マネ ジメ ン ト職 能 のプ ロセ ス進 化 論 的検 討
相 補 性 原 理 を 中心 に して
海 老 澤 栄 一
は じめ に
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の 実 際 プ ロセ ス的 世 界 観 の もつ意 味 マ ネ ジ メ ン ト職 能 の本 質 お わ りに
は じ め に
マ ネ ジメ ン トの と らえ方 に は,ee」 々 と と もに仕 事 を遂 行 す る こ と"の よ う に部 下 が 少 な く と も数人 は存 在 す る とい う前 提 を置 い た伝 統 的 な マ ネ ジ メ ン トア プ ロー チか ら,職 場 にお け る非 公 式 的 な人 間 関 係 の あ り方 に注 目 した人 間 関 係 論 的 ア プ ロー チ,仕 事 の処 理 を通 した管 理 者 の部 下 に た いす る リー ダ ー シ ップ の あ り方 や組 織 成 員 の モ ラー ル に分 析 の 中心 を置 い た行 動 論 的 ア プ ロー チ,さ らに は管 理 者 個 人 に固 有 の価 値 観 や 問題 処 理 能 力 を認 知 した 意 思 決 定 論 的 ア プ ロー チ な ど さ ま ざ まな ア プ ロー チ が過 去 に存 在 して きた
。 いず れ もそれ ぞ れ 固 有 の 時 代 的 背 景 の も とで誕 生 して きて お り
,し た が っ て それ ぞれ 固有 の歴 史 的必 然 性 や存 在 意 義 が あ る こ とは言 う まで もな い
。 し か しな が らそれ らは 同時 に,い ず れ も時 代 を超 え て現 実 を部 分 的 に説 明 す る こ とは で きて も,普 遍 的 に説 明 す る よ うな原 理 を持 ち合 わ せ て い な い こ と も
15
また事 実 で あ ろ う。
わ れ わ れ の作 業 の 究極 の 目的 は,マ ネジ メ ン トの職 能 に関 して,諸 現 象 の 底 流 に厳 然 と して存 在 す るは ずの 本 質 を見 極 め る こ とで あ る。 そ の た め に は
現 実 を直 視 し,た とえそ こに精 緻 化 や 理論 化 の 困難 な諸 現 象 や諸 矛 盾 が遍 在 して い た として も,そ れ らを分析 の 対 象 か ら外 す ので は な く,む し ろ逆 に積 極 的 に取 り込 む こ とに よっ て,全 体 的,統 合 的,連 続 的 に把 握 す る こ とが マ
ネ ジ メ ン ト職 能 全 体 を理 解 す る う えで重 要 な こ とだ と思 わ れ る。
本 稿 で はマ ネ ジ メ ン ト職 能 を特 定 の 限 定 され た状 況 で論 ず るの で は な く, 永 遠 的 な連 続 的過 程 の なか で 論 ず る こ とに よ り,た とえ矛 盾 す る概 念 が表 わ
れ て もそれ らを排 除 す るの で はな く,む しろ共 存 させ る こ とに よ って統 合 的 なマ ネ ジ メ ン ト職 能 の可 能 性 を探 る こ とを 目的 と して みた い。 その場 合,す で に量 子 力 学 の世 界 で粒 子 像 と波 動 像 とい うお 互 い に相 容 れ な い,矛 盾 す る
2つ の概 念 を時 空 間 の 連 続 体 の な か で結 合 す る こ とを意 図 として導 入 され た 相 補 性 原 理 が わ れ わ れ の分 析 に とって も きわ めて 有 用 で あ る よ うに思 わ れ る。
相 補 性 は複 数 の 要素 が相 互 に補 い合 う こ とに よっ て,相 互 依 存 的 に進 化 す る こ とを可能 にす る概 念 で あ る。 換 言 す れ ば マ ネ ジメ ン ト職 能 の相 互 に乖 離 して い る諸 要 素 は相 補 性 原 理 を通 じて相 互 に進 化 す る機 会 が得 られ,そ の進 化 は連 続 的 な プ ロセ ス をた どる こ とが期 待 され るの で あ る。
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の 実 際
マ ネ ジ メ ン トの 日常 は,書 類 に 目 を 通 した り,電 話 を掛 け た り受 け た り, 会 議 に 出 席 した り,部 下 か らの 相 談 に 乗 っ た り,部 下 に 指 示 を与 え た り,上
司 に相 談 した り,書 類 を 作 成 し た り,1人 に な っ て 何 ら か の 決 断 を し た り, オ フ ィ ス 内 を歩 き 回 っ た り,外 部 の お 客 と会 っ た り,あ る い は 出 張 に で か け た り,種 々 雑 多 な 仕 事 が 錯 綜 し て い る と い うの が 実 態 で あ ろ う。 これ らの 多 様 な 仕 事 の 波 を 大 まか に整 理 し て み る と,何 ら か の 情 報 処 理 に関 与 し て い る
16国 際 経 営 論 集No.11990
こ とが分 か る。 また その情 報 処 理 が 何 らか の意 思 決 定 に結 び付 く こ と も多 い で あ ろ う。 以 下 で はマ ネ ジ メ ン トの職 務 を,情 報 処 理 並 び に意 思 決 定 とい う 側 面 か ら分 析 す る こ とに よっ て,現 実 に発 生 して い る と思 わ れ る共 通 特 性 を i探る こ とに す る。
情 報 処 理 特 性
情報処理パ タ0ン 筆 者 が 参 加 した(社)日 本 電 子 工 業振 興 協 会 の プ ロ ジェ ク トで,図1に 示 す よ うな人 間 の情 報 処 理 に関 す るパ ター ン を設 計 した(日 本 電 子 工 業 振 興 協 会,1989)。 同 図 で は情 報 収 集,判 断,加 工,記 憶,行 動,情 報 伝 達 とい う情 報 処 理 の諸 要 素 を「情 幸拠 理 プ 吐 ス」 「記憶 ・フ ァイ ノレ」 「行 動 」 とい う3つ の ゾー ン に分 け て,情 報 収 集 され て か ら情 報 伝 達 され る まで の 一連 の流 れ が 示 され て い る。 また同 図 の な か のAか ら1ま での 記 号 は それ ぞ れ の情 報 処 理 パ ター ンの 分 類 基 準 を示 して い る。 文 書 庸報 に限 った具 体 的 な 内容 は表1の とお りで あ る。
62名 の 管 理 者 の 方 に・ 平 均 的 に業 務 を遂 行 して い る1日 につ い て ご回 答 い た だ い た結 果 の上 位4位 まで の パ ター ンは表2に 示 す とお りで あ る
。「具体 的 な指 示 を他 の人 に」 とい うパ ター ン は全 体 の10パ ー セ ン ト台 に しか 過 ぎず
, 残 りのパ ター ン は 「その ま ま次 に 回覧 」 「自分 の判 断 で 自 ら行 動 」 「目 を通 し てか ら破 棄 」 とな って い る。 この 結果 か ら明 らか な よ うに文 書 情 報 処 理 に限 って も,管 理 者 の情 報 処 理 パ タ ー ン はか な り多様 で あ り
,均 一 化 す る こ とは で きな い こ とが分 か る。 また 伝承 され て い るほ ど管 理 者 の行 動 が合 理 的 で論 理 的 で な い こ と も明 らか で あ ろ う。
また情 報 処 理 の サ イ クル を図2で 分 析 して み る と
,処 理 サ イ クル の 決 まっ て い る 「通 常 処 理 」 よ り も処 理 サ イ クル の 決 まっ て い な い 「ア ドホ ックな処 理 」 の 占 め る比 率 の高 い こ とが分 か る。 この こ とか ら管 理職 の職 務 の なか で は ヲ ログ ラム化 され な い"情 報処 理 が 比較 的 多 い とい う こ とが 言 え るの で あ る。
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロセ ス進 化 論 的検 討17
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国 際 経 営 論 集No,11990 i8
表1情 報 処 理 パ タ ー ン別 特 性
パ4一 ン
No.
A
B
C
D
E
F
G
H
1
J
K
情報処理パターン参考図
収集 判断1加 工 ・アク ション 判断2 伝達
∠}〈 〉 一 一一 一〈 〉{殉 グ
一 ∠ ⊃ 一 グ
コメ ン ト
指示
憶一不記指
捕 口 赫
停止1
その他(具 体的に
処理内容
回 っ て き た 文 書 に 回 を 通 し ・ で ∫∠〜,津一ま 〜欠に1司
覧Lた 一一
Illiっ て き た 文 書 に 白 分 の コ メ ン ト を 付 け て 、 次1'iiiil .}后 111iって 毒 た 文 隙 内 容 に
・部 修 止 を 加 え た う え ぞ 、…次i二1司 し た,、
[+!1って き た 文 諮 内 容 に 基 づ き 、
̀1一づゆ 判 断 で 自肩 働 し た,
囲 っ て き た 文1の 犠 請 コ.指示 内 容 に 基 づ き 、ìtら 行 動 した 、
コ メ ン トを つ け て 発 信 者 に 戻 し た1,
回 っ て きた 文 書内 容 に 基 づ き、 具 体 的 な 指 示 を ほ か の 人に 出 し た、
記憶 に留 め て お くだ け で 何 も しな か った 、
目 を 通 し て か ら フ ァ イ ル し た 、,
目 を 通 し て か ら 破 棄 し た,、
)
比率 ()%
(7%
)%
f)%
()%
()%
()%
1)%
()%
()%
()%
合 計100%
((社)日 本 電 子 工 業 振 興 協 会 編,前 掲 報 告 書,51ペ ー ジ。)
マ ネ ジ メン ト職 能 の プ ロ セ ス進 化 論 的検 討 19
表2惰 報処 理 パ タ ー ン別 の 発 生 割 合
パ タ ー ン 平均値% 最高値% 処 理 パ ター ン内容
A 20〜29 80 その ま ま次 に 回覧
D 10‑19 fiO 自分 の判 断で 自 ら行動
G 10^一 一19 40 具体 的 な指示 を他の人 に
J 10‑19 5U 目 を通 して破 棄
備 考 調 査 時 期11988年10〜12月
調 査 対 象 サ ン プ ル:一 部 上 場 企 業 管 理 者62名
((社)日 本 電 子 工 業 振 興 協 会 編,前 掲 報 告 書,57ペ ー ジ 。)
図2情 報 処 理 の サ イ クル
回答数%
so
0
0‑9'10‑1920‑2930‑3940‑4950‑5960‑6970‑7980‑8990‑100
匹」1答上ヒ≧率蓬%
備考 調査実施時期:1988年10〜12月
調査対 象サ ンプル:一 部上場企業管理者62名
((社)日本電子工 業振興協 会編,前 掲報告書,63ペ ー ジ。)
さ ら に 同 協 会 の 調 査 で,112名 の 管 理 者 を対 象 に 日常 の 情 報 処 理 遂 行 上 ど の よ う な 点 に 煩 わ し さ を感 じて い る か を 尋 ね た 。 そ の 主 な 結 果 が 図3に 示 さ れ て い る。 これ らの 項 目 は情 報 要 求 に 関 す る も の,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に関 す る もの,情 報 処 理 に 関 す る もの の3つ に大 別 さ れ る 。 情 報 要 求 で は 問 題 処 理 の 経 過 情 報 や 非 公 式 ア ドバ イ ス,問 題 処 理 の 参 考 情 報,情 報 の 関 連 づ け な ど の どち ら か とい え ば特 定 の 個 人 に 帰 属 す る主 観 的 で し か も ぞ癖"の あ る情 報 を 好 む 傾 向 が あ る 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で は 会 議 の 回 数 や 時 間 の 長 さ,日 程 調 整,離 席,電 話 に よ る仕 事 の 中 断 な ど に悩 ま さ れ て い る様 子 が うか が え る。
最 後 の 情 報 処 理 で は 文 書 の 多 さ や フ ァ イ ル の煩 わ し さが そ の 最 た る もの で あ る。 これ ら を 総 合 し て み る とマ ネ ジ メ ン トの 仕 事 は き わ め て 多 様 で しか も煩
20国 際 経 営 論 集No.11990
図3マ ネ ジ メ ン トの職 務 特 性
llll答数(%) 01020304050fiO708090
経 過情 報 が ・・緒 に フ ァイ ル され て い れ ば 役 立 つ 最終 決 定 前 に非 公式 な ア
ドバ イ スが 欲 しい 問題 処 理 の参 考 に な る手 本が 欲 しい
文 書が 沢 山 回 って くる 会 議 の 回 数 や 一 回 当 た り の時 間が 多い
資 料 等 の フ ァ イ リ ン グの 手 続 きが わ ず ら わ しい 会 議 等の 関係 者 の 日程合 わ せ が 大変
試 行 錯 誤 的 な 意 思 決 定 を 支援 す る ソ フ トが 必 要 情 報の 蓄 積 が バ ラバ ラで 関 連 づ け が 難 しい 打 合 せ な どで 離 席 が 多 い 電話 等 で 仕 事が 中 断 され る
情 報 の所 在 が不 明確 で あ る
必 要 な 文 書が う ま く見 つ か らな い
情 銀不 足 で も重 要 な決 断 を 要す る こ とが あ る 会 議 の 準 備 に 時 間 が とら れ 過 ぎる
短 時 間で 処 理 を必 要 とす る 文E‑rが多 い
TPOを わ き まえ な い 文 Fが 多 く来 る
操 作 方法 の 分 か りに くい OA機 器 が 多い
席 に い る はず の 人 が居 な くて連 絡 が取 れ な い 文書 作 成 に時 間が か か り す ぎる
85
181・l
iH.
79.0 77.7 75.4
175.4 174.6 174.1 173.7 173.7
?2.3 71.4
169.6
169.6
169.6
65.2 64.7 64.7 X3.4
備 考 調 査 実 施 時 期:1988年10〜12月
調 査 対 象 サ ン プ ル:一 部 上 場 企 業 管 理 者11L名 ((社)日 本 電 子 工 業 振 興 協 会 編,前 掲 報 告 書,68ペ ー ジ 。)
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロセ ス進 化論 的 検 討 85.7
21
雑 で あ る こ とが わ か る。 この 点,H.ミ ン ツバ ー グ(Mintzberg,1975)は マ ネ ジ メ ン トが 体 系 的 で しか も科 学 的 で あ る とす る こ とに 根 拠 を置 い た4つ の 伝 承 を 否 定 し,現 実 は 本 能 や 噂 な どの 非 科 学 性 に行 動 の 根 拠 を 置 く傾 向 が あ る
と主 張 し て お り,わ れ わ れ の 分 析 結 果 と符 合 す る もの が あ る 。
対 人 コ ミュニ ケ ー シ ョンの 割合 情 報 収 集 や 伝 達 方 法 の な か で も対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 し て は,過 去 に試 み られ た マ ネ ジ メ ン ト職 能 に 関 す る諸 実 証 研 究 で も か な りの 高 比 率 を 占 め て い る こ とが 明 ら か に な っ て い る 。 要 素 別 に 分 解 す る解 剖 学 的 ア プ ロ ー チ に つ い て は 関 係 性 や 連 続 性,全 体 性 を見 失 う と
い う意 味 で 批 判 も あ る。 し か し こ こで は1つ の 分 析 的 ア プ ロ ー チ と して,代 表 的 な も の を い くつ か 見 て お く こ と に し よ う。
ミ ン ツバ ー グ(1980)が5人 の エ グ ゼ ク テ ィ ブ を5週 間 に わ た っ て 分 析 した 結 果 に よ れ ば,図4に 示 す よ う に,予 定 通 りの 会 議 と臨 時 の 会 議 を含 め た 会 議 関 係 で69パ ー セ ン ト,電 話 の6パ ー セ ン トそ れ に 訪 問 の3パ ー セ ン ト を加 え る と実 に78パ ー セ ン トが コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン関 係 の た め に費 や さ れ て い る こ とが 分 か る。 ま た 類 似 の 結 果 は カ ー ク=ア ル ド リ ッチ(Kurke;Al一
図4マ ネ ジ メ ン トの職 務 分 布q>図5マ ネ ジ メ ン トの職 務 分 布(2) 机上 の仕事
机 ヒの仕事
6%電 話
3%定 例 会 議
10%定 例 会 議 訪 問
臨 時 会 議
臨 時 会 議 (H.Mintzberg,The〜natureげManagerial(L.B,KurkeandII.EAIdrich,"Mintzberg
Wryrh,Prentice‑Hall,1980,p.39.)
22国 際 経 営 論 集No.11990
wasRiglht!=AReplicationandExtension oftheNATUREOFMANAGERIAL
WORK,"ManagementScience,Vo1.29,No.
8,August1983,pp.975‑984.)
drich,1983)の 研 究 に よ っ て も図5の よ う に コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン関 係 で73パ ー セ ン ト と い う数 字 が 示 され て い る
。
し か も これ らの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが す べ て 公 式 的 な 職 務 に関 係 して い る と い う保 証 は な く,む し ろ非 公 式 的 な 接 触 を とお して 遂 行 され て い る可 能 性 が 高 い。 この 点 に つ い て は 項 を改 め て 論 ず る こ と に す る
。
意思 決 定 特 性
意思決定 の多様性H.サ イモ ン(Simon)に 拠 る まで もな くマ ネ ジ メ ン トに と っ て意 思 決 定 とい う機 能 は きわ め て重 要 で あ る。 先 に検 討 した コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの方 法 や 諸 種 の情 報 処 理 特 性 も,意 思 決定 の準 備 や 意 思 決 定 そ の もの を支 援 した り促 進 した りす る の に欠 か す こ との で きな い もの だ と考 え る こ と が で き よ う。 と ころが その 意 思 決 定 は意 思 決 定 者 個 人 の属 性 や癖
,価 値 観, 本 能,好 み な どに強 く影 響 され るた め,合 理 的 で論 理 的 な分 析 を困難 に して い る とい う こ とに も 目を 向 け る必 要 が あ る。Kケ ン ドー ル(Kendal1,1984)
らの指 摘 す る意 思決 定 特性 をみ て も,表3に 示 され て い る よ うに非 公 式 性 や 個 人 処 理,パ ワー行 使 な どの非 科 学 性 が顕 著 に見 られ る。
表3意 思決定者 の特性
1234567
情報 の非公 式収 集 組 織外部情報 の探 索
デー タの個人的処理 情報 の個人 的 な蓄積
意思決定 にお けるパ ワーの行使 意思決定 者の威 信表現
ほかの組織成員 との情報 共有
(K.E.Kendall&J .E.Kendall,
"Struct
uredObservationofthe Decision‑MakingEnvironment:A ReliabilityandValidityAssessment
,"
」DecisionSciences ,Vol.15,1984,p.
1t19.)
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロセ ス進 化 論 的 検 討23
表4職 位 別 にみ た意 思 決 定 プ ロセ スの パ タ ー ン
意 思 決 定 パ ター ン 部長職 課長職 一 ・般 職 合 計
標 準 的パ ター ン それ 以外 の パ ター ン
22 (52}
20 (4$)
55 (59}
39 {41)
33
×67}
16 (33)
110 (59)
75 (41)
合 計 42
(100)
94 (100)
49 (100)
185 (100)
参 考:上 段 は サ ン プ ル 数,下 段()内 は 比 率 備 考 調 査 実 施 時 期:1988年1月
調 査 対 象 サ ン プ ル:185
調 査 主 体:情 報 資 源 管 理 研 究 会
(海 老 澤 栄 一 稿 「意 思 決 定 プ ロ セ ス と情 報 の 役 割 一E固 人 的 意 思 決 定 と集 団 的 意 思 決 定 との 特 性 比 較 一 」 『企 業 診 断 』Vo1.35,No.10,1988年10月, 57ペ ー ジ 。)
ま た 意 思 決 定 の プ ーロセ ス はH.サ イ モ ン(1960,p.2)に よ っ て 環 境 探 索 → 設 計 → 選 択 と い う3つ の 標 準 的 ス テ ッ プ を 踏 む こ とが̲̲̲.般的 に認 知 さ れ て い る け れ ど も,筆 者 を含 む情 報 資 源 管 理 研 究 会 で 実 施 した 管 理 者185名 を対 象 と
し た 調 査 で は,そ の 標 準 プ ロ セ ス と は異 な っ た 結 果 が か な り高 率 で 現 わ れ て い る 。 表4に 示 す よ う に標 準 パ タ ー ン を 採 る の は 全 体 の59パ ー セ ン トで あ り, 残 りの41パ ー セ ン トは か な らず し も標 準 パ タ ー ン を採 ら な い こ とが 明 らか と
な っ た 。 し か もそ の 傾 向 は,0般 職 か ら課 長 職,課 長 職 か ら部 長 職 へ と職 位 が 高 くな る に つ れ 一 層 強 くな る こ とが 識 別 で き る 。
これ らの こ とを 総 合 し て 考 え て み る と,マ ネ ジ メ ン トの 意 思 決 定 は ま さ し く多 様 性 に富 ん で お り,一 様 的 な 評 価 を下 す の は きわ め て 危 険 で あ る と い え よ う。
直 観 的 意 思 決 定Rダ フ ト(Daft,1983)に よ れ ば 管 理 者 の 意 思 決 定 に は,to左 脳"の 役 割 を つ か さ ど る合 理 的 ア プ ロ ー チ と ぐ曜右 脳"の 役 割 を つ か さ ど る直 観 的 ア プ ロ ー チ の2つ が あ る と い う。 こ の う ち,曖 昧 性 や フ ァ ジ ー ・ 非 論 理
性,ラ ン ダ ム 性,無 意 識 試 行 錯 誤,好 み,本 能,予 感,虫 の 知 らせ,勘, 24国 際経営論集Na.11990
根 性 ・ 非 識 別 性 な どの 言葉 で代 替 され る よ うな意 思 決 定 の こ とを醐 的 意 思 決 定 と呼 ん で い る。 直 観 は新 しい ア イ デ ィ アの生 成 や無 意 識 的 な思 い
つ きの 生 成 に とっ て 欠 か す こ との で きな い もの で あ る(ア ガ ー;Ag。
r,1986a,b)。
この ア プ ロー チの 基本 的 な特 徴 は相 互 に関連 の ない 断 片 的 な情 報 が 非 公 式 的 な源 泉 か ら集 め られ・ 意 思 決 定者 の 頭 の な かで1つ のパ ター ン と して醸 成 さ れ て い くと こ ろに あ る。 特 に不 確 定 性 の強 い環 境 下 で この ア ブmチ が有 用 で あ る。 以 下 で は直 観 的 ア プ ロー チ の もとに お け る意 思 決 定 の基 本 特 性 を4 つ の 視 点 か ら総 合 的 に解 析 して お こう
。
① 目的 の 曖 昧性3不 明 確 性
目的 の曖 昧 性 を ここで は・初 期 目的 の棚 上 げ ・変 更 と目的 の事 後 決 定 とい う2っ の視 点 か ら分析 す る。 まず初 期 目的 の棚 上 げ ・変 更 とは
,当 初 設 定 し た 目 的が 実 施 段 階 で 当初 予定 も しなか っ た よ うな不 確 定 要 素 に直 面 した り
, あ る い は意 思 決 定 者 の側 で考 え方 が途 中 で 変 わ って し まっ た りして
,初 期 目 的 の変 更 を余 儀 な くされ て し ま うよ うな場 合 の こ とで あ る
。 意 思 決 定 そ の も の に何 らか の不 安 や 後 悔 が付 き もの で あ る こ とを考 えれ ば
,事 後 的 な修 正 は 当 然 あ り うる・ 後者 の 目的 の 事 後 決 定 とは,目 的 が 曖 昧 な ま ま情 報 収 集 行 動 や 情 報 解 釈 行 動 に入 り,学 習過 程 を繰 り返 しなが ら次 第 に 目的 を明 示 化 して い くこ と臆 味 す る・ セ ー ル ス マ ンの顧 客 探 索 行 動 や メ ー カ ー に お け る新 製 品企 画 な どに よ く見 られ る行 動 で あ る.混 沌 とした.・ 下 で は 目的 は明 示 的 で あ る こ とは む し ろ少 な く,ど ち らか とい え ば暗 示 的 で しか も事 後 的 に次 第 に明確 に な る こ とが 多 い よ うに思 われ る。 しか も この場 合,曖 昧 性 を徐 々 に 排 除 しな が ら 目的 を事 後 に形成 して い くきっか けは,意 思 決 定 者 の 直 観 の よ
うな もの に よっ て支 え られ る こ とが 多 々 あ るの で あ る。
② 環 境 操 作 性
環境 の 継 続 的 モ ニ タ リン グ に よ って ,環 境 を単 な る記 号 と して 理解 す るの で はな く,あ る意 味 を もっ たrr含 意"を 伝 達 す る もの と して理 解 した り
,さ らに思 い っ きや アイ デ ィ ア な どの 新 しい価 値 を創 造 した りす る こ とが で きる
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロセ ス進 化 論 的 検 討25
よ う に な る。 この よ うな 経 験 蓄 積 が マ ネ ジ メ ン トの ひ とつ のt1イ ン テ リ ジ ェ ン ス"と して 思 考 パ タ ー ンや 問 題 解 決 ル ー ル に 活 か さ れ て く る こ とは 十 分 に 考 え ら れ る こ とで あ る。
ダ フ ト=ウ ェ イ ク(Daft‑Weick,1984)は 組 織 の 情 報 処 理 に 関 す る行 動 を ひ とつ の 「解 釈 モ デ ル 」 と し て 理 解 し,以 下 に示 す よ う な4つ の 仮 説 を設 定
し て い る 。 そ の な か で マ ネ ジ メ ン トの 役 割 に つ い て も論 じ て い る の で,取 り 上 げ て お こ う。
1。 環 境 情 報 収 集
組 織 は 最 低 限 生 存 を 確 保 す るた め,生 存 に関 係 す る兆 候 や 事 象,競 争 相 手iマ ー ケ ッ ト,技 術 開 発 の 動 向 を探 査 で き る よ う な情 報 処 理 の メ カ ニ ズ ム を 開 発 す る 必 要 が あ る 。
2.組 織 的 な 解 釈 プ ロ セ ス
組 織 に は個 人 と は 異 な っ た,組 織 的 に 処 理 さ れ る知 識 や 行 動,規 範, 価 値,メ ン タ ル マ ッ プ な どが あ る。 解 釈 シ ス テ ム を支 え る管 理 者 の 問 で
そ れ ら の 知 覚 や 認 知 マ ップ,情 報 な ど を共 用 で き る よ う収 れ ん さ せ る 必 要 が あ る 。
3.ト ッ プ の 戦 略 的 役 割
組 織 の=構成 メ ン バ ー は そ れ ぞ れ が 固 有 に セ ンサ ー を 環 境 との 間 に保 有 して お り,環 境 【青報 収 集 に 関 し て 何 らか の 役 割 を果 た して い る。 しか し そ れ ら の 情 報 は最 終 的 に は,ト ッ プ レベ ル の と こ ろ に 組 織 的 に収 れ ん さ せ,組 織 全 体 と し て も つ 意 味 を 解 釈 さ せ な け れ ば な ら な い 。
4.環 境 解 釈 に 関 す る 固 有 の 方 法
組 織 の 歴 史,風 土,構 造,戦 略 策 定 の 方 法 な ど は組 織 に よ っ て 異 な る 。 し た が っ て 環 境 の と ら え 方 に も 独 自 の 喫癖"の よ う な も の が あ る 。 組 織 の 独 自 の や り方 で 切 り取 っ て き た 特 定 環 境 を独 自 の 価 値 に基 づ い て 解 釈
し,組 織 は や が て そ の 環 境 の 解 釈 結 果 の 影 響 を 受 け る こ とに な る。
マ ネ ジ メ ン トは 環 境 に た い す る セ ン サ ー 機 能 を組 織 の な か に設 計 し,な お 26国 際経営論集No.11990
か つ そ の セ ン サ ー を使 っ て 実 際 に環 境 を ス キ ャ ン し
,さ ら に環 境 か ら収 集 し た 情 報 の もつ 意 味 に つ い て 解 釈 しな けれ1ま な ら な い(ジ ョ ン ソ ン;J。hns
。n, 1983)。 こ の よ う な プ ロ セ ス を 繰 り返 し な が ら
,次 第 に 環 境 操 作 力 を 高 め て い くの で あ る 。 今,組 織 と環 境 との 関 係 を組 織 の 認 知 力 と い う視 点 か ら一 般 的 な 形 で 表 現 して み る と,図6に 示 す よ う な3つ の タ イ プ で 説 明 す る こ とが で き る(ペ フ ァ=サ ラ ン シ ッ ク;Pfeffer=Salancik
,1978)。
図6環 境 の 認 知 水 準
広域環 境 (未実現環境)
実現環境の拡 大
相互作用 実現環境)環境(
認 識 され て い る環 境
注[至]組 綴 表簿 二
○ は環境を表嫉
(海 老 澤 栄 一 稿 「経 営 戦 略 と情 報 シ ス テ ム 」 島 田 達 巳 ・海 老 澤 栄 一 編 『戦 略 的 情 報 シ ス テ ム 』 日 科 技 連 出 版 社,1989年1月,22ペ ー ジ。)
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロ セ ス進 化 論 的 検 討27
第1の,組 織 に よ っ て 「認 識 さ れ て い る環 境 」 と は,個 人 や 集 団 を含 む 組 織 に よ っ て 主 観 的 に 関 知 あ る い は識 別 さ れ て い る環 境 の こ とで あ る 。
第2の 「相 互 作 用 環 境 」 は,組 織 と環 境 とが 相 互 に 直 接,作 用 し あ っ て い る環 境 の こ とで あ る。 言 い 換 え れ ば 組 織 が 環 境 一 般 か ら取 り込 ん で き た,操 作 可 能 な 環 境 の こ とな の で あ る。K.ウ ェ イ ク(Weick,1969)は,組 織 の 相 互
に 依 存 的 な 行 為 者 た ち の 行 為 に よ っ て 構 成 され て い る環 境 の こ と を 「実 現 さ れ た 環 境 」 と よ ん だ 。 こ の 場 合 重 要 な こ と は,組 織 が 環 境 に た い して 反 応 す る こ とで は な く,む し ろ積 極 的 に環 境 に た い して 働 きか け,環 境 を 創 造 し た
り,環 境 を演 じた り実 現 した りす る こ とな の で あ る。 こ の 論 理 に従 え ば,組 織 の 意 思 決 定 主 体 で あ るマ ネ ジ メ ン トは 「未 実 現 の 環 境 」 に た い して 積 極 的
に働 き か け,「 実 現 され た 環 境 」の 範 囲 を拡 大 す る こ と に よ っ て 環 境 を創 造 し て い く こ とが 可 能 と な る の で あ る。
第3の 「広 域 環 境 」 は 組 織 が 意 識 す る し な い に か か わ らず,地 球 的 規 模 あ る い は 宇 宙 的 規 模 で 組 織 と直 接,間 接 に つ な が っ て い る環 境 の こ とで あ る。
「未 実 現 環 境 」 と言 い 換 え て も よ い で あ ろ う。 組 織 は未 実 現 環 境 の な か か ら, 組 織 の もつ 環 境 操 作 能 力 に見 合 う範 囲 内 で 環 境 の 実 現 化 を は か る の で あ る 。
そ れ は あ た か も,組 織 の な か で 共 通 に認 識 さ れ て い る ドメ イ ン の 拡 大 を は か る行 動 で も あ る 。 こ こで も意 思 決 定 者 と して の マ ネ ジ メ ン トの 果 た す 主 体 的 役 割 は 大 き い とい え よ う。
R.マ ク ロ ー ド(McLeod,1986)ら の 調 査 で も,マ ネ ジ メ ン ト と環 境 情 報 と の 関 係 が 論 じ られ て お り,特 に エ グ ゼ ク テ ィ ブ ク ラ ス で は,図7に 示 さ れ て い る よ う に 取 り扱 う情 報 全 体 の う ち,環 境 情 報 の 占 め る 割 合 が43パ ー セ ン ト に も達 し て い る こ とが 分 か る 。
③ 非 公 式 情 報 依 存 性
直 面 す る意 思 決 定 問 題 が 未 経 験 で しか も未 知 の 問 題 で あ る場 合,マ ネ ジ メ ン トは以 下 の よ う な 理 由 で 論 理 的 な判 断 が し に く くな る(フ ィ ッ シ ュ ホ フ=
ゴ イ タ イ ン;Fischhoff=Goitein,1984)。
28国 際経営論集No.ll990
図7エ グゼ クテ ィブ の情 報 源
外 部 環 境 内 部 環 境
一
上 位 レベ ルi i i i i i i
5%
5.2 委 員 会
r
t
1
2%
43% 7.5
3.8
↓
エ グゼ ク テ ィ ブ 内部組織 と個 人噸
1.3%
4.s
i l i i
i i
I i
I t I i i
「
「 i
I i
I
鳳 1レ ベ ル 下
噸 20%
5.2
注)
L四 捨五 人 の 関 係 で100%
に な っ て い な い 。 2.ボ ッ ク ス の ヒ半 分 の 数
値 は,情 報 源 全 体 に 対 す る 比 率 で あ り,ド 半 分 の 数 値 は 個 々 の 取 引 に 割 り 当 て られ た0(価 値 な し)か ら10(最 大 値) の う ち の'ド均 値 を 意 味 す るn
2レ ベ ル ード
・rt一 IO%
5.3 3レ ベ ル 下
r
一 6%
4.3
晶 4レ ベ ル 下
← 2%
4.4
(R.McLeod,Jr.andJ.W .Jones:"MakingExecutivelnformationSystemsMore Effective,"BusinessHoriz・ns ,Sep.‑Octユ986,P.32.)
L確 率 論 的 考 え 方 が 直 観 と 相 反 す る よ う に な る
。 2.意 思 決 定 に 関 す る 的 確 な 訓 練 を 受 け て い な い
。
3.意 思 決 定 に 必 要 な 大 量 の 情 報 を 束 ね る 認 知 能 力 を も ち あ わ せ て い な い
。 そ の た め,マ ネ ジ メ ン ト は 経 験 則 や 直 観 ,ヒ ュ ー リ ス テ ィ ッ ク な 方 法 な ど を 用 い て 問 題 の 解 決 に 当 た ろ う と す る よ う に な る
。 そ の 場 合 に 有 効 な 情 報 は 公 式 手 続 き に 伴 っ て 発 生 す る 公 式 情 報 で は な く,自 分 の 認 知 ス タ イ ル に あ わ せ て 収 集 す る 非 公 式 情 報 な の で あ る。 マ ク ロ ー ド ら の 調 査 結 果 で は,図8に 示 さ れ て い る よ う に,全 体 の81パ ー セ ン トが 非 公 式 情 報 の 関 係 に な
っ て い る 。 マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロ セ ス進 化 論 的 検 討29
また わ れ わ れ が調 査 した 結 果 で も,管 理 者 が 検 索 対 象 とす る メデ ィア は圧 倒 的 に個 人 が 保 有 す る第0次 メモ リや メモ,手 帳,フ ァイル で あ る こ とが 表5 か ら明 らか で あ る。
図8メ デ ィア別利用比率
麗 手 紙 團 メ モ 匿ヨ 定期刊行物 圏 臨時会議
皿 目電 話 團 会 食 口 訪 問 目 定例会議
囲 コンピュータレポート
コ ン ピ ュ ー タ 以 外 の
囮
レ ポ ー ト備考 謝 舗 慧%∴ 鎧 ∴ こ 入つており凝 問が残る.しかしここ
で は 原 文 に 忠 実 に 記 述 し て お く。
(RMcLe。d,J・.,&J.W.J・nes,cep.cit.,p.33.)
表5検 索 対 象 媒 体 の 利 用 度 合
一
媒 体 平 均 値%
個人 の記憶 20^‑29
一 一
個 人 の メモ,手 帳 10〜19
個 人 フ ァイ ル 10^‑19 社 内の人 の記 隠 10〜19
社 内共 通 フ ァ イル
L
10‑19
備 考 調 査 実 施 時 期=1988年10〜12月
調 査 対 象 サ ン プ ル:一 部 上 場 企 業 管 理 者62名
((社)日 本 電 子 工 業 振 興 協 会 編,前 掲 報 告 書,63ペ ー ジ 。)
30国 際 経 営 論 集No.11990
こ の よ う に マ ネ ジ メ ン トが 意 思 決 定 に さ い し て 主 と し て 依 拠 す る情 報 は , 直 面 す る 問 題 が 未 知 で あ れ ば あ る ほ ど,非 公 式 情 報 寄 りで あ る こ とが わ か る。
④ 口頭 を主 体 と した 多 重 チ ャ ネ ル へ の 依 存 性
前 述 図8の マ ク ロ ー ド らの 調 査 で は,エ グ ゼ ク テ ィ ブ の 利 用 す る メ デ ィ ア の う ち,47パ ー セ ン トが 電 話 や 会 議 に 代 表 さ れ る 口 頭 メ デ ィ ア に な
っ て い る。
ま たE.ク レマ ー(Klemmer ,1972)ら の マ ネ ジ メ ン トの 職 務 分 析 に か ん す る 分 布 状 況 を 図9で 見 て も対 面 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と電 話 を 含 む 口 頭 メ デ ィ ア が42パ ー セ ン トを 占 め て い る こ とが わ か る。 これ ら の 結 果 は マ ネ ジ メ ン トの 対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン や 非 公 式 情 報 へ の 依 存 度 が 高 い とす る これ ま で の 分 析 結 果 と一 致 す る もの で あ る 。 しか も意 思 決 定 に さ い して
,口 頭 メ デ ィ ア は レ ポ ー トに代 表 さ れ る文 書 メ デ ィ ア に比 べ て は る か に 重 要 な 役 割 を果 た して い る こ とが 図10か ら明 ら か な の で あ る
。
さ ら に 日本 電 子 工 業 振 興 協 会 で 実 施 した わ れ わ れ の 調 査 結 果 を み て も図11 に 示 す よ う に,意 思 決 定 の 最 終 的 決 め 手 とな っ た メ デ ィ ア と し て は55パ ー セ ン トの 「口頭+対 面+文 書 」 つ ま り会 議 方 式 が 最 も多 く
,次 い で 文 書 を 伴 わ な い 面 談 方 式 の 「口 頭+対 面 」 が32パ ー セ ン トに な っ て い る
。 電 話 方 式 を取 る か あ る い は 面 談 方 式 を取 る か の 違 い は あ っ て も
,何 れ に も共 通 し て い るの 図9マ ネ ジ メ ン トの職 務 分 布
対 面 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン
あ
操 作:.オ フ イ灘 器3%13%12%
・ 実 験 器 具 読 む
{E.KlemmerandF.Synder,"MeasurementofTimeSpentCommunicating"
,Journal ρ〆Co規 規 襯 ゴα漉o%,VoL22,1972.)
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロ セ ス進 化 論 的検 討31
図10メ デ ィア別 重要 度
098765432101平均値
口 口 頭 囮 文
外のレポート/コンピユータ以
/レポート/ワコンピュータ/
to
ラ ン ク
(R.McLeod,Jr.,&J.W.Jones,op.cit.,p.34‑)
図11意 思 決 定 の 最 終 的 決 め 手 と な っ た メ デ ィ ア
口頭 十 対 面 十文 書
(55)
定刊 行 期物
文 書 の み(2) 文 書 十 ロ 頭 (11)
備 考()の 数 字 は比 率 調 査 時 期:1988年10〜12月
調 査 対 象 サ ン プ ル:一 部 上 場 企 業 管 理 者62名
((社)日 本 電 子 工 業 振 興 協 会 編,前 掲 報 告 書,59ペ ー ジ 。)
は 「口 頭 」 で あ る 。 こ の こ と か ら マ ネ ジ メ ン トの 意 思 決 定 で は 多 重 チ ャ ネ ル に お け る 中 核 メ デ ィ ア と し て 「口 頭 」 が 最 も重 要 な 役 割 を果 た して い る と考
え ら れ る の で あ る 。
32国 際 経 営 論 集No.11990
あ い まい 意思 決 定
これ まで検 討 を加 えて きた よ うに,マ ネ ジ メ ン トと りわ けエ グ ゼ ク テ ィブ ク ラス の 意 思 決 定 は,決 して合 理 的 で はな くしか も論 理 的 で もな い
。 目的が 所 与 で あ る こ と も少 な い。 この よ うな合 理 的 で な い意 思 決定 の こ とを あ い ま
い意 思 決 定 とよん で い る。 マ ネ ジ メ ン トの 職務 特 性 を論 ず る とき に欠 か す こ との で きな い キ ー概 念 の1つ で あ る よ う に思 わ れ る
。以 下 で は あ い まい意 思 決 定 の概 念 を提 唱 した マ ー チ=オ ル セ ン(March=01sen
,1979)の 論 述 に主 と して従 い なが ら}マ ネ ジ メ ン トの意 思決 定 の 非 合 理 性 や あ い まい さ を論 ず る こ とにす る。
規範的選択理論 マ ー チ=オ ル セ ン(1979 ,pp.69‑71)は,西 洋 文 明 の信 仰 の 教 義 と して人 間 の選 択 を問 題 に して い る。 この教 義 に基 づ い て従 来,代 替 案 の選 択 や評 価 の 方法 を組 み込 ん だ意 思 決 定 論 が 展 開 され て きた とい う
。 しか もそ の意 思 決 定 論 で は次 に述 べ る よ うな相 互 に関連 づ け られ た3つ の理 念 が 理 論 構 築 の 前提 に な っ て い る とい うの で あ る。
1.目 的 の先 在
2.首 尾 一 貫 性 の必 要 性 3.合 理 性 の第 一義 性
これ ら3つ の理 念 は合 理 的個 人 主義,す なわ ち無 駄 を排 除 した規 範 的選 択 理 論 と して一般 に広 く受 け容 れ られ る よ うに な った の で あ る
。 その 根底 に は
「思 考 は行 為 に先行 す べ きで あ り,そ の行 為 は 目的 に仕 え るべ きで あ り ,そ の 目的 も先 在 す る矛 盾 の な い上 位 目標 に よ っ て定 め られ るべ きで あ り
,し か も選 択 は行 為 とその 結 果 の首 尾 一 貫 性 に基 礎 を置 くべ きで あ る」 とい う考 え 方 が 流 れ て い た の で あ る。
しか し現 実 の 意 思 決 定 は す で に検 討 を重 ね て きた よ うに
,行 為 が 目的 に優 先 した り,思 考 プ ロセ スの 中 に無秩 序 が 介 在 す るた め選 好 順 序 に乱 れ が 生 じ
た り,合 理 性 を追 求 す るの に十 分 な情 報 を持 ち合 わ せ て い な か った りす る こ とが よ くあ るの で あ る。 再 び マ ー チ らの 言葉 を借 りれ ば
,「 目標 が先 に来 て, マネジメント職能のプロセス進化論的検討33
行 為 が そ の 後 に来 る とい う こ と を想 定 した 記 述 が 根 本 的 に誤 りで あ る とい う こ と は紛 れ も な く明 らか な こ とで あ る 。 人 間 の 選 択 行 為 は 目標 に む か っ て行 為 す る こ と と少 な く と も 同 じ程 度 に 目標 を発 見 す る こ とで も あ る の で あ る」。
か く し て 規 範 的 選 択 理 論 に の み 基 づ い た 合 理 的 意 思 決 定 の 考 え 方 は 棄 却 さ れ る こ と に な る 。
無 秩 序 決 定 構 造 の あ い ま い な,あ る い は不 明 確 な 決 定 は,組 織 の 目標 が あ ら か じ め 明 確 に設 定 さ れ て お らず,試 行 錯 誤 的 に 目標 を探 索 して い く よ う な 特 性 を もつ 。 目標 が 事 前 に与 え られ て い るの で は な くsむ し ろ事 後 的 に 認 知 す る よ う な 行 動 を得 意 とす る。 そ の 意 味 で は決 定 過 程 そ の もの が 問 題 とな り,
しか も非 合 理 的 で な お か つ 非 論 理 的 決 定 過 程 を た ど る こ とが 多 い 。L.ピ ン フ ィー ル ド(Pinfield,1986)は こ の よ う な 構 造 の 不 明 確 な 決 定 の こ と を無 秩 序 決 定(anarchicdecision)と 呼 ん だ 。 ま た 彼 は構 造 の 明 確 な 構 造 的 決 定 との 対 比 で,無 秩 序 決 定 の 基 本 的 な 特 性 比 較 を表6の よ う に 要 約 し て い る 。
同 様 の キ ー 概 念 は コ ー エ ン=マ ー チ=オ ル セ ン(Cohen皿March=
Olsen,1972)に よ っ て も用 い られ て い る。 彼 ら は 無 秩 序 決 定 を 曙組 織 化 さ れ た 無 秩 序(organizedanarchy)"と 呼 び,次 の よ う な3つ の 特 質 で 説 明 し て い る。
1.現 実 の 選 択 に適 応 可 能 な首 尾 一 貫 した 選 好 基 準 は 存 在 し な い 。
2.決 定 を 下 さ な け れ ば な ら な い 範 囲 の 技 術 に 関 す る知 識 が 曖 昧 で あ る 。 3.参 加 者 が 種 々 異 な っ た 決 定 に規 則 や 義 務 に 基 づ い て割 り当 て られ る こ
と は な い 。
こ の よ う な 無 秩 序 決 定 で は 目標 が 曖 昧 で あ り,技 術 が 不 十 分 に しか 理 解 さ れ て お らず,し か も参 加 者 は 常 に 変 動 す る の で あ る。 マ ネ ジ メ ン トが 直 面 す る 意 思 決 定 問 題 は,た と え 同 種 の 問 題 で あ っ て も,取 り組 む ス タ ッ フ の 性 格 の 違 い や 上 司 の 考 え 方 の 違 い,利 用 可 能 な 経 営 資 源 の 違 い ・ 決 定 結 果 に つ い て の 環 境 の 反 応 の 違 い,制 約 条 件 の 違 い な ど に常 に付 き ま とわ さ れ,一 時 と
し て 同 一 の 条 件 下 に置 か れ て い る とい う こ と は な い の で あ る。
34国 際経営論集No.11990
表6意 思決定 の決 定特 性比較 決 定 特 性
属 性 構 造 無秩序
決 定 の 定 義 1.行 動 に コ ミ ッ ト し た も の か ら 1参 加者 あ るいは傍観 者が事後 遡 及 して 決 定 プ ロセ ス を規 定 事 実 を構 築 す る。
す る 。 2.決 定 プ ロ セ ス の 始 ま り と終 わ
2.決 定 プ ロセ ス に明 確 な結 末 が りが 不 明 確 で あ る。
あ る一 一 明 確 な始 ま り も暗 示 3.選 択 な しで 問題 を記 述 す る。
さ れ て い る 。 明 確 な 問題 が な くて も選 択 を
3.諸 活 動 の 手 順 が 問 題 解 決 に寄 "行 う。 与 す る機能 とい う視点 で理解
さ れ て い る 。
目 標 と 技 術 1.因 果 関 係 を 認 め な い 。 1.因 果 関 係 を 認 め る 。 2,目 標 を 認 め る 。 2.目 標 を 認 め な い 。
参 画 明確 に は考 慮 され て いな い 。 1.参 画 は 流 動 的 で あ る 。
2.問 題 や 解 決 の キ ャ リ ア と し て 参加 者 は重 要 で あ る。
3選 択 の機会 に参画者が加わ る こ と は決 定 の結 果 に とっ て重 要 な こ と で あ る 。
文脈上 の依存 明確 に は考 慮 され て い な い。 1.現 在 か か え て い る 問 題,代 替
的選 択の機会,参 画者 の関心
は,決 定 パ タ ー ン に 影 響 を 及 ぼ す 。
2.脈 絡 の な い,外 生 的 な事 象 が 問題 の規定 や評価 の基準 に影 響 を及 ぼ す。
時 間 1.異 な っ た 時 間 の ポ イ ン トが 機 1,過 去 は 繰 返 さ れ な い 。 時 間 の 能 的 に等 し く扱 わ れ て い る。 経過 が問題 や文脈上 の評価,
影響 の評価基 準の設定 を可能
に す る 。
2識 別,展 開,選 択 が お お む ね 2.問 題,選 択,行 動 の 順 序 は 必 順 番 に現 わ れ る。 ず し も 必 要 で は な い 。
(LT.Pinfield,"AFieldEvaluationofPerspectivesonOr墓arlizati()nalDecision
Makin,"!44加 η 云〜!雇 ガ〜,召Sビ 勧(ぞQ照 漉7ム ㌧Vol .31,1986,p.367.)
マ ネ ジメ ン ト職能 の プ ロ セ ス進 化 論 的 検 討35
ごみ箱 式 モ デ ル マ ネ ジ メ ン トが 直 面 す る意 思 決 定 は,R.ミ ン チ(Minch, 1986)ら が 主 張 して い る よ う に,常 に コ ン フ リク トを内包 した 多 重評 価 基 準
の設 定 を必 要 として い る。 この よ うな状 況 に適 合 す る意 思 決 定 モ デ ルが ごみ 箱 モ デ ル な の で あ る。 マ ー チ ら(1979,p.252)に よれ ば ごみ箱 式 決 定 とは問 題 を解 くの で は な くむ し ろ,問 題 の キ ャ ッチ ボ ー ル を しな が ら副 産 物 として 決定 を生 み 出 す過 程 な の で あ る。 ま さ し く無 秩 序 決定 にふ さわ しい モ デル と い え よ う。
この モ デ ル の基 本 特 性 は,コ ー エ ン ら(1972)に よ って次 の3つ に要約 さ れ てい る。
1.問 題,目 標,代 替 案,解 決 方 法 の 曖 昧性 2.問 題 を構 成 す る要 素 間 の 因果 関係 の 曖 昧 性 3.問 題 設 定 や 問題 解 決 に参 画 す る人 々 の流 動 性
この よ うに ごみ箱 モ デル で は曖 昧 性 や 流 動 性 を包 み込 む ダ イ ナ ミズ ム を持 ち合 わ せ て い る と考 え られ る。 ご くわ ず か の 問題 しか 解 決 され ない,問 題 が 未 解 決 の ま ま残 っ て い る,な どの 問題 点 は あ る もの の,一 方 で は問 題 点 が 未 解 決 で も解 決 案 が提 案 され る,問 題 未 解 決 の状 態 で解 決 案 が 選 択 され る とい
う,規 範 的選 択 理論 の枠 を超 えた 機 能 が 組 み込 まれ て い るの で あ る。
本 章 で 意 図 した こ とは マ ネ ジ メ ン ト職 能 の 実 際 を情 報処 理 特性 と意 思 決定 特 性 に限 定 して考 察 し,そ こか ら共 通 す る特性 を抽 出 す る こ とで あ っ た。 結 論 的 に言 え ば,マ ネ ジ メ ン ト行 動 の 目的 をア プ リオ リにの み設 定 す る こ とが い か に非 現 実 的 で あ るか を強 調 し,む し ろ 目的 は時 間 の経 過 と と もに また影 響 を行 使 す る空 間領 域 の拡 大 と と もに事 後 的 に見 えて くる とい う側 面 を認 識 す る こ とにあ った。A.ホ ワイ トヘ ッ ド(1981)が 言 う よ うに,時 空 聞 の 連 続 的 過 程 あ るい は延 長 線 上 で,さ まざ まな現 実 的 諸 存 在 を多 元 論 的 に包 み込 み,
その な か で 主体 と しての マ ネジ メ ン トの 自己 創 造 機 能 を論 ず る こ とが い か に 重 要 で あ る かが 垣 間 見 られ るの で あ ろ。 次 章 で は時 空 間 の連 続体 の 拡 が りを
36国 際経営論集No.11990
意 識 し た,プ ロ セ ス 的 世 界 観 に つ い て 論 ず る こ と に し よ う
。
プ 回セ ス 的世 界 観 の もつ 意 味
プ ロセ ス 的世 界 観 で は時 間 と空 間 は相 互 に作 用 しあ っ て い る連 続 した過 程 と見 な され る。 両 者 は分離 しえ な い し また絶 対 的 な存 在 物 で もな い
。 この時 空 間 の連 続 体 の 生 成 は シス テム の進 化 に とっ て欠 か す こ との で き な い もの な の で あ る。 食 物 連 鎖 や 自然 界 に お け る動 植 物 の共 生 関 係 を み て もそ こ に絶 対 的 で限 定 的 な 目的が 存 在 す るわ けで は な い。 存 在 す るの は永 遠 に連 続 す る無 限定 的 な過 程 なの で あ る。 プ ロセ ス 思考 で はこ二元論 的 対 立 概 念 は陰 を潜 め
, 代 わ って多 元論 的包 摂 概 念 が 登場 す る。 そ れ が相 補 性 概 念 な の で あ る
。 相 補 性 に とっ て は対 称 性 の破 れ が不 可 欠 で あ り,そ の対 称 性 の破 れ は進 化 を論 ず る ときの必 要 不 可 欠 要 因 な の で あ る。 こ こで は時 空 間 連 続 体 と して の進 化 の 様 子 を相 補 性 概 念 を中 心 に論 じて み た い。
ダ ー ウ ィニ ズ ム 的 進化 論
ダ 』 ウ ィ ンの進 化 論 で は,環 境 の 変 化 に た い して個 体 が環 境 適 応 の 機 会 を 得 る こ とに よ り遺 伝 子 型 形 質 の な か に順 応 的 形 質 が 生 まれ て くる こ とを強 調
す る。 そ こで は 自然 淘 汰 に よ るce者 生 存"が 遺 伝 子 の 変 化 を生 み だ し ,そ の 積 み重 ね が遺 伝 的 な変 化 で あ る進 化 を引 き起 こす の で あ る
。 ダ ー ウ ィニ ズ ム で は環 境 と生 物 個体 との関 係 が マ ク ロの環 境 か ら ミク ロの生 物 個 体 にた い す る一 方 的適 応 行 動 と して論 じ られ て お り,そ こで の 主 た る関 心 事 は環 境 所 与 型 の 安 定 化 行 動 な の で あ る。
一 方・新 ダ ー ウ ィニ ス トの一 人 で あ るC.ウ ォデ ィン トン(1984)はDNAに よっ て伝 達 され る遺 伝 子 型 の 他 に,遺 伝 子 型 の命 令 に よっ て作 成 され る表 現 型 を想 定 し,両 者 の相 互 作 用 を通 じた一 連 の過 程 を,空 間 の概 念 を取 り込 ん だ生 物 に固 有 の 進 化 モ デル と して提 唱 して い る。 つ ま り彼 に よれ ば,図12に
マネジメント職能のプロセス進化論的検討37
図12自 然 選 択 の プ ロセ ス
遺伝子型空 間
・
・:● ・
1234
(C.H,ウ ォ デ ィ ン ト ン 「現 代 の 進 化 論 」 ア ー サ ー ・ケ ス ト ラ ー 編 著,池 田 善 昭 監 訳 『還 元 主 義 を 超 え て 』 工 作 舎,1984年,486べ 一 ジ 。)
示 す よ う に生 物 体 は遺 伝 子 空 間 か ら発 生 過 程 を あ る方 向 な い し別 な 方 向 に進 め よ う とす る 「後 成 的 空 間 」 を経 て,表 現 型 空 間 へ と移 行 す る とい う。
E.ヤ ン ツ(1986,P.289)は 表 現 型 に至 る プ ロ セ ス を ウ ォ デ ィ ン トン の説 を 引 用 しな が ら次 の よ う に 説 明 し て い る。
生 物 に よ っ て修 正 さ れ た 環 境 は,生 態 的 適 所 を 形 成 す る 。 こ う した 適 所 は,生 態 系 内 の ほ か の 適 所 との 相 互 進 化 を 通 し て 変 化 し て い く。 … …
ど ん な 適 所 で も生 物 が う ま く適 応 で き な い 部 分 を もつ もの で,そ の た め に あ る種 の 緊 張 な い し 「ス トレ ス」 が 生 ま れ る 。 す る と今 度 は そ の 適 所 の 修 正 に役 立 つ よ う な 遺 伝 的 潜 在 能 力 が 働 く よ う に な る。 つ ま り表 現 型 と は,適 所 と個 体 の 関 係 が 生 き られ て い くな か で 作 り出 さ れ る もの な の だ 。
ま た ウ ォ デ ィ ン トン 理 論 の 中 核 で あ る,後 成 的 空 間 か ら生 まれ る 表 現 型 の t環 境 開 発"行 動 と 自 然 淘 汰 との 関 係 に 関 し て,J.ピ ア ジ ェ(1987,pp.58‑
59)は 次 の よ う に評 価 し て い る。
1.生 物 は 自 ら環 境 を 選 択 す る 。 し た が っ て,淘 汰 の 過 程 に は 相 互 性 が 含 ま れ る こ と に な る 。 生 物 の 側 で は シ ェ ー マ に た い す る栄 養 補 給 を す る た め に 自 分 に 都 合 の よ い 種 の 外 的 条 件 は保 持 し,不 都 合 な条 件 は放 棄 な い し は 否 定 す る 。 一 方,環 境 の 側 で は 選 ば れ た 条 件 に 応 じ た 生 物 の 変 化 を 38国 際経営論集No.11990
促 し,そ の条 件 に適 合 で き ない 変 異 は排 除 す る。 この よ うに して生 物 み ず か ら環 境 を修 正 し,環 境 は逆 に生 物 を変 容 させ る こ とに な る
。 か くし て環 境 開発 は ま さ に相 互 変 化 を と もな っ た循環 的 過程 に あ る とい え るの で あ る。
2.淘 汰 は直 接 的 な遺 伝 子 に支 え られ て い るの で は な く
,表 現 型 がce遺 伝 的 制 御"に 従 う程 度 まで働 くとい う制 約 が 付 くものの ,… … ま さに表 現 型 の 形 質 に よっ て支 え られ て い る。
ウ ォデ ィ ン トン は環 境 を 曜選 択"す る とい う,ダ ー ウ ィ ンに は な い新 しい 視 点 を進 化 論 に導 入 した。 しか しい ず れ にせ よ,ダ ー ウ ィ ン的進 化 論 で は生 物 と環 境 との 間 をつ な ぐフ ィー ドバ ッ ク を もっ て お らず,自 らを構 成 す る関 係 の構 造 を 自 ら変 えて い く とい う自己創 出 の メ カニ ズ ム は説 明 で きな い こ と に な る。
相 補 的 ア プ ロー チ
プ回セス進化 整 序 的 手 続 きや分 析 的 方 法 論 の確 立 を重 視 す る還 元 主 義 で は 様 々 な事 象 を単 純 に還 元 す る こ とに よっ て説 明 しよ う とす る。 しか し この 方 法 で は もの ご と全 体 の基 本 特 性 や創 造 性 が 見 失 わ れ る ば か りで な く
,相 互 に 関 係 しあ っ て機 能 して い る現 実 的諸 存 在 の有 機 的結 合 関 係 は永 久 に解 明 され な い で あ ろ う。 一般 的 に言 え ば われ わ れ が 好 ん で選 択 した が る秩 序 や安 定 性 は む しろ無 秩 序 や不 安 定 性 に よ って 導 き出 され る もの で あ る と も考 え られ る の で あ る。 新 しい秩 序 は古 い秩 序 の犠 牲 の も とで生 成 され るの で あ る
。 む し ろ混 沌 と した,時 に は矛 盾 した,複 雑 な事 象 の な か に身 を置 くこ とに よ っ て 初 め て現 実 を正 し く見 極 め る こ とが 可能 とな る の で あ る。
還 元 主 義 的 ア ブmチ が 得 意 とす る原 子 や核 の世 界 をの ぞ い て も神 経 細胞 の仕 組 み全 体 が分 か らな い とす れ ば,わ れ わ れ は どの よ うな ア プ ロー チ に依 拠 すべ きで あ ろ うか。 今,命 題 をた て る さい の基 本 的 な考 え方 と して,シ ス
テム が 現状 の 複 雑 性 を超 えて,よ り高次 の複 雑 性 を追 求 す る よ うな行 動 を と
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の プ ロセ ス進 化論 的検 討39
る と仮 定 して み よ う。 こ こで い うce高 次"と は実 現 に一 層 大 きな困 難 が 伴 う よ うな こ とが らの こ とで あ る。 言 い換 えれ ば,未 知 で しか も未 経 験 で あ る よ うな異 質 性 との遭 遇 の こ とで あ る。 す で に分 析 した 進 化 論 の 用語 との アナ ロ ジ ー で い えば,低 次 の複 雑 性 は遺 伝 子 的特 性 を備 えて い るの に対 して高 次 の 複 雑 性 は後 成 的特 性 を備 えて い る とい う こ とに な ろ う。 しか も この後 成 的発 展 はや が て遺 伝子 的 発 展 を も生 起 させ るの で あ る。 か くして よ り高 次 な複 雑 性 を吸 収 す る こ とに よ って過 去 にお い て不 可 能 で あ った水 準 に まで環 境 の操 作 性 を高 め る こ とが期 待 され る。 この 場合,シ ス テム は何 らか の 自己創 出機 能 の働 きに よって 環境 に作 用 し,一 方 で 環 境 も 自己 創 出機 能 の作 用 に よって シス テ ム の側 に何 らか の働 きか け をす る。 つ ま り共 に複 雑 性 や異 質 性 を相 互 作 用 に よ って取 り込 み なが ら進 化 してい るの で あ る。 ヤ ン ツ(1986)は,よ
り高 次 な複 雑i生へ 向 か う進 化 は生命 に強 さ と深 ま りを与 え るた め に必 要 で あ る と説 く。
こ こで い う進 化 とはダ ー ウ ィニ ズム の よ うな 受動 型 あ るい は適 応 型 進 化 で は な く,「個 体 が ほか の個 体 を含 む環 境 との間 で 何 らか の 相 互依 存 や相 互作 用 を繰 り返 しなが ら,相 互 に何 らか の新 奇 性 を能 動 的,主 体 的 に生 み 出 して い く過 程 の こ と」 と理 解 され よ う。換 言 す れ ば,現 実 に存 在 す る様 々 な現 象 を 抱 握 しなが ら(ホ ワイ トヘ ッ ド,1981),創 造 的 に連 続 的 に前 進 す る よ うな行 動 が 進 化 と深 く関 わ っ て い る と考 え られ るの で あ る。仮 に これ を プ ロ セ ス的 進 化 と名 づ けて お こ う。
この よ うな ダ ー ウ ィニ ズ ム を超 えた進 化 に は,幾 つ か の共 通 の特 質 が あ る。
ヤ ン ツ(1986,p.105)に よれ ば,自 己創 出の 条件 と して① 環 境 に対 す る開放 性,② 新 しい 自己 を創 造 す るた め の現 在 の平 衡状 態 を超 え た非 平 衡状 態 の 創 出,③ 個 体 間 の相 互 の生 存 の可 能 性 を高 め る 自己触 媒 の3つ を掲 げ て い る。
この 自己創 出 とい うの は 「あ る シ ステ ムの機 能 が 自己再 新 を本 来 的 に志 向 し て い る状 態 の こ と」(ヤ ン ツ,p.85)を 言 い,進 化 の働 きその もの を表 現 して い る と考 え られ る。 例 え ば生 物 細 胞 は,同 化 作 用 と異 化作 用 の 反 応鎖 が 生 む
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相 互 作 用 を通 して,バ ラ ン ス の とれ た 自己 再 新 を進 め て い く機 能 を も
っ て い るの で,自 己創 出 的 で あ る と同時 に進 化 の様 子 も表 わ して い るの で あ る
。 相補性 進 化 を一 般 的 な 用 語 で表 現 し直 す と
,ぞ環 境 と シ ス テ ム との相 互 進 化"と い う こ とに な ろ う・ この よ うな相 互進 化 の 関 係 の こ とを相 補 性 とよん で い る。 「は じめ に」で も触 れ た よ うに量 子 力 学 の世 界 の 言葉 を援 用 した も
の で あ る・ プ ・セ ス進 化 を相 補 性 概 念 に よ っ て補 っ て み る と
,シ ス テ ム が環 境 との 間 で エ ネル ギ ー や物 質 ,情 報 な ど を交 換 しな が ら新 奇 性 を生 み だ しっづ け る連 続 的 過 程 とい う こ とにな ろ う。
た だ し こ こで 見落 と して な らな い の は,新 奇 性 は いつ まで も新 奇 性 で は あ りえ な い とい う こ とで あ る。新 奇 性 に よ っ て もた ら され た複 雑 性 が シ ス テム に よ っ て吸収 され る に つれ ,新 奇 性 は次 第 に単 純 化 あ る い は秩 序 化 して くる (海老 澤 ・1989)・ あ る企 業 が ニ ュー ヒ.,ジネ ス に取 り組 ん だ と して 噺 奇 性 を 保 て るの は進 出 当初 だ け で あ り,時 間 の経 過 と と もに また 空 間 へ の浸 透 と と
も噺 奇 性 か 按 定 や秩 序 を志 向 す る確 立 性 へ と変 態 して い くこ とにな る
。 確 立 性 は離 の 安 定 化 を指 向 す るの1こた い して噺 奇 性 は カ オ スの 醸 成 を
7旨 向 す る・ 相 補 性 原理 に従 え ば,両 者 は矛 盾 す る もの で はな くまた相 反 す る も の で もな い。 時 空 間 を超 越 して連 続 す る環 状 プ ロセ スの な か で両 者 は相 互 に 補 いあ い浸透 しあ い,相 互 に進 化 して い く対 象 物 な の で あ る
。
N.チ ェ ンバ レ ン(1974,p .4)は 企 業 の 経 済 活 動 を,経 済 的対 位 法 す な わ ち独 立 した独 自の 目的 を もっ た単 位 群 の集 合 で説 明 して い る
。独 自の 目的 や 特 異 性 を もっ た構 成 単 位 とい うの は,シ ス テ ム全 体 に た い して有 力 な鰍 序 形 成 要 因 に な りうる・ しか し部 品 化 され た しか も機 械 的 な単 純 性 しか もち合 せ て い な い単 位 に比 べ る と・ 鰍 序 で あ る が ゆ え に餓 的 に撹 乱 を発 生 させ,
あ る水 準 の 均衡 を破 り,さ ら に よ り上 位 水 準 の 均衡 を 目指 す こ とを可 能 にす る。 凝 集 と撹 乱,均 衡 と不均 衡 の よ うな それ ぞ れ が独 立 して い る要 素 を組 み 合 わ せ 全体 と して何 か新 しい もの を創 造 して い くよ うな対 位 法 は
,一 方 が他 方 の 目指 す効 果 を実 現 す るた め の で喫触 媒"機 能 の よ うな もの で あ る と考 え ら
マネジメント職能のプロセス進化論的検討41
れ る。 われ わ れ が こ こで試 み て きた分 析 視 点 に従 え ば,対 位 法 を相 補 性 概 念 で く くる こ と も可能 で あ ろ う。
解 の連続性 ・多層性 上 位 開 放 を 目指 した創 造 的進 化 は,連 続 的,相 互 関 連 的 相 補 性 に よ って実 現 す る こ とが 期待 され て い る。 その場 合,問 題 に対 す る解 の設 定 は どの よ うに な る の で あ ろ うか。 時 空 間 の連 続 体 を前 提 に考 えて み る
とそ こに は中 間 的 な解 は あ って も最 終 的 な解 は存在 しな い こ とに な る。 なぜ な らば問題 その もの が ダ イ ナ ミッ クに形 を変 えな が ら次 々 に現 わ れ るか らで あ る。 また解 を決 定 す る さい の価 値 基 準 につ いて も,環 境 諸 条 件 や 主観 的 な 考 え方 そ の もの が大 き くゆ らいで お り,画 一 的 一 貫 性 を もっ て論 じ られ な い か らで あ る。 特 に マ ネ ジ メ ン トに つ い て は意 思決 定 との 関連 で意 識 や 考 え方 が い か に 多様 に錯 綜 して い るか をす で に分 析 した とお りで あ る。 相補 性 原理 の な か で は 目的 その もの も連 続 体 として の プ ロセ ス の なか に包 み込 まれ て し
ま う とい う表 現 が 許 され るか もしれ な い 。
ヤ ン ツ(pp.526‑530)は 価値 の 相 補 性 に つ いて 多 層 的倫 理 とい う興 味 の あ る考 え方 を示 して い る。 通 常,も の ご との判 断 は 「善 ・悪 」 とか 「正 ・不 正 」 の よ うに明 確 に識 別 され て い る。 と ころが その判 断 の 基準 とな った価 値 は絶 対 的 な もの で は な く,む し ろ時 間 の経 過 あ るい は空 間 の違 い に よっ て逆 の 結 論 が 出 て し ま うの で あ る。 日米 間 の貿 易 摩 擦 で,日 本 製 の電 気 製 品 が ア メ リ カ の大 半 の家 庭 を席 捲 して い るの は ダ ン ピ ング輸 出 のせ いで あ る と して,こ れ に 「悪 」 で あ る とい う判 断 を下 し罰 則 関税 をか けて 「善 」 を狙 った とし よ
う。 とこ ろが そ の価 格 や性 能 が気 に入 って 愛 用 して いた ア メ リカ人 に とって は,あ る い は また 家 電 の 小 売 業 者 に とっ て は 日本 製 品 が 入 手 しに く くな った り品 不 足 で店 頭 か ら消 えた りした場 合,そ れ ぞ れ が認 知 して い た 「善 」 が 罰 則 関税 とい う行 為 その もの に よって 「悪 」 に変 わ っ て し ま うの で あ る。
この よ うな こ とか ら,ヤ ンツ は レベ ルが 変 化 す れ ば もの ご との善 ・悪 が 逆 転 して し ま うこ とを指 摘 し,多 層 的倫 理 とい う視 点 で もの ご とを見 る こ との 重 要性 を強 調 して い る。 多 層 的 倫 理 の も とで は,解 は多 層的 現 実 の1つ の レ
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ベ ル に し か 過 ぎ ずx一 度 限 りで 解 決 す る よ う な 問 題 は存 在 し な い こ と に な る
。 こ こ に静 的 倫 理(being)で は な く,動 的 で 多 層 的 倫 理(becoming)を 推 す 積 極 的 理 由 が 存 在 す る の で あ る 。
プ ロセ ス的 世 界 観 は還 元 論 の よ うな因 子 分 析 や二 分 法 の よ うな二 元 論 的 単 純 化 の 方 法 は と らな い。 な ぜ な らば還 元論 で は全体 を全 体 と して把 握 す る こ
とが 困難 で あ り,ま た 二分 法 で は構 成 要 素 間 の相 互 関係 性 が 分 らな い か らで あ る。 プ ロ セ ス的 世 界 観 で は時 空 間 を超 越 した連 続 体 の 中 で
,相 補 性 を キー 概 念 と して秩 序 維 持 型 の確 立 性 と秩 序 破 壊 型 の新 奇 性 との相 互進 化 を 目指 す の で あ る。 この よ うな過 程 論 的 な ア プ ロ ー チが マ ネ ジメ ン トの機 能 と どの よ うな か か わ りあ い を もつ の か が,次 章 の課 題 とな る。
マ ネ ジ メ ン ト職 能 の 本 質
わ れ わ れ は これ まで,マ ネ ジ メ ン ト職 能 の 現 実 な らび に プ ロセ ス 的世 界 観 の もつ意 味 に つ い て検 討 して きた。 そ の結 果 に基 づ い て本 章 で は,相 補 性 概 念 を用 い なが らマ ネ ジメ ン 職 能 に関 す る動 態 的 モ デル の設 計 を試 み る
.基 本 的 分 析 視 点 は あ くまで も時 空 間 を超 えた プ ロセ ス論 で あ り,マ ネ ジ メ ン ト は そ こで は進 化 の イ ニ シエ ー タ と して作 用 す る こ とに な る
。
マ ネ ジ メ ン トの 対 象
プ ロ セ ス 的 世 界 観 をマ ネ ジ メ ン ト職 能 に応 用 した 場 合
yま ず 時 間 の 管 理, 次 に 空 間 の 管 理,さ ら に 時 空 間 の 統 合 を 通 し て 初 め て 可 能 に な る 経 営 諸 資 源
の 管 理 と い う3つ を 対 象 と して 論 ず る必 要 性 が 生 じ て こ よ う
。 時 間 の 管 理 伝 統 的 な マ ネ ジ メ ン トに お け る 時 間 管 理 は
,ス ル ー プ ッ トや タ ー ナ ラ ウ ン ドタ イ ム な ど の 概 念 で も明 らか な よ う に
,ど ち らか と い う と,コ ス ト と共 に 一 定 時 間 内 の 生 産 量 や 投 入 マ ンパ ワ ー
,投 入 資 源 な ど で 測 定 し評 マネジメン ト職能のプロセス進化論的検討43