論文審査の結果の要旨
氏名:山 室 俊
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:Interferon-betaの膠芽腫に対する新たな抗腫瘍効果:膠芽腫細胞における未分化性獲得の抑制 について
審査委員:(主 査) 教授 山 本 隆 充
(副 査) 教授 徳 橋 泰 明 教授 亀 井 聡 教授 阿 部 修
神経膠芽腫(glioblastoma)は中枢神経系に原発する腫瘍であり、手術、放射線治療、化学療法を 組み合わせた集学的治療の進歩にもかかわらず、極めて予後が不良である。interferon-beta(IFN-β)
は抗ウイルス作用を持つサイトカインで、免疫不活作用や抗血管新生作用に加え、増殖抑制やアポト ーシスの誘導などによる抗腫瘍効果を有する。本研究ではglioma stem-like cells(GSCs)の細胞株 0222-GSCと悪性神経膠腫細胞株7種(A-172, AM-38, T98G, U-87MG, U-138MG, U-251MG, YH-13)
を用いて、GSCsの分化とnon-GSCsの未分化性の再獲得に対するIFN-βの効果について検討してい る。また、細胞の未分化性の評価には、fluorescence-activated cell sorter(FACS)による神経幹細 胞およびGSCsのマーカーであるCD133の発現、さらにreal-time polymerase chain reactionを用 いた多分化能のマーカーであるNanog mRNAの発現を指標としている。
0222-GSCをIFN-β投与群と非投与群に分けて3週間培養後に無血清培地で2週間培養したところ、
非投与群ではCD133およびNanog mRNAの発現が増加した。一方、IFN-β投与群ではCD133およ びNanog mRNAの発現が抑制された。悪性神経膠腫細胞株 7種は無血清培地で培養するとtumor sphereを形成し、一部の細胞株ではCD133を発現した。しかし血清培地でIFN-βを投与した後に無 血清培地で培養すると、CD133を発現しなかった。さらに、GSCsにIFN-βを投与すると、細胞増 殖が抑制されるとそもに、星状膠細胞系から乏突起膠細胞系に分化が誘導され、GSCsを対象とした 治療薬としてのIFN-βの有用性が示唆された。加えて、temozolomideをGSCsに投与すると、内因 性のIFN-βが産生されることが確認された。
本研究では、GSCs および悪性神経膠腫細胞株は環境の変化に対応して未分化性を喪失、あるいは 再獲得することを明らかにした。また、GSCsとnon-GSCsの間に相互変換が認められ、この相互変 換がglioblastoma治療の新たな標的となることを明らかにした。さらに、GSCsに対して増殖抑制効 果や分化誘導作用を有するIFN-βがglioblastomaの治療薬として有用であることを明らかにした貴 重な論文である。
よって本論文は、博士(医学)の学位を授与されるに値するものと認める。
以 上 平成27年2月18日