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地 域 型 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ム の研 究(上)

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(1)

地 域 型 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ム の研 究(上)

一 第1段 階 北 海 道 にお け る地 域 優 位 性 の 発見 一

瀬 戸 篤

1研 究 課 題 1‑1目 1‑2方 1‑3結 2研 究 背 景 3

的 法 論

北 海道 にお け る地域優 位 性

‑⊥9臼00

一[﹁

00り○り0

コス ト分析

モ デルベ ンチ ャー企業 の比 較分 析 北海 道 にお ける地域 優 位性 の発 見 4結 び:第2段 階 の研 究課 題

4‑1地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 の 環 境

4‑2求 め られ る 地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム

1研 究 課 題

21世 紀 の 日本 は,先 進 国 で も最 高 水 準 の 高 齢 化 が進 む 。 こ の よ う な 日本 を 支 え る 経 済 社 会 シス テ ム と し て,ベ ンチ ャ ー企 業 が 次 々 と生 ま れ る 元 気 な地 域 経 済 群 が 国 内各 地 に欠 かせ ない 。 そ れ ゆ え,本 研 究 に よっ て 国 内他 地 域 に も適 応 可 能 な く 地 域 型 ベ ンチ ャ ー支 援 シス テ ム 〉を 産 み だ し,も っ て 北 海 道 を く ベ ンチ ャー 先 進 地 域 〉 に変 え て ゆ くこ とが,本 研 究 にお け る 最 大 の 課 題 で あ る。

1‑1目 的

現在,北 海道 は国内公 共投資 削減の なかで拓銀破綻 を経て重大 な経済危機 に直

〔99〕

(2)

100 商 学 討 究 第51巻 第4号

面 し て い る。 こ う した 状 況 を打 破 す る た め に は,〈 企 業 家 〉 に よ る ベ ンチ ャー 企 業 の 創 出 を促 し地 域 経 済 を あ らた な発 展 段 階 に移 行 させ る他 に 方 法 は な い 。 だ が,従 来 型 の 経 済 社 会 シス テ ム で は情 報 と経 済 の東 京 へ の 一 極 集 中 が 避 け ら れ ず,遠 隔 地 域 に お け るベ ンチ ャ ー企 業 創 出 は きわ め て 困 難 と考 え られ て きた 。

しか し な が ら,数 は少 な く と も旺 盛 な投 資 と積 極 的 な 道 外 マ ー ケ テ ィ ング に よ っ て 国 内外 の 市 場 を 開拓 して い る 活 力 あ る 道 内 製 造 系 ベ ンチ ャ ー 企 業 が 存 在 す る 。 そ こ で,彼 ら か ら経 営 戦 略 を直 接 学 び そ れ を比 較 分析 す る こ と に よ っ て, 地 域 型 ベ ンチ ャー 創 出 の た め の 支 援 シ ス テ ム を構 築 す る こ とは可 能 で あ る と考

え た 。 こ う して,北 海 道 経 済 を牽 引 す る 製 造 系 ベ ンチ ャー 企 業 の担 い 手 と して 期 待 さ れ る 〈 創 業 者 個 人 に対 す る 支 援 事 業 〉 の 具 体 化 に至 る ま で に 平 成9年 か ら4力 年 を 要 した 。 そ して こ の4力 年 に わ た る研 究 は3段 階 を経 た 。 な お,本 稿 で は,(上)と して 第1段 階 にお け る分 析 結 果 を報 告 す る。 報 告 の 詳 細 に つ

い て は,公 表 済 み の デ ィス カ ッ シ ョンペ ー パ ー を参 照 され た い 。 また,第2段 階 を(中),第3段 階 を(下)と して,本 誌 次 号 以 降 に掲 載 予 定 で あ る 。

第1段 階(平 成9年 度):道 内 で 創 業 した 製 造 系 ベ ンチ ャ ー企 業 の フ ィー ル ド サ ー ベ イ か ら,彼 らが 遭 遇 した創 業 期 に お け る 問題 点 とそ の解 決 策 を探 っ た 。 そ して,こ れ らの 結 果 か ら,〈 人 材 〉,〈技 術 〉,〈マ ー ケ テ ィ ン グ〉,〈資 金 〉 の 各 分 野 に お い て 共 通 して 有 効 に 機 能 した と考 え られ る経 営 戦 略 を比 較 分 析 し, 構 築 す べ き 〈 地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム 〉 の課 題 を明 らか に した(*注:

小 樽 商 科 大 学 経 済 研 究 所 デ ィス カ ッシ ョ ンペ ーパ ー シ リ ー ズNo.48)。

第2段 階(平 成10年 度):平 成9年 度 の研 究 成 果 で 考 察 さ れ た 地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の有 効 性 につ い て サ ー ベ イ と検 討 を行 っ た。 す な わ ち,北 海 道 で 新 た に ベ ンチ ャ ー ビ ジ ネス を ス タ ー トさせ る た め に必 要 と され る諸 条 件 を検 討 し,新 た な イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ン ・シ ス テ ム を設 計 して そ の 適応 可 能 性 を探 っ た

(*注:小 樽 商 科 大 学CBCデ ィス カ ッ シ ョ ンペ ー パ ー シ リー ズNo.54)。

(3)

地域型 ベ ンチ ャー支援 システ ムの研 究(上) 101 第3段 階(平 成11‑12年 度):平 成10年 度 の研 究 成 果 で設 計 され た イ ンキ ュベ ー シ ョン ・シ ス テ ム を実 現 す べ く,産 学 官 連 携 に よる創 業 者 支 援 事 業 に着 手 した 。 そ の た め に,第2段 階 で 明 らか に な った 道 内4国 立 工 業 高 専 の 卒 後10年 以 上 の 全OBに 対 す る大 規 模 ア ンケ ー トの実 施 と,創 業 支 援 候 補 者 の 選 出,お よ び具 体 的 な 資 金 ・場 所 等 の イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン提 供 に よ る 創 業 支 援 事 業 を 開 始 し

た 。

1‑2方 法

本 研 究 は,第1‑2段 階 で は,小 樽 商 科 大 学 瀬 戸 研 究 室 と 日本 開発 銀 行 札 幌 支 店(当 時)と の 産 学 共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク トと して ス ター トし,プ ロ ジ ェ ク ト事 務 局 を,小 樽 商 科 大 学 ビ ジ ネス 創 造 セ ンタ ー 内 に常 設 の 「 地 域 経 済 社 会 シ ス テ

ム研 究 会 」 に 設 置 した 。

研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム は,著 者 と小 樽 商科 大 学 大 学 院 商 学 研 究 科(地 域 ・応 用 経 済 学 コ ー ス)で 「 地 域 ベ ンチ ャー 論 」 を研 究 テ ー マ とす る筆 者 の 指 導 大 学 院 生6名(社 会 人4名:道 庁 経 済 部,日 本 開 発 銀 行,㈱ リ クル ー ト,㈱ 未 来 総 研)+学 部 進 学 者2名),お よ び 日本 開発 銀 行 の札 幌 支 店 調 査 担 当者4名 に よ って 構 成 され た(*注:す べ て 当 時)。効 果 的 な 共 同 研 究 推 進 の た め,メ ンバ ー 全 員 が 毎 週 金 曜 日 に札 幌都 心 ビル に設 置 され た 小 樽 商 科 大 学 「 札 幌 サ テ ラ イ ト」

に 集 ま り,定 例 研 究 会 と道 内 フ ィー ル ドサ ー ベ イ を実 施 し た。 そ の 中 で,北 海 道 にお け る 製 造 系 ベ ンチ ャ ー企 業 の 地 域 優 位 性 を析 出 す る こ とを 目的 に,(1)公

表 デ ー タ に よ る 国 内他 地 域 お よび ア ジ ア との コス ト比 較 分 析,(2)道 内 製 造 系 中 小 企 業 の フ ィー ル ドサ ー ベ イ,お よ び モ デ ルベ ンチ ャ ー企 業 の 抽 出 と比 較 分 析, (3)北海 道 の 地 域 優 位 性 の 発 見 とそ の 可 能 性 考 察,を 行 っ た 。

第3段 階 に 入 る と,そ れ ま で に公 表 した研 究 成 果 を も と に,道 内 各 地 の 国立 大

学 高 専,北 海 道 通 産 局,道 庁,各 市 役 所,各 商 工 会 議 所,そ の他 ベ ンチ ャー 支

援 機 関 を 訪 ね,よ り具 体 的 か つ現 実 的 な ベ ンチ ャー ・イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ンの 実

(4)

ヱ02 商 学 討 究 第51巻 第4号

現 に 向 け て の説 明 を幾 度 とな く行 っ た 。 こ う した 道 内 産 学 官 連 携 に よ る創 業 者 支 援 事 業 の 具 体 化 の た め の 行 動(説 明,ア ンケ ー ト,呼 び か け)は,平 成12年

4月 に 国 立 大 学 地 域 共 同研 究 セ ン ター と し て 学 内 に設 立 さ れ た 小 樽 商 科 大 学

「ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン タ ー(CBC)」 を事 務 局 と して 行 われ た 。

1‑3結 論

研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム は,は じ め に 「 ベ ン チ ャ ー創 出 面 で 地 域 は不 利 で あ る?」 との 仮 説 を た て た。 つ ぎ に,同 仮 説 を反 証 す るべ く実 証 デ ー タ の入 手 と フ ィ ー ル ドサ ー ベ イ お よ び比 較 分 析 に着 手 し た。 フ ィー ル ドサ ー ベ イ で は,パ イ ロ ッ トサ ー ベ イ と経 営 者 ヒア リ ング を経 て,平 成9年7月 か ら平 成10年2月 にか け て 道 内 製 造 系 ベ ンチ ャ ー 企 業 を フ ィー ル ドサ ー ベ イ した 結 果,(1)現 経 営 者 が 創 業 者 で あ る こ と,(2)創 業 場 所 が 北 海 道 で あ る こ と,(3)道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ に積 極 的 で あ る こ と,の3条 件 を満 た す7社(金 属 加 工 ・半 導 体 製 造 装 置 ・ 食 品 機 械 ・バ イ オ ・住 宅 ・エ ン ジニ ア リ ング ・ソ フ トウ ェ ア)が 浮 上 し,創 業

プ ロセ ス に 関 す る7社 の 比 較 分 析 を行 っ た 。

以 上 の 研 究 結 果 か ら,わ れ わ れ は 「 ベ ンチ ャー 創 出面 で 地 域(=北 海 道)は 有 利 で あ る」 との 結 論 を得 た 。 そ の 理 由 は,4つ の 経 営 資 源(人 材 ・技 術 ・マ ー ケ テ ィ ン グ ・資 金)か ら見 て,(1)地 元 国 立 工 業 高 専 を 卒 業 して首 都 圏 メ ー カ ー に勤 務 し たUタ ー ン技 術 者 の 活 用,(2)非 札 幌 圏 中 核 都 市 に お け る低 コス ト高 付 加 価 値 経 営,(3)自 前 設 計 ・部 品 内 製化 に よ る独 自製 品,(4)イ ン ター ネ ッ トの積 極 的 活 用,の4条 件 が 満 た さ れ た場 合,製 造 系 の 地 域 型 ベ ンチ ャ ー が 創 業 に 成 功 す る可 能 性 が 北 海 道 で は か な り高 い こ とが 確 認 で きた か らで あ る 。

次 に,第2段 階 で は,Uタ ー ン とベ ンチ ャ ー創 業 を結 び つ け る シ ス テ ム の構 築 に あ た って,従 来 か ら別 個 に行 わ れ て きた 〈 市 町村 に よる 企 業 立 地 〉,〈道 に よ るUタ ー ン促 進 事 業 や 中小 企 業 支 援 策 〉,〈通 産 省 に よ る ベ ンチ ャ ー支 援 事 業 〉,

〈 公 的 金 融 機 関 に よ る制 度 金 融 〉,〈そ の ほか 経 済 団 体 や 産 学 官 に よる 地 域 産 業

(5)

地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上) 103 支 援 策 〉 の 細 部 に わ た る 観 察 と検 証 を 行 っ た 。 そ れ らの プ ロセ ス を 経 て,「UI タ ー ン&ベ ンチ ャ ー=地 域 型 ベ ンチ ャ ー創 業 を成 功 させ る シス テ ム の 設 計 」 を 行 っ た 。

最 後 に,第3段 階 で は,小 樽 商 科 大 学 ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン タ ー(CBC)と 北 海 道 通 商 産 業 局(小 脇 局 長)が コ ー デ ィ ネ ー ター と な り,道 内 国 立 工 業 高 専 卒 業 生 に対 す る1万 人 規 模 の ア ンケ ー ト調 査 を実 施 した 。 そ の 結 果,道 内 有 力 民 問 企 業(千 歳 市;自 動 車 部 品 製 造 「ダ イ ナ ッ クス 株 式 会 社 」正 木 代 表 取 締 役 社 長) の 全 面 的 な賛 同 と協 力 を得 て,ベ ンチ ャー 設 立 を 目的 とす る 創 業 予 定 者 個 人 に 対 す る 〈 生 活 資 金 〉,〈開発 資 金 〉,〈イ ン キ ュベ ー シ ョ ン ・ス ペ ー ス 〉,〈光 熱 費 負 担 の 提 供 〉,等 の イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン機 能 を 伴 う創 業 支 援 事 業 を 平 成13年4 月 よ り開 始 す る に至 っ た 。

2研 究 背 景

現 在,北 海 道 に お い て は,従 来 型 の く 官 依 存 経 済 〉 が もは や た ち い か ず,地 域 の 内 部 に お け る ビ ジ ネ ス創 造 が 何 よ りも求 め られ て い る。 この よ う な地 域 経 済 にお け る新 産 業 創 出 に 向 け た 流 れ は,地 域 に あ らた な ビ ジ ネ ス チ ャ ンス の 到 来 と企 業 創 造 の 好 環 境 を も た ら して い る 。 特 に,国 内 経 済 の グ ロー バ ル化 に不 可 欠 と さ れ る 規 制 緩 和 は,既 存 市 場 へ の新 規 参 入 や新 市 場 創 出 を志 す もの(=企 業 家)に と っ て は 絶 好 の 追 い 風 とな りつ つ あ る。こ う した環 境 の 下,〈ベ ンチ ャ ー をス タ ー トさせ る な ら地 域 で 〉 と い う流 れ を創 出 す る こ とが,焦 眉 の地 域 政 策 課 題 とな っ て い る 。

シ ュ ンペ ー タ は著 作 『 経 済 発 展 の 理 論 』(1926)の な か で,資 本 主 義 経 済 が 停

滞 か ら抜 け 出 す た め に は 「 新 た な経 済 発 展 」 が 不 可 欠 で あ る と述 べ て い る 。 す

な わ ち,資 本 主 義 社 会 に不 可 避 な経 済 の 寡 占化 ・独 占化 に よっ て く旧結 合 〉 が

支 配 的 とな り,経 済 成 長 の停 滞 は 不 可 避 的 な現 象 と な る。 こ う した 旧結 合 を打

(6)

104 商 学 討 究 第51巻 第4号

ち破 り,経 済 の 停 滞 を打 開 す る担 い 手 こ そ,〈新 結 合 〉と呼 ば れ る5つ の イ ノベ ー シ ョ ンを 果 敢 に遂 行 す る く 企 業 家 〉 で あ る と説 明 す る。 さ ら に,こ う した 革 新 的 企 業 家 に信 用 を供 与 し事 業 の 立 ち 上 げ を可 能 とす る,冷 静 な 〈 銀 行 家 〉 の 重 要 性 を指 摘 して い る 。 しか し なが ら,従 来 の 日本 にお け る 経 済 社 会 シ ス テ ム で は 情 報 と経 済 の 一 極 集 中 は避 け られ ず,そ れ ゆ え に首 都 圏 か ら遠 くは な れ た 北 海 道 の よ う な遠 隔 地 域 で は,優 れ て野 心 的 な く 企 業 家 〉 と 〈 銀 行 家 〉 が 決 定 的 に不 足 し,ベ ンチ ャー 企 業 の 誕 生 と経 済 発 展 は著 し く困難 で あ る と,従 来 は考 え られ て きた 。

わ れ わ れ 国 立 商 科 大 学 と 日本 開 発 銀 行(当 時)の 合 同 チ ー ム は,そ の具 体 的 な 反 証 例 を現 場(フ ィー ル ド)か ら一 つ 一 つ 見 つ け だ す 決 意 を4年 前 に全 員 堅 く 誓 っ た 。 そ の た め の 第 一 歩 と して,数 は 少 な く と も積 極 的 な投 資 と強 力 な マ ー ケ テ ィ ング を続 け る 道 内 先 端 企 業 の フ ィー ル ドス タデ ィ を 開 始 した 。 そ して, 得 られ た知 見 を分 析 し,理 論 化 し,モ デ ル 化 す る こ と は可 能 で あ る と信 じた 。 ア ダム ス ミス が 証 明 した とお り,今 日 の 資 本 主 義 経 済 の 燃 料 は 〈 利 己 心 〉 で あ る 。 そ れ は 〈 企 業 家 〉 とい うエ ン ジ ン に よ って 燃 焼 され る こ とで 経 済 は発 展 す る 。 つ ま り,わ れ わ れ が 支 援 し よ う とす る ベ ンチ ャー 企 業 は 地域 経 済 の発 展 を 誘 導 す る主 体 者 で あ る 。 この よ う な 「 地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム」 を構 築 す る に あ た っ て,最 終 的 に は政 府 に よ る 政 策 ベ ー ス で の 支 援 シ ス テ ムが 求 め ら れ る が,わ れ わ れ は社 会 科 学 系 国 立 大 学 と公 的 金 融 機 関 に よ る従 来 の フ レー ム ワ ー ク を越 え た 支 援 シ ス テ ムづ く りを 目指 して い る。 新 設 さ れ た小 樽 商 科 大 学

「ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン ター(CBC)」 は ,そ の具体 的担 い手 と して活躍 が期待 さ れ て い る。

3北 海 道 にお け る地 域 優 位 性

本 章 の 課 題 は,北 海 道 に お け る製 造 系 ベ ンチ ャー 企 業 に と っ て の 地 域優 位 性 を

析 出 す る こ とに あ る。 そ こで,(1)公 表 デ ー タ に よ る 国 内他 地 域 お よび ア ジ ア と

(7)

地域 型ベ ンチ ャー支援 システ ムの研 究(上) 105 の コス ト比 較 分 析,(2)道 内 製 造 系 中 小 企 業 の フ ィ ー ル ドサ ー ベ イ,お よ びモ デ ル ベ ンチ ャ ー 企 業 の抽 出 と比 較 分 析,(3)北 海 道 の地 域 優 位 性 の発 見 とそ の 可 能 性 考 察,を 行 っ た 。

3‑1コ ス ト分 析

こ こで は,企 業 存 立 の基 本 前 提 とな る市 場 環 境 に 関す る 公 表 デ ー タ面 か ら,北 海 道 の 地 域 優 位 性 を検 証 した(*注:す べ て の 表 は,前 述 の 報 告 書No.48の

た め に作 成 した も の を 同 報 告 書 よ り転 載 した)。

表1コ ス ト分析 総括 表

北 海 道の優 位性 そ の 要 因

(a)土 地 価 格 ◎ 国 内的 に は低 水 準,初 期投 資 の軽減

(b)人 件 費 ◎ 国 内的 に は低 水 準,質 を重視

(c)金 利 △ 金 融機 関の脆 弱性

(d)物 流

×

遠 隔性 等 に よる高 コス ト

(e)エ ネ ル ギ ー ○ 電 力 と用 水 で相 殺

(f)交 通 △ 割 引 の 活 用 に よ り コ ス ト縮 小

(9)気 象 条 件 ○ 相 対的 に はむ しろ優位

コス ト分 析 の 結 果,土 地価 格 と人件 費 に 関 して 北 海 道 の 明 らか な優 位 性 が 認 め られ た 。 ま た,エ ネ ル ギ ー と気 象 条 件 につ い て も優 位 性 が 認 め られ る 。 だ が, 金 利 と交 通 に つ い て は不 利 で あ り,物 流 に つ い て は 明 らか な不 利 が 存 在 す る こ

とが 結 論 さ れ る。 中 で も注 目さ れ るの は(a)土地 価 格,(b)人 件 費,お よび(e)エネ ル ギ ー で あ る 。

(a)土 地 価 格

こ こで い う土 地 価 格 と は,〈工 業 団 地 に お け る用 地 分 譲 価 格 〉及 び典 型 的 な 〈 都

市 部 オ フ ィス の 賃 貸 料 〉 で あ る 。

(8)

106 商 学 討 究 第51巻 第4号 表2工 業 団地 に おけ る用地 の分 譲価格

(単 位:千 円/月 ・㎡)

北 海 道 全 国 ア ジ ア

札 幌 市 27(石 狩) 韓 国 6.0[8] 仙 台 市 18(北 部)

42(真 栄) 中 国 9.1(大 連) [24]

35.0(上 海) [12〜47]

75(米 里) 横 浜 市 272‑299(川 崎)

173‑260(横 須 賀) [231〜339]

[100]

函 館 市 16(臨 空) 香 港 35.4[47]

32〜60(西 桔 梗) 台 湾 39.9[53] 大 阪 市 210‑268(臨 空) 600‑667(島 屋)

[280〜889]

[21〜80] シ ン ガ ポ ー ル

1.3〜4.0 [2〜5]

旭 川 市 12(旭 川)

[16] レ ー

シ ア

0。5〜2.9 [1〜4]

福 岡 市 25(平 塚)

53(新 門 司) 78(北 九 州) [33〜104]

苫小牧市 14(苫 西)

12〜24(苫 東) タ イ

2.3〜4.3 [3〜6]

[16〜32]

釧 路 市 4(白 糠) 22〜30(西 港)

[5〜40]

※ 換 算 レ ー ト:USI$=130。55円/1998年1月,以 下 同 様

※[]内 は,北 海 道(札 幌 市;米 里)を100と した と き の 指 標

出 典:『'97産 業 用 地 ガ イ ド』((財)日 本 立 地 セ ン タ ー)お よ び 『 世 界 の 工 業 団 地(ア ジ ア ・ オ セ ア ニ ア 編)』(日 本 貿 易 振 興 会)平 成7年9月 お よ び 『ジ ェ トロ セ ンサ ー 』(日 本 貿 易 振 興 会)1998年4月

工 場 用 地 比 較 で,札 幌(米 里)を100と した 場 合,函 館 ・旭 川 ・苫 小 牧 ・釧 路 の 各 地 域 は札 幌 の1/5‑1/6で あ る ば か りか,上 海 ・香 港 ・台 湾 の1/2 程 度 で あ る こ とが わ か る。 また,仙 台(北 部)と 福 岡(平 塚)も 北 海 道 の4地 域 と比 べ て そ れ ほ ど変 わ らな い優 位 性 を 有 し て い る 。

オ フ ィ ス賃 料 比 較 で札 幌 を100と す る と,韓 国1.4倍 ・上 海3.0倍 ・香 港3.0倍 ・ 台 湾1.0倍 ・シ ン ガ ポ ー ル2.2倍 と,い わ ゆ る ア ジ ア の 中 規 模 発 展 国 家 群 に お け

る オ フ ィス コス トは,札 幌 よ り明 らか に 割 高 傾 向 に あ る こ とが 理 解 さ れ る 。

(9)

地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上)107 表3オ フ ィ ス 賃 貸 料

(単位:千 円/月 ・㎡)

北 海 道 全 国 ア ジ ア

札 幌 市 3.5[100] 仙 台 市 3.5[100] 韓 国 4.9[140]

中 国 3.3(北 京)

10.4(上 海) [94〜297]

函 館 市 2.7[77] 横 浜 市 4.0[114]

旭 川 市

大 阪 市 3.5[100] 香 港

5.2〜10.4 [149〜297]

苫小牧市

福 岡 市 3.0[86] 台 湾

2.5〜3.3

[71〜94]

釧 路 市

ン ガ

ポ ー ル

5.2〜7.7 [149〜220]

マ レー シ ア

2.6[74]

タ イ 1.5[43]

出典:『 オ フ ィス ・マ ー ケ ッ ト ・レポー ト』(生駒 商事 株 式 会 社)1998年 冬vol.4お よび 『ジ ェ トロ セ ンサ ー』(日 本 貿 易振 興 会)1998年4月

(b)人 件 費

こ こ で い う 人 件 費 は,原 則 と し て 〈常 用 労 働 者 平 均 月 給 〉 と す る 。

表4常 用 労 働 者 平 均 月 給 地

(単位:千 円/月)

北 海 道 全 国 ア ジ ア

324.3 [100]

仙 台 市

356.6

[110]・

韓 国

148〜279

[46〜86コ

横 浜 市 426.6 [132]

中 国

27〜55

[8〜17]

大 阪 市 447.9 [138]

香 港

109〜493

[34〜152]

福 岡 市 370.0 [114]

台 湾

124〜232

[38〜72]

シ ン ガ ポ ー ル

133〜271 [41〜84]

(10)

108 商 学 討 究 第51巻 第4号

北 海 道 全 国 ア ジ ア

マ シ

20〜155 [6〜48]

タ イ 12〜75

[0〜2]

出典:『 毎 月 勤労 者 統 計調 査 報 告』(労 働 省)お よび 『ジェ トロセ ンサ ー』(日本 貿 易振 興 会) 1998年4月

人 件 費 比 較 で は,香 港 が 割 高 で あ る ほ か は,韓 国 ・台 湾 ・シ ン ガポ ー ル で 北 海 道 の8割,中 国 ・マ レ ー シ ア ・タ イ が 同5割 未 満 で あ る。 横 浜 ・大 阪 な どの 国 内人 口 集 中 地 域 よ り北 海 道 が3‑4割 低 廉 で あ る こ と は言 う まで も な い 。

(e)エ ネ ル ギ ー

こ こ で い うエ ネ ル ギ ー コ ス トは,〈工 業 用 電 力 〉及 び 〈 工 業 用 水 〉の価 格 とす る 。 製 造 業 の 生 命 線 と もい え る工 業 用 電 力 お よび 工 業 用 水 価 格 は,そ の 供 給 信 頼 度 もふ くめ て 考 え る と,北 海 道 を100と す る と 〈 電 力 〉 で香 港 ・台 湾 は79‑88と ほ と ん ど変 わ らな い 。ま た 〈 用 水 〉で は 札 幌 を100と す る と苫 小 牧6・ 釧 路56・

表5工 業用 電力 価格

(単位:円/Kwh)

北 海 道 全 国 ア ジ ア

16.6 [100]

仙 台 市 16.1 [97]

韓 国 6.5[44]

申 国

3.1〜7.1

[21〜48]

横 浜 市 16.3

[98] 香 港 11.7[79]

大 阪 市 15.7 [95]

台 湾 13.1[88]

シンガポー ル

6.2[42]

福 岡 市 16.3 [98]

マ レ ー

シ ア

5.4〜8.1 [36〜54]

タ イ 3.9[26]

出 典:『briefingnote』(電 気 事 業 連 合 会)1997年12月 お よ び 『ジ ェ ト ロ セ ン サ ー 』(日 本 貿

易 振 興 会)1998年4月

(11)

地 域型 ベ ンチ ャー支 援 シス テム の研 究(上) 109 表6工 業用 水価 格

(単位:円/m)

北 海 道 全 国 ア ジ ア

札 幌 市

295〜330窄

[100]

仙 台 市

韓 国 59‑111[34]

中 国 2〜7[2]

函 館 市

100〜120宰

[30〜36]

横 浜 市

香 港 70[21]

台 湾 21‑26[8]

旭 川 市

大 阪 市 70[21]

シンガポ ール

91[28]

苫小牧市 20(苫 西)

[6]

福 岡 市

19〜63

[6〜19]

マ レ ー

シ ア

22〜40 [12]

釧 路 市 185(西 港)*

[56]

タ イ

22〜25

[8]

*は 上水 価 格 の デ ー タ

出 典:『 北 海 道 企 業 立 地 デ ー タブ ック』(北 海 道 企業 誘 致 推 進 会 議 編)平 成9年10月 お よび

『ジ ェ トロ セ ンサ ー』(日 本 貿 易振 興 会)1998年4月 ,そ の他 関係 資 料 よ り加 工 ・作 成

香 港21・ 台 湾8と,苫 小 牧 が も っ と も高 い 優 位 性 を有 して い る こ とが わ か る。

3‑‑2モ デ ル ベ ンチ ャ ー企 業 の 比 較 分 析

フ ィー ル ドサ ー ベ イの 結 果 か ら抽 出 され た製 造 系7つ の 〈 モ デ ルベ ンチ ャー 企 業 〉 に お け る道 内 ベ ンチ ャー の 創 業 プ ロ セ ス を,(1)創 業 者,(2)創 業 環 境,(3)経 営 資 源,の3視 点 か ら考 察 す る。

は じめ に,道 内 製 造 系 中 小 企 業 か ら100社 近 くを リス トア ッ プ した 。 次 に,慎 重 な ス ク リー ニ ン グ を経 て,道 内5つ の 中核 都 市(札 幌 市,千 歳 市,室 蘭 市, 函 館 市,釧 路 市)に お け る製 造 系 中 小 企 業 の フ ィ ー ル ドサ ー ベ イ を 実 施 した。

そ の 結 果,〈 現 経 営 者 が 創 業 者 〉,〈創 業 場 所 が 北 海 道 〉,〈道 外 マ ー ケ テ ィ ング に積 極 的 〉 とい う任 意 の 基 準 に 照 ら し て,道 内 製 造 系 の 〈 モ デ ル ベ ンチ ャ ー企 業7社 〉 が 表 出 した。 さ ら に7社 に 対 して次 の5項 目に 関 す る徹 底 的 な 社 長 イ ン タ ビ ュ ー と工 場 見 学 を実 施 した 。 そ の後,比 較 検 討 した 分 析 結 果 を報 告 す る

(*注:7社 の 経 営 数値 お よ び ヒ ア リ ング 結 果 は,前 掲 報 告 書 を参 照)。

(12)

110

(1)会 社 概 要 (ll)経 営 理 念 (皿)競 争 力 (IV)経 営 資 源 (V)経 営 環 境

商 学 討 究 第51巻 第4号

会社 の事業 内容,お よび経営者 が道内で創業 した経緯 経 営者 自らが語 る経営 理念,お よび社 員へ の伝 達手法 成 長過程 にお ける自社 の競争力 の源泉

経営資源 の獲 得方法 と蓄積状況

北 海道 と国内外 の他地域 との経営 上の優 位性 の如何

(1)創 業 者

モ デ ル 分 析 の対 象 と した7社 の う ち,創 業 者 が 設 立 当初 か ら 「 北 海 道 で ベ ンチ ャ ー 企 業 ス ター トす る」 とい う明確 なス トラ テ ジ ー(企 業 戦 略)を も っ て創 業 した ケ ー ス は1社 に過 ぎ なか っ た 。 他 方,創 業 者 の 出 身 地 で は,道 外 出 身者 は 1名 に す ぎず,他7名 は 全 て道 内 出 身 者 で あ っ た 。 さ らに,こ れ らの 道 内 出 身 者 の う ち,3名 は首 都 圏 か らUタ ー ン組 で あ り,他4名 は 道 内 経 験 の み の 創 業 者 で あ る。 モ デ ル ベ ンチ ャー 企 業 の創 業 者 パ ー ソナ ル ・デ ー タ は次 の 通 りで あ る 。

表7創 業 者 の パ ー ソ ナ ル ・デ ー タ

出身地 最終 学歴/専 攻 新卒時職業/地 域 創業時職業/地 域 創業時年齢

A 群 馬 高 校/機 械 自 営/群 馬 自 営/群 馬 34

B 北 海道 高 専/機 械 大 手 企 業/東 京 中 小 企 業/北 海道 36 C 北 海道 高 専/機 械 中 堅 企 業/東 京 自 営/北 海道 33

D 北海 道 大 学/農 経 無 職/北 海道 自 営/北 海道 28

E 北海 道 大 学/建 築 中 堅 企 業/北 海道 自 営/北 海道 30 F 北 海道 大 学/電 気 大 手 企 業/北 海道 大 手 企 業/北 海道 57 G 北海 道 大 学/経 情 大 手 企 業/東 京 大 手 企 業/東 京 39

以 上 か ら注 目 され る点 は,次 の3点 で あ る。 す な わ ち,(1)7名 中 全 員 が 理 工 系

(農業 経 済 お よび 経 営 情 報 を含 む)の 出 身 背 景 を もつ こ と,(2)7名 中5名 が 大

手 な い し中 堅 企 業 の サ ラ リー マ ン経 験 者 で あ る こ と,(3)7名 中4名 が 転 職 経 験

(13)

地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上) 111 を も ち,特 にUタ ー ン経 験 者 の場 合 は全 員 が独 立 前 に何 らか の 職 業 な い し放 浪 を経 て か らの独 立 で あ る こ と,で あ る。

一 般 的 に ,「 創 業 者 」 と は,強 い独 立 心 を もち 明 確 な ビ ジ ョン を も っ て 能 動 的 に起 業 す る もの と イ メ ー ジが さ れ が ち だが,上 の 例 を観 察 す るか ぎ りで は 「 仕 方 な く」 「 結 果 的 に」 「 食 べ る た め に 」 創 業 した ケ ー ス が ほ と ん どで あ る 。 そ こ で疑 問 だ が,な ぜ 彼 らは この よ うに 受 動 的 な い し結 果 的 な の で あ ろ う。 調 査 の 結 果 で は,こ れ らの創 業 者 に 共 通 す る思 考 パ タ ー ンが 観 察 さ れ た 。そ れ は,「 技 術 に 対 す る強 い 思 い 入 れ 」 と 「 平 均 値 を 断 固 拒 否 す る 意 識 」 で あ る 。 「 技 術 に 対 す る 強 い思 い 入 れ 」 は,Aか らGま で の ほ ぼ 全 員 が理 工 系 の 出 身者 で あ る こ とか ら も理 解 され る し,比 較 的 高 学 歴 で あ る こ と も 関係 が あ りそ う で あ る。 と こ ろ が 「 平 均 値 を断 固拒 否 す る意 識 」 が 強 い た め に,当 初 は 従 順 に組 織 の 技 術 者 とな っ た彼 らは サ ラ リー マ ン と して 一 生 を 送 る こ とが 耐 え難 か っ た の で は な い か と推 測 さ れ る 。

(2)倉 町 業 環 境

一 般 に い わ れ る 地 域 の ハ ンデ ィ を乗 り越 え て

,地 域 型 ベ ンチ ャ ー企 業 が創 業 す る た め に は い か な る環 境 が 必 要 と され る の で あ ろ う か 。本 節 で は,モ デ ル ベ ン チ ャ ー 企 業7社 の 〈 創 業 環 境 〉 に注 目 して分 析 を試 み た 。

第1章 で 明 らか と な っ た ベ ンチ ャ ー 企 業 に とっ て の 創 業 環 境 にお け る 地域 の ハ

ン デ ィ を ま とめ る と,〈 地 理 的要 因 〉,〈コス ト要 因〉,〈自然 環 境 要 因 〉,の3つ

に大 別 され る。 そ れ で は,モ デ ル ベ ンチ ャ ー企 業 は こ れ らの3因 子 に 関 して,

どの程 度 ハ ンデ ィ(不 利)ま た は ア ドバ ンテ ー ジ(有 利)と して 認 識 して い る

か,ま た ア ドバ ンテ ー ジ で あ る な ら どの よ うに そ れ を活 用 して い る の か とい う

視 点 が,地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 の創 業 環 境 を考 察 す る に あ た って 欠 かせ な い 。

そ こ で,創 業 者 た ち が,こ れ ら3因 子 を どの程 度 ハ ンデ ィ また は ア ドバ ンテ ー

ジ と して 認 識 して い る か を明 ら か に す る た め,3因 子 を列,モ デ ル企 業 を行 と

(14)

1ヱ2 商 学 討 究 第51巻 第4号

す る相 関 図 を作 成 した 。 こ こで は,絶 対 的 な ア ドバ ン テ ー ジ=◎,相 対 的 な ア ドバ ンテ ー ジ=○,相 対 的 な ハ ン デ ィ=△,絶 対 的 なハ ンデ ィ=×,と して イ ン タ ビュ ー 結 果 を 評価 して い る。

表8創 業環 境 とイン タ ビュー結 果

地理 的因子 コ ス ト因 子 自然環 境 因子

A社(精 密 金型) ○ ◎ ◎

B社(半 導体 製 造機械) ◎ ◎ ○

C社(食 品機 械) ◎ ◎ ○

D社(バ イ オ) ◎ ◎ ◎

E社(住 宅) ○ ◎ ◎

F社(エ ン ジニ ア リ ン グ)

× ◎ 一

G社(ソ フ ト) △ ◎ ○

〈 地 理 的 因 子 〉

地 理 的 因 子 で は,全 体 の 過 半 数 で あ る5社 が ア ドバ ン テ ー ジ と し,2社 が ハ ン

デ ィ と して い る。 な か で もバ イ オD社 とエ ン ジ ニ ア リ ン グF社 が 対 称 を な して

い る。 これ は,企 業 の 製 品 の性 格 上 の差 異 が 起 因 して い る た め 考 え られ る 。 す

な わ ち,D社 の よ う なバ イ オ 企 業 は,首 都 圏 の よ う な人 口密 集 地 か ら遠 く離 れ

た,優 れ た 自然 環 境 の な か で の 生 産 が マ ー ケ テ ィ ン グ戦 略 上 で優 位 で あ る 。 だ

が,F社 の よ う な エ ン ジ ニ ア リ ン グ企 業 の 場 合,機 械 プ ラ ン ト等 の 発 注 者 は 公

官 庁 も含 め 大 企 業 本 社 が 集 中 す る首 都 圏 で あ る 以 上,北 海 道 は マ ー ケ テ ィ ン グ

戦 略 上 不 利 と考 え られ る か らで あ る。 そ こで,次 節(c)経営 資 源 で は,北 海 道 に

あ っ て も絶 対 的 に ア ドバ ンテ ー ジ とす る3社 に つ い て,そ の 理 由 を考 察 す る。

(15)

地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上) 113

〈 コ ス ト因 子 〉

コ ス ト因 子 で は,表 か ら も明 瞭 に理 解 さ れ る とお り,大 方 の 予 想 と異 な っ て全 て の モ デ ル 企 業 が 北 海 道 地 域 をハ ンデ ィ で は な くア ドバ ンテ ー ジ で あ る と して い る。 この 点 は,本 研 究 の なか で も特 に重 要 で あ る。 なぜ な ら,企 業 活 動 に お け るハ ンデ ィ は す べ て コス ト と して 表 現 さ れ,利 潤 率 を低 下 させ る こ とが 企 業 の 誕 生 と存 続 を危 う くす る か らで あ る。 そ れ ゆ え,コ ス ト面 で はハ ンデ ィ よ り も ア ドバ ンテ ー ジが 北 海 道 地 域 に も し本 当 に 存 在 す る の で あ れ ば,今 後 の 〈 地 域 型 ベ ンチ ャ ー 企 業 支 援 シス テ ム〉 の 研 究 で 有 効 な示 唆 を得 た こ とに な る。 し か しな が ら,3‑1で も触 れ た とお り,北 海 道 に高 コス ト構 造 が 存 在 す る こ と は事 実 で あ る。 そ れ ゆ え,こ れ らの モ デ ル ベ ンチ ャ ー企 業7社 がハ ンデ ィ を あ げ て い な い 以 上,各 社 が 他 社 に追 従 で き な い優 れ て独 創 的 な く 経 営 革 新 〉 を遂 行 して い る と考 え ら れ る 。 そ の 経 営 革 新 を 明 らか にす る こ とが,本 研 究 を 第2 段 階 に 進 め る に あ た り不 可 欠 な情 報 と な る 。 この 点 に 関 し て次 節 で さ らに分 析 を深 め た い 。

〈自然 環 境 因子 〉

自然 環 境 因 子 で は,や は りバ イ オD社 と住 宅E社 が 北 海 道 地 域 を絶 対 的 な ア ド バ ンテ ー ジ と答 え,他 も相 対 的 に ア ドバ ンテ ー ジ と して い る。 一 般 的 に,企 業

も人 も生 活 水 準 が 同 じ程 度 で あ る な ら ば,よ り社 会 イ ン フ ラ が整 い,文 化 教 育

水 準 が 高 く,か つ 自然 環 境 に優 れ た 地 域 を好 む の は 当 然 で あ る。 北 海 道 地 域 が

他 地 域 に対 して 比 較 優 位 を もつ の は,自 然 環 境 が 上 位,港 湾 ・空港 ・道 路 や 上

下 水 道 ・公 園 な ど の社 会 イ ン フ ラは 中立,教 育 文 化 水 準 は世 界 的 な メ トロ ポ リ

タ ンで あ る東 京 に比 べ て 明 らか に劣 っ て い る 。 そ う した 意 味 で,豊 か な 自然 環

境 に加 え,用 地 取 得 面 で 絶 対 的供 給 余 力 を残 す 北 海 道 地 域 を全 て の モ デ ル ベ ン

チ ャー 企 業 が ア ドバ ンテ ー ジ と した こ とは,ベ ンチ ャー の創 業 環 境 を考 え る上

で見 逃 せ な い 。 こ の 点 に つ い て も次 節 で さ ら に考 察 す る。

(16)

114商 学 討 究 第51巻 第4号 (3)経 営 資 源

本 節 で は,創 業 環 境 にお け る 意 外 な結 果 をふ ま え て,少 数 な が ら地 域 に 存 在 す る革 新 的 な 地 域 型 ベ ンチ ャ ー 企 業 につ い て,経 営 資 源 の観 点 か ら分 析 す る。 と くに,一 般 的 に はハ ンデ ィ と考 え られ る地 域 特 性 をか え っ て ア ドバ ンテ ー ジ と して,現 在 も ダ イ ナ ミ ッ ク に成 長 を続 け る地 域 型 ベ ンチ ャ ー企 業 は,わ れ わ れ の 常 識 を少 なか らず 打 ち破 る 革 新 的 な経 営 の あ り方 につ い て の 重 要 な示 唆 を与 え て くれ た 。

次 に,わ れ わ れ は,〈 人 材 〉,〈技 術 〉,〈マ ー ケ テ ィ ング 〉,〈資 金 〉 の4つ の 経 営 資 源 か らみ た 道 内 製 造 系 モ デ ル ベ ンチ ャー 企 業7社 の 比 較 分 析 を行 っ た 。 本 研 究 の 最 大 の ね ら い は,従 来 か ら存 在 す る 各 企 業 別 の 個 別 経 営 評価 で もな け れ ば,ユ ニ ー ク な経 営 ス タ イ ル ・経 営 者 像 をあ ぶ り出 す こ とで もな い 。 研 究 の フ ォー カス(焦 点)は,ベ ンチ ャ ー 企 業 の創 造 に対 して 常 識 的 に 多 くのハ ンデ ィ が あ る と考 え られ る地 域 で,モ デ ル ベ ンチ ャ ー企 業 が く4つ の経 営 資 源 を どの よ う に 獲 得 し マ ネ ー ジ メ ン ト し て い る の か?〉,そ し て く共 通 す る パ タ ー ン や 戦 略 が 見 い だせ る の か?〉 と い う疑 問 で あ る。

モ デ ル と した7社 に対 して,全 く同 様 の 質 問 を繰 り返 し行 っ た。 そ の 結 果 を 先 の 〈 経 営 環 境 〉 との 相 関 関 係 につ い て 比 較 分 析 し,以 下 の 結 論 を得 た 。

表9経 営 資源 と地 域 的特性

人 材 技 術 マ ー ケ テ ィ ン グ 資 金

地 理 的 因 子 ◎(Uタ ー ン) ◎(Uタ ー ン) △(遠 隔性) ○(地 元 信金)

コ ス ト 因 子 ◎(低 生活費) △(委 託先 無) ×(航 空 運 賃) ◎(用 地 費安)

自然 環境 因子 ◎(通 勤 ロ ス無) ○(環 境連 関) ○(地 域 ブランド〉 ○(冷 房 費安)

(17)

地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上) 1ヱ5

〈 経 営 資 源 一人 材 一か らみ た地 域 ア ドバ ンテ ー ジ〉

(採用 面 で の優 位 性)

人 材 面 で は,ど の モ デ ル ベ ンチ ャー 企 業 で も異 口 同音 に恵 ま れ て い る こ とを 強 調 した 。 そ れ ら に共 通 して い る 点 は,地 域 で あ るが ゆ え に首 都 圏 で は 望 め な い 逸材 を無 名 の ベ ンチ ャー 企 業 が 採 用 で きる優 位 性 で あ る。

こ う した 地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 は,立 ち上 げ 時 に は 当 然 なが ら人材 を 〈中途 採 用 〉 で ス ター トす る。 そ の 場 合,経 営 者 同 様,北 海 道 を離 れ5年 か ら15年 間 に わ た り首 都 圏 の 中 堅 以 上 の メ ー カ ー で 生 産 担 当 エ ンジ ニ ア と して働 く地 元 高 専 等 の 同 窓 生 が,各 社 最 大 の 人 材 ス カ ウ ト対 象 と な っ て い る。 彼 らは,経 営 者 責 任 とい う点 で社 長 と社 員 とい う区 別 が あ る に せ よ,老 父 の 待 つ 故 郷 に帰 っ たU タ ー ン者 とい う点 で は運 命 共 同体 の構 成 者 で あ り,会 社 を潰 す とい う こ と は再 度 故 郷 を捨 て る とい う こ と に等 し く絶 対 に避 け た い 事 態 で あ る。 こ う した 強 い 危 機 意 識 は全 て の 企 業 に 共 通 して 聞 か さ れ る 点 で あ っ た 。 ま た,企 業 の 部 分 的 な所 有 者 で あ る との 考 え 方 が 発 達 し従 業 員 に よ る持 ち株 が 奨 励 さ れ て い る。 そ の 結 果,従 業 員 の 持 ち株 は キ ャ ピ タル ゲ イ ンを 目的 とす る よ りは 資本 所 有 者 と

して の 性 格 が 観 察 さ れ る 。

さ らに持 続 的 な成 長 を続 け る た め に は,当 然,あ らた な製 品 開 発 に投 入 す る人 材 の継 続 的 な採 用 が 不 可 欠 と な る。 こ う した 地 域 型 のベ ンチ ャ ー企 業 は ど の よ う な 人材 採 用 戦 略 を と っ て い るの だ ろ うか 。そ れ は 〈 中 途 採 用 〉 と 〈 新 卒 採 用 〉 の ベ ス トミ ッ ク ス に あ る。 〈中 途 採 用 〉 は,先 述 した よ う に地 元 高 専 のOB&

Uタ ー ンが 基 幹 戦 力 と な っ て い る。 か れ らは,す で に大 手 企 業 で5年 以 上 の 製 品 開発 と生 産 に 関 す る経 験 を 有 して い る即 戦 力 で あ る。 と こ ろが,こ う した 半 ば パ ー トナ ー 経 営 感 覚 の 社 員 ば か りで は,経 営 に 種 々 の 障 害 も 出 て くる し,技 術 の 蓄 積 継 承 とい った 面 で は ハ ンデ ィ に もつ な が る。 そ こで,次 に企 業 が あ る

程 度 の成 長 軌 道 に乗 っ た段 階 で,高 卒 ・専 門学 校 卒 ・高 専 卒 ・大 卒 ・大 学 院 卒

な ど の 〈 新 卒 採 用 〉を 開 始 す る。そ う した 新 卒 の 人材 獲 得 時 に も,〈地 理 的〉,〈コ

(18)

116 商 学 討 究 第51巻 第4号

ス ト〉,〈自然 環 境 〉 の 各 因 子 で 地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 に は 強 い ア ドバ ン テ ー ジ が あ る こ とが 認 め られ た。

(北 海 道 生 ま れ の 若 年 層 気 質)

北 海 道 出 身 者 に見 られ るUタ ー ン志 向 の 背 後 に,日 本 で も最 も手 付 か ず の 自然 環 境 の 下 で 育 っ た 若 者 の 強 度 な地 元 志 向 が あ る。 彼 ら は お お む ね 北 海 道 の 第3 世 代 に属 す るが,北 海 道 の 自然 環 境 を所 与 の もの と し て受 け 入 れ,寒 冷 地 域 で の 生 活 環 境 に完 全 に 同 化 して い る。 す な わ ち,亜 熱 帯 地 域 に属 す る本 州 家 屋 に あ る縁 側 な ど を全 く もた な い く 北 欧 ス タイ ル の極 寒 冷 地 住 宅 〉 に生 ま れ 育 っ た 第3世 代 は,も は や ア ジ ア型 亜 熱 帯 地 域 の 蒸 し暑 さ と過 度 な 人 口 高 密 度 に全 く 不 適 応 な新 世 代 とな っ て し まっ た 。 そ の た め,就 職 時 点 で 日本 の どの 地 域 よ り も地 元 志 向 が 強 く,高 い 給 与 や 業 務 の高 度 性 が 保 障 され る首 都 圏 企 業 へ の 就 職 機 会 が あ っ て も,あ え て 無 名 の 地 元 ベ ンチ ャー 企 業 を選 択 す る 若 者 が 増 加 し て い る。 そ れ ゆ え,地 理 的 に首 都 圏 か ら遠 く離 れ,コ ス ト面 で は比 較 的 安 い給 与 で も十 分 な 品 質 の 住 宅 を職 場 の 近 くに取 得 で き,自 然 環 境 に 恵 ま れ た北 海 道 は, 新 卒 者 を雇 用 す る力 の あ る新 興 ベ ンチ ャ ー 企 業 と新 卒 者 の ニ ー ズ が 一 致 して い

る こ とが 観 察 され た 。

表10技 術 系社 員 のバ ックグ ラウ ン ド B社(従 業 員48名)に お ける技術 系社 員(23名)の 学歴

最 終 学 歴 社 員 数

高 専 16名

専 修 学 校 4名

大 学 3名

しか し な が ら,前 述 した 北 海 道 に 完 全 に適 応 した 第3世 代 は,高 度 な産 業 集 積

が 未 成 熟 な 開 発 途 上 地 域 に育 っ た ゆ え に,著 し く覇 気 に欠 け グ ロ ー バ ル ビ ジネ

ス の ダ イ ナ ミズ ム とは 無縁 の 〈 官 依 存 型 〉 精 神 に浸 っ た,ア ン トレプ レナ ー ・

ス ピ リ ッ ト(企 業 家 精 神)と は無 縁 の 世 代 で もあ る。 こ う した地 元 出 身 の若 者

(19)

地 域型 ベ ンチ ャー 支援 シス テ ムの研 究(上) 117 た ち の 精 神 的狭 阻 性 を い か に して 克 服 す るか が,地 域 型 ベ ンチ ャ ー企 業 にお け るパ ー ソ ナ ル ・マ ネ ー ジ メ ン トの最 重 要 経 営 課 題 と もい え よ う。

(人材 ま と め)

以 上 に 述 べ たUタ ー ン人 材 の 集 合 体 と し て の地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 とは,他 の ベ ンチ ャー に は見 られ な い く 地 縁 〉 を 経 済 活 動 の 主 軸 に置 く新 た な共 同体 の 再 構 築 と して 見 る こ と もで きる 。 こ の よ う な地 域 に お け る 人材 面 にお け る ア ドバ ンテ ー ジ と して 各 社 が 指 摘 して い る 点 は,(1)採 用 面 で の優 位 性,(2)北 海 道 人 の 製 造 業 向 き気 質,で あ る。資 本 主 義 の エ トス と もい うべ き 〈 ア ン トレプ レナ ー ・.

ス ピ リ ッ ト〉 と 〈 古 典 的 な 共 同体 論 〉を組 み 合 わせ る こ と は疑 問 も多 い 。だ が, 農 村 人 口 の 都 市 部 へ の 大 量 移 動 に よる 従 来 の発 展 モ デ ル に 対 して,あ らた な発 展 モ デ ル を解 明 す るた め の現 実 素 材 を わ れ わ れ に提 供 して くれ る よ うに も思 わ れ る。

そ れ で は 次 に,地 域 型 の製 造系 ベ ンチ ャー 企 業 が グ ロ ーバ ル な競 争 を展 開 す る う え で 欠 か せ な い 〈 技 術 力 〉 につ い て 分 析 す る 。

〈 経 営 資 源 一技 術 一か らみ た 地 域 ア ドバ ンテ ー ジ〉

(Uタ ー ン技 術 者 の 活 躍)

〈 技 術 〉 面 か らの イ ンタ ビュ ー 結 果 で は,高 い技 術 力 を有 す るUタ ー ン人 材 の 獲 得 に あ た っ て 〈 地 理 的 因子 〉 に は絶 対 的 な ア ドバ ン テ ー ジが あ る とす る。

当然 す ぎ る こ とで は あ る が,〈 マ ニ ュ ア ル化 で き る技 術 は 移 転 さ れ る 〉 。 も と も

と資 源 を海 外 に依 存 し規 制 も多 い 日本 は,自 ら高 コス ト構 造 を ビル トイ ンす る

経 済 体 質 を宿 命 的 に 有 して い る。 さ らに,1980年 代 に入 り国 内 にお け る 自殺 行

為 に も等 し い土 地 担 保 主 義 に 基 づ く金 融 機 関 に よ る投 機 的 な 過 剰 融 資,お よ び

慢 性 的 な 貿 易 黒 字 体 質 に よる 円 高 は,日 本 に お け る製 造 業 の 比 較 優 位 を大 き く

後 退 させ,蓄 積 した技 術 の 海外 移 転 を助 長 した。 高 コス ト体 質 の 日本 か ら く マ

(20)

1ヱ8 商 学 討 究 第51巻 第4号

ニ ュ ア ル化 で き る技 術 は移 転 さ れ る 〉 が,他 方 で 〈 製 造 業 を基 幹 とす る 加 工 貿 易 立 国 〉 は 国 の 存 立 テ ー ゼ で あ る 以 上,国 内 製 造 業 の空 洞 化 を絶 対 に 阻 止 しな け れ ば な らな い 。矛 盾 す る か に見 え る2つ の 異 な っ た 流 れ を統 一 す る答 は,〈マ ニ ュ ア ル 化 で きな い 技 術 を 国 内 に蓄 積 す る〉 こ とで は な い だ ろ うか 。

そ れ で は 〈 マ ニ ュ ア ル化 で き な い技 術 〉 と は,一 体 ど の よ うな 技 術 で あ ろ う。

恐 ら くそ れ は,〈 一 人 一 人 の 個 人 に 身 に つ い て い る 固 有 の ノ ウハ ウ な い し問 題 の 解 決 手 順 〉だ ろ う と考 え られ る。分 析 対 象 と した全 て の 企 業 で 聞 か れ た点 は,

「 人 材 と技 術 は不 可 分 な 関係 に あ り ,技 術 力 の あ る人 材 が ベ ンチ ャ ー企 業 に と っ て 最 大 か つ 最 良 の 経 営 資 源 で あ る」 こ とで あ っ た 。 つ ま り,確 立 した マ ネ ー

ジ メ ン トとマ ー ケ テ ィ ン グが 存 在 す るベ ンチ ャ ー 企 業 で は,〈 人 材 獲 得 〉 に 成 功 しさ え す れ ば 〈 技 術 獲 得 〉 は 極 め て容 易 で あ る とい う。 なぜ な ら,人 材 と は

〈 技 術 の 固 ま り〉 そ の もの で あ るか らだ 。 そ の 際 北 海 道 出 身 のUタ ー ン希 望 技 術 者 を 首都 圏 で見 出 す こ とは そ れ ほ ど困 難 な作 業 で は な い(*注:1タ ー ン 者 で も北 海 道 へ の 移 住 人 気 が 最 も高 い こ とが 各 種 報 告 で 確 認 され て い る,報 告 書No.54巻 末 資 料 参 照)。 む しろ,Uタ ー ンの 求 職 者 に対 す る 地 域 内 企 業 に よ る 技 術 系 人 材 の 求 人 が 少 な い 北 海 道 で は,地 域 型 ベ ンチ ャ ー 企 業 に と っ てU

ター ン人 材 は買 い手 市 場 に あ る こ と か ら,地 理 的 因 子 に 関 して全 社 が 絶 対 的 な ア ドバ ンテ ー ジ と して い る こ と は理 解 で き る。

(固有 技 術 の 製 造 方 法)

と こ ろ が,せ っ か く採 用 した 有 能 な技 術 系 人 材 が 複 数 い て も,〈 積 極 的 な マ ー ケ テ ィ ング に よ る顧 客 開 拓 〉 と 〈 固 有 技 術 を具 現 化 す る製 造 方 法 〉 が な け れ ば 独 自の 製 品 開 発 を行 う こ とは で き な い。

前 者 の 顧 客 開 拓 につ い て は次 項 〈 マ ー ケ テ ィ ン グ〉 に 譲 る と して,後 者 の 〈 固

有 技 術 を具 現 化 す る 製 造 方 法 〉 に 関 して 我 々 が 着 目 し た の は,〈 必 要 部 品 の 供

給 体 制 〉 で あ る。 北 海 道 の よ うな 製 造 系 産 業 の 未 成 熟 地 域 に お い て,常 に ボ ト

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地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上) 119 ル ネ ッ ク とさ れ て き た の が 機 械 部 品 の 供 給 問題 で あ る 。 従 来 の 日本 経 営 学 の 定 説 に よれ ば,東 京 大 田 区 に 見 られ る 試 作 過 程 お よ び納 入 時 の く 顔 と顔 の ネ ッ ト ワ ー ク 〉 こ そ が,日 本 製 造 業 の 真 な る 競 争 力 の根 源 で あ っ た とい う。 そ う した 考 え の 延 長 線、 上 に 北 海 道 の 製 造 業 に 未 来 は見 え ない 。 だ が,1980年 代 後 半 か ら 始 ま っ た 東 京 周 辺 で の土 地 価 格 高 騰 は,夫 婦 で 〈 少 品種 大 量 生 産 〉 に よ る部 品 加 工 を家 内 制 手 工 業 さ な が ら に こ な す 零 細 な 部 品 加 工 メ ー カー の 存 続 を,折 か ら の後 継 者 難 とプ ラザ 合 意 以 降 の 急 激 な 円 高 も手伝 っ て極 め て 困 難 な状 況 に追 い 込 ん だ 。 しか も,か れ らの 部 品 納 入 先 も,1990年 代 に入 っ て の グ ロ ー バ ル化 の 中 で 進 ん で 中 国 を始 め とす る ア ジ ア 進 出 をす す め 国 内 か ら脱 出 し始 め た 。 つ ま り,も は や 〈 顔 と顔 の ネ ッ トワ ー ク 〉 は グ ロ ー バ ル化 す る 国 内 製 造 業 に と っ て の絶 対 的 な必 要 条 件 で は な くな りつ つ あ る とい え る。

こ う した 円 高 局 面 にあ っ て,わ れ わ れ が モ デ ル対 象 と した企 業 で は どの よ う な

〈 部 品供 給 体 制 〉 を構 築 して い る の だ ろ う か。 そ の 回答 と して,マ ー ケ テ ィ ン グ と も密 接 に 関係 す る の だ が,製 品 開 発 にお い て く 量 〉 に こだ わ らず 〈 質 〉 で 勝 負 す る 〈 少 品 種 少 量 生 産 〉 を前 提 と して い る 点 が 指 摘 さ れ た 。 そ の結 果,必

要 とす る 部 品 の総 量 は極 め て 少 な く,特 定 の歯 車 の 必 要 在 庫 は数 個 か ら数10個 の レベ ル に 過 ぎな い 。 そ れ ゆ え に,千 個 か ら1万 個 以 上 の ロ ッ ト注 文 に よ る大 量 発 注 に よ っ て,は じめ て規 模 の メ リ ッ トが 供 給 者 と需 要 者 の 双 方 に もた ら さ れ る部 品 供 給 体 制 を,こ れ らの 地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 は初 め か ら必 要 と し て い ない 。

例 え ばC社(食 品機 械)の 場 合,1台 数 億 円 もす る コ ン ピュ ー タ制 御 の超 高 精

度 レ ー ザ ー ・カ ッ ター を導 入 し,パ ー ト女 性 も加 わ る加 工 チ ー ム が ス テ ン レス

板 か ら 自社 専 用 部 品 の 精 密 加 工 切 り出 し を行 っ て い る。 さ らに これ らの加 工 切

り出 し情 報 は デ ジ タ ル化 さ れ フ ロ ー ピー デ ィ ス ク に保 存 さ れ て お り,同 型 機 を

後 日受 注 す る と同 じ部 品 を 容 易 に切 り出 しで きる体 制 を組 ん で い る。 また,同

社 が 製 品 化 した 自動 菓 子 詰 め 機 で は,菓 子 を箱 まで 一 度 に6‑8個 を イ メ ー ジ

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120 商 学 討 究 第51巻 第4号

認 識 して 運 べ る触 手 と位 置 決 め の セ ンサ ー 制 御 シス テ ム を 同社 が 独 自 に 開 発 した 。 だ が,そ れ ら の作 業 を超 高 速 で 行 う ア ー ム ロ ボ ッ ト本 体 は,米 国 の ベ ンチ ャー 企 業 が 開 発 した も の を イ ン ター ネ ッ トを通 じて 導 入 し 自社 製 品 に 組 み 込 ん で 製 品 化 し て い る。B社(半 導 体 製 造 機 械)の 場 合 は,自 社 敷 地 内 の 台 車 運 搬 が 可 能 な 距 離 に 関 連 部 品 製 造 会 社 を設 立 し,部 品 の 供 給 を グ ル ー プ 会 社 で 契 約 関 係 を結 び 行 っ て い る 。 ま た,A社(精 密 金 型)の 場 合,世 界 最 高 の 精 度 を 求 め て 遠 く ドイ ッ ・ス イ ス ま で 工 作 機 械 を 求 め,さ らに 金 型 加 工 過 程 で 工 程 の 進 捗 状 況 が イ ン ター ネ ッ トを 通 じて 顧 客 が確 認 で き る体 制 を構 築 して い る。

こ れ らの 企 業 に 共 通 して 観 察 さ れ る 点 は,工 作 機 械 は も と よ り油 圧 サ ー ボ ・ 各 種 モ ー ター ・精 密 セ ンサ ー 部 品 な ど,北 海 道 で は 調 達 不 可 能 な世 界 水 準 の 優 れ た ア ッセ ンブ リ ング パ ー ッ を,国 内 各 地 お よび 海 外 か ら資 金 制 約 を考 え ず に購 入 して い る こ とで あ る。 こ の 例 は,本 田宗 一 郎 が創 業 期 に資 本 金 に も 匹 敵 す る高 価 な工 作 機 械 を導 入 し,の ち に マ ン島 に お け る オ ー トバ イ レー ス で 勝 利 した 高 性 能 エ ン ジ ン製 造 の きっ か け とな っ た こ とを 想 起 させ る 。

(研究 開 発 コ ス トの 回収)

ま た,研 究 開 発 コス トの 回 収 方 法 に つ い て は,モ デ ル企 業 で 次 の よ う な工 夫 が な され て い る 。 例 え ば,B社(半 導 体 製 造 機 械)の 場 合,納 入 製 品 に1‑

2割 程 度 の 試 作 ア イ デ ア を盛 り込 ん で い る 。 そ の た め,そ の 製 品 納 入 に 関 し

て は 利 益 が 圧 縮 され る 。 だ が,製 品 が 完 成 し た 時 点 お よ び ク ラ イ ア ン トで 稼

働 して い る メ イ ン テ ナ ンス を 通 して,当 初 盛 り込 ん だ ア イ デ ア(新 設 計 ・新

機 構)の 性 能 評 価 を行 い,そ の 後 の 設 計 に 一 部 また は全 面 的 な 変 更 を行 うの

で あ る。 こ うす る こ とに よ っ て,と か くサ ン ク コス ト化 しが ち な 中小 企 業 に

お け る研 究 開発 費 用 は確 実 に 回 収 さ れ る 。

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地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究(上) 121 製 品 納 入 価 格 の決 定 に際 してC社(食 品 機 械)の 場 合,原 価 か らの 積 み 上 げ 方 式 を と らず,ク ラ イ ア ン トに お け る機 械 納 入 に よ る効 率 化 に よ って 発 生 す る コ ス ト削 減 効 果 を数 量 化 して決 定 す る。 そ の 結 果,製 品 の 直 接 ・間 接 に わ た る研 究 開 発 費 用 は,ク ライ ア ン トに お け る コス ト削 減 に 対 す る投 資 と して 回収 され る 。 だが,2台 目以 降 の 出荷 つ い て は,す で の研 究 開 発 費 用 の 回 収 が 終 え た 製 品 と して 数 台 か ら数 十 台 の オ ー ダー で 内 生 化 す る た め 企 業 存 続 の た め の利 益 回 収 が 見 込 め る。

D社(バ イ オ)で は,積 極 的 な 国 内 お よび 海 外 に お け るマ ー ケ テ ィ ン グ を独 自 展 開 して い る が,地 域 外 で どれ ほ ど製 品 の 需 要 が伸 び て も基 本 と な る製 品 の 現 地 生 産 は決 して 行 っ て い な い。 後 に のべ るマ ー ケ テ ィ ン グ に お け る 〈 地 域 ブ ラ ン ド〉 の 結 果 と もい え るが,技 術 ノ ウハ ウの 非 公 開 と製 品 の供 給 量 を 自社 が 完 全 に コ ン トロ ー ルす る こ とで,価 格 の 長 期 安 定 と研 究 開 発 コ ス ト回 収 が 計 られ て い る 。そ れ ゆ え,海 外 にお け る工 場 は最 終 製 品 のパ ッケ ー ジ ング の み で あ り, 海 外 の ク ラ イ ア ン トが そ の 製 造 工 程 の 見 学 を希 望 す る 場 合,か な らず 北 海 道 に あ る 自社 プ ラ ン トの見 学 を実 施 して い る。 さ らに,こ う した地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 の 海 外 ク ラ イ ア ン ト受 け入 れ をス ム ー ズ とす る た め,対 応 す る総 務 課 女 性 社 員 は 帰 国子 女 や 米 国 大 学 留 学 経 験 者 を新 卒 で 採 用 す る な ど,グ ロー バ ル ビ ジ ネ ス を 雇 用 面 に ま で反 映 す る努 力 を行 っ て い る。

F社(エ ンジ ニ ア リ ング)の 場 合,積 極 的 な 受 注 を 国 内 各 地 で受 け た の ち,自

社 設 計 と 同一 地 域 内 の 鉄 工 所 へ の特 別 仕 様 発 注 に よ っ て 低 コス ト化 を進 め て い

る 。 ク ラ イ ア ン トにつ い て は,独 自開 拓 す る よ りも む しろ 首 都 圏 な ど道 外 大 手

メ ー カ ー の 場 合 が 多 く,彼 らが1億 円 未 満 で 受 注 した プ ラ ン トな ど を得 意 と し

て い る 。 そ の場 合,大 手 メ ー カ ー は,人 件 費 ・営 業 費用 な どの 間接 経 費 も莫 大

な金 額 に の ぼ っ て い る こ とか ら,営 業 政 策 上 は 受 注 しな が ら も赤 字 受 注 とな る

ケ ー ス も しば し ば で あ る 。 そ う した 場 合,も と も と低 コス トな地 域 にあ りな が

ら大 手 メ ー カ ー と変 わ らな い 技 術 力 を もつF社 は,大 手 メ ー カ ー の お よ そ半 分

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122 商 学 討 究 第51巻 第4号

の コス トで プ ラ ン トを 設 計 ・納 入 が 可 能 で あ る。 そ の 結 果,本 来 な ら赤 字 で 受 注 した 大 手 メ ー カ ー は,自 社 営 業 経 費 を差 し引 い た 金 額 でF社 にOEM発 注 し て も,F社 に は 利 益 が 発 生 す る。 他 方,F社 はマ ー ケ テ ィ ン グ に要 す る コ ス ト が ほ とん ど皆 無 な た め,大 手 メ ー カ ー 並 み の給 与 を技 術 者 に支 払 う こ とが 可 能

に な る。

G社(ソ フ トウ ェ ア)の 場 合,民 間 の 大 手 企 業研 究 開発 部 門 と タ イ ア ッ プ して 極 め て技 術 要 求 水 準 の 高 い研 究 開発 プ ロ ジ ェ ク トに 当初 か ら参 加 し,そ こ に社 員 を直 接 送 り込 む こ とで 社 員 の オ ンザ ジ ョブ トレー ニ ング と,CG(コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ ッ ク ス)な ど の技 術 開 発 を 同 時 進 行 させ て い る 。 これ は,従 来 型 の

〈 下 請 け 〉 で も な け れ ば,独 立 型 の リス クの 高 い研 究 開発 型 で も な く,い わ ば 大 企 業 の研 究 開 発 プ ロ セ ス へ の 内 部 参 加 に よ る 自己技 術 の 向 上 と研 究 受 託 に よ る コス ト回 収 策 とい え よ う。 また,大 企 業 に とっ て も,安 易 な 外 部 発 注 や 派 遣 社 員 を さ け る 一 方,CG・ 言 語 な どの 専 門 ソ フ ト技 術 者 を プ ロ ジ ェ ク トご と に 共 同研 究 体 制 を組 め る こ とか ら大 い に メ リ ッ トが あ る と考 え られ る。 こ こで 開 発 され た 技 術(=人 材)は,直 ち に他 の ソ フ トウ ェ ア 開 発 に応 用 で き る こ とか ら,G社 の場 合 は積 極 的 な 国 内 お よ び海 外 展 開 を は か っ て お り,す で に横 浜 と 九 州 に 現 地 採 用 の ス タ ッ フ に よ る 国 内 事 業 所 お よ び シ リ コ ンバ レー へ の 社 員 の 長 期 海 外 派 遣 を実 施 して い る。

(技術 ま とめ)

こ の よ う に,地 域 にお け る ア ドバ ンテ ー ジ の 〈 技 術 〉 で 各 社 が こ だ わ っ て い る

点 は,(1)Uタ ー ン技 術 者 の 確 保,(2)自 前 設 計 と独 自技 術 に よ る 内 製 化,(3)研 究

開発 費 用 の 早 期 回 収,で あ る。 こ う し た製 品 の 自主 開発 路 線 は,戦 前 ・戦 後 の

日本 が め ざ し た技 術 の 国 産 化 路 線 に も共 通 性 が あ る。130年 の 歴 史 しか な い 開

発 途 上 地 域 で あ る 北 海 道 が,タ イ や マ レー シ ア に見 られ る技 術 ・資本 ・人 材 す

べ て を 海 外 か ら受 け入 れ る こ と で急 速 な工 業 化 を進 め て い る こ との マ ネ を潔 く

あ き らめ,あ く まで も 〈自主 設 計 〉 を 目指 す 方 式 で こ れ らの 地 域 型 ベ ンチ ャ ー

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地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(上) 123 企 業 が急 速 に地 歩 を固 め て い る こ と は,こ れ か らの 地域 の 産 業 政 策 を考 え る う

え で大 い に参 考 とな ろ う。

そ れ で は 次 に,製 品 開 発 と切 り離 せ な い マ ー ケ テ ィ ン グ につ い て 分析 す る 。

〈 経 営 資 源 一マ ー ケ テ ィ ン グ ーか らみ た地 域 ア ドバ ンテ ー ジ〉

(イ ン ター ネ ッ トの 活 用)

〈 マ ー ケ テ ィ ング 〉 で は,モ デ ル 企 業 が そ れ ぞ れ積 極 的 な イ ン ター ネ ッ トを 通 じた 電 子 メ ー ル の利 用 に よ っ て,道 外 で の積 極 的 な販 路 開 拓 に成 功 し て い る こ とが 注 目 され る。

イ ン タ ー ネ ッ トは,従 来,ヒ トとの コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの 密 度 に お い て決 定 的 に 不 利 と され て きた北 海 道 な どの 首 都 圏 か らの 遠 隔 地 域 にお け る ビ ジ ネ ス の あ り方 とマ ー ケ テ ィ ン グ の 方 法 に革 命 を も た ら し て い る。 一 般 的 に,U・1タ ー ン した 技 術 の あ る 人材 が そ れ ま で の 職 場 を 離 れ 希 望 す る遠 隔 地 域 に就 職 した場 合,2‑3年 を経 過 す る とや が て 職 場 の 同 僚 ・上 司 ・部 下 も転 勤 異 動 に よ り以 前 の 職 場 か ら離 れ,や が て10数 年 間 共 有 した 職 場 経 験 の 記 憶 も時 間 と と もに風 化 す る こ とが 一 般 的 で あ っ た。 だ が,イ ン ター ネ ッ トに よ る グ ロ ー バ ル コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 出現 は こ う した様 相 を一 転 させ た。 す な わ ち,か つ て の 同僚 が 同 じ企 業 に在 籍 して い る限 り社 内 で 個 人 に 与 え られ た メ ー ル ア ドレス は不 変 で あ るか ら,た と え現 在 の 所 属 先 を 知 らな く と も保 有 す る コ ン ピュ ー タが 〈 相 手 先 メ ー ル ア ドレス 〉 に 対 して,地 球 上 どこ に で も電 子 メ ー ル を配 信 す る。 む し ろ,か つ て苦 労 を と もに し た仲 間 がUタ ー ン先 で ベ ンチ ャ ー経 営 者 と して成 功

した 場 合,こ れ らの仲 間 同 士 で の イ ン タ ー ネ ッ トを 通 じた 連 絡 の イ ンセ ンテ ィ ブ は 会 社 に残 っ た側 に 強 く働 く と考 え る の が 自然 で あ る 。

こ う した 状 況 にお い て,地 域 の ベ ンチ ャ ー企 業 が 何 よ り も成 す べ き こ と は,〈イ

ン ター ネ ッ トを通 じた 人 的 ネ ッ トワー ク の 強 化 〉 とそ れ をベ ー ス と し て拡 大 す

べ き販 路 開拓,す な わ ち 〈 道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ〉 で あ る 。 こ れ は,国 内 に 限 ら

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124 商 学 討 究 第51巻 第4号 ず 海 外 も射 程 に加 わ る で あ ろ う。

この 点 に 関 して,例 え ばB社(半 導 体 製 造 機 械)で は,イ ン タ ー ネ ッ トを通 じ た 高専 同 窓生 へ の ア ク セ ス に よ る 人 材 リ ク ル ー トを行 っ て い る。ま た,C社(食 品機 械)は,前 項 で も紹 介 し た とお り,米 国 ベ ンチ ャ ー企 業 の ロ ボ ッ トア ー ム を 日本 の 商 社 を 経 由 す る こ と な く導 入 契 約 す る こ と に成 功 して い る。 さ ら に, C社 は,刻 々 と変 わ る製 品 ス ペ ック を 自社 の ホ ー ム ペ ー ジ上 で 公 開 し,ア クセ ス して き た潜 在 的 顧 客 が ホ ー ムペ ー ジ上 で 住 所 氏 名 が 入 力 す る と,ダ イ レ ク ト

メ ー ル の 宛 名 シ ー ル と希 望 商 品 の最 新 カ タ ロ グ が カ ラ ー プ リ ン タ ー か ら 自動 出 力 さ れ る 。つ ま り,総 務 担 当 者 が す べ き こ とは 〈 封 筒 詰 め と発 送 〉だ け な の だ 。 ま た,D社(バ イ オ)の 場 合,病 気 治療 に対 して そ の 優 れ た有 効 性 を示 す 画 期 的 なバ イ オ 製 品 を 世 界 的 に供 給 して い る が,そ の 臨 床 実 験 レポ ー トや 患 者 の 体 験 報 告 な どが イ ン ター ネ ッ ト上 で 大 量 に 流 れ て い る こ とか ら,自 らが 意 図 し な い 電 子 空 間 上 で の マ ー ケ テ ィ ン グが 活 発 に行 わ れ て い る こ とに な る。 こ う した 経 費 は,イ ン タ ー ネ ッ トに参 加 す る もの の 負 担 に依 存 して い る の で 電 子 空 間 上 で のC社 の広 告 宣 伝 費 は 無 い に 等 し い。 む し ろ,製 品 の 購 入 先(=代 理 店)を ホ ー ム ペ ー ジ上 で 紹 介 し さ えす れ ば 消 費 者 が 自 ら購 入 す る。

この よ う に,イ ン タ ー ネ ッ トを 通 じた地 域 や 国 境 を超 え る グ ロ ー バ ル コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンは,首 都 圏 か ら遠 隔 地 に あ る北 海 道 の ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 新 た な マ ー ケ テ ィ ン グチ ャ ンネ ル を提 供 し て い る の で あ る 。

(遠 隔 マ ー ケ テ ィ ン グ の 効 率 性)

もち ろ ん,以 上 の イ ン ター ネ ッ トに よ るバ ー チ ャ ル コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが 実 際

に ビ ジ ネス に 果 た す 役 割 につ い て は,そ の 限 界 を よ く知 る 必 要 が あ る。 モ デ ル

企 業 で の イ ン タ ビ ュ ー調 査 で は,最 終 的 な マ ー ケ テ ィ ング の 成 果 は 「 継 続 的 な

直 接 的 訪 問」 で しか 得 られ な い こ とが しば しば 指 摘 さ れ て い る。 だ が,そ れ ゆ

え に,次 回 の 訪 問 を無 に し な い た め の 電 子 メ ー ル に よ る ア ポ イ ン トメ ン ト確 認

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