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医療の最前線における肝細胞癌の治療変革

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(1)

医療の最前線における

肝細胞癌の治療変革

新薬登場からの半年間

-近畿大学医学部 消化器内科

工藤正俊

(2)

肝細胞癌の疫学と

肝炎から肝細胞癌にいたる変遷

(3)

• 肝細胞癌は世界で5番目に多い癌であり、癌別の年間の死亡者数は肺癌、大

腸癌についで3番目と報告されている(日本では5位)。年間死亡75万人。

• 肝細胞癌の80%以上がアジア、アフリカの患者

であり、その中でも中国が世界

の50%を占めていると報告されている。

• 中国、日本、韓国、台湾を含む東アジア地域で毎年36万人以上が肝細胞癌で

死亡している。日本の患者数は約4万2千人、年間死亡者数は約2万7千人。

罹病数

/100000

<4.0

<5.8

<8.7

<17.7

<93.4

肝細胞癌の疫学

(4)

わが国での肝癌の発生

男女計

部位

死亡数

全癌

378,000

78,000

大腸

53,000

47,400

膵臓

34,100

肝臓

27,500

胆嚢・胆管

18,900

男性

部位

死亡数

全癌

222,000

55,600

大腸

31,000

28,300

肝臓

17,900

膵臓

17,100

前立腺

12,200

女性

部位

死亡数

全癌

156,000

大腸

24,700

22,400

膵臓

16,900

16,400

乳房

14,400

肝臓

9,600

2018/19年「厚生の指標 国民衛生の動向」 国立がん研究センターがん情報サービス(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html)

■臓器別癌死亡数予測(2017年)

肝癌による年間死亡数:

約27,000人

3

(5)

0

‘50

(人口10万人対)

40

30

20

10

0

30,000

60,000

(人) 死亡数

‘55 ‘60 ‘65 ‘70 ‘75 ‘80 ‘85 ‘90 ‘95 ‘00 ‘05 ‘10

1950~2012年

全体

男性

女性

死亡数(全体)

わが国の肝細胞癌の死亡数

2000-2005年をピークに死亡数は減少傾向にある

(6)

Tateishi R et al.: J Gastroenterol 2015; 50: 350-360

肝細胞癌の背景疾患の推移

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% BC HBV HCV NBNC

わが国ではC型肝炎由来の肝細胞癌が最も多いが、

近年、B型/C型ウィルス由来ではないNBNCの肝細胞癌が増加している

5 BC:B型C型肝炎、HBV(B型肝炎)、HCV(C型肝炎)、NBNC(非B非C肝炎)

(7)

ウィルス性肝炎が徐々に克服されてきたが、

NASH

*1

を含むNBNC

*2

由来の肝細胞癌が

食生活の変化により増加傾向にある

NASHからの発癌が増加し問題になっており、

高齢者で線維化の進行している場合は

とくに注意が必要である

キーメッセージ 1

(8)

インターフェロン(IFN)

(作用機序)

抗ウイルスタンパクの誘導

免疫の誘導

リバビリン(RBV)

(作用機序)

ウイルス核酸合成抑制、タンパク合成阻害

RNAポリメラーゼ阻害

TH1サイトカイン

TH2サイトカイン

Direct acting antivirals (DAAs)

(作用機序)

直接ウイルスのタンパクの機能を阻害する

HCV

C型肝炎の治療薬

(9)

C型肝炎治療に求められる点

• C型肝炎治療は長期間にわたる

• 患者さんの主な世代が高齢化している

• 副作用の軽減が重要

• 高齢化に伴う様々な生理的な背景から、より安全性の高い

薬剤が求められる

• インターフェロン(IFN)が使えない患者さんの存在

インターフェロン フリーの治療薬

(10)

1989年

C型肝炎

ウィルスの

発見

1992年~

インターフェロンで

20%程度治るが

効果が弱い

2004年~

リバビリンの併用で治癒

率が50%以上に向上

2014年~

インターフェロンフリー

の時代へ

IFNベースの治療

IFNフリー治療

C型肝炎の治療の歴史

1990

2000

2005

2010

2015

●IFN(1992)

●HCV発見(1989)

●IFN+RBV(2001)

●Peg-IFN(2003)

●Peg-IFN+RBV(2004)

●Peg-IFN+RBV+DAA(2011~)

●DAA(2014~)

Peg-IFN:ペグインターフェロン、RBV:リバビリン 9

Peg-IFNベースの治療

(11)

5%

16%

25%

50%

73%

88%

83%

89%

100%

95%

96%

96%

99%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

IFN Peg-IFN IFN リバビリン Peg-IFN リバビリン テラプレビル Peg-IFN リバビリン シメプレビル Peg-IFN リバビリン バニプレビル Peg-IFN リバビリン ダクラタスビル アスナプレビル レジパスビル ソホスブビル オムビタスビル パリタプレビル リトナビル エルバスビル グラゾプレビル ダクラタスビル アスナプレビル ベクラブビル グレカプレビル ピブレンタスビル

治療薬別 SVR率(ウイルス学的著効達成)の変遷

(初回治療1b/高ウイルス量症例)

インターフェロン中心

インターフェロン+DAA

第2・第3世代DAA

(インターフェロンフリー)

(12)

SVR(sustained virological response):ウイルス学的著効達成

11

C型肝炎の治癒率は著しく進歩したが

SVR後の発癌

が残された問題である

(13)

SVR後の発癌リスク

DAA治療によるSVR後の発癌率

• 海外の大規模試験からDAA治療によるSVR後であっても発癌すること

が報告されており、SVR後も注意が必要

• 特に肝硬変が合併する場合は、SVR後でも発癌率は高く注意が必要

肝硬変無し、SVR達成

肝硬変無し、SVR未達成

肝硬変有り、SVR達成

肝硬変有り、SVR未達成

1.00

0.95

0.90

0.85

0

1

2

HCV治療開始からの経過(年)

肝細胞癌の

発症割合が

増加

(14)

Recommendation:

インターフェロンフリー直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療

• IFNフリーDAA治療によってHCVが排除された場合、IFN治療と同程度の肝発癌

抑制効果が得られるとする報告が増えつつある(レベル2b)。

• IFNフリー治療後でも肝発癌が完全に抑制されるわけではなく、注意深い肝発癌

スクリーニングが必要である

。ことに

高発癌リスクである高齢かつ線維化進展例

においては厳重にフォローアップを行うことが推奨

される(レベル2b、グレードA)。

SVR (ウイルス学的著効達成) 後の肝発癌

日本肝臓学会 C型肝炎治療ガイドライン(第6.1版, 2018年3月)p.8 2018年9月閲覧;https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_c

日本肝臓学会

C型肝炎治療ガイドライン (第6.1版, 2018年3月)

レベル:エビデンスレベル(1が最も高い) グレード:推奨度(Aが最も高い) 13

C型肝炎ウイルスが駆除されても

注意深いフォローアップが必要

(15)

C型慢性肝炎の治療は著しく進歩した。

今後の課題は、

DAA治療SVR後の肝細胞癌やNASH等の

NBNC由来の肝細胞癌増加に伴い、

肝細胞癌の新たな治療法の確立である。

キーメッセージ 3

(16)

急速に変貌する肝細胞癌の薬物療法

新薬レンバチニブの登場

(17)

早期肝癌

中等度進行肝癌

進行肝癌

末期肝癌

これまでの肝細胞癌の病期(ステージ)と標準治療

切除

肝動脈塞栓療法

(TACE)

ソラフェニブ

緩和医療

治療法

• がんの進行度により肝切除、局所療法、塞栓療法、移植、化学療法があり、全身化学

療法の

1次治療

で生存期間の延長を示した薬は、

ソラフェニブのみ

であった。

ラジオ波・マイクロ波

単発または

3cm以下3個以下

大型肝癌(≧5cm)

多発肝癌(≧4)

肝外転移

脈管浸潤

肝予備能低下

(Child-Pugh C)

(18)

1) Llovet JM et al. N Engl J Med. 2008 Jul 24;359(4):378-90; 2) Cheng AL et al. Lancet Oncol. 2009 Jan;10(1):25-34; 3) Bruix J et al. Lancet. 2017 Jan 7;389(10064):56-66; 4) 肝癌診療ガイドライン2017年版 日本肝臓学会編, 金原出版, p184-187

癌細胞

癌細胞の増殖抑制

分子標的治療薬

血管新生の阻害

分子標的治療

分子標的治療薬は,癌細胞の増殖抑制や血管新生の阻害により,癌の進行を

抑制する全身療法

1-3)

ランダム化比較試験で,進行肝細胞癌患者における生存期間の延長を証明

1-3)

適応は,Child-Pugh分類A,全身状態良好(PS 0/1)の外科切除,肝移植,局所

療法,TACEが適応とならない切除不能進行肝細胞癌

4)

レンバチニブ(一次治療), ソラフェニブ(一次治療),レゴラフェニブ(二次治療)が

承認

17

(19)

2007-2016年のUnmet needs

• 既存薬よりも

副作用の少ない

薬剤

• 既存薬よりも

有効な薬剤

の開発

⁃ 全生存期間(OS)

*1

延長効果

⁃ OS非劣性でも

副作用の少ない

⁃ 臨床的に意義のある

高い奏効率

(ORR)

*2

無増悪生存期間

(PFS)

*3

,

無増悪期間

(TTP)

*4

の延長など

(20)

レンビマ

®

(一般名:レンバチニブメシル酸塩)

レンバチニブの化学構造式

N

O

N

H

N

H

O

O

N

H

2

O

Cl

C

H

3

RTK: receptor tyrosine kinase, RET: rearranged during transfection, KIT: KIT proto-oncogene product *日本は根治切除不能甲状腺癌の適応症で承認を取得 19

 エーザイ筑波研究所で創出された血管新生阻害剤

 VEGFR1-3、FGFR1-4、 RET、KIT、PDGFRαのRTKを阻害

 2015年 分化型甲状腺癌の適応症で日本

*

、米国、欧州で承認

 2016年 腎細胞癌(2nd line,エベロリムス併用)の適応症で米国/欧州で承認

 2018年 切除不能な肝細胞癌の適応症で日米欧中亜で承認

分子量

427

(21)

レンバチニブの作用機序

レンバチニブは肝細胞癌に対して

VEGFRとFGFRの二つのシグナルを

同時に阻害し、

腫瘍血管新生ならびに腫瘍生存・増殖を抑制する

血管内皮細胞

肝細胞癌腫瘍細胞

VEGFR2

FGFR1

VEGF

P

FGFs

腫瘍血管新生

FGFR1-3

FGFs

FGFR4

P

腫瘍生存・増殖

FGF19

P P

レンバチニブ

レンバチニブ

TKR

IC

50

(nmol/L)

LEN

VEGFR-1

4.7

VEGFR-2

3

VEGFR-3

2.3

FGFR1

61

FGFR2

27

FGFR3

52

FGFR4

43

(22)

第2相試験の結果

Waterfall plot :奏効率 37 %

(mRECIST,独立画像判定委員会)

無増悪期間中央値: 7.4カ月

(mRECIST,独立画像判定委員会)

ベ ー ス ラ イ ン か ら の 変 化 率( %) 0 20 Best 40 60 80 -20 -40 -60 -80 -100 PR(部分寛解)n=17 SD(安定)n=19 PD(進行)n=6 NE(評価不能)n=3 * 0 無増悪期間(月) 0 無 増 悪 率( %) 20 40 60 80 100 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 レンバチニブ 打ち切り

Ikeda.K,Kudo M et al, J Gastroenterol. 2017,52(4):512-519

22

日本人43名、韓国人3名の登録で実施し、

(23)

体重およびレンバチニブの血中濃度が

早期の減量または中止と関連している可能性が示唆

B

od

y

w

eigh

t

(

)

30

減量・中止

(有)

40

50

60

70

80

90

減量・中止

(無)

0

減量・中止

(有)

20

40

60

80

100

160

減量・中止

(無)

C1

D15

C

trou gh

(ng/mL

)

120

140

レンバチニブ投与から30日以内に有害事象により

投与量の減量または中止をした患者はそうでない患者と比べて、

体重が有意に低く、レンバチニブの最低血中濃度(トラフ値)は有意に高値であった

第2相試験の結果

(24)

レンバチニブの体重別投与が見出された秘話

体重が少ない患者の開始用量を検討するために、レンバチニブ

12mgまたは8mgを体重40-120kgの患者に投与した場合を薬物動

態モデル解析し、体重60kg以上では12mg、60kg以下では8mgが

決定した。

抗癌剤の投与量を決定する際に、MTD(最大耐性量)による推奨用

量の決定方法が薬剤の有効性を得るために適切とは限らず、経口

抗癌剤では体重の少ない患者に毒性が発現しやすい点などが報告

されており、レンバチニブの体重別アプローチは妥当であったと考えら

れる。

23

体重を切り口にした用量設定

このアプローチは2011年12月14日に、第2相試験の症例を1例1例詳細に検討し

た際、

虎の門病院 顧問 熊田博光先生

の助言から生まれたものである

(25)

第3相臨床試験のレンバチニブ用量

レンバチニブの推奨用量

体重60kg未満:

8mg

(26)

REFLECT試験

Phase 3, global, randomized, open-label, noninferiority study

層別化因子  地域 (アジア・太平洋地域 vs 西洋)  肉眼的門脈浸潤及び/ 又は肝外転移 (あり vs なし)  ECOG-PS (0 vs 1)  体重 (< 60kg vs ≥ 60kg)

レンバチニブ群

12 mg/日(体重≥60 kg)

8 mg/日(体重<60 kg)

(n = 478例)

ソラフェニブ群

1回400 mg 1日2回

(n = 476例)

切除不能肝細胞癌患者 954例 (20か国、154施設)  全身化学療法の治療歴が ない  測定可能標的病変≧1  BCLC病期BまたはC  Child-PughクラスA  ECOG PS 0-1 下記の患者は除外  Vp4  胆管浸潤  腫瘍肝占拠率50%以上 ラ ン ダ ム 化 ( 1 : 1 ) •主要評価項目: - OS (全生存期間) •副次評価項目: - PFS, TTP, ORR (mRECIST) - QoL: EORTC QLQ-C30, QLQ-HCC18 - Safety and tolerability

- PK and PK/PD assessment

BCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer):国際的に汎用されている病期分類 Child-Pugh分類:肝障害度をA、B、Cの3段階で評価(Cが重症)

ECOG PS (Performance Status): ECOG(米国の腫瘍学団体)が定めた 全身状態の指標

OS:全生存期間、PFS:無増悪生存期間、TTP:無増悪期間、ORR:奏効率 mRECIST:固形がんに対する効果を判定する際に用いられる評価基準の一つ EORTC QLQ-C30, QLQ-HCC18:QOLの評価尺度

(27)

推定されるHR 0.86 0.93 1.0 1.08 非劣性の上限値

非劣性

仮定したシナリオ ● レンバチニブの優位 ソラフェニブの優位

– 目標症例数:940例

– 目標イベント数: 700イベント

– 主要評価項目の仮説:

• ソラフェニブのOSの中央値: 10カ月

• レンバチニブのOSの中央値: 12.5カ月

• HR:0.8

– 非劣性の検出力:97%

(非劣性マージン:1.08)

REFLECT試験 解析計画

厳格な非劣性マージンを設定した非劣性試験

(28)

Characteristic

Category

レンバチニブ

(n = 476)

ソラフェニブ

(n = 475)

年齢 (歳) 平均値 61.3 61.2 性別 男性 女性 85% 15% 84% 16% 地域 アジア・太平洋地域 67% 67% 体重(kg) < 60 ≥ 60 32% 68% 31% 69% ECOG PS 0 1 64% 36% 63% 37% 肉眼的門脈浸潤及び/又は 肝外転移 あり なし 69% 31% 71% 29% Child-Pughクラス A B 99% 1% 99% 1% BCLCステージ B (Intermediate stage) C (Advanced stage) 22% 78% 19% 81% 肝細胞癌の要因 B型肝炎 C型肝炎 アルコール その他 不明 53% 19% 8% 8% 13% 48% 27% 4% 7% 15% ベースライン時のAFP値 (ng/mL) < 200 ≥ 200 53% 46% 60% 39%

患者背景

(29)

OS中央値はレンバチニブ群13.6ヵ月、ソラフェニブ群12.3ヵ月(HR:0.92、95%信頼区

間(CI):0.79-1.06)であり、本試験の主要評価項目であるOSに関するレンバチニブ群

のソラフェニブ群に対する非劣性が検証された。

主要評価項目:全生存期間(OS)

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 観察期間(月) Patients at risk レンバチニブ群 ソラフェニブ群 478 436 374 297 253 207 178 140 102 67 40 21 8 8 16 33 57 83 116 156 192 230 282 348 440 476 2 0 0 4 中央値(月) 95%CI レンバチニブ群 13.6 12.1-14.9 ソラフェニブ群 12.3 10.4-13.9 HR:0.92(95%CI:0.79-1.06) 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0

(30)

mRECISTに基づく試験責任医師の評価によるPFS中央値は、レンバチニブ群7.4ヵ月、ソ

ラフェニブ群3.7ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.57-0.77、P<0.00001[層別log-rank検

定])であり、レンバチニブ群のほうが有意に良好であった。

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 478 345 223 172 106 69 44 28 14 9 4 2 0 0 0 2 2 4 9 14 22 33 41 56 94 140 262 476 Patients at risk レンバチニブ群 ソラフェニブ群 無 増 悪 生 存 割 合 中央値(月) 95%CI レンバチニブ群 7.4 6.9-8.8 ソラフェニブ群 3.7 3.6-4.6 HR:0.66(95%CI:0.57-0.77) Log-rank検定:P<0.00001 観察期間(月) 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0

副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)

(31)

独立画像判定による奏効率

評価項目

レンバチニブ

(n = 478)

ソラフェニブ

(n = 476)

Complete Response (CR)

2.1%

0.8%

Partial Response (PR)

38.5%

11.6%

Stable Disease (SD)

33.3%

46.0%

Durable Stable Disease

17.6%

18.9%

Progressive Disease (PD)

16.5%

31.9%

Unknown/Not Evaluable

9.6%

9.7%

奏効率 (CR + PR)

40.6%

12.4%

Odds Ratio (95% CI);

P

-value

5.01 (3.59, 7.01); <0.00001

病勢コントロール率 (CR + PR + SD)

73.8%

58.4%

*Durable SD:SD期間が ≥23週間

レンバチニブで有意な腫瘍縮小効果と腫瘍壊死効果が認められ、

分子標的薬では奏効率40%をはじめて超えた

(32)

mRECISTに基づく腫瘍径のベースラインからnadirまでの変化率(増加率は100%で切り捨て) 造 影 強 調 腫 瘍 領 域 ま た は 残 存 腫 瘍 (viab le tum o r ) 領 域 の 最 大 減 少 率 ( % )

レンバチニブ(n=433)

ソラフェニブ(n=436)

100 -100 -20 -40 -60 -80 80 60 40 20 0 100 -100 -20 -40 -60 -80 80 60 40 20 0

標的病変径和のベースラインからの最大変化率のwaterfall plot

造 影 強 調 腫 瘍 領 域 ま た は 残 存 腫 瘍 (viab le tum o r ) 領 域 の 最 大 減 少 率 ( % )

(33)

試験治療中に発現した有害事象

レンバチニブ(n=476)

ソラフェニブ(n=475)

いずれかの群の15%以上に発現したTEAE

全Grade

Grade≧3

全Grade

Grade≧3

手掌・足底発赤知覚不全症候群

128(26.9)

14(2.9)

249(52.4)

54(11.4)

下痢

184(38.7)

20(4.2)

220(46.3)

20(4.2)

高血圧

201(42.2)

111(23.3)

144(30.3)

68(14.3)

食欲減退

162(34.0)

22(4.6)

127(26.7)

6(1.3)

体重減少

147(30.9)

36(7.6)

106(22.3)

14(2.9)

疲労

141(29.6)

18(3.8)

119(25.1)

17(3.6)

脱毛症

14(2.9)

0(0)

119(25.1)

0(0)

蛋白尿

117(24.6)

27(5.7)

54(11.4)

8(1.7)

発声障害

113(23.7)

1(0.2)

57(12.0)

0(0)

悪心

93(19.5)

4(0.8)

68(14.3)

4(0.8)

腹痛

81(17.0)

8(1.7)

87(18.3)

13(2.7)

血小板数減少

87(18.3)

26(5.5)

58(12.2)

16(3.4)

AST増加

65(13.7)

24(5.0)

80(16.8)

38(8.0)

甲状腺機能低下症

78(16.4)

0(0)

8(1.7)

0(0)

嘔吐

77(16.2)

6(1.3)

36(7.6)

5(1.1)

便秘

76(16.0)

3(0.6)

52(10.9)

0(0)

皮疹

46(9.7)

0(0)

76(16.0)

2(0.4)

頻度が高い有害事象は、レンバチニブでは高血圧、下痢、食欲減退、体重減少など、

ソラフェニブでは手掌・足底発赤知覚不全症候群、下痢、高血圧、食欲減退などであった。

(34)

グレード1

グレード2

グレード3

グレード別手足症候群

近畿大学講演資料から作図 33

(35)

身体機能 役割機能 心理機能 認知機能 社会機能 倦怠感 悪心・嘔吐 疼痛 呼吸困難 睡眠障害 食欲不振 便秘 下痢 経済的困難 全般的健康/QOL サマリースコア 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 レンバチニブ群が良好 ソラフェニブ群が良好 HR 0.91 0.83 0.96 1.07 1.05 0.94 1.05 0.82 0.98 1.18 1.01 1.08 0.53 0.94 1.01 0.87 LCL 0.769 0.705 0.811 0.903 0.887 0.804 0.869 0.697 0.811 0.980 0.857 0.883 0.449 0.759 0.870 0.754 UCL 1.070 0.970 1.132 1.258 1.238 1.091 1.276 0.953 1.186 1.423 1.193 1.317 0.630 1.159 1.180 1.013 P 値 0.2456 0.0193 0.6145 0.4522 0.5833 0.3999 0.5963 0.0105 0.8432 0.0814 0.8980 0.4619 <.0001 0.5538 0.8694 0.0742 レンバチニブ群が良好 ソラフェニブ群が良好 腹部膨満 性生活 発熱 疼痛 栄養 身体イメージ 黄疸 倦怠感 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 HR 1.00 0.94 0.90 1.14 0.81 0.79 0.94 0.93 LCL 0.819 0.767 0.755 0.966 0.681 0.675 0.786 0.800 P値 0.9646 0.5239 0.2766 0.1218 0.0113 0.0051 0.5373 0.3906 UCL 1.211 1.145 1.084 1.347 0.952 0.933 1.134 1.091

HRQoL: 臨床的に意義のある悪化までの期間の解析

レンバチニブがソラフェニブに比較して、5つのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の悪化を遅延した。

役割機能(P=0.0193)、疼痛(P=0.0105)、下痢(P<0.0001)

栄養(P=0.0113)、身体イメージ(P=0.0051)

EORTC QLQ-C30

EORTC QLQ-HCC18

(36)

 臨床試験のデザイン

①体重別に投与量を設定した(12mg vs 8mg)

②非劣性試験のデザインにした

 薬効:

抗腫瘍効果が良好

 毒性:

許容範囲かつ、QoLが良好

 忍容性:

手足症候群が比較的少なく、

より長期間服用可能

私の考えるREFLECT試験の成功要因

35

(37)

肝細胞癌に対する有効な一次治療薬は

1種類のみであったが、

新薬レンバチニブの有用性が確認された

肝細胞癌の一次治療薬としては、

約10年ぶりに成功した第3相試験である

キーメッセージ 4

(38)

約10年ぶりに第3相試験の成功

2007

ソラフェニブが初めて

全生存期間の延長を証明

切除不能の肝細胞癌について20カ国

154施設で実施した世界規模の臨床

試験で、肝細胞癌における新規の分子

標的薬

「レンバチニブ」

の生命予後向

上における有効性・安全性を実証する

ことに成功

REFLECT

試験の成功

レンバチニブの登場

ソラフェニブ後の臨床試験

2017

2008 - 2016

ソラフェニブを対照とした5つの

薬剤が全て主要評価項目未達成

37

(39)

Impact Factor: 53.254

Kudo M et al., Lancet. 2018

Mar 24;391(10126):1163-1173.

(40)

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

治験

202 試験 第1相パート

(日本2施設)

REFLECT試験 第3相

(20ヵ国154施設、うち日本23施設)

ASCO

口頭発表

レンバチニブは日本を中心に開発され、

「切除不能な肝細胞癌」の適応を日本が世界で初めて取得した

202 試験 第2相パート

(日本12施設及び韓国2施設)

2011年12月14日

経口分子標的治療薬では

世界で初となる体重別の

用量設定を検討

2018年3月23日

「切除不能な肝細胞癌」にかかる適応を

日本が世界で初めて取得

★2002年

エーザイ筑波研究所にて、レンバチニブメシル酸塩を創製

39

(41)

*1:肝切除の場合は肝障害度による評価を推奨 *2:腫瘍数1個なら①切除,②焼灼 *3:Child-Pugh分類Aのみ *4:患者年齢は65歳以下

Child-Pugh分類A,B

*1

Child-Pugh分類C

肝予備能

あり

なし

脈管侵襲

3cm超

3cm以内

腫瘍径

治療法

1~3個

4個以上

腫瘍数

切除 焼灼 切除 塞栓 塞栓 動注/分子標的薬 分子標的薬 移植 緩和

あり

なし

肝外転移

移植不能 ミラノ基準内 塞栓/切除/ 動注/分子標的薬 *2 *3 *4

肝細胞癌

肝細胞癌治療アルゴリズム(2017年版)

焼灼:ラジオ波焼灼療法(RFA)

塞栓:肝動脈化学塞栓療法(TACE)

動注:肝動注化学療法(HAIC)

Child-Pugh分類:肝障害度をA、B、Cの3段階で評価(Cが重症)

(42)

肝癌診療ガイドライン2017年版 日本肝臓学会編, 金原出版, p68. *1:肝切除の場合は肝障害度による評価を推奨 *2:腫瘍数1個なら①切除,②焼灼 *3:Child-Pugh分類Aのみ *4:患者年齢は65歳以下

Child-Pugh分類A,B

*1

Child-Pugh分類C

肝予備能

あり

なし

脈管侵襲

3cm超

3cm以内

腫瘍径

治療法

1~3個

4個以上

腫瘍数

切除 焼灼 切除 塞栓 塞栓 動注/分子標的薬 分子標的薬 移植 緩和

あり

なし

肝外転移

移植不能 ミラノ基準内 塞栓/切除/ 動注/分子標的薬 *2 *3 *4

肝細胞癌

肝細胞癌治療アルゴリズム(2017年版)

焼灼:ラジオ波焼灼療法(RFA)

塞栓:肝動脈化学塞栓療法(TACE)

動注:肝動注化学療法(HAIC)

41 Child-Pugh分類:肝障害度をA、B、Cの3段階で評価(Cが重症)

(43)

CQ43 切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?

推奨:

外科切除や肝移植,局所療法,TACEが適応とならない切除不能進行肝細胞癌で,PS良

好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh分類A症例に,一次治療としてソラフェニブ (また

はレンバチニブ

*

)による治療を推奨する.

二次治療として,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性を示した

Child-Pugh分類Aの症例にレゴラフェニブによる治療を推奨する.

*2017年9月時点では本邦において肝細胞癌に対する保険適応は認められていない.

(強い推奨)

(強い推奨)

ソラフェニブに忍容性を示した患者:

RESORCE試験では,ソラフェニブ治療中止前28日間の最小用量が1日400mg以上(1日1回投与)であり,なおかつ20日間以 上投与された患者と定義.

肝癌診療ガイドライン2017年版 〈CQ43〉

(44)

CQ43 切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?

推奨:

外科切除や肝移植,局所療法,TACEが適応とならない切除不能進行肝細胞癌で,PS

良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh分類A症例に,一次治療としてソラフェニブ

またはレンバチニブによる治療を推奨する.

二次治療として,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性を示した

Child-Pugh分類Aの症例にレゴラフェニブによる治療を推奨する.

(強い推奨)

(強い推奨)

肝癌診療ガイドライン2017年版 〈CQ43〉

本薬剤(レンバチニブ)は2018年3月に保険適用され、一次治療薬の選択肢として推奨される。 肝癌診療ガイドライン2017年版 日本肝臓学会編,金原出版,p184-187. https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp_2017

ソラフェニブに忍容性を示した患者:

RESORCE試験では,ソラフェニブ治療中止前28日間の最小用量が1日400mg以上(1日1回投与)であり,なおかつ20日間以 上投与された患者と定義. 43

(45)

リアルワールドにおいて

REFLECT試験を再現

施設名

患者数

ORR

REFLECT試験日本人集団

n=81

46.9 %

帝京大学ちば総合医療センター

n=16

40 %

名古屋大学

n=10

50 %

RELPEC グループ

n=27

40.7 %

北海道大学

n=11

45.5 %

武蔵野赤十字病院

n=5

100 %

近畿大学

n=34

38 %

REFLECT試験の40%以上の奏効率が、リアルワールドにおい

ても再現され、日本の臨床現場でも高い有用性を示した

(46)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 2014/8/26 2014/11/26 2015/2/26 2015/5/26 2015/8/26 2015/11/26 2016/2/26 2016/5/26 2016/8/26 2016/11/26 2017/2/26 2017/5/26 2017/8/26 2017/11/26 2018/2/26 PIVKA-II AFP

Best response:

PR(治験時) → CR(カットオフ後)

• 2014/9/1

投与開始

• 2018/9/17 現在 投与継続中

投与期間4年以上

レンバチニブ 12mg/day 皮疹 蛋白尿

AFP

PIVKA-II 8mg/day 4mg/day

70歳代、男性、NBNC、 PS0、CP5点、BCLC-B

腫瘍量が多いため、TACE治療なしでレンバチニブを開始

肝内多発の病変

レンバチニブ投与後

腫瘍が完全壊死(黒くなる)した

45

(47)

70歳代、男性、HCV、PS0、CP5点、BCLC-C

C型肝炎SVR後に肝細胞癌発症した患者に対してレンバチニブを開始

レンバチニブ 12mg/day

レンバチニブ 8mg/day

AFP

腫瘍縮小率

速やかに腫瘍マー

カーが低下し、腫

瘍が8週間でPRを

達成し、1年以上

の長期間に渡り薬

効が継続した

-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 Baseline 4W 8W 16W 24W 32W 40W 48W 56W 64W 72W AFP値 腫瘍縮小率

(48)

レンバチニブの高い奏効率の臨床的意義は、

奏効が得られれば予後延長効果につながり、

医師・患者も薬剤効果を実感することができ、

治療に対する喜びを感じることで、

治療継続のモチベーションや治療のコンプライ

アンスが上がるということがあげられる

47 Kudo M., Liver Cancer 2018;7:215–224 (DOI:10.1159/000492533)

(49)

BCLC亜分類

B1

B2

B3

B4

Child-Pughスコア

5-7

5-7

8-9

ミラノ基準外および

Up-to-7以内

IN

OUT

ANY

IN

OUT

亜分類

B3-a

B3-b

治療戦略のコンセプト

根治的治療

非根治的治療

緩和療法

根治的治療

(up-to-7以内)

緩和治療

無治療

第一選択治療

肝切除

焼灼療法

超選択的cTACE

DEB-TACE (>6cm)

HAIC (>6個)

Sorafenib (CP-A

*

)

肝移植

焼灼療法

超選択的cTACE

HAIC

選択的DEB-TACE

代替治療

DEB-TACE(大きな

結節、CP-7点)

B-TACE

cTACE

DEB-TACE

B-TACE、HAIC

BSC

• レンバチニブ、ソラフェニブはChild-Pughスコア5/6点の患者に推奨 • DEB-TACE(抗がん剤溶出ビーズによる肝動脈化学塞栓療法)は6㎝を超える巨大腫瘍に推奨 • HAIC(肝動注化学療法)は6個を超える多発腫瘍に推奨 • B-TACE(バルーン閉塞下肝動脈化学塞栓療法)は少数の腫瘍結節に推奨

Kinki Criteria

(近畿大学のBCLC stage Bに対する治療方針)

*CP-A: Child-Pugh A

(50)

BCLC亜分類

B1

B2

B3

B4

Child-Pughスコア

5-7

5-7

8-9

ミラノ基準外および

Up-to-7以内

IN

OUT

ANY

IN

OUT

亜分類

B3-a

B3-b

治療戦略のコンセプト

根治的治療

非根治的治療

緩和療法

根治的治療

(up-to-7以内)

緩和治療

無治療

第一選択治療

肝切除

焼灼療法

超選択的cTACE

レンバチニブ(CP-A)

肝移植

焼灼療法

超選択的cTACE

HAIC

選択的DEB-TACE

代替治療

DEB-TACE(大きな

結節、CP-7点)

B-TACE

ソラ-レゴ逐次療法

TACE+ソラフェニブ

DEB-TACE (>6cm)

DEB-TACE

B-TACE、HAIC

BSC

Kindai Criteria:Updated Kinki Criteria

(近畿大学のBCLC stage Bに対する治療方針)

49 Kudo M., Liver Cancer 2018;7:215–224 (DOI:10.1159/000492533) • レンバチニブ、ソラフェニブはChild-Pughスコア5/6点の患者に推奨

• DEB-TACE(抗がん剤溶出ビーズによる肝動脈化学塞栓療法)は6㎝を超える巨大腫瘍に推奨 • HAIC(肝動注化学療法)は6個を超える多発腫瘍に推奨

• B-TACE(バルーン閉塞下肝動脈化学塞栓療法)は少数の腫瘍結節に推奨

(51)

 本臨床試験は、肝細胞癌に対する一次治療薬としては「ソラフェニブ」の臨床試

験成功以来、実に10年ぶりに成功した唯一の臨床試験であり、画期的な成果

である

 自覚する副作用が比較的少なくQOLも良い

 抗腫瘍効果(奏効率・無増悪生存期間)も良好

 高い奏効率(腫瘍縮小効果)は癌のダウンステージングにより治療法をより根治

的な方法(切除・マイクロ波・ラジオ波・塞栓療法)にスイッチできる可能性が出て

きた

 特に塞栓療法対象症例の一部の治療法はレンバチニブに置き換わる可能性も

ある

 良好な費用対効果が期待できる

 現在、肝細胞癌の一次治療薬の主流となる可能性がある

第一選択薬のポテンシャルを示す薬剤の登場

キーメッセージ 6

(52)

肝細胞癌治療の将来展望

(53)

分子標的薬と免疫療法の併用の理論的根拠(4Rs)

癌を排除するために最も都合の良い環境を作る

VEGFが樹状細胞の成熟を

妨げている

がVEGF阻害剤

はT細胞のprimingと活性化

において重要な働きをする

(

Recognize

)

VEGF阻害剤は

腫瘍血管を正

常化させる

ことによりT細胞を

効率的に腫瘍に運ぶ(

Recruit

)

VEGF阻害剤は

MDSCs や

抑制性 T細胞、TAM

などを

抑えることにより免疫抑制

環境から 免疫応答環境に

変化させる(

Reprogram

)

免疫チェックポイント阻害剤がT

細胞を活性化させるがそれを

VEGF阻害剤は

免疫微小環境

を変化させてIL-10やTGF-β

などを抑制し

さらにsynergistic

にする(

Restore

)

R

ecognize,

R

ecruit,

R

eprogram, and

R

estore

血管新生阻害作用

免疫抑制微小環境改善

分子標的薬

CTLの免疫抑制機構を解

除して抗腫瘍効果を回復

免疫療法

(54)

分子標的薬と免疫療法の併用の理論的根拠(4Rs)

癌を排除するために最も都合の良い環境を作る

VEGFが樹状細胞の成熟を

妨げている

がVEGF阻害剤

はT細胞のprimingと活性化

において重要な働きをする

(

Recognize

)

VEGF阻害剤は

腫瘍血管を正

常化させる

ことによりT細胞を

効率的に腫瘍に運ぶ(

Recruit

)

VEGF阻害剤は

MDSCs とか

抑制性 T細胞、TAM

とかを

抑えることにより免疫抑制

環境から 免疫応答環境に

変化させる(

Reprogram

)

免疫チェックポイント阻害剤がT

細胞を活性化させるがそれを

VEGF阻害剤は

免疫微小環境

を変化させてIL-10やTGF-β

などを抑制し

さらにsynergistic

にする(

Restore

)

R

ecognize,

R

ecruit,

R

eprogram, and

R

estore

CTL(cytotoxic T lymphocyte):細胞傷害性T細胞、MDSC(myeloid-derived suppressor cells):骨髄由来免疫抑制細胞 TAM(tumor-associated macrophage):腫瘍関連マクロファージ

(55)

レンバチニブとPD-1/PD-L1抗体併用療法による

免疫抑制的腫瘍微小環境への影響

レンバチニブ投与前

レンバチニブ投与後

VEGF TCR MHC 抗原 細胞障害性 T細胞 癌細胞 単球 TGF-β 腫瘍関連 マクロファージ TCR MHC 抗原

癌細胞を

攻撃

PD-1 PD-L1 腫瘍関連 マクロファージ

減少

免疫抑制性サイトカイン

(TGF-β)

減少

免疫抑制シグナル受容体

(PD-1, Lag3)

減少

免疫活性化サイトカイン

(IL-12、IFN-γ)

増加

レンバチニブによる

抗腫瘍免疫への転換

IFN-γ

免疫抑制系の腫瘍内免疫

レンバチニブによる

PD-1シグナル阻害薬の増強作用

腫瘍関連 マクロファージ 単球

抗PD-1

抗体

細胞障害性 T細胞 癌細胞 制御性 T細胞

レンバチニブは免疫抑制性の腫瘍関連マクロファージを抑制し、細胞障害性T細胞を

活性化することで免疫チェックポイント阻害剤の活性を増強する可能性

(56)

私が考えるこれからの肝細胞癌治療アルゴリズム

(57)

 死亡者数はB型・C型肝炎治療により減少しているが、C型肝炎ウイルス駆除を

した場合でも肝発癌する可能性があり、注意深いフォローアップが必要である

 C型肝炎ウイルス起因による肝癌症例は減少しているが、糖尿病やNASHなど

を背景とした症例は増加傾向にある

 レンバチニブの登場により肝細胞癌治療のアルゴリズムが変わり、実臨床でも

40%以上の奏効率を再現した

 レンバチニブは手足症候群の発現割合が低いことや良好なQOLならびに有意

に臨床的に意義のある抗腫瘍効果は医師・患者の治療に対してのモチベーショ

ンを高める

 レンバチニブをはじめとする分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬

*

との併

用に関する開発が進んでいる

医療の最前線における肝細胞癌の治療変革

キーメッセージ 7

参照

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