図1 RA-VII の3つのコンフォメーション (a)conf.A(b)conf.B(c)conf.C
conf.A が活性本体である理由を明らかにする為には conf.B との比較を行う事が重要である。RA-VII の物性についてコンフォメーション間で比較された研究は、ほとんど報告されていない。加えて、 conf.C は存在率が小さく、観察することさえも困難である。本研究においては、量子化学計算と分子 動力学(MD)シミュレーションの2つの手法を用いて RA-VII の3つのコンフォメーションの動的な 特徴を比較した。 2.手法 本研究では、量子化学計算とMD の2つの手法を用いて、3つのコンフォメーションの動的な特徴 の解析と比較を行った。量子化学計算の初期構造に関して、RA-VII の conf.A の構造は X 線結晶構造 を用いた。conf.B と conf.C はソフトウェア Avogadro を用いて配座を変化させた。この3つの構造 (conf.A, B, C ) を ソ フ ト ウ ェ ア Gaussian に よ っ て 構 造 最 適 化 計 算 を 行 っ た 。 CAM-B3LYP/6-311G(d,p)で得られた構造を最適化構造として得た。これらの構造を基に、振動解析に よってギブス自由エネルギーを算出した。DMSO の溶媒効果を加味した計算を行っており、この際の DMSO は連続体モデルである。
MD シミュレーションは、量子化学計算で得られた各コンフォメーションの最適化構造を初期構造 とした。力場はAmaber General Force Field(GAFF)を用いた。溶媒は DMSO を用いた。MD にお けるDMSO は全原子構造を用い、力場はFeller- Strader モデルを採用した。平衡化の後、300 K、1 Bar
の条件化で300 ns のシミュレーションを行った。MD シミュレーションの結果をもとに、構造の揺ら ぎ、二次構造や水素結合の形成について解析を行った。 3.結果 構造最適化計算の結果として得られた各コンフォメーションの構造を図2に示す。conf.A と conf.B では、コンフォメーションの違いであるペプチド結合を除いて、大きな差異は観察されなかった。し かし、conf.C においては Ala4 の側鎖が他の2つのコンフォメーションに比べて外側に突き出る構造で あった。この3つのコンフォメーションの自由エネルギーを比較すると、conf.A が最も低く conf.C が 最も高かった。この結果は、NMR での観察結果と定性的に一致している。
値を比較した(図 3)。その結果、conf.A は他2つに比べて RMSF の値が大きいことが分かった。リ ボソームとのドッキングの際、揺らぎの大きい
conf.A は、柔軟に構造をドッキング部位に合わせることが可能であるため、活性が高い可能性がある。
図2 構造最適化によって得られた構造 (a) conf. A (b) conf. B (c) conf. C
(c) の赤い円は(a),(b)との向きの差が大きかった Ala4 の側鎖を示している。
図3 MD シミュレーションによる RMSF
conf.A(赤:実線)、conf.B(青:点線)、conf.C(緑:破線)
異なる局所安定構造の解析のために、自由エネルギー地形を作成した(図 4)。conf.A と conf.B に 関しては、Tyr3 側鎖の回転異性体と一致した。しかし、conf.C については、Tyr3 側鎖の回転異性体 以外の局所安定構造を2種類発見した。この2種類の局所安定構造の自由エネルギーを計算した結果、 最も安定な局所安定構造とのエネルギー差は5.38 kcal/mol、6.75 kcal/mol であり、不安定な構造で あることが判明した。
図4 RMSD と二面角𝜒𝜒1を反応座標とした自由エネルギー地形 表1:RA-VII の各コンフォメーションのドナーごとの水素結合の形成率 4.今後の展望 RA-VII の3つのコンフォメーションにおいてリボソームの結合と膜透過性という 2 つの観点におい て違いが見られる可能性がある。リボソームとのドッキングシミュレーション、及び生体膜近傍の環 境下でのMD シミュレーションを行うことで、より構造活性相関の研究にとって有益なコンフォメー ション間での差異が見いだされることが想定される。 【研究結果の掲載誌】
(1) Structure and hydrogen bonds of cyclohexapeptide RA-VII by molecular dynamics simulations and quantum chemical calculations. Yoh Noguchi, Hironao Yamada, Sakiko Mori, Takeshi Miyakawa, Ryota Morikawa, Satoshi Yokojima, Yukio Hitotsuyanagi, Koichi Takeya, Masako Takasu. Molecular Simulation. 44(1)73-84 (2017)
donor Intra Inter None Total conf. A Ala4 67.83 0.00 32.17 100.00
conf. B Ala4 10.32 59.63 30.05 100.00