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大 学 発 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ムの研 究1

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大 学 発 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ムの研 究1

小 樽 商科 大CBCと 国立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャー の創 造

瀬 戸 博士(農 学)

19臼つe45ハ0

国 内 大 学 初 の ビ ジ ネ ス 支 援 組 織 小 樽 商 科 大CBC」

国 内 第1号 〈国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー 〉 の 誕 生 大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 経 営 課 題

大 学 発 ベ ンチ ャ ー と地 域 経 済 大 学 発 ベ ンチ ャー と イ ノベ ー シ ョ ン 結 び:大 学 発 ベ ンチ ャ ー の 創 造 に 向 け て

本 論 文 で は,平 成13年9月 に 会 社 設 立1年 を経 た,国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー 第1号 株 式 会 社 ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ 」 の 設 立 経 緯 と事 業 概 要,お よび 設 立 後 明 らか と な っ た 〈大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉 特 有 の経 営 課 題 とそ の 解 決 策 に つ い て報 告 す る。 筆 者 は,小 樽 商 科 大 学 が 平 成11年 に 国 内 で 初 め て創 設 した 「ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン タ ー(CBC)」 の 設 立 に 関 わ り,現 在 学 部 な ら び に 大 学 院 教 育 の 傍 ら CBC副 セ ン ター 長 を兼 務 して い る。 こ う し た こ とか ら,北 海 道 大 学 教 官 複 数 か らの 支 援 要 請 に基 づ き,ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ社 の 設 立 を 直接 支 援 し,設 立 後 は 人 事 院事 務 総 長 か らの 承 認 を も っ て兼 業 監 査 役 と し て 同社 経 営 に 関 わ っ て き た 。 こ う した 設 立 前 お よ び設 立 後 の経 験 か ら得 た 知 見 を も とに,い わ ゆ る 〈 学 発 ベ ンチ ャー1000社 構 想 〉 に 資 す る 支i援策 につ い て,産 業 政 策 の 視 点 か ら も 考 察 を試 み た い 。

小 樽 商 科 大 学 商 学 部(兼 大 学 院)助 教 授 ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン ター(CBC)副 セ ン ター 長

〔187〕

(2)

1国 内 大学 初 の ビ ジ ネ ス支 援 組 織 「小 樽 商科 大CBC」

(1)CBC設 立 の 背 景 と 理 念

平 成11年4月,国 内 唯 一 の 国 立 商 科 大 で あ る 小 樽 商 科 大 学 は,OB会 支i援 の 下, 学 内 組 織 「ビ ジ ネ ス 創 造 セ ン タ ー(CBC:CenterforBusinessCreation)」 発 足 させ た 。 そ の 後,平 成12年4月 に 文 部 省(当 時)に よ り予 算 化 さ れ,地 共 同 研 究 セ ン タ ー と し て 学 部 よ り独 立 し た 。

CBCは,明 治43年 建 学 以 来 の 伝 統 で あ る く実 学 の 実 践 〉 理 念 に基 づ き,社 会 科 学 系 大 学 と して は 初 め て,〈 新 産 業 創 出 支 援 〉 を 目的 とす る学 部 か ら独 立 し た 全 学 体 制 の ビ ジ ネ ス 支 援 組 織 で あ る。 そ の 活 動 舞 台 は,CBC所 在 地 で あ る 小 樽 商 科 大 キ ャ ンパ ス を は じめ,平 成9年 に札 幌都 心 部 に 設 置 した 「札 幌 サ テ ラ イ ト」,昭 和14年 に 設 立 さ れ たOB会 組 織 「社 団 法 人緑 丘 会 本 部 会 館 」(東 京 池 袋 サ ン シ ャ イ ン ビ ル57F),現 在 協 力 関 係 を樹 立 中 の 米 国 ペ ン シ ルバ ニ ア州 に あ る大 型 イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ン施 設 に 及 ん で い る 。

(2)CBCの 事 業 対 象 お よ び ミ ッ シ ョ ン

CBCの 事 業 対 象 は,既 存 企 業 に よ る新 規 事 業 は も ち ろ ん,新 た な ベ ンチ ャ ー 企 業 の創 業 ま で を対 象 と して い る。 す な わ ち,新 結 合(イ ノベ ー シ ョ ン)を 遂 行 し よ う とす るす べ て の く企 業 家 〉 を対 象 と して お り,対 象 と な る事 業 内 容 を 一 切 問 わ な い 。 また,CBCの ミ ッ シ ョ ン は,高 度 な技 術 や ア イ デ ア が あ りな が ら も事 業 化 や 起 業 に至 らな い ビ ジ ネ ス シ ー ズ を,大 学 独 自の 方 法 論 か らビ ジ ネス ニ ー ズ に有 機 的 に結 合 させ,市 場 競 争 に耐 え う る事 業 創 造 を支 援 す る こ と にあ る。

(3)CBCに お け る3事 業

以 上 の ミ ッ シ ョ ン を 達 成 す る た め,CBCは 以 下 に述 べ る3つ の 中核 事 業 を実 践 して い る。

(3)

大 学発 ベ ンチ ャー 支援 システ ムの研 究1189 a)プ ロ ジ ェ ク ト事 業:

国 立 商 科 大 学 な らで は の ビ ジ ネ ス ネ ッ トワー ク を活 用 し,ビ ジ ネ ス 創 造 に 不 可 欠 な学 内外 専 門家 や 関 連 企 業 ・官 公 庁 を有 機 的 に結 びつ け,共 同 研 究 ・受 託研 究 な どの 個 別 プ ロ ジ ェ ク トを組 織 化 ・具 体 化 す る。

b)情 報 発 信 事 業:

明 治 ・大 正 ・昭 和 と90年 間 収 集 して きた 各 種 統 計 資料 に加 え,最 新 の ビ ジ ネ ス創 造 に 資 す る デ ー タベ ー ス を構 築 し,イ ン タ ー ネ ッ トを通 じて 学 外 に情 報 公 開 す る。

c)高 度 職 業 人 養 成 事 業:

2600人 の 学 部 大 学 院 学 生 は も と よ り,小 樽 キ ャ ンパ ス に学 ぶ100名 近 い 外 国 人 留 学 生 や,昼 間働 き夜 間 は札 幌 サ テ ラ イ トに学 ぶ20名 近 い社 会 人 大 学 院生 に対 して,リ ア ル ビ ジ ネ ス へ の イ ン タ ー フ ェー ス 環 境 を提 供 す る 。 さ らに, 共 同 研 究 先 の 企 業 ・自治 体 よ り共 同研 究 員 を積 極 的 に受 け 入 れ,CBCと 共 同 プ ロ ジ ェ ク トを進 め る。

(4)CBCの 組 織 形 態

小 樽 商 科 大 学(明 治43年 官 立 小 樽 高 等 商 業 学 校(OtaruHigherCommercial Schoo1)」 設 置,明 治44年 開 校)は,商 学 部 お よ び 商 学 研 究 科 経 営 管 理 専 攻 の み を 有 す る,90年 の 歴 史 を もつ 国 内 唯 一 の 国 立 商 科 大 学 で あ る。 そ れ ゆ え複 数 の 学 部 長 が 存 在 せ ず,学 長 が 学 部 と大 学 院 の 長 を 兼 任 し て い る。 そ の 結 果, CBCは 現 在,文 部 科 学 省 令 施 設 「地 域 共 同研 究 セ ン タ ー」と して学 長 の リー ダ ー シ ップ の 下,各 学 科 選 出 委 員 で 構 成 され る 「運 営 会 議 」 が 意 志 決 定 を行 い,議 長 に あ た るCBCセ ン ター 長 が 専 任 教 授 と してCBC実 務 の 指 揮 を と って い る 。

そ の 下 に は,商 学 部 な らび に大 学 院 の 兼 任 教 官 で あ る 副 セ ン タ ー 長1名,主 3名 を配 置 し,か つ 助 手 お よ び ア シス タ ン トが 各1名CBC事 務 室 で働 い て い る。 他 に,大 学 事 務 局 内 に も 「地 域 連 携 推 進 室 」 が 設 置 され,3名 の 専 属 事 務 官 が 置 か れ て い る。 な お,学 部 に所 属 す る教 官 お よ そ140名 が 学 科 ・専 門 を 問

(4)

わず,CBCが 事 務 局 を担 う計15に の ぼ る登 録 研 究 会(学 外 か らの 参 加 も 自 由) に所 属 し,必 要 に 応 じて外 部 か ら申 し込 み や 協 力 依 頼 の あ っ た 共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク ト等 に参 加 して い る 。 こ れ ら の研 究 成 果 は す べ て 『CBCデ ィ ス カ ッ シ ョ ンペ ー パ ー シ リー ズ 』と して 公 表 され て お り,こ れ らの 内 で特 に優 れ た ペ ー パ ー に対 して は,別 途OB会 か らの 出 版 助 成 もCBC内 で予 算 化 さ れ て い る。

こ う したCBCの 組 織 に お い て特 に ユ ニ ー ク な もの は,CBC発 足 時 に新 た に制 度 化 さ れ た 「CBC学 外 協 力 ス タ ッ フ(CBCAdvisoryStaff)」 で あ ろ う。

CBCが,〈 民 間 の ビ ジ ネス 創 造 〉 とい う従 来 の 日本 の 国 立 大 学 と し て は 未 知 の 領 域 に踏 み 出す に あ た っ て,相 当 の 困 難 と想 定外 の 事 態 が 予 想 され た 。 そ の た め,弁 護 士 ・会 計 士 ・弁 理 士 ・技 術 士 な どの 有 資格 者 に加 え て,金 融 ・経 営 ・ 技 術 分 野 に お け る民 間 専 門家 に よ る ア ドバ イ ス が不 可 欠 と判 断 され た 。 そ の 結 果,学 長 よ り毎 年 度 当 初 に 委 嘱 が な され,業 務 時 問 内 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 が 認 め られ る 学 外 の専 門 家 に対 して,旅 費 等 の 実 費 を 支 給 し,無 償 の 「学 外 協 力 ス タ ッフ」制 度 が 発 足 した 。現 在 委 嘱 済 み の ス タ ッ フ総 数 は計12名 に達 して お り, CBCが す す め る ビ ジ ネ ス 支 援 活 動 に対 し て,き わ め て 機 動 的 か つ 有 効 な ア ド バ イ ス を 得 て い る。 氏 名 と 所 属 はCBCの ホ ー ム ペ ー ジ(www.otaru‑uc.

ac.jp/cbc/)で 公 開 され て い る が,平 成13年4月 時 点 にお け るス タ ッ フ は 以 下 の 通 りで あ る。

学 長 委 嘱 に よ るCBC学 外 協 力 ス タ ッ フ:五 十 音 順 〉 五十嵐伸 吾

大石 一良 小寺 正 史 佐藤 鈴木宏 一郎 田村 丈生 土井 尚人 服部 統 幾 元晴 松 田 一敬 松 田 博 行 溝渕 新 蔵

財 団法人三和 ベ ンチ ャー育成基 金 総務部 長 朝 日監査法 人札幌事務 所 代 表社 員(公 認 会計士) 小 寺正史法律 事務所 所 長(弁 護士 ・弁理士) 佐 藤等公認 会計士事務 所 所 長(公 認会計士)

株 式会社 リクルー ト 九州 ブロ ックマ ネー ジャー(本学修士) 行 政書士 田村 丈生事務 所 所 長(行 政書士)

株 式会社 日本 プ ロマ イ ト 常務取 締役(ISO認 定者) 日本政策投 資銀行 新 規事業 部調査役(本 学修士) 株 式会社富士 銀行 法 人営業部 成長企業支援 室長

北海道ベ ンチ ャーキャピタル㈱ 常務取締役(MBA,本 学修士) 千 代 田化工建 設㈱ 部長代理(工 学博士,技 術 士)

ア ピアプ リン ト㈱ 会 長(本 学修 士)

(5)

大 学 発 ベ ンチ ャ ー 支 援 シス テ ム の研 究1

学 内事 務 局 (3名)

CBC事 (2名)

総 務 部 主 任 研 究 部 主 任 情報資料部主任

学 外協 力 ス タ ッフ (12名)

弁 護士,公 認会 計士,技 術 士 金 融 専 門 家 等 を 学 長 委 嘱

19ヱ

図表 一1CBCの 組織 形態(平 成13年4月 現 在)

(5)CBCの 活 動 領 域

こ う した事 業 を 推 進 して い るCBCは,構 想 段 階 に あ っ た 平 成10年 当 時 か ら次 の5つ の 活 動 領 域 を想 定 して い た 。

a)理 工 系 大 学 や 公 的研 究 機 関 に お け る技 術 シ ー ズ と,国 内外 ビ ジ ネ ス ニ ー ズの有機 的結合

b)新 産業創 出 のための専 門家 や関係諸機 関 との連携 強化 c)学 外 か らの 相 談 窓 口 の 一 元 化

d)ビ ジ ネ ス創 造 に 資 す る各 種 セ ミナ ー の 開 催 e)民 間企 業 お よ び 道 市 町 村 か らの 共 同研 究 員 受 入 れ

そ の う ち,現 在,主 要 な 国 の産 業 政 策 とな りつ つ あ る く大 学 発 ベ ンチ ャー 〉を, 上 のa)に お い て 既 に3年 前 に活 動 領 域 と して 定 義 して い た こ とは特 筆 さ れ よ

う 。

(6)

(6)CBCに よ る 〈大 学 発 ベ ン チ ャー 〉 支 援 活 動(4件/平 成12‑‑13年 実 績) 小 樽 商 科 大 学CBCは,4つ のバ イ オ系 大 学 発 ベ ンチ ャ ー 〉 の 設 立 に い た る 兼 業 申 請 か ら資 本 計 画 ・定款 作 成 ・会 社 登 記 に い た る 〈大 学 発 ベ ンチ ャー の フ ル ラ イ ン支 援 体 制 〉 を確 立 し,道 内3社 に は設 立 と 同時 に本 学 教 官3名 を 「 業 監 査 役 」 と して 送 り出 した 。

設 立 兼 業 取 締 役 CBC支 援 内 容

㈱ ジェ ネ テ ィ ック ラ ボH12/9北 大 医 学研 究 科 教授 (札幌市:DNA解 析 関連)北 大 遺伝 子 病 制 御研 究 所 教授

㈱ ジーンテクノサィエンスH13/3北 大 遺伝 子 病 制 御研 究 所 教授 (札幌市:DNA解 析 関連)北 大 医学 研 究 科 教授

㈱ ユ ー ジ ンH13/10

(熊本 市:遺 伝 子 機 能 解析 関連)

㈱ レメ ノデ ィ ス ク研 究所H13./11 (札 幌 市:再 生 医 療 関 連)

熊本大学医学部教授

札幌医科大学教授

兼業 申請+兼 業監査役

兼業 申請+兼 業監査役

兼業 申請

道兼業規定+道 兼業申請 兼業監査役+顧 問会計士

2国 内 第1号 〈国立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャー〉 の誕 生

(1)設 立 経 緯

平 成13年4月20日 施 行 の 「産 業 技 術 力 強 化 法 」 を 受 け て,国 家 公 務 員 法 第103 条 第3項 に 基 づ き人事 院 規 則14‑18(国 立 大 学 教 員 等 の 研 究 成 果 活 用 企 業 の 役 員 等 と の兼 業)及 び 人 事 院 規 則14‑19(国 立 大 学 教 員 等 の 株 式 会 社 等 の 監査 役 との 兼 業)が 改 正 さ れ,審 査 の う え 国立 大 教 官 の役 員 兼 業 が 人事 院 よ り許 可 さ れ る よ う に な っ た 。 これ を 受 け て,CBCで は以 下 の とお り現 職 の 北 大 教 官2 名 が 参 加 す る 国 内 初 の 〈国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー 〉 の 設 立 支 援 要 請 を 受 け, そ の 設 立 に 関 与 した。 以 下 に そ の 具 体 的 プ ロセ ス を 説 明 す る。

・平 成12年1月:CBCは ,民 間 企 業 お よび 北 大 医 学 研 究 科 ・遺 伝 子 病 制 御 研 究 所 の 教 官 よ りバ イ オ研 究 の 事 業 化 につ い て相 談 を 受 け,〈 国 立 大 発 兼 業

(7)

大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支援 シ ス テ ム の 研 究1 193 型 ベ ンチ ャー 〉 の 可 能性 を札 幌 サ テ ラ イ トで 説 明 した 。

・平 成12年4月:「 国 立 大 学 教 官 に よ る役 員 兼 業 許 可 」 を 受 け,CBCは 大 医 学 研 究 科 に お い て す で に 具 体 化 して い たDNAア レイ コ ン ソ ー シ ア ム に 参 加 す る医 学 教 官 グ ル ー プ お よ び 支 援 民 問 グ ル ー プ に対 して,バ イ オ ベ ンチ ャ ー 設 立 の た め の 具 体 的 手 続 き に 関 す る説 明 会 を実 施 した 。

・平 成12年5月:事 業 化 を め ざす 北 大 チ ー ム よ りCBCに 役 員 兼 業 を前 提 と す る ベ ンチ ャー 設 立 に 向 け た 支 援 を 正 式 に受 け,同 時 に小 樽 商 科 大 教 官 に よ る兼 業 監 査 役 の 就 任 も同 時 に要 請 され た 。

・平 成12年6‑7月:CBCは ,北 大 医 学 研 究 科 事 務 方 へ の 連 絡 も含 め,兼 業 申 請 書 類 作 成 全 体 を 支援 し,北 大 ・小 樽 商 科 大 の 事 務 局 よ り兼 業 申 請 を文 部 省 経 由(当 時)で 人 事 院 に 提 出 した 。

・平 成12年8月:人 事 院事 務 総 長 に よ り兼 業 を 許 可 さ れ ,た だ ちに複 数の 国 立 大 教 官 お よ び民 間 個 人 が 出 資 す る 法 人 の 設 立 登 記 が な され た 。

・平 成12年9月:「 株 式 会社 ジ ェ ネ テ ィ ック ラボ 」 法 人 設 立 登 記 。 本 社 は札 幌 市 で 資 本 金1000万 円従 業 員2名 で ス ター トした 。

(2)事 業 概 要

役 員6名 中4名 が 現 職 の 大 学 教 官 で あ り,内3名 が 人 事 院 に よ り兼 業 を 許 可 さ れ て い る 。

代 表 取 締 役 会 長=民 間 企 業 代 表 取 締 役

代 表 取 締 役 社 長=ペ ン シ ルバ ニ ア大 学 医 学 部 併 任 教 授

&北 大 先 端 科 学 技 術 共 同研 究 セ ン ター 客 員 教 授 取 締 役(研 究 開 発)=北 大 医 学 研 究 科 教 授

取 締 役(研 究 開 発)=北 大 遺 伝 子 病 制 御 研 究所 教 授

*非 常 勤 取 締 役(財 務)=北 海 道 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル株 式 会 社 常 務 取 締 役 (*平 成13年3月 よ り就 任)

役=小 樽 商 科 大 学 商 学 部(兼 大 学 院)助 教 授

&ビ ジ ネ ス創 造 セ ン ター(CBC)副 セ ン タ ー長

(8)

主 た る 事 業 は,が ん 関連 の 遺 伝 子 発 現 情 報 を 収 集 蓄 積 す る こ と に あ り,そ の た め,現 在3つ の研 究 開発 をす す め て い る。

a)オ リ ジ ナ ル 「DNAア レイ フ ィ ル ター 」 の 開発

b)ア レイ フ ィ ル タ ー を 通 じて収 集 す る 日本 人 特 有 の が ん 関 連 遺 伝 子 の 発 現 情 報 デ ー タ と患 者 の 臨 床 デ ー タ を集 積 した 統 合 デ ー タベ ー ス の構 築 c)オ リ ジ ナ ル の デ ー タベ ー ス を も と に行 う大 手 製 薬 企 業 と の創 薬 開 発 に 関

す る受 託 共 同研 究 の 展 開

北 大 遺 伝 子 病 制 御 研 究 所 は,ジ ェ ネ テ ィ ック ラ ボ 社 の 設 立 と同 時 に 共 同研 究 契 約 を結 び,北 大 先 端 科 学 技 術 共 同研 究 セ ンタ ー 内 に設 置 され た 共 同研 究 ラ ボ で は,大 学 教 授 と社 員 研 究 員 が 最 新 鋭 の 解 析 機 器 を駆 使 して 共 同 研 究 を 進 め て い る。 同社 で は,こ れ まで 国 立 大 学 の 限 られ た予 算 で は な か な か 実 現 で き なか っ た 優 れ た 若 手 研 究 員 の 即 時 採 用 や 機 材 の 即 時 購 入 ・解 析 業 務 の 受 託 な どが,主 任 研 究 員 の 判 断 と毎 月 開催 され る役 員 会 承 認 だ け で 行 え る よ う に な っ た こ と か

ら,研 究 開 発 ス ピー ドが 飛 躍 的 に加 速 され た。

こ の よ う に,〈 大 学 の優 れ た 知 的 イ ン フ ラ〉 と 〈民 間 企 業 の 資 金 力 と機 動 力 〉 の 新 結 合 に よ るマ ネ ー ジ メ ン ト ・イ ノ ベ ー シ ョ ンが,次 々 と新 た な研 究 成 果 を 生 み 出 しつ つ あ る 。創 業10ヶ 月 に あ た る平 成13年7月 に は 国 内 有 力 私 大 医 学 部 か ら大 口 の 研 究 委 託 を受 注,平 成13年8月 に は が ん 関 連DNA解 析 情 報 を 載 せ た ア レイ フ ィ ル ター を初 出荷 し,創 業1年 目 に あ た る平 成13年9月 に は 米 国 の バ イ オ ベ ンチ ャ ー企 業 へ の技 術 供 与 契 約 が 予 定 され る ま で に 成 長 した 。

ま た財 務 面 で は,平 成13年3月 に地 域 系 独 立 ベ ン チ ャー キ ャ ピ タル(VC)か ら の投 資 及 び ワ ラ ン ト債 発 行 とCFO派 遣 受 け 入 れ を決 定 した 。 さ ら に平 成13 年8月 に は,地 元IT系 公 開 企 業 な ら び に 国 内 大 手VCか らの 投 資 も得 て,平 成13年9月 末 現 在 で 資 本 金7,500万 円,従 業 員7人 へ と成 長 した 。

(9)

大 学 発 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の研 究1 195

3大 学 発 ベ ンチ ャー の経 営課 題

(1)国 家 公 務 員 倫 理 規 定 法 と株 式 投 資

1980年 代 末 に 生 じた い わ ゆ る未 公 開 株 式 譲 渡 に関 わ る 「リ ク ル ー トコス モ ス事 件 」以 来,国 家 公 務 員 が 株 式 を購 入 す る こ とへ の不 信 感 は,〈大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 を 設 立 す る 上 で 欠 か せ ない 出 資 ・投 資 行 為 に 関 して,大 き な心 理 的 障 害 とな っ て い た 。

株 式 会 社 ジ ェ ネ テ ィ ック ラ ボ」 設 立 支 援 に 当 た っ て,CBCで は 「商 法 」 「 券 取 引 法 」 な らび に平 成12年3月 に 施 行 さ れ た 「国家 公 務 員 倫 理 規 定 法 」 を 詳 細 に分 析 した 結 果,〈 大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉 設 立 に あ た っ て,国 立 大 教 官 に よ る 出資 は 可 能 との 結 論 に達 した 。 な ぜ な らば,同 規 定 法 第3条 に 定 め る禁 止 行 為 の5は,「 利 害 関 係 者 か ら未 公 開 株 式(証 券 取 引 法(昭 和23年 法 律 第25号)第

2条 第11項 に規 定 す る証 券 取 引 所 に 上 場 さ れ て お らず,か つ,同 法 第75条 第1 項 の 店 頭 売 買 有 価 証 券 登 録 原 簿 に登 録 され て い な い株 式 を い う。)を 譲 り受 け る こ と。」 と 定 義 され て お り,会 社 設 立 後 の 未 公 開株 式 の購 入 が 明 確 に 禁 止 さ れ た 以 上,論 理 的 に設 立 前 出資 な らび に公 開 後 の 株 式 売 却 は禁 止 され て は い な い と判 断 し,出 資 者 リス トにつ い て も兼 業 承 認 申請 書 類 に 含 め 文 部 省 経 由 で 人 事 院 に提 出 した 。

同規 定 法 の 解 説 に よ る と,「 利 害 関 係 者 か らの 未 公 開 株 式 の 譲 り受 け は,無 償 の 場 合 に限 らず,有 償 の 場 合 で も禁 止 され る。」と説 明 し,そ の 理 由 と して,「 未 公 開株 式 は,一 般 の 者 に は 入 手 が 困 難 で あ り,通 常 値 上 が りが 予 想 さ れ る もの で あ る こ と か ら,未 公 開株 式 の 譲 渡 は,利 害 関 係 者 との 間 に,通 常 で は な い 関 係 が 存 在 す る もの と外 部 か らみ な され,当 該 職 員 の 職 務 の 執 行 の公 正 さ に対 す る疑 惑 や 不 信 を招 く行 為 で あ る た め,禁 止 さ れ て い る。」 と説 明 す る。つ ま り, 利 害 関 係 者(① 許 認 可 す る事 務,② 補 助 金 を 交 付 す る事 務,③ 立 入 検 査,④ 監 査 又 は 監 察 を す る事 務,⑤ 不 利 益 処 分 をす る事 務,⑥ 各 省 が 所 管 す る 事 務 の う

(10)

ち発 達,改 善 及 び 調 整 に 関 す る事 務,⑦ 国 の支 出 の 原 因 とな る契 約 に 関 す る事 務,⑧ 予 算,定 数,定 員 に 関 す る事 務(人 事 院,総 務 庁,大 蔵 省 の職 員 に 限 る)) か らの未 公 開 株 式 の 有 償 も し くは無 償 の 譲 渡 を 禁 じて い る の で あ る。

そ れ ゆ え,同 規 定 法 の 未 公 開株 式 の譲 渡 禁 止 条 項 の 背 景 に 〈利 害 関 係 者 との 不 透 明 な経 済 関 係 の排 除 〉 が 念 頭 に置 か れ て い る と理 解 さ れ る 。 そ も そ も,兼 業 取 締 役 の事 前 承 認 を 前 提 と して 新 た に 設 立 さ れ た く大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉 へ の 投

資 行 為 が,こ の よ うな 利 害 関係 者 と の不 透 明 な経 済 関 係 と無 関 係 で あ る 。

しか しな が ら,国 公 立 大 学 に お い て 生 ま れ た技 術 を 大 学 教 官 が,TLO等 の 組 織 を 経 由せ ず に,ス トック オ プ シ ョ ン等 に よ る株 式 入 手 交換 に技 術 供 与 を行 い, 後 に株 式 公 開 後 に 国家 公 務 員 現 職 の 状 態 で ス トック オ プ シ ョ ン行 使 を行 っ て キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン を得 た 場 合,若 干 の 危 惧 が 残 る。 なぜ な ら,技 術 供 与 を 受 け た 既 存 企 業 が,も し もそ の 教 官 との 共 同研 究 を前 提 と して 多 額 の 公 的 補 助 金 を受 け て技 術 の実 用 化 に成 功 した場 合,か つ 当 該 教 官 が 当 該 企 業 の 補 助 金 獲 得 に実 質 的 な 支 援 を行 え る立 場 に あ っ た 場 合,当 該 教 官 が 当 該 企 業 の 商 業 的 成 功 の 結 果 と して の キ ャ ピ タ ル ゲ イ ンを 受 け る こ とは,国 家 公 務 員 倫 理 規 定 に抵 触 し な い と して も,経 済 倫 理 面 で の 疑 問 が 残 る 。 さ らに,こ う した事 業 の 背 後 で 当 該 教 官 の 家 族 名 義 の 株 式 購 入 が な され て い た 場 合 や,当 該 企 業 の 資 本 ・役 員 会 が 同族 で 構 成 され て い た場 合 に は,さ ら に深 刻 な商 道 徳 倫 理 面 で の 疑 問 も残 る 。

以 上 の 点 か ら,北 海 道 に お い て 国 内 第1号 で あ る 〈国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャー 〉 の 企 業 設 立 を 支 援 す る 過 程 で,特 に 出 資 面 で 以 下 の4点 に留 意 した 。

a)兼 業 承 認 を前 提 と した,商 法 に合 致 した 新 しい株 式 会 社 設 立 を 目指 す b)既 存 法 人 か らの 出 資 は一 切 認 め ず,個 人 に よる 本 人 名 義 出 資 に 限 る c)民 聞 企 業 な どの役 員 ・従 業 員 な どが 出 資 す る場 合 に,そ の 合 計 出 資比 率

を厳 し く制 限 す る

d)会 社 設 立 後 の,設 立 出 資者 で は な い 国 公 立 大 教 官 お よ び民 聞 個 人 か らの

(11)

大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支援 シ ス テ ム の 研 究1 197 投 資 申 し出 を 断 っ た

こ の よ う に して,北 大 な らび に小 樽 商 科 大 の職 員 人 事 関 連 の 事 務 局,文 部 省(当 時)お よ び 人事 院 の きわ め て 建 設 的 で 熱 意 あ る 対 応 に よ っ て,国 内初 の 国 立 大 教 官 に よ る兼 業 承 認 を前 提 とす る く大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉 は,平 成12年8月11日 人 事 院 事 務 総 長 よ り文 部 事 務 次 官 宛 で 承 認 され,お よ そ2週 間 の 会 社 設 立 登 記 準 備 を 経 て 平 成12年9月1日 に札 幌 法 務 局 に て 法 人=登記 が 完 了 した。

会 社 設 立 後2ヶ 月 を経 て,当 初 の 資 本 金 は枯 渇 す る状 況 に 陥 り,速 や か に役 員 に よ る2000万 円 の 増 資 な らび に役 員 以 外 の株 主 へ の 同額 増 資 要 請 が,取 締 役 会 で 決 議 さ れ た 。 そ の 結 果,設 立 半 年 後 に あ た る平 成13年3月 に 地 域 系 独 立VC か らの 投 資 が 決 定 さ れ る まで の6ヶ 月 間 に お け る企 業 存 続 は 可 能 とな っ た。 つ ま り,企 業 設 立 後 に 当然 訪 れ る 資 金 シ ョー トに対 して,国 内 第1号 の 〈国 立 大 発 兼 業 型 ベ ンチ ャ ー〉 は,役 員 の 連 帯 債 務 保 証 に よ る銀 行 借 り入 れ とい う一 般 的 な 方 法 を 排 し,出 資 者 に よ る増 資 とい う方 法 を選 択 した 。 この 増 資 時 点 で は,す で に 設 立 出 資 者 で あ っ た 国 立 大 教 官 は く未 公 開株 式 の 購 入 〉で は な く,〈経 営 リス ク を負 う形 で の増 資 〉 とい う形 を選 択 し た。

(2)技 術 移 転 ビ ジ ネ ス と して の 〈TLO>と 大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉

国 立 大 学 か らの 組 織 的 な技 術 移 転 につ い て は,す で に平 成11年 よ り「承 認TLO」

機 関 を通 じ て 開 始 さ れ た と こ ろ だ が,一 度,研 究 者 個 人 がTLOに 技 術 を無 償 提 供 し,そ れ をTLO自 身 が 自 己 負 担 で 特 許 化 し て,最 後 に技 術 を求 め る民 間 企 業 にTLOの 保 有 す る 技 術 が 売 ら れ れ ば,〈 発 明 者 で あ る 大 学 教 官 個 入 〉

〈TLO>〈 大 学 〉で 収 益 を3等 分 す る とい うの がTLOの ビ ジ ネス モ デ ル で あ る 。

け れ ど も,こ の 方 式 を 十 分 機 能 させ る た め に は,米 国 で 観 察 さ れ る よ う に,豊 富 な 自前 ・外 部 財 源(学 内VCを 含 む)を 有 す る大 学(米 国 で は 少 数 の 有 力 研 究 型 私 立 大)に,以 下 に述 べ る6つ の く技 術 移 転 の再 循 環 イ ンフ ラ〉 を享 受 で

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き る環 境 が 必 要 で あ る。 す な わ ち,

a)大 学 理 事 会 は,特 許 化 で き る技 術 開 発 に積 極 的 な研 究 者 に対 して,大 学 の 予 算 施 設 お よ び人 的 資 源 を重 点 的 に配 分 す る

b)そ の 結 果,産 業 界 の求 め る特 許 が 大 学 内 で 次 々 と生 まれ る

c)こ う した特 許 を事 業 化 し よ う とす る学 内研 究 者 に,学 外VCは も と よ り

学 内VC>も 出資 す る

d)大 学研 究 者 は,こ れ らの技 術 の早 期 事 業 化 を 目指 す ベ ンチ ャ ー企 業 に積 極 的 に関 与 す る(設 立 最 低 資 本 金 は30万 円 程 度)

e)素 早 く株 式 公 開 し,投 資 者(大 学 も含 む),研 究 者,社 員 が ス ト ック オ プ シ ョン を行 使 して 株 式 を株 式 市 場 で 売 却 す る

f)最 後 に,キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン を得 た研 究 者 は 〈起 業 成 功 者 〉 と して再 び 大 学 に復 帰 し,後 進 を指 導 す る と と もに,自 ら保 有 す る キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン を く大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 に 再 投 資 す る

しか しなが ら,今 日,日 本 の 大 学 内 外 に,こ の よ うな起 業 イ ン フ ラが 存 在 した こ とは な く,こ れ か ら も多 くを期 待 す る こ と はで きな い 。 加 え て,地 方 の 国 立 大 学 が 抱 え る致 命 的 な 問 題 が 残 る 。 そ れ は,た と え素 晴 ら しい 「特 許 」 が 生 ま れ て も(こ れ ま で に も存 在 した),そ の 売 り込 み 先 が 地 方 に は存 在 しな い こ と で あ る 。 そ れ ゆ え,発 明 者 の 意 図 に 反 して,こ れ らの技 術 は大 学 の 存 在 す る 地 域 内 で 実 用 化 され る見 込 み は ほ とん ど無 く,首 都 圏 を 中心 とす る大 手 企 業 に安 く売 り渡 され,発 明 者 で あ る 教 官 の 日常 の活 動 領 域 外 で 大 手 企 業 に よ っ て技 術 は実 用 化 も し くは 企 業 内 で 死 蔵 さ れ て き た。

こ の よ うな 〈技 術 移 転 の 再 循 環 イ ン フ ラ の 欠 如 〉,お よ び く地 域 外 へ の技 術 放 出〉 とい っ た障 害 を乗 り越 え る た め に は,国 立 大 学 教 官 の 兼 業 役 員 に よ る く 学 発 ベ ンチ ャ ー〉 の 創 造 が 有 効 と考 え られ る。 な ぜ な ら,地 方 の 国 立 大 学 が 生 み 出 した 技 術 を発 明 者 自 身 が 事 業 化 す る 〈大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 は,大 学 周 辺 す な わ ち 地 域 内 部 に お け る技 術 集 積 を 図 れ る と同 時 に,地 域 外 の 顧 客 とな る首 都

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大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究1 199

圏 大 手 製 薬 企 業 や 海 外 企 業 に 対 して,〈 製 品 開 発 〉 の み な らず,受 託 ビ ジ ネ ス を通 じた く知 識 情 報 提 供 〉 が 可 能 とな るか らで あ る。

(3)大 学 教 官 に よ る兼 業 役 員 と経 営 責 任 体 制

兼 業 役 員(取 締 役 ・監 査 役)は,そ の 執 務 時 間 が1ヶ 月 に1回 度 程 度 開催 され る取締役 会 に,大 学の勤務 時問外 で参 加す るほか には役員 兼業が許 されてい な い 。 そ して,6ヶ 月(毎 年4月 と10月)ご とに前 期 に受 け取 っ た 役 員 報 酬 と執 務 時 間 は 人 事 院 ホ ー ム ペ ー ジで 公 開 され る。 こ う した 条 件 の 下,借 入 金 もな く 資 本 金 の み で,し か も3‑5年 間 に わ た っ て ほ とん ど売 上 もな く,研 究 開発 投 資 を続 け な け れ ば な らな いバ イ オベ ンチ ャー の経 営 は,大 変 困 難 で あ る 。

これ に対 し,役 員 兼 業 に先 立 ち平 成9年4月1日 か ら実 施 され た 「職 員 の 兼 業 の 承 認 お よび 許 可 の 手 続 き」の一 部 改 正 に よ っ て,い わ ゆ る国 家 公 務 員 法 第104 条 に定 め る 「営 利 企 業 の 事 業 に関 与 す る場 合 」 で,「(二)営 利 企 業 に お け る 研 究 開発(基 礎 研 究,応 用 研 究 及 び 開発 研 究 を い い,技 術 の 開 発 を含 む 。 以 下 同 じ。)に 従 事 し,又 は研 究 開 発 に 関 す る 技 術 指 導 に 従 事 す る場 合 」 は,審 査 の う え各 国 立 大 学 長 よ り許 可 され る よ う に な っ た 。

そ の 報 酬 に つ い て は 「社 会 通 念 上 合 理 的 な もの で あ る こ と」 と され,そ の 勤 務 時 間 につ い て は 「一 律 的 な兼 業 の 時 間 に よ る制 限 を 行 わず 」 と され て い る 。 ま た,期 間 に つ い て も 「許 可 又 は 承 認 を得 て 兼 業 の期 間 を更 新 す る こ と は差 し支 え な い 」 と され て い る 。

こ こで 同 法 第103条 と同 法 第104条 の違 い は,同 法 第103条 が 「役 員,顧 問 お よ び 評 議 員 」 を 対 象 と して い る の に対 して,同 法 第104条 は 「研 究 開発 に従 事 」 並 び に 「研 究 開 発 に 関 す る技 術 指 導 」 す る もの を い う。 そ れ ゆ え,平 成12年4 月 の 〈第103条 に 基 づ く役 員 兼 業 承 認 〉 以 前 に,平 成9年4月 時 点 で く第103条 に 基 づ くCTO(最 高 技 術 責 任 者)や 技 術 ア ドバ イ ザ ー の兼 業 は可 能 で あ っ た

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と解 す べ きで あ る 。 こ う した 状 況 は,予 想 さ れ る 国 立 大 学 の独 立 法 人 化 で も教 官 組 織 が 公 務 員 型 を選 択 す る 限 り大 きな 変 化 は な い だ ろ う 。

そ こ で,実 質 的 な研 究 成 果 を 有 す る若 手 教 官 は,新 た に く大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 が 計 画 され た 際 に,自 ら も小 口(大 ロ で も良 い)の 出 資 を行 う と共 に,大 学 の 発 明 委 員 会 か ら承 認 され た特 許 関 連 技 術 を,設 立 され た 〈大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 に提 供 しか つ く技 術 ア ドバ イ ザ ー〉 も し くは 〈CTO>に 自 ら就 任 し,大 学 で は難 しい 実 用 化 研 究 をVC等 か らの 直 接 投 資 で得 た 資 金 を用 い て 大 規 模 に行 う こ とが,こ れ か らの研 究 開 発 型 ベ ンチ ャー に望 まれ る。

そ う した 観 点 で は,今 後 は 商 法 で 規 定 され る設 立 時 の 役 員任 期 が 取 締 役 ・監 査 役 と もに1年 で あ る こ と に 着 目 して,設 立 時 に 自 ら役 員 と して 兼 業 承 認 を受 け

大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 を設 立 す るが,実 質 的 に そ の 期 間 を準 備 期 間 とみ な して オ フ ィ ス を持 つ 他 は,実 質 的 な 投 資 活 動 を1年 間 行 わ な い ベ ンチ ャ ー戦 略 も考 え ら れ る 。 そ して,そ の1年 間 に2期 目 以 降 に 会 社 の 経 営 を 託 せ る 有 能 な CEO,COO,CFOを ス カ ウ ト し,商 法 の 定 め る2期 目か ら の役 員 選 任 にお い て,自 らは 非 役 員 で あ る 〈創 業 者(兼)CTO(技 術 最 高 責 任 者)〉 に就 任 し, 他 は民 聞 人 を充 て る こ とが 考 え られ る 。 こ の場 合,本 人 は役 員 で は な い た め経 営 を 直 接 コ ン トロー ル す る こ と は 出 来 な い が,株 式 の 比 率 を経 営 権 を有 す る 51%以 上,も し くは取 締 役 会 で の 決 定 に拒 否権 を有 す る34%以 上 とす る こ とで, 実 質 的 な 経 営 権 を確 保 で きる 。

4大 学 発 ベ ン チ ャー と地 域 経 済

大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 を 地 域 新 産 業 の 先 端 モ デ ル と して と ら え た場 合,地 域 経 済 に お い て,そ の 存 在 は 新 た な色 彩 を帯 び る 。 なぜ な らば,海 外 や 国 内 に情 報 発 信 す る だ け の 高 い 技 術 力 を有 す る 大 手 企 業 が 全 く存 在 せ ず,理 工 系 学 部 ・大 学 院修 了 者 の域 外 流 出 が続 く地 域 経 済 社 会 に お い て,ハ イ テ ク型 ベ ンチ ャ ー の 象 徴 と もい え る く大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 の 創 造 は,地 域 の 人 々 と国 内 産 業 に とっ

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大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究1 20ヱ て きわ め て大 き な ア ナ ウ ンス 効 果 を もつ か らで あ る。

(1)新 た な地 域 産 業 ク ラ ス タ ーの 形 成

札 幌 市 内 に お い て は,国 立 の 北 海 道 大 学 医 学 研 究 科 と道 立 の 札 幌 医科 大 学 は, 車 で10分 ほ どの 距 離 で近 接 して お り,研 究 者 や教 官 の交 流 も盛 ん で あ る。ま た, CBCの 支援 に よ り北 大 教 官 らが 設 立 した2つ の く大 学 発 ベ ンチ ャー 〉で あ る 「 式 会 社 ジ ェ ネ テ ィ ッ ク ラ ボ 」 と 「株 式 会 社 ジ ー ンテ ク ノ サ イエ ンス 」 は,北 大 医 学 部 附 属 病 院 の 道 路 を挟 ん だ 向 か い の 同一 の 商 用 ビ ル に 本 社 オ フ ィス を構 え て い る 。

そ の結 果,北 大 医 学 研 究 科 に 隣接 す る地 域 に2社 が 立 地 して い る こ と に な る が, こ れ は 「札 幌BizCafe」 に 代 表 され るIT・ ソ フ ト系 企 業200社 が ひ しめ く札 幌 駅 北 口 か ら北 大 東 側 エ リア にか け て の い わ ゆ る 「サ ッポ ロバ レー」 に お い て, 新 た な バ イ オ軸 創 出 の 端 緒 と な る こ とが 地 元 で 期 待 され て い る。 もち ろ ん,一 般 商 用 オ フ ィス で 間 に合 うIT系 と異 な り,バ イ オ 系 は ウエ ッ トラ ボ を 必 要 と す る。 そ れ は一 般 的 な商 業 地 域 に な じ まず,か つ 通 行 車 両 の 行 き交 う振 動 の激

しい地 域 も ま っ た く不 適 で あ る。 そ の た め,や が て 近 い 将 来 に は,市 郊 外 に設 け られ る で あ ろ う大 規 模 な バ イ オ イ ン キ ュベ ー シ ョ ン施 設 に こ れ らの 企 業 は集 中 的 に 立 地 が 進 む もの と考 え られ る 。

こ の よ う なバ イ オ系 企 業 の 集 中 立 地 は,や が て 産 業 ク ラ ス ター の形 成 に 向 か う と予 想 され る。 な ぜ な らば,北 大 だ け で 農 ・理 ・医 ・工 ・歯 ・薬 ・獣 医 学 部 と 大 学 院,独 立 研 究 セ ン タ ー な ど に3000名 近 い研 究 者 が 在 籍 し,車 で10分 圏 内 に 最 新 設 備 を もつ 優 れ た 「札 幌 市 立 病 院 」 お よ び 「札 幌 医科 大 学 」 が存 在 す る こ とか ら,限 定 され た 地 域 内 にお け る バ イ オ系 の研 究 者 お よ び博 士 修 了 者 の 分 布 密 度 は 国 内 最 上 位 に あ る。 「サ ッポ ロバ レー」 が 得 意 とす るIT系 ベ ンチ ャー に加 え,こ れ らの 大 学 研 究 者 が 設 立 に 関 与 す る バ イ オ系 の 〈大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉

群 が100社(現 在 の 国 内 ニ ュー バ イ オ ベ ン チ ャー 数)に 達 した 段 階 で,米 国 シ

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リ コ ンバ レー に も劣 らな い バ イ オ ク ラス タ ー が 形 成 さ れ た と見 な して 良 い だ ろ う。

筆 者 の 個 人 的見 解 で は,1年 に10社 の 割 合 で 〈大 学 発 ベ ンチ ャ ー〉 が 今 後10年 間 に わ た っ て継 続 的 に札 幌 な ら び に 道 内 各 地 で 誕 生 す れ ば,将 来,ア ジ アで も 最 も成 長 す るハ イ テ ク産 業 地 域 が 生 まれ る と予 想 して い る 。

(2)地 域 に お け る 唯 一 の 高 度 技 術 蓄 積

首 都 圏 か ら離 れ た 地 域 に お い て,首 都 圏 の 大 手 企 業 を顧 客 に し う る高 度 な 技 術 蓄 積 が,そ の潜 在 力 も含 め て な され て い る唯 一 の組 織 体 が 〈国 立 大 学 〉 お よ び

公 立 医科 大 学 〉 で あ る。

これ らの 大 学 は,従 来 〈サ イ エ ンス 〉 に 重 き を な し国 内 外 学 会 へ の 論 文 投 稿 競 争 に終 始 して き た。 と こ ろ が,1990年 代 に 入 っ て米 ソの 冷 戦 構 造 が 終 焉 す る と と も に,特 に 米 国 は そ れ まで の 西 側 同 盟 国 に 対 して,〈 軍 事 優 位 〉 の 姿 勢 か ら 一 転 して 〈技 術 優 位 〉 の 立 場 を 明 確 に し

,自 国 で生 まれ た 知 的 資 源 を財 産 化 す る た め の 「プ ロパ テ ン ト戦 略 」 を 行 使 す る よ う に な っ た 。 最 近,日 本 の理 化 学 研 究 所 の研 究 員 が 滞 米 中 の 研 究 機 密 持 ち 出 しで 米 国側 よ り告 訴 され,日 本 人 が 考 え て い る 以 上 に事 態 は 深 刻 化 して い る。

一 度 学 会 な どで 発 表 した 論 文 は特 許 出 願 権 を 失 っ て し まい,結 局 自国 で 開発 さ れ た 貴 重 な サ イエ ンス と して の研 究 成 果 が,自 国 の 国 民 の 健 康 を守 る医 薬 品 等 の 産 業 化 が 出 来 な くな っ て しま う恐 れ が 現 実 に生 じて い る。 こ う した く科 学 の 産 業 化 〉に対 して,米 国 で は どの よ う な対 応 策 が 採 られ て い るか とい え ば,1980 年 に成 立 した 「ベ イ ・ドー ル 法(Bayh‑DoleAct)」 が 有 名 で あ る 。 こ の 法 律 に よ って,米 国 の 大 学 や 企 業 は,連 邦 政 府 の 開 発 資 金 を 得 て 開発 した研 究 成 果 の所 有 権 とラ イ セ ン ス の 交 付 権 を得 た 。 こ れ を一 部 取 り入 れ た もの が 我 が 国 で 2000年4月 に 施 行 さ れ た 「産 業 技 術 力 強 化 法 」 で あ る。

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大 学 発 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究1 203 日本 政 策投 資 銀 行 の 報 告 書 『大 学 に よ る ベ ンチ ャ ー ビ ジ ネ ス と地 域 開 発 一米 国 の 大 学 に お け る 新 規 起 業 と地 域 連 携 の 具 体 例 一』(2000年9月LA‑26国 際 部 駐 在 員 報 告 のP.5)は,ベ イ ・ ドー ル 法 に 関 して 以 下 の通 り説 明 す る 。

法 の意 図 す る と ころ は,大 学 の よ うな 非 営 利 組 織 が 産 み 出 した技 術 に,特 許 権,販 売,ラ イ セ ンス を与 え る 等 の 活 動 を認 め る こ と に よ り,国 家 資 金 を投 入 した 発 明 や創 造 的 ア イ デ ア の 商 業 化 を促 進 す る こ とで あ っ た。 更 に,こ れ ら大 学 等 の 組 織 は技 術 か らの ラ イ セ ス 収 入 を 自 己 の 収 入 と す る権 限 が 与 え ら れ た が,但 し交 換 条 件 と して,政 府 に 対 して は 無 料 で技 術 の 使 用 を認 め る こ とが 義 務 付 け られ て い る。 な お,こ の 法 律 の定 め る条 件 や ガ イ ドラ イ ンで 注 目さ れ る

点 は,特 に 中 小 企 業 に優 先 権 を 与 え る こ と を義 務 付 け て い る こ とで あ る。

上 記 の法 律 成 立 に 呼応 し,主 要 大 学 で は 教 授 や 研 究 者 を対 象 に した 新 しい 知 的財 産 に 関 す る方 針 や 基 準 を設 け た 。 また 主 要 大 学 で は,1980年 代 初 め に技 術 の特 許 と ラ イ セ ン シ ン グ を取 り扱 う技 術 移 転 局(OTT:OfficeisofTechnolo‑

gyTranfer)を 設 立 した 。」

そ の 後,特 許 収 入 だ け で1999年 に 第1位 の コ ロ ン ビア 大 学 は,9580万 ドル(約 115億 円)に 達 した と報 告 さ れ て い る。 も っ と も こ れ は1980年 の ベ イ ・ ドー ル 法 の 施 行 か らお よ そ20年 を 経 た 数 字 で あ り,「 産 業 技 術 力 強 化 法 」 が 日本 に お い て も施 行 され た のが 昨 年 で あ る た め,日 本 の 大 学 が 実 績 を上 げ 出 す に は少 な く と も10年 を 要 す る もの と見 られ る。 しか し なが ら,昨 年 の ゲ ノ ム 情 報 解 読 宣 言 以 降,世 界 の 遺 伝 子 関 連 ビ ジ ネ ス は急 速 に成 果 を 上 げ だ して お り,お よ そ3

‑5年 間 で お お か た の 遺伝 子 病 に 関 す る重 要 情 報 の 知 的 財 産 権 は取 得 さ れ る と 考 え ら れ る 。

こ う し た状 況 にあ っ て,先 述 した 通 り,大 手 の 製 薬 企 業 や 研 究 所 組 織 も存 在 し な い 地 域 に お い て,世 界 的 なバ イ オ の 技 術 開 発 をす す め る た め の 唯 一 の 拠 点 と

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も い うべ き存 在 は,地 方 の 国 公 立 大 学 で あ る。 な ぜ な らば,大 学 と い う く知 の 拠 点 〉 は,国 民 の健 康 を 国 内 大 学 の 研 究 者 に よ っ て 開 発 さ れ た技 術 で守 る と同 時 に,自 らの 意 志 と努 力 に よっ て 自 らの研 究 フ ロ ンテ ィ ア を拡 げ て ゆ か ね ば な ら ない か らで あ る。 も はや,欧 米 の 研 究 の 追 試 実 験 して い る 時代 は終 わ っ た 。 大 手 企 業 も 中 央 研 究 所 も存 在 し な い 地 域 で あ る か ら こそ,地 方 の 国 公 立 大 は

科 学 の 産 業 化 〉 に 貢 献 し,そ の 具 体 的 な 手 法 と して 〈大 学 発 ベ ンチ ャ ー 〉 の 創 造 が,納 税 者 で あ る国 民 か ら求 め られ て い る。

(3)地 域 ベ ンチ ャ ー へ の 投 資 活 性 化

平 成11年8月 に設 立 され た 北 海 道 ベ ンチ ャー キ ャ ピ タル 株 式 会 社(本 社 札 幌 市) は,日 本 国 内 で は 初 め て の 地 域 系 独 立VCで あ る 。「投 資 事 業 有 限 責 任 組 合 法 」 に基 づ き北 海 道 で は じめ て の地 域 密 着 型 投 資 フ ァ ン ド 「ホ ワ イ トス ノ ー 第 一 号 投 資 事 業 有 限 責 任 組 合(基 金8.6億 円)」 を運 用 して い る。 そ の ホ ー ム ペ ー ジ (www.hokkaido‑vc.com/jp/)に お い て,同 フ ァ ン ドを 設 計 した北 海 道 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル 株 式 会 社 常 務 取 締 役 の 松 田 一 敬 氏(MBA,本 学 修 士)は,会 社 設 立 経 緯 を 以 下 の 通 り説 明 す る 。

ベ ンチ ャ ー ビ ジ ネ スへ の 資 金 供 給 と して は,本 来 リス クキ ャ ピ タル が 対 応 す るべ き と い う考 え方 が あ ります 。 この リス クキ ャ ピ タル の 担 い 手 は ビ ジ ネ ス エ ンジ ェ ル で あ り,ベ ンチ ャー キ ャ ピ タル で す 。 しか し リス ク キ ャ ピ タ ル供 給 の 主 役 で あ るベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル と して は,道 内 に ジ ャ フ コ,日 本 ア ジ ア投 資 加 え て 昨 年7月 に設 立 され た 北 洋 銀 行 系 の 北 洋 イ ンベ ス トメ ン トの3つ しか存 在 せ ず,主 に 道 内 企 業 も し くは北 海 道 に拠 点 をお く企 業 に 限 定 して投 資 す る 道 産 子 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タル は1つ もあ りませ ん 。 地 域 経 済 の 発 展 とベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 数 に は相 関 関 係 が あ る とい う学 説 も あ り,地 域 新 興 の観 点 か ら も 地 域 密 着 型 ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 誕 生 が 切 望 され て い ま した 。

そ こで,わ れ わ れ は こ う した 状 況 打 破 を め ざ し,道 内 に 地 域 密 着 型 の ベ ンチ

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大 学 発 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究1 205 ヤ ー キ ャ ピ タル を設 立 し ま した。 この ベ ンチ ャー キ ャ ピ タ ル を通 じて フ ァ ン ド を 調 達 し,有 望 な ベ ンチ ャ ー ビ ジ ネ ス を 発 掘 し,投 資 し,〈 事 業 を育 て る〉 と い う役 割 を果 た し なが ら,投 資 先 企 業 の 世 界 市 場 にお け る発 展 を 目指 し,尽 力

して い きた い と考 え て い る の で す 。」

従 来型 の 企 業 フ ァ イ ナ ンス は,担 保 を前 提 と して,日 々 の 元 利 金 返 済 をベ ー ス と して 短 期(1年 未 満)お よ び長 期(1年 以 上)の 融 資 を 行 う 〈間接 金 融 〉 を 銀 行 が 行 っ て きた 。 しか しな が ら,1000万 円程 度 の 少 額 な 資 金 で 開 始 して,3

‑5年 間 に わ た り研 究 開発 が 主 で 日々 の 売 り上 げ の め どが 立 た な い バ イ オ ベ ン チ ャ ー で は,月 々 の 元 利 金 返 済 な ど も と よ り不 可 能 で あ る。こ う した ベ ンチ ャ ー に対 して,大 胆 に して細 心 な る投 資 を実 行 し,そ の 知 的財 産 権 を大 手 の 製 薬 企 業 な どに研 究 受 託 形 式 で売 り込 み,や が て 株 式 公 開 まで 支 援 す るVCの 登 場 が, 特 に地 域 にお い て 渇 望 さ れ て い た。

こ う した 〈直 接 金 融 〉 が 地域 にお い て 発 展 す る た め に は,必 要 条 件 と して 大 手 企 業 か らの 研 究 受 託 を受 け られ る ほ どの 優 れ た研 究 能 力 と技 術 開発 力 を有 す る ベ ンチ ャー 企 業 が 必 要 で あ る。 そ の研 究 基 盤 が 〈大 学 〉 で あ り,技 術 開 発 力 が

大 学 発 ベ ンチ ャー 〉 とい え よ う。 ま た,十 分 条 件 と して は,そ れ らのVCに お い て投 資 を決 定 す る くキ ャ ピ タ リス ト〉 と呼 ば れ る技 術 の 目利 きが 必 要 で あ

り,自 ら事 業 の 採 算 性 を 計 算 してCFOと して ベ ンチ ャ ー 企 業 の 経 営 に 参 画 す る と と も に,大 手 の 企 業 に ベ ンチ ャー 企 業 の技 術 を売 り込 め る だ け の 戦 略 的 な 交 渉 能 力 を有 す る 入 物 で な くて は な ら な い。 これ を単 純 化 し理 想 化 す る と,こ の 種 の キ ャ ピ タ リス トに はMBAと 生 化 学 分 野 に お け るPhDの 両 方 を取 得 済 み で,か つ フ ァイ ナ ンス 企 業 で10年 近 い 実 務 経 験 が 求 め られ る。

米 国 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル に は,平 均 し て10%近 い 生 化 学 や 医 学 分 野 のPhD取 得 者 が 学 生 お よび教 官 と して 存 在 す る が,日 本 国 内 で は これ に相 当す る 人 材 は ほ とん ど存 在 しな い 。 しか しな が ら,希 望 が な い わ けで な い 。 す で に 一 流 の 大

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学(主 に 法 学 部)を 卒 業 し,一 流 の 金 融 機 関 で 働 き なが ら,社 内 で そ の実 力 を 100%発 揮 で きず にい る優 れ た ビ ジ ネ ス マ ン は少 なか らず 存 在 す る。 この よ う な 人 材 に,一 つ は ア ン ト レプ レナ ー(起 業 家)教 育 を施 す こ と と,二 つ は 生化 学 に関 す る基 礎 的 な 実験 お よ び理 論 の 教 育 を行 う こ とで,優iれ た 素 質 を有 す る 人 材 で あ れ ば2年 程 度 の 教 育 で有 能 なベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ リス トや バ イ オ ベ ン チ ャー のCFOと して 活 躍 で き る こ とが,小 樽 商 科 大 の社 会 人 大 学 院 プ ロ プ ラ ム に お け る教 育 成 果 か ら確 認 さ れ て い る。

そ れ ゆ え に,〈 大 学 発 ベ ンチ ャ ー 〉 を 地 域 に創 造 す る こ と は,単 にベ ンチ ャー ビ ジ ネ ス を活 性 化 し て地 域 の 開 業 率 や 有 効 求 人 倍 率 を高 め るの み な らず,

a)国 営 貯 蓄 銀 行 な どに埋 もれ死 蔵 さ れ て い る 国 内貯 蓄 を,新 産 業 の 端 緒 と な りう るベ ンチ ャ ー投 資 機 会 に 向 か わ しめ る,

b)日 本 経 済 の 再 生 に不 可 欠 な構 造 改 革 過 程 で,不 可 避 的 に金 融 機 関 や 大 手 メ ー カー か ら流 出せ ざ る を得 な い 有 能 な 人材 に対 す る,自 己学 習 と再 就 職 の 機 会 を創 出 す る,

c)有 能 な ポ ス ト ドク タ研 究 者 に,大 学 と共 同研 究 をす す め なが ら優 れ た 技 術 開 発 を行 え る雇 用 機 会 を創 出す る,

こ と に対 して 貢 献 す る,大 きな 可 能 性 を秘 め て い る。

5大 学 発 ベ ン チ ャ ー と イ ノ ベ ー シ ョ ン

日本 経 済 は,そ の 社 会 的 組 織 構 造 も含 め て イ ノベ ー シ ョ ンの停 滞 な い し不 足 に 苦 し ん で い る。 国民 一 人 あ た りで 世 界 最 高 水 準 の貯 蓄 と識 字 率 を誇 り,農 業 お よ び工 業 の 生 産 技 術 も他 国 の 追 従 を許 さな い レベ ル に あ る。 に もか か わ らず, 過 度 な く円 高 〉 は 国 内 製 造 業 の 国 際 競 争 力 を見 か け 上 失 わせ せ しめ 空 洞 化 が 進 み,国 際 競 争 力 の ほ とん ど な い 金 融 サ ー ビス 業 に お け る弱 体 化 が さ らに 日本 企 業 の 国 際 競 争 力 を弱 め て い る。 また,非 常 識 と もい え る官 業 ビ ジ ネス の市 場 占 有 は本 来 の 民 業 の 市 場 にお け る 収 益 性 を極 端 に薄 め て い る。

(21)

大 学 発 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究1 207 この よ う な 問 題 の 根 元 と して,筆 者 は 日本 社 会 にお け る 〈イ ノベ ー シ ョン の枯 渇 〉 にあ る と見 て い る 。 な ぜ な ら,旧 くな っ た 社 会 シ ス テ ム を創 造 的 に破 壊 し

て,新 し い社 会 シス テ ム に 更 新 して ゆ こ う とす る意 欲 や 力 が,国 内 に お い て急 速 に 減 退 して い るか らで あ る。 そ れ で は ど うす れ ば,日 本 は 幕 末 や 太 平 洋 戦 争 の敗 戦 後 に見 られ た 劇 的 な 国 の 再 生=社 会 の イ ノベ ー シ ョ ン を再 現 で き るで あ ろ う か?

(1)仮 説:3段 階 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・モ デ ル

カ ー ル ・マ ル ク ス は,社 会 の 上 部 構 造 を規 定 す る もの が 下 部 構 造 と して の 生 産 様 式 に あ る と,彼 の 主 著 『剰 余価 値 学 説 史 』 な らび に 『資 本 論』 で 詳 細 に 分 析 し た。 この 定 義 に従 え ば,社 会 的 イ ノ ベ ー シ ョ ンが枯 渇 気 味 な 上 部 構 造 を規 定 す る,社 会 の 下 部 構 造 にお け る 生 産 様 式 の く技 術 イ ノベ ー シ ョン〉 が 不 可 欠 と 考 え られ る。 そ こ で 筆 者 は,〈 技 術 イ ノ ベ ー シ ョ ン〉 を3つ の 段 階 に分 類 し, そ れ ぞ れ の 過 程 を 支 え る く主 体 〉 と 〈成 果 物 〉 お よ び移 行 過 程 にお け る エ ン ジ

ン と な るべ き 〈精 神 〉 の モ デ ル化 を,図 表 一2で 試 み た。

研 究 段 階 イ ノベ ー シ ョ ン 何 に 使 え るか わ か らな い

開 発 段 階 イ ノ ベ ー シ ョ ン 何 に使 え る か わ か る

生 産段 階 イノ ベ ー シ ョン 低 コ ス ト&高 品 質 を追 求

成果物

兼 業 型 ベ ン チ ャー

製 造 ノ ウハ ウ ア ウ トソ ー シ ン グ

レ 大 手 企 業 及び中堅企業 学 術 発 表

学 術 論 文

国公立大学 国立研究所 大手企業中央研究所 電力 ・NTT等 の研究所

レ 特 許 出 願 技 術 移 転

大手企業技術研 究所

開 発 型 ベ ンチ ャー

競争者 先進国の大学 ・研究機 関

米 国 等 の ハ イ テ ク 型 ベ ン

チ ャー

中 国 ・韓 国 ・台 湾 等 の ア ジ アの 中進 国

1起 業 家精 神 車1企 業 家精神

(ブ リ ッ ジ のエ ン ジ ン)

科 学 技 術 立 国 と し ての 国民 的 コ ンセ ンサ ス<

図 表 一23段 階 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・モ デ ル

参照

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