マ イク ロコ ン ピュー タに よるオペ ラ ン ト 実 験 制 御 シ ス テ ム
A Micr∝omputer‑BasedSystem fortheControlof OperantExperiments
平 岡 恭 一*
KyoichiHiraoka (1984.12.20受理)
論 文 要 旨
オペ ラン ト条件づけをは じめ とす る動物行動実験を制御す るための, マイ ク. ,コンピュータシステムを作 製 したので報告す る。本システムは,いわゆ るパー ソナル コンピュー タと既製 の入出力イ ンターフェースボ ー ドを用 いてお り. ‑ー ドゥェ7の構成が簡単であ る。 また, プ. ,グラム開発 ソフ トウェ7を使用 し,境械 語でのプログラ ミングを容易に した。小規模 な実験であれば,複数台の装置の制御 も可能である。
近年の電子工学技術の著 しい発展は, マイ クロコソビュータ (以下 マイ コンと略す)を入手 し易いものに した。心理学 の実毎 釦こマイ コンを利用す る動 きは, ます ます さかんで あ る (例えば
,Bird,1981;中邑 ・富 永 ・利島
,1982)。心理学の実験 にマイ コンを利用す ることの利点は次 の よ うな ものであろ う。
1. 実験 の精密性や信頼性が向上す る。
2.
実験手続等 の変更が, プログラムを書 き変 えることで容易にで きる。
3.
実験制御 とデータ記録を
1台の機械で行 うことがで きる。
この ことは,動物 行動研究において も例外 ではない。む しろ, この龍城は,最 も早 くマイ コンが導入 された 領域 のひ とつであ り,実験制御の 自動化や,データ処理 などを 目的 としたマイ コンシステムが数多 く報告 さ れている ( 石井
,1979;Greenshaw,Blackman&
Thoma s
,1981;0'del
l,1981;山本
,1982)O
マイ コンに よる制御に最 も適 した突放装置は, いわゆ るスキナ一箱をは じめ とす るオペ ラン ト条件づけ装 置であろ う。 この種の装置は,多 くが
,28(ない し
24)Vdcの電源で 動作す るよ うに 作 られている。 各種刺激や餌出 し器,それに電撃発生装置等 の制御は
,28Vを電源 とす る回路 の開閉に よってな され る。 また, レバー押 し反応等のデータは接点開閉の形で与え られ る。 マイ コン本体は,通常, この よ うな装置を直接に は制御で きないので,両者 の間に,入出力イ ンターフェースが必要 とな る。
これ まで報告 された, ワンボー ドマイ コンをは じめ とす るコンピュー タ制御 システムは,入出力イ ンター フェースを 自作す るものが多か った。 しか し,周辺機器の 自作 とい うのは,
IC等に関す る知識や, t t バ タ ヤ精神"( 苧阪
,1970)をかな り持 ち合わせない限 り,意外 に敷居が高い よ うであ る。証)
また,機械語で プログラムす る場合,‑ ソ ドアセ ンブルでは能率が悪 いので,開発を助け るソフ トウェア (アセ ンブラ等)が必要 となる。 この よ うな ソフ トウェアは, ワソボー ドマイ コンではな く, フルキーボー ドと
CRTデ ィスプレイを備 えた,
BASICマシ ンで働 くよ うに作 られた ものが殆 どであ る。
ここに報告す るのは,いわゆ るパー ソナル コンビュタを用 いたオペ ラ1 / ト実験制御 システムで,以下 の粂 註)
IC回路は,他の素子を用いたものより製作が簡単であるといわれるが,筆者自身,いざ‑ンダごて を持ち,回路図 に向かうことを考えると,きれいに作ろうとか,自作のものの信頼性はどうか,などと考えすぎて しまい,手が出せな いことがかなりあった。
*弘前大学教育学部心理学科教皇
DepartmentofPsychology,FacultyofEducation,HirosakiUuiversity98
平 岡 恭 一 件が考慮 されているものである。
1. ‑‑ ドウェアが容易に構成で きること。
2,
機械語 プログラム開発 ソフ トウェアが使え, システムが独立 していること。
3.
以上
2条件を満た した上で,で きるだけ安価であること。
ハー ドウ ェア システム構成
マイ コン本体は, 日本電気製
PC‑8001mkⅡ ( 以下 マ‑クⅠと略す)である。 この機種は, ソフ トのみな らず ‑ー ドウェアについて も,多 くの周辺機器が開発 されてお り,入出力イ ンターフェースも数種入手で き る。 さらに拡張用バスが
2ス ロッ ト装備 されてお り,多数の装置の制御が可能なこと, また割込みのプログ ラ ミングが比較的容易な こと等,実験制御に適 した特徴を持つ。本体に加え, グ リーンデ ィスプレイ,デー タレコーダ, プ リンタ,及び入出力イ ンターフェースに よ り,システムを構成 した。実験装置は ラッ ト用 ス キナ一箱である。
リ7ルタイム割込み
動物実験を行 うに札 時間の計測が不可欠 といって もよい。デ ィスク リー ト試行実験では試行間間隔, 自 由反応実験では
FI
,ⅤⅠスケジュール等に用い られ る。
本 システムでは, リアルタイム割込みに よって時間を計測 している。割込み とは,大体次の よ うな働 きで ある
。 CPUに外部か ら割込みを要求す る信号が入 ると,
cPUはそれ まで していた仕事 (メイ ンプログラ ム)を一時中止 し,予め指定 された番地へ飛ぶ。そ こには, メインプログラムとは別のプログラムを書いて おき,その処理を終えると,割込み時に処理 していた メイ ンプログラムの番地に戻 るのである。
リアル タイム割込みに おいては,割込み要求信号が 一定時間間隔 (マークⅠの場合
600分の 1秒)で 自動 的に入 るよ うになっている。従 って割込み処理でその回数を数えれば,時間が測れ ることになる。 この方法 に より,時間の計測を しなが ら,反応データの入力やその保存を並行 して行 うことができ, また複数台の装 置の制御 も可能になる。マークⅠの取扱説 明書には割込みに関す る記述が殆 どないが, この機種の割込み関 係の部分は,
PC‑8001用 の拡張ユニッ ト
PC‑8011 及び
PC‑8012と同様の使い方ができる。 プログラ ミ
ングについては, これ らの解説書に詳 しい。
入出力インター7 ェ‑ス
多 くのマイ コンは,外部に開放 された拡張用バスを持 ってお り, これに様 々な外部機器を接続す ることが で きる。拡張バスを通 してデータを出力す る場合,電圧は
5Vであるが,電流が非常に小 さいため,通常, 直接には リレー等を駆動 させ ることがで きない。そ こで トランジスタ等に より,電流を増幅 してや る必要が ある。 また,外部で非常に大 きな電流が流れた場合など,本体に悪影響を及ぼす危険性があるため,本体 と 外部装置 との間にフ ォ トカプラ等を入れて,電気的に遮断 してお くのが望 ましい。 これ らの必要性を満たす イ ンターフェース として,本 システムでは,青書工業製
BullI/0#1を 用いた。 これは 入力
16点,出力
16点を持つパ ラレル入出力 インターフェースボー ドで,出力として リレー又は電圧
(35V),入力として接 点又は
5V電圧が使用で き,入出力 ともに, フォ ト・アイ ソレー トされている。電源は
+ 5Vのみで,マイ
コン本体か ら供給 しているが,現在のところ,容量不足に よる誤動作等はない。
このボー ドの大 きな特徴は,
1バイ ト
(8ビッ ト)に よってひ とつの機器を制御 している点であろ う。一般に発表 されているインターフェースは,マイコンが外部装置 との間でや りと りす る 1 バイ トのデータの各 ビッ トに,機器を 1 個ずつ割 り合てているものが殆 どである。 この方法では, どの機器を動かすか, また, どの機器か ら入力があったかに よって,転送 され るデータの値が異なるので,特に多数の機器を制御す る場 合には, プログラ ミングが非常に繁雑になる。
この点,今回用 いた ものは,機器を区別す るのは 個 々の ビッ トではな く,データを 転送す る
Ⅰ/0 ( 入出
力)番地である。転送 され るデータそのものは, どの番地について も
,ONが16進数の 1
,OFFが
Oと常 に
同 じなので, プログラ ミングが簡潔 とな り, ミスも少ないよ うであ る。
ソフ トウェア
使用言語は,処理速度を考慮 し,機械語 としたC プpグラム開発用 ソフ トウェアとして,
I‑PROT"(アス キー, テープ版)を 使用 している。 これは
PC‑8001(mkⅡ) 用に つ くられて お り,小規模,安価なが ら, エデ ィタ, アセ ンブラ.デバ ッガ等,必要最低限の機能を持 っている。実験制御 プログラムは,基本的には タイマ用 メモ リの参照や反応入 力データの読み込み と,それ らの条件判断でループを構成 し,所定の条件を 満たす場合に実験装置‑の出力や実鼓 データの保存を行 うとい う形に した。次に,主要なプログラムルーチ
ンについてい くつか述べ る。
リ7ルタイム割込み
マークⅡの リアル タイム割込みは, 1 )セ ッ ト ( 又は電源投入)時に禁止 され るので, この境能を使 うため には
,Fig.1Aの よ うなプログラムを書かねばな らない。再び禁止す るには
Fig.1Bの よ うにす る。
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Fig.
1
.リアル タイム割込み許可及び禁止 プログラム
割 り込み 処理 の
1例を
Fig.2に示す。 ここでは, まず
1/600秒 タイマとして 使 って い る メモ リの 値 を
1増や し, さらに その値が
6に な っていれば,他の
2つの メモ リに
1を 加える。つ ま り これ らの メモ リは
1/100秒 タイマになってお り,実鼓には これを使 っている。 プT lグラム中,破線で囲んだ部分は,割込み時
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IFig. 2.
1 ) ア
ルタ イ ム
割込 み処 理ル ー チ
ン100
平 岡 恭 一
の処理が どの ようなものであって も,必ず書 く。割込み発生時に, このルーチ ン‑処理を移すためには, ジ ャンプテーブル
(8004番地)にその 先頭番地 (ここでは
D600)を書いてお く必要がある。 アセ ソブ 1 )言語 に よるテキス トプログラム上では, この番地指定は割込みルーチ ソよ り後になければならない。逆だ とアセ ンブル途中で割込みがかか った時に暴走 して,それ以後アセ ソブルで きな くなるので注意を要す る。
入出力ルーチン
装置か らの入力は,レバー押 し反応に よる接点入力のみであ る。プログラム例を
Fig・3に示す。 まず
Ⅰ/0の
8F番地 (I /,;‑を 接続 した入力端子に 対応 している)のデータを 読み込み, レバーが 押 されていれば (データが
1であれば)吹‑進み,いなければ
(Oであれば)そのデータを記憶 して再び読み込みを してい
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,(E3FH) i:.ミヨ臼コ FEl二.u:)i)uitl斗CF・ZこE工〕E3 Lb)臼Ei7
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Fig.3.
反応入力プログラム
る。以下の行では,前回読み込んだデータが 0であって今回は
1であった時にのみ.反応数記家用 メモ リの 内容に
1を加え,前回のデータが
1であ った時には何 もせずに再び読み込みをする。 この方法に よ り. どの ような長 さの反応で も
1回 と計数 され る。
実験装置内の各機器を動かすには,対応す る
Ⅰ/0番地
‑16進数の
1(リレー
ON)か
0(閉OFF)を出力す れば よい
。Fig.4がその
1例である。
DE
l g
b 3EL:)0 D日rj白 D.Ttilli
: , 8
‑7'.q
.3Eiコl D白9F .
Dコ
9コLJj .A,()'二〉H OUT (911
日 .白
LD A,()lH 口utT tl9コH),lj
Fig.4.
出力プログラム
; LEV
i :
汁:E):‑I; TIEr・泊 ljFF
; L
1
‑:,rlJNロトl内部サブルーチンの利用
プログラ ミング,特に 実験者 との対話の部分に おいては,BASI
Cインタプ リタの 内部サブルーチ ンが役D7=L.D CDSAt二14 D74t:I SE44 D74コ CD57(:)≡ D745 3E占l D747 CD5702 D74A 3E79 D74C CD57(:)コ D74F CDD45F D752 FDD45F D755 CD75OF D75白 ココ(コ占DD D75B CD5702
Fig.
CALL O45AH LD A,■■
D
"CALL 0257H LD A
,
''a'l CALL 0257H LD A,‖y"CALL O'i57H'l CALL SFD4H EF:1Ll̲ 5FD4H CflLL !:.1F75H LLl (ODDt:1bH)
.I ‑
ll CALL 0257H5.
内部サブルーチ ソ利用 の一例
; DAY INPUT
に立つ。例えば,バ ラメ‑タ入力時のキースキ ャン. デ ィスプレイへの表示
,16進及び
10進 データの相互変 換,実験結果 のプ リンタ出力な どが,内部サ ブルーチ ンに よって機械語 レベルで容易にで きる
。Fig・5に示 す例は, デ ィスプレイに ‑ t
Day"を表示 し,キー入力があるまで スキ ャンし続け,入力が あればそれを メモI )に格納す るとともに デ ィスプレイに表示す るプログラムである。 マー クⅡの説明書は内部サ ブルーチ ソに 関 してあ ま り詳 し くないが,最近 この種の解析書が出ている
(川村
,1983)0
ま と め
‑ー ドウェアが容易に構成で きるとい う条件は,いわゆ るパー ソナル コンピュー タと既製 のイ ソターフェ ースを用 いた ことに よ り,ほぼ満足 された といえ よ う.実際. ‑ ソダづけを したのは, イ ンターフェースと 実験装置を結ぶケーブルの端子 ぐらいの ものであった。費用 もそれほ どかか らない。問題は,使用言語が機 械語であ るため,開発 ソフ トを用 いて もプログラ ミングに時間がかか り, プログラムが長 くなるとわか りに くくなることであ る。 この点で多少使いづ らさは残 るが,本システムは,小規模の各種実験に適用で きるよ うである。実験条件に もよるが, 2‑ 3台の装置の同時制御 も可能であろ う。
参 考 文 献
Bird
,
R.J・Thecomp7lterinExberimcntalPsychology.AcademicPress.1981.
Greenshaw,A.J
"
Blackma n
,D.E.,&Thomas,G.V.MicrKOmPuterS in operantconditioning latx)ra‑tories:Somegeneral comments.BehaviourAnalysis
L
etters,1981,
1,237‑240.石井 厳 動物 ・生理実験 のための東大大型計算機 セ ンターとのオ ンライ ン
TSSマイ クロコンビェ‑メ ー ・システム 立教大学心理学科研究年報
,1979,21・22,34‑41.
川村 清 f
t18001mkⅡ解析マニェアル
Ⅰ秀和 システム トレーデ ィング
1983.中邑賢龍 ・富永大介 ・利島 保 マイクロコンビェ一夕を用 いた心理学実験制御及び反応計測のシステム 化 心理学研究
,1982,53,244‑248.0'
t
kl
l,J.W.TheMicroAce:Aninexpensivecomputercontroller.Behaviw ResearchMethods& Zn・struction.1981,13,682‑685・