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地 域 型 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ム の研 究(中)

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(1)

地 域 型 ベ ンチ ャー支 援 シ ス テ ム の研 究(中)

一 第2段 階 地 域 型 ベ ンチ ャ ー ・イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン の 設 計 一

瀬 戸 篤

1研 究 課 題

1‑1前 号 で の 結 論 1‑2本 号 の 研 究 課 題

2函 館 高 専OBア ンケ ー ト調 査 結 果

■ ー ワ 自 3 4

一 一 一 一

9 白 9 自 9 自 9 白

高等 専 門学校(高 専)

なぜ 函館 高専 を調 査対 象 と したか ア ンケ ー ト設計

ア ンケ ー ト結 果

3地 域 型 ベ ンチ ャ ー ・イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ンの 新 概 念 一企 業 誘 致 か ら人 材 誘 致 へ 一

‑ ⊥ 9 臼 q O 4

一 一 } {

り0333

企業 誘致 か ら人材 誘 致へ

なぜ,道 外 マー ケ テ ィン グなのか?

なぜ,製 造系 コア技術 なのか?

北海 道 の地域優 位 性 4イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ンの 設 計

一人 材 誘 致 に求 め られ る ハ ー ドと ソ フ トー

哨 ⊥ 9 臼 3 4 F O

一 一 一 一 一

﹄44444

海 外 参 考 事 例:台 湾 「新 竹 サ イエ ン ス パ ー ク」

高 専 卒 業 生 が 求 め る 支 援 内 容 立 地

ハ ー ドウ ェ ア の 設 計 ソ フ トウ ェ ア の 設 計 5結 び:研 究第3段 階の 課題

〔29〕

(2)

1研 究 課 題

1‑1前 号 で の 結 論

研 究 第1段 階 で,わ れ わ れ小 樽 商 大=開 銀 の 共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム は,

「 ベ ンチ ャ ー創 出 面 で 地 域 は不 利 で あ る?」 と の仮 説 を も とに ,同 仮 説 を 反 証 す る べ く実 証 デ ー タ の入 手 とフ ィー ル ドサ ー ベ イ お よび 比 較 分 析 に着 手 した 。 フ ィー ル ドサ ー ベ イ で は,パ イ ロ ッ トサ ー ベ イ と経 営 者 ヒ ア リ ン グ を経 て,平 成9年7月 か ら平 成10年2月 に か け て道 内 製 造 系 ベ ンチ ャ ー企 業 を フ ィ ー ル ド サ ー ベ イ した 結 果,(1)現 経 営 者 が創 業 者 で あ る こ と,(2)創 業 場 所 が 北 海 道 で あ る こ と,(3)道外 マ ー ケ テ ィ ン グ に積 極 的 で あ る こ と,の3条 件 を満 た す7社(金 属 加 工 ・半 導 体 製 造 装 置 ・食 品 機 械 ・バ イ オ ・住 宅 ・エ ン ジ ニ ア リ ン グ ・ソ フ

トウ ェ ア)が 浮 上 し,創 業 者 と創 業 プ ロ セ ス に 関 す る7社 の 比 較 分 析 を行 っ た 。

以 上 の研 究 結 果 か ら,わ れ わ れ は 「 ベ ン チ ャー 創 出面 で 地 域(=北 海 道)は 有

利 で あ る」 との 結 論 を得 た 。 そ の理 由 は,4つ の 経 営 資 源(人 材 ・技 術 ・マ ー

ケ テ ィ ン グ ・資 金)か ら見 て,(1)地 元 国 立 工 業 高 専 を 卒 業 して 首 都 圏 メ ー カ ー

に勤 務 したUタ ー ン技 術 者 の 活 用,(2>非 札 幌 圏 中 核 都 市 に お け る低 コス ト高 付

加 価 値 経 営,(3)自 前 設 計 ・部 品 内製 化 に よ る独 自製 品,(4)イ ンタ ー ネ ッ トの積

極 的 活 用,の4条 件 が 満 た され た場 合,製 造 系 の 地 域 型 ベ ンチ ャ ー が 創 業 に 成

功 す る 可 能 性 が北 海 道 で は か な り高 い こ とが確 認 で きた か らで あ る 。そ れ ゆ え,

ベ ンチ ャー 企 業 の 設 立 に あ た っ て一 般 的 に は不 利 と考 え られ て きた 地域 の ハ ン

デ ィ を,か え っ て ア ドバ ンテ ー ジ と して 見 事 な 成 長 を遂 げ て い る一 群 の 製 造 系

モ デ ル ベ ンチ ャー 企 業 の存 在 を確 認 で き た。 す な わ ち,北 海 道 に は サ クセ ニ ア

ン博 士 の い う 「RegionalAdvantage(地 域 の優 位 性)」 が,少 な く と も く 技 術

の あ る 人 材 の獲 得 〉 面 で は 存 在 す る こ と を分 析 過 程 で 発 見 した 。 そ れ ゆ え,北

海 道 出 身,ま た は 北 海 道 に 強 い 思 い入 れ の あ る技 術 者 のU・1タ ー ン に対 す る

何 らか の 支 援 シス テ ム が 形 成 さ れ れ ば,北 海 道 に 〈 第2・ 第3のHP社 〉 の 創

造 も決 して 夢 で は な い こ とが わ か る。 問 題 は,彼 ら を どの よ う に発 掘 し開 業 ま

(3)

地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シス テ ム の研 究(中) 3‑Z で 支 援 す る か で あ る 。

1‑2本 号 の 研 究 課 題

平 成10年 度 に 実 施 さ れ た研 究 第2段 階 で あ る 「 地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の研 究(中)」 で は,〈U・1タ ー ン と新 規 創 業 を 有 機 的 に結 合 した 地 域 型 べ ンチ ャ ー創 造 に対 す る 支 援 シ ス テ ム の あ り方 〉 の 有 効 性 を検 証 し,北 海 道 の 製 造 系 ベ ンチ ャー を生 み 出 す た め に 必 要 か つ 有 効 と考 え られ る イ ンキ ュベ ー シ ョ

ンの 設 計 を試 み る こ とに あ る。

初 め に 共 同研 究 チ ー ム で は,(a)前 号 で 得 られ た 製 造 系 ベ ンチ ャ ー と し て有 望 と 考 え られ る高 専 卒 業 生 に よ る 〈Uタ ー ン&ベ ンチ ャ ー 〉 の 可 能 性 に 着 目 し,道

内 国 立 高 専 卒 業 生 に対 して 起 業 意 識 調 査 を行 っ た。 次 に,(b)既 存 の 道 内 イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ン施 設 に対 す る詳 細 な イ ン タ ビ ュー 調 査 を 実 施 した。 そ の 結 果,起 業 意 識 ア ン ケ ー トか ら導 き出 さ れ た イ ンキ ュベ ー シ ョ ン に対 す る 〈 ニ ー ズ 〉と, 実 際 に 提 供 さ れ て い る施 設 の 〈 シ ー ズ 〉 の 間 に は,大 き なギ ャ ップ が 存 在 す る こ とが確 認 さ れ た 。 そ して,(c)従 来 か ら別 個 に行 わ れ て きた 〈 市 町村 に よ る企 業 立 地 〉,〈道 に よ るUタ ー ン促 進 事 業 や 中小 企 業 支 援 策 〉,〈通 産 省(局)に よ

るベ ンチ ャ ー支 援 事 業 〉,〈公 的 金 融 機 関 に よ る制 度 金 融 〉,くそ の ほ か 経 済 団体 や 産 学 官 に よ る地 域 産 業 支 援 策 〉 の観 察 と検 証 を行 っ た。 最 後 に,UIタ ー ン

&ベ ンチ ャ ー=地 域 型 ベ ンチ ャ ー創 業 を成 功 させ る シ ス テ ム の 設 計 を行 っ た。

2函 館 高専OBア ン ケ ー ト調 査 結 果

本 章 で は,地 域 型 ベ ンチ ャ ー ・イ ンキ ュベ ー シ ョン の設 計 の 前 段 と して,わ れ わ れ が 仮 説 と して 焦 点 を あ て た道 内 国 立 高 専OBを 対 象 とす る 〈Uタ ー ン&ベ ンチ ャー 〉 に お け る イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ン ・シ ス テ ム の あ る べ き姿 を検 証 す る。

と くに,北 海 道 に は 地 場 産 業 振 興 を 目的 とす る 数 多 くの イ ンキ ュベ ー シ ョン施

設 が 点 在 す るが,そ れ らがUタ ー ン技 術 者 の新 規 創 業 に対 して イ ンキ ュ ベ ー シ

(4)

ヨ ンた り得 る か とい う問 題 に 答 え る必 要 が あ る 。

そ こ で,イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ン に対 す る 具 体 的 な ニ ー ズ を探 るた め,地 元 高 専 の 協 力 を得 て,卒 後10年 以 上 の 道 外 勤 務 者 に対 す る 起 業 意 識 ア ン ケ ー ト調 査 を実 施 し た 。 本 章 の 具 体 的 な デ ー タ と 詳 細 に つ い て は,『CBCDiscussionPaper SeriesNo.54』 の 第3章 に詳 しい 。 また,下 の 各 表 は 同 報 告 書 の た め に作 成 さ れ た もの を転 載 した 。

2・‑1高 等 専 門 学 校(高 専)

高 等 専 門 学 校(高 専)は,中 学 校 卒 業 程 度 を入 学 資 格 とす る5年 制 の 高 等 教 育 機 関 で あ る(す な わ ち,学 生 は お お か た16〜20歳 の5年 間 を 過 ごす)。 日本 の 経 済 ・社 会 の 発 展 を 支 え る科 学 技 術 の著 しい 進 歩 に対 応 で き る優 秀 で 実 践 的 な 技 術 者 を養 成 し,科 学 技 術 の振 興 を 図 る こ と を 目的 と して,昭 和36年 の 学 校 教 育 法 一 部 改 正 に よ っ て37年 度 に 創 設 さ れ た 。 『 文 部 統 計 要 覧(平 成10年 版)』(文

表1高 専,大 学 の学校 数,学 生数,教 職員 数,就 職 者数 就職者数 学校数 学 生 数 教 員 数 職員 数

製造業 技術者

高専 国立 54 49,203 3,823 3,009

公 立 5 4,511 391 169

私 立 3 2,580 170 28

合計 62 56,294 4,384 3,206 7,121 3,287 6,406

道内 5 4,190 331 N.A. N.A. N.A. N.A.

大学 国立 98 614,669 58,855 58,486

公立 57 91,642 8,880 11,474

私 立 431 1,927,479 74,047 101,767

合計 586 2,633,790 14L782 171,727 349,271 71,155 73,291 理 工 N.A. 552,384 N,A. N.A. 79,951 5,760 62,007 道内 26 85,306 5,460 N.A. 10,388 N.A. N.A.

(注)1.大 学 に は,短 期 大 学,大 学 院 を 含 ま な い 。

2.理 工 は,大 学 合 計 の 内 数 で,専 攻 分 野 が 理 学 お よ び 工 学 の 者 の 数 。

3.道 内 は,そ れ ぞ れ 高 専 合 計,大 学 合 計 の 内 数 で,道 内 の 数 。

(5)

地域 型ベ ンチ ャー支援 シス テム の研 究(中)33

部省 編;平 成10年4月)お よ び 『 平 成9年 度 学 校 基 本 調 査 報 告 書(高 等 教 育 機i関編)』(文 部 省;平 成10年3月)に よる と,平 成9年 の 高 専 の 学 生 数,教 職 員 数,就 職 者 数 な どは 表1の とお りで あ る 。

道 内 に は,4校 の 国立 高 専 と1校 の 公 立 高 専(イ ン ダス トリア ル ・デ ザ イ ン学 科 を 有 す る札 幌 市 立 高 等 専 門学 校)が 存 在 す るが,こ こで は,国 立 高 専 に対 象 を絞 る。 平 成10年 度 の 各 校 の 『 学 校 要 覧 』 に よ る と,道 内4国 立 高 専 の 概 要 は 表3‑2の とお りで あ る 。

表2道 内4国 立高 専

旭 川 釧 路 苫 小 牧 函 館

開校 年 月 昭和37年4月 昭和40年4月 昭和39年4月 昭和37年4月

教 員 数 63 75 78 78

事務系職員数 53 54 53 54

専 門 学 科 機械工学科 電気工学科 制御情報工学科 物質化学工学科

機械工学科 電気工学科 電子工学科 情報工学科 建築学科

機械 工学 科 電気 工学 科 情報 工学 科 物 質 工学科 環境 都市 工学 科

機械工学科 電気工学科 情報工学科 物質工学科 環境都市工学科 学 生 数 機 械204

電 気195 制 御196 物 質190

機 械190 電 気196 電 子197 情 報200 建 築202

機 械202 電 気192 情 報183 物 質194 環 境206

機 械199 電 気209 情 報200 物 質209 環 境204

合計785 合計985 合 計977 合 計1,021

出身地

道内 道外 国外

775 3 7

1,027 4 11

967 3 107

970 41 10

H9年 卒業 者数 139 180 175 180

進学者数 39 21 46 36

就職者数 91 151 129 137

障 内

i道 外

48 43

85 66

63 66

56

81

(注)釧 路 高 専 の 学 生 出 身 地 は,平 成6〜10年 度 の 入 学 者 数1,042名 に 対 す る 内 訳 。

(6)

2・一 一2な ぜ 函 館 高 専 を調 査 対 象 と し た か

ア ンケ ー トを実 施 す る に あ た っ て 共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム で は,次 の2段 階 を経 る必 要 性 を確 認 した 。 す な わ ち,第1に,仮 説 に あ げ られ た狙 い に焦 点

を絞 っ た 小 規 模 な ア ンケ ー ト(千 人 規 模)を 実 施 す る 。 第2に,そ こで 得 られ た 結 果 を も とに,道 内4国 立 高 専 の 卒 後10年 以 上 を経 過 した 全 卒 業 生 に対 す る 大 規 模 な ア ンケ ー ト(万 人 規 模)を 実 施 す る こ と で あ る 。

は じめ に,第1の 小 規 模 ア ン ケ ー トの 実 施 で あ るが,平 成9年 度 研 究 にお け る フ ィー 。ル ドサ ー ベ イ対 象 企 業 の 中 で,地 元 高 専 卒 業 者 が創 業 者 で あ り,か つ, 母 校 で あ る地 元 高 専 か らの 人 材 獲 得 を 「RegionalAdvantage(地 域 の優 位 性)」

と して活 用 して い る企 業 の所 在 地 と して,共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム は 〈 函 館 〉 に注 目 した 。 函 館 は,旧 テ ク ノ ポ リス(高 度 技 術 集積 都 市)法 の 指 定 地 域 (昭和59年7月 に 全 国 で12番 目 の指 定 を受 け る)で あ り,以 下 の5点 が 特 筆 さ れ る。 す な わ ち,

(1)試 験 研 究 機i関で あ る 「 道 立 工 業 技 術 セ ン ター 」(昭 和61年10月 開業)が 存 在

(2)イ ンキ ュベ ー シ ョ ン(新 規 産 業 創 出 ・育 成 支 援 施 設)で あ る 「 函 館 市 産 業 支 援 セ ン タ ー」(平 成10年4月 開 業)が 存 在

(3)「 テ ク ノ ポ リス 函 館 」 構 想 の推 進 母 体 と して,道 立 工 業 技 術 セ ン タ ー お よ び函 館 市 産 業 支 援 セ ン ター の 運 営 主 体 とな る と と もに,様 々 な助 成 ・低 利 融 資 ・債 務 保 証 制 度 を運 用 し て い る 「(財)テク ノ ポ リス 函 館 技 術 振 興 協 会 」(昭 和59年4月 設 立)が 存 在

(4)工 業 団 地 や ジ ェ ッ ト空 港,港 湾 な ど新 規 産 業 創 出 ・育 成 を支 え るハ ー ドウ ェ ァ がi整っ て い る

(5)造 船,漁 業 資 材,水 産 食 品 加 工 な ど海 洋 関 連 分 野 に お い て製 造 業 の 集 積 が

比 較 的 厚 い

(7)

地域 型ベ ンチ ャー支援 システ ムの研 究(中)35

そ こで,函 館 高 専,函 館 市(商 工 観 光 部 テ ク ノ ポ リス 推 進 室)お よ び(財)テ ク ノ ポ リス 函 館 技 術 振 興 協 会 に対 して,数 次 に わ た り平 成9年 度研 究 成 果 の 説 明 会 を 実 施 した。 そ の 結 果,函 館 高 専 校 長 よ り当研 究 の 趣 旨 と意 義 に 関 して 理 解 を得 た の で,同 校 地 域 交 流 委 員 会 の協 力 の 下 で 平 成11年1月 に 「 函 館 高 専 卒 業 者 対 象 企 業 意 識 調 査 ア ンケ ー ト」 が 実 現 した。

2‑3ア ンケ ー ト設 計

函 館 高専 は,昭 和37年4月,機i械 工 学 科,電 気 工 学 科,土 木工 学 科(平 成7年 度 よ り環 境 都 市 工 学 科 へ 改 組)の3学 科 で 開 校 し,昭 和41年 度 に工 業 化 学 科(平 成8年 度 よ り物 質 工 学 科 へ 改 組),平 成3年 度 に情 報 工 学 科 を増 設 し,現 在,

5学 科 体 制 とな っ て い る。 昭和42年3月 卒 業 の 第1期 生 か ら平 成9年3月 卒 業 の 第31期 生 ま で で,合 計4,053名 の 卒 業 生(機i械工 学 科1,033名,電 気 工 学 科1,033 名,情 報 工 学 科78名,工 業 化 学 科 ・物 質 化 学 科867名,土 木 工 学 科 ・環 境 都 市 工 学 科1,042名)を 輩 出 して い る 。

ア ン ケ ー ト設 問 は,次 の6項 目 を設 定 した 。 項 目1:プ ロ フ ィー ル

高 専 卒 業 年 次 ・学 科,現 住 所,家 族 構 成,持 ち家 な どに つ い て 質 問 項 目2:職 歴

現 勤 務 先,職 種,E‑mailの 利 用 な どに つ い て 質 問 項 目3:Uタ ー ン意 識 調 査

Uタ ー ン希 望,理 由,障 害 な どに つ い て 質 問 項 目4:起 業 意 識 調 査

起 業 希 望,ビ ジ ネ ス プ ラ ン,起 業 場 所,支 援 策,相 談 先 な ど につ い て 質 問

項 目5:当 研 究 へ の興 味

項 目6:自 由 コ メ ン ト

(8)

共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム は函 館 高専 と事 前 調 整 を行 っ た 結 果,こ の4053名 の 卒 業 生 の デ ー タベ ー ス を作 成 した 。 次 に(a)卒業 後 既 に10年 以 上 が 経 過 して い る,第1期 生 か ら昭 和62年3月 卒 業 の 第21期 生,か つ(b)最新 の 卒 業 者 名 簿 にお い て,道 外 勤 務 か つ 自宅 住 所 が 判 明 して い る者,と い う2つ 条 件 の も とで デ ー タベ ー ス か ら抽 出 され た計841名 に 対 して ア ンケ ー ト調 査 用 紙 を送 付 し た。

2‑4ア ンケ ー ト結 果

ア ンケ ー トの 回答 者 総 数 は151名 で あ っ た の で,回 収 率 は18.0%と な っ た。 そ こで,回 答 者151名 を母 数 と して,〈Uタ ー ン希 望 者 〉 お よ び 〈 起 業 希 望 者 〉 と い う2つ の グ ル ー プ 分 類 を行 っ た の が 表3で あ る 。

表32つ の グ ル ー プ 分 類 有 効 回 答 者 数151名:100%

起業 希望 な し15名10%

起業希 望 不 明12名8%

Uタ ー ン&

起 業 希 望 16名11%

Uタ ー ン ・起 業 と も に 希 望 せ ず97名:64%

そ の 結 果,全 体 を100と す る と起 業 希 望 者 は全 体 の18%に 達 し,そ の う ちUタ ー

ン も併 せ て希 望 す る者 は全 体 の11%に 達 した 。 す な わ ち,ア ン ケ ー ト対 象 の お

よ そ2割 が 回 答 した な か で,そ の2割 が 起 業 希 望 者 で あ り,か つ1割 が 研 究 第

1段 階 で わ れ わ れ が 想 定 した 〈Uタ ー ン&ベ ンチ ャ ー〉 の 潜 在 的 候 補 者 で あ る

との結 論 を得 た 。 も し も,こ の 結 果 を道 内 国 立 高 専 の卒 業 生 全 体 に あ て は め る

と,卒 後10年 以 上 の 卒 業 生 お よ そ1万 人 の うち2000千 人 近 くが 起 業 希 望 者 で あ

る との推 測 を得 られ る。 だ とす れ ば,そ の うち3%の 起 業 成 功 率 を か け て も,

お よそ600の 製 造 系 ベ ン チ ャー 候 補 者 を 道 内 国 立 高 専 は潜 在 的 に 輩 出 して い る

(9)

地域型 ベ ンチ ャー 支援 シス テ ムの研 究(中) こ と とな る。 北 海 道 の 未 来 に 希 望 の もて る推 測 とい え よ う。

37

次 に,〈 起 業 希 望+Uタ ー ン希 望 〉,〈起 業 希 望 〉,〈Uタ ー ン希 望 〉,〈希 望 な し〉

の4分 類 にお け る 各 種 の個 人 属 性 との ク ロス 集 計 を と っ て,ア ン ケ ー ト結 果 を 分 析 した 結 果 が 表4で あ る。 特 に起 業 を希 望 す る2つ の 部 門 は 強 調 の た め 編 掛 け処 理 を 行 っ た。

表4卒 業 学科 趨 叢 灘 夕

一 ン藷 灘 巷

1趨 難 のみ錆 墜 者

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もない 者 合 計

機械工学科 5 2 9 39 55

電気工学科 $ 4 20 30

工業化学科 壽

一 茎

6 7 19

土木工学科 § 藩 8 31 47

合 計 16

27 97 151

卒 業 学 科 で は,起 業 を希 望 す る2部 門 の 計 で 各 卒 業 学 科 と もに ま んべ ん な く存 在 す る もの の,機 械 工 学 科 と土 木 工 学 科 が く 起 業+Uタ ー ン〉 で や や 多 くな っ て い る こ とが 観 察 され る。

表5年 齢

卒年基準年齢 趨 叢 ・慧 タ ー ン希 璽 餐 趨叢のみ希 藻蓉

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もな い者 合 計

52歳/昭 和42卒 o な 3 8 11

51歳/昭 和43卒 心 1 2 10 13

50歳/昭 和44卒 1 慧 1 3 7

49歳/昭 和45卒 o o 1 7 8

48歳/昭 和46卒 孟 o 1 9 11

(10)

47歳/昭 和47卒 o 慧 0 7 9

46歳/昭 和48卒 o ま 2 8 11

45歳/昭 和49卒 ま ¢ 3 1 5

44歳/昭 和50卒 ま 1 1 6 9

43歳/昭 和51卒 ま 写 0 3 4

42歳/昭 和52卒 o ◎ 0 8 8

41歳/昭 和53卒 ◎ ◎ 1 5 6

40歳/昭 和54卒 荏 ジ 2 1 8

39歳/昭 和55卒 1 倉 0 6 7

38歳/昭 和56卒 1 倉 2 1 4

37歳/昭 和57卒 ◎ ◎ 1 1 2

36歳/昭 和58卒 0 籍 2 6 10

35歳/昭 和59卒 荏 o 1 3 8

34歳/昭 和60卒 o 倉 1 2 3

33歳/昭 和61卒 三 ま 2 1 5

32歳/昭 和62卒 0 o 1 1 2

合 計 欝 ま圭 27 97 151

年 齢(基 準 卒 業 年 次)で は,興 味深 い こ とに35歳,40歳,45歳,50歳 に起 業 希 望 者 の 分 布 が 大 きい こ とが 観 察 さ れ る。 特 に35歳 が 最 も高 い こ とは,就 職 ・結 婚 ・出 産 ・マ イ ホ ー ム取 得 とい っ た ラ イ フサ イ ク ル を考 え あ わ せ る と,子 供 の 小 学 校 へ の 就 学 年 齢 に達 す る 直 前 で マ イ ホ ー ム の 取 得 を 考 え 出 す 時 と一 致 す る 。 ま た,彼 らの 親 が 仮 に平 均 出 産 年 齢 で あ る28歳 を加 え る と63歳=年 金 受 給 開始 年 齢 に一 致 す る こ とか ら,故 郷 へ のUタ ー ン適 齢 期 で あ る との仮 説 が,ア

ンケ ー ト結 果 か ら確 認 され た 。 そ れ ゆ え,わ れ わ れ の イ ンキ ュベ ー シ ョ ン対 象

者 を 〈30歳代 半 ば 〉 と想 定 す る こ と に よ っ て,よ り絞 り込 まれ た イ ンキ ュベ ー

シ ョ ンの 設 計 が 可 能 とな る 。

(11)

地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究(中) 39 表6勤 務 先(従 業員数)

趙 業 ・Uタ ー ン庸 盤 麿

趨業のみ矯 盤蓉

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もない 者 合 計

50名 以 下 4 1 4 22 31

500名 以 下 1 3 5 9 18

5000名 以 下 7 3 12 33 54

5000名 超 4 5 6 33 48

合 計 16 11 27 97 151

勤 務 先 で は,起 業 希 望 者 は500名 未 満 の 中小 企 業 に極 端 に少 な く5000以 上 の 大 企 業 に偏 在 して い る こ とが 確 認 され る 。 特 に 〈 希 望+Uタ ー ン〉 の う ち500名

以 上5000名 未 満 の 中 堅 企 業 に特 に 多 い こ とが わ か る 。

表7現 住 所

起 叢 ・Uタ ー ン庸 藍 者

趨叢 のみ希 墾者

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もない者 合 計

東北 1 1 14 18

北 関 東 e 1 5 7 13

首都 圏 欝 ¢ 19 59 94

甲 信 越 ・北 陸 0 5 5

東海 3 1 7 11

関西 0 4 6

その他 1 1 1 1 4

合 計 ユ1 27 97 151

現 住 所 で は,起 業 を希 望 す る しな い にか か わ らず 首 都 圏 に圧 倒 的 に居 住 す る こ

とが わ か る。 こ こ で注 意 を要 す る 点 は,本 ア ン ケ ー トが 〈 道 外 居 住 者 〉 に 限 定

して い る点 で あ る。 そ れ ゆ え,道 内 居 住 者 は 調 査 対 象 か ら除 か れ て い る。

(12)

表8家 族 構 成 起 叢 ・uタ

ー ン鵜 蕪 餐

起難のみ潔 欝 叢

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もない者 合 計

配 偶 者 ・子 供 あ り 13 7 19 84 123

配偶者 の みあ り 工

・ 窯'

5 8 16

独 身 勲 諸 3 5 12

合 計 猫 1工 27 97 151

起 業 希 望 者 の う ち,圧 倒 的 に 〈 配 偶 者+子 供 〉 の 区 分 が 多 く しめ る の は,同 世 代 の 結 婚 比 率 か らみ て 自然 で あ る。

表9持 ち 家

趨 藁 ・奪 タ ー ン嚢 塑 者

趨繋のみ庸 塑麿

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの 希

望 もな い者 合 計

持 ち家 あ り 護 7 14 84 110

持 ち家 な し $ 釜 13 13 38

不 明 $ o 0 0 3

合 計 1s 1ユ 27 97 151

こ こで 注 意 深 い 点 は,起 業 希 望 者 に 関 して い え ば 〈 持 ち 家 〉 の有 無 は,起 業希 望 と無 関 係 で あ る 点 だ 。 た だ し,〈 起 業+Uタ ー ン〉 は持 ち家 な しの 方 に多 い の に 対 し,〈 起 業 〉 の み の場 合 は持 ち家 あ りの 方 に 多 い の は 自然 で あ る 。

表10Uタ ー ン の 障 害(複 数 回 答 可)

無 業 ・毒 タ ー ン灘 蟹餐

趨業のみ籍 盤麿

Uタ ー ン の み 希 望 者

どち らの希

望 もない者 合 計

独 立 の メ ド立 たず 善 o 4 13 21

生活不安 7

l

a 9 14 30

(13)

地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(中) 4ヱ

勤 め先 が ない 11 王 21 30 63

情報不足 9 11 16 36

収 入低 下 11 奪 14 24 49

家 族 の反対 1 7 11 19

現 勤務 先 の反対 a 2 8 15

そ の他 倉 奪 3 3 6

Uタ ー ンの 障 害 に つ い て の 設 問 で は,起 業 希 望 者 の う ち 〈 起 業+Uタ ー ン〉 で は,勤 め 先 が な い とい う消 極 的 理 由 を 除 く と,収 入 低 下 と情 報 不 足 が圧 倒 的 な 理 由 に挙 げ られ て い る。 こ れ は次 の設 問 で もあ る公 的 支 援 制 度 で も顕 著 に表 れ て い る。 こ こか ら推 測 で きる こ と は,イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ンの 設 計 に あ た っ て,

表11公 的支 援制 度 は必 要 か 起 巣 ・uタ

ー ン蒲 蜷 者

漣藁のみ鶉 墾奢

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もない者 合 計

必要 15 17 50 91

不 要 ・不 明 1 譲 6 47 60

合 計 11 27 97 151

表12起 業 期間 起 業 ・uタ

ー ン薦i塞者

煙業 のみ嚢 難緒

Uタ ー ンの み 希 望 者

どち らの希

望 もない者 合 計

1年 ¢ 1 1 4 6

3年 12

撃H撃 摯1撃1

蔓 9 24 49

5年 § 姦 2 9 15

7年 以上 1 倉 1 2 4

不 明

撃 「1

3 宴 14 58 77

合 計 11 27 97 151

(14)

生 活 資 金 まで 考 え た合 理 的 で 明快 な支 援 シス テ ム の 情 報 を,全 国 に公 開 す る こ とが 極 め て重 要 で あ る こ とが 理 解 され る 。 ま た,起 業 希 望 者 に お け る家 族 の 反 対 の 少 な さ も特 筆 で き よ う。

起 業 希 望 者 が想 定 す る起 業(準 備)期 間 は わ ず か3年 と な っ て お り,わ れ わ れ が 当 初 予 想 した5年 と較 べ て は る か に短 か った 。 こ れ は,高 専 卒 業 者 た ち が 卒 業 後 に 蓄 積 した 高 い 技 術 力 と道 外 に け る マ ー ケ ッ トア クセ ス が 極 め て 現 実 的 な

もの で あ る と考 え られ る 。

本 章 の ア ンケ ー ト調 査 結 果 を見 る 限 り,地 元 工 業 高 等 専 門 学 校 卒 業 生 を 中心 的 担 い 手 とす るU(1)タ ー ン と起 業 の 有 機 的 結 合 に よ る製 造 系 ベ ンチ ャ ー の創 出 は,北 海 道 の"RegionalAdvantage(地 域 の優 位 性)"を 活 か せ る形 態 と し て現 実 的 で あ り有 望 で あ る,と の仮 説 は 支 持 され る と言 え よ う。

3地 域 型 ベ ン チ ャ ー ・イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン の 新 概 念 一 企 業 誘 致 か ら人材 誘 致 へ 一

3‑1企 業 誘 致 か ら人 材 誘 致 へ (1)地 域 優 位 性 とU・1タ ー ン

ー 般 的 に ,首 都 圏 で 勤 務 す る理 工 系 技 術 者 の なか で北 海 道 出 身者 のUタ ー ン志 向 は 他 地 域 出 身 者 に く らべ て き わ め て 高 い こ とが 各 種 調 査 か ら確 認 さ れ て い る。 そ の 理 由 と し て は(a)人ロ密 集 ・高 温 多 湿 に な じめ な い,(b)豊 か な 自然 環 境 へ の 望 郷,な どが 考 え られ る。 か え っ て,北 海 道 に比 べ て バ ブ ル 崩壊 以 降 首都 圏 に お け る住 宅 保 有 コ ス トが きわ め て高 くな り,生 活 コス トが 大 き くか さ む よ

うに な っ た こ とが 大 きな 原 因 とな っ て い る と指 摘 さ れ て い る。

そ う した 点 で,道 内 中核 都 市 は,バ ブ ル経 済 に よ る 土 地 価 格 上 昇 か ら取 り残 さ

れ て しま っ た こ とが,U・1タ ー ン の獲 得 面 で の 〈 地 域 優 位 性 〉 を北 海 道 に も

(15)

地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(中) 43 た ら した 。 なぜ な ら,北 海 道 の 中核 都 市 が バ ブ ル 現 象 に見 ま われ な か っ た こ と が,結 果 的 に 首 都 圏 との 土 地 価 格 差 を際 だ た せ,北 海 道 内 で の 住 宅 取 得 を相 対 的 な有 利 性 を押 し上 げ た た め で あ る 。 ま た,国 内 に お け る ポ ス トバ ブ ル 経 済 に お け る強 い デ フ レ圧 力 と金 融 危 機 は,大 手 メ ー カ ー の大 規 模 な事 業 再 構 築 す な わ ち リス トラ を 拡 大 させ,首 都 圏 に お け る失 業 者 を増 加 させ て い る。そ の 結 果, こ う した 失 業 者 の 再 就 職 お よ び新 規 学 卒 者 の 首 都 圏へ の 就 職 数 は減 少 傾 向 に あ る た め 賃 金 上 昇 も抑 制 され て お り,相 対 的 に 道 内 の 〈 地 域 優 位 性 〉 を 高 め て い る。

最 後 に,従 来 か ら北 海 道 に手 厚 く配 分 さ れ て きた 国 内 公 的 投 資 の長 期 的 減 少 傾 向 や 都 市 銀 行 破 綻 に よ る 地域 経 済 へ の 強 い危 機 感 は,北 海 道 にお け る 民 間 ベ ン チ ャー 育 成 の機 運 を盛 り上 げ て い る 。 こ う した 支 援 策 の 多 くは,地 方 に優 先 的 に配 分 され る こ とが 多 く,首 都 圏 に く らべ 比 較 的 少 数 の 競 争 で 公 的 支 援 を受 け や す い 状 況 に あ る。 こ れ も ま た,北 海 道 の く 地 域 優 位 性 〉 に貢 献 して い る とい

っ て よい だ ろ う。

(2)企 業 誘 致 か ら人 材 誘 致 へ

道 内 中核 都 市 に は,東 京 と直 接 結 ば れ る ジ ェ ッ ト空 港,ISDNに 代 表 され る高 速 光 フ ァ イバ ー 通 信 網,低 廉iな臨空 型 工 業 団 地 と住 宅 地,国 立 工 科 系 大 学 や 工 業 高 等 専 門学 校,降 雪 産 業 高 度 化 支 援 施 設,が す で に存 在 して い る 。 これ らの 地 域 優 位 性 を 有 機 的 に結 び つ け たハ ー ド とソ フ トの ぞ な わ った く 地 域 型 ベ ンチ ャ ー ・イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン〉 が で きれ ば,国 内 製 造 系 企 業 に よ る大 規 模 な リス

トラ が 進 行 中 の 現 在,道 内 出 身 理 工 系 人 材 の移 住 最 初 の 受 け皿 とな ろ う。

誘 致 した 人 材 が 既 存 の 地 域 経 済 の枠 組 み で あ る 地 場 企 業 に 再 雇 用 され る こ と

も,地 場 企 業 の 中 長 期 的 な技 術 高 度 化 とい っ た 面 で 多 大 な 貢 献 を果 た す で あ ろ

う。 だ が,す で にで きあ が っ た組 織 風 土 に 自 ら を慣 れ され る た め に は,多 大 な

時 間 と労 力 を 要 す る。 そ れ よ り も,誘 致 した理 工 系 の 人材 に く ベ ンチ ャー 企 業

(16)

家 〉 と して 自立 す る た め に必 要 な 〈ビ ジ ネ ス 教 育 〉 と,よ り具 体 的 な 〈 企 業 設 立 と運 営 の手 法 〉 を伝 授 し さ え す れ ば,地 域 型 ベ ンチ ャー 企 業 の創 出 が ス ピ ー

ドア ッ プす る こ と は,米 国 の1980年 代 に お け る経 験 が 証 明 して い る 。

3‑2な ぜ,道 外 マ ー ケ テ ィン グ なの か?

人 材 誘 致 は道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ に 貢 献 す る 。 な ぜ な ら,道 外 で そ れ まで 職 業 経 験 を つ ん で きた もの な ら,道 外 の市 場 構 造 を 既 に知 っ て い るか らで あ る。

(1)域 際 収 支 に お け る赤 字

北 海 道 は 域 際 収 支 面 で2兆4千 億 円 の 赤 字 を抱 えて お り,そ れ は道 内 総 支 出 の お よ そ13%に あ た る。 と ころ が,そ れ を補 っ て 余 りあ る公 的 支 出が 中 央 政 府 か ら の補 助 金 と して北 海 道 に 手 厚 く投 入 され て い る た め,現 在 まで は県 民 所 得 で 国 内 中位 水 準 を維 持 し て きた 。 しか し なが ら,今 後 は社 会 の 少 子 高 齢 化 が 進 み 社 会 保 障 費 用 が 増 大 す る な か で,税 収 は 長 期 的 に 減 少 す る た め 北 海 道 地 域 へ の 従 来 通 りの 手 厚 い公 的 支 出 は 望 むべ く も な い。 そ の 結 果,域 際 収 支 の赤 字 を縮 小 させ な い 限 り,公 的 支 出 の 減 少 は不 可 避 的 に 道 民 所 得 の減 少 を招 く。

結 果 的 に,道 内GDPは マ イ ナ ス 成 長 が 当 た り前 とな る た め,税 収 が 減 少 し て 財 政 赤 字 が 拡 大 し,地 方 税 率 を上 げ な い 限 り公 共事 業 等 の財 政 規 模 と公 務 員 の 大 幅 縮 小 は 避 けが た い 。 だが,そ れ は 〈 官 依 存 型 体 質 〉 と い わ れ る北 海 道 経 済 に け る成 長 要 因 を直 撃 し,さ ら に経 済 成 長 を悪 化 させ る。 こ の よ う な ス パ イ ラ ル な 経 済 成 長 の 悪 化 に 対 処 す る た め に は,域 際 収 支 の 赤 字 幅 を縮 小 させ る こ と に 尽 き る が,そ もそ も製 造 業 が 弱 くサ ー ビ ス 業 に過 度 に依 存(GDPの73%) す る北 海 道 地 域 に お い て,域 際 収 支 の赤 字 幅 を縮 小 させ る た め に 移 輸 入 水 準 を

落 とす こ とは,直 ち にGDPの6割 を しめ る民 間 最 終 消 費 支 出 の 減 少 と流 通 部

門 を は じめ とす るサ ー ビス 産 業 の 衰 退 を もた らす 。 そ れ を避 け る た め の 唯 一 の

手 段 と は,移 輸 入 に均 衡 す る水 準 に達 す る ま で北 海 道 か ら他 地 域 へ の 移 輸 出 を

増 や す こ と しか な い。

(17)

地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(中) 45 (2)コ ス ト競 争 力

前 回 の 報 告 論 文 「 地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シス テ ム の研 究(上)」 に お い て,道 内 中核 都 市(函 館,苫 小 牧,釧 路,旭 川)の 場 合,国 内 は も と よ りア ジ ァ諸 国

と比 較 して も製 造 系 コス トに お い て 高 い 競 争 力 が 存 在 す る こ とが わ か っ た 。 こ れ らの 地 域 に お い て,少 数 で は あ る が 固 有 の 高 い技 術 力 を 有 し道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ で成 功 を お さめ る製 造 系 ベ ン チ ャー 企 業 が 実 際 に存 在 し,か れ らの 利 潤 率 が きわ め て 高 い こ と も確 認 され た。なぜ な ら,こ れ ら の道 内 地 方 中核 都 市 で は, 製 造 系 企 業 に とっ て 決 定 的 な コス ト要 因 と な る 〈 土 地 価 格=レ ン タル コス ト〉

お よ び 〈 人 件 費=レ イバ ー コス ト〉 が 絶 対 的 に安 い か らで あ る。 そ の た め,そ の 地 で 開発 製 造 さ れ た 受 注 製 品 が,首 都 圏 と同 じ価 格 で販 売 され た場 合,同 地 域 の 同業 他 社 に比 べ 圧 倒 的 な低 コ ス トを実 現 で き る た め で あ る。

日本 国 内 にお い て は 従 来,土 地 を担 保 とす る 資 金 調 達 が 一 般 的 で あ っ た た め, 土 地 価 格 の 高 騰 が もた らす レ ン タ ル コス トお よび レ ーバ ー コス トの上 昇 に よ る 高 コス ト化 と い う弊 害 は看 過 され て きた 。 だ が,生 産 物 が 国 境 を越 え て 取 り引 き され る 時 代 に入 っ て,土 地 価 格 の水 準 は製 造 業 に とっ て 決 定 的 な コス ト要 因 と な りつ つ あ る。 他 方,為 替 要 因 と所 得 要 因 に よ っ て,絶 対 地 代 が 安 い発 展 途 上 国 へ と製 造 現 場 が シ フ トす る こ とは,国 内製 造 業 の空 洞 化 を1980年 代 前 半 の 米 国 や 後 半 の 日本 に もた ら した 。 そ う した 意 味 で は,た とえ 国 内 他 地 域 と比 べ れ ば 安 く と も,世 界 全 体 で見 れ ば土 地 コス トや 労 働 コ ス トに お い て北 海 道 は競 争 力 を持 ち 得 な い とい う の が 定 説 で あ っ た 。だが,実 際 に は 〈 超 精 密 金 属 加 工 〉 や 〈 食 品 加 工 ロ ボ ッ ト〉 〈 半 導 体 製 造 装 置 〉 とい っ た 分 野 に お い て,技 術 力 に お い て は 首都 圏 の 大 手 メ ー カ ー と変 わ らず 製 造 コス トは半 分 程 度 の 製 造 系 ベ ン チ ャ ー企 業 が,地 方 中 核 都 市 に数 多 く育 っ て い る 。

(3)道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ の重 要 性

た と え ば,一 機 数 百 億 円 す る 人 工 衛 星 を構 成 す る 重 要 部 品 や,小 型 軽 量 安 価 な

GPS・ 携 帯 電 話 な ど に使 わ れ る部 品 金 型,ま た,0157等 の 食 中 毒 に 対 処 す べ

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く食 品 加 工 工 場 にお け る全 面 的 な ロ ボ ッ ト化 な ど は,多 少 品 質 が 劣 っ て も安 く て大 量 生 産 で きれ ば い い とい う分 野 の 対 極 に あ る製 造 業 で あ る。 だ が,現 実 に は,こ の よ うな少 品 種 ・少 量 の 生 産 体 制 を維 持 す る こ とは 大 企 業 に と っ て きわ め て重 荷 と な りつ つ あ る 。 そ の 結 果,大 手 メ ー カ ー に とっ て,シ ス テ ム の一 部 ま た は 全 部 を シ ャー シ ・ケ ー ス の み 自社 ブ ラ ン ドと して 中 身 は設 計 開 発 か ら納 入 据 え付 けお よび ア フ タ ー メ イ ンテ ナ ンス ま で任 せ られ る,高 い 技 術 力 が あ り か つ 低 コス トな 中小 企 業 に 対 す る需 要 は む しろ 増 大 して い る。

も と よ り大 手 メ ー カー は技 術 力 の あ る 中 小 企 業 に対 して,単 位 コ ス トあ た りの 技 術 力 に 関 して生 産 を委 託 して い る の で あ っ て,古 典 的 な 資 本 支 配 や 会 社 囲 い 込 み を す る こ とを 目的 と して い な い 。 そ れ ゆ え,そ の 関係 は 支 配 ・被 支 配 とい っ た従 属 関 係 で は な くむ しろ 相 互 補 完 的 なパ ー トナ ー シ ップ に近 い。そ れ ゆ え, 系 列 化 は 発 生 しえ ず 大 手 メ ー カー か らの 人 の 派 遣 も な い。 た と え そ う した くて も資 本 力 は も はや な く,出 向 者 に対 す る 給 与 補 填 も不 可 能 に な りつ つ あ る。 た だ し,か つ て 勤 務 した 経 験 を 有 し,ベ ンチ ャ ー ビ ジ ネ ス と して 独 立 した の ち も 昔 の 仲 間 と良 好 な 関 係 を維 持 して い る場 合 が 多 い 。

この よ うな ベ ンチ ャー 企 業 に と っ て,現 在 の 驚 異 的 な 〈 イ ン ター ネ ッ ト〉 の発 展 は もっ と も有 利 な マ ー ケ テ ィ ン グ プ ラ ッ トフ ォー ム とな っ て い る。 つ ま り,

イ ン タ ー ネ ッ トを介 し て大 手 メ ー カ ー の 営 業 部 門 とベ ンチ ャー 企 業 の 設 計 開発 部 門が リア ル タ イ ム で 設 計 図 等 の 逐 次 修 正 を行 え る結 果,従 来,日 参 して い た 営 業 担 当 者 の 相 手 事 業 所 訪 問 回 数 を激 減 させ,さ ら に ま た企 画 提 案,契 約,納 入 な どは 地 方 ジ ェ ッ ト空 港 を 用 い た頻 繁 か つ 機 動 的 な道 外 出 張 に よ っ て 十 分 対 応 可 能 とな っ て い る。 そ れ ゆ え,道 内企 業 に よ る 旺 盛 な道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ こ そ が,北 海 道 の移 輸 出 力 を 高 め て 持 続 的 な マ ク ロ 成 長 を さ さえ る重 要 な 経 済 目 標 と な りつ つ あ る 一 方,個 々 の 道 内 中小 企 業 に とっ て も利 潤 率 の 大 きい 販 路 拡

大 に絶対 的 に有効 かつ不可 欠な経営戦 略なので ある。

(19)

地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シス テ ム の 研 究(中) 47 3‑‑3な ぜ,製 造 系 コ ア技 術 な の か?

(1)成 長 と発 展

イ ノベ ー シ ョ ン理 論 の 始 祖 で あ る理 論 経 済 学 者 シ ュ ンペ ー タの 主 著 『 経 済 発 展 の 理 論 』 に よ る と,す べ て の く 経 済 発 展 〉 は,所 得 や 人 口 とい った 単 な る量 的 な 経 済 規 模 の 増 減 を意 味 す る 〈 経 済 成 長 〉 とは,完 全 に 区別 して 考 え られ るべ き も の と主 張 す る。 なぜ な ら,旧 ソ連 の 農 業 経 済 学 者 コ ン ドラチ ェ フ が 明 らか に した,固 有 技 術 の誕 生 か ら成 熟 ・衰 退 にい た る50数 年 問 に お よぶ 長 期 波 動 の 存 在 に よ っ て 経 済 成 長 が 停 滞 に 陥 っ た 時,「 企 業 家 」 に よ る既 存 の生 産 手 段 の 組 み 替 え が行 わ れ,(a)新 技 術,(b)新 商 品,(c)新 原料,(d)新 組 織(e)新 販 路,が 生 み 出 さ れ た 経 済 は新 た な発 展 段 階 に達 す る と,シ ュ ンペ ー タは 考 え た か らで

あ る。

有 力 地 元 銀 行 の 破 綻 消 滅 を 国 内 で い ち早 く経 験 し,中 央 省 庁 再 編 に よ っ て 北 海 道 開 発 の要 と も い え る北 海 道 開 発 庁 が 消 え た今,北 海 道 経 済 を新 た な発 展 段 階 に 導 くた め に は,シ ュ ンペ ー タの い う く 新 結 合 〉 が 北 海 道 経 済 に不 可 欠 な こ と は説 明 す る まで もな い 。 そ の た め に は,少 数 の 天 才 的 な技 術 者 よ りも,む し ろ 異 な る既 存 技 術 の組 み 替 え を 遂 行 して新 た な新 市 場 を創 出可 能 な 「 企 業 家 」 が 多 数 必 要 で あ る。 こ う し た 「 企 業 家 」 が どの よ うな 製 品=プ ロ ダ ク ツ を市 場 に 投 入 す る か に よ っ て,企 業 家 の バ ッ ク ラ ウ ン ドは規 定 され る。

(2)財 の移 輸 出

3‑1で 述 べ た とお り,現 在 の 危 機 的 な 北 海 道 が抱 え る 固 有 の 問 題 点 で あ る 〈 域 際 収 支 の大 幅 赤 字 〉 を解 決 す る た め に は,北 海 道 か ら大 幅 な移 輸 出 を増 加 させ な け れ ば な らな い 。 そ の 方 法 は(a)競争 力 の あ る 〈 財 〉 を移 出す る,(b)競 争 力 の あ る 〈 サ ー ビス 〉 を移 輸 出 す る,(c)国 内外 の 観 光 客 を さ らに誘 致 す る,の どれ か を拡 大 させ る必 要 が あ る。 だ が,北 海 道 が 首 都 圏 よ り遠 隔 地 に あ る た め,在 庫 の で き な い 商 品 で あ る 〈 サ ー ビス 〉 を移 輸 出す る こ と は ほ とん ど望 め な い 。

ま た,観 光 客 も十 分 す ぎ る ほ ど流 入 して い る。 だ とす れ ば,生 産 時 点 と消 費 時

(20)

点 に差 が作 れ る く 財 〉 の 移 輸 出 が もっ と も望 ま しい 移 輸 出 商 品 と な る 。 こ う し た 財 を 商 品 と して 首 都 圏 市 場 に投 入 す るた め に は,そ の財 が 世 界 的 な技 術 水 準

に達 して い る必 要 が あ る。 な ぜ な ら,高 コス トで 円 高 の 日本 市 場 は,技 術 水 準 にお い て 世 界 的 な水 準 に達 して い な い 限 り国 産 品 で 競 争 力 を維 持 す る こ と は不 可 能 に近 い か らで あ る。 そ れ を可 能 とす るす る コア 技 術 を,北 海 道 は どの よ う に 蓄 積 して 開 発 す れ ば よ い の だ ろ う か 。

技 術 は本 来 「 人 材 」 に 蓄 積 す る。 そ れ は 現 在 ま で の と こ ろ コ ン ピ ュ ー タの ソ フ トウ ェ ア 上 で 発 展 す る も の で は な い し,ま たハ ー ドが 進 化 す る コ ン ピュ ー タ も 実 用 化 さ れ て はい な い 。 つ ま り,人 間 が す べ て の技 術 を生 み だ し,製 品 開 発 に 応 用 す る の で あ る。 そ して,技 術 蓄 積 の な か っ た 地域 に人 工 的 に高 度 な技 術 発 展 段 階 を生 み 出 す こ とが,全 く不 可 能 で は ない こ と を歴 史 は証 明 し て い る 。 た だ技 術 を蓄 積 し た 人材 が 集 積 され れ ば よい の で あ る 。 こ う した例 は,い くつ か の技 術 発 展 史 をみ れ ば 明 確 に確 か め られ る 。

た と え ば,ペ リー が 来航 した1853年 以 前 の 日本 に は蒸 気 機 関 を動 力 源 とす る 船 舶 は 存 在 しな か っ た。 しか しな が ら,日 露 戦 争 の 日本 海 海 戦(1905年)で は 旧 海 軍 の 戦 艦 をの ぞ く巡 洋 艦 以 下 の 補 助 艦 艇 の 幾 隻 か は 国 産 で あ っ た し,そ の 後 の 太 平 洋 戦 争 にお け る ミ ッ ドウ ェー 海 戦(1942年)で は,旧 帝 国 海 軍 の連 合 艦 隊 に 所 属 す る す べ て の 巨 大 空 母 ・戦 艦 は 蒸 気 タ ー ビ ンエ ンジ ン も含 め て 国 産 で あ っ た 。 つ ま り,船 の 原 材 料 で あ る鉄 鋼 や 機 械 の 国 産 化 に,日 本 は わず か1/

3世 紀 で 成 功 した こ とに な る。

さ ら に,自 動 車 産 業 の発 展 も未 成 熟 で あ っ た に も か か わ らず,第 二 次 大 戦 直 前

で 世 界 最 高 水 準 の 航 続 距 離 ・高 速 度 ・旋 回性 能 を示 した 「 三 菱 製 零 式 艦 上 戦

闘機 」は,純 国産 化 した 「 住 友 金 属 製 航 空 機 用 ス ー パ ー ジ ュ ラ ル ミ ン」や 「 中

島 飛 行 機製 作 所 製 栄21型 発 動 機(航 空 機 用 空 冷 エ ン ジ ン)」 「 横 須 賀 海 軍 工 廠

製 一 式20mm機i銃 」 とい っ た超 高 度 精 密 機 械 技 術 の 集 合 体 で あ っ た 。 航 空 機i

(21)

地 域 型 ベ ンチ ャー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(中) 49 は,現 在 で も精 密 機 械 技 術(お よ び電 子 エ レク トロ ニ ク ス技 術)の 粋 で あ る工 業 製 品 で あ る。 満 足 な 自動 車 す ら国 産化 で きな か っ た1930年 代 か ら40年 代 に か け て の戦 前 期 にお い て,世 界 最 高 水 準 の 航 空 機 を 日本 が 開発 生 産 で きた 理 由 は た っ た一 つ しか な い 。 す な わ ち,欧 米 に直 接 留 学 し,ま た 欧 米 か ら招 い た技 術 者 の も とで 必 死 に学 び なが ら,国 内へ の技 術 移 転 につ とめ た 多 数 の く 技 術 者 〉

集 団 と,彼 らを 強力 に育 成 保 護 した く 政 策 〉 の 結 果 で あ っ た 。

つ ま り,技 術 集 積 は 〈 輸 入 〉 と 〈 模 倣 〉 か らは じ ま り,後 に は き わ め て 短 期 間 で 〈 消 化 〉 され,〈 蓄 積 〉 し,〈 開 発 〉 され た の で あ る。 ゆ え に 技 術 は 人材 に よ っ て 移 転 され る。

(3)北 海 道 へ の コア技 術 移 転

ふ た た び 目 を北 海 道 に転 じて み る と,大 幅 な域 際 収 支 の赤 字 解 消 を可 能 とす る 道 外 移 輸 出 を支 え る 〈コ ア技 術 〉 を どの よ う に 道 内 に定 着 発 展 させ て ゆ け ば よ い の だ ろ うか 。 そ の 答 え は 身 近 に存 在 す る。 答 え は,十 分 な技 術 トレー ニ ン グ を 受 け た 〈 人 材 〉 の 道 内 へ の積 極 的 な 〈 誘 致 〉 に あ る。 こ こで 意 味 す る技 術 ト レー ニ ング と は,単 に理 工 系 高 等 教 育 機 関 に お い て エ ンジ ニ ア の 卵 と して の 教 育 訓 練 を 意 味 す る の で は な く,そ れ を前 提 と した く 企 画 〉〈 設 計 〉〈 開 発 〉 〈 製 造 〉

〈 品 質 管 理 〉 につ い て,そ の 全 て ま た は そ の 一 部 の 領 域 に つ い て 企 業 組 織 内 で オ ンザ ジ ョブ トレー ニ ン グ を 受 け,業 務 と して 遂 行 して きた こ と を意 味 す る。

そ う した 意 味 で,少 な く と も北 海 道 に生 ま れ た か,も し くは何 らか の理 由 で 北 海 道 に居住 す るこ とを希望す る技術者 が,道 内に移住 してその得意 とす る技 術 を体 現 す る 製 品 の商 品 開 発 に従 事 す る こ と は,す な わ ち 〈 コ ア技 術 〉 の 道 内 移 転 と 同義 で あ る。 しか も,戦 前 期 の 日本 と異 な り現 在 の北 海 道 は,通 信 ・エ ネ ル ギ ー ・物 流 な どの イ ン フ ラ が くま な く整 備 さ れ て お り,国 際 港 湾 と国 際 空 港 が あ っ て ル ー トに制 約 は あ る もの の 全 世 界 に 向 け た 輸 出 も可 能 な状 態 に あ る。

さ ら に,未 曾 有 の 国 内 景 気 不 況 の 下 で投 資 の源 泉 た る 国 内貯 蓄 は だ ぶ つ き,金

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利 は 世 界 の どの 地 域 ・国 よ り も低 金 利 ・低 イ ン フ レ状 態 に あ る 。 つ ま り,企 業 活 動 の根 幹 で あ る設 備 投 資 の 前 提 条 件 は す べ て 満 た され て い る 。

残 さ れ た 課 題 は,こ う した 〈コ ア技 術 〉 を 蓄 積 した 〈 人 材 〉 を どの よ う に して 道 内 に 移 住 させ,技 術 移 転 を進 め るか で あ る 。 そ れ が,本 論 の 課 題 で あ る 「 地 域 型 ベ ンチ ャ ー」 創 出 の 具 体 的 方 法 へ とつ な が る。

3‑4北 海 道 の 地 域 優 位 性

(1)A・ サ ク セ ニ ア ン博 士 の 問 題 提 起

A・ サ ク セ ニ ア ン博 士 は,UCLAに 提 出 し た博 士 論 文 に お い て 「なぜ ベ ンチ ャ ー 企 業 は,東 部 の ボ ス トン周 辺 で は な く西 部 の シ リ コ ンバ レー に育 っ た の か?」 と い う疑 問 に対 し て,〈 地 域 優 位 性 〉 とい う概 念 を 提 示 し て い る。 す な わ ち,東 部 の大 企 業 が 首 都 ワ シ ン トンDCに も近 く,巨 大 な公 的投 資 で あ る 軍 事 研 究 プ ロ グ ラ ム に も参 加 しや す く ま た そ れ を好 ん だ の に対 して,シ リコ ンバ レ ー周 辺 に は そ の よ う な機 会 に恵 まれ ず,周 辺 産 業 も育 っ て い な か っ た た め に HPに 観 ら れ る 大 学 周 辺 部 に お け る ハ イ テ ク型 ベ ン チ ャー 企 業 し か可 能 性 が な か っ た こ と,を 地 域 の不 利 で は な くか え っ て 有 利 な条 件 と して と ら え て い る 。

サ ク セ ニ ア ン博 士 が 言 う よ う に,北 海 道 地 域 は,(1)中 央 政 府 か ら遠 い た め,政 府 調 達 や 産 業 政 策 補 助 な ど を多 く期 待 で きな い,(2)周 辺 に産 業 コ ン プ レ ッ クス が 形 成 され て い な い,(3)頼 り とな る の は知 的 資 源(大 学)と 豊 富 な知 的労 働 力 (U・1タ ー ン技 術 者),と い え よ う。 そ の 結 果,イ ンフ ラが 十 分 整 っ た北 海 道 は,は じめ か ら貧 困 な域 内 市 場 を前 提 と し ない グ ロー バ ル戦 略(コ 道 外 マ ー ケ テ ィ ン グ)を 前 提 と した 数 名 か ら出 発 す る ベ ンチ ャー 企 業 に よ る挑 戦 しか, た ぶ ん 成 功 の見 込 み は ほ と ん どな い だ ろ う。

(2)人 材面 での地域優位 性

少子 高齢化す る社会 におい て供給 量が減少 す る 〈 良質 な理工系 人材 の確保 〉 と

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地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(中) 5‑Z い う面 で,ま た 低 コス トな 工 場 建 設 の 基 本 前 提 で あ る低 廉 な土 地 コス ト とい う 面 で,北 海 道 地 域 の 優 位 性 は潜 在 的 に上 昇 して い る。 なぜ な らば,長 年,製 造

メ ー カー で生 産技 術 を蓄 積 し た 中 高 年 技 術 者 が 労 働 市 場 で 再 就 職 を得 よ う と し て も,年 齢 給 と して の一 定水 準 の賃 金 を 中小 企 業 は オ フ ァー で き な い た め に再 就 職 は ス ム ー ズ に 運 ば な い 。 そ の結 果,意 図せ ざ る失 業 は,大 企 業 の リス トラ が 進 行 し早 期 優 遇 退 職 が 拡 大 して い る 。 だが,北 海 道 で は そ もそ も不 動 産 取 得 を は じめ とす る あ らゆ る生 活 コス トが 安 い た め,中 小 企 業 が 出 しう る 賃 金 水 準 (大企 業 の お よそ60‑70%)で も実 質 可 処 分 所 得 は意 外 に低 くな らな い 。 そ の た め,そ も そ も北 海 道 出 身 の技 術 者 の 場 合,故 郷 にUタ ー ン し て親 世 代 との2

‑3世 代 同 居 ,ま た は近 隣iでの 居 住 の メ リ ッ トまで 考 え あ わ せ る と,首 都 圏 大 企 業 を辞 め て か ら道 内 へ の転 職 に よ る 給 与 ダ ウ ン はそ れ ほ ど大 き な生 活 水 準 の 低 下 を もた らさ な い 。

加 え て,道 内製 造 系 ベ ンチ ャー 企 業 の 経 営 者 が 地 元 国 立 高 専 の 出 身者 で あ っ た 場 合,人 材 獲 得 面 で2重 の メ リ ッ トが 発 生 して い る。 す な わ ち,(1噺 た に獲 得 した い技 術 をす で に保 有 す る一 流 の技 術 系 人 材 を高 専OBネ ッ トワ ー ク 人 脈 の 中 か ら見 つ け だ し,転 職 に 向 け た説 得 を行 う こ とは き わ め て 容 易 で あ る こ と, (2)成長 を 始 め た事 業 分 野 に お け る 新 規 採 用 面 で,OB企 業 と して 母 校 に リ ク ル ー ト活 動 を行 う こ と は母 校 教 官 な らび の 父 兄 の 双 方 か ら大 歓 迎 さ れ る た め, 多 額 の リ ク ル ー ト費 用 と予 測 不 可 能 な 人 材 採 用 リス ク を大 幅 に低 減 した確 実 な 新 規 卒 業 者 の 採 用 が 可 能 に な る こ と,で あ る。

(3)コ ス ト面 で の 地 域 優 位 性

企 業 経 営 の 〈コ ス ト〉 面 で も,北 海 道 地 域 の く 地 域 優 位 性 〉 は 非 常 に増 して い

る 。 「 地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シス テ ム の 研 究(上)」 で も明 らか に した とお り,

国 立 高 専 所 在 地 に あ た る道 内 中核 都 市(函 館,苫 小 牧,釧 路,旭 川)で は,土

地 コス ト,工 業 用 水 コス ト,交 通 コ ス トな ど で,国 内4都 市(仙 台,横 浜,大

阪,福 岡)は も ち ろ ん,ア セ ア ン7力 国 との 比 較 で も相 対 的 また は絶 対 的 に安

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価 で あ る こ とが 確 認 され て い る。

た しか に,未 熟 練 労働 力 を集 約 的 に用 い る産 業 に お い て道 内 中核 都 市 が 国 際 競 争 力 を失 っ て い る こ と は,為 替 レ ー ト面 か らい っ て も明 白 で あ る。 しか し なが ら,設 計 開発 か ら独 自部 品 の 内 製 化,相 手 先 へ の 直 接 納 入 とそ の 後 の ア フ ター メ イ ンテ ナ ンス ま で を,大 手 メ ー カ ー が ベ ンチ ャー 企 業 に す べ て ア ウ トソー シ ン グす る場 合,東 南 ア ジ ア の現 地 メ ー カ ー に全 面 ア ウ トソ ー シ ン グす る こ と は 非 現 実 的 で あ る。 これ らの 国 に お け る最 大 の ボ トル ネ ック は,理 工 系 の 良 質 な エ ン ジ ニ ア不 足 に あ り,せ っ か く 日本 企 業 が 育 て た エ ン ジ ニ ア の ジ ョブ ホ ッ ピ ン グ(高 給 目 当 て の転 職)は2‑3ヶ 月 単 位 で発 生 す る こ とは 日常 茶 飯 事 で あ る 。 そ れ ゆ え,大 手 メ ー カ ー の 第 一 線 技 術 者 が 転 職 し て働 く道 内 ベ ンチ ャー 企 業 の コス ト競 争 力 は,一 部 の 台 湾 や 韓 国 の 大 手 メ ー カ ー を の ぞ くと ア ジ ア の な か で 絶 対 優 位 に あ る 。

加 え て,国 内 製 造 業 に と っ て の 唯 一 の ア キ レス 腱 で あ る 〈 高 コス ト〉 の 主 た る 要 因 は,土 地 価 格 の 高 さか ら く る 〈 労 働 コス ト〉お よ び 〈 工 場 用 地 取 得 コ ス ト〉

で あ る。 しか し,土 地 単 価 が5万 円/坪 を下 回 る 道 内 中核 都 市 にお い て は,こ れ は 問 題 とな ら な い 。 コス ト面 にお け る残 され た 問 題 点 は く 物 流 コス ト〉 で あ る が,重 量 あ た りの付 加 価 値 が 高 い 製 品 で あ れ ば,物 流 コ ス トは 相 対 的 に 低 下 す る 。 た と え ば,ア タ ッ シ ュ ケ ー ス で運 べ る10セ ンチ*2セ ンチ 角 の超 精 密 金 型 部 品 の場 合,そ の 単 価 は10万 円/個 に も達 す る 。 これ は セ ー ル ス 担 当 者 が 出 張 で 一 度 に 数 十 個 個 運 べ る重 量 と容 積 で あ り,も ち ろ ん1500円 程 度 の 宅 配 便 に よ る輸 送 も可 能 で あ る 。 ま た,一 機2000万 円 程 度 す る食 品加 工 機 械 の輸 送 は, 通 常 トラ ッ ク&フ ェ リー に よる 国 内輸 送 で あ り,そ の コ ス トは 首 都 圏 ま で20万 円/台 程 度 で あ る 。2000万 円 す る受 注 機 械 に しめ る輸 送 費1%は,は た して 高

コス トとい え る だ ろ うか?

つ ま り,人 材 面 お よび コス ト面 で,道 内 中 核 都 市 に立 地 す る 製 造 系 ベ ンチ ャ ー

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地 域 型 ベ ンチ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の 研 究(中) 53 企 業 に は,国 内 は も と よ り ア ジ ア各 国 と比 べ て も北 海 道 の 〈 地 域 優 位 性 〉 は存 在 す る こ とが 結 論 で きる 。 次 章 で は,こ う した 〈U・1タ ー ン&ベ ンチ ャ ー 〉 を受 け 止 め,か れ ら にベ ンチ ャ ー創 業 期 ま で に 必 要 と され る支i援プ ロ グ ラ ム を 提 供 可 能 な く 地 域 型 ベ ンチ ャー ・イ ン キ ュベ ー シ ョ ン〉 の 設 計 を行 う。

4イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン の 設 計 一 人 材 誘 致 に求 め られ るハ ー ドと ソ フ ト ー

4‑1海 外 参 考 事 例:台 湾 「 新 竹 サ イ エ ン ス パ ー ク」

イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ンの 参 考 事 例 と して,は じめ に海 外 の ベ ンチ ャ ー ・イ ン キ ュ ベ ー シ ョン に 関 す る調 査 結 果 を報 告 す る。 共 同研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム は,平 成10年2月 に米 国 シ リコ ンバ レ ー を,平 成10年9月 に 台 湾 新 竹 サ イ エ ンス パ ー

ク を,平 成11年3月 に 国立 シ ン ガ ポ ー ル 大 学 に お け る現 地 視 察 お よび イ ン タ ビ ュ ー調 査 を実 施 した 。 シ リ コ ンバ レー の 実 状 は,こ れ まで に も多 くの メ デ ィ ァ な らび にA・ サ ク セ ニ ア ン博 士 の著 書 の な か 詳 細 に語 られ て い る た め,こ こ で は北 海 道 に と っ て 特 に参 考 に な る と考 え られ る 〈 台 湾:新 竹 サ イ エ ンス パ ー ク〉

を取 り上 げ る。

1970年 代 まで は典 型 的 な軽 工 業 と農 業 が 主 力 産 業 で あ っ た 台 湾 は,1980年 代 以

降 の 台 湾 型 産 学 官 連 携 に よ るエ レク トロ ニ ク ス 産 業 の発 展 に よ っ て全 世 界 に お

け るパ ソ コ ン モ ニ ター シ ェ ア の60%を もつ に至 っ た。 そ の 背 景 に は,い か な る

要 因 が存 在 す る の だ ろ う か?1980年 代 に入 り新 総 統 を迎 えた 台 湾 政 府 は 「台

湾 を 一 大 ハ イ テ ク産 業 国家 にす る」 とい う決 定 を行 っ た 。 そ の た め,首 都 の 台

北 か ら高 雄 に 向 か う列 車 で1時 間 圏 内 に(お お よそ 東 京 と筑 波 の 関係)に あ る

新 竹(シ ン チ ュ ウ)市 に 国 立 の く 新 竹 サ イ エ ン ス パ ー ク;約6000ha,7万 人

の 雇 用 〉 を建 設 した 。 新 竹 サ イエ ンス パ ー ク は,以 下 の3つ の 目的 を も っ て建

設 さ れ た 。 す な わ ち(a)外国 企 業 の受 け 皿,(b)流 出 人 材 の 環 流 を 図 る 受 け皿,(c)

国 内技 術 の 高 度 化 と定 着 の た め の拠 点,で あ る 。

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そ して,こ れ らを 実 現 す る た め に2つ の 〈国立 工 科 大 学 〉,半 官 半 民 組 織 で あ る 〈(財)工 業 技 術 院〉,お よ び完 全 国 有 形 態 の 銀 行 ・シ ョ ッ ピ ング セ ン タ ー ・ 幼 稚 園 か ら高 校 まで 所 有 す る 〈 工 業 団 地 〉が,完 全 に 有 機 的 に結 合 され て い る 。 驚 くべ き こ と は,そ の 規 模 で は な く,念 入 りに 計 画 さ れ た く 戦 略 的 産 学 官 連 携 シス テ ム 〉 に あ る 。 これ ら3つ の産 学 官 ハ ー ドウ ェ ア は互 い に競 合 せ ず,連 続 的 に連 携 す る領 域 を 共 有 して い る。す な わ ち,(a)大 学 は人 材 の供 給 と科 学研 究, (b)工業 技 術 院 は企 業 化 前 提 の 開 発 試 作 と ビ ジ ネ ス イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン,(c)国 立 工 業 団地 は 工 業 技 術 院 で 工 場 操 業 段 階 に 入 っ た企 業 の 立 地 場(地 元 ベ ンチ ャ ー

お よ び外 国 企 業 進 出)を 担 う,と い う産 学 官 連 携 で あ る。

〈 工 業 技 術 院 〉

台 湾 に お け る 産 学 官 連 携 は,〈 科 学 〉 と 〈 技 術 〉 を 戦 略 的 に分 離 す る こ とが 大 きな 特 徴 とな って い る 。 〈 科 学 〉 は大 学 の 重 要 な 機 能 で あ る。 だが,〈 技 術 〉 と は 開発 す る もの で あ っ て,明 確 な期 限 プ ロ ジ ェ ク トと大 量 の 資 金 と人 材 を 集 中 的 に投 入 し て 成 功 す る もの で あ る(工 業 技 術 院 長 林 博 士)。 そ れ ゆ え,工 業 技 術 院 で は基 礎 的 な研 究(論 文 作 成 な ど)を 全 く行 わ ず(そ れ は 隣iの工 科 大 学 の役 割),製 品 の 開発 試 作 の み が 行 わ れ る。 そ の 意 味 で,工 業 技 術 院 は 政 府 か ら完 全 に独 立 した 半 官 半 民 の 財 団 と し て,政 府 か らの大 量 の 研 究 資 金 を導 入 し て半 導 体 製 造 や パ ソ コ ンな どの 大 型 プ ロ ジ ェ ク トに 関 す る全 面 委 託 を受 け て い る。資 金 の使 途 は工 業 技 術 院側 に完 全 に 委 ね られ て お り,プ ロ ジ ェ ク トメ ンバ ー は期 限 と と もに 政 府 に報 告 義 務 が あ る。 そ の 結 果,プ ロ ジ ェ ク トの 成 否 は 明確 で あ る 。 プ ロ ジ ェ ク トの メ ンバ ー は,主 に工 業技 術 院 の研 究 員 に よっ て 構 成 さ れ,ほ か に外 部 民 間 企 業 か らの 参 加 や 隣… の工 科 大 学 大 学 院 の 学 生 お よび 教 授 も 多 く参 加 す る。 技 術 院 の マ ネ ー ジ ャー は 成 果 を 出 せ ば昇 進 し,失 敗 す れ ば解 雇

され る 。

プ ロ ジ ェ ク トが 終 了 す る と,そ れ らの 開 発 試 作 過 程 で 購 入 され た製 造 装 置(ほ

とん どが 日本 製)の 償 却 が 終 了 す る。 そ して,成 功 した プ ロ ジ ェ ク トは 速 や か

(27)

地 域 型 ベ ン チ ャ ー 支 援 シ ス テ ム の研 究(中) 55 に事 業 化 さ れ な け れ ば な らな い 。 そ の結 果,プ ロ ジ ェ ク トメ ンバ ー は,退 職 す る か 工 業 技 術 員 の マ ネ ー ジ ャ ー と して残 ら ない 限 り,事 業 化 した 企 業=院 内 ベ ンチ ャ ー の社 員 へ と 自動 的 に 身 分 が 変 わ る 。 当然,償 却 の お わ っ た 生 産 設 備 は 彼 らの 社 有 設 備 と な る か わ りに工 業 技 術 院 に 入 居 家 賃 を支 払 わ な くて は な らな い。 また,工 業 技 術 院 内 部 に は 〈 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ンセ ン タ ー〉 が 設 置 さ れ て お り,レ ン タル ラ ボが 多 くの ベ ンチ ャ ー創 業 直 後 の企 業 に3年 間 貸 し出 さ れ て い る 。 さ らに,こ れ らの 企 業 に対 す る く ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル〉 制 度 も あ り, 年 間 数 社 へ5000万 円程 度 の 出 資(無 担 保 で 融 資 で は な い)が 行 わ れ て い る。 さ

ら に,国 内100社 を こ え る民 間VCが,有 望 な 企 業 発 掘 の た め に 同 セ ン タ ー に 日参 して い る 。 大 学 教 授 も企 業 化 を前 提 とす る技 術 開発 や ベ ンチ ャー 起 業 に も 関 わ っ て い る が,そ の場 合 は,大 学 と工 業 技 術 院 問 で の 〈 兼 任 〉 また は技 術 院 へ の 〈 転 職 〉 に よ っ て,大 学 外 で行 っ て い る よ う で あ る。

工 業 技 術 院 の 公 用 語 は英 語 お よ び 中 国 語 で あ るが,多 数 の 米 国 ・日本 の 大 学 院 工 科 系 修 士 ・博 士 課 程 修 了 者 が マ ネ ー ジ ャー を務 め,英 語 に よる技 術 開 発 等 で 何 ら問 題 が な い(職 員 の英 語 能 力 に つ い て は,現 地 高 校 卒 業 程 度 の ア シス タ ン

トも同様 に流 暢 だ っ た。)

〈国立 工 業 団 地 〉

工 業 技 術 院 で の 試 験 生 産 とサ ンプ ル 出 荷 が 軌 道 に乗 っ た(3年 以 内)ベ ンチ ャー 企 業 は,隣iの 工 場 団 地 に 移 転 して工 場 生 産 を 始 め る。 この と き注 目す べ きは, 電 力 供 給 か ら高 速 デ ジ タ ル 通 信 ネ ッ トワ ー ク まで 完 備 した工 業 用 地 を,〈 用 地 +建 屋 〉で も 〈 用 地 の み 〉で も,一 律4000円/平 米 の レ ン タル 料 金 で貸 し出 す 。 つ ま り,自 社 工 場 を建 設 して も用 地 は 国 有 地 の ま ま で あ り,建 屋 を含 め た 国 か らの レ ン タ ル で あ れ ばベ ンチ ャ ー企 業 の 工 場 建 設 に伴 う初 期 投 資 は ほ とん ど発 生 しな い よ う に 設 計 さ れ て い る。

工 業 団 地 は全 く独 立 した 国 営 事 業 で,敷 地 中央 部 に あ る 「 管 理 局 」 で は,土 地

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