大 学 発 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ム の研 究 皿
創 出 加 速 と イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン
瀬 戸 篤 博士 儂 学)
前 論 文1で は,国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー の 国 内 第1号 が い か に して 生 ま れ た か,主 に 〈制 度 ア プ ロ ー チ 〉 か らそ の 背 景 と要 因 につ い て,全 国 初 の 国 立 大 ビ ジ ネ ス 支 援 組 織 で あ る小 樽 商 科 大 学 「ビ ジ ネ ス創 造 セ ン タ ー(CBC)」 に よ る ベ ン チ ャー 支 援 をふ ま え て 明 らか に した 。 本 論 文 で は,主 に 〈ビ ジ ネ ス 起 業 ア プ ロ ー チ 〉 か ら,CBCが こ れ ら の大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 設 立 か ら成 長 支 援 に参 画 す る 過 程 で 明 らか に な っ た,大 学 発 ベ ン チ ャー 創 出 の設 立 条 件 につ い て 述 べ る。さ ら に論 文 後 半 で は,大 学 発 ベ ンチ ャ ー の経 営 管 理 に 求 め られ る 経 営 資 源, お よ び 大 学 発 ベ ンチ ャ ー を さ らに創 出 加 速 さ せ るた め の イ ンキ ュベ ー シ ョ ンに つ い て 考 察 す る 。
19臼qO45
は じめ に 一 論 文1と の 関 係 一 大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 設 立 条 件 大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 経 営 管 理
(組織,フ ァ イ ナ ンス,コ ア テ ク ノ ロ ジ ー,マ ー ケ テ ィ ン グ) 大 学 発 ベ ン チ ャ ー の イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン
結 論
商 学 部(兼 大 学 院)助 教 授
(兼)ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン ター(CBC)副 セ ン タ ー 長
〔129〕
1は じ め に 一 論 文1と の 関 係 一
拙 著 前 論 文 「大 学 発 ベ ン チ ャー 支i援シ ス テ ム の研 究1一 小 樽 商 科 大CBCと 国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー の 創 造 一 」(『商 学 討 究 』 第52巻 第2・3号:2001 年12月)に お い て,国 内 初 の 〈国立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー〉の 創 造 をめ ぐっ て, そ の 誕 生 を 支 援 した 国 立 大 初 の ビ ジ ネス 支 援 組 織 で あ る小 樽 商 科 大 学 「ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン タ ー(CBC)」 の概 要 と,そ の 活 動 成 果 と して の 「ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ 社 」 を は じめ とす る,国 内初 の 公 立 大 発 ベ ンチ ャ ー1社 を含 む 国 内4社 の バ イ オ 系 大 学 発 ベ ンチ ャー の紹 介 と兼 業 に起 因 す る課 題 を説 明 した 。
図 表1‑1CBCに よ る バ イ オ 系 大 学 発 ベ ン チ ャ ー4社 の 支 援 内 容
会 社 名 設 立 兼業取締役 CBC支 援 内容
㈱ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ 札 幌 市:DNA解 析 関 連
H12/9 北 大 医学研 究科 教授 北大遺伝子病制御研究所教授
兼業申請 兼業監査役派遣
㈱ ジー ンテ ク ノサ イ エ ンス 札 幌 市:DNA解 析 関 連
H13/3 北大遺伝子病制御研究所教授 北大医学研究科教授
兼業申請 兼業監査役派遣
㈱ ユ ー ジー ン
熊本 市=遺 伝 子機 能解析
H13/10 熊本大学医学部教授
」
兼業申請
㈱ レノ メデ ィク ス研 究 所 札 幌 市:再 生 医療 関連
H13/11 札幌医科大学教授 道兼業規定
道兼業申請 兼業監査役派遣 顧問会計士紹介
こ こで 提 起 され た 課 題 につ い て,2001年12月 に札 幌 で 開 催 さ れ た尾 身 孝 次 科 学 技 術 政 策 担 当 大 臣 を 迎 え て の 「北 海 道 産 学 官 連 携 サ ミ ッ ト(内 閣 府)」 に お け る 重 要 な成 果 と して,内 閣府 お よび 文 部 科 学 省 の迅 速 な 行 動 の結 果,国 立 大 教 官 に よ る役 員 兼 業 に 関 し て,時 間 的 制 約 と未 公 開株 式 の 購 入 に 関 す る懸 念 は す べ て 払 拭 さ れ た。 そ の 具 体 的 内 容 に つ い て は,文 部 科 学 省 〈http://www.
mext.go.jp/a ̲menu/shinkou/sangaku/index.htm>に 譲 る が,こ こ で は,(a)兼 業 役 員 に対 す る兼 業 時 間 に 関 して 特 に規 制 が 存 在 しな い こ と,(b)特 定 の 定 義 さ
大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究II ヱ31
れ た 利 害 関 係 者 を 除 き,た とえ 共 同 研 究 先 企 業 で あ っ て も 国 立 大 教 官 は,兼 業 ・非兼業 を問わず相手 先企業 の未公 開株式 を会社設立後 に購入可 能で ある こ 曳,を 確 認 す る 。
こ う した 大 学 発 ベ ンチ ャ ー 周 辺 を め ぐ る環 境 の 急 速 な整 備 は,関 係 者 に と っ て は本 当 に あ りが た い 支 援 と な っ て い る と 同 時 に,さ ら に多 くの 大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 誕 生 を加 速 させ る もの で あ る こ と を信 じた い 。 しか し なが ら,2001年6 月 に公 表 され た い わ ゆ る 「平 沼 プ ラ ン」 に あ る 公 的 試 験 研 究 機 関 を含 め た 「3 年 間 で 大 学 発 ベ ンチ ャー1000社 」 構 想 を実 現 させ る た め に は,年 間 で300社 以 上 の大 学 発 ベ ンチ ャー を 国 内 に創 出 し な け れ ば な ら な い 。 現 実 に,国 内 で は先 端 的 な 地 域 と い え る北 海 道 に お い て も,国 内GDP比4%か ら推 計 さ れ る最 低 ベ ン チ ャー 創 出数 は40社 とな るが,こ れ ま で に 生 まれ た大 学 発 ベ ンチ ャー は道 内 国公 立 大 学 で わ ず か3社 に過 ぎず 目標 の1割 に も満 た な い 。
1980年 代 初 頭 よ り国 家 的見 地 か ら大 学 発 ベ ンチ ャー の創 出 環 境 を着 実 に整 備 し て き た 米 国 を,日 本 の 当面 の 目標 とす る こ とは 非 現 実 的 で あ る。 だ が,1990年 代 に入 っ て,共 産 党 独 裁 の 下 で 部 分 的 な市 場 開 放 の 成 果 が 実 りだ した 隣i国中 国 にお い て,す で に北 京 大 学 を中 心 と して1000社 に 及 ぶ 大 学 発 ベ ンチ ャー が 生 ま れ,そ の 総 売 上 は2000年 時 点 で8000億 円 に達 し,年 商1600億 円 以 上 の 北 京 大 教 授 設 立 に よ るベ ンチ ャ ー企 業 が2社 存 在 す る,と い う 日本 政 策 投 資 銀 行 の 最 新 リ ポ ー ト 「中 国 に お け る大 学 系 企 業 の 概 要 一 学 内 ベ ンチ ャ ー の 興 隆 と企 業 支 援 一 」(日 本 政 策 投 資 銀 行 シ ンガ ポ ー ル駐 在 員 事 務 所 報 告S‑16/2001年10月) の 内容 は 衝 撃 的 で す らあ る 。
本 論 文llの 主 た る狙 い は,こ の よ う な国 内外 の 大 学 発 ベ ンチ ャ ー を め ぐる環 境 の 変 化 に 応 じて,着 実 か つ 急 速 な大 学 発 ベ ンチ ャー の 国 内創 出 を加 速 させ る た め に 必 要 な諸 課 題 を検 出 し,そ の現 実 的 な成 長 戦 略 を導 出 す る こ とに あ る。 幸 い,小 樽 商 科 大 ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン タ ー(CBC)(*以 後CBCと 呼 ぶ)に は,
そ の後 も大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 設 立 に 向 けた 支 援 要 請 が コ ンス タ ン トに 寄 せ られ て い る 。 そ こ で,こ う した 大 学 発 ベ ンチ ャ ー を 一 般 的 な ベ ンチ ャ ー企 業 と比 較 した場 合 の 設 立 条 件 及 び特 異 性,成 長 に必 要 な 経 営 資 源,求 め られ る イ ン キ ュ ベ ー シ ョン機 能,に つ い て 実 証 例 に基 づ い た考 察 をす す め る 。
2大 学発 ベ ン チ ャ ーの 設 立 条件
大 学 発 ベ ンチ ャ ー は,他 の ベ ンチ ャ ー企 業 と比 較 して どの よ う な点 が 異 な る の で あ ろ うか 。 こ う した 疑 問 は,今 の と こ ろ 国 内 で は 具 体 的 な 分析 に至 っ て い な い 。なぜ な ら,2000年4月 に規 制 緩 和 さ れ た 「国 立 大 学 教 官 に よ る役 員 等 兼 業 」 と,2001年6月 の 「大 学 発 ベ ンチ ャ ー1000社 構 想 」 以 降,そ れ らの概 念 自体 が あ ま りに新 し過 ぎて検 証 対 象 と な る兼 業 型 大 学 発 ベ ンチ ャー の 数 が 少 な 過 ぎる か ら で あ る 。
CBCは,2001年4月 の 規 制 緩 和 以 降,国 公 立 大 医 科 系 教 官 に よ る兼 業 型 大 学 発 ベ ンチ ャー4社 の 兼 業 申 請 お よ び 設 立 を支 援 し,CBCか ら も3人 の 兼 業 監 査 役 派 遣 の 実 績 が あ る こ とか ら,こ れ ら大 学 発 ベ ンチ ャ ー企 業 が 設 立 前 か ら設 立 後 に か け て 遭 遇 す る 幾 多 の 困 難 とそ の 対 応 に 関係 当事 者 と して 直 面 して き た 。 そ う した 経 験 か ら,今 後,生 ま れ る で あ ろ う大 学 発 ベ ンチ ャ ーが,そ の 設 立 前 と設 立 後 で す で に 存 在 す る ベ ンチ ャー 企 業 と比 較 して ど の よ う な 点 が 異 な っ た か を 明 らか に して お くこ と は,未 だ 大 学 教 官 の 手 に よ る大 学 発 ベ ンチ ャー の 設 立 数 が 国 内 で20社 に満 た な い現 状(2001年12月 末)で は今 後 の 大 学 発 ベ ンチ ャ ー 設 立 に とっ て 有 益 と考 え る。
(1)設 立 前
〈設 立 発 起 人 〉
大 学 発 ベ ンチ ャ ー と一 般 のベ ンチ ャ ー企 業 を,設 立 前 にお け る準 備 段 階 で 比 較 す る と以 下 の よ うな違 い に気 づ く。 す な わ ち,一 般 企 業 の 設 立 に際 して は 「設
大 学 発 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の 研 究II 133 立 発 起 人」 が 任 意 か つ 随 意 に発 起 人 た り う る の に対 して,大 学 発 ベ ン チ ャー の 場 合,兼 業 承 認 を 受 け る以 前 に 現 職 の 国公 立 大 教 官 が発 起 人 に な る こ とは 国 家 (地方)公 務 員 法 上 で き な い 。 そ の た め,こ う した 公 務 員 と して の 規 制 を 受 け る こ との な い 民 間 人 に発 起 人 を依 頼 す る こ と と な る 。
通 常,こ の よ う な発 起 人 とな る 民 間人 と して は,当 該 教 官 と共 同研 究 等 を 通 じ て 数 年 か ら十 数 年 に わ た るつ き合 い が あ る 中 小 企 業 の オ ー ナ ー経 営 者 か ら選 ば れ る の が 自然 で あ る 。 しか しな が ら,こ の よ う な 良好 で 相 互 に信 頼 関 係 を有 す る 民 間 人 との 交 流 を す で に有 して い る大 学 教 官 が,ど れ ほ ど国 内 の 国 立 大 に 存 在 す る で あ ろ うか 。 一 般 的 に,こ れ ま で の 産 学 共 同研 究 の 民 間側 は大 手 企 業 の 研 究 者 が 中心 で あ っ た と考 え られ るが,こ れ ら大 手 企 業 の サ ラ リー マ ンが大 学 教 官 と共 同 で ベ ン チ ャー 企 業 を 設 立 す る に 至 る可 能 性 は,否 定 で き な い に して
も きわ め て希 有 で あ る と予 想 され る。
そ れ ゆ え,設 立 前 は発 起 人 とな り,設 立 後 は と もに大 学 発 の ベ ンチ ャ ー企 業 を 経 営 し,必 要 な 経 営 資 源(人,組 織,資 金 力)を 調 達 で き る 〈経 営 人 材 〉 が, 今 後 の 大 学 発 ベ ン チ ャー の 創 造 と成 長 に 欠 か せ な い。 そ の た め に も,大 学 発 ベ
ンチ ャー の兼 業 申請 の 要 請 者 た る設 立 発 起 人 は,設 立 後 は技 術 をマ ー ケ ッ トに 展 開 で き る最 高 経 営 責 任 者=代 表 取 締 役(CEO)で あ る必 要 が あ る 。と こ ろが, こ う した 人 問 を組 織 的 に 供 給 す る こ と は現 在 の と こ ろ不 可 能 で あ る。 こ れ まで にCBCが 設 立 に か か わ っ た4社(北 大 医2,熊 本 大 医1,札 医 大1)の ケ ー ス で は,4社 と も に志 た か く 自 らの 経 営 資 源 を提 供 して起 業 を支 援 す るエ ン ジ ェ ル役 に あ た る 中小 企 業 家 が そ れ 以 前 か らの 教 官 の個 人 的 ネ ッ トワー ク に よ り た また ま存 在 し た。
図表1‑2CBC支 援 によ る道 内大 学発 ベ ンチ ャ ー3社 の設立 発起 人
会 社 名 設 立 設 立 発 起 人
㈱ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ 札 幌 市:DNA解 析 関 連
H12/9 米 国ペ ンシルバ ニァ大 併任 教授
㈱ ラボ代 表取 締役 社長
㈱ ジ ー ンテ ク ノ サ イ エ ン ス 札 幌 市:DNA解 析 関 連
H13/3 ㈱免疫生物研究所社長
㈱ レノメデ ィク ス研 究 所 札 幌 市:再 生 医療 関連
H13/11 札幌 医科 大学 名誉 教授
㈱ サ イ エ ンス タナ カ代 表取 締役 社長
しか も,わ れ わ れCBCの 支 援 ス キ ー ム に従 っ て,こ れ らの 中小 企 業 家 は 自 ら 個 人 と して 出 資 す る こ と は あ っ て も,会 社 本 体 か らの 法 人 出資 は な く,そ れ ゆ
え 「親 企 業 」 の 存 在 に厳 しい 制 約 を設 け て い る役 員 兼 業 規 定 も完 全 に ク リア し て い る。 だ が,一 般 的 に,存 立 そ の も の が厳 しい 市 場 競 争 に置 か れ て い る 中 小 企 業 の 場 合,3‑5年 以 上 の赤 字 が 予 想 され る研 究 開発 型 のバ イ オ ベ ンチ ャー一・一
を 息 長 く支 え られ る 中小 企 業 家 は ご くわず か に過 ぎな い 。
そ れ ゆ え,大 学 発 ベ ンチ ャ ー1000社 実 現 に 向 け た今 後 の 政 策 課 題 と して,現 在 盛 ん に な りつ つ あ る産 学 官 連 携 に 対 す る公 的 助 成 を駆 使 しつ つ,自 らは大 手 企 業(も し くは 官 公 庁)の 元 サ ラ リー マ ンで あ っ て も,「 脱 サ ラ」 を越 え た 「大 学 発 ベ ン チ ャー 経 営 」 に乗 り出 そ う とす る ホ ワ イ トカ ラー 予 備 群 に対 して,ベ ンチ ャ ー経 営 者 と して の 転 換 教 育 を施 して 人 材 紹 介 な どの デ ー タバ ン ク に登 録 す る必 要 が あ るで あ ろ う。 経 営 人 材 に 関 して は,詳 し く次 章 の(1)組織 で検 討 す るが,大 学 発 ベ ンチ ャー を株 式 会 社 形 式 で1000社 創 出 す る た め に は,最 低3000 人 の 取 締 役 と1000人 の 監 査 役 が 必 要 とな る こ と を 強 く意 識 す べ きで あ る 。
〈設 立 場 所 〉
大 学 発 ベ ンチ ャ ー は,そ もそ も大 学 教 官 に よる 兼 業 承 認 を前 提 と して い る以 上, 設 立 登 記 上 欠 か せ な い 「設 立 場 所 」 に 関 す る一 切 の 契 約 行 為 を不 動 産 業 者 等 と
大 学発 ベ ンチ ャー支 援 シス テム の研 究Hヱ35
兼 業 承 認 以 前 に交 わ す こ とが 出 来 ない 。 そ れ ゆ え に,兼 業 申請 書 に 添 付 を求 め られ る 「定 款 」 に会 社 所 在 地 を記 入 す る こ と は 出来 な い 。 つ ま り,兼 業 を 認 め られ な け れ ば 貸 しビ ル 等 の 賃 貸 契 約 を結 べ な い が,兼 業 申請 を行 うた め に は 会 社 所 在 地 が 事 前 に決 定 して い な け れ ば な らな い,と い う矛 盾 が 不 可 避 的 に発 生 す る。
こ う した 矛 盾 を設 立 に 成 功 した道 内 大 学 発 ベ ンチ ャ ー3社 で は,以 下 の とお り 解 決 した。 す な わ ち,設 立 発 起 人 と な っ た 中小 企 業 家 が,(a)自 社 ビル を一 時 的 に 設 立 場 所 と し て提 供 す る,(b)自 らの リ ス ク と責 任 で,あ らか じめ 貸 しビ ル と 賃 貸 仮 契 約 を行 う(兼 業 承 認 が 降 りず,も し くは遅 滞 す る と違 約 金 を支 払 う義 務 が 生 じる),で あ っ た。
図表1‑3CBC支 援 によ る道内 大学発 ベ ン チ ャー3社 の設 立場所
会 社 名 設 立 設 立 場 所
㈱ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ 札 幌 市:DNA解 析 関 連
H12/9 当 初3ヶ 月 は㈱ ラ ボ 内,後 に賃 貸 ビ ル移 転(実 験 不可)
㈱ ジ ー ン テ ク ノ サ イ エ ンス 札 幌 市:DNA解 析 関 連
H13/3 賃貸 ビル(実 験 不 可)
㈱ レノ メデ ィクス研 究所 札 幌市=再 生 医療 関連
H13/11 賃貸 ビル(実 験不 可)
しか しな が ら,〈 設 立 発 起 人 〉 で も述 べ た よ う に,自 らの 意 志 と判 断 で 経 営 資 源 を 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 設 立 に 向 け て 提 供 で き る よ う な 中小 企 業 家 を知 り うる 国 立 大 学 の 教 官 は ほ と ん どい な い 。 道 内3社 の よ う に(熊 本 大 医 も 同様),医 学 系 教 官 と息 が 合 い経 済 的 に も余 裕 が あ り,志 の 高 い 中小 企 業 家 の存 在 な く し て は 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 設 立 登 記 場 所 にす ら事 欠 く状 態 で あ っ て,3年 間 で 大 学 発 ベ ンチ ャー1000社 は あ ま りに 楽 観 的 に す ぎ る と言 わ ざ る を得 な い 。
そ う した 意 味 で,今 後 の 国 立 大 学 の独 法 化 以 前 に,国 公 立 大 学 教 官 の 手 に よる
大 学 発 ベ ンチ ャ ー が 安 心 して会 社 設 立 登 記 を行 え る イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン ・セ ン タ ー の 開 設 が 急 務 の 課 題 で あ る 。 現 実 的 な解 決 策 と して は,2001年4月 に独 法 化 さ れ た 〈国 立 試 験 研 究 機 関〉,た とえ ば 「(独)産 業 総 合 研 究 所 」 の 利 用 が 考 え られ る 。 こ う した機 関 は一 般 的 に大 都 市 近 郊 に余 裕 の あ る敷 地 ス ペ ー ス を有 す る場 合 が多 く,あ らた な建 物 を建 て る の み な らず,既 存 の 遊 休 ス ペ ー ス を改 造 す る こ とで も,大 学 発 ベ ン チ ャー に対 す る会 社 設 立登 記 が 可 能 な場 所 を提 供 す る こ とが独 法 化 以 降 可 能 で あ る 。
と にか く,そ れ ぞ れ の 国 立 試 験 研 究 機 関 に お い て,ど の よ う な 内 部 規 定 を 設 け て も よい か ら,国 立 試 験 研 究 機 関 が 自 ら の 職 員 も含 め て広 義 の 大 学 発 ベ ンチ ャー の た め に 「設 立 場 所 」 を提 供 す る こ とが待 望 さ れ る 。 これ らの研 究 機 関 は 膨 大 な 国費 を投 入 さ れ設 立 運 営 され て きた組 織 と して,学 生 の教 育 を主 目的 と す る国 立 大 学 以 上 に く大 学 発 ベ ンチ ャ ー創 造 の 場 〉 と して ふ さ わ しい 。
(2)設 立 後
兼 業 申請 は,人 事 院 事 務 総 長(公 立 大 学 で あ れ ば知 事 ・市 長)に よ っ て承 認 さ れ,文 部 科 学 省 を経 由 して 各 大 学 長 に伝 達 され る。 そ の 後,民 間 人 か らな る 設 立 発 起 人 は,出 資 金 預 け入 れ ロ座 を地 元 銀 行 に開 設 し,同 時 に予 め 出 資 要 請 に 同 意 し て い た 出 資 予 定 者 に対 して 出 資 金 の払 い 込 み を 要 請 す る。 出 資 金 が 定 款 に記 載 さ れ て い る資 本 金 に達 した こ とが 確 認 され た段 階 で,司 法 書 士 に依 頼 し て 地 元 の 法 務 局 で 会 社 登 記 が 完 了 す る。 以 上 の 会 社 設 立 プ ロ セ ス に はお お よそ 2週 間 を要 す る 。
〈速 や か な フ ァイ ナ ンス 〉
会 社 が 発 足 され る と と も に,こ れ ら大 学 発 ベ ンチ ャ ー を 悩 ませ る こ と とな る 最 大 の 問 題 は 「資 金 」 で あ る。 なぜ な らば,研 究 開 発 を 主 た る 目的 と し て設 立 さ れ た 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 場 合,設 備 投 資 と研 究 員 を確 保 し な け れ ば 設 立 した 意 義 が ない が,そ の た め に は一 時 的 に 多 額 の 資 金 を要 す る か らで あ る 。 他 方,こ
大 学 発 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の研 究ll 137 う した大 学 発 ベ ンチ ャー の 売 り上 げ が 支 出 を上 回 る に は,会 社 設 立 後 数 年 を要 す る。 ま た,大 学 教 官 個 人 に よ る出 資 可 能 額 は,せ いぜ い100万 円 か ら300万 円 程 度 に過 ぎず,そ れ 以 上 の 債 務 保 証 や 個 人増 資 を教 官 個 人 に は ほ とん ど望 め な
いo
従 来 型 の 中小 企 業 の 設 立 に際 して,き わ め て 日本 的 な 資 金 調 達 方 法 と し て は, 設 立 発 起 人=代 表 取 締 役=社 長=個 人 債 務 保 証=自 宅 不 動 産 担 保 融 資 に よ る 資 金 調 達 が 一 般 的 で あ っ た 。 しか しな が ら,こ の よ う な 資 金 調 達 が,設 立 か ら数 年 間 も売 り上 げ が な いバ イ オ 系 大 学 発 ベ ンチ ャー に適 合 す る訳 もな く,ま た そ う した リス ク まで 犯 して 事 業 創 出 を考 え る大 学 教 官 個 人 を待 望 す る の は,す で に終 身 雇 用 権 を有 す る大 学 教 官 に と っ て ナ ンセ ンス で あ る。
そ の た め,銀 行 借 り入 れ を行 わ な い(行 うべ きで は な い)大 学 発 ベ ンチ ャ ー に とっ て,ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル な どか らの 第3者 割 り当 て 増 資 に よる 資 本 金 注 入 の み が フ ァイ ナ ン ス とな り うる。 そ れ ゆ え,資 本 金 か ら支 払 わ れ る 毎 月 の家 賃 ・人 件 費 ・光 熱 費 お よび 試 験 研 究 費 に よ っ て,当 初 の 資 本 金(通 例1000万 円) が 通 例3ヶ 月 ほ どで 枯 渇 す る前 に,オ リ ジ ナ ル の 出 資 者 も し くは ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タル(VC)か らの 資 本 注 入 が会 社 生 存 の 必 要 条 件 とな る。
〈幹 部 入 材 の ス カ ウ ト〉
だ が,会 社 は 資 金 だ け で 生 存 す る もの で は な く,十 分 条 件 と し て は大 学 教 官 に よ っ て構 成 さ れ る取 締 役 会 に お け る 決 定 事 項 を揺 る ぎ な く正 確 に遂 行 で き る CEO(最 高 経 営 責 任 者)を サ ポ ー トす る 本 社 ス タ ッ フ と し て,COO(最 高 執 行 責 任 者)・CTO(最 高 技 術 責 任 者)・CFO(最 高 財 務 責 任 者)の 〈3つ の 幹 部 人材 〉 が,設 立 直 後 か ら大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 経 営 に欠 か せ ない 。 そ れ で は, 大 学 発 ベ ンチ ャ ー は,ど の よ う に して 優 秀 な 幹 部 人 材 た るCOO,CTO,CFO を獲 得 す べ きな の だ ろ うか 。
CFOは,は じめ に投 資 を 決 定 した 民 間VCが 派 遣 取 締 役 と して 投 資 先 企 業 に 通 常 送 られ て くる の で,同 一 人 物 に ゆ だ ね る こ とが 可 能 で あ る。 だ が,VCの 投 資 を促 す に は,説 得 力 の あ る 〈ビ ジ ネ ス プ ラ ン〉 と確 固 た る 〈技 術 的 裏付 け
=特 許 〉 が 欠 かせ ない 。 そ れ ゆ え,頻 繁 な外 部 か らの 問 い 合 わ せ に 的確 に 対 応 し,か つ 大 学 教 官 と の 頻 繁 な 実 施 し,会 社 を確 実 に経 営 管 理 で きるCOO,お よ び確 個 た る技 術 ノ ウ ハ ウ に 裏 付 け られ に 技 術 の 方 向性 を指 揮 で き るCTO, な しに 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 成 長 は望 め な い 。
こ れ らの 幹 部 人 材 は 実 務 経 験 な しに務 ま る も の で は な く,果 敢 なヘ ッ ドス カ ウ トを 実 施 す る しか 以 外 に道 は ない 。 ヘ ッ ドス カ ウ ト自体 は,設 立 前 の段 階 で 本 人 か ら内 諾 を得 て お くこ とが 望 ま しい が,会 社 を 設 立 し給 与 を支 払 え る 状 態 に な らな い 限 り当該 者 の ス カ ウ トは不 可 能 で あ る。 そ れ ゆ え,会 社 設 立3ヶ 月 以 内 に優 れ た 幹 部 人材 を ス カ ウ ト し採 用 で き な け れ ば,企 業 と して の事 業 活 動 は 停 滞 す る。 そ の 間 に も,貴 重 な資 本 金 は キ ャ ッシ ュ と して流 出 す る。
幹 部 人材 の 採 用 に 失 敗 した場 合,た と え投 資 水 準 を極 限 に押 さ え て も家 賃 等 の 消 費 的 支 出 は続 くの で,や が て 資 本 金 が 枯 渇 した段 階 で 廃 業 す る か休 眠 す る し か な い 。 そ う した 意 味 で,大 学 発 ベ ンチ ャ ー を志 向 す る大 学 教 官 は,可 能 な 限 り技 術 系 く幹 部 人材 〉 に 関 す る ネ ッ トワー ク を 出 来 るだ け広 範 囲 に保 有 して お く こ とが 望 ま し く,ま た ビ ジ ネス 系 〈幹 部 人 材 〉 に関 して は,中 小 企 業 家(経 営 者)お よ び ビジ ネス 系 大 学 教 官 との 率 直 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが,会 社 設 立 前 お よび 設 立 後 に き わ め て 有 効 とな る 。
3大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 経 営 管 理
(組織 フ ァイ ナ ン ス,コ ア テ ク ノ ロ ジ ー,マ ー ケ テ ィン グ)
今 後,大 学 や 国 立 試 験 研 究 機 関 ・巨大 企 業 中央 研 究 所 に埋 もれ るす ぐれ た 研 究 を,21世 紀 新 産 業 の コ ア テ ク ノ ロ ジ ー(中 核 技 術)へ と転 化 させ る た め に は,
大学発 ベ ンチ ャv‑一・支援 システ ムの研 究ll139
ブ リ ッジ(橋 渡 し役)と して の 兼 業 型 ベ ンチ ャー が 欠 か せ な い こ とを,拙 著 前 論 文1(2001年12月)で 明 らか に した 。 そ れ ゆ え,こ う した 兼 業 型 ベ ンチ ャ ・・…
なか で も大 学 発 ベ ンチ ャ ー が 急 速 に 国 内 で 誕 生 し成 長 を続 け る た め に は,日 本 の 大 学 発 ベ ン チ ャー の た め の全 く新 しい 〈経 営 管 理 〉 が 求 め られ る。
本 節 で は,CBCに よ る大 学 発 ベ ンチ ャ ー 支 援 活 動 を通 じて 明 ら か に な っ た, 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 経 営 管 理 にお け る 〈4つ の経 営 資 源 〉 に つ い て,実 証 例 に 基 づ きな が ら考 察 す る。
(1)組 織
〈旧 い 経 営 組 織 〉
す で に前 節2の 最 後 で 説 明 した と お り,設 立 直 後 の 大 学 発 ベ ンチ ャ ー に と っ て 企 業 存 続 の 絶 対 条 件 は,優i秀 な く幹 部 人 材 〉 の確 保 如 何 で あ る こ とを 明 らか に した 。 そ の 理 由 は,コ ア テ ク ノ ロ ジ ー 開 発 に イ ニ シ ア テ ィブ を も ち な が ら も, 国 家 公 務 員 と して の 性 格 上,経 営 責 任 者 に は な り得 な い兼 業 取 締 役 が複 数 参 画 す る大 学 発 ベ ン チ ャー の経 営 組 織 で は,図 表3‑1に み られ る終 身雇 用 制 度 の な か で 内 部 昇 格 を 経 営 管 理 の基 本 とす る,「 社 長 」 「部 長 」 「課 長 」 「一 般社 員 」
図 表3‑‑1旧 い 経 営 組 織
会長/社 長
一 一 一一 一 圃 一 一 一一 幽 曽 一 一 胃 胃一 一 一 一 一一 一 一 囚 一 一 一一 一 曽 一 一 胃一 一 一 一 一 曽一 帰 一 冒
常務/轄/// \\\
部長/// \\\
騨 一 一 一一 一 一 一 曽 一一 一r‑一 一 一一 一
課長/// \ \
…巖 … 一///
\ \
搬 社員ゾ// \ \ \
lll/購 買部/経 理部/繍 β 労務部塵 部\撚 \
とい っ た ピ ラ ミ ッ ド型 と呼 ば れ る 〈旧 い 経 営 組 織 〉 が 全 く適 合 しな い か らで あ る。
〈新 しい 経 営 組 織 〉
そ こ で,兼 業 と常 勤 を 問 わ ない 取 締 役 と,厳 密 な内 部 監 査 を行 う監 査 役 に よっ て 構 成 され る経 営 戦 略 を決 定 す る新 しい 役 員 会 が 必 要 とな る 。 そ こ に は,代 表 権 を有 す る取 締 役 を議 長 とす る 〈ヨ コの 組 織 〉 が 重 要 とな る。 他 方,経 営 戦 術 を担 う執 行 体 制 と して は,CEO(最 高 経 営 責 任 者),COO(最 高 執 行 責 任 者), CTO(最 高 技 術 責 任 者),CFO(最 高 財 務 責 任 者)と い う 〈タテ の組 織 〉 が 必 要 で あ る。 こ れ ら を ま とめ た の が 図 表3‑2で あ る。
新 しい 経 営 組 織 で は,ヨ コ と タ テ の 要 と な るCEOを 中 心 と し て,CEOを 支 え るCOO,CTO,CFOと い っ た 〈幹 部 人 材 〉 の ポ テ ン シ ャ リ テ ィ と遂 行 能 力 が 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の成 否 を左 右 す る。 もは や,従 来 型 の ピ ラ ミ ッ ド状 に形 成 さ れ た,年 功 序 列 型 で責 任 権 限 が 漠 然 と した 旧 い 経 営 組 織 で は 〈経 営 管 理 〉 が 機i能し な い。
〈経 営 イ ン フ ラ 〉
さ らに,図 表3‑2で 注 目 さ れ る の が,特 に バ イ オ系 の 大 学 発 ベ ンチ ャ ー の外 部 に存 在 す る 〈外 部 専 門 支 援 組 織 〉 で あ る。 多 くの専 門化 され 分 業 化 さ れ た大 企 業 組 織 と異 な り,大 学 発 ベ ン チ ャー は研 究 開 発 に特 化 し,か つ そ こで 開発 さ れ た成 果 の知 的 財 産 化 が 企 業 存 続 の 基 本 で あ る。 ま た,そ う した 〈知 財 〉 を も っ て株 式 公 開 を 目指 す こ と を宿 命 づ け られ た 経 営 組 織 で あ る。 そ の た め,一 般 中小 企 業 と同様 に,経 理 面 で の 〈税 務 会 計 事 務 所 〉の 支 援 は も ち ろ ん の こ と,〈大 手 監 査 法 人 〉に よ る外 部 監 査,バ イ オ分 野 に強 い弁 理 士 を擁 す る 〈特 許 事 務 所 〉
に よ る特 許 化 支 援,が 欠 か せ な い 。
だ が,そ もそ も こ の よ う な外 部 専 門 支 援 組 織 は有 料 で あ り,ま た,特 定 の大 学
大学発 ベ ンチ ャー支援 システ ムの研 究1 141 図表3‑2新 しい経 営組 織
く明確 な経 営理 念 と到達 目標 〉
バイオ系大学発ベンチャー外部専門支援組織
経 営 戦略=方 針&チ ェ ック
大学 兼業 大学 兼業 大学 兼業 監査役
===
取 締役B取 締役C(内 部監査)
\ii'il
一
経 営 戦 術 11 執 行
代 表取 締役A
&CEO i 享 COO 最 高執 行 責任者"
CTO 最 高技 術責 任者
CFO 最 高財 務責 任者'̀
、
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馴レ \紛 務&i労 務&経 理 系 業 務 ぐ … … 一一
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非常勤取締役派遣 外部監査 特許化支援
投 資元VC 大手監査法人
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大 学発 ベ ンチ ャー支 援 の要請
税務会計事務所
発 ベ ンチ ャ ー を支 援 す る た め に 高 度 な ネ ッ トワー ク化 が 欠 か せ な い が,そ う し た 費用 負 担 や 交 渉 を生 まれ た て の 大 学 発 ベ ンチ ャ ー が 単独 で行 う こ とは不 可 能 に近 い 。 そ れ ゆ え に,こ れ ら外 部 支 援 組 織 に よ る ネ ッ トワ ー ク を 戦 略 的 に ネ ッ トワ ー ク化 して,そ の 費 用 ま で 〈投 資 〉 して くれ る ア ー リ ー ス テ ー ジ を得 意 と す る 〈地 域 系 独 立 ベ ンチ ャー キ ャ ピ タ ル〉 の存 在 は,大 学 発 ベ ンチ ャー に と っ て 決 定 的 な意 味 を もつ 。
そ し て,こ れ らの 概 念 提 供 や 人 材 育 成 と供 給,さ ま ざ ま な 外 部 支 援 組 織 との コ ー デ ィ ネ ー トを行 い う る ビ ジ ネ ス教 育 ・研 究 資 源 を 長 年 に わ た っ て 蓄 積 す る
組 織 〈地 域 系 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル 〉 も重 要 で あ る。 お よそ 一 生 出 会 う こ とが なか っ た で あ ろ う 〈理 工 系 大 学 の研 究 者 〉 と くビ ジ ネ ス 関 係 者 〉 を,戦 略 的 に 〈ベ ンチ ャ ー ビ ジ ネス 〉 とい う紐 帯 で 結 びつ け る仲 介 者 と し て,シ リ コ ンバ レー に お け る 「ス タ ン フ ォー ドビ ジ ネ ス ス ク ー ル 」 の 活 躍 は あ ま りに も有 名 で あ る。
また,国 や 県,市 や公 的 試 験 研 究 機 関,政 府 系 金 融 機 関 な どの 政 策 支 援 者 も地 域 系 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル と 同様 に 重 要 で あ る 。
図 表3‑3大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 創 出 メ カ ニ ズ ム
大 学 発 ベ ン チ ャ ー
▲‑
国臓 争力のある繊 の理工系大学[
,'▼7△ ▽ 一一
匝 域 系独 立ベ ンチ ャーキ ャ ピ タル 帯 レ 地 域 系 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル
経 済産 業局,自 治体,公 的 試験研 究機 関,政 府 系 金融機 関の支 店
つ ま り,地 域 に お け る大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 成 長 に は,以 下 の4つ の 要 素 が 必 要 な こ とが わ か る。 す な わ ち,(a)国 際 競 争 力 の あ る技 術 シー ズ を有 す る地 域 の 理 工 系 大 学,(b)国 内 外 か ら経 営 資 源 を地 域 に持 ち込 め る 地 域 系 独 立 ベ ンチ ャー キ ャ ピ タ ル,(c)地 域 に お い て 国 内外 に多 数 の経 済 人 を輩 出 し た実 績 を もつ 教 育 ・ 研 究 を担 う地 域 系 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル,(d)こ れ を支 え る 国 ・自治 体 ・公 的 試 験 研 究 機 関 ・政 府 系 金 融 機 関 の 支 店 に よ る公 的 支援 イ ンフ ラ,で あ る 。 こ う した 地 域 独 自 の戦 略 的 産 学 官 連携 な く して,地 域 にお け る大 学 発 ベ ンチ ャー の創 造 と 成 長 は望 め な い 。
〈経営人材養 成〉
首都 圏か ら遠 く離 れた札 幌 の ような地方都市 にお いて,大 手企業 の本社企 画ス
大 学発 ベ ンチ ャー 支援 シス テ ムの研究H 143 タ ッ フ と して10年 以 上 の 実 務 経 験 を有 す る 有 望 な経 営 幹 部 を,一 流 大 手 企 業 の
7‑8割 程 度 の俸 給 で 採 用 す る こ とは容 易 で は な い 。 た とえ本 人 が 希 望 した と し て も,配 偶 者 が 北 海 道 出 身 者 で も な い か ぎ り一 流 人 材 の北 海 道 へ のU・1 ター ン は絶 望 的 に難 しい 。
そ こ で,中 国 等 へ の 製 造 業 の 海 外 移 転 や,弱 体 化 が す す む金 融 ・建 設 業 で の リ ス トラ な ど に よ っ て 生 ま れ る 国 内 大 手 一 流 企 業 の余 剰 人 員 の 中 か ら,意 欲 と経 験 に優 れ た 人 材 を選 抜 して新 型 の 〈ビジ ネ ス ス ク ー ル 〉 で1‑2年 間 の転 換 教 育 を行 い,21世 紀 の 日本 経 済 を支 え る新 産 業,な か で もバ イ オ を は じめ とす る 大 学 発 ベ ン チ ャー 向 け の 〈経 営 人 材 〉 を供 給 して ゆ くこ とが 急 務 の 課 題 で あ
る 。
問 題 は,す で に本 人 も早 期 退 職 を求 め ざ る を得 な い 企 業 側 も,そ れ らの 人材 が 他 の 成 長 分 野 で は光 り輝 く潜 在 能 力 を秘 め て い る に も関 わ らず,そ れ を 自覚 し て 意 図 的 に 顕 在 化 させ る た め の 機 会 や 訓練 に,ほ とん ど無 関心 ない し無 知 で あ る こ とだ 。 加 え て,18才 人 口 が 激 減 して い る に もか か わ らず,こ う した社 会 人 教 育 が18才 人 口 の不 足 を補 っ て 余 りあ る有 力 な 〈学 生 〉 とな る こ とを 認 識 で き ず,ま た 訓 練 す る ノ ウハ ウ も持 ち得 な い 国 内大 学 も深 刻 で あ る。
小 樽 商 科 大 学 で は,す で に平 成9年5月 に小 樽 キ ャ ンパ ス よ り40kmほ どの 札 幌 都 心 部 に あ る札 幌 商 工 会 議 所 の ビ ル(北 海 道 経 済 セ ンタ ー ビル)内 に 「札 幌 サ テ ラ イ ト」 を設 け,夜 間 時 間 帯(18:00‑21:00)に 現 役 の ビ ジ ネ ス マ ン を 対 象 とす る大 学 院 商 学 研 究 科 経 営 管 理 専 攻 の修 士 課 程 教 育 を 開 始 し た 。 そ の 結 果,30歳 代 を 中心 とす る政 府 系 金 融 機 関 職 員,ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ リス ト,マ ス コ ミ関係 者,公 認 会 計 士,税 理 士 な どが 学 生 と して 年 間15名 近 く入 学 す る よ う に な っ た 。 図表3‑4は,サ テ ラ イ ト開 設 の 翌 年 に あ た る平 成10年 度 以 降, 大 学 院 の 志 願 者 ・入 学 者 が お よそ3倍 に な っ た こ と を示 して い る。
図表3‑4小 樽 商 大大学 院 の志願 者 と入学 者
〈入 学者 全体 〉
80
60
ε4・
20・ 開
0
≡ ...!謡 一
... 口,口.■・腫・■.■ .・昌...・■..■..■....暉.■ ■■・■■■●..圏・■● 関編・・■ 曽●幽幽幽■
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平成6年度
平成5年度 平成7年度 平成13年度
平成12年度
平成11年度
平成10年度
平成9年度
平成8年度
一 志願者数
一入学者数
〈社 会 人 の み 〉
25
20
15(人)
10・ ・
5 0
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平成13年度
平成12年度
平成11年度
平成10年度
平成9年度
平成8年度
平成7年度
平成6年度
平成5年度
一 志願者数
入学者数
さ ら に,平 成13年 度 に入 り大 学 発 ベ ンチ ャ ー が 道 内 で3社 生 ま れ て か ら,社 会 に お け る大 学 院 の 位 置 づ けが 少 しず つ で は あ るが 変 化 し始 め て い る 。 平 成14年 度 の 北 海 道 大 学 大 学 院 医 学研 究 科 癌 医 学 専 攻 の 入 学 予 定 者 の 中 に,昨 年 ナ ス ダ
ッ ク市 場 で 株 式 公 開 したIT系 「株 式 会 社 オ ー プ ン ル ー プ 」 の浅 田 代 表 取 締 役 と,「 札 幌BizCafe」 の 設 立 ボ ー ドメ ンバ ー で 「北 海 道 ベ ンチ ャー キ ャ ピ タ ル 株 式 会 社 」 の 松 田常 務 取 締 役(MBA&小 樽 商 大MA)が 含 まれ る。 同 時 に, 小 樽 商 科 大 学 大 学 大 学 院 商 学 研 究 科 経 営 管 理 専 攻 の 入 学 予 定 者 の 中 に,北 海 道 大 学 医 学 研 究 科 の 守 内教 授(MD&PhD,ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ社 兼 業 取 締 役) が 含 まれ て い る 点 で あ る 。
大学発 ベ ンチ ャー 支援 シス テ ムの研 究R ヱ45 この よ うに,既 存 産 業 か ら多 くの 有 為 な る 人 材 が 現 職 時 で 大 学 院 に社 会 人 入 学 す る こ とが も っ と一 般 化 す れ ば,も と も と大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 誕 生 地 点 に 物 理 的 に も心 理 的 に も最 も近 い 位 置 に存 在 す る 地 域 系 ビジ ネ ス ス ク ー ル(経 営 大 学 院)に お け る勉 学 が,そ こへ の再 就 職 の 最 良 の 機 会 とな る こ とは 米 国 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル の 先 例 か ら も明 らか で あ る。
(2)フ ァ イ ナ ン ス
〈間 接 金 融 か ら直 接 金 融 へ 〉
数 年 間 に わ た っ て研 究 開 発 投 資 を 続 け る 大 学 発 ベ ンチ ャー の 資 金 調 達 に お い て,我 が 国 旧 来 の 融 資 制 度 は全 く役 に立 た な い 。 なぜ な ら,大 学 発 ベ ンチ ャー は売 り上 げ そ の も の を 単 年 度 損 益 で 判 断 す れ ば赤 字 企 業 で しか な い か らだ 。 そ こ で,大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 企 業 価 値 は,現 在 の 単 年 度 キ ャ ッシ ュ フ ロ ー で 計 ら れ る べ きで は な く,将 来 的 に株 式 公 開 も し くはM&Aに よっ て 株 主 に もた ら さ れ るで あ ろ う期 待 収 益 を,到 達 す る ま で の 期 問 で割 り引 い た現 在 価 値 で 判 断 さ れ る 必 要 が あ る。
そ れ ゆ え,(1)の 経 営 イ ン フ ラ で も説 明 した とお り',大 学 発 ベ ンチ ャー の育 成 に は優 れ た 〈地 域 系 独 立 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル 〉 が 欠 かせ ない 。 幸 い に して北 海 道 で は 「北 海 道 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル株 式 会 社 」が3年 前 に 設 立 さ れ た 。だ が, そ の 一 つ しか な い 投 資 フ ァ ン ド(8.6億 円)は す で に使 い 切 り,新 た投 資 フ ァ ン ドを募 集 中 で あ るが 経 済 苦 境 に あ る北 海 道 で は な か な か ま とま っ た 資 金 が 集 ま らな い の が 現 状 で あ る 。
他 方 で,我 々 が 生 命 損 害 保 険 に毎 月 支 払 う保 険 料 は確 実 に 首 都 圏 に 送 金 さ れ て い る し,都 市 銀 行 は もち ろ ん 信 金 や 農 協 バ ンク に預 け る 預 金 さ え も,地 域 内 で の 運 用 先 が 絶 対 的 に不 足 して い る た め,恒 常 的 に地 域 の金 融 資 産 は 首 都 圏 に 送 金 さ れ て い る。 こ う した 資 金 の首 都 圏 一 局 集 中 が 続 く限 り,地 域 に お け る直 接 金 融 は 育 た ず,首 都 圏 の ベ ンチ ャー キ ャ ピ タ リス トの地 域 へ の 呼 び 込 み を進 め
る ほ か に有 力 な資 金 リ ソー ス を持 ち得 な い とい う の が,地 域 系 の 大 学 発 ベ ンチ ャー が 置 か れ た 状 況 で あ る。
何 とか して,地 域 の 問接 金 融 部 門 で 生 ま れ る 余 剰 資 金 を,地 域 の 直 接 金 融 す な わ ち ベ ンチ ャー フ ァイ ナ ンス に振 り向 け る構 造 改 革 を行 う必 要 が あ る。 も し も リス ク を と る こ と に消 極 的 な の が 民 問 金 融 で,国 家 や 地 域 の た め に リス ク を と る の が 公 的金 融 で あ る な らば,公 的 金 融 が 地 域 独 自の ベ ンチ ャ ー フ ァ ン ドを設 計 募 集 して,そ れ を民 間 金 融 に販 売 させ,さ ら に そ こで 集 め た 資 金 を地 域 系 独 立 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タル に フ ァ ン ド資 金 と して 注 入 す る こ とが で き ない で あ ろ
うか 。 そ の 際,フ ァ ン ドの 元 金 保 証 に 関 して,公 的金 融 機 関が た と え ば1000万 円 まで 保 証 す る な らば,ペ イ オ フ に備 え て大 量 の 個 人 資 産 が 流 動 性 を増 して い る現 在 で は圧 倒 的 な 人気 を誇 る金 融 商 品 とな る こ とは 間 違 い な い 。
本 当 は,地 域 の 民 間金 融 が こ れ らの 商 品 を独 自 に設 計 開 発 す れ ば 良 い の だ が, 現 実 的 な実 現 性 は きわ め て 薄 い 。 そ の た め に は,海 外 へ の リ ス ク ヘ ッジ(リ ス ク 回 避 策)も 含 め て 高 度 な金 融 技 術 が 駆 使 され な け れ ば な らな い し,元 金 保 証 を と る限 り(と ら ね ば な らな い 限 り)自 らの 自己 資 本 比 率 の悪 化 要 因 とな る こ と もあ り得 る 。 や は り,米 国 型 の 市 場 構 造 とは 異 質 な 間 接 金 融 が 主 流 の 日本 で は,あ る程 度 政 府 が リス クヘ ッ ジ を公 的保 証 とい う形 で と りな が ら,直 接 金 融 の フ ァ ン ドを金 融 市 場 に供 給 す る こ と も と ら ざ る を得 ない の で は ない か と,個 人 的 に は考 え る。
〈金 融 イ ノ ベ ー シ ョ ン〉
さ ら に,フ ァイ ナ ンス 側 で,テ ク ノ ロ ジ ー の 見 極 め と将 来 の市 場 予 測 を行 え る 技 術 蓄 積 が 必 要 とな る 。 こ の よ う な投 資 が 盛 ん に行 わ れ て い る 米 国 で は,ベ ン チ ャ ー フ ァイ ナ ンス を 行 う側 に 多 くのMD(医 師),PhD(博 士 号)保 持 者 が 投 資 銀 行 や民 間ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル の ア ナ リス トと し て働 い て い る。 た と え 研 究 者 と して は もは や 第 一 線 を リ タ イ ア した 人 々 で あ っ て も,最 新 の論 文 を読
大 学 発 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究ll ヱ47
み こ な し研 究 者 に イ ン タ ビ ュ ー して そ の可 能 性 を探 る こ と は きわ め て 容 易 な作 業 で あ る。む し ろ,本 質 的 な難 し さ は ビ ジ ネ ス と して の投 資 価 値 の 判 断 に あ る。
しか し なが ら,こ れ まで 長 年,金 融 機 関 や企 業 の 企 画 部 門 で 多 くの 新 規 事 業 に 携 わ っ て きた 専 門 家 た ち が,同 年 代 の 医 師 や博 士 号 を有 す る元 研 究 者 た ち と運 命 共 同 体 と して の チ ー ム を作 れ ば,決 して不 可 能 な こ とで は な い 。 米 国 で は現 実 に大 成 功 を 納 め て い る。
こ う した 技 術 シ ー ズ の発 掘 と投 資 を繰 り返 し行 い なが ら,成 功 事 例 が 出始 め る よ う に な る と,現 在 の 金 融 機 関 や 大 学 院 の 最 前 線 で 働 き学 ぶ 若 い 世 代 の 中 か ら,自 ら も投 資 す る側 に 立 と う とす る も の が 必 ず 現 わ れ る。 そ して,こ の よ う な金 融 面 に お け る良 い循 環 が 始 ま る と地 域 経 済 は 間違 い な く活 性 化 す る し,そ れ は米 国 以 上 の効 果 を もつ だ ろ う 。な ぜ な らば,米 国 と異 な り 日本 に お い て は, 地 域 に は優 れ た教 育 研 究 機 関 は存 在 して も,優iれ た 金 融 サ ー ビ ス機 能 が 首 都 圏
に一 極 集 中す る傾 向 が 甚 だ しい か らで あ る。 優 れ たMD,PhDレ ベ ル の 人 材 が 地 域 にお け る新 産 業 の投 資 側 に参 画 す る こ とは,そ れ 自体 が 地 域 の 金 融 イ ノ ベ ー シ ョ ン の契 機 と な る。
現 在 ま で の と こ ろ,日 本 の 金 融 機 関 に お い て大 学 発 ベ ンチ ャー の もつ 可 能 性 と 技 術 ポ テ ン シ ャ リテ ィ を正 確 に判 断 で き る人 材 は,地 域 にお い て は 一 部 政 府 系 金 融 機 関(た とえ ば 日本 政 策投 資 銀 行)に 少 数 な が ら存 在 す る。 こ う した 公 的 金 融 機 関 の 地 方 支 店 が,経 済 産 業 局 及 び 旧帝 国 大 学 の所 在 地 に偶 然 あ っ た こ と を我 々 は 率 直 に喜 ぶ べ きで あ ろ う。 だ が,そ の状 態 が そ の ま ま 固着 す る よ うで は,地 域 にお け る 金 融 イ ノ ベ ー シ ョ ンの 発 生 は 望 め な い 。 なぜ な ら,政 府 系 金 融 機 関 職 員 は長 くて も3年 程 度 の ロ ー テ ー シ ョ ンで 移 動 す る し,政 府 に よ っ て 規 制 され た 護 送 船 団 の 問接 金 融 とい う制 約 を脱 す る わ け に もい か な い か らだ。
こ う した優 れ た 人 材 が,や が て 地 方 の 金 融 機 関 に 請 わ れ て移 籍 し,存 分 に活 躍 で きる よ う な直 接 投 資 部 門 が 地 域 に 生 まれ る 必 要 が あ る。 そ う しな け れ ば,公 的 金 融 と民 間金 融,中 央 と地 方 の格 差 は埋 ま らず,地 域 の 金 融 イ ノ ベ ー シ ョ ン
も生 ま れ る 余 地 が な い 。
(3)コ ア テ ク ノ ロ ジ ー
〈減 少 す る貿 易 黒 字 〉
〈技 術 〉 が 産 業 の 源 で あ る こ とは何 人 も否 定 し得 な い 。 特 に,日 本 の よ うに 人 的 資 源 を の ぞ く と食 料(コ メや 牛 は 育 て られ て も肥 料 や飼 料 は ほ ぼ100%輸 入) もエ ネ ル ギ ー(石 油 ・ウ ラ ン)も 国 内 で は全 く賄 え な い 孤 立 した 島 国 で は,技 術 力 を もっ て 輸 出 競 争 力 の あ る財 や サ ー ビス を輸 出 して 〈外 貨 〉 を獲 得 す る こ
とが,国 家 存 立 の 基 本 命 題 で あ る 。 なぜ な ら ば,石 油 産 出 国 を 防衛 す る だ け の 軍 事 力 も,ア ジ ア に 〈円経 済 圏 〉 もな い 日本 は,〈 ドル〉 で エ ネ ル ギ ー や 食 料, 各 種 の 鉱 物 資 源 を海 外 か ら購 入 せ ざ る を得 な い た め だ 。
そ れ ゆ え に,貿 易 差 額 で 得 られ る 〈ドル〉 な し に 日本 は 国 家 と して 存 続 し得 な い 。 日本 が 太 平 洋 戦 争 で 対 米 戦 に 突 入 した 直 接 の 契 機 は,開 戦 半 年 前 に米 国 が,独 伊 との 「三 国軍 事 同 盟 」 お よ び 中 国侵 略 を続 け る 日本 に 反対 し て 日本 の 在 外 資 産 を凍 結 した こ と に よ る 〈事 実 上 の対 日石 油 禁 輸 〉 が 発 端 で あ っ た こ と
を,わ れ わ れ は 決 して 忘 れ るべ きで は な い 。
こ う した 資 源 に 脆 弱 な 日本 が,こ れ ま で世 界GDP第2位 の経 済 大 国 と な れ た 唯 一 の 理 由 は,戦 前 戦 中 に蓄 積 した 優 れ た 人 的 資 源 を 集 中 的 に テ ク ノ ロ ジ ー の 開発 と応 用 に振 り向 け た 結 果 で あ る。 現 在,世 界 第2位 の 労 働 生 産 性 を 誇 る 日 本 の 輸 出製 造 業 に働 く1人 は,他 の 国 民9人 分 の食 料 とエ ネ ル ギ ー を供 給 して い る。 とこ ろ が,そ の くドル〉 の 稼 ぎ手 で あ る 国 内輸 出 製 造 業 が 次 第 に 中 国 等 の 追 い 上 げ に よ っ て競 争 力 を失 い は じめ て い る。 そ の 結 果,図 表3‑5の 通 り 過 去1年 で 日本 の 貿 易 黒 字 は お よそ4割 減 少 し た。 この ま ま で は,日 本 は2年 後 に貿 易 赤 字 国 に転 落 し,海 外 資 源 の輸 入 代 金 に も事 欠 くか も知 れ な い 。
こ う した状 態 は,第1次 大 戦 後 の 英 国が 長期 に わ た っ て 苦 しん だ 〈高 失 業 〉 と
大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究II ヱ49
〈高 イ ン フ レ〉 の 同居 状 態 で あ る 〈ス タ グ フ レー シ ョ ン〉 を誘 発 し,国 内 に お け る新 規 投 資 と技 術 イ ノ ベ ー シ ョ ンの 停 滞 を もた らす 。 英 国 の 場 合,1970年 代 に 国 内 失 業 率 は30%近 くに 達 し,ポ ン ドは戦 後 半 世 紀 で80%も 価 値 が 下 落 した 。
図表3‑5日 本 の 貿易黒 字
50000
40000
30000
徳 巴20000
10000
0
199711997皿1998工1998皿199911999皿200012000皿2001工2001皿
〈コ ア テ ク ノ ロ ジ ー と大 学 発 ベ ンチ ャ ー 〉
英 国 の よ う に 安 易 な イ ン フ レ ー シ ョ ン政 策 と 自国 通 貨 切 り下 げ に 頼 る こ と な く,経 済 の 閉 塞 状 況 を打 破 して 日本 経 済 を新 た な成 長 軌 道 に押 し上 げ る 経 済 発 展 を遂 げ る た め に は,新 産 業 の 〈コ ア テ ク ノ ロ ジ ー 〉 を 自 らの 手 で 生 み 出 さ な け れ ば な らな い 。 つ ま り,ア ジ ア の 中進 国 が 決 して 追 い つ け な い 高 度 な技 術=
コア テ ク ノ ロ ジー が 知 的 財 産 化 され 産 業 化 され な け れ ば な らな い 。 こ う した コ ア テ ク ノ ロ ジ ー な しに,安 易 な 国 際 分 業 とい う美 名 の も とで の 国 内 製 造 業 の 海 外 移 転 と空 洞 化 を招 く と,国 内 雇 用 の9割 を し め る非 輸 出 関連 産 業 へ の エ ネ ル ギ ー 及 び食 料 の 供 給 が 減 少 し,国 民 所 得 及 び 国 内純 貯 蓄 は 国 内 イ ン フ レー シ ョ ン を通 じて実 質 的 に坂 を転 げ落 ち る よ うに低 下 す る 。
他 国 が 容 易 に 追 い つ け な い コ ア テ ク ノ ロ ジ ー の 開 発 に は,そ れ に先 行 して 十 数 年 以 上 に及 ぶ 大 学 等 に お け る基 礎 研 究 の成 果 が 欠 かせ な い 。 さ ら に,多 くの 原 理 に 関 す る基 本 特 許 が 先 行 的 に取 得 され て い る必 要 性 が あ る。 ま た,こ う した 国立 大 学 に お け る基 本 特 許 の費 用 は,研 究 補 助 金 の な か か ら支 出 を義 務 づ け る
べ きで あ る。 も ち ろ ん,特 許 の所 有 者 は発 明 者 と大 学(TLO等)の 折 半 で あ るべ きで あ ろ う。
そ れ ゆ え,コ ア テ ク ノ ロ ジ ー は こ れ らの 基 本 特 許 の 有 効 期 限(20年)が 切 れ る 前 に 開発 され 商 品化 され な け れ ば意 味 が ない 。 この よ う に,20年 を周 期 と して 後 半 の10年 程 度 で投 資 を 回収 す べ き コア テ ク ノmジ ー の 開発 は,戦 後 の 日本 企 業 が と って きた 〈安 直 な米 国 か らの技 術 導 入 〉 と は全 く異 な る ア プ ロー チ が 求 め られ る。 なぜ な ら,基 本 特 許 か ら応 用 特 許,そ し て周 辺 特 許 ま で を戦 略 的 に 保 有 す る た め に は,必 要 条 件 と して,知 的 な成 果 を上 げ る もの に対 して 十 分 か つ 長 期 的 な投 資 と報 酬 を与 え な くて は な ら な い 。 さ らに 十 分 条 件 と し て,〈 大 学 及 び 国 立研 究 機 関 → 大 学 発 ベ ン チ ャー → 大 手 企 業 〉 とい う プ ロ セ ス ご と に, 行 うべ き技 術 開発 と取 得 す べ き特 許 の 内 容 が 大 き く異 な っ て お り,か つ そ れ ら
は明 確 な ゴ ー ル を 与 え る戦 略 的 連 携 が 不 可 欠 だ か ら で あ る 。
膨 大 な 国 民 の 税 金 を投 入 す る 国 立 大 学 にお い て,国 民 の合 意 な く して研 究 者 の 個 々 の判 断 で 特 許 出 願 を 自己 放 棄 す る こ と とな る 無 償 の論 文 公 開 は,も はや 米 国 の 追 試 実 験 を して い る段 階 を終 え た 日本 の 大 学 で と るべ き ア プ ロ ー チ で は な い 。 否,そ れ らを段 階 ご とに特 許 化 し,産 業 界 へ の 戦 略 的 な技 術 移 転 を行 うべ き段 階 に 達 して い る。 そ うで な け れ ば,日 本 の大 学 の 国 際競 争 力 は 実 態 以 上 に 過 小 評 価 され,ひ い て は 国民 の 公 的 資 金 投 入 に 関 す る コ ンセ ンサ ス を失 う で あ
ろ う。
そ して,大 学 に お け る終 身雇 用 の 研 究 者 は,日 々 の 収 入 と研 究 費 を 国民 か ら善 意 に基 づ き与 え られ て い る以 上,こ う した コ ア テ ク ノ ロ ジ ー の 開 発 過 程 で 主 役 とな る大 学 発 ベ ンチ ャ ー か らの 多 額 の 報 酬 は辞 退 す べ きで あ る。 だ が,こ れ ら の コ ア テ ク ノ ロ ジ ー が 産 業 界 で ひ ろ く生 か さ れ,国 内 に雇 用 が 生 ま れ 企 業 が 収 益 を上 げ る よ う に な っ た 時,大 学 の研 究 者 は,発 明 者 と して,ま た そ の技 術 供 与 元 の大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 出 資 者 と して,ラ イ セ ンス 料 や キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン を