児童の学習目標に関連する教師行動の研究
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(2) 次. 目. 第1章 問題・. 1. 第2章 方法・. 13. 第1節. 第2節 第3節 第4節. 質問項目の作成 1 教師の指導行動測定尺度 2 児童の学習目標測定尺度 3 教師の学習目標測定尺度 調査の対象 調査の時期 調査の手続き 1 児童を対象とした調査 2 教師を姦直とした調査 19. 第3章 結果・. 第1節. 教師の指導行動と児童の学習目標 1 教師の指導行動 (1)学級間の差 (2)教師の指導行動の構成因子. 2 児童の学習目標 (1)学級間の差. ② 児童の学習目標の構成因子 ウ師の指導行動と児童の学習目標との関連 教師の指導行動と教師の学習目標 1 教師の学習目標 (1>教師の学習目標の構成因子 ② 教師の学習目標の過程指向合成得点と結果指向合成得 点との関連 2 教師の指導行動と教師の学習目標との関連 (1)教師の指導行動と教師の学習目標(4因子)との関連 ② 教師の指導行動(4因子)と教師の学習目標(合成し た過程指向得点,結果指向得点)との関連 教師の学習目標と児童の学習目標 1 教師の学習目標の各因子と児童の学習目標の過程指向,結 果指向との関連 2 教師の学習目標の過程指向,結果指向と児童の学習目標の 過程指向,結果指向との関連 3‘. 第2節. 第3節. 第4章 考察. 36. ○. 引用文献・. 45. ○. 付記一一…. 49. ○. 資料.
(3) 第1章 問題 本研究の目的は,学級で示される教師の言動と学習の価値についての 児童の考え方との関連を明らかにすることである。. 学校では日々学習活動が繰り広げられている。いったい何のために学 習するのか,学習のもつ意味とは何であるのか,という疑問を誰でも一 度は投げかけたことだろう。ある人は良い学校に進み良い仕事につくた めに学習すると考えているかもしれない。また,ある人は,分からない ことが分かるようになるために,学習することの喜びを味わうために, 学習すると考えているかもしれない。. 学習で目指すものや学習から得ようとするものなど,学習することの 価値についての考え方は,「学習目標」という概念で説明されている。. 桜井(1991)によると,学習目標は,動機づけに関連する研究の中で Kruglanski,A. W,(1975>が提唱した視点である。その視点とは.学習. することそれ自体が目標なのか,それとも学習することは一義的な目標 ではなく学習に付随するその他の何かが目標なのかという視点である。. ところで,近年の動機づけに関する研究では認知論的なアプローチが 主流となってきており,学習者自身の判断や意志によって達成行動が左 右されることが明らかにされ,本人の認知が動機づけの鍵をにぎってい. ることが証明されっつある(北尾1991)。その中でも,原因帰属理論 は認知論的な動機づけ論の代表的なものであり,研究の蓄積も豊富であ. る(伊藤1995)。原因帰属理論とは,活動の結果の認知に焦点を当て, 原因を何に帰属させるかによってその後の活動への動機づけが異なって くると考えたものである。. これに対し,ごく最近では,人がどのような目標に方向づけられて学 習をするのかという目標指向性の視点から動機づけを説明しようとする. 研究が盛んに行われるようになった(Ames&Archer,1987;Dweck,. 1986;速水・伊藤・吉崎,1989;渡辺,1990;清原,1993; 丹羽,1992;丹羽,1993;谷島・新井,1994など)。.
(4) A皿es&Archer(1987)は達成に向けられた目標が課題関与対自我関 与,ラーニング指向対パフォーマンス指向というように対比されてきた ことに注目し,一方をマスタリー指向,もう一方をパフォーマンス指向 として理論的に統合した。舳es&Archer q987)によると,マスタリー 指向は新しい学習知識や達成感を手に入れることが目標であり,学習過 程そのものが価値づけられていることから努力が重視されるのに対し, パフォーマンス指向は,能力があると評価されることの方に関心があり,. 良い結果を出すことや他の人より優れていることやわずかな努力で成功. することが重視されるという。Ames&Archer(1987)はマスタリー指 向と同様の概念であるとして,White(1959)のコンビテンス・モチベー. ションを挙げている。コンビテンス・モチベーションとは,自分のまわ りの環境に対して働きかけ,満足のいく変化をもたらすことができる力 量と,その際に感じられる喜び(有能感)を追求しようとして環境と効 果的に相互交渉しようとする傾向を含んだ概念である(桜井1991)。 そして,桜井(1991)は,White(1959)のコンビテンス・モチベーショ ンこそ内発的動機づけの源になる欲求であると述べている。 ところで,従来の学習目標に関する研究は,マスタリー指向とパフォー. マンス指向を二次元で捉えている(Dweck,1986;舳es&Archer,. 1988;速水・伊藤・吉崎,1989;渡辺,1990など)。 つまり,マ スタリー指向とパフォーマンス指向は独立した関係にあり,マスタリー 指向を取りながら同時にパフォーマンス指向も取りうると考えた。しか し,この考え方は現実的でない。たとえば,学習することそのものに価 値を置き学習によって自分の能力を向上させようとしている人が,人か らよくできると評価されることに重大な関心を払うであろうか。また,. 人に勝つ目的で競争心をもって学習している人が,学習で困っている人 に対して協力的な態度を取ろうとするだろうか。現実的には,人はマス タリー指向またはパフォーマンス指向のどちらかの目標に方向づけられ て学習すると考える方が自然である。清原(1993)の結果からも,マス タリー指向とパフォーマンス指向に負の相関関係が認められ,独立した 関係ではないことが示唆されている。本研究はマスタリー指向とパフォー. 2.
(5) マンス指向は互いに一次元の対極にあるものと見なし,マスタリr指向 が高ければパフォーマンス指向は低く,その反対にパフォーマンス指向 が高ければマスタリー指向は低くなるのではないかと考える。. さて,学習目標に関するこれまでの研究において,学習目標の違いと. 学業達成過程との関連が明らかにされてきた。Ames&Archer(1988). およびAmes&Archer(1988>の追試を行った渡辺(1990)や清原 (1993)の研究では,児童がクラスの学習目標をマスタリー指向である. と認知するほど効率の良い学習を行い,課題遂行意欲も高いなど,マス タリー指向と効果的な学業達成過程との関連が示された。また,中谷 (1996>の研究では,学業熟達目標(マスタリー指向)が自分で考えた. り調べたりする学習行動や教科学習への関心・意欲に影響をおよぼして いるという結果が示された。伊藤(1993)の研究では,ラーニング指向 (マスタリー指向)が高いほど協力的・持続的・主体的で理解を指向し. た学習活動を行うことが明らかになった。また,杉浦(1996)の研究で は,クラスの学習目標を習熟目標(マスタリー指向)と認知することに よって結果期待(努力すれば良い結果が得られるという気持ち)や効力 期待(努力できそうな気持ち)が高まり,他方,クラスの学習目標を成 績目標(パフォーマンス指向)と認知することによって無気力感(努力 する気にならない)が高くなることが示された。さらに,境(1995)の 研究からは,ラーニング指向が高い場合は成功を求め課題に接近しよう とする向達成行動が高く,パフォーマンス指向が高い場合は失敗を恐れ 課題を回避しようとする学習不安が高いという結果が示された。. これらの研究結果は,学業達成過程に効果的な影響を与えるのはマス タリー指向であり,パフォーマンス指向は非適応的な動機づけを導く傾 向があることを示唆している。. 一方,Dweck(1986) は,学業達成に影響を与える要因として,目標 指向性と自己の能力に対する自信の組み合わせを考えた。これによると, ラーニング指向の場合は,自己の能力に対する自信の高低にかかわらず,. 挑戦を求め障害に直面しても努力し続けるなど達成指向的である。パフォ ーマンス指向の場合は,自己の能力に対する自信が低ければ挑戦を避け. 3.
(6) 努力を続けることが困難であるなど,非適応的な動機づけを導くのであ るが,自己の能力に対する自信が高ければ,ラーニング指向と同様に達 成指向的であるというのである。つまり,パフォーマンス指向であると ともに現在の自分の能力に自信をもっている場合は,課題を遂行できる 見通しがあり,課題を遂行すればするほど自己の能力に対して良い評価 を得ることができるので,より挑戦意欲や課題遂行行動が増すというの である。. Dweck(1986) の結果からは,パフォーマンス指向であっても自己の 能力に自信をもっていれば学業達成によい影響を与えることが示された。. しかし,たとえ現在の自分の能力に自信をもっていたとしても,将来的 にも自信をもち続けることができるとは限らない。もし,能力に対する 自信が低下すれば,パフォーマンス指向である限り,学業に対して非適 応的にならざるを得ない。伊藤(1992)は,パフォーマンス指向につい. ての考えを以下のように示している。「極端なPG(パフォーマンス指 向)への偏りは決して望ましくないが,おとなでさえ何らかの課題(そ れが仕事であろうと楽しみであろうと)に取り組む時の動機が必ずしも. 内発的なものではなく,恥の回避・他者からの尊敬や賞賛などのPGで あることが多く,さらに,そのような目標観を持つことが日常生活の中. で適応を促すような機能を果たしていることも否定できない。……P Gがまったく不要な目標観だとは断定できない。」このように,伊藤 (1992)は消極的ではあるがパフォーマンス指向を支持する考えを述べ. ている。確かにパフォーマンス指向が学業達成行動を促す場合もあるだ ろう。あるいは,パフォーマンス指向のもとで始めた学習であってもそ の過程で学ぶ喜びに気づき,マスタリー指向へと転換する場合も予想さ れる。しかし,従来の研究結果が,マスタリー指向が学業達成に効果的 に作用するのに対してパフォーマンス指向は学業達成の妨げとなる傾向 を示していることを重視し,児童・生徒にとって教育的に望ましい学習 目標はマスタリー指向であり,パフォーマンス指向は不適切な目標であ ると考える。. それでは,児童・生徒の学習目標をマスタリー指向に導くにはどうし. 4.
(7) たらよいのだろうか。あるいは,パフォーマンス指向をマスタリー指向 に修正するにはどんな方法があるのだろうか。また,マスタリー指向を より高める方法はあるのだろうか。これらの問いに答えるため,学習目 標を規定する要因や学習目標形成のメカニズムを探ることは,教育実践 の場にたいへん有益な情報をもたらすことになる。そこで,本研究では 学習目標の形成に研究の焦点をあて,児童・生徒に適切な学習目標を形 成させるための手がかりを究明することを目的とすることにした。. ところで,これまでの学習目標に関する研究についてみると,学習目 標の捉え方は二つの視点から整理できる。一つは学習についての個人の 基本的な考え方を研究の対象としたもので,個人差として学習目標を捉 える視点である。もう一つは学校の授業や学習塾などの学習場面におけ る学習の雰囲気を研究の対象としたもので,その場面から伝わってくる 学習目標を人がどのように認知するのかという視点である。前述の先行 研究に見られるクラスの学習目標の認知は後者の視点で捉えたものにあ たる。本研究では,児童・生徒に対して生涯にわたる自己教育力の育成 を目指す立場に立ち,場面ごとの学習目標の認知ではなく,学習につい ての個人の基本的な考え方の視点から学習目標を捉えることにする。. ここで,学習目標の形成に関する従来の研究から得られた知見とその 問題点について記す。. Dweck(1986)は知能についての考え方と学習目標が対応するのでは ないかとする見解を示している。これによると,知能は固定的なもので 変化するものではないとみる固定的知能観では,自分の有能さを周囲に 示すことが目標(パフォーマンス指向)となるのに対し,知能は向上さ せていくことができると考える増大的知能観では,努力によって理解し たり新しいことを身に付けたりするための自己の能力を増加させること. が目標(ラーニング指向)となる。このDweck(1986)の理論は国内で も検討されている(速水・伊藤・吉崎,1989;深田・河合,1991;深田,. 玉991)。ただし,Dweck(1986)やDweck(1986)の追試研究には,知 能観をもつに至るまでの過程についてふれられていない。. 児童の学習目標の形成に影響を与えるものの…っに,児童を取り巻く. 5.
(8) 他者の学習目標が考えられる。児童は周りの他者の言動から学習につい ての考え方を学び,自らの学習目標を形成していくものと推測できる。. 舳es&Archer(1987)は,母親の学習目標と学校の学習に関する母 親の考え方との関係を調べた。その結果,至親の目標のもち方が異なる と,学校での成功の定義の仕方や望ましいとする生徒の特徴など,学校 の学習に関して母親がまったく異なった考え方をしていることが明らか になった(Table l)。母親の学習についての考え方の違いは,子ども への対応の違いとして表れ,子ど一’も自身の学習についての考えに影響を およぼすと考えられる。. Table 1 達成目標と学校に関連した考え方との関係の予測. (Ames&A!cher 1987). 明確な考え. マスタリーゴール. パフォーマンスゴール. 成功の定義. 進歩,努力. 良い成績,教えられる内 容をよく理解して分かる. 学校からの情報のどうい うものに関心をもっか. 努力,向上. 成績,基準. どんな課題を望むか. やりたいという気持ちを 最大限にしてくれる課題. 成功を確信させてくれる. 帰属因. 努力. 能力. どういう生徒の特徴に 価値を置くか. 努力. 頭がいい. 課題. また,児童・生徒の学習目標と他者の学習目標との関係を検討したも のに,境(1995)の研究がある.この研究では,児童・生徒の目標指向 性と,児童・生徒の認知を介した両親・友だち・教師の目標指向性との 関連を調査した。その結果,両親・友だち・教師のパフォーマンス指向 は児童・生徒のパフォーマンス指向に影響をおよぼし,両親と友だちの うーニング指向が児童・生徒のラーニング指向に影響をおよぼしている ことが示された。教師のラーニング指向は全体的に高く評価されている. 6.
(9) という特徴も明らかになった。しかし,この研究では児童・生徒の認知 を介して他者の目標を測定しているため,実際に他者がどのような目標 をもっていたのか,そして,具体的にどのような認知の過程を経て児童・ 生徒の目標に影響をおよぼしたのかは分からない。. 本研究では教師の行動が児童の学習目標に影響を与えるのではないか という仮定のもと,児童の学習目標に関連する教師行動を特定すること を研究の目的とする。また,教師自身の学習目標が教師行動の認知を通 して児童に正しく認知されているか,教師自身の学習目標は児童の学習 目標にどのような影響を与えているのかについても補完的に検討するこ とをねらっている。近藤(1994)は教師の教育観・教育目標が,教師が 子どもに提示する基本的な「理想像」や「あるべき姿」の中核を決定し,. 教師が行う授業の構造や学級経営の仕方を規定し,それらを通してある いは教師の日常的な行動や言葉を通して常に子どもに強い「要請」とし て伝えられ,子どものあり方を一定の方向に水路づけていくと思われる と述べている。近藤(1994)のいうように,教師はそれぞれが学習につ いてもある考えや立場(学習目標)のもとで学習指導を行っており,そ の学習目標はさまざまな教師行動に形として現れると考える。一方,児 童・生徒は教師行動を観察し,特定の教師行動から教師の側にある学習 に関する考えや立場を推測することになる。つまり,学習目標に関連す る教師行動に着目し,その意味を解釈することで教師の学習目標を認知 することになるといえよう。そして,児童・生徒は,担任教師の学習目 標を取り込み,それまでに形成していた学習目標から,より担任教師の 学習目標に接近していくのではないかと考えるくFig,1)。. 7.
(10) 1教師の学習目標. 教師行動. 学習への関心・意欲 学業達成行動. 児童の認知した教師行動 (児童の認知した教師の学習目標). 児童の学習目標. Fig,1教師の学習目標が児童の学習意欲,学業達成行動に影響をおよぼす過程. Ames(1992)は,マスタリー指向を進める指導方法について提案して いる。その提案は,教室の環境が児童・生徒の目標に影響を与えるとい う前提で,生徒の動機づけと能力についての考え方や教室の評価につい,. ての捉え方に違いがあった先行研究を参照し,Ames〈1992)が動機づ けを高める教室環境について総括したものである。そこでは,教室環境 の側面として,課題と学習活動のあり方,評価と承認のあり方,権威と 責任のあり方が考えられている(Fig,2)。しかし, Fig.2に示された. 指導方法は,理論的に導き出されたものであるので,実際の教室環境で 総合的に検証されたわけではない。. 8.
(11) 動機づけパターン. 指導方法. 環境. 学習活動の意味ある面に焦点を当て る. 課題. ⇒. 新しく,多種多様で,生徒の関心を 引くような課題を用意する 生徒が無理なく挑戦しようと思うよ うな課題を用意する 生徒が自分で考えられる短期的な目 標を設定できるように援助する 生徒が効果的な学習方法を考え出し 活用するように援助する. 生徒が意思決定に参加するのを援助 することに注目する 決定が,能力がどう評価されるかで 権威. ⇔. なく,努力に基づくよう, “現 実的な”選択肢を提供する. 責任と自主性を養う機会を提供する 自己管理と自己モニタリングの技能 を発達させ,使えるように援助 する. 評価と 承認 ⇔. 努力することと学習すること に注目する 活動への本質的で高い関心 努力への帰属 努力を基本とした学習方法へ の帰属 ⇔ 効果的な学習方法と自分で調 節できる他の学習方法の 利用 活動への関心 多くの努力を必要とする課題 への肯定的な感情 帰属意識を感じる “失敗に対する耐性”. 個人の向上,進歩,習熟に注目する 全体的に評価するのではなく個別的 に評価する 生徒の努力を認める 向上していく機会を与える 間違いを学習の一部として見ること ができるように勇気づける Fig,2マスタリー指向を進める教室環境と指導方法(Ames,1992). 9.
(12) つついて,教師の指導様式と児童の学習目標との関連について分析し たものに,伊藤(1990,1991,1992)の一連の研究がある。伊藤(1990,. 1991,1992)は,韓国と日本の小学校教師およびそれぞれの教師が担当. しているクラスの児童〈5,6年生)を被験者にして,「教師中心の指 導がパフォーマンス指向と,学習者中心の指導がラーニング指向と関連 する」という仮説の妥当性を検討した。その結果,日本と韓国のいずれ においても,教師中心的指導とパフォーマンス指向,学習者中心的指導 とラーニング指向とが,かなりの程度対応していることが明らかになっ た。. 伊藤(1990,1991,1992)は,教師の指導行動について以下のような. 考えに沿ってアプローチしている。伊藤(1989)は,Solomon& Kendall(1979)によって「教師中心一生徒中心」とまとめられた欧米 の教師の指導行動の類型化が日本や韓国などでも見られることを確認し た。しかし,この研究の質問項目の決定に関して「クラス内の教師の指 導行動全般を記述する」という目的の研究で使用された88項目の中から 「教師中心一学習者中心」という特性を代表するであろうと判断される. 27項目を選択し分析した点と,被験者数が不十分であったという点の二 つの問題点があったため,伊藤(1990)の第二次調査が実施された。そ こでは十分な大きさの標本を対象とし,項目も改めて作成したものを使 用している。その結果,3っの因子が抽出され,「教師中心」の指導, 「学習者中心」の指導,「指導レバートリ」と命名された。伊藤G991, 1992)の研究は,先の研究結果に示された「教師中心」の指導・「学習. 者中心」の指導の2つの指導様式と学習目標との関連を分析したもので ある。. ここで,伊藤(1990,1991,1992>の使用した教師の指導様式の項目. についての問題点を述べる。伊藤(1990)が使用した項目は,伊藤 (1989)で用いた27項目にBennett(1976)を参照にした23項目を追加 した計50項目である。前者の27項目が「教師中心一学習者中心」という 特性を代表するであろうと判断される項目であることは先に述べた通り である。また,後者の23項目は欧米の研究を参照して選択した項目であ. 10.
(13) る。このようにして作成した50項目を,今日の日本あるいは韓国の教師 の一般的な指導行動を表したものとして使用するには不十分であると考 える。なぜならば,文化様式の異なる欧米とアジアでは教育観にも違い があり,その結果,教師の具体的な指導行動にも異なった特徴が現れる のではないかと考えるからである。また,伊藤(1990)では,教師の指 導行動で3っの因子が抽出されたにもかかわらず,伊藤(1991,1992). では「教師中心」の指導・「学習者中心」の指導の2つの指導様式を研 究の対象にしており,整合性に欠けている。. 本研究では,教師の学習についての考え方が指導行動に反映され,児 童が観察した指導行動から教師の学習目標を認知し,児童の学習目標が 教師の学習目標に影響されて変化していくという仮説に基づいて検討す る。研究の焦点は,教師の指導行動に対する児童の認知と児童の学習目 標との関連にある。そこで,教師の日常の指導行動を研究対象とし,一 般的な指導行動と児童の学習目標との関連について分析することとする。. 具体的には,教師行動を把握するために,教師や児童に教師行動を尋ね たり実際の授業を観察したりして教師行動を収集する。その際,教師の 学習目標を最も反映し,また,児童の学習目標に直接的に影響を与える 教師の行動は,授業を中心とした日々の学習活動における行動であると 考える.’よって,本研究では研究対象を授業を中心とする学習指導中の 教師の指導行動にしぼることにする。. また,伊藤(1990,1991,1992)では,教師の指導の評定について,. 被験者が自分自身の行動を評定するという方法を採用している。本研究 では児童の学習目標に影響を与えているのは教師自身が自覚している行 動より,むしろ児童が捉えている教師の行動ではないかという考えのも と,児童の認知を通して教師行動を評定することにする。 つぎに学習目標の尺度項目について検討する。 Dweck(1986)ならび. にDweck(1986)の追試研究では,学習目標を問う際項目のすべてにわ たって「あなたはなぜ勉強するのですか」と理由を尋ねる表現が用いら れ,「テストでよい点をとりたいから」,「新しい考え方を身につけた いから」などの項目それぞれに「そう思う」程度での回答が求められて. 11.
(14) ぜ いる。伊藤(1991,1992)もDweck(1986)の研究を参考にしており,. 上記の表現を使用している。これに対し,Ames&Archer(1987)なら. びにAmes&Archer(1987)の追試研究では学習の価値そのものや学習 に求めるものについて,それぞれに「そう思う」程度で回答するよう求 められている(「わたしはテストでよい点を取りたいと思う」,「わた しは学習して新しい考え方を身につけたいと思う」など)。本研究では Ames&Archer(1987)の研究を参考に尺度項目を構成する。 以上,伊藤(1990,一1991,1992)の一連の研究と本研究との相違点に. ついて述べた。本研究では,児童の認知を通した教師行動と児童の学習 目標との関連を明らかにすることを研究の焦点とし,あわせて教師自身 の学習目標が教師行動の認知を通して児童に正確に伝わっているかどう か,教師の学習目標は児童の学習目標にどのような影響を与えているか についても検討することにする。. 12.
(15) 第2章 方法 第1節 質問項目の作成 1 教師の指導行動測定尺度 学習目標に関する教師の指導行動についての質問項目を作成するため に,教師が日常どのような指導行動をとっているのかについて具体的な. 資料収集を行った。まず,鳥取県の公立小学校の児童168名に対して質 問紙調査を行い,担任教師がふだんの学習中にとっている行動を自由に 記述するよう依頼した。また,現職の大学院生30名を対象に,教師が日 常の学習指導で行っている言葉かけや行動を自由に記述するよう依頼し. た。さらに,筆者が鳥取県の公立小学校の6学級で計7時間授業を参観 し,教師の行動を観察した。その後,これらの資料について現職の大学 院生3名と筆者で協議を行い,教師行動の質問項目を選定した。その際, 教師行動の内容が重複しているものや類似しているものは整理するとと もに,通常の行動であまり見られないものは除外して項目の精選を行っ. た。そして,質問内容が小学校4・5・6年生に容易に理解できるよう 留意して質問項目42項目を作成し,ランダムに配置した。さらに,小学. 校4年生の児童3名を対象に予備的に本調査の試行を行い,意味の分か りにくい項目の表現を改めた。. 2 児童の学習目標測定尺度. 本研究では,舳es&Archer〈1987),Ames&Archer(1988)で示 されているマスタリー指向,パフォーマンス指向の概念,及びAmes& Archer(1988)と渡辺(1990)に基づいて作成された清原(1993)の尺 度項目を参考にして児童の学習目標尺度を作成した。清原(1993)の用. いた尺度は,マスタリー指向に関すると思われる8項目とパフォーマン. 13.
(16) ス指向に関すると思われる7項目の計15項目からなる。これらの質問項 目がどのような内容で構成されているのか観点別に整理してみると, ・学習の目的を問うもの ・学習の価値を問うもの ・間違えたときの気持ちを問うもの ・テストについての考えを問うもの ・友だちについての考えを問うもの ・誰のための学習かを問うもの. の6っの観点から構成されていた。これに,課題遂行意欲を加え,7っ の観点から尺度を構成しようと考えた。課題遂行意欲については,舳es &Archer(1987),清原(1993)の結果から,マスタリー指向とパフォ. ーマンス指向では望む課題が異なることが示されている。以上の7つの 観点ごとにマスタリー指向に関すると思われる項目とパフォーマンス指. 向に関すると思われる項目を1項目ずつ考え,計14項目を作成した。そ の際,クラスの学習目標の認知を測定する清原(1993)の尺度では「わ. たしの組では・…一」「わたしの組の人は一・…」などの集団的な表 現を使っているが,本研究では個人の学習目標を測定する目的から,学 習についての本人の考えを問う表現を用いた。また,学習についての考 えを尋ねる調査の性格上,これらの質問項目は回答時の児童に堅苦しい. 印象を与えると予想される。そこで,フィラー項目を2項目挿入して回. 答中の気分転換を図るとともに,質問内容が小学校4・5・6年忌に容 易に理解できるよう留意して質問項目を作成し,計16項目をランダムに. 配置した。さらに,小学校4年生の児童3名を対象に予備的に本調査の 試行を行い,意味の分かりにくかった項目の表現を改めた。. なお,マスタリー指向,パフォーマンス指向は研究によってさまざま に命名されている。たとえば,ラーニング指向,パフォーマンス指向 (Dweck 1986),熟達目;標,評価目標(中谷1996),習熟目標,成績. 目標(杉浦1996),などである。本研究では,学習することの価値を より直接的に表すようにマスタリー指向にあたるものを学習過程指向 (以下,過程指向),パフォーマンス指向にあたるものを学習結果指向. 14.
(17) (以下,結果指向)と表現することにする。. 3 教師の学習目標測定尺度 2の児童の学習目標測定尺度をもとにして教師の学習目標測定尺度を 作成した。その際,教師が児童に学習を指導するにあたってどのような 考えのもとで指導を行っているかという視点から項目内容・表現ともに 再構成し,質問項目14項目をランダムに配置した。. 第2節調査の対象 調査対象はTable 2に示すように,鳥取県の公立小学校3校,島根. 県の公立小学校3校,広島県の公立小学校1校,奈良県の公立小学校1 校の4年生(10学級),5年生(10学級),6年生(11学級)の児童で, 計762名(31学級)と,その学級担任教師31名である。. /5.
(18) Table 2 研究対象とした学級の児童数および学級担任の属性. No.. 学校 学年 学級. 1234,56789ユ0ユ1ユ213ユ4ユ51617. 児童数 教師の性 教師の年齢. 23 ユ8 18 34 22 2ユ 29 20. 36. 45. 27. 34. 29. 37. 38. 24. 42. 32. 33. 36. 4,1. No。. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 32. 2ユ. 学校 学年 学級. 児童数 教師の性. 教師の年齢. 24. 20. 2ユ. 22. 22. 23. 18. 27. 26. 男女男男女男男男男女男女女男女男男. 23. 27. 27. 25. 27. 27. 28. 26. 27. 29. 26. 35. 37. 34. 35. 31. 29. 女女男男女男男女男女男男男女 36 4玉 26 41 4,1 34 34. 37. 28. 24. 39. 40. 44. 37. (注)学校欄のA,C, Fは島根県内, Bは奈良県内, Dは広島県内, E, G, Hは鳥取県内の公立小学校. である。. 第3節調査の時期 調査は,1998年6月中旬∼7月上旬に行った。 第4節 調査の手続き 1 児童を対象とした調査 測定は担任教師が教示者となり,質問紙を用いて各学級ごとに集団調 査形式で実施された。調査はすべて無記名で行った。実施にあたっては 評定の歪みを減らすため,成績とは無関係であること,人と相談したり. 16.
(19) 見せ合ったりしなのことを文面と学級担任の説明により児童に伝えた。. また,回答内容の秘密を守るため,調査用紙は回収後すぐに封筒に入れ て封印し,大学の研究者(筆者)以外誰も見ないことも伝えた。. 〈教師の指導行動に対する児童の認知の測定〉 教師の指導行動は,児童の認知を通して測定した。各項目に対する回. 答には,4段階評定(よくする,まあまあする,あまりしない,ぜんぜ んしない)を採用した。具体的には,教師の指導行動を記述した各項目 ごとに,担任教師がそれらの行動をどのくらいの頻度で行っているのか. の程度を4っの選択肢を記した尺度から児童に選ばせ,あてはまるとこ ろに○印を付けて回答させた。. 〈児童の学習目標の測定〉. 児童の学習目標の測定には,4段階評定(そう思う,少しそう思う, あまり思わない,ぜんぜん思わない)を用いた。具体的には,学習につ いて記述した各項目ごとに,自分の考えや気持ちに一番近い段階を選ば せ,○印を付けて回答させた。. なお,教師の指導行動の質問紙は,質問項目が42項目と多かったため,. 疲労による評定の歪みを極力防ぐ必要があった。そこで,上記の2種類 の調査を連続して実施する場合は,実施順序をく教師の指導行動の測定 〉,〈児童の学習目標の測定〉の順で行うよう指定した。. 2 教師を対象とした調査 〈教師の学習目標の測定〉 教師の学習目標の測定は各個人ごとに無記名で行った。実施にあたっ ては評定の歪みを減らすため,結果の分析はデータを総括して行い,各 個人や各学級の結果を特定できるようなとり扱いはしないことを伝えた。. 各項目に対する回答には,4段階評定(そう思う,少しそう思う,あま り思わない,ぜんぜん思わない)を用いた。具体的には,学習について. 17.
(20) 記述した各項目ごとに自分の考えや気持ちに一番近い段階を選ばせ,b 印を付けて回答させた。. 18.
(21) 第3章 結果 第1節 教師の指導行動と児童の学習目標 1 教師の指導行動 (1>学級間の差. まず,児童に認知された教師の指導行動における学級間の差が,検討 に値するほど異なっているかどうかを吟味した。具体的には,42の項目. ごとに,4っの段階に1点∼4点の得点を与え(高得点であるほど指導 行動の頻度が高いと認知されたことを示す),学級別(教師別)に平均 値を求めた。そして,42の項目ごとに,31の学級(教師)を独立変数, 各学級内での児童による変動を誤差要因として,1要因の分散分析を行っ. た。その結果,42項目のすべてにおいて有意なF比が得られ,児童に認 知された指導行動に関して学級間(教師間)の差が存在することが確認 された(Table 3)。. なお,本研究では,統計的検定における有意水準をすべて5%以下に 設定した。Tableに使われている*印は有意差があったことを示してい る。. (2)教師の指導行動の構成因子. 教師の指導行動を同じ内容のグループにまとめるため,42の教師行動. 項目相互の相関係数値を求め,さらに因子(主成分)数を3から5まで 変化させて,主成分分析→バリマックス回転を行った。その結果,因子 抽出における固有値の変動のようすや回転後の因子パターンの解釈可能 性の観点から,4因子解を採択した(Table 3)。. Table 3について,一つの因子に0.42以上の負荷量を示し,同時に他. の因子にα39以上の負荷量を示さないことを基準に因子の内容を検討し た。第1因子に高く負荷した13項目は, 「問題が解けたときは,一緒に. 19.
(22) Table 3. 教師行動に対する児童の認知に関する42項目の学級間差および主成分分析の結果. 項 1. 2 3 4 5. 目. F(30,73D. 問題が解けたときは,一緒に喜んでくれる。 発表につまりかけると応援してくれる。 私たちが今までに習ったことを覚えていたらほめてくれる。 「友だち同士,助け合って勉強をするように。」と言う。 問題がとちゅうまでしかできなくても,できたところまで. 作品や作文の工夫したところやがんばったところを見つけ. 7. てほめてくれる。 音読をした人にお礼を言う。. 9 10. 第2因子. 第3因子. 4,14零 6.19宰 4,57事 9,01霧 4,26零. ,60 ,58 ,58 ,56 ,52. ,24 .28 ,27 ,00 ,20. .25 .30 ,19. 4,07癖. ,52. 5,96零 5.22事 3,34事. .5重. 第四子. .09 一,06. 一,11. .05 ,07. ,29. .01. ,26. .32. 。09. ,17 .26. 一,02. .21 一.07. .07 .38 ,32 ,35. をほめてくれる。. 6. 8. 第1因子. 先生も私たちと同じ気持ちになって考えてくれる。 いろいろな考えをいっぱい出すとほめてくれる。 友だちの意見を聞いて,周りの人が「え一」と言わないよ. .50 .50. 一,01. ,18 ,28. 5,993. .4マ. 7,503. ,43・. ,31. 一.08. 一.07. 3,64零. ,43. ,37. .27. .09. 3.72零. .43. 一,12. .36. ,28. 2,99零 4.00富 2.67家 3,76零. .18 。28 ,16 .18 .09 .17 .30 .30. ,54 .55 ,53 ,47 ,45 ,45 .43 ,43 ,42. .26. 22. 友だちが発表したことをわかりやすく教えてくれる。 発表をしたら,先生の感想を言ってくれる。 「例」や「たとえば」を使って説明してくれる。 問題が早く解けたら,その理由や説明を考えるように言う。 私たちが問題を考える時間を多く取ってくれる。 授業中,私たちの顔を見渡してくれる。 問題が解けないときはヒントを出してくれる。 私たちの発表を,うなずきながら聞いてくれる。 勉強の分かりにくいところをよく説明してくれる。. ,05 ,07 .15 ,18 .01 ,08 ,00 ,06 .12. 23 24 25 26 27. 発表したことが間違っていたら先生はその人を無視する。 私たちの質問にていねいに答えてくれる。 間違えてもいいから,勇気を持って発表するように言う。 私たちが発表したことを,黒板に書いてくれる。 先生の間違いを教えてあげると,先生はそれを認めてくれ. 3,693. 一.04. 5.91零 4,76塞 5,64零 7,20寧. 、31. 11. 12 13. うに言う。. 授業中に子ども同士で教え合う活動をさせてくれる。 発表を聞いて,「いいことを言ってくれたね」とほめてく れる。. 間違った答えを言ったとき,周りの人が笑わないように言 サ. つ。. 14 15. 16 17 18 19 20 21. 2,273 2,◎8宰. 3,51業 3.17嵩 2.10零. ,11. 一.08. ,23 一.08. .28 .21. ,23 ,12 ,31. 一.62. ,22. ,56 ,51 。47 ,46. 一,03. .31. ,03 ,30 ,19 ,19 ,06. 一,05. .28 .05. ,22 .17. る。. 28. 大事なことをよく覚えるように言う。. 2,55宰. .17. ,33. ,45. ,27. 29 30. 5,05富 2,98掌 9,46事 5.48*. 一,06. ,16 ,09 ,00 ,10. ,04 。27. 32. 「勉強しなさい,勉強しなさい。」と言う。 騒がしいときは真面目にするように注意する。 宿題を忘れると厳しく注意する。 テストで間違ったところをやり直すように言う。. 一,01. ,56 ,51 .50 ,42. 33 34 35 36. 「質問がありますか。」と聞いてくれる。 授業できょうはどんな学習をするのか,知らせてくれる。 勉強に役立つテレビ・新聞・本などをよく見るように言う。 友だちが黒板に考えを書いているのを他の人はだまって見. 3,76奉 4.80窒 5,45零 1,71零. ,11. ,31. .00 ,36. ,40 ,07 ,06. ,18 ,02 ,02 ,09. ,25 ,00 ,19 .38. 4,86零 2.41零 2,68零. ,09 ,05 ,21. ,15 ,34 .22. ,26 .37 .08. ,37 .13 ,34. 6,753. .22. .11. .37. .22. 31. 37 38 39. 一,03. .11. 一.08. ているように言う。. なるべく当たっていない人を当てるようにしている。 ノートを見て,違っていたら違っていると教えてくれる。 わからないことを人に尋ねたり自分で調べたりするように 二. 40. .00 ,04. ,. 茜つ。. 人が発表した後に,「いいですか」と言って,私たちに尋 ねてくれる。. 41. 授業中に勉強が分からなくて困っている人がいたら,その. 5,61掌. .19. ,22. 一,20. .36. 42. 人の所まで行って教える。 手をあげなくても,どんどん先生のほうから当てていく。. 5,84禦. ,19. .22. 一,20. ,36. 10.6. 8.7. 8.7. 5.2. 寄与率(%). 20.
(23) 喜んでくれる」,「間違った答えを言ったとき,周りの人が笑わないよ うに言う」など,学習中の児童の気持ちに寄り添い,児童が安心して学 べるように配慮した温かい支援行動に関する内容から構成されている。. よって,第1因子を「温かい支援行動」の因子と命名した。第2因子に 高く負荷した9項目は,「授業中,私たちの顔を見渡してくれる」など の児童と教師の相互理解や,「問題が解けないときはヒントを出してく れる」などの児童の学習理解を深めようとする行動から構成されている。. よって,第2因子を「理解を深めようとする行動」の因子と命名した。 第3因子に高く負荷した6項目は, 「私たちの質問にていねいに答えて くれる」などの誠実でていねいな指導行動や,r間違えてもいいから, 勇気をもって発表するように言う」などの児童に積極的な学習態度を要. 求する行動から構成されている。よって,第3因子を「学ぶ姿勢を伝え. る行動」の因子と命名した。第4因子に高く負荷した4項目は, rr勉 強しなさい,勉強しなさい』と言う」, 「騒がしいときは真面目にする. ように注意する」などで,いずれも児童に学習を徹底させる教師の行動 を表す項目であり,そのまま「学習を徹底させる行動」の因子と命名し た。. なお,以後の分析では,学級単位でまず各項目ごとに学級児童の得点 を加算し児童数で割って項目ごとの学級平均値を求め,つぎにその平均. 値を各因子に高く負荷した上記の13項目,9項目,6項目,4項目でそ れぞれ加算し項目数で割った因子得点(得点分布1点∼4点)をもっ て児童の認知による教師の指導行動の頻度の指標とした(Table 4)。. 21.
(24) Table 4 教師行動に対する児童の認知に関する項目の因子別平均値および標準偏差. 因. 子. 1平均値 騨偏差. 第1因子 温かい支援行動. 2.81. 0,29. 謔Q因子 理解を深めようとする行動. R,10. 0,16. 謔R因子 学ぶ姿勢を伝える行動. R.05. 0.19. 謔S因子 学習を徹底させる行動. R.07. 0,27. 2 児童の学習目標 (1)学級間の差. まず,児童の学習目標における学級聞の差が,検討に値するほど異なっ. ているかどうかを吟味した。具体的には,フィラー項目を除いた14の項. 目ごとに,4っの段階に1点∼4点の得点を与え(高得点であるほど目 標指向性が強いことを示す),学級別に平均値を求めた。そして,14の 項目ごとに,31の学級を独立変数,各学級内での児童による変動を誤差. 要因として,1要因の分散分析を行った。その結果,14項目のすべてに おいて有意なF比が得られ,児童の学習目標に関して学級問の差が存在 することが確認されたくTable 5)。. 22.
(25) TabIe 5. 児童の学習目標14項目の学級間差および主成分分析の結果. 項. 目. 第上子. 第2因子. 1,58零. 0.75. 0.04. 0.04. F(30.73、》. 1. テストを返してもらったら,自分が間違えた問題について,間違. 2 3. 問題が難しくてもがんばって解きたいと思います。. 1,673. 0.69. 勉強は,結果よりもどのくらいがんばったかが大切だと思います。. 1,12零. 0.66. 0.12. 4. 私は,新しいことを知るために勉強をするのだと思います。. 1,55躍. 0.61. 一〇.06. 5. 答えを間違えても,それは次の勉強のためになると思います。. 1,75窒. 0.59. 0.13. 6 7. 友だちが勉強で困っていたら教えてあげたいと思います。. 玉.62掌. 0.57. 0.06. 勉強は人のためではなく,自分のためにするものだと思います。. 1.45零. 0.43. 一〇,11. 8 9. 私は,人より成績をよくするために勉強をするのだと思います。. 1.34掌. 0.06. 0.68. 勉強をがんばって,友だちに勝ちたいと思います。. 1,99零. 一〇,14. 0.66. 10. 良い点を取ったら,先生や家の人にほめてもらいたいと思います。. 1,24*. 一〇,19. 0.65. 11. 勉強で大切なのは,テストでいい点を取ることだと思います。. 2,03准. 0.11. 0.63. 12. 自分のテストの点が友だちより良かったかどうか,知りたいと思. 3,853. 0.17. 0.59. えたわけを知ることが大切だと思います。. います。. 13. 答えを間違えたときは,がっかりしてやる気がなくなります。. 1,83零. 0.20. O.52. 14. 私は,難しい問題よりやさしい問題を解きたいと思います。. 2,39*. 0.26. 0.29. 20.8. 17.6. 寄与率(%). (2)児童の学習目標の構成因子. 学習目標の測定で用いた尺度は,一過程指向と対をなす結果指向に関す. る項目から構成されていたので,それを確認するため,学習目標項目に 関する児童の回答間の相関係数を元に主成分分析→バリマックス回転を 行った。その結果,因子抽出における固有値の変動のようすや回転後の. 因子パターンの解釈可能性から,Table 5に示すように2因子解を採択 した。. Table 5について,一方の因子に0.43以上の負荷量を示し,同時に他 方の因子に0、21以上の負荷量を示さないことを基準に因子の内容を検討. 23.
(26) した。第1因子に高く負荷した7項目は, 「勉強は,結菓よりもどのく らいがんばったかが大切だと思います」,「私は新しいこ・とを知るため. に勉強をするのだと思います」などで,いずれも過程指向に関する項目. であったため,「過程指向」の因子と命名した。また,第2因子に高く 負荷した6項目は,「私は,人より成績をよくするために勉強をするの だと思います」,「勉強で大切なのは,テストでいい点を取ることだと 思います」などで,いずれも結果指向に関する項目であったため,「結 果指向」の因子と命名した。項目14の「私は,難しい問題よりやさしい 問題を解きたいと思います」は,どちらの因子にも含まれなかった。. なお,以後の分析では,学級単位でまず各項目ごとに個人の得点を加 算し,学級児童数で割って項目ごとの学級平均値を求め,つぎにその平. 均値を各因子に高く負荷した上記の7項目,6項目でそれぞれ加算し項 目数で割った因子得点(得点分布ユ点∼4点)をもってその学級児童の 過程指向得点,結果指向得点とした。いずれの得点も,得点が高いほど 過程指向,結果指向が強いことを意味する(Table 6)。. Table 6 児童の学習目標の因子別平均値および標準偏差. 因. 平均値. 子. 標準偏差. 第1因子. 過程指向. 3,33. 0,モ3. 謔Q因子. 結果指向. Q,57. 0.18. 24.
(27) (3}児童の学習目標の過程指向と結果指向との関連. 児童の学習目標の過程指向と結果指向との関連を検討するために,過. 程指向(1>×結果指向(1)に関して,ピアソンの積率相関係数を算 出した。Table 7から分かるように,過程指向得点と結果指向得点との 間には有意な直線的関係は見られなかった。. Table 7 児童の学習目標の過程指向と結果指向との関連(ピアソンの積率相関係数〉. 過程指向. 過程指向. 級ハ指向. 1.00. E. 結果指向. −0,14. 一〇.14. 1,00. 3 教師の指導行動と児童の学習目標との関連 児童の学習目標の過程指向,結果指向と関連を示す教師行動は児童の 認知を通すとどのような行動であるのかを特定するために,教師の指導. 行動(4)×児童の学習目標(2)の8の組み合わせに関して,両者の 間の相関図を作成するとともに,ピアソンの積率相関係数を算出した。. Table 8とFig,3∼Fig,5から分かるように,過程指向得点は指導 行動の3っの因子(「温かい支援行動」, 「理解を深めようとする行動」. 「学ぶ姿勢を伝える行動」)の得点と有意な直線的関係を示した。特に. 過程指向得点と「理解を深めようとする行動」の得点とのr値は0,73と 高く,強い正の相関関係を示した。結果指向得点と指導行動の各因子の 得点との有意な直線的関係は見られなかった。. 25.
(28) ま:た,教師行動と過程指向との相関関係に関して結果指向による影響. を統制した偏相関を求め,教師行動と結果指向との相関関係に関して過 程指向による影響を統制した偏相関を求めた。それぞれの偏相関係数は 先の相関係数と比べて大きな違いはなかった(Table 8)。. Table 8 教師行動に対する児童の認知と児童の学習目標との関連(ピアソンの積率相関係数). 児童の過程指向. 児童の結果指向. 温かい支援行動. 0,39 ホ. (0.39 * ). 一〇.02. 揄. O,73‡. (0,73* ). 0.03. wぶ姿勢を伝える行動. O,52*. (0,53‡ ). 一〇,09. w習を徹底させる行動. O,33. を深めようとする行動. (0.33. ). 0.01. (0,05). (0.03). (0.15). (0.01). (注)最中のく )内の数値はそれぞれもう一方の指向得点による影響を統制した 偏相関係数である。. 3.7. 1. 噺 3.5. → ◎. ◎φ. 但 皿 帖 胆. 凄ψ. 争. ◎. ◎. 3.1. 寧. ◎. @◆ 仁壷. ◇. 3.3. ◎. ◆. 璽 2.9. 2.7 1. 2.5 1.5. 2. 2。5. 3. 35. 温かい支援行動. 4. i }. l 臼g.3 「温かい支援行動」と「過程指向」の関連. 26. 1.
(29) コ 3.7 φ◇. 3。5. φ◎ .. ◎. .厘3・3. ◇ $ 3・’・ 、令. ゆ. 趨3・1. 頸2.9. 2.7 2.5. 1. L. 理解を潔めようとする行動 Fig.4 「理解を深めようとする行動」と「過程指向」の関連. 3.7 ◎. 3.5. ◎φ. 1. 轟艶争. 疸3・3. 。. 趨3・1. ・㌢. 頭2,9. l 2.7. l i. 2.5. 1・5. 2. 2・5. 3. 3・5. 学ぶ姿勢を伝える働. 4{ 1. 師・学ぶ姿勢を伝える行動・と・過程指向・の関連_」. 第2節 教師の指導行動と教師の学習目標 1 教師の学習目標 (1)教師の学習目標の構成因子. 学習目標の測定で用いた尺度は,過程指向と対をなす結果指向に関す る項目から構成されていたので,それを確認するため学習目標項目に関 する31名の教師の回答間の相関係数を元に主成分分析→バリマックス回. 27.
(30) 転を行った。その結果,因子抽出における固有値の変動のようすや回転. 後の因子パターンの解釈可能性から,Table 9に示すように4因子解を 採択した。. Table 9について,一方の因子に0,55以上の負荷量を示し,同時に他 方の因子に0.40以上の負荷:量を示さないことを基準に因子の内容を検討. した。第1因子に高く負荷した4項目は,「学習は結果よりもそれまで の努力の方が大切だと思う」,「友だちが学習で困っていたら助ける子 どもであってほしい」など,学習での努力と友だちとの協力を尊重する. 項目で構成されている。そこで,第1因子を「努力と協力」の因子と命. 名した。また,第2因子に高く負荷した3項目は,「学習は人のためで はなく自分のためにするものであることを子どもに分かってもらいたい」 「新しいことを知るために学習に励んでほしい」など,いずれも学習の 本質を尊重する項目であったため,「学習の本質」の因子と命名した。. 第3因子に高く負荷した4項目は,「友だちに対して競争心をもって学 習に励んでほしい」,「学習で大切なのはテストで良い結果を出すこと だと思う」など,学習の結果や友だちとの競争を重視する項目であった ため, 「結果と競争」の因子と命名した。第4因子に高く負荷した2項 目は,「子どもが答えを間違えて意欲を無くすのは自然なことだと思う」 「難しい問題をやりたがらなくても易しい問題を意欲をもって解いてく れれば良いと思う」で,課題挑戦への期待が低い項目であったため, 「課題挑戦への低い期待」の因子と命名した。項目14の「人より成績を. 上げる目的で学習に励んでほしい」は,結果指向に関する項目であると 予想されたが,回答結果ではどの因子にも含まれなかった。. 以上,教師の学習目標は4っの因子から構成されていた。これらの因. 子の内容を理論的に検討すると,第1因子の「努力と協力」と第2因子 の「学習の本質」が過程指向に関するもの,第3因子の「結果と競争」 と第4因子の「課題挑戦への低い期待」が結果指向に関するものであっ た。. 28.
(31) Table 9 教師の学習目標14項目の主成分分析の結果 項 ーム 9臼. 目. 第姻子. 第2因子. 第3因子. 第姻. 難しい問題でも粘り強く解く子どもであってほしい。. O.81. 0.◎5. 一〇,33. 0.1. Fだちが学習で困っていたら助ける子どもであづてほしい。. O.79. O.00. │0.26. │0.1. 3 答えを聞違えても次の学習に生かしてほしい。. 0.66. 0,32. 4 学習は結果よりもそれまでの努力の方が大切だと思う。. 0,55. −0.20. 5. テストが返ってきたら間違えた問題について聞違えた理由を考. −0.05. 0、19. 0.39. −0,10. 一〇,04. 0,83. 0,09. 0,33. 0,78. −0.01. −0,19. 0.73. −0.09. 0,04. えてほしい。. 6. 新しいことを知るために学習に励んでほしい。. 7. 学習は人のためではなく自分のためにするものであることを子. 0,09 −0.11. どもに分かってもらいたい。. 8. テストが返ってきたら自分の点と友だちの点を比較してどうだ. 0.09. 一〇.21. 0.76. 0、07. ったのか考えてほしい。. 9. 家族に誉めてもらえるように学習に励んでほしい。. −0,16. 0.02. 0.73. 0.ユ5. 1Q. 友だちに対して競争心をもって学習に励んでほしい。. −0.29. 0.29. 0,58. −0。04. 11. 学習で大切なのはテストで良い結果を出すことだと思う。. −0,06. 0.00. 0,57. −0,29. 12子どもが答えを間違えて意欲を無くすのは自然なことだと思う。一〇.11. 13難しい問題をやりたがらなくても易しい応召を意欲をもって解 いてくれれば良いと思う。. 14人より成績を上げる目的で学習に励んでほしい。. 一〇.06. 0.16. 一〇,17. 0.12. 0,31. −0.Q7. 0,90. 0,06. 0,78. 0,36. 0.31. 153. 132. なお,以後の分析では,各因子に高く負荷した4項目,3項目,4項 目,2項目をそれぞれ個人ごとに加算して項目数で割った得点をもって. 教師の学習目標の因子別指向得点(得点分布1点∼4点)とした。いず れの得点も得点が高いほどその因子内容の指向が強いことを意味する (Table 10> o. また,第1因子に高く負荷した4項目と第2因子に高く負荷した3項 目の計7項目を個人ごとに加算して項目数で割った得点をもって過程指. 29.
(32) 向合成得点(得点分布ユ点∼4点),第3因子に高く負荷した4項目と 第4因子に高く負荷した2項目の計6項目を個人ごとに加算して項目数 で割った得点をもって結果指向合成得点(得点分布1点∼4点)とした。 いずれの得点も得点が高いほど過程指向,結果指向が強いことを意味す る(Table 11)。. Table 10 教師の学習目標の因子別平均値および標準偏差. 因. 子. 平均値. 第ユ因子. 努力と協力. 3.86. 0.24. 謔Q因子. 学習の本質. R,86. 0,29. 謔R因子. 結果と競争. Q,00. 0.48. 謔S因子. 課題挑戦への低い期待. Q.69. 0,80. 標準偏差. Table l1. 教師の学習目標の過程指向合成得点および結果指向合成得点の平均値と標準偏差. 合成得点. 平均値. 過程指向. 3、86. 0,19. 級ハ指向. Q.23. 0,41. 30. 標準偏差.
(33) ② 教師の学習目標の過程指向合成得点と結果指向合成得点との 関連. 教師の学習目標の過程指向合成得点と結果指向合成得点との関連を検. 討するために,過程指向(ユ)×結果指向(1>に関してピアソンの積 率相関係数を算出した。. Table 12から分かるように,過程指向得点と結果指向得点との間に は有意な直線的関係は見られなかった。. Table 12 教師の学習目標の過程指向合成得点と結果指向合成得点との関連(ピアソンの積率 相関係数). 合成得点 過程指向. 級ハ指向. 過程指向 1,00. 結果指向 0.06. ?O・06. 1・00. 2 教師の指導行動と教師の学習目標との関連 (1)教師の指導行動と教師の学習目標(4因子)との関連 教師自身の学習目標が教師の指導行動に対する児童の認知を通して児 童の側に正確に伝わっているかどうかを補完的に検討するために,児童 の認知した指導行動の各因子と教師自身による学習目標の各因子との関. 連を調べた。Table l3は教師の指導行動(4)×教師の学習目標(4) の16の組み合わせに関してピアソンの積率相関係数を算出したものであ る。Table 13から分かるように,指導行動の得点と教師の学習目標の 各因子の得点との間に有意な直線的関係は見られなかった。. 31.
(34) Table 13 教師行動に対する児童の認知の各因子と教師の学習目標の各因子との関連(ピアソンの積率相関 係数). 教師 努力と協力. 学習の本質. の 学 習 結果と競争. 目. 標. 課題挑戦への低い期待. 温かい支援行動. 0.ユ6. 一〇,19. 一〇.24. 理解を深めようと する行動. 0.15. 一〇,16. 一〇,12. 学ぶ姿勢を伝える 行動. 0.23. 一〇,06. 一〇,0ユ. 一〇,20. 学習を徹底させる 行動. 一〇,10. 0.20. 一〇,ユ3. 一〇.07. 0.08. ’一. Z,20. ② 教師の指導行動(4因子)と教師の学習目標く合成した過程 指向得点,結果指向得点)との関連 教師自身の学習目標(過程指向合成得点,結果指向合成得点)が教師 行動の認知を通して児童の側に正確に伝わっているかどうかを補完的に 検討するために,児童の認知した教師の指導行動の各因子と教師自身の 学習目標(過程指向合成得点,結果指向合成得点)との関連を調べた。. Table 14は教師の指導行動(4)×教師の学習目標(2)の8の組み 合わせに関してピアソンの積率相関係数を算出したものである。. Table 14から分かるように,指導行動の得点と教師の学習目標の過 程指向の得点,結果指向の得点との間に有意な直線的関係は見られなかっ た。. また,指導行動の各因子と教師の学習目標の過程指向との相関関係に 関して結果指向による影響を統制した偏相関を求め,指導行動の各因子 と教師の学習目標の結果指向との相関関係に関して過程指向による影響 を統制した偏相関を求めた。. 32.
(35) Table 14から分かるように,指導行動の得点と教師の過程指向得点, 結果指向得点との偏相関係数は,先の相関係数と比べて大きな違いはな かった。. Table 14 教師行動に対する児童の認知の各因子と教師の学習目標(過程指向合成得点, 結巣指向合成得点)との関連(ピアソンの積率相関係数) 教師の過程指向 温かい支援行動. 揄. を深めようとする行動. 教師の結果指向. 一〇,01 ( 0,00). 一〇.13 (一〇.13). O,00 ( 0,01). 一〇,22 (一〇,22). wぶ姿勢を伝える行動. O,13 ( 0.14>. 一〇,14 (一〇,ユ5). w習を徹底させる行動. O.06 〈 0,07>. 一〇,15 ( 0,ユ8). (注)表中の( )内の数値はそれぞれもう一方の指向得点による影響を統制 した偏相関係数である。. 第3節教師の学習目標と児童の学習目標 1 教師の学習目標の各因子と児童の学習目標の過程指向,結果 指向との関連. 教師自身の学習目標は教師行動の認知を通すと児童の学習目標にどの ような影響を与えているのかを補完的に検討するために,教師の学習目 標の各因子と児童の学習目標(過程指向,結果指向)との関連を調べた。. Table 15は教師の学習目標(4)×児童の学習目標(2)の8の組み 合わせに関してピアソンの積率相関係数を算出したものである。 Tab玉e 15から分かるように,教師の学習目標の「結果と競争」の得. 33.
(36) 点と児童の学習目標の「結果指向」得点とのr値は0,37で,有意な正 の相関関係を示した。. また,教師の学習目標の各因子と児童の学習目標の過程指向との相関 関係に関して結果指向による影響を統制した偏相関を求め,教師の学習 目標の各因子と児童の学習目標の結果指向との相関関係に関して過程指 向による影響を統制した偏相関を求めた。. その結果,教師の学習目標の「結果と競争」の得点と児童の学習目標 の「結果指向」得点とのr値は0,38で,この部分のみに有意な正の相関 関係を示した。. 2 教師の学習目標の過程指向,結果指向と児童の学習目標の過 程指向,結果指向との関連. 教師自身の学習目標は教師の指導行動に対する児童の認知を通すと児 童の学習目標にどのような影響を与えているのかを補完的に検討するた めに,教師の学習目標(過程指向,結果指向)と児童の学習目標(過程 指向,結果指向)との関連を調べた。Table 16は教師の学習目標(2). ×児童の学習目標(2)の4の組み合わせに関してピアソンの積率相関 係数を算出したものである。. Table 16から分かるように,教師の学習目標(過程指向,結果指向). の得点と児童の学習目標(過程指向,結果指向)の得点との間に有意な 直線的関係は見られなかった。. また,教師の学習目標の過程指向と児童の学習目標の過程指向との相 関関係に関して結果指向による影響を統制した偏相関を求め,教師の学 習目標の結果指向と児童の学習目標の結果指向との相関関係に関して過 程指向による影響を統制した偏相関を求めた。. その結果,それぞれの組み合わせに関して有意な直線的関係は見られ なかった。. 34.
(37) Table 15 教師の学習目標の各因子と児童の学習目標との関連(ピアソンの積率相関係数). 児童の過程指向. 児童の結果指向. 努力と協力. 0.10. ( 0,12 ). 0,14. w習の本質 級ハと競争 ロ題挑戦への低い期待. O、02. ( 0.00 ). 一〇,12. O.03. ( 0,09 }. 0,37*. ( 0,38* )一〇,20. (一〇,21 ). ( 0.16. ). (一〇.12 一〇,05. (一〇,08. ) >. (注)表中の( )内の数値はそれぞれもう一方の指向得点による影響を統制した 偏相関係数である。. Tabie 16 教師の学習目標の過程指向,結果指向と児童の学習目標の過程指向,結果指向との 関連(ピアソンの積率相関係数). 児童の過程指向. 教師の過程指向. 0,09 ( 0,09. ウ師の結果指向. 黶Z,10 (一〇,07. ). 児童の結果指向 0,02 ( 0.03. ). ). 0,25 ( 0,24 ). (注)表中の( )内の数値はそれぞれもう一方の指向得点による影響を統制した 偏相関係数である。. 35.
(38) 第4章 考察 本研究では,児童の学習目標と関連を示す教師の指導行動を児童の認 知を通して特定することを第一の目的とするとともに,教師自身の学習 目標が教師行動の認知を通して児童に正確に伝わっているかどうか,ま た,教師自身の学習目標は児童の学習目標にどのような影響を与えてい るかについても検討することをねらっていた。. はじめに,児童め学習目標と関連を示した教師の指導行動についての 考察を行う。. 結果より,児童の過程指向と関連を示した教師行動は, 「温かい支援. 行動」,「理解を深めようとする行動」,「学ぶ姿勢を伝える行動」で. あった。よって,これら3っの教師行動群を児童の過程指向をより高め る可能性のある教師行動であると特定できた。児童はこれらの教師行動 を観察することで教師の学習目標が過程指向であると認知し,過程指向 の考え方を取り込んだ結果,児童の学習目標はそれまでに形成していた 学習目標から過程指向へと方向づけられた可能性が高いことが示唆され た。. それでは,なぜ,児童は3つの教師行動群から教師の学習目標を過程 指向であると認知したのであろうか。このことについて,それぞれの教 師行動群ごとに考えていくことにする。. まず,第1因子の「温かい支援行動」は,項目10の「友だちの意見を 聞いて,周りの人がrえ一』と言わないように言う」,項目13の「間違っ. た答えを言ったとき,周りの人が笑わないように言う」などの児童が安 心して学べるように配慮する行動や,項目8の「先生も同じ気持ちになっ. て考えてくれる」,項目6の「作品や作文の工夫したところやがんばっ たところを見つけてほめてくれる」などの児童の気持ちに寄り添う行動 から構成されていた。これらは,児童が課題解決に取り組む過程で間違 えることへの抵抗を取り除いたり,学ぶ過程を重視しその結果として児 童の努力を認めたり成果を賞賛したりする行動であると考えられる。っ. 36.
(39) まり「温かい支援行動」から,児童は学習過程を重視しようとする教師 の指導観を読み取ったものと推測される。. つついて,第2因子の「理解を深めようとする行動」は,項目18の 「私たちが問題を考える時間を多く取ってくれる」,項目20の「問題演 解けないときはヒントを出してくれる」などの児童自らが課題を解決し ていけるような支援や,項目22の「勉強の分かりにくいところをよく説 明してくれる」などの学習理解を深めようとする行動や,項目19の「授 業中,私たちの顔を見渡してくれる」などの児童の思考を把握しようと する行動から構成されていた。これらは,児童自身が思考することやよ りよく理解することなど学習の本質にあたる行動を重視し,児童の思考 を注意深く読み取ることにより効果的な働きかけをしょうとする行動で あると考えられる。このように,「理解を深めようとする行動」から,. 児童は本質的な学習理解を促進しようとする教師の指導観を読み取った と推測される。. 最後に,第3因子の「学ぶ姿勢を伝える行動」は,項目24の「私たち の質問にていねいに答えてくれる」,項目27の「先生の間違いを教えて あげると,先生はそれを認めてくれる」などの誠実でていねいな指導行 動や,項目25の「間違えてもいいから,勇気を持って発表するように言 う」などの児童に積極的な学習態度を要求する行動から構成されていた。. これらに共通しているのは,学習に真正面から取り組む態度であると考 えられる。このような態度から,児童は学習することの価値を十分に受 け止めている教師の指導観を読み取ったのではないかと推測される。. 以上,児童の過程指向と関連を示した3っの指導行動群から読み取れ る教師の指導態度は,学習過程を重視し,本質的な学習理解を促進しよ うとし,学習の価値を十分受け止めている態度であるとまとめることが できる。これは,学習目標の過程指向そのものを表している。よって,. 児童は3っの指導行動群の頻度が高いと認知するほど教師の過程指向を 強く認知したものと考えられる。. また,これらの教師行動群は,Ames(1992)が提唱した児童のマスタ リー指向を高める指導方法とも対応していると考えられる。つまり,第. 37.
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