組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 一
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格
─ 二〇一二年「会社法制の見直しに関する要綱」を受けて ─三
浦
治
一 はじめに 二 本条の制定経緯 三 本条をめぐる解釈論 (一)本条の適用 (二)本条の類推適用 四 要綱に基づく法規制のもとでの解釈論 (一) 「問題一」について (二) 「問題二」について 五 結びに代えて
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 二
一
はじめに
二〇一二年(平成二四年)九月七日、 法制審議会総会は、 「会社法制の見直しに関する要綱案」を採択した(以 下、 「要綱」とい う ( 1 ( )。それにより、わが国の会社法制に、かねてより議論されていた多重代表訴訟の制度が導入 される予定となった。 要綱第二部第一1は、この導入予定の多重代表訴訟制度について定める。そして、同2は「株式会社が株式交 換等をした場合における株主代表訴訟」として、株式交換 ・ 株式移転 ・ 新設合併 ・ 吸収合併(以下、 「株式交換等」 という)が行われたことによって株主代表訴訟の原告適格を失うはずである場合でも、特定の者については、株 式交換等が行われる前に発生した取締役の責任を追及するために提訴請求をし、代表訴訟を提起することができ る 旨 を 定 め て い る。 他 方、 現 行 会 社 法 八 五 一 条( 以 下、 「 本 条 」 と い う ) は、 代 表 訴 訟 提 起 後 に 株 式 交 換 等 が 行 われた場合の原告株主の原告適格の帰趨について定める条文である。本稿では、上記1や2が定められることが、 本条の解釈にどのような影響を与えるかという問題を考察した い ( 2 ( 。まず、これらの関係を整理しておこう。 上記2は、あらたに代表訴訟を提起しうる旨の規定であるから、株式交換・株式移転の場合は、広義の意味で の多重代表訴訟(厳格な要件が具体的に定められている導入予定の多重代表訴訟(上記1)ではなく、親会社株 主が子会社取締役の責任を追及するために提起できる代表訴訟という一般的な意味)といえそうでもあるし、合 併の場合は、比喩的だが、いわば消滅会社の取締役に対する多重代表訴訟(しかし消滅会社は消滅しているから、 その財産を包括承継した存続会社に対して提訴請求・代表訴訟の提起をすることができるもの)ということもで きる。つまり、上記1と2は、あらたに代表訴訟を提起しうる地位について定めている点で共通する。もっとも、組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 三 上記2は株式交換等の前に発生した責任に限られるものであるから、広義の意味であっても多重代表訴訟の一種 と位置づけるのは不適切であるかもしれない。 そこで、上記2は、現行法に比べて「提訴資格を拡張してい る ( 3 ( 」ともいわれる(以下、上記2の内容を「提訴 資 格 の 拡 張 」 と い う ( 4 ( )。 株 式 交 換 等 の 前 な ら 提 訴 請 求・ 代 表 訴 訟 の 提 起 を す る こ と が で き た 地 位 が ( 5 ( 、 現 行 規 制 と 異なり株式交換等の後でも継続的に認められるようになるという点に着目して、このようにいわれるのであろう。 そして、提訴資格があるということは原告適格があることにほかならないから、それは本条の定めを拡張したも のとも捉えう る ( 6 ( 。しかし、これからあらたに訴えを提起できるという地位が継続的に認められることと、すでに 提起した訴えが却下されずに継続的に訴訟追行できることとは、異なる。後者の場合は、すでに訴訟手続が一定 程度進行していることや、訴訟に費やした費用や時間を考慮したとき、代表訴訟の損害塡補機能や違法行為抑止 機能を発揮させるべき機会を簡単に失わせ、せっかく提起された訴えが簡単に却下されることがないように、よ り柔軟に解釈されるべきではないか。そのことはまた、これからどうすべきかが問題となる解釈と、すでになさ れ た 行 為 を 振 り 返 っ て 法 的 評 価 を 加 え る 場 合 の 解 釈 と の 区 別 と も い え る( 行 為 規 範 と 評 価 規 範 の 区 別 ( 7 ( )。 そ こ で、 本稿では、株式交換等が行われる前に代表訴訟が提起されていた場合には、すでに提起した訴えを原告適格を失 うことなく継続的に追行しうるという意味で、 「原告たる地位の継続」という語をあてることとしたい。すなわち、 本条は「原告たる地位の継続」を定めているところ、上記2によりあらたに「提訴資格の拡張」が認められたも のと整理しておく。また、 導入予定の多重代表訴訟制度 (上記1) を「多重代表訴訟 (制度) 」と記すこととする (カッ コを付さない場合は、広義の意味での多重代表訴訟(制度)である) 。 このように、 「原告たる地位の継続」 と 「提訴資格の拡張」 は密接な関係にあり、 後者が明文で定められることは、
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 四 前 者 の 解 釈 に 影 響 を 与 え る の で は な い か。 ま た、 そ の 解 釈 は、 「 多 重 代 表 訴 訟 」 の 内 容 に も 影 響 を 受 け る の で は ないか。本条の解釈問題については、もともと評価規範としての側面を重視して解釈されるべき問題と思われる が、 あ ら た な 提 訴 請 求・ 代 表 訴 訟 の 提 起( 「 多 重 代 表 訴 訟 」「 提 訴 資 格 の 拡 張 」) が 明 文 で 認 め ら れ る 法 規 制 の も とでは、よりいっそう柔軟な解釈も可能となるのではないかと考える。 以下、まず本条の制定経緯を一瞥した後( 二 )、本条をめぐる解釈論(現行法)を整理し( 三 )、要綱によって 影響を受けると思われる本条の解釈論について、若干の検討を加えたい。具体的には、株式交換等により、原告 株 主 が い っ た ん は 完 全 親 会 社( 株 式 交 換 完 全 親 会 社・ 株 式 移 転 設 立 完 全 親 会 社・ 吸 収 合 併 存 続 会 社 の 完 全 親 会 社)の株主になったものの、その後、当該完全親会社が完全子会社の株式を譲渡して完全親会社でなくなった場 合、原告株主はなお継続して訴訟を追行することが認められるかという問題(以下、 「問題一」とする) 、原告株 主は株式交換・吸収合併によっては株式交換完全親会社・吸収合併存続会社やその完全親会社の株主にはならな かったものの、 別の株式取得原因によってこれらの会社の株主ではあるという場合はどうかという問題 (以下、 「問 題二」とする)である( 四 )。
二
本条の制定経緯
本条は、会社法で新設された規定である。株主代表訴訟の係属中に、原告株主・共同参加人たる株主の原告適 格を基礎づけていた株主たる地位が失われることとなったとしても、一定の場合には原告適格を喪失することな く、当該訴訟を継続して追行することができる旨を規定する。組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 五 代表訴訟制度は昭和二五年商法改正により導入された。その二六七条一 項 ( 8 ( にいう「六月前ヨリ引続キ株式ヲ有 スル株主」は、直接には代表訴訟の前提手続である提訴請求をするための要件であったが、提訴請求の後六十日 の経過後に自ら訴えを提起することができるとする同条三項所定の「同項ノ請求ヲ為シタル株主」の前提である ことから、また、提訴請求をせず、あるいは提訴請求の後六十日を経過しないでも自ら訴えを提起することがで きる場合を規定する同条四項所定の「第一項ノ株主」にあたることから、代表訴訟における原告適格を定めたも のと解されていた。また、被告取締 役 ( 9 ( が就任している(あるいは、就任していた)会社の株主を指すものと解さ れてい た ((( ( 。そして通説は、株主たる地位は、原告適格の判断基準時である当該訴訟の口頭弁論終結時まで維持さ れている必要があり、訴訟係属中にこれを失った場合は訴えは却下されるものと解してい た ((( ( 。 しかしたとえば、代表訴訟提起後に、原告がその株主である会社自体が吸収合併により消滅してしまった場合、 原 告 株 主 は 存 続 会 社 の 株 式 の 交 付 を 受 け る た め に 存 続 会 社 の 株 主 に は な る も の の、 消 滅 会 社 の 株 主 た る 地 位 は 失ってしまう。他方で、消滅会社の取締役に対する損害賠償請求権は、合併による包括承継により存続会社に帰 属する。自らが株主である会社が被告に対する請求権を有しているという状況(利害関係の大きさ)には変化が ないという点に着目すると、訴えを提起した時点における会社が消滅したことを理由として原告適格を失い、訴 えが却下されるという帰結は、奇異にも感じられる。このことは、取締役が責任追及を免れる理由はないのに、 存続会社以外にその責任を追及しうる者がいなくなってしまうということでもあること(提訴懈怠可能性)を考 えると、なおさらである。もっとも、こうした問題は長らく顕在化することがなかった。取締役の責任が時効消 滅しない限り、存続会社の株主としてあらたに代表訴訟を提起できるとも解しうるということもあったかもしれ ない が ((( ( 、何よりも、代表訴訟が提起されることがほとんどない時代が続いたことによるものであろ う ((( ( 。
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 六 その後、平成五年商法改正により代表訴訟の目的の価額が明確化され、訴訟手数料の面で代表訴訟の提起を阻 害していた要因のひとつが取り除かれた。また、平成九年の独占禁止法改正による持株会社解禁を受けて、平成 一一年に株式交換・株式移転の制度を導入する商法改正が行われた。この平成一一年商法改正に際しては、株式 交換・株式移転により完全子会社となる会社の株主はその地位を失って完全親会社の株主となるので、完全親会 社を通じてしか完全子会社の経営に関与することができなくなってしまうという「株主権の縮減」という事態に どのように対処するかが問題となり、その一環として多重代表訴訟制度の導入も議論された。その結果、一定の 改正事項には結実したもの の ((( ( 、多重代表訴訟制度自体の採用は見送られている。そして、その際には、すでに提 起 さ れ た 代 表 訴 訟 に お け る 原 告 適 格 の 帰 趨 の 問 題 は 議 論 さ れ ず、 こ の 点 に 立 法 的 な 手 当 て が な さ れ る こ と も な かった。しかし、平成五年改正以降、代表訴訟が利用されるようになっていたことと、株式交換等を利用した企 業再編行為も活発に行われるようになったこととが相俟って、その後、組織再編行為によって株主たる地位を喪 失した場合に代表訴訟の追行がなお許されるかという問題が現実のものとなっ た ((( ( 。 株式交換・株式移転が行われた場合にこの問題が争われた下級審判決はいずれも、原告適格は失われたものと して訴えを却下し た ((( ( 。明文上はもちろん、解釈上も多重代表訴訟は認められないという解釈論を基礎とするもの である。しかし、実体法上の利益衡量としては、株主たる地位の喪失について株主側に何らの原因があったわけ でもなく、また依然として完全親会社の株主であることで完全子会社との関係がまったく消滅してしまったとい うわけでもないのに、完全親子会社の法人格の異別性だけを理由に原告適格を失うという結論は、いかにも不合 理であ る ((( ( 。上記下級審判決に対する実体法研究者による評釈等は、ほぼすべてがその結論に反対し た ((( ( 。しかし、 実体法上の利益衡量としてはともかく、改正直後の時期であったこともあって民事訴訟法の立場からはその結論
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 七 に疑問の余地は少ないものであり、原告適格の帰趨の問題と位置づけられる以上、解釈論で解決するには限界も あったといえよ う ((( ( 。 それに対して、合併の場合は、前述したように、株主たる地位とともに取締役に対する損害賠償請求権も設立 会社・存続会社に引き継がれるということから、原告適格を失わないという解釈も提唱されてい た ((( ( 。要綱はこう した解釈論を前提としているとされる が ((( ( 、少なくとも会社法制定前の時点では、やはり議論の余地は大きかった ものと思われ る ((( ( 。 こうした状況のもと、平成一七年会社法制定により本条が規定された。章をあらためて検討する。
三
本条をめぐる解釈論
(一)本条の適用 会社法は、多重代表訴訟制度は採用しなかったもの の ((( ( 、株主代表訴訟係属中の原告株主が、株式交換等により 株主たる地位を失うことになっても、なお原告適格を失わない旨を定めた。しかしその範囲にも限界を画してい る。会社法では、いわゆる「対価の柔軟化」が採用されたため、株式交換等によって株主としての地位を失う場 合の中にも、完全親会社や存続会社の株主ですらなくなる場合もありうることとなったからである(また、吸収 合併後に存続会社の完全親会社の株主となるという場合もありうることとなった) 。 代表訴訟が法定訴訟担当として構成されていることからは、取締役の損害賠償責任(訴訟物)に対して一定の 利害関係を有している者に限定して、原告適格が認められることとなろう。代表訴訟の損害塡補機能という側面札幌法学二四巻二号(二〇一三) 八 からも、この利害関係の大きさが考慮される。他方で、代表訴訟の違法行為抑止機能という側面からは、責任追 及を免れる理由もないのに訴えが却下されるという事態は、できるだけ生じないように解されるべきであろう。 本 条 の 制 定 経 緯 を 踏 ま え、 ま た 多 重 代 表 訴 訟 制 度 は 採 用 さ れ て い な い と い う 前 提 の も と で、 「 原 告 た る 地 位 の 継 続」が認められる範囲が解釈されなければならない。 本条の適用を受ける株主は、完全子会社・消滅会社の取締役に対して代表訴訟を提起していた原告株主および 当 該 代 表 訴 訟 に 共 同 訴 訟 参 加 を し て い た 株 主 で あ る( 以 下、 単 に「 原 告 株 主 」 と ま と め る )。 本 条 の い う「 完 全 親会社」は本条および会社法施行規則二一九条一項が定めており、そのために必要な「完全子会社」の定義も同 項が定めている。 本 条 は、 原 告 株 主 が 株 式 交 換 完 全 親 会 社・ 株 式 移 転 設 立 完 全 親 会 社・ 新 設 合 併 設 立 会 社・ 吸 収 合 併 存 続 会 社 や そ の 完 全 親 会 社( 以 下、 「 完 全 親 会 社 等 」 と い う ) の 株 主 と な る 場 合 に 限 定 さ れ た 規 定 で あ る。 そ し て 本 条 は、 たとえば、株式交換・株式移転によって完全親会社の株主になった後、完全子会社の株主であった者が完全子会 社の役員等に対して代表訴訟を提起することを認めるものではない。これは多重代表訴訟そのものである。たと え株式交換・株式移転の前の責任に限定したとしても、あらたな代表訴訟の提起を認めるものではない。本条は 「提訴資格の拡張」まで定めた条文ではない。合併の場合も同様である。 また、本条は、株式交換等「により」原告株主が完全親会社等の株主となったことを要件としている。つまり、 交 換 対 価 や 合 併 対 価 に 完 全 親 会 社 等 の 株 式 が 含 ま れ て お り( 株 式 移 転・ 新 設 合 併 の 場 合 は 当 然 に 含 ま れ て い る )、 完全親会社等の株主となったことが要件である。たとえば、株式交換によっては完全親会社の株式を取得してい な い が、 別 の 株 式 取 得 原 因 に よ っ て も と も と 完 全 親 会 社 の 株 主 で も あ っ た と い う 場 合 で も( 「 問 題 二 」) 、 原 告 適
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 九 格は失われる。原告株主と完全子会社との株式所有を通じた利害関係という面では、本条が規定する場合とちが いはないが、この場合に「原告たる地位の継続」を認めることは多重代表訴訟を認めることに接近する。完全子 会社の株主としての地位に基づいて認められた原告適格は失われていることを前提とすると、完全親会社の株主 としての地位に基づいて訴訟を追行することが認められているとも捉えられるからである。現行会社法が認めて い な い 多 重 代 表 訴 訟 と の 境 界 は、 「 に よ り 」 と い う 要 件 で 画 さ れ て い る も の と 解 さ れ る。 株 式 交 換 等 の 後 に 代 表 訴訟に参加する者も、株式交換等により完全親会社等の株主になった者に限られるであろ う ((( ( 。 本条が規定された以上、原告株主が株式交換等に賛成したかどうかが問われないことに問題はなくなっ た ((( ( 。代 表訴訟の追行については本条が適用されることを前提としたうえで、株式交換等に賛成するかどうかを判断しう るからである。 完全親会社等が単元株式制度を採用しており、当該完全親会社等に対する提訴請求ができない単元未満株式し か取得できなかった場合(一八九条二項参照)はどうか。本条は完全親会社等に対する提訴請求権を前提としな い制度であるから、原告適格を失うことはないと解される。株式交換等の後、完全親会社等が単元株式制度を採 用したり株式の併合がされて単元未満株主になった場合も、同様である。 代表訴訟を妨害する目的で(原告適格を失わせる目的で)株式交換等が行われ、原告株主が本条所定の要件を 充たさなくなった場合はどうか。業務財産状況調査検査役の選任請求についての少数株主要件が問題となった最 高裁決 定 ((( ( の考え方に倣うとすれば、この場合は原告適格を失うことはないとも解されるが、完全子会社との株式 所有を通じた利害関係がなくなった原告株主が、そのまま訴訟を継続して追行しうるのだろうか。株式交換等の 無効の訴えの提起との関係が問題となるのではないかと思われる。
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 一〇 株 式 交 換 等 の 後、 い っ た ん は 完 全 親 会 社 等 の 株 主 に な っ た も の の、 そ の 後 に 株 主 で な く な っ た 場 合 は ど う か。 代 表 訴 訟 で あ る 以 上、 株 主 で あ る こ と は 必 要 で あ る が、 例 外 的 に、 本 条 二 項 は、 株 式 交 換・ 株 式 移 転 が 行 わ れ た 後、 株 式 交 換 等 が 行 わ れ た 場 合 で あ っ て も、 そ の 行 為 に よ っ て、 原 告 株 主 が、 完 全 親 会 社 等 の 株 式 を 取 得 す る 限 り、 原告適格は失われないことを規定している。新設合併 ・ 吸収合併が行われた後、 株式交換等が行われた場合も、 同 様 で あ る( 本 条 三 項 )。 し か し、 こ れ ら の 株 主 で も な く な っ た 場 合 は、 原 告 適 格 は 失 わ れ る。 訴 訟 物 に 対 す る 利 害 関 係 を ま っ た く 持 た な く な っ た と す れ ば、 そ の 者 に 訴 訟 の 追 行 を 認 め る 必 要 は な い し( ま た、 い っ た ん 代 表 訴 訟 を 提 起 し た 者 で あ る と い う こ と を も っ て 適 切 に 訴 訟 を 追 行 す る 者 で あ る と 期 待 す る こ と も で き な い )、 判 決 の効力を受けるにふさわしい立場にもいな い ((( ( 。 株式交換 ・ 株式移転の後、 完全親会社が完全子会社の株式を譲渡し、 完全親会社でなくなった場合はどうか(次 の 合 併 の 場 合 も 含 め て「 問 題 一 」) 。 原 告 適 格 を 失 う と 解 す る 見 解 が 多 数 の よ う に も 思 わ れ る が ((( ( 、 い っ た ん 完 全 親 会 社 の 株 主 に な っ た 以 上、 わ ず か な 株 式 の 譲 渡 が 行 わ れ た こ と を も っ て 原 告 適 格 を 失 う と 解 す る 必 要 は な い ((( ( 。 法 文 上 も、 完 全 親 会 社 の 株 主 で あ る こ と を 原 告 適 格 と し て い る よ う に も 読 め る が、 当 該 会 社 の 株 主 で あ り 続 け る こ とは求めているものの、当該会社が完全親会社であり続けることまでは要件としていないとも読める。 株 式 交 換 の 場 合、 完 全 子 会 社 で あ っ た 会 社 の 株 主 は、 完 全 親 会 社 の 株 主 に な っ て 株 式 所 有 を 通 じ た 利 害 関 係 を 完 全 子 会 社 に 対 し て 持 ち 続 け る か、 そ う し た 利 害 関 係 を ま っ た く 失 う か の い ず れ か で あ る( 単 な る 親 会 社 の 株 主 に な る と い う こ と は な い )。 本 条 が 完 全 親 会 社 の 株 主 に な る こ と を 要 件 と し て い る の は、 後 者 の 場 合 に「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 が 認 め ら れ な い こ と を 示 し て い る も の で あ り、 こ れ が 認 め ら れ る た め に は 完 全 親 会 社 の 株 主 と い う 地 位 に あ る こ と が 必 要 だ と い う こ と ま で を 示 し て い る わ け で は な い と 解 さ れ る。 も っ と も、 譲 渡 株 式 数( 発 行
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 一一 済 株 式 の 総 数 に お け る 割 合 ) い か ん で 原 告 株 主 と 完 全 子 会 社 と の 利 害 関 係 は 希 薄 に な っ て い く し、 そ の 場 合 に な お「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 を 認 め る こ と は、 親 会 社 株 主 で あ る こ と を 理 由 と し て 原 告 た る 地 位 を 維 持 す る こ と に な る か ら、 多 重 代 表 訴 訟 を 認 め る こ と に 近 づ い て い く。 多 重 代 表 訴 訟 が 認 め ら れ て い な い 現 行 規 制 の も と で は、 本 条 は、 本 来 な ら ば 原 告 適 格 を 失 っ て し ま う は ず だ が 例 外 的 に 明 文 化 す る こ と に よ り「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 を 認 め た も の と 位 置 づ け て、 解 釈 す べ き で あ ろ う。 立 法 政 策 上、 完 全 親 会 社 の 株 主 で あ る こ と が 基 準 と さ れ た も の と 解 さ れ、 そ れ 以 上 の 判 断 基 準 を 解 釈 に よ っ て 決 し て い く こ と は 困 難 で は な い か。 わ ず か な 株 式 の 譲 渡 が 行 わ れ た に す ぎ な い 場 合 に ま で 原 告 適 格 を 失 う と 解 す る 必 要 は な い も の の、 原 則 と し て は 原 告 適 格 は 失 わ れ る も の と 解 すべきであ る ((( ( 。「原告たる地位の継続」 が認められる譲渡の程度は事例ごとの判断にかかるといわざるをえないが、 その際、譲渡の理由が重視されるべきではなかろう。 合 併 の 場 合 は ど う か。 合 併 に お い て も、 設 立 会 社・ 存 続 会 社 の 株 主 に な る 場 合 の ほ か は、 存 続 会 社 の 完 全 親 会 社 の 株 主 に な っ た こ と が 要 求 さ れ て い る( そ の 単 な る 親 会 社 の 株 主 に な っ た だ け で は「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 は 認 め ら れ な い )。 こ こ で は、 存 続 会 社 の 親 会 社 の 株 主 に な っ た 場 合 は ど う か と い う 問 題 と、 い っ た ん 存 続 会 社 の 完 全 親 会 社 の 株 主 に な っ た が、 そ の 後 に 完 全 親 会 社 が 完 全 子 会 社 の 株 式 を 譲 渡 し、 完 全 親 会 社 で な く な っ た 場 合 は ど う か と い う 問 題( 先 の 株 式 交 換・ 株 式 移 転 の 場 合 も 含 め て「 問 題 一 」) が あ る。 し か し、 合 併 の 場 合 は、 完 全親会社の株主であることが要求される (株式交換の場合と同じような意味での) 理論上の理由はない。たとえば、 そ の 親 会 社 の 株 主 で あ っ て も よ い と す る 立 法 も あ り う る。 し か し、 立 法 政 策 上 の 判 断 と し て、 株 式 交 換・ 株 式 移 転 の 場 合 と 平 仄 を 合 わ せ て 完 全 親 会 社 の 株 主 で あ る こ と を 要 件 と し た も の と 解 さ れ る ((( ( 。 そ こ で、 右 に 株 式 交 換・ 株 式 移 転 に つ い て 述 べ た と こ ろ が 同 じ よ う に 妥 当 す る で あ ろ う。 す な わ ち、 厳 密 に 完 全 親 会 社 で な く て も、 そ れ
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 一二 に近い株式所有比率がある親会社の株主になった場合には、本条の適用を受けてよいと解される。また、存続会 社の完全親会社が完全親会社でなくなった場合、原則としては原告適格は失われる。もっとも、わずかな株式の 譲渡が行われたにすぎない場合にまで原告適格を失うと解する必要はない。 (二)本条の類推適用 本条は代表訴訟に関する規定だが、他の訴えの係属中に株式交換等によって株主たる地位が失われた場合にも 類推適用されてよ い ((( ( 。株主総会決議取消の訴えや新株発行・自己株式の処分の無効の訴えなどであるが、係属中 の訴えについての提起権が少数株主権であるときも、完全親会社に対する持株比率にかかわらず原告適格を失わ ないものと解してよいと思われる。また、株主総会決議無効確認の訴えや不存在確認の訴えにおいて、この理由 で確認の利益が失われるということもないであろう。もっとも、合併の場合は、消滅会社は消滅してしまってい るから、訴えの利益が失われる場合も多いと解される。 株式交換等以外の行為によって株主たる地位を失った場合はどうか。全部取得条項付種類株式に関する一連の 株主総会決議について、当該決議の取消しによって株主たる地位を回復する者は、決議取消の訴えにおける原告 適格を失わないとする考え方は定着しつつあ る ((( ( 。しかしこれは本条の類推適用の問題ではな い ((( ( 。要綱でも、別途 第二部第二4において、立法により手当てされる予定になっている。全部取得条項付種類株式や取得条項付株式 による強制取得により株主たる地位を失った原告株主が提起していた訴え(代表訴訟も含む)については、取得 の対価に完全親会社の株式が含まれており、原告が完全親会社の株式を取得するという場合にのみ、本条の類推 適用が認められるものであろう。事業の全部譲渡の場合も、完全親会社が完全子会社に譲渡したような場合に限
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 一三 定されるものと解され る ((( ( 。その他、株主たる地位を喪失したり、少数株主権の要件を欠いたという場合の原告適 格の帰趨の問題は、場合ごとに別途検討されるべき問題であるが、本条を類推適用できる場面は限られるのでは ないか。 それでは、以上で検討した解釈論は、 「多重代表訴訟制度」 「提訴資格の拡張」が認められることにより、何か 影響を受けるだろうか。次章で「問題一」 「問題二」を検討する。
四
要綱に基づく法規制のもとでの解釈論
(一) 「問題一」について 「提訴資格の拡張」は、 株式交換等が行われたことによって株主代表訴訟の原告適格を失うはずである場合でも、 特定の者については、株式交換等が行われる前に発生した取締役の責任を追及するために提訴請求をし、代表訴 訟を提起することができる旨を定める。特定の者とは、株式交換等の前にも提訴請求・代表訴訟の提起をするこ とができた者であ り ((( ( 、かつ、株式交換・株式移転の場合は、それによって完全親会社の株主となり、提訴請求・ 提起時点でも株主である者であ る ((( ( 。合併の場合は、それによって新設合併設立会社・吸収合併存続会社の完全親 会社の株主となり、提訴請求・提起時点でも株主である者および吸収合併存続会社の株主であ る ((( ( 。 あらたに代表訴訟を提起しうる場合を定める「提訴資格の拡張」については、その具体的な条文次第だが、前 述した本条の解釈論( 三 )が妥当すると考えられる。すなわち、いったんは完全親会社(株式交換完全親会社・ 株式移転設立完全親会社・吸収合併存続会社の完全親会社)の株主になったものの、その後、当該完全親会社が札幌法学二四巻二号(二〇一三) 一四 完全子会社の株式を譲渡して完全親会社でなくなった場合、当該株主はなお提訴資格(原告適格)を認められる かという問題についても、提訴資格を失うのが原則であると解される。しかし、本条の解釈( 「問題一」 )として は、要綱に基づく法規制を前提とした場合には、変容を受けるべきではないか。まず、株式交換・株式移転の場 合について検討してみよう。 前 述 し た よ う に( 三 )、 株 式 交 換・ 株 式 移 転 の 場 合 に 完 全 親 会 社 の 株 主 に な る こ と が 要 件 と さ れ て い る の は、 完全子会社との株式所有を通じた利害関係をまったく失う場合を除外することを示したにすぎないものと解され る。たしかに、完全親会社の株主であることは、利害関係としてはもっとも大きな関係と捉えられるが、代表訴 訟を追行する者がそうでなければならない理論上の理由はない。原告株主が訴訟物に対して一定の利害関係を有 す る と 認 め ら れ る 限 り、 「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 は 認 め ら れ て も よ い と 解 さ れ る。 も っ と も、 現 行 規 制 の も と で は本条が例外的に認められた制度であると位置づけられるところから、解釈論としては、完全親会社であるかそ れに近い株式所有比率を有する会社の株主であることが要件と解される。 それに対して、要綱では「提訴資格の拡張」が認められたのであるから、これとの均衡をも考慮して解釈され るべきではないか。完全親会社の株主であり続けることを求めることに理論的な理由があるわけではないし、必 ずしも例外的な制度と位置づける必要もなくなった要綱に基づく法規制のもとで は ((( ( 、訴訟を継続して追行するこ とを認められてよい利害関係があるならば「問題一」に肯定的な解答を導くべきであることが、より鮮明になる のではないか。 代表訴訟を提起した原告株主は、その後、完全子会社(となった会社)の事情により完全親会社の株主となり、 さらに当該会社の事情により当該会社が完全親会社でなくなったという状況にある。これらの会社の事情がなけ
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 一五 れば、代表訴訟は当然継続して追行できていたはずである。原告適格の帰趨が問題になる原因が原告株主の側に あるわけではないし、とりわけ完全親会社が完全子会社株式を譲渡する際には、原告株主はその決定に関与でき ないのが通常である。他方で、被告取締役の側には、責任追及を免れる理由があるわけではない。本条の文言も、 完全親会社の株主であり続けることが求められているわけではないとも読める。さらに、すでに訴訟手続が一定 程度進行していることや、訴訟に費やした費用や時間を無駄にさせるべきでないということを考慮したとき、代 表訴訟の損害塡補機能や違法行為抑止機能が発揮されるべき機会を簡単に失わせることは、避けるべきであろう。 「提訴資格の拡張」はあらたに訴えを提起する場合の規制であって行為規範を示す規定であるか ら ((( ( 、より明確な 基準が求められ、それに従った解釈がされるべきである。しかし本条の解釈は、より柔軟に解されるべきであり、 要 綱 に 基 づ く 法 規 制 が 実 現 す る こ と で、 そ の よ う な 環 境 が 整 っ た も の と 考 え ら れ る ((( ( 。「 提 訴 資 格 の 拡 張 」 と「 原 告たる地位の継続」の要件は異なる解釈が採られてもよい、言い換えれば、本条については、現行規制のもとで の解釈と要綱に基づく法規制のもとでの解釈が異なってもよいと考える。 それでは、どのような場合に「原告たる地位の継続」が認められると解されるか。その基準は、親会社である ことに求められるだろう。現行規制においても、親会社株主が子会社に対して有している利害関係に鑑みて、監 督是正のための権利や手段が設けられている。近時、再び、親会社株主の子会社からの保護という視点が重要視 されるようになってきており、要綱はこうした視点にも基づくものとされ る ((( ( 。また、従来、わが国の多重代表訴 訟制度に関する立法論・解釈論は、完全親子会社関係(純粋持株会社)が典型的に想定されているとしても、親 子会社関係を念頭に置いて論じられてきた。原告株主が代表訴訟の継続的な追行を認められる程度の利害関係を 訴訟物に対して有していることを前提として、代表訴訟の機能を発揮させるために相応な基準は、親子会社関係
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 一六 であることだと考えられる。すなわち、完全親会社が完全子会社の株式を譲渡したことにより完全親会社でなく なったとしても、親会社であり続ける限り、そして原告株主がその株主である限り、本条の「原告たる地位の継 続」は認められるものと解する。 吸収合併における存続会社の完全親会社についても、同様に解すべきである。もっとも、このように解すると、 いったん完全親会社の株主になることを求める必要もなく、吸収合併の効力発生時において親会社の株主になっ た場合においても、 「原告たる地位の継続」が認められてよいこととなろう。また、前述したように( 三 )、吸収 合併の場合に完全親会社の株主となることが要件とされているのは、株式交換・株式移転の場合の規制に平仄を 合わせたにすぎないものだとすると、上記のように考える限り、いったん完全親会社の株主たる地位を取得する ことを必要とする理由もない。本条の文言に変更が加えられないとすれば解釈論としては難しいが、今後の立法 に際しては、本条一項二号の「完全親会社の株式」という文言は、 「親会社の株式」と改められるべきである。 (二) 「問題二」について 原告株主が、株式交換・吸収合併によっては完全親会社・存続会社やその完全親会社の株主にはならなかった ものの、別の株式取得原因によってこれらの会社の株主ではあるという場合、原告株主は代表訴訟を継続して追 行 で き る だ ろ う か( 問 題 二 )。 た と え ば、 株 式 交 換 の 効 力 発 生 前 に、 完 全 子 会 社 と な る 会 社 の 株 主 と し て 代 表 訴 訟を提起していた原告株主が、完全親会社となる会社の株主でもあったところ、株式交換によっては完全親会社 の株主たる地位を取得できなかったが、従前どおりの完全親会社の株主たる地位は維持しているというケースで あ る。 本 条 の 解 釈 と し て は 原 告 適 格 を 失 う と 解 さ れ る が( 三 )、 要 綱 に 基 づ く 法 規 制 の も と で は ど う か。 前 述 し
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 一七 たように( 四 (一) )、原告適格の帰趨が問題になるのは原告株主の側に原因があるわけではないこと、被告取締 役に責任追及を免れる理由もないこと、すでに訴訟手続が一定程度進行していることなど、代表訴訟が簡単に却 下される事態は回避されるべきであることが、ここでもあてはまる。 まず、吸収合併存続会社の株主であるという場合はどうか。消滅会社が有していた、消滅会社の取締役に対す る損害賠償請求権は、存続会社に承継されている。存続会社がこの請求権を行使することはできる。さらに、消 滅会社の株主として提訴請求・代表訴訟の提起ができた者に限らず、存続会社の株主一般に、存続会社のために この損害賠償請求権を行使することが認められるとされ る ((( ( 。消滅会社の取締役は存続会社に対する任務を懈怠し たわけではないので、消滅会社とは何ら関係がなかった存続会社の株主もあらたな提訴請求・提起をすることが できるということは、 一般債務者に対する責任追及を認めることに近くなる。また、 代表訴訟における原告株主は、 被告となる者が取締役として就任している(あるいは、就任していた)会社の株主を指すものであるとの解釈に も 変 更 を 来 す こ と に な ろ う。 し か し い ず れ に せ よ、 こ の こ と を 前 提 と す る と、 「 問 題 二 」 に つ い て「 原 告 た る 地 位の継続」が認められるのは当然のこととなる。吸収合併存続会社の株主について本条が改正を受けないとすれ ば、特別の手続なくこれが認められることを明らかにする趣旨ということになろうか。なお、仮に「提訴資格の 拡張」は消滅会社の株主として提訴請求 ・ 代表訴訟の提起ができた者に限られるとしても、 これが認められる以上、 「問題二」については本条の類推適用により「原告たる地位の継続」が認められると解される。原告株主が合併 後の存続会社の株主としての地位を有している以上、その地位は合併によって取得したものではないとの理由で 訴訟が却下される実質的な理由はない。 次に、株式交換完全親会社の株主または吸収合併存続会社の完全親会社の株主であるという場合はどうか。こ
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 一八 れ ら に つ い て は 完 全 親 会 社 の 株 主 と し て の 立 場 を 考 え る こ と に な る か ら、 「 多 重 代 表 訴 訟 」 と の 均 衡 を 考 慮 し な がら検討する必要がある。まず、株式交換の場合はどうか。 仮に、原告株主が株式交換によっては完全親会社の株主にはならなかったとしても、それとは別に「多重代表 訴 訟 」 を 提 起 で き る と す る な ら ば、 旧 訴 を 却 下 し た う え で 新 訴 を 提 起 さ せ る と い う 必 要 は な い か ら、 「 原 告 た る 地位の継続」を認めてよいと考えられる。しかしながら、取締役等の責任原因となった事実が生じた日において 最 終 完 全 親 会 社 の 株 主 で あ る と い う「 多 重 代 表 訴 訟 」 の 要 件 が( 要 綱 第 二 部 第 一 1( 1) ④ )、 株 式 交 換 前 の 完 全子会社(になる会社)の株主について充たされることはな い ((( ( 。つまり、いずれにせよ「多重代表訴訟」は提起 できるのだから「原告株主たる地位の継続」を認めてよい、というケースは考えられない。しかし「多重代表訴 訟 」 の 要 件 を す べ て 充 た す こ と は な い と し て も、 「 多 重 代 表 訴 訟 」 が 認 め ら れ る だ け の 利 害 関 係 が あ る な ら「 原 告株主たる地位の継続」を認めてよい( 「問題二」について肯定的な解答を導くことができる)のではないか。 このような利害関係の大きさに着目するならば、まずは、完全親会社が有する完全子会社の株式の帳簿価額が 当該完全親会社の総資産額の五分の一を超えており、原告株主が、当該完全親会社の総株主の議決権の一〇〇分 の 一 以 上 の 議 決 権 ま た は 発 行 済 株 式 の 一 〇 〇 分 の 一 以 上 の 数 の 株 式 を 有 す る 株 主 で あ る( 以 下、 「 一 % 株 主 」 と い う ) 場 合 な ら( 要 綱 第 二 部 第 一 1( 1) ① ④ )、 本 条 の「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 を 認 め て よ い の で は な い か と 思われる。しかし、さらに見ると、 「五分の一」要件は、 「多重代表訴訟」の被告とされる取締役の側の属性に着 目して、その範囲を限定しようとするところに主眼があ り ((( ( 、必ずしも利害関係の大きさを示す要件ではない。の みならず、すでに代表訴訟が提起されていることを前提としている本条では、被告取締役の属性をあらためて問 題 に す る 必 要 が な い。 だ と す る と、 本 条 の 解 釈 と の 関 係 で は、 「 多 重 代 表 訴 訟 」 が 認 め ら れ る 利 害 関 係 は 完 全 親
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 一九 会社の一%株主であることと捉えてよいのではないだろうか。すなわち、原告株主が株式交換によっては完全子 会社との利害関係を失ったとしても、それとは別に、株式交換の効力発生日に完全親会社の一%株主であるとす れ ば、 「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 を 認 め て よ い の で は な い か。 株 式 交 換 後 に「 多 重 代 表 訴 訟 」 を 提 起 で き る だ け の 利害関係を訴訟物に対して有している者がすでに提起している訴訟を却下するためには、株式交換によって完全 親会社の株主たる地位を取得したのではないという理由は、実質的には説得力に欠けるのではないだろうか。 このことは、吸収合併存続会社の完全親会社の一%株主である場合も、妥当する。 以上のような「問題二」についての解釈は本条の類推適用ということになるだろうが、問題は、原告たる地位 は、完全子会社になった会社・消滅会社の株主としての地位に基づいて認められたので、完全親会社の一%株主 という地位とは別個の地位であるという点である。しかし、この問題は「原告たる地位の継続」を認めるかとい う問題であって、別の者があらたに提訴請求・提起をするということではなく、同一人に帰属している二つの地 位についての問題である。交換対価や合併対価の種類によってこの問題の結論を別異に解する必要があるだろう か。株式交換・吸収合併後も、相応の利害関係を訴訟物に対して有する地位にあるのであるから、これを認める のに、 株式の取得原因によって区別する理由に乏しいし、 認めることによる弊害は想定しにく い ((( ( 。「問題二」 のケー スは解釈論で決するほかないと思われるが、要綱に基づく法規制のもとでは、上記のように解釈できるのではな いかと考える。すなわち、存続会社の株主である場合は当然のこととしても、完全親会社の一%株主である場合 も、株式交換等によってその地位を取得したのでなくとも、本条を類推適用して「原告たる地位の継続」は認め られるものと解する。
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 二〇
五
結びに代えて
本稿では、要綱に基づく法案が公表されていない段階ではあるものの、会社法にあらたに導入される「多重代 表 訴 訟 制 度 」「 提 訴 資 格 の 拡 張 」 が 本 条 の 解 釈 に 与 え る 影 響 に つ い て、 検 討 し た。 こ れ ら の 新 設 に よ っ て 必 ず し も例外的な制度とは位置づけられなくなった本条については、いったん提起された株主代表訴訟が簡単に却下さ れることは避けられるべきとの要請を、従来よりいっそう重視して解することも可能になったのではないかと考 える。 誠に拙いものではありますが本稿が捧げられる梶浦桂司君は、中央大学大学院の院生として六年後輩にあたり ます。最近は、日本私法学会が開催される折りにお会いできることを楽しみにしておりました。とりわけ三年前 の 同 学 会 は 札 幌 で 開 催 さ れ た こ と も あ り、 夜 遅 く ま で( 明 け 方 近 く ま で )、 梶 浦 君 と 同 期 の も う 一 人 の 後 輩 を 交 えて三人で一緒に楽しい時間を過ごすことができました。その翌年もまた、昔話も近況も織り交ぜて大いに語ら うことができ、名残惜しくお別れした時のことを鮮明に覚えています。昨年、学会開催の時期を間近に控え、再 会を本当に心待ちにしていた矢先の、青天霹靂の知らせでありました。 梶浦桂司君は、まっすぐで、笑顔のさわやかな、そして、またお会いして議論をしあいたい後輩です。本稿に ついても、親子会社規制に強い関心を寄せて業績を積んでこられた梶浦君のご意見をお聴きしたく思っています。 心よりご冥福をお祈りいたします。 (二〇一三年一月一五日脱稿)組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 二一 ( 1) 法 制 審 議 会 会 社 法 制 部 会 が 決 定 し た「 会 社 法 制 の 見 直 し に 関 す る 要 綱 案 」 お よ び 附 帯 決 議 が、 原 案 ど お り 採 択 さ れ た。 こ の 要 綱 案 の 解 説 と し て、 岩 原 紳 作「 『 会 社 法 制 の 見 直 し に 関 す る 要 綱 案 』 の 解 説〔 Ⅰ 〕 ~〔 Ⅵ・ 完 〕」 旬 刊 商 事 法 務 一 九 七 五 号 四 頁、 一 九 七 六 号 四 頁、 一 九 七 七 号 四 頁、 一 九 七 八 号 三 九 頁、 一 九 七 九 号 四 頁、 一 九 八 〇 号 四 頁( 二 〇 一 二 年 )( 後 に『 会 社 法 制 の 見直しに関する要綱の概要』別冊商事法務三七二号一頁以下に収録、以下「岩原解説」として同書の頁数で引用する) 。 ( 2) 現 段 階 で は こ の 要 綱 を 受 け た 法 案 は 公 表 さ れ て お ら ず、 本 稿 は こ う し た 限 界 を 抱 え た も の で あ る が、 と り わ け 行 為 規 範 と 評 価 規 範 の 区 別( 本 文 後 述 ) と い う 視 点 を 要 綱 に 基 づ く 法 規 制 に 投 影 し て 本 条 の 解 釈 の 変 容 を 示 し う る と す れ ば、 何 ら か の 意 味 も あるのではないかと考えている。 ( 3) 岩原解説・二七頁。 ( 4) も っ と も、 要 綱 は、 新 設 合 併 に よ り 設 立 会 社 の 株 主 と な っ た 場 合、 吸 収 合 併 に よ り 存 続 会 社 の 株 主 と な っ た 場 合 を、 定 め て い ない。消滅会社の株主がこれらの株主になった場合については、 当然に 「提訴資格」 が認められるとの理由に基づく (岩原解説 ・ 二七頁) 。以下、 要綱に直接の定めはないが、 現行規制と比較する意味で、 この場合も含めて「提訴資格の拡張」という。なお、 同じく、本稿の「株式交換等」も、要綱第二部第一2③とは異なる。 ( 5) 完 全 子 会 社・ 消 滅 会 社 が 公 開 会 社 で あ っ た 場 合 の 六 か 月 の 株 式 保 有 期 間 要 件 は、 株 式 交 換 等 の 効 力 発 生 日 の 六 か 月 前 か ら と さ れ て い る( 要 綱 第 二 部 第 一 2 ③ )。 つ ま り、 吸 収 合 併 存 続 会 社 の 株 主 を 除 き、 株 式 交 換 等 の 前 で も 提 訴 請 求・ 提 起 が で き た 者 であることが要件とされている。 ( 6) 岩原解説・二七頁。 ( 7) 行 為 規 範・ 評 価 規 範 の 区 別 に つ き、 新 堂 幸 司『 新 民 事 訴 訟 法 第 五 版 』 五 八 頁、 五 九 頁( 二 〇 一 一 年 ) な ど。 会 社 法 学 に お け る こ の 区 別 に つ い て、 拙 稿「 会 社 法 に お け る 行 為 規 範・ 評 価 規 範 の 区 別 の 意 義 」 ア ル テ ス・ リ ベ ラ レ ス( 岩 手 大 学 人 文 社 会 科 学部紀要)六一号二一七頁(一九九七年)など。 ( 8) 商 法 二 六 七 条・ 二 六 八 条 は 幾 た び か の 改 正 を 受 け て い る。 実 務 的 に も っ と も 大 き な 影 響 を 与 え た の は 平 成 五 年 改 正 で あ る が、 提 訴 請 求 お よ び 訴 え 提 起 に 関 し て は、 平 成 一 三 年 一 二 月 改 正 で、 提 訴 請 求 を 受 け て の 監 査 役 の 考 慮 期 間 が 三 十 日 か ら 六 十 日 に 伸 張 さ れ た。 ま た、 六 十 日 の 期 間 経 過 後 に 訴 え を 提 起 で き る 株 主 が、 提 訴 請 求 を し た 株 主 で あ る こ と が、 文 言 上、 明 確 に さ れ た。 そ の ほ か、 平 成 一 三 年 一 一 月 改 正 で は、 提 訴 請 求 を 電 磁 的 方 法 に よ っ て 行 う こ と が 認 め ら れ た た め、 二 六 七 条 二 項 が 挿 入 される(項番号がずれる)改正が行われた。以下、条文の内容については、会社法制定直前の規制に限定して触れる。
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 二二 ( 9) 平 成 一 七 年 改 正 前 商 法 一 九 六 条、 二 八 〇 条 一 項、 四 三 〇 条 二 項、 二 九 四 条 ノ 二 第 四 項、 二 八 〇 条 ノ 一 一 第 二 項 が 同 条 を、 二 八 〇 条 ノ 三 九 第 四 項 が 二 八 〇 条 ノ 一 一 を 準 用 し て お り、 発 起 人、 清 算 人、 株 主 の 権 利 の 行 使 に 関 し て 利 益 の 供 与 を 受 け た 者、 取 締 役 と 通 じ て 著 し く 不 公 正 な 発 行 価 額 で 株 式・ 新 株 予 約 権 を 引 き 受 け た 者 に 対 す る 代 表 訴 訟 を 認 め て い た。 以 下、 取 締 役 が 被告である場合を代表させて言及する。 ( 10) こ の こ と は、 た と え ば 親 会 社 株 主 が 子 会 社 取 締 役 に 対 し て 代 表 訴 訟 を 提 起 す る こ と は で き な い こ と を 意 味 す る も の と し て、 言 及 さ れ る よ う に な っ た。 す な わ ち、 本 文 で 後 述 す る と こ ろ と 同 じ く、 こ の 点 で の「 株 主 」 の 意 義 も、 平 成 一 一 年 商 法 改 正 以 降、 意識されるようになった。 ( 11) も っ と も、 立 法 当 初 よ り、 原 告 株 主 が そ の 持 株 を 全 部 譲 渡 し た 場 合 が も っ ぱ ら 想 定 さ れ て い た。 た と え ば、 大 隅 健 一 郎 = 大 森 忠 夫『 逐 条 改 正 会 社 法 解 説 』 二 九 九 頁( 一 九 五 一 年 )、 北 沢 正 啓「 株 主 の 代 表 訴 訟 と 差 止 権 」『 株 式 会 社 法 講 座 第 三 巻 』 一一四一頁、 一一五一頁 (一九五六年) など (なお、 通説に反対、 松田二郎=鈴木忠一 『條解株式会社法上』 三一四頁 (一九五一年) )。 要 す る に、 「 訴 訟 係 属 中 に 訴 訟 当 事 者 そ の も の に 死 亡、 訴 訟 能 力 の 喪 失 な ど の 変 化 が 生 じ た 場 合 の 処 理 」 と 区 別 さ れ た、 「 訴 訟 係 属 中 に、 訴 訟 当 事 者 と の 間 で 一 定 の 関 係 を 有 す る こ と に よ っ て そ の 当 事 者 に 訴 訟 適 格 を 与 え て い た 他 者( 会 社 な ど ) に 変 化が生じた結果として当事者の資格に変動がある場合の処理」 (関 ・ 後掲注( 20)一〇八頁)については、議論されてこなかっ た。 な お、 前 者 に つ い て は、 右 文 献 や『 新 版 注 釈 会 社 法( 6)』 三 六 七 頁〔 北 沢 正 啓 〕( 一 九 八 七 年 )、 山 本 忠 弘「 代 表 訴 訟 係 属中の会社の破産・損害賠償請求権の譲渡等」 『会社法の争点』一六〇頁(二〇〇九年)など参照。 ( 12) も っ と も、 被 告 と な る べ き 者 は 存 続 会 社( 新 設 合 併 設 立 会 社 も 同 様 ) の 取 締 役 と は 限 ら な い し、 そ の 者 の 責 任 は 存 続 会 社 に 対 す る 義 務 違 反 に 基 づ く も の で は な い か ら、 合 併 後 に、 消 滅 会 社 の 取 締 役 で あ っ た 者 に 対 す る 代 表 訴 訟 の 提 起 は で き な い と 解 さ れるべきであったと思われる。関・後掲注( 20)一一〇頁。 ( 13) 柴 田 和 史「 株 式 移 転 に お け る 株 主 代 表 訴 訟 の 問 題 」 判 タ 一 一 二 二 号 二 五 頁( 二 〇 〇 三 年 ) は、 「 学 説 は、 代 表 訴 訟 が そ の ま ま 継続できると考えていた」とされる。 ( 14) 親 会 社 の 株 主 に 子 会 社 の 株 主 総 会 議 事 録・ 取 締 役 会 議 事 録・ 株 主 名 簿・ 計 算 書 類・ 会 計 帳 簿 等 の 閲 覧 等 請 求 権 を 認 め て 情 報 開 示 手 段 を 強 化 し、 ま た、 監 査 役・ 会 計 監 査 人 の 子 会 社 調 査 権 や 子 会 社 の 業 務 財 産 状 況 を 調 査 す る た め の 検 査 役 選 任 請 求 権 を 新 設し、それに応じて監査報告書の記載事項の改正が行われた。 ( 15) 江 頭 憲 治 郎 = 武 井 一 浩 = 川 西 隆 行 = 原 田 晃 治「 特 別 座 談 会 株 式 交 換・ 株 式 移 転 ─ 制 度 の 活 用 に つ い て 」 ジ ュ リ 一 一 六 八 号 一〇〇頁(一九九九年) 。
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 二三 ( 16) 東 京 地 判 平 成 一 三 年 三 月 二 九 日 判 時 一 七 四 八 号 一 七 一 頁、 東 京 地 判 平 成 一 五 年 二 月 六 日 判 時 一 八 一 二 号 一 四 三 頁、 名 古 屋 高 判 平 成 一 五 年 四 月 二 三 日 LEX/DB 文 献 番 号 280082302 ( 一 審・ 名 古 屋 地 判 平 成 一 四 年 八 月 八 日 判 時 一 八 〇 〇 号 一 五 〇 頁 )、 東 京 高判平成一五年七月二四日判時一八五八号一五四頁。 ( 17) 株主代表訴訟制度研究会「株式交換・株式移転と株主代表訴訟( 1)」旬刊商事法務一六八〇号四頁(二〇〇三年)など。 ( 18) そ の 理 由 づ け は、 解 釈 上 は 多 重 代 表 訴 訟 が 認 め ら れ る と の 立 場 を 基 礎 に す る も の と、 株 式 交 換 等 の 場 合 の 原 告 適 格 の 継 続 を 解 釈上認めるというものとに、大別して整理されている。株主代表訴訟制度研究会・前注( 17)五頁。 ( 19) 下 級 審 判 決・ 学 説 を 通 じ て、 実 体 法 上 の 利 益 衡 量 に つ い て は 問 題 意 識 を 共 有 し て い た も の と 思 わ れ る が、 こ の 問 題 は、 平 成 一 一 年 改 正 で 新 設 さ れ た ば か り の 株 式 交 換・ 株 式 移 転 と い う 制 度 自 体 に 大 き く か か わ る 問 題 で あ り、 ま た、 多 重 代 表 訴 訟 制 度 の あ り 方 と も 関 連 す る。 万 能 で は な い 裁 判 所 が 原 告 た る 地 位 の 継 続 を 認 め る 解 釈 を 採 る こ と は、 難 し か っ た の で は な い か。 こ の 点 は、 た と え ば、 株 主 た る 地 位 を 失 っ た も の の「 決 議 が 取 り 消 さ れ れ ば 株 主 た る 地 位 を 回 復 す る 者 」 で あ れ ば な お 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 継 続 し て 追 行 し う る と し た 諸 判 決( 東 京 高 判 平 成 二 二 年 七 月 七 日 判 時 二 〇 九 五 号 一 二 八 頁、 東 京 高 判 平 成 二三年四月二八日判例集未登載(福島・後掲注( 34)四三四頁に紹介がある)とは、事情が異なると思われる。 ( 20) 吉 本 健 一・ 判 評 五 一 六 号( 判 時 一 七 六 七 号 一 八 二 頁 ) 三 六 頁、 一 八 五 頁( 二 〇 〇 二 年 )、 関 俊 彦「 株 主 代 表 訴 訟 の 原 告 適 格 と 株式移転」ジュリ一二三三号一〇七頁、一一〇頁(二〇〇二年) 。 ( 21) 岩原解説・二七頁。 ( 22) 江 頭 憲 治 郎「 『 会 社 法 制 の 現 代 化 に 関 す る 要 綱 案 』 の 解 説〔 Ⅲ 〕」 旬 刊 商 事 法 務 一 七 二 三 号 四 頁、 九 頁( 二 〇 〇 五 年 )( 後 に 収 録された『会社法制の現代化の概要』 (別冊商事法務二八八号)では二七頁、以下「江頭解説」として同書の頁数で引用する) 。 ( 23) 会社法制定に際しても、多重代表訴訟の導入が議論されたが、結局採用には至らなかった。江頭解説・二七頁。 ( 24) 本条は、株式交換等の後の訴訟参加について定めていないが、参加を認めない趣旨とまで解する必要はない。 ( 25) 会 社 法 制 定 以 前 は 、 解 釈 上 「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 を 認 め る 立 場 で も 、 こ の 点 に つ い て は 疑 義 も あ っ た 。 関 ・ 前 掲 注 ( 20) 一一〇頁注( 14)。 ( 26) 最 決 平 成 一 八 年 九 月 二 八 日 民 集 六 〇 巻 七 号 二 六 三 四 頁。 も っ と も、 こ の 決 定 に は 疑 問 も あ る。 拙 稿「 株 主 の 当 事 者 適 格 ─ 企 業 訴訟法における会社法学の若干の課題」 『会社法学の省察』三三一頁(二〇一二年)参照。 ( 27) そ れ に 対 し て、 原 告 適 格 が 失 わ れ る べ き で な い と 解 す る 見 解 も あ る。 『 新 基 本 法 コ ン メ ン タ ー ル 会 社 法 3』 四 一 五 頁〔 山 田 泰弘〕 (二〇〇九年)など参照。
札幌法学二四巻二号(二〇一三) 二四 ( 28) たとえば、神田秀樹『会社法 第十四版』二四五頁注( 1)(二〇一二年) 。 ( 29) 原告適格を失うと解する見解が、解釈の余地もまったくないということまで意味しているかは判然としない。 ( 30) な お、 本 条 二 項 三 項 が 定 め る 場 合 以 外 は「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 は 認 め ら れ な い と の 反 対 解 釈 も で き そ う だ が、 単 純 に、 株 式 交 換 等 の 後 に さ ら に 組 織 再 編 行 為 が 行 わ れ た 場 合 の 規 定 と 解 す る こ と も で き る。 ま た、 本 条 二 項 三 項 の「 株 主 で な く な っ た と き 」 に は 当 た ら な い か ら、 そ れ ら は「 問 題 一 」 に つ い て 何 も 定 め て い な い と 解 す る こ と も で き る。 い ず れ に せ よ、 本 条 二 項 三 項は「問題一」の解決についての決め手にはならない。 ( 31) 神田・前掲注( 28)二四五頁注( 1)参照。 ( 32) 江頭解説・二七頁、江頭憲治郎『株式会社法 第4版』四六三頁注( 8)(二〇一一年)など。 ( 33) 前掲注( 19)・東京高判平成二二年七月七日、同・東京高判平成二三年四月二八日。 ( 34) 福 島 洋 尚「 全 部 取 得 条 項 付 種 類 株 式 を 用 い た 少 数 株 主 の 締 め 出 し と 株 主 総 会 決 議 の 効 力 を 争 う 訴 え 」『 会 社 法 学 の 省 察 』 四二四頁、四三六頁(二〇一二年) 。 ( 35) 吉本・前掲注( 20) 三 六 頁。 完 全 親 会 社 の 株 主 が、 取 締 役 に 対 す る 損 害 賠 償 請 求 権 を 譲 り 受 け た 完 全 子 会 社 の た め に、 完 全 親 会社の取締役に対する代表訴訟を継続して追行するという変則的な形態となろうか。 な お、 事 業 の 一 部 の 譲 渡 や 会 社 分 割 の 場 合 は、 取 締 役 に 対 す る 損 害 賠 償 請 求 権 を 譲 渡 の 対 象 と し う る か と い う 問 題 が 絡 む。 この問題について、たとえば山本・前掲注( 11)一六一頁、山田・前掲注( 27)四一五頁など参照。 ( 36) 前掲注( 5)参照。 ( 37) も っ と も、 提 訴 請 求 が さ れ た 責 任 に つ い て、 完 全 親 会 社 が 責 任 免 除 の 決 定( 四 二 四 条 ) を し た 場 合 は、 そ れ が 濫 用 と さ れ な い 限り、代表訴訟を提起しても却下されることとなろう。 ( 38) 前掲注( 4)参照。 ( 39) なお、前掲注( 4)のように、 新設合併設立会社 ・ 吸収合併存続会社については、 当然に 「提訴資格の拡張」 が認められるとされる。 規 制 の 基 礎 と な る 同 じ 法 律 関 係 に つ い て、 会 社 法 立 法 の 際 は 例 外 的 に「 原 告 た る 地 位 の 継 続 」 が 定 め ら れ た も の が、 要 綱 で は 当然に「提訴資格の拡張」が認められると位置づけられるという状況の変化も見られる。 ( 40) こ こ に い う「 行 為 規 範 を 示 す 規 定 」 と い う の は、 こ の 条 文 が 機 能 す る 局 面 は、 こ れ か ら ど う す べ き か を 評 価 す る と い う 側 面 が 強 い と い う 意 味 で あ っ て、 提 訴 資 格 が あ る か ら 提 訴 し な け れ ば な ら な い と い う こ と を 示 し て い る と い う 意 味 で な い こ と は も ち ろんである。
組織再編行為と株主代表訴訟の原告適格(三浦) 二五 ( 41) い さ さ か 屁 理 屈 め く か も し れ な い が、 多 重 代 表 訴 訟 が 認 め ら れ て い な い 法 規 制 の も と で は、 多 重 代 表 訴 訟 を 認 め る こ と に 近 く な る 解 釈 に は 謙 抑 的 で あ る べ き だ が、 「 多 重 代 表 訴 訟 」 が 認 め ら れ る 法 規 制 の も と で は、 「 多 重 代 表 訴 訟 」 に 抵 触 し な い 限 り、 代表訴訟の機能を最大限発揮しうる解釈が採られてもよいとも考えられるのではないか。 ( 42) 岩原解説・二二頁。 ( 43) 岩原解説・六六頁(注一五三) 。 ( 44) 株 式 交 換 に よ っ て 完 全 親 会 社 と な っ た 会 社 の 株 主 で は あ っ た、 と い う 状 況 は あ り う る が、 責 任 発 生 時 に は 完 全 親 子 会 社 関 係 は なかったのであるから、この要件を充たすことはありえない。 ( 45) 岩 原 解 説・ 二 五 頁。 子 会 社 取 締 役 で あ っ て も「 実 質 的 に は 親 会 社 の 事 業 部 門 の 長 で あ る 従 業 員 に と ど ま る 場 合 」 に は「 多 重 代 表 訴 訟 」 の 利 用 を 認 め ず、 「 親 会 社 の 取 締 役 等 に 相 当 し 得 る 重 要 な 子 会 社 の 取 締 役 等 に 限 り 」、 そ の 利 用 を 許 容 し よ う と す る 趣 旨である。 ( 46) 本 文 の よ う に 解 し た と し て も、 さ ら に 政 策 的 に は、 株 式 交 換 の 場 合、 完 全 親 会 社 と な っ た 会 社( 公 開 会 社 ) の 一 % 株 主 た る 地 位 は、 株 式 交 換 の 効 力 発 生 日 の 六 か 月 前 か ら 有 し て い な け れ ば な ら な い と の 要 件( 要 綱 第 二 部 第 一 1( 1) ③ ) を 必 要 と す る ことも考えられる。しかしすでに代表訴訟を提起しているのであるから、その必要性はうすいと考える。