平 成 2 6 年 度 修 士 論 文
超音波生体画像化におけ る周波数依存減衰 によ る画質劣化の改善
シ ス テ ムデザイ ン研究科 情報通信 シス テ ム学域
平岡 拓也
指導教員 田川憲男 教授
第
1章 序論
1.1
本研究の背景 と 目的
1.2本論文の構成 第
2章 本研究の関連知識
2.1
超音波診断法
2.1.1
超音波診断法の特徴
2.1 .2
超音波診断装置の構成
2.1.3
超音波画像の表示方法
2.1.4
画像の分解能
2.1 .5
超音波画像のア ーチ フ ァ ク ト
2.2
生体高調波画像化法
2.2.1 THIの発生原理
2.2.2 THI
の利点と欠点
2.3
パルス圧縮法
2.3.1
パルス圧縮法の概要
2.3.2
リ ニ ア
FMチ ヤー プ
第
3 章 提案手法3.1
提案手法の概要
3.2探触子の特性補償
3.2.1
探触子の特性補償
3.2 .2
高調波帯におけ る探触子の特性補償
3.3 FDA
補償手法
3.3.1
基本的な考え方
3.3.2
基本波に対す る
FDA補償手法
3.3.3
高調波に対する
FDA補償手法
1
3 4 4 4 5 7 8 9 11 11 12 14 14 14 19 19 19 19 20 21 21 21 21
l l
3.3.4
受信信号を增幅 させ る手法
3.3.5 FDA
の定義
第
4章 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
4.1
基本波帯 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
4.1 .1
探触子の特性補償
4.1.2 FDA
補償
4.2
高調波帯 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
4.2.1
探触子の特性補償
4.2.2 FDA
補償
4.3画像化によ る評価
4.3.1
画像化準備
4.3.2
画像化結果
第
5 章 実験5.1
実験準備
5.2 FDA
補償実験
第
6章 結論
6.1
本研究の総括 と 今後の研究課題 謝辞
参考文献
本研究に関す る研究業績
23 25 26 26 26 28 32 32 34 39 39 40 41 41 43 47 47 48 49 50
図 目 次
2.1
探触子の構成
2.2 A
モ ー ド およ び
Bモ ー ドの概念図
. . . . 2.3多重反射の概念図
. . . . 2.4サイ ド ロ ーブの概念図
. . . . 2.5非線形音響媒質中の伝搬によ る高調波の発生
. . . . 2.6基本波 と 高調波の ビーム幅
. . . . 2.7矩形窓 をかけ たチ ヤープ信号の例
. . . . 2.8ハ ミ ング窓 をかけたチ ヤープ信号の例
. . . . 2.9矩形窓 をかけ たチ ヤー プ信号の圧縮波形 と エ ンベロ ー プ
2.10
ハ ミ ン グ窓 を かけ たチ ヤー プ信号の圧縮波形 と エ ンベロ ー プ
3.1 RFDA(
ω
) (破線)と 、
R FDA(ω)l (実線) , (a)線形近似, (b) 曲線近似
. . . 3.2 F DAを受け た エ コ ー信号
. . . . 3.3 F D Aに よ る低下 を増幅 し た信号
. . . . 3.4補償信号に対す る エ コ ー信号
. . . . 3.5圧縮検波波形の比較
FDAを受けたエ コ ー信号
(点線), FDAによ る低下を
増幅 し た信号
(破線),補償信号に対するエ コ ー信号
(実線) . . . . 4.1探触子の特性補償のための シ ミ ュ レ ー シ ョ ンモ デル
. . . . 4.2探触子の特性補償前の信号
: (a)任意の
FMチ ヤー プ送信信号
f l ( t) , (b)エ コ ー信号
gl( t) . . . . 4.3探触子の特性補償後の信号
: (a)探触子の特性補償送信信号
s,( t) , (b)エ コ ー信号
. . . . . . . . 4.4 F D A補 償の ため の シ ミ ュ レ ー シ ョ ンモ デル
. . . .4.5 FDA
の影響 を受けたエ コ ー信号
: ( a)時間波形
, (b)周波数領域の振幅ス
ペク ト ル
(実線
)と理想的な振幅スペク ト ル
(破線
) . . . . 4.6 RFDA(ω
) (破線
)と
l RFDA(ω
)l (実線
) : (a)線形近似
, (b)曲線近似
. .6 8 10 10 11 13 17 17 18 18 22 24 24 24
25 26
27 27 28 29 29
iv
4.7
補償後のエ コ ー信号
: (a)線形補償後のエ コ ー信号
, (b) (a) の周波数領域におけ る振幅スペ ク ト ル
(実線)と理想的な振幅スペ ク ト ル
(破線) , (c) 曲 線補償後のエ コ ー信号
, ( d) (c) の周波数領域におけ る振幅スペ ク ト ル(実 線
) と理想的な振幅スペク トル(破線) . . . 30 4.8圧縮検波波形
: ( a)補償前のエ コ ー信号
(点線)と線形補償後のエ コ ー信号
(実線) , . . . 31 4.9
探触子の特性補償前の信号
: (a)任意のFM チヤー プ信号
f , (t), (b)エ コ ー
信号g2(t) . . . 33
4.10探触子の特性補償後の信号
: (a)探触子の特性補償送信信号
s2( t), (b)エ
コ ー信号
. . . . . . . . . . . . . .4.11 FDA
の影響 を受けたエ コ ー信号
: (a) 第二高調波 , (b)周波数領域の振幅
スペ ク ト ル
(実線)と理想的な振幅スペク ト ル
(破線) . . . . 4.12 RFDA2(ω
) (破線
)と 、
R FDA2(ω、
) (実線
) : (a)線形近似
, (b)曲線近似
.4.13
補償後のエ コ ー信号
: (a)線形補償後のエ コ ー信号
, (b)曲線補償後のエ
コ ー信号
, (c) (a) の第二高調波 , (d) (b) の第二高調波 , (e) (c) の周波数領域の振幅スペ ク ト ル
(実線)と理想的な振幅スペク ト ル
(破線) , (f) (d)の周波数領域の振幅スペ ク ト ル
(実線
)と 理想的 な振幅スペ ク ト ル
(破線
) .4.14
圧縮検波波形
: ( a)補償前のエ コー信号
(点線)と線形補償後のエ コ ー信号
(実線), . . . .
4.15
画像化 のた め の シ ミ ュ レ ー シ ョ ンモ デル
. . . . 4.16 Bモ ー ド 画像
: (a)補償前の基本波, (a) 曲線補償後の基本波,
. . . . . 5.1実験 モ デル
. . . . 5.2使用 し た探触子
. . . . 5.3任意の
FMチ ヤー プ信号
. . . .5.4 FDA
の影響を受けたエ コ ー信号
: (a)時間波形
, (b)周波数領域の振幅ス
ペク ト ル
(実線)と理想的な振幅スペク ト ル
(破線) . . . . 5.5 FDAの影響を受けたエ コー信号
: (a)図
5.4(a) の第二高調波, (b)周波数 領域の振幅スペ ク ト ル
(実線
)と理想的な振幅スペ ク ト ル
(破線
) . . . . 5.6 RFDA2(ω
) (破線
)と
I ii FI)A2(ω
)l (実線
) . . . . 5.7補償後のエ コ ー信号
: ( a)曲線補償後のエ コ ー信号
, (b )周波数領域の振
幅スペク ト ル
(実線)と理想的な振幅スペク ト ル
(破線) . . . . 5.8補償後のエ コ ー信号
: (a)図
5.7(a) の第二高調波 , (b)周波数領域の振幅 スペク ト ル
(実線)と理想的な振幅スペク ト ル
(破線) . . . .33
35 35
36 37 39 40 41 42 43
44
44 45
45 45
5.9
圧縮検波波形
: ( a)補償前の基本波エ コ ー信号
(点線)と 曲線補償後の基本 波エ コ ー信号
(実線) , (b)補償前の第二高調波 エ コ ー信号
(点線) と 曲線補
償後の第二高調波エ コ ー信号
(実線)
46第 1 章 序論
1.1 本研究の背景と 目的
近年, 高齢化や医療技術の高度化等に伴い超音波診断の需要が高ま っ て きて い る. 超音 波診断には
,被曝の恐れがな く
,実時間で画像診断が行え る と い う 利点があ る一方で
,他 の生体内の画像化法, 例えば
X線
C TやM R I な ど と比較 し て低画質で ある. そこ で本研 究で は, 生体内
,特 に生体深部に おけ る超音波画像の高画質化 を目的 と し て い る
.超音 波画像の高画質化のためには, パルス圧縮技術
(Pulse Compression Technique: P C T )が有効で あ る
. P C Tでは, 送信信号と の相関処理によ っ て受信エ コ ー信号の時間圧縮を 行 う. 圧縮後の信号の時間波形は, 送信信号の帯域幅に逆比例 し て細 く な る ため
,帯域幅 を広げ る こ と で距離分解能が向上す る
.さ ら に
P C Tに おい て継続時間の長い信号を用 い る こ と で信号対雑音比
(Signal to Noise Ratio: S N R )を高める こ と がで き る. そこ で本研究では, 広帯域かつ継続時間の長い
F Mチ ヤー プ信号を送信信号と し て採用す る.
一方, 別の高分解能化手法と し て生体高調波画像化法
( Tissue Harmonic Imaging: T H I )が挙げ ら れる. T H I と は, 音響的非線形性 を有す る生体組織 を超音波が伝搬す る際 に逐次的 に生 じ る高調波成分 を利用 し て画像化 を行 う 手法で あ る
.高調波は高次に な る に つれて急激に振幅が減少す るため, 二次高調波 を用い るのが一般的 で あ る
. T H Iの利点 と し て以下が挙げ ら れ る
. ( 1 )二次高調波の帯域幅は
,基本波成分の約
2倍で あ るため
,距離分解能が向上す る
. ( 2 )非線形性によ る高調波の発生は音圧の高い ビームの中心近
く に制限 さ れる ため
,ビーム幅が狭 く な り 方位分解能が向上す る
. ( 3 )多重反射や送信 波のサイ ド ロ ー ブは音圧が低いため
,高調波は発生 し づ ら く
,ゆえ に それ ら に よ る ア ーチ フ ァ ク ト が軽減 さ れる
. T H Iに
P C Tを適用す る こ と で
,分解能 と
S N Rの向上が期 待で き る. し かし
,高調波の利用は周波数依存減衰
(Frequency Dependent A t tenuat ion:F D A )
の影響 を受けやす く な る. F D A と は生体内 を伝搬す る超音波信号の周波数が高
く な る につれて大 き く な る減衰特性のこ と で あ る
.広帯域 な信 号や, 二次高調波 な どの高
周波成分を持つ信号を送受信する際に, F D A は強 く 影響す る. F D A によ るエ コ ー波形
の歪みは, P C T の圧縮特性 を著 し く 低下 させ, その結果
,画質劣化が生 じ る. 先行研究
で は既 に
, S N Rを低下 させ る こ と な く
F D Aによ っ て生 じ る基本波エ コ ーの歪みを軽減
す る
F D A補償手法を提案 し てい る
.こ の手法は
,エ コ ー信号が
F D Aによ る歪みを受け た上で
,歪みのない理想的 な信号にな るよ う に送信
F Mチ ヤー プ信号を適切に変調す る と い う も ので あ る
.本研究で はまず, こ れまでの検討に比べよ り 生体に近い条件での シ ミ ュ レ ー シ ョ ン評価 を行い
,その結果に基づいて従来法よ り も有効な送信波変調手法を検討す る. さ ら に こ の手法 を
T H Iへ拡張 し
,実験 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ンによ り その有効性 を確認 す る
.本論文は, 全
6 章 よ り な り,各章の概要は以下の通 り で あ る.
1.2.
本論文の構成
31.2
本論文の構成
第
1章
:序論
第
l章は序論で あ り
,超音波診断におけ る最近の研究動向について述べた後
,本研究の 意義 と日的 を示す.
第
2章 : 本研究の関連知識
第
2章で は本研究の関連知識 と し て
,超音波診断法の概要 と
P C Tについて説明す る
.第
3章
:提案手法
第
3 章で は,提案手法で あ る
F D A補償手法について述べ る. まず, 探触子の特性の補
償につい て述べ る. 次に, 基本波帯に おけ る
F D A補償手法の概要 と アル ゴ リ ズムを従来 法 と の差異も 含めて述べる
.また提案手法で あ る
F D A補償手法の
T H Iへの拡張に つい て も 説明す る
.第
4章
:シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
第
4章では
,シ ミ ュ レ ー シ ョ ンによ り
,基本波 と 高調波双方に対 す る提案手法の有効性 を評価 す る
.まず, 簡潔 な シ ミ ュ レ ー シ ョ ンモ デルを用い て探触子の特性の補償について 確認す る
.次に
,生体 を模 し たモ デルを作成 し
,シ ミ ュ レ ー ト さ れるエ コ ー を解析 し
,波 形や画像 を用いて提案手法の有効性を評価す る
.第
5章
:実験
第
5章では
,実験によ り 提案手法の有効性を評価す る
.実際に使用 さ れてい る探触子を 用いた実験に よ り
,提案手法の実性能 を確認す る
.第
6章
:結論
第
6 章は結論で あ り,本研究で得 ら れた成果 を整理す る と と も に
,本研究に関す る今後
の展望 な どに つい て述べ る.
第 2 章 本研究の関連知識
2.1 超音波診断法
2.1.1
超音波診断法の特徴
超音波診断装置 と は超音波 を送信 し
,生体組織から のエ コ ーを受信 し て体の内部の情報
を映像化 し
,計測す る装置で あ る. 超音波診断の特徴の一つは, 放射線 を用い る レ ン ト ゲ ン
撮影や
X線
C Tと は異 な り
. 音波 を利用 し て い るため被曝の危険 がない こ と で あ る。 頭部 X線
CTで は一度の診断で平均
2.4ミ リ シーベル ト の放射線を受け る
.一般的 な生活 を し
てい る人の自然放射線量の世界平均値が
2.4ミ リ シーベル ト と さ れて お り
,人が自然界か
ら 一年間で受け る放射線 を一度の診断で受け るこ と になる
.特に胎児な どは放射線被ば く
に対 し て弱い と さ れて い るので
,超音波診断が有効に な る
.も う 一つの特徴は
,X線
C Tや
M RIと 比較 し て映像化の原理が単純なこ と で ある.X 線
CTや
M RIで は映像化す る際に
複雑 な計算 を行 う ため
.診断部位の実時間表示がで き ない
.し かし 超音波診断で は
,映像化
の原理が単純で あ り 画像 を構成す る時間が短いため実時間表示が可能で あ り
.心臓 な どの
実時間検査な どに用い ら れてい る. また, 映像化の原理が単純 なため, 装置の小型化が可能
で あ り
, 価格 もX線
CTの約
1/ 10以下と 安価にで き る と い う利点がある. し かし
,超音波
診断では
X線
C Tや
M RIと 比較し て画質が低いこ と や, 頭蓋骨 な ど骨に覆われた組織の
画像化がで き ない と い う 欠点 も あ る.
2.1.
超音波診断法
52.1.2
超音波診断装置の構成
超音波診断装置は, 探触子, 信号処理回路, 観察用モ ニ タ およ び記憶装置によ り 構成 さ れ て い る. こ こ で は探触子について概略 を示す.
探触子
探触子は超音波 を生体内に送信し
,また生体内か ら超音波信号を受信す る働 き を持 ち, 装 置の性能 を左右す る重要な部分で ある
.探触子に求め ら れる性能は, 送受信感度が高 く 軽量 で, 人間工学的観点から も手にな じ みやすい形状で あ る こ と な どで あ り
, その構成は音響レンズ, 音響整合層
,振動子, およ びパ ッ キ ング材よ り な る.(図
2.1)探触子には大ま かに分類 し て次のよ う な も のがあ る. シ ン グル ビ ームスキ ャ ナ は振動 子が
1個の も ので あ る
. ア レ イ型探触子は振動子を多数配列 し た探触子の総称で, 振動子を直線状に配列 し た リ ニ ア ア レ イ
,凸面状に配列 し た コ ンベ ツク スア レイ
,短冊状に並んだ多数の振動子に対 し 電子的に時 間差位相制御 し て画像焦点 を作 る フ エイ ズ ド ア レイ があ る. ま た ア ニ ユラ ア レ イ は, 円形 の振動子 を同心円状に配置 し た も ので あ り
,マ ト リ ッ ク ス ア レイ は振動子が縦 と 横に規則 的 な二次元配列 を な し
, 一箇所の観測点で2方向の情報が同時に得 ら れる も ので あ る. ァ ク テ イ ブマ ト リ ツ ク ス ア レ イ は通称, 1.5D ア レ イ と 呼ばれ, 厚み方向 に対 し て も 電子 フ ォ ー カ ス を行 う も ので
,超音波 ビームを制御す る こ と によ り 非常 に薄い ス ラ イ ス厚 を得 る こ と がで き る. こ れには特 に浅部でのア ーチ フ ァ ク ト を除去 し
, 組織構造の微小 な差異 を鮮明に視覚化で き る特徴があ る
.音響レ ンズ
音響 レ ンズは
Snellの法則に し たがい超音波 ビームを収束 さ せ る も ので
, 探触子の先端に位置 し て い る. 生体 と の密着 を よ く す る ためその形状は前方 に凸に蒲鉾状 を呈す る. 材 質は生体 と ほぼ音響イ ン ピー ダ ンスが等 し く
, 音速が生体に比べて遅い と い う 性質が求めら れ, 一般的 には耐熱, 耐酸絶縁性に富む シ リ コ ン ゴムが用い ら れてい る.
整合層
整合層は, 超音波 を よ り 効率的 に生体内へ伝搬 させ る ための も ので
, 一般に,複数の整合
層によ り 構成 さ れる. 生体 と 振動子の間ではこ の整合層の働 き によ り 超音波 を発生す る振
動子自体の高い音響特性 イ ン ピ ー ダ ンス と 生体の音響特性 イ ン ピ ー ダ ンス の違い によ る
体表面での超音波反射 を少な く し て, 超音波の生体内への効率的 な伝搬 を可能に し てい る.
ま た
,電気エ ネ ルギ ー と 音波のエ ネ ルギーの変換効率 を改善 し 送受信変換 を高め る効果 も
あ る.振動子
振動子は圧電効果 を利用 し て超音波の送受信を行 う もので あ る. 振動子 と し て使用す る 代表的 な圧電材料には, 複合圧電体, 高分子圧電体. 圧電セ ラ ミ ッ ク スの
3 種類があ る. 中でも圧電 セ ラ ミ ッ ク ス材料は, 電気音響変換効率が高 く 現在最 も多用 さ れて い る圧電材料で, チ タ ン酸 ジル コ ン酸鉛系や チ タ ン酸鉛系の物質 が用い ら れて い る
.バ ツキ ン グ材
バ ツキ ン グ材は振動子後方 に放射 し た音響エネ ルギーを速やかに消散 し
, 振動 を吸収する働 き を持つ. こ のバ ツキ ン グ材によ り 振動子後方から の反射波 が抑圧 さ れ, 生体 か ら の 反射波だけ を効率的に受信す る こ と がで き る. 材質には金属粉末 を重鎮 し たエ ポキ シ樹脂 や フ ィ ラ メ ン ト 粉末 を重鎮 し た ゴムが用い ら れ る.
音習レンズ
◆・ ◆
音習整合層
◆ ・
圧電振動子
'
'
-
パッキング材 l'◆ _
スライス方向断面
図
2.1探触子の構成
配列方向断面
2.1.
超音波診断法
72. 1.3
超音波画像の表示方法
こ こ では本研究に特に関連する超音波画像の表示方法について説明す る. パルス反射法 では, 探触子から超音波パルス を照射 し
,エ コ ーが受信 さ れる までの時間 を測定す る こ と によ っ て
,目的 と す る反射体までの距離を求め る こ と がで き る
.反射点までの距離
d[cm]を
,生体軟部組織での超音波の伝搬速度
c[m / s]と往復の時間
t[s] から次式によ り 求め ること がで き る
.d=
・c ・t
(2.1)c
は
1530[m / s] で一定で あるので,時間
tを測定す る と 距離
dを求め るこ と がで き る. こ
の方法によ り 検出 し た超音波のエ コ ーを表示す る方法を以下に示す.
A
モード
(Am pli tude m ode)A
モ ー ド は送信 さ れた超音波が反射 し
,反射の強 さ と
,受信す る ま で の時間 を 基に し て
,反射 さ れた物質 までの位置
(距離
)を計算し
,物質 までの距離 を横軸に
,反射 し た超 音波の振幅 を縦軸に と り
,グラ フ を作成す る
(図2.2) . Aモ ー ド像は
1次元表示で あ るた
め
1 画像で得 ら れる情報が少な く,また プロ ー ブの当 て方が少 し 異な る だけで全 く 別の波
形 に な っ て し ま う な ど
,表示の再現性に乏 し い. こ のため
,初期 にはよ く 用い ら れたが, 次第 に使われ な く な り
,現在は
Aモ ー ド 単独の装置は生産 さ れて い ない
.こ の方法で は,
プロ ー ブから 反射体 までの距離は分かるが, 反射体の形態 を知 る こ と はで き ない.
B
モー ド
( B r i ghtness m ode)B
モ ー ド は
Aモ ー ド が振幅 と 位置 を表示す る のに比 べて
,こ の振幅 を輝度 と し て画像 表示す る方法で あ る
. 1本の超音波 ビームでは
1次元像 し か得 ら れないが
,超音波 ビーム を走査す る こ と で, 2 次元の画像が作成で き る. つま り
,超音波断層像が表示で き る
(図2.2) .
こ の方法によ り 生体の形態が認識 し やす く な り
,診断が容易になっ た. 現在の超音
波診断の中心的 な表示法 と な っ て い る.
探 触 子
(
時 間
Aモード
◆
輝度変調 走査
Bモード
図
2.2 Aモ ー ド および
Bモー ドの概念図
2. 1.4
画像の分解能
分解能は, 超音波画像の良否を左右す る最も重要な因子で
,空間分解能
(距離分解能,方位分解能
,ス ラ イ ス方向分解能
) ,コ ン ト ラ ス ト 分解能 と
,時間分解能があ る.
距離分解能
距離分解能 と は
,超音波の進行方向に並ぶ
2点を分離 し て表示す る識別可能な最小距離 を言い
,縦方向分解能 と も い う
.距離分解能 △
X [cm]は次式で表 さ れ る
.△
X = n・ λ -
2 (2.2)n
は送信パルス内 の搬送波 のサイ ク ル数
,λは波長で あ り
, nλはパル ス幅 で あ る
.よ っ て距離分解能 は周波数が高 く
,サイ ク ル数が小 さ いほ ど向上 す る
.し か し 周波数 を高 く す る ほ ど超音波の減衰が増 し 深部の観察が難 し く な る
.方位分解能
方位分解能 と は, 超音波 ビームの進行方向に対 し て垂直に並ぶ
2 点 を分離 し て表示可能な最小距離 をいい
,横方向分解能 と も い う
. 2 点の距離が超音波 ビーム幅 (横方向) よ り
2.1.
超音波診断法
9大 き い場合に識別可能 と な り
,サイ ド ロ ーブ
(後述)が十分小 さ い も の と 仮定す る と き方 位分解能 △
1Jは次式 に て 表 さ れ る
.△
11= 1.22 ・-
D λ・
X (2.3)λは波長
, Xは反射体 と 音源 と の距離
, Dは探触子の口径で あ る
.方位分解能は探触子の 口径が大 き く かつ中心周波数が高いほどよ い. し かし
,探 子の口径が大き く な る と
,近 距離音場の分解能が悪 く な るので
,探触子の口径の小 さ い も のがよ い. その一方で探触子 の口径が小 さ い と 超音波の拡散が早ま る. よ って, 遠距離 までの指向性 を得 るためには探 触子の口径 を 大 き く し なけ れば な ら ない.
ま た, 周波数 を高 く な る と 減衰によ り 遠距離での観察が難 し く な る
.ス ラ イ ス方向分解能
ス ラ イ ス方向分解能 と は, 探触子の厚み方向に並ぶ
2 点 を 分離 し て表示可能 な最小距離を い う
.探触子の ス ラ イ ス方向分解能 を向上 さ せ る ために シ リ コ ン製の音響 レ ンズによ っ て超音波 ビームが絞 ら れる. こ の音響 レ ンズは固定焦点のため, 焦点以外の領域で は ビー ムが広が り ス ラ イ ス方向の分解能は低下す る
.コ ン ト ラ ス ト 分解能
コ ン ト ラ ス ト 分解能 と は, 画像上で識別可能なエ コ ー強度の差で あ り
,組織間の輝度差 がどれだけ識別で き る かで表す. ノ イ ズの多い信号や信号強度の低い信号は コ ン ト ラ ス ト 分解能 を低下 さ せ る. SNR を向上 さ せれば, コ ン ト ラ ス ト 分解能 も 向上す る
.時間分解能
時間分解能は フ レ ームレ ー ト によ って評価 さ れる
.フ レ ームレ ー ト はパルス繰返 し 周波
数 と
1 画像 を作 る ための走査線数によ り 決ま る. 1 フ レ ームの走査にかか る時間が短いほど時間 分解能 は高 く な り
,リ アル タ イ ム性が向上 す る
.2.1.5
超音波画像のアーチ フ アク ト
ア ーチ フ アク ト
(虚像) は超音波 ビームの反射や屈折 に よ り
,実際 に存在 し ない も のが
画像 に映 っ て し ま っ た り
,本来の形が歪んで見えた り す る場合 を言 う
.こ こ で は本研究に
関連す る多重反射 と サイ ド ロ ー ブ ノ ア ー チ フ アク ト につい て 述べ る
.多重反射
多重反射 と は, 探触子から放射 さ れた超音波パルスが探触子の生体 と の接触面あ るいは 組織の境界間で何回 も 往復し て反射が繰 り返 さ れる現象 をい う
(図
2.3) .反射体 と 探触 子の間で起 こ る多重反射は, 実際の反射体の後方に反射体 と 探触子の距離の整数倍に相当 す る間隔で ア ーチ フ ァ ク ト と し て出現す る. また反射体が非常に小 さ い場合で も
,周囲組 織 と の音響イ ン ピー ダ ンスの差が大 き い と同 じ 現象 が起き
,こ れ を特に コ メ ッ ト 様エ コ ー
と 呼び, 強い エ コ ーの後方 に彗星の尾のよ う なエ コ ーが線状 に尾 を引 い て 見 ら れ る
.サイ ド ロ ー ブ
超音波 ビ ームは主 に探触子の中心軸方向に放射 さ れ る メ イ ンロ ー ブ と
,それ を 囲み異 な つ と 方向 に超 音波 ビ ー ムが放射 さ れ る サイ ド ロ ー ブか ら な る
.サイ ド ロ ー ブの音圧はメ イ ンロ ーブの
30~ 40dB程度 と 大き く
,サイ ド ロ ー ブ方向に反 射 の強い物体が あ る と
,そ れに よ る反射像が メ イ ンロ ー ブ像 に重 な っ て描出 さ れ る
(図
2.4) .
子
!、 、口 口
管 「 - l
-反 体
. j
ロ
ー
●
l・'[ ・
_ 1
5
口
e=
[ --
ll
図
2.3多重反射の概念図 - モニタ上多◆ 反
標Ia 子
、口
1-
t/ ︑ メインロ ープ ,
lアーチファ = - 口 強い 反
2体
図
2.4サイ ドロ ーブの概念図
2.2.
生体高調波画像化法
112.2 生体高調波画像化法
生体高調波画像化法
( T issue Harmonic Imaging:THI )と は生体内部におけ る超音波の 非線形伝搬によ り 発生す るハーモ ニ ツク
(高調波) 成分 を検出 し て, 生体組織 を描出す る も ので
,近年では空間分解能を高 く で き る超音波画像化手法 と し て実際の医療超音波診断 装置にその機能が組み込 まれて い る
.造影剤に対 し て入射 さ れた超音波に生 じ る非線形効 果に よ り 発生す る高調波 を検出 し て描出す る手法 も あ る が
, T HIで は造影剤 を用い ない で高調波 を検出 す る と い う 特徴があ る
.2.2.1 T H I
の発生原理
媒質中 を伝搬す る超音波の音速は, 縦波の粗密に応 じ て, わずかながら変化す る. す な わち
,疎の部位では音速は遅 く
,密では速 く な る
.こ のため
,図
2.5に示すよ う に
,媒質 中 を伝搬す る正弦波状の音波は, その伝搬距離が長 く な る につれて鋸歯状波 に近づいて い く
.こ の波形のス ペ ク ト ルには, その波形の基本周波数の他に
,高調波成分が多 く 含 ま れて い る
.こ れが, 組織 か ら のエ コ ー信号に含 まれ る高調波信号の発生の メ カ ニ ズ ムで あ る. 以 下に こ の非線形性の重要 な特徴 を述べ る.
( i)
波形のひずみは蓄積す る
.(ii) 第2 高調波の振幅は入射超音波の振幅の2 乗 に比例す る.
音波 の伝搬距離 が短 い と き にはわずかなひずみで も
,その距離が長 く な る に伴 っ て ひずみ が蓄 積 さ れ
,ハ ー モ ニ ツ ク 成分 が顕著 に な る
.送信波
伝般途中
伝般後
一 一 一
図
2.5非線形音響媒質中の伝搬に よ る高調波の発生
2.2.2 TH I
の利点と欠点
利点
( a)
距離分解能の良い画像
高調波の帯域幅は, 基本波の帯域幅に比べ広い
( -l一 分な音圧強度があれば
2次高調波 の帯域幅 は基本波の帯域幅の
2倍 にな る
) .そのため基本波のパルス幅 に比 べ
,高調波の パルス幅は細 く な るので, 基本波で生成 し た画像よ り も
,距離分解能の良い画像が得 ら れ
る.
( b)
方位分解能の良い画像
非線形歪みは音圧が高 く ない と 発生 し ない. ま た送信 ビームの音圧は ビ ーム中央付近 では強いが, 中央か ら端に な るほど, 音圧は急激に弱 く な る
.こ のため高調波の発生は音 圧の高い ビーム中央 に制限 さ れ
,ビーム幅が狭ま り 結果 と し て方位分解能が向上す る
(図
2.6) .( c)
アーチ フ ァ ク ト の少な い画像
超音波画像 には さ ま ざ ま な ア ーチ フ ァ ク ト が生 じ る が, その中 で も
,前述の, 多重反 射 と サイ ド ロ ー ブ に よ る ア ー チ フ ァ ク ト は特 に大 き な間題 で あ る
. T H Iで は, 非線形 ひ ずみは音圧の
2 乗に比例す る ため,一度反射体で反射 し たエ コ ー ヘ その音圧 が低 く な り
,エ コ ー成分では高調波はほ と んど発生 し ないため, 多重反射に よ る ア ーチ フ ァ ク ト が少 な い
.ま た基本波のサイ ド ロ ー ブ強度は, メ イ ンロ ーブに比べ
3 0 ~ 4 0 dB小 さ いのに対 し
,高調波のサイ ド ロ ー ブ強度は, メ イ ンロ ーブに比べ
6 0 ~ 8 0 dB程小 さ い
,こ のた めサイ ド ロ ー ブに よ る ア ーチ フ ァ ク ト が少 な く な る
.( d)
体表から のエ コ ー の抑圧
超音波診断画像に おい て
,体表から のエ コ ーは特に不要で あ る. し か し 基本波成分を 使 っ た画像では こ れを抑 え る こ と がで き なかっ た
. T HIでは前述の と お り
,高調波は伝搬 距離が増すにつれて 発生す るので
,伝搬距離がと て も近い体表か ら のエ コ ー を抑 え る こ と がで き る
.(e)
生体深部の高周波画像化
高調波は基本波が生体内 を伝搬す る につれて発生す るので
,高調波の帯域の信号 を送
2.2.
生体高調波画像化法
13受信す るの と 比較 し て周波数依存減衰の影響が小 さ く な る. 従 っ て同 じ 帯域で も T HI を 利用す る こ と で生体深部の高周波の画像化が可能 と な る
.欠点
(a) SNR
の低下
高調波の音圧は基本波の音圧に比べて非常に小 さ い ため
,圧縮波形の
SNRが低下する
.(b) FDA
への影響
高調波は基本波 に比べ倍の周波数成分も持つため
,周波数依存減衰がよ り 強 く 作用す る
.そのため, T HI は電気的 ノ イ ズ, シス テ ムノ イ ズの影響 を受け やす く
,特 に生体深 部で の画像化 に不都合が生 じ る
.基本波のビーム領域
l
ハーモニツクのビーム領域
図
2.6基本波 と 高調波の ビーム幅
2.3
パル ス圧縮法
2 .3 .1
パルス圧縮法の概要
SNR
を改善す る一般的 な手法 と し て
,パルス圧縮技術が挙げ ら れ る. パルス圧縮技術 で は照射 エ ネ ルギ ー を增やすた めに
,符 号化信号 を照射時間 の長い パル ス と し て 送信す る
.そ し て目標から の反射波 を受信 し た後に処理を行 う こ と によ り
,尖頭電力が大 き く 幅 の細いパルス を送信 し た場合 と同 じ 効果 を得 る手法で ある. パルス圧縮技術はこ こ
1 0年 にわた り
,医療超音波分野 を中心に数多 く の研究がな さ れて い る. パルス圧縮に用い る符 号化信号は様 々あ る が, こ こ では リ ニ ア
FMチ ヤー プについて述べ る.
2.3.2
リ ニア
FMチ ヤー プ
時間 と と も に周波数が線形に変化
(チ ヤー プ
chirp)す る信号は
sl( t) = rect( )
exp[
32・ (
tot十
t2)]
で表 さ れる. こ こ に
fo中心周波数, k は
S, (t) の瞬時周波数f, = [
2(
tot + t2)]
= fo
十
kt(2.4)
(2.5)
の時間に対す る変化率
, Tは
s, ( t)の持続時間であ り
, rect関数は次式で定義 さ れる
.rect
( ) = 1 -
t= 0 t < - , < t (2.6)
式
(2.4) , (2.5)から瞬時周波数の変化量
B はkTと なる. sl( t) のスペ ク ト ルは
sl(t) をフ ー リ エ変換す る こ と によ り 得 ら れ,
SI(f ) = /
二
sl(t) ・ exp[-
.フ
27r f tl dt= [z(y2) - z(y,)]exp
[-
.和 一
f。
)2]
と な る. こ こ に, Z ( y) は複素 プレネ ル積分で
z (y) = CF(y) +
-
y) = yexp[ [ a2]
d((2.7)
(2.8)
2.3.
パルス圧縮法
15に よ り 表 さ れ る
. :Ill , ll2は, それぞれ次式 に よ り 定義 さ れ る.
, = - 2(f - f 。 ) -
J2
=-
2(f - fo)十
(2.9) (2.10)
パル ス圧縮 の フ ィ ル タ のイ ンパルス レ ス ポ ン ス と し て次式で 表 さ れ る も の を 考 え る
.] )
2t 一2一
t fo(
2 7 ﹁
一
・
一PX
一一(t,n
式
(2.11 )から 分かるよ う 入力信号
sl (t) の瞬時周波数が( tot化するのに対し
, h(t)の瞬時周波数は
( tot十
T )から
( fot-
ル タ の伝達関数は
h( t)を フ ー リ エ変換す る こ と によ り
(2.11)
- 「
)から
( tot十
)に変
T)
に変化す る
.こ の ブ イ
H「
(f) = J 二
h(t) ・ exp[-
j27r f tl dt= /
exp[-
.727r( fo- f) -
t 2]
dt= exp
[ 一 和 一
fo)2]
パルス圧縮の フ ィ ル タ に信 号
,sl( t) が入力 さ れれば時間領域 に おけ る,h( t)
の コ ン ボ リ ュ ー シ ヨ ン積分によ っ て与 え ら れ る
.s2(t) =
二 /
sl(τ
) ・ h(t- τ
)dτ
=
、
J j「
Bsinc]ヨ
: Bt)exp[
.]27r( fot-
t2)]
た だ し
, sinc関数は次式で定義 さ れる
.(2.12)
疎の出力は
sl(t) と(2.13)
l Sin(7Ta
')
s nc a' = (2.14)
7
「a
式
(2.4)で表 さ れる入力信号
s,(t) に比べて,式
(2.13)での出力信号
s2( t) は振幅において電圧で 、f 「
B (電力ではT B 倍) .パルス幅が約 倍 と な る こ と がわかる. ま た, パル ス圧縮 フ ィ ル タ の周波数領域におけ る出力は
S2( f ) のフ ーリ エ変換,ま た
SI( f )と
H ( f )の積で 表 さ れ
S2(f) = = S,(f )
/- :
s2(t)exp[・
H(f )-
2 f tl dt= [Z(l/2)
-
Z(l/1)] (2.15)と な る
.次に
,パルス圧縮 フ ィ ル タ がマ ツチ ド フ イル タ と し て構成 さ れて い る場合 を考 え る. マ ツチ ド フ イル タ と はその フ ィ ル タ の入力 に おけ る
S/ Nを固定 し た と き 出力 の
S/ Nが最大 と な る フ ィ ル タ を い う
.ただ し
,こ こ で は雑音は白色正規性 と す る
.こ の と き マ ツ チ ド フ イル タ の伝達関数は出力信号の遅延 を無視すれば
HM(f ) =
]
2)一
f(t- 二 , 一一
˜. ・
-PX e)]y*
Z一
)2y(* s
-(2.16)
で与え ら れ る
.こ こ に
,ア ス タ リ ス ク
* は共役複素数 を表す.また, こ の フ ィ ル タ のイ ン パルス応答 は
hM(t) = sl(f)
= rect
( )
exp[
327r(
fot-
t2)]
(2.17)で表 さ れ る. し たがっ て
,時間領域におけ る出力信号は
sl ( t)と
hM( t) の コ ン ボリ ュ ー シ ヨン積分に よ り 得 ら れ
szM(t) =
/-
0 0
。。
rect( )rect( )・
expL
2 j fot十 「 一
j (t- τ
)」
dt (2.18)と な る. 式
(2.13)と の比較 を容易にするために, 式
(2.18)を正規化すれば最終的に得
s . , =
、
/ i、
R (') 1 Q、
ー 一 - - ltl 、 ー ー ノ
と な る. 式
(2.19)において
,振幅の ピーク が生じ る
t = 0よ り 時間軸方向に離れる に し たがい分子の第二項は小 さ く な るので
,式
(2.19)は
(2.13)で表 さ れる波形の振幅 と ほ ぼ同 じ に な る
.図
2.7 に,矩形波のチ ヤー プ信号, 図
2.8 にハ ミ ング窓のチ ヤー プ信号,図
2.9,
図
2.10にそれぞれの圧縮波形の検波信号を示す. ハ ミ ング窓 を掛け る と 距離方向の
特性 を悪化 さ せ る レ ン ジサイ ド ロ ー ブ を抑 え る こ と がで き る が矩形窓 と 比べて半値幅が
広が っ て い る
.2.3.
パルス圧縮法
171 0 . 8 0 . 6 0 . 4 0 . 2
E 0
ll:l;
- 0 . 2 - 0 . 4 - 0 . 6 - 0 . 8 - 1
1 0 . 8 0 . 6 0 . 4 0 . 2 E a, 0
ll:l:
- 0 . 2 - 0 . 4 - 0 . 6 - 0 . 8 - 1
図
2.17矩 。をか たチ ヤ
aー プ信号の例
T i me [mi c r o sec ]
o図 2.8 1
ハ ミ 、 ン
2グ窓 をかけ た ヤー プ信号の例
T i me [mi c r o sec ]
一-l
') :
')Ip(u Z.,T ,T ePu u 〇
N 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 00 0 0 0 0 0 0 0 0図
2 .9 -矩形 力
:lけ だ ヂ ヤーa ブイ售号の圧縮被形 と2エ ンベロ ー プ
T i me [mi c r o sec ]
一-:- 〇
-pa
・
Z.,TITeu unE ⁝-0:N 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 00 0 0 0 0 0 0 0 0
図
2 .10ミ .,1
・タ窓を か
19'・たチ - 橋 聞 波形 と エ ンベロ ー プ
T i me [mi c r o sec ]
第 3 章 提案手法
19
3.1 提案手法の概要
FDA
を補償す る ための実験や シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を行 う 前に, まず探触子の特性 を補償 す る必要があ る ため
,は じ めにその手法につい て述べ る. 次 に, 基本波帯 に おけ る
FDA補償手法の概要 と アル ゴリ ズムを述ぺ
,その後
, FDA補償手法の
THIへの拡張について 述 べ る
.3.2
探触子の特性補償
3.2.1
探触子の特性補償
探触子の特性補償は振幅 と 位相の双方に対 し て行 う
.まず, 任意の
FMチ ヤー プ信号
f , ( t)を送信 し
,対応す るエ コ ー信号と し て
g,( t)を取得す る. こ のと き
FDAの影響 を受 け ないよ う にす るため, 探触子の近 く に反射体 を設定す る必要があ る. f , ( t) の周波数領域 を
Fl(ω
) , gl( t)の周波数領域を
G I(ω
)と表す
.こ こ で両者の振幅の比 を
RTf(ω
)と す る と
,l
.F1(ω
)ln (
ω
) = (3.1)と 表せ る
.さ ら に
,両者の位相差 を計算 し て送信信号の位相に足 し 合わせた も の を
.I,(ω
)と す る と
,Il(
ω
) = arg(Fl(ω
)) 十arg(Fl(ω
)) - arg(GI(ω
)) (3.2)と 表せ る. 最後に
,求めた振幅の比
RT,(ω)と 位相補償 を し た
I, (ω)を掛け合わせ る.
Re(SI(
ω
)) = RTf(ω 、
) Fl(ω
)leos( I(ω
)) (3.3) Im(SI(ω
)) = RTf(ω
)l F1(ω
)l sin(I(ω
)) (3.4)上記で計算 し た実部 と 虚部に逆
FF T処理を施すこ と で
,探触子の特性 を補償す る送信信
号
sl ( t) が得 ら れ,こ の補償送信信号を以降の処理に対す る基本送信信号 と し て用い る.
3.2 .2
高調波帯におけ る探触子の特性補償
本研究では
,高調波 を使用す るため
,高調波帯におけ る探触子の特性補償が必要と な る
.エ コ ー信号
g, ( t)は一つの探触子で送受信 し て得 ら れた信号で あ り
, g,( t) の高調波g2( t)を受信す る際には, 基本波帯の送信特性 と 高調波帯の受信特性を受けて い る. 従 っ て
,ま ず基本波帯の送信特性 と 高調波帯の受信特性を計測す る必要があ る
.基本波帯の送信特 性は, 送受信実験中に, 送信波 をハイ ドロ ホ ンで計測す る こ と で求め る こ と がで き る
.送 信の振幅特性 と し て
S,(ω) ,位相特性 と し て
I,(ω)を以下の通 り 求め る.
、
Fl(ω
)l,(
ω
) = (3.5)It(
ω
) = arg(Fl(ω
))-
arg(GI(ω
)) (3.6)高調波帯の受信特性は, 高調波帯の送受信実験中に, 送信波をハイ ドロ ホ ンで計測 し
,送 受信の特性から 送信波の特性 を差 し引 く こ と で求める こ と がで き る. 受信の振幅特性 と し て
Sr(ω
) ,位相特性 と し て
I r(ω
)を以下の通 り 求め る
.IF2(
ω
)l r(ω
) =Ir(
ω
) = arg(F2(ω
)) - arg(G2(ω
))それぞれ を求めた ら
,位相補償 さ れた位相
I2(ω) を計算す る.I2(
ω
) = arg( Fl(ω
))十
arg( It(ω
))十
a「
g( Ir(ω
))/ 2最後に, 求めた振幅の比
R,(ω
) , Rr(ω
)と 位相補償を し た
I2(ω)を掛け合わせ る.
Re(S2 (
ω
) ) = Rt(ω
)Rr(ω
)l Fl (ω
)leos( I2 (ω
) ) Im(S2(ω
)) = Rt(ω
)Rr(ω
)lF1 (ω
)l Sin( I2(ω
))(3.7) (3.8)
(3.9)
(3.10) (3.11)
上記で計算 し た実部 と 虚部に逆
FF T処理を施すこ と で, 高調波帯におけ る探触子の特性
を補償す る送信信号
s2( t)が得 ら れる
.3.3. FDA
補償手法
213.3 FD A 補償手法
3.3.1
基本的な考え方
生体深部に超音波 を送信 し た場合
,伝搬距離が長 く
FDAの影響 を大き く 受け る
. POTによ る高
SNR化が有効で あ る も のの
FDAによ る波形歪みによ り 圧縮精度が著 し く 低下 し
,圧縮画像が不鮮明に な っ て し ま う
.そこ で
FDA補償手法で は, まず
ROIを設定 し
,探触子の特性 を補償 し た送信信号を送信 し て エ コ ー信号を取得す る. こ のエ コ ー信号には 探触子から
ROIまでの減衰情報が含まれる
.こ のエ コ ー信号の減衰情報から
FDA補償手 法 を用いて補償送信信号を決定す る. 決定 さ れた信号は, 減衰の大 き く な る高周波成分を 增幅 さ せ た形状 に な る. 決定 さ れた信号を再び探触子か ら 送信 し エ コ ー信号 を取得す る
.こ の送信信号も ま た伝搬過程で
FDAの影響を受け るが
,補償によ っ て增幅 さ せた高周波 成分がエ コ ー信号を受信す る時点で
FDAと 相殺 さ れ
,波形歪みの軽減 さ れたエ コ ー信号
を取得す る こ と がで き る
.3.3 .2
基本波に対する
F D A補償手法
まず前項で求めた基本送信信号
s,( t) をFDAのあ る媒質に伝播 させ る. そ し て得 ら れ たエ コ ー信号 を
k l ( t)と お く
.前提 と し て
, FDAは振幅のみ減衰す る も の と し
,位相につ いての処理は行わない
. FDAによ る減衰関数
R FDA(ω
)を次のよ う に定義す る
.l F1(
ω
)lF A(
ω
) = (3.12)K I (
ω
) はk l ( t) の周波数表示で ある.実際の手順では, 計測雑音の影響を回避す るためこ
こ で求めた
R FDA(ω)を近似す る必要があ る. 本研究では近似手法を線形近似 と 曲線近似 の二種類について評価し た
.図
3.1に減衰関数
R FDA(ω
)(点線
)と 二種類の近似
(実線
)を示 す・ 近似 し た
R FDA(ω
)を
\R FDA(ω)l と お く と, FDA補償送信信号は
Scmp(ω)=、
RFDA(ω
)l S(ω
)と 表せ る. 振幅変調 し た
Scmp(ω) の時間波形で あ るscmp( t) を送信す る と,その結果 得 ら れるエ コ ー信号は
FDAによ る減衰の影響を受け た上で
,理想的 なエ コ ー信号にな る
と 考え ら れ る
.3.3 .3