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博士学位 論文 要旨

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Academic year: 2021

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博 士 学 位 論 文 要 旨

論 文 題 目(和 文):宗 教 教 育 におけるナラティブ・ペダゴジーの理 論 と実 践 —学 修 者 における text contextの調 和 を求 めて

論 文 題 目(英 文):Theory and Praxis of Narrative Pedagogy in Religious Education: Toward a Harmonization of Text and Context in Learners

氏 名 :徐 有 珍 (そ ゆじん)

本 研 究 は、連 続 性 と変 化 、また伝 統 と改 革 といった宗 教 教 育 における複 数 の教 育 目 的 の間 に 調 和 をもたらし、そこにある「text context の断 片 化 」という課 題 を解 決 することが期 待 される、

ナラティブ・ペダゴジーという宗 教 教 育 方 法 論 の理 論 背 景 と、その実 践 的 有 用 性 を検 証 するもの である。

ナラティブ・ペダゴジーは、欧 米 、特 に北 米 において20世 紀 後 半 から強 調 されるようになった能 動 的 教 育 方 法 のアプローチのひとつである。背 景 にあって、それを力 強 く推 進 する役 割 を果 たし たのは、封 建 的 な従 来 の教 育 方 法 のありかたに疑 問 を呈 した教 育 界 や宗 教 界 、さらには心 理 学 界 からの圧 力 であった。米 国 の哲 学 者 で教 育 学 者 のジョン・デューイや、南 米 出 身 の教 育 学 者 パウロ・フレイレは、教 師 主 体 で繰 り広 げられる教 育 の形 を、それぞれ非 実 用 的 、そして抑 圧 的 と して批 判 し、学 修 者 の能 動 性 に焦 点 を当 てた教 育 の形 を提 唱 した。プロセス神 学 の父 とされるア ルフレッド・ノース・ホワイトヘッドや、ナラティブの神 学 を提 唱 したハンス・フライ、 スタンリー・ハワ ーワスらも、旧 態 依 然 とした一 方 向 的 な世 界 観 や、そのような神 学 教 育 的 アプローチとの決 別 を 説 いた。旧 ソヴィエト連 邦 の心 理 学 者 レフ・ヴィゴツキーは「足 場 かけ」の概 念 を用 いつつ、教 師 の重 要 な役 割 を、学 修 者 が自 分 の興 味 と能 力 の中 で熱 意 と共 感 を発 揮 できるように動 機 を与 え ることであると語 り、また心 理 発 達 の理 論 を展 開 したエリック・エリクソンやジェームス・ファウラーは、

教 える立 場 にある者 の役 割 を、「発 達 の段 階 」を登 る助 け手 として定 義 した。

本 研 究 では、伝 統 的 な教 育 に対 する上 記 のような批 判 を背 景 にしつつ、現 代 を代 表 する以 下 4名 の宗 教 教 育 学 者 による、物 語 を用 いる教 育 方 法 、すなわちナラティブ・ペダゴジーに代 表 される能 動 的 な宗 教 教 育 論 の展 開 が紹 介 されている。トーマス・グルームは自 由 を宗 教 教 育 の 中 心 に据 え、教 育 者 と学 修 者 の双 方 向 的 な関 わりの必 要 性 を強 調 した。マリア・ハリスは、自 発 的 学 びを励 ます教 育 者 の必 要 性 を語 り、さらには宗 教 教 育 の根 幹 に、想 像 性 と芸 術 性 という要 素 を取 り入 れつつ、ナラティブ・ペダゴジーの役 割 を明 確 化 した。メリー・エリザベス・モアーは、プ ロセス神 学 が強 調 する有 機 体 の神 学 をベースに、宗 教 教 育 における多 角 的 な対 話 の機 会 に注 目 しつつ、ナラティブ・ペダゴジーの有 用 性 を説 いた。フランク・ロジャースは、それまでのナラティ ブ・ペダゴジーの理 論 的 展 開 を念 頭 に、その実 践 的 意 義 と注 意 点 に注 目 し、現 場 の教 育 者 に

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対 して意 義 深 い取 り組 み方 を語 った。

以 上 の理 論 的 背 景 を踏 まえ、本 研 究 では、ハイディ・ジェイコブスの教 育 課 程 デザイン、および トニー・ブザンの提 唱 したマインドマップを採 用 し、ナラティブ・ペダゴジーの有 用 性 を検 証 すべく、

その方 法 論 を用 いた宗 教 教 育 クラスが企 画 された。検 証 のためのデータ収 集 の場 所 として選 択 されたのは、研 究 者 の所 属 する東 京 基 督 教 大 学 (千 葉 県 印 西 市 )のクラス学 習 の現 場 である。

研 究 者 は、クラスを担 当 する教 員 と履 修 する生 徒 の双 方 からの協 力 を得 、2013 年 から 2015 3 年 間 に渡 ってナラティブ・ペダゴジーを用 いた教 育 を実 施 し、学 修 者 の観 察 や、アンケート 調 査 を通 して質 的 なデータを収 集 した。データの収 集 に用 いられたのは、質 的 研 究 における代 表 的 な方 法 論 のひとつであるグラウンデッド・セオリーである。また対 象 となったのは、主 に高 校 を 卒 業 したばかりの大 学 1年 生 で、選 択 されたのは、新 入 生 を対 象 にし、キリスト教 の基 本 的 な教 えや価 値 観 を取 り扱 う「キリスト教 世 界 観 」というクラスであった。

収 集 されたデータは、やはりグラウンデッド・セオリーを用 い、研 究 対 象 者 の内 面 に起 こった「発 見 」や「変 化 」という観 点 から分 析 された。宗 教 教 育 学 の観 点 から、そこに以 下 のような教 育 効 果 が確 認 された。それらは、「主 題 に対 する態 度 の変 化 や認 識 の拡 張 」、「主 題 に対 する理 解 の深 まり」、「学 びにおける自 主 性 の向 上 」、「意 見 や価 値 観 の多 様 性 への目 覚 めとその興 味 深 さの 発 見 」、「他 者 とコミュニケーションをとる場 合 の心 構 えやスキルに関 する発 見 」、「他 者 理 解 ・受 容 ・協 働 に関 する発 見 」、「共 感 性 の醸 成 」、「共 同 体 意 識 の向 上 」、そして「知 識 と経 験 の連 結 」 であった。またマインドマップの使 用 に関 しても、個 々の学 修 者 の中 に、宗 教 的 概 念 に対 する新 たな気 付 きをもたらしたことが見 出 された。

データ分 析 の中 には、重 複 する点 も存 在 するが、ナラティブ・ペダゴジーを用 いた宗 教 教 育 の 実 践 の結 果 から明 らかにされたのは、学 修 者 がナラティブ・ペダゴジーを通 し て自 らの世 界 を広 げ、そしてなによりも示 された text と自 らの context の間 に調 和 を見 出 すことができたという現 実 である。彼 らの多 くは、授 業 において提 示 された主 題 と向 き合 い、さらには選 ばれた text と格 闘 することを通 して、それまで自 分 の中 にあった狭 い考 え方 や偏 った価 値 観 に気 付 かされていった。

また意 識 することの無 かったクラスメートの価 値 観 の多 様 性 に対 してもそれをポジティブなものとし て受 け入 れ、さらには他 者 との共 同 のために必 要 なスキルに対 しても、いが及 ぶようになっていっ たのである。

本 研 究 は、グラウンデッド・セオリーという研 究 方 法 論 の制 約 を受 けており、したがって検 証 対 象 の幅 が狭 く設 定 されている。しかしそこから明 らかにされた結 果 は、科 学 的 根 拠 の薄 いものとして 安 易 に否 定 されるべき内 容 では決 して無 いであろうと研 究 者 は感 じている。今 後 ナラティブ・ペダ ゴジーの実 践 的 検 証 が積 み重 ねられ、多 くの宗 教 教 育 機 関 において活 用 されることを願 ってや まない。

参照

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