探索的フィールド解析
-- 作業の繰り返しに見る共同行為の時間構造 —
Explorative analysis of field data collection
-- the routines the joint action and their time structure –
細馬宏通
1Hiromichi Hosoma
11
滋賀県立大学人間文化学部
1
University of Shiga Prefecture
本発表では、日常活動や作業のフィールド研究に おいて、時間構造の分析データをいかに探索的に収 集し、どのような着眼点で分析を行うかについて述 べる。 条件を統制された実験データに比べて、フィール ドで起こるできごとはさまざまな要因の介在する多 様な内容を持った現象である。こうした現象を扱い 活用するには、あらかじめ見たい要因を絞り込むの ではなく、むしろこれまで考えたことのなかった要 因を発見し、そのおおよその性質を明らかにするこ とを目標とし、精緻な分析は別の観察や実験に委ね るのがよい。 単に活動を記述するだけでなく、その活動の時間 構造を論じるには、比較対象が必要となる。この比 較対象として有効なのが「ルーティーン」である。 日常生活では日々全く異なる活動が行われているわ けではなく、むしろいくつかの決まったルーティー ンによって成り立っている。このルーティーンを何 度も記録し、それぞれの時間構造を比較することに よって、ルーティーン内部がどのような行為の連鎖 で構成されているか、そこにはどのような変異があ るかを知ることができる。 ルーティーンの記述・分析にあたっては、ゴール 達成に失敗する事例、ルーティーン内部でいくつか のやり直しを含む事例、本来のゴールから逸脱する 事例に注目することが重要である。なぜなら、こう した失敗、やり直し、逸脱をもたらす要因は、他の 要因に比べてその活動を遂行を左右するより重要で あると期待できるからである。失敗、やり直しの事 例を成功例と比較することによって、活動にとって 主要な要因を特定することができる。また、やり直 しの方法を記述していくことで、その活動を達成す るためにどのようなオプションがあるのかを明らか にすることができる。 本発表では、こうしたフィールドワーク研究の具 体例として、野沢温泉村道祖神祭りの準備段階での 活動を二つ取り上げる。一つは、五本の御神木を雪 上に人力で突く「胴突き」と、それに伴って歌われ る「胴突き唄」の事例である。もう一つは、社殿の 上に奉納物や材を人から人へのリレーによって運ぶ 作業の事例である。これらの活動では多人数の参加 者が歌や掛け声を用いて動作のタイミングを調節す ることによって、共同作業を成立させており、そこ では視覚のみならず聴覚、触覚によるコミュニケー ションが重要になっている。多様な要因の関係する この作業でどのような要因が重要かを特定すべく、 胴突きやリレーの繰り返しを観察、撮影し、成功例 とやり直し、失敗例とを比較することで、歌の構造 と掛け声のタイミングが動作の協調にとって重要で あることを示す。 チュートリアル・セッション「フィールド研究の技法」3 人工知能学会研究会資料 SIG-SLUD-B503 − 79 −