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 本研究では,児童の学習目標と関連を示す教師の指導行動を児童の認 知を通して特定することを第一の目的とするとともに,教師自身の学習

目標が教師行動の認知を通して児童に正確に伝わっているかどうか,ま た,教師自身の学習目標は児童の学習目標にどのような影響を与えてい るかについても検討することをねらっていた。

 はじめに,児童め学習目標と関連を示した教師の指導行動についての 考察を行う。

 結果より,児童の過程指向と関連を示した教師行動は, 「温かい支援 行動」,「理解を深めようとする行動」,「学ぶ姿勢を伝える行動」で あった。よって,これら3っの教師行動群を児童の過程指向をより高め る可能性のある教師行動であると特定できた。児童はこれらの教師行動 を観察することで教師の学習目標が過程指向であると認知し,過程指向 の考え方を取り込んだ結果,児童の学習目標はそれまでに形成していた 学習目標から過程指向へと方向づけられた可能性が高いことが示唆され

た。

 それでは,なぜ,児童は3つの教師行動群から教師の学習目標を過程 指向であると認知したのであろうか。このことについて,それぞれの教 師行動群ごとに考えていくことにする。

 まず,第1因子の「温かい支援行動」は,項目10の「友だちの意見を 聞いて,周りの人がrえ一』と言わないように言う」,項目13の「間違っ た答えを言ったとき,周りの人が笑わないように言う」などの児童が安 心して学べるように配慮する行動や,項目8の「先生も同じ気持ちになっ て考えてくれる」,項目6の「作品や作文の工夫したところやがんばっ たところを見つけてほめてくれる」などの児童の気持ちに寄り添う行動 から構成されていた。これらは,児童が課題解決に取り組む過程で間違 えることへの抵抗を取り除いたり,学ぶ過程を重視しその結果として児 童の努力を認めたり成果を賞賛したりする行動であると考えられる。っ

まり「温かい支援行動」から,児童は学習過程を重視しようとする教師 の指導観を読み取ったものと推測される。

 つついて,第2因子の「理解を深めようとする行動」は,項目18の

「私たちが問題を考える時間を多く取ってくれる」,項目20の「問題演 解けないときはヒントを出してくれる」などの児童自らが課題を解決し ていけるような支援や,項目22の「勉強の分かりにくいところをよく説 明してくれる」などの学習理解を深めようとする行動や,項目19の「授 業中,私たちの顔を見渡してくれる」などの児童の思考を把握しようと する行動から構成されていた。これらは,児童自身が思考することやよ りよく理解することなど学習の本質にあたる行動を重視し,児童の思考 を注意深く読み取ることにより効果的な働きかけをしょうとする行動で あると考えられる。このように,「理解を深めようとする行動」から,

児童は本質的な学習理解を促進しようとする教師の指導観を読み取った と推測される。

 最後に,第3因子の「学ぶ姿勢を伝える行動」は,項目24の「私たち の質問にていねいに答えてくれる」,項目27の「先生の間違いを教えて あげると,先生はそれを認めてくれる」などの誠実でていねいな指導行 動や,項目25の「間違えてもいいから,勇気を持って発表するように言 う」などの児童に積極的な学習態度を要求する行動から構成されていた。

これらに共通しているのは,学習に真正面から取り組む態度であると考 えられる。このような態度から,児童は学習することの価値を十分に受 け止めている教師の指導観を読み取ったのではないかと推測される。

 以上,児童の過程指向と関連を示した3っの指導行動群から読み取れ る教師の指導態度は,学習過程を重視し,本質的な学習理解を促進しよ うとし,学習の価値を十分受け止めている態度であるとまとめることが できる。これは,学習目標の過程指向そのものを表している。よって,

児童は3っの指導行動群の頻度が高いと認知するほど教師の過程指向を 強く認知したものと考えられる。

 また,これらの教師行動群は,Ames(1992)が提唱した児童のマスタ リー指向を高める指導方法とも対応していると考えられる。つまり,第

1因子の「温かい支援行動」は内容的にAmes(1992)の説く指導方法

「生徒の努力を認める」を含み,第2因子の「理解を深めようとする行 動」は内容的にAmes(1992)の「個人の向上,進歩,習熟に注目する」

「向上していく機会を与える」を含み,第3因子の「学ぶ姿勢を伝える 行動」は内容的にAmes(1992)の「間違いを学習の一部としてみるこ とができるように勇気づける」を含んでいると考えられる。

 以上のことから,児童の過程指向をより高めるためには,児童の過程 指向を促すと予想される先の教師行動を積極的に行うことが有効である

と考える。その中でも,「理解を深めようとする行動」と児童の過程指 向との関連は特に高く,教師は児童自身が思考を深めるための促進的な 働きかけについて十分注意を払う必要があると考える。

 また,第4因子の「学習を徹底させる行動」と児童の過程指向との相 関は有意ではなく,他の3っの教師行動群と比較して相対的に低い関連 にとどまっていた。その理由についてはつぎのように考える。

 「学習を徹底させる行動」は,教師が学級の児童全員に学力を育成し ようとしたり一一斉指導を効果的に行おうとしたりする際に教師が取りが ちな行動である。このような教師行動から児童は学習の大切さを学ぶで あろう。しかし,「学習を徹底させる行動」は他の3っの教師行動群と 比較すると教師の一方的な指示や指導であるという色合いが強く現れて いる。そのために,他の教師行動群と比較して過程指向との関連が低く なったのではないかと考えられる。

 このことから,児童の過程指向をより高める教師行動とは,学習の主 体としての児童の立場を尊重し,児童との相互理解や相互交流を大切に する態度が根底に流れているのではないかと推測される。この考え方は,

学習者中心的指導と児童のラーニング指向との関連を明らかにした伊藤

(1990,1991,エ992)の研究結果とも一致している。

 一方,伊藤(1990,1991,1992)の研究結果では,教師中心的指導と 児童のパフォーマンス指向との関連も示されたが,本研究結果からは教 師行動と児童の結果指向との間に相関が認められなかったため,結果指 向を高めると考えられる教師行動を特定することができなかった。この

問題については以下のように考える。

 まず,一つには,質問項目作成上に問題があったのではないかと考え る。本研究で取り上げた教師行動が全般的に過程指向に関する行動であっ たことから,これらの教師行動以外に児童の結果指向に関連する教師行 動があったのかもしれない。

 二つ目には,調査方法上の問題であると考える。本研究では,教師行 動の頻度と児童の過程指向,結果指向との関連について分析したが,教 師行動は過程指向のみと関連を示した。もしかしたら結果指向は教師行 動の頻度とは関連を示しにくいのかもしれない。具体的には,児童が教 師のある行動を観察して結果指向に関するものであると認知したとする。

その際の教師行動が児童の学習目標に与える影響はかなり強く,極端な 言い方をすれば,たとえ一度限りの行動であっても児童の結果指向を高 める性質のものであるのかもしれない。児童の結果指向と教師行動との 関連については,今後さらに究明していく必要がある。

 つぎに,教師自身の学習目標は児童に正確に認知されていたのかにつ いて考察する。

 結果より,教師の学習目標と教師行動群との間には関連が認められな かった。この結果は,児童の認知を通した教師行動群は必ずしも教師の 学習目標を反映したものであるとはいえないということを示している。

つまり,教師自身の学習目標は教師行動の認知を通しては児童には正し く伝わっていないのではないかと推測できる。その理由をつぎのように

考える。

 まず,教師が自分の学習目標に沿った行動を取っていなかった可能性 が挙げられる。しかし,本研究では教師行動の測定を児童の認知を通し て行っているため,教師自身が自らの目標に基づいてどのような行動を 取ろうと考えていたのか,また,実際の行動がどうだったのかは不明で

ある。

 また,児童側の認知が歪んでいた可能性も挙げられる。岡山県教育セ ンター(1981)によると,児童の対教師関係と児童から見た教師の教育 相談的態度(無条件の肯定的な配慮,一致性,共感的理解)との間に相

ドキュメント内 児童の学習目標に関連する教師行動の研究 (ページ 38-57)

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