指腸虫卵(塗 抹及培養)及颯虫卵は共に陰性。尿ウロビリノー ゲン弱陽性。ツベルクリン反応,ワッセルマン反 応何れも陰性,tilL液の胆汁及び萄葡糖ブ■ヨン培 養も陰性であった。 」虹像の経過は第二表の如くであるQ (臨床診断)以上の如き臨床症状と血1液所見か ら再生不能駅馬壷と診断した。. (経過の大要)本症の療法としては輸血より外 に有効的療法はないと考えたが葉酸製剤,葉緑素 ’製剤,ビタミンC,K,P,ノセチン,、還元鉄,カル シウム,肝臓製剤骨,髄製剤,等種々の増一血を輸血 と共に試みた。輸血は大体隔日50ccつつ行った。 熱ぱペニジリンで一時下降し,微熱を続けたが 入院10日目(5月 16 a)よ1) 37.5。C∼39.5。Cの弛張 熱がつづき,水溶性ペニシリン,油性ペニシリン計 ユ20万単位注射して工週間後に37.5。C以下に下っ たが突然多量の劔血あ9,畷血は2,.3日続き蒼白 ますます.ひどくなり,食慾全く衰へて全身衰弱著 明なので輸血を50CCづっ7臼聞続行し漸く元気恢 復し,顔色唇の色も入院時より残罪良好となった。 此の頃の所見は前表の如く赤血球数,血色素量は 梢々恢復の徴候を見せたが白一血球の減少が目立ち 淋巴球の比較的増多はますます著明となつπ○ 体温は以後37・QCから37.5。()の間を繕留し瀟 ち桃腺に膿栓を認め,咽頭塗布によって除去された 跡に出血起り小さい凝血塊が附着した。皮膚点状 こ 出血は常に躯幹に少しつつ出現し,輸血時に圧迫 す航ば上肢に,抱いたりする時には下肢に点状出 血が現われた。 7月中旬より時・々歯齪出.血あ1),此頃の出血時 問は著明に:延長し,60分内外で,一血小板数8,200, ザーり一ばユ8に迄低下した。体温も亦此頃より 38。C台に上昇して弛張する様になった。7月下旬 歯噛咄血ますますひどく完全に止血すること困難 .となった。 、一79一
22
第 2表
\動象∼一旦㌔・8/V9
9/su 26,’ VI 12/M[ 28/珊 ・ 一n
赤 血 白 血 血 小 血 色 素 血 色 白 血 球 分 布 / 骨中
淋
酸
塩
モ % 素 素 意 血 球 配球、 数
板 数 (ザeりe) 性 ・巴 隠 密 四 球 .強 球 ノ/プ。。。
有核赤血球白血球に対する% 出 血 斑 図 題 一固 輸 「血 固 織 時 回 聞 球. 聞 数 130万 4,000 ’18,400 37 1.4 0 36e/o/ .6396 1fO/e o o一 。0
23t 40Y・ 0 4t o 160万 3,100 19,20038
1,2 0 269e” ll l 730/Zl o o 1% o o 23t 0 4t 30!!3
175万 2,000 11,70045
13 o 乳5%1、 90% ユ.5% o 19ei ’0 1% 16r o 13 142万 2,000 8,200 34 1.2 0 8.0% 1’ sg%Iol
o i ・・1 3% o e 30ノ 0 5t 30v19
108万 3,200 2,160 26 1.3 0 6eo’ 920/S O.5% o 1.or% o o 60無上 o 6r 278月2日より頭痛を訴べ,梢興奮状態となり8
且4H朝意識消失,三代性痙攣現われ暫時にして 昏睡状態に入り夕刻死亡した。 3・ 藷ii検所見の大要 1.胸部翻心に多数の点状出血及出血斑あり,心嚢 内に血性液約120cc貯溜 2.肝腫脹せず貧血し脂肪によ頃國濁,軽度の出血 あり,組織学的に中心性脂肪化あり,肝細胞に毛細管 周囲性浮腫を認む,細胞浸潤昧ない。 3・脾門々腫張し,脂肪性潤濁あり,鉄沈蒼なし。 4.骨髄 大腿骨胸膏共に脂肪髄にして,鏡検的に殆 ど系三月包カミなu・。 5.淋巴腺 濾胞小ざく,洞には赤血球が詰り内皮細 馴二二している。. 6・頭蓋腔前頭部頭頂部の蜘蛛膜下及び大脳の左右 接面にかけて広く出血あり第三脳室にも出血あり。全 体的に浮腫状であった。4e考 按
①本症の診断に当っては臨床上皮膚粘膜の蒼
白と出血性素質を主要所見とし図る処から種々な る血管系疾患を思わしめたが,血液三見によって 貧血症,白並駈病,頼恒性白血球減少症,紫斑病, 血友病を否定し,又血液培養陰性によって敗拍t症 をも:否定した。而して三熱蒼白,轟血.性素質の 所見と赤1膨求白血球血L小板相伴っての減少,ヘマ トクリツF三値,相当強度の貧.血にも拘らす数回 の血像に幼若回訓1球の出現を見たのぱ一回のみで ありた三等から再生不能性貧血と診断した。而し て死後剖見の結果骨髄所見によって本症の診断は 確められた。②小児期の本症頻度
探し得溢本邦報告例の中,小児は表示の如く30 例で学二二22例,幼児層6例,乳児層にはなく,最低年令ぱ1年ユ0ケ月であった。旧例は3年5ケ
月の男子で幼児層に属す。 一 80 ’一23
③原因に就いて
本邦報告例中成人に就てはサルバルサン中毒に 依ると推定されたもの工0例,姫娠中赤に依るもの ユ例,マラリヤ療法後のものユ例が挙げられてい るが,小児報告例は悉く原因不明とされている。 本例に於いても原因若くは誘因と思われるものを 探し得なかったQ ④臨床症状及び苦痛は全て出血と貧並しに基く 症状で,輸血ぱ1時的効果を示した。5.結
辞
3才5ケ月男児の剖検によって確められた再生
不能性貧ts1.O 1例を記述しfU 。”即ち有熱と高度の 貧血と点状盗並仕を主訴とし,その血液所見は赤 慮L球,顯粒性白血球,血小板の減少,ヘマトクリ ツF低値,出血時間延長及び幼若thatht球の欠如, 血色素係数1以上を示した。入院時は弛張熱と畷, 血及び歯群出皿Lを繰返し,反覆輸煎,増血剤投与 にも拘らす,全経過6ケ月にて死亡。剖検上は各 臓器の出血,骨髄の脂肪化及び骨髄内細胞の消失 を認めた。 (本稿を終るに臨み終始御懇篤なる御指導御陵閲を賜 った磯田教授,並びに血液所見病理解剖に当って御指 導頂いた佐藤清名誉教授及び今井助教授に深謝の意を 表す。) 文 献1) Frank :Berl. Klin. Wsch. Nr. 37. 1915 2)Naege1圭 :Blutkrht&Bユutdiagnostik 1931 3) lsoac u. M6ckei: Kongr, ihn, rned. 1910
4) Authur :Arkerican Journal of Disea$es .of
Children Vol. 78, Nr. 4 5) Blockfan 1949
6)岡本・佐多=児科雑誌
7)北 8)村 9)森 10)泉 11)大 ユ2)仲 13)小: Atlat of the Blood in Children
14)豊田。居石:児三三i誌