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時間分解光電子分光法によるSiC基板上グラフェンのキャリアダイナミクス研究

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名 染谷隆史

グラフェンはわずか炭素原子一層から成る二次元物質であり、その物理 的性質は相対論的粒子である質量ゼロのディラック電子により支配され ている。それ故、従来の金属や半導体に比して優れた電気的的応答・光学 的応答を示す物質として注目されており、次世代の光・電子デバイスの中 核を担う材料して基礎・応用の両側面から精力的に研究されている。特に グラフェンのディラック電子を光励起したときに起こるキャリアダイナ ミクスは光・電子デバイス動作における最も基本的な現象であり、その詳 細理解はデバイス設計や性能向上のために不可欠となる。しかしながら、 これまでグラフェン中のディラック電子における超高速(フェムト秒から ピコ秒 : 10-15 - 10-12 s)のキャリアダイナミクスに関しては未解明な点が 多く、その緩和過程に関する統一的な見解は得られていなかった。また、 グラフェンと半導体界面における光励起キャリアの電荷移動ダイナミク ス(ピコ秒からマイクロ秒: 10-12 - 10-6 s)の理解も実デバイス動作におい て重要となってくる。 本研究では半導体であるシリコンカーバイド(SiC)基板上に成長したグ ラフェン(SiC 基板上グラフェン)に関して、時間分解光電子分光法を駆 使し、その超高速キャリアダイナミクスおよび電荷移動ダイナミクスの包 括研究を行った。その結果、グラフェンにおけるキャリア緩和がディラッ ク電子特有の緩和機構によるものであることを明らかにし、さらにはその 緩和メカニズムに関する理論モデルを構築した。また、グラフェンとSiC における電荷移動ダイナミクスがその界面状態に強い影響を与えること を初めて発見した。 本論文は7 つの Chapter から構成されている。 Chapter 1 では本論文の位置づけ、研究背景、目的について述べている。

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Chapter 2 では研究対象であるグラフェンに関して、その構造・電子状態・ 光学応答・作成方法について説明している。Chapter 3 では本研究の測定手 法である光電子分光法とその周辺技術に関して詳細な説明が行われてい る。 Chapter 4, 5 は主に SiC 基板上グラフェンでおこる超高速キャリアダイ ナミクスの研究について述べている。Chapter 4 ではグラフェンを光励起し た際のキャリア分布の時間発展を調べ、得られた電子温度緩和の解析から、 グラフェン内において高効率な電子-電子散乱過程(キャリアマルチプリ ケーション)が起きていることを示した。さらには、従来の半導体では起 こらない、化学ポテンシャルの超高速ダイナミクスなどディラック電子に 特有な現象を発見した。 Chapter 5 ではグラフェンのキャリア緩和メカニズムの詳細に焦点を当 て、超高速ダイナミクスの定量理解を試みた。論文提出者は、キャリアの 緩和要因を一つ一つ定量化し、キャリア緩和に関する理論モデルを組み上 げた。その結果、これまで切り分けが困難であった本質的なフォノン散乱 と外因的な欠陥散乱の寄与を分離することに成功し、グラフェン本来の緩 和メカニズムを解明することに初めて成功した。さらには、ディラック点 における緩和のボトルネックなど、グラフェンのディラック電子性を強く 反映した新たな緩和メカニズムを発見した。 Chapter 6 では SiC で光励起されたキャリアがグラフェンへ移動する際 の電荷移動ダイナミクスについて述べている。グラフェンとSiC の界面状 態が異なるグラフェン試料でダイナミクスの比較を行うことで、グラフェ ンおよび SiC での緩和の影響を差し引いた界面のみの緩和情報を抜き出 した。その結果、界面の状態密度が電荷移動ダイナミクスの緩和時定数を 定めていることを初めて明らかにした。 Chapter 7 では論文のまとめと今後の展望が述べられている。 本研究は時間分解光電子分光により、これまで未解明であったグラフェ ンのキャリアダイナミクスを明らかにするだけに留まらず、異なる時間領

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域の現象(超高速キャリアダイナミクス、電荷移動ダイナミクス)を繋げ て新たな知見を得るなど、SiC 基板上グラフェンのキャリアダイナミクス に関して世界で初めて包括的な理解を行った研究である。よって、本研究 の価値と独創性は十分と認められ、博士(理学)の学位論文としてふさわ しい内容を持つものと認定し、審査員全員で合格と判定した。なお、本論 文は共同研究者との共同研究であるが、論文提出者が主体となって実験の 遂行や結果の解析を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断 する。 したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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