波動理論を用いた逆解析による 粘弾性多層体の構造評価
小澤 良明
1・篠原 裕貴
2・松井 邦人
3・東 滋夫
41正会員 東京電機大学 建設環境工学科 研究員 (〒350-0394 埼玉県比企郡鳩山町石坂) E-mail:[email protected]
2正会員 元東京電機大学理工学研究科 (現 : 東亜道路工業株式会社 (〒106-0032 東京都港区六本木7-3-7) ) E-mail:[email protected]
3フェロー会員 東京電機大学教授 建設環境工学科 (〒350-0394 埼玉県比企郡鳩山町石坂) E-mail:[email protected]
4正会員 鹿島道路株式会社 技術研究所 (〒182-0036 東京都調布市飛田給2-19-1) E-mail:[email protected]
本研究の目的は,FWD試験の時系列データを用いて構造評価するための新しい動的逆解析法(W-BALM) を開発することである.本方法の大きな特徴は,フォークトモデルで構成される粘弾性多層体に作用する 衝撃荷重の波動伝播の理論解を順解析に組み込んでいることである.逆解析では,各層のフォークトモデ ルのパラメータの値を推定している.逆解析には打切り特異値分解を組み込んだGauss Newton法を用い,
時間領域で解析たわみと測定たわみが一致するようにパラメータを決定している.実測データを用いて本 理論で逆解析を行い動的逆解析ソフトウェアD-BALMで得られた結果と比較した.両者の結果は類似して
いるが,W-BALMの結果の方が初期値によるばらつきが若干少ない.
Key Words :Voigt model, wave- propagation, multilayered half space, Hankel transform, FFT, Gauss Newton method
1.はじめに
FWD (Falling Weight Deflectometer)は舗装構造評価の標 準試験機としてしばしば用いられる.FWD 試験で原位 置試験を行い,舗装の表面の数点で測定したたわみから 舗装を構成する各層の弾性係数を推定できると考えられ ている.これまで舗装の新設設計や補修計画を策定する ために表面たわみをどのように解釈すべきかについて精 力的に研究が行われてきた.その結果,数多くの逆解析 法が開発されてきた.
現在,舗装を構成する層弾性係数を推定できる静的逆 解析法と動的逆解析法が存在する.FWD で測定した荷 重とたわみのピーク値が,多層弾性構造モデルで解析し た表面たわみと一致するように各層の弾性係数を推定し ようとするものである.FWD 試験は衝撃的な荷重を作 用させるため動的載荷試験である.しかし,通常荷重と たわみのピーク値を用いて,静的逆解析を行っており,
動的荷重が舗装に及ぼす慣性力や減衰の影響を無視して いる.それに対して動的逆解析では,FWD 試験の荷重
とたわみの時系列データを用いており,これらの影響を 考慮したより現実に即した逆解析と言うことができる.
動的逆解析も解決すべき問題を色々抱えている.動的 逆解析も静的逆解析と同様,順解析と逆解析からなって いる.逆解析の基本的な考え方は,実測値と解析値の差 の自乗和を最小にすることであり,色々な最適化理論を 適用できるが,通常Newton法やGauss Newton法が用い られている.動的順解析には波動理論の理論解あるいは 半理論解を用いる方法とFEMで行う方法がある.Kang1) は 離 散 グ リ ー ン 関 数 を 用 い ,Al-Khoury et al.2) は Fourier-Bessel 級数とFourier 変換を,また Ji et al. 3) は
Spline関数とFFTを用いた半理論的方法で順解析を行っ
ている.Chatti et al. 4) はFEMとFFTを用い,菊田ら5) は FEM で離散化した波動方程式をリッツベクトルで縮小 化して近似式を誘導し,固有値解析を行いその理論解を 求めている.
著者らは,舗装を構成する各層がフォークトモデルで 構成される多層構造であると仮定し,その表面に衝撃荷 重が作用するときの波動方程式にHankel変換とFFTを
適用して得られる連立複素微分方程式の解を誘導するこ とに成功している 6).本研究では,この理論解を用いて 動的逆解析できるソフトウェア W-BALM を開発し,
FWD試験データに適用した.菊田ら5)が作成したFEM に基づく動的逆解析ソフトウェア D-BALM の結果と比 較している.
2.波動解析と逆解析
(1) 波動伝播
衝撃荷重がフォークトモデルで構成された多層構造の 表面に半径aに等分布して作用するものと仮定する.こ のような問題は軸対称となり,波動方程式は次式のよう に書くことができる.
2 2
t u r
z r
r rz r
∂
= ∂ + −
∂ +∂
∂
∂σ τ σ σθ ρ
(1a)
2 2
t w r
z r
rz z rz
∂
= ∂
∂ + +∂
∂
∂τ σ τ ρ
(1b)
ここに,u,wはそれぞれrおよびz軸方向の変位,σr, σθ,σz,τrzは微小要素の応力である.変位とひずみと 関係式は,
r u
r ∂
=∂
ε ,
r
=u εθ ,
z w
z ∂
=∂
ε ,
r w z u
rz ∂
+∂
∂
=∂
γ (2)
εr,εθ,εzは,それぞれσr,σθ,σzに対応する垂 直ひずみ.γrzはτrzに対応するせん断ひずみである.
図-1に記すフォークトモデルの,変位と応力の関係式は,
+ +
+
+
=
rz z r
rz z r
b b a a a
a b a a
a a
b a dt F d E
γ ε ε ε
τ σ σ σ
θ θ
0 0
0
0 2
0 2
0 2
(3) ここに,
) 2 1 )(
1
( ν ν
ν
−
= +
a ,
) 1 ( 2
1 ν
= + b
Eは弾性係数,Fは粘性係数,νはポアソン比である.
多層構造では,それぞれの層で材料特性や層厚は異なる
が,式(1)-(3)の関係がすべての層で成立つ.多層構造表
面に動的荷重P(t)が半径aの円に等分布していると仮 定すると,境界条件は式(4)のように書くことができる.
) ( ) , 0 ,
(r t pt
z =−
σ r ≤a (4a)
=0 r >a (4b)
0 ) , 0 , (r t =
τrz r≥0 (4c)
ここに,
( )
2) ( )
(t P t a
p = π
式(1)-(4)をHankel変換とFFTを用いて解を求めている.
解き方については文献6) に詳述した.
(2) 逆解析
本研究は,舗装断面をフォークトモデルで仮定し,衝 撃荷重と多層構造の表面における着目点で計測された鉛 直方向の変位波形から,各層の弾性係数Ejと減衰係数
Fjを推定するものである.添字jは層番号を表している.
ここでは,測定されたi点の鉛直方向の変位波形をwi(t), 波動解析から得られる鉛直変位をzi(Ej,Fj,t)とする.
) , , (E F t
zi j j が wi(t) と 一 致 す る よ う に Ej,Fj , )
,..., 1
(j= M を決定する.波動方程式は前述のように FFTを用いているので,周波数領域で解析たわみと測定 たわみを一致させることも考えられる.しかし,FWD 試験で測定されたたわみ波形はピーク値付近で精度は良 いが,始めと終りの裾の部分において必ずしも保障され ていない.そこで時間領域においてピーク値付近の信頼 できる領域で両者のたわみが一致するように,舗装各層 の弾性係数と減衰係数を推定する.粘弾性モデルで構成 された多層構造の逆解析ソフトウェアをW-BALMと呼 ぶことにする.
逆解析では初期値X=
(
Ej,Fj)
Tの値を仮定してたわみ を解析し,解析たわみと測定たわみの差が最小となるよ うにパラメータの値を決定する.評価関数を次式のよう に定義する.{ }
∑∑
= =−
= N
i K
k
k i k
i t z t
u J
1 1
) 2
, ( ) 2 (
1 X (5)
ここに,
) (k
i t
u :時刻tkにおける着目点iの測定たわみ )
,
( k
i t
z X :時刻tk における着目点iの解析たわみ X :未知パラメータ(層の減衰係数と弾性係数)
からなるベクトル
σ σ
E
F
図-1 フォークトモデル
N :着目点数
K :たわみの着目時間区間にある時間軸の離散 点tkの総数
なお,たわみ波形の差を最小にさせる時間領域は
1
0 t t
t ≤ ≤ と定義する.荷重載荷円中心のたわみがピーク 値の50%を越えたときの時刻をt0,最遠センサー位置の たわみがピークを過ぎピーク値80%以下となった時刻を
t1としている.
逆解析の基本的な考え方は,文献 5)同様に,打切り特 異値分解を組み込んだGauss Newton法を用いている.式 (5)が最小となるための必要条件より,
j
M
j K
k N
i j
k i k
i dX
X t z X
t
∑∑ ∑
z= = =
∂
∂
∂
∂
2
1 1 1
) , ( ) ,
(X X
l
( )
Xl
t z z t
u i
K
k N
i
k i k
i ∂
− ∂
=
∑∑
=1 =1
) , ( )
( X (6)
l =1,...,2M
式(6)は2M×2M の連立方程式である.係数マトリック スの条件数がしばしば非常に大きくなり,特異マトリッ クスに近くなるため,逆解析の計算は不安定であると言 われている.そのため打切り特異値分解を用いて係数マ トリックスの階数を落として近似的に式(6)を解いてい る.収束時の測定たわみと解析たわみの誤差を式(7)で評 価する.
{ }
K N
t z t u E
N
i K
k
k i k i
r ⋅
−
=
∑∑
=1 =1
)2
, ( )
( X
(7)
3.数値シミュレーション
図-2に記すようなシミュレーション断面に,半径15cm の円に等分布する衝撃荷重P=49sin2
(
πt 40)
kNを作用 させ,汎用FEMソフトであるADINAを用いてシミュレ ーションデータを作成した.ADINA における解析領域 は,水平方向16m,深さ方向16mと設定した.着目点は FWD 試験機を参考に,舗装表面で荷重作用中心から 0cm,30cm,45cm,60cm, 90cm,120cm,150cm離れた位置とす る.逆解析を行うソフトウェアは,荷重と表面たわみの ピーク値だけを用いる静的逆解析ソフトBALM.荷重と 表面たわみの波形を用い,D-BALMとW-BALMで動的 逆解析を行う.なお,逆解析はアルゴリズムが不安定で あり,初期値の選択が逆解析結果に影響すると言われて いる.そこで,ここでは50個発生させた一様乱数を用いr
z
載荷荷重
1層特性 ) (t P15cm
= a
MPa
3=60 E
40 .
3=0 ν cm
1=15 h
cm 2=35 h
MPa
1=5000 E
5 3 .
1=0 ν1=50MPa⋅s F
5 3 .
2=0 ν 2層特性
3層特性
MPa
2=400
E F2=4MPa⋅s
s MPa 6 .
3=0 ⋅
F
3 1=2200kgm ρ
3 2=2000kgm ρ
3 3=1600kg m ρ
図-2 シミュレーション解析断面
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14
時間 (s) 表面たわみ(cm)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
荷重 (kN)
D-0 D-90 D-150 LOAD
cm 015 . 0 5 . 0 0 -
D (max)× =
cm 0082 . 0 0 15 -
D (max)=
cm 0065 . 0 0.8 0 15 -
D (max)× =
s 017 .
0=0
t t1=0.046s
cm 030 . 0 0 - D (max)= 0.035
0.030 0.025 0.020
0.010 0.015
0.005
図-3 逆解析範囲
表-1 シミュレーション逆解析結果
-0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03 0.035
0 0.03 0.06 0.09 0.12 0.15
時間(s)
表面たわみ(cm)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
荷重 (kN)
D-0 D-90
D-150 W-BALM(D-0)
W-BALM(D-90) W-BALM(D-150)
D-BALM(D-0) D-BALM(D-90)
D-BALM(D-150) LOAD
図-4 たわみ一致度
て,1層目の弾性係数は2000~10000MPa,2層目は200
~2000MPa,3層目は40~200MPaの範囲の値となるよ うに初期値を発生させ,逆解析を行った.
本シミュレーションデータにおいて,たわみ波形の差 を最小にする時間領域を図-3に記す.荷重載荷円中心の た わ み が ピ ー ク 値 50%を 越 え た と き の 時 刻 は
s 017 .
0 =0
t ,最遠センサー位置のたわみがピークを過ぎ ピーク値80%以下となった時刻はt1 =0.046sである.
逆解析結果を表-1に整理する.BALMから推定した層 弾性係数は,真値と比較し1層目の弾性係数と3層目の 弾性係数が大きい.静的モデルとして逆解析したモデル 誤差により生じたものと考えられる.D-BALMの結果は 真値と比較し,第1層と第3層の弾性係数を小さく評価 し,第 2 層の弾性係数を大きく評価している.これは
D-BALM の解析領域に起因しており,D-BALM の解析
領域は,水平方向5m,深さ方向6mとシミュレーション 断面より領域を小さく設定しているためだと思われる.
W-BALM の結果は弾性係数だけでなく減衰係数も精度
良く逆解析が行われている.また変動係数も W-BALM が最も小さい.これは,逆解析における初期値の影響が 少ない事を示しており,W-BALMは安定した逆解析手法 である.
図-4 に逆解析から得られた各層の弾性係数と減衰係 数を用いて計算した表面たわみと,ADINA で求めた表 面たわみを図示する.D-BALMとW-BALMとも,ADINA の表面たわみと良く一致している.
なお,このシミュレーションにおいて逆解析に要する 計算時間は,D-BALMとW-BALMで同程度( CPU:Core2 Duo 6600 のPCを使用時 )であり,約1~2分である.
4.実測データを用いた逆解析
(1) A 機関
ここで利用するFWD試験データは,埼玉県栗橋市に舗 設したテストピットで,1996年8月7日午前10時から 翌日午前10時までの1時間おきに測定したものである.
試験を行った舗装断面を図-5に記す.この舗装には熱電 対がアスファルト混合物層に10個埋設して,舗装温度を 計測している.
逆解析にはBALM, D-BALM, W-BALMを用いる.こ こでも,初期値の影響を見るため,1 層目の弾性係数が 5000~10000MPa,2層目は300~800MPa,3層目は3000
~500MPa,4層目は60~150MPaの範囲の値となるよう に一様乱数で50組発生させて逆解析を行った.1996年8 月7日午前10時に計測したデータを用いて逆解析した結 果を図-6に記す.1層目弾性係数については200MPa刻 み,2層目弾性係数と3層目弾性係数は40MPa刻み,4
r
z
載荷荷重
1層特性 ) (t P15cm
= a
40 .
4=0 ν cm 6 .
1=24 h
cm 3 .
2=15 h
5 3 .
1=0 ν
5 3 .
2=0 ν 2層特性
3層特性
3
1=2300kgm
ρ
3 2=2000kgm ρ
3 4=1600kgm ρ cm 2 .
3=18
h ν3=0.35
3
3=1900kgm
ρ 4層特性
アスファルト混合物
粒度調整砕石(M-30) クラッシャラン(C-40)
路床
図-5 A機関解析断面
0 10 20 30 40 50
1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200 2400 2600 2800 3000 次の
級 弾性係数(MPa)
頻度
W-BALM D-BALM BALM
(a) 1層目
0 10 20 30 40 50
100 140
180 220
260 300
340 380
次の 級 弾性係数(MPa)
頻度
W-BALM D-BALM BALM
(b) 2層目
0 10 20 30 40 50
50 90 130
170 210 250
290 330
370 次の級 弾性係数(MPa)
頻度
W-BALM D-BALM BALM
(c) 3層目
0 10 20 30 40 50
60 65 70 75 80 85 90 95 100
次の 級 弾性係数(MPa)
頻度
W-BALM D-BALM BALM
(d) 4層目
図-6 10時測定たわみ逆解析結果
0 1000 2000 3000 4000 5000
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10 時間(h)
弾性係数(MPa)
0 10 20 30 40 50
温度(℃)
D-BALM W-BALM
BALM 舗装温度
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10 時間(h)
減衰係数(MPa・s)
0 10 20 30 40 50
温度(℃)
D-BALM W-BALM 舗装温度
(a) 1層目弾性係数 (a) 1層目減衰係数
0 200 400 600 800
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10
時間(h)
弾性係数(MPa)
D-BALM W-BALM BALM
0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10
時間(h)
減衰係数(MPa・s)
D-BALM W-BALM
(b) 2層目弾性係数 (b) 2層目減衰係数
0 200 400 600 800 1000 1200
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10
時間(h)
弾性係数(MPa)
D-BALM W-BALM BALM
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10
時間(h)
減衰係数(MPa・s)
D-BALM W-BALM
(c) 3層目弾性係数 (c) 3層目減衰係数
0 20 40 60 80 100 120
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10
時間(h)
弾性係数(MPa)
D-BALM W-BALM BALM
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25
10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10
時間(h)
減衰係数(MPa・s)
D-BALM W-BALM
(d) 4層目弾性係数 (d) 4層目減衰係数
図-7 24時間測定データ逆解析弾性係数 図-8 24時間測定データ逆解析減衰係数
層目弾性係数は5MPa刻みで頻度分布図を作成し,それ ぞれ図-6(a),(b),(c), (d)に記す.実測データをBALM で逆解析した結果はほとんどばらつきがなく,アルゴリ ズムは非常に安定している.動的逆解析では,D-BALM の結果方がややばらつきは大きく,W-BALMの方が安定 している.シミュレーション結果同様,W-BALMは安定 した逆解析手法である.
図-7は1時間おきに24時間連続して測定したデータ の逆解析弾性係数の結果である.縦軸に弾性係数,横軸 に計測した時刻を記し,1~4層目の逆解析結果をそれぞ れ図-7(a),(b),(c),(d)に記す.なお1層目の逆解析結果
にはアスファルト混合物層の平均温度も図示した.アス ファルト混合物層の平均温度は,13時が最も高く41.1℃,
6時が最も低い29.8℃である.この図よりアスファルト 混合物層の弾性係数は温度が高いと小さくなる傾向を示 している.2,3,4層目は粒状材であるので,弾性係数値は 温度の影響を受けず,一定だと考える.しかしBALMの 結果は変動が大きく,逆解析結果は実態を表していない.
2層目,3層目の弾性係数はD-BALMとW-BALMでも 時間により変動しているが,BALMの結果と比べると変 動は小さい.
図-8 は縦軸を減衰係数,横軸を測定時刻として
W-BALMとD-BALMから得られた結果を比較している.
1~4 層目の逆解析結果をそれぞれ図-8(a),(b),(c),(d) に記した.図-8(a)の1層目減衰係数は時間の経過ととも に変化しており,その値は弾性係数の変化と類似してい る.2層目の減衰係数はW-BALMの推定値がD-BALM の推定値より大きい.3層目の減衰係数はW-BALMの方 がやや大きい.4層目では両者の推定値はほぼ等しい.
図-9にW-BALMとD-BALMから求めた弾性係数の変 動係数を図示した.本図から,W-BALM の変動係数は
D-BALM の変動係数と比べかなり小さいことが明らか
になった.
(2) LTPP データ
LTPP データ7)(Site3,State highway 281,Texas)を用いて
W-BALMで逆解析を行う.舗装断面を図-10に記す.こ
のデータの特徴は,MDD(Multi-Depth Deflectometer)デー タとDCP(Dynamic Cone Penetrometer)データも合せて記 録されていることである.また,FWD 試験の最大荷重 量を26.7,40.0,53.4,66.7(kN)と4種類の荷重レベルで 試験を行っているが,ここでは53.4kNの測定データの結
0 5 10 15 20 25 30 35
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 時間 (h)
変動係数 (%)
E1(W-BALM) E2(W-BALM)
E3(W-BALM) E4(W-BALM)
E1(D-BALM) E2(D-BALM)
E3(D-BALM) E4(D-BALM)
図-9 逆解析弾性係数の変動係数
r
z
載荷荷重
1層特性 ) (t P15cm
= a
5 3 .
4=0 ν cm 3 .
1=20 h
cm 8 .
2=30 h
5 3 .
1=0 ν
5 3 .
2=0 2層特性 ν
3層特性
3
1=2300kg m
ρ
3 2=2000kg m ρ
3
4=2100kg m
ρ cm 9 .
3=138
h ν3=0.4
3 3=1600kg m ρ
4層特性
Asphalt Concrete
Flexible base (no treatment)
Subgrade
Bedrock
図-10 LTPP解析断面 表-2 初期値乱数範囲
1層目 2層目 3層目
初期値乱数範囲
弾性係数 (MPa)
5000~10000 100~800
60~300
果だけを記すことにした.この断面には,ベッドロック が舗装表面より 1.9m の深さにあるが,このベッドロッ クにどの程度の剛性があるのか明らかでない.そこで,
動的逆解析により舗装各層の弾性係数に加えベッドロッ クの剛性の推定を試みる.逆解析するにあたりは,アス ファルト混合物層,路盤層,路床の初期値を表-2の範囲 で50組選択した.逆解析は選択した初期値の影響を大き く受けることが知られており,ベッドロックの弾性係数 の初期値を予測できないので,Case1(50MPa~1000MPa), Case2(1000MPa~2000MPa),Case3(2000MPa~3000MPa),
Case4(3000MPa~4000MPa),Case5(4000MPa~5000MPa) の5つの範囲を考え,各50個の初期値を一様乱数で発生 させた.逆解析した結果の誤差(Er),弾性係数と減衰係 数の各平均値と変動係数を表-3に示し,図-11には,DCP 結果より推定した弾性係数を記す.
逆解析結果の誤差はベッドロックの弾性係数の初期値 を1000MPa~3000MPaとしたとき一番小さく0.00043, そのときベッドロックの弾性係数は405MPa,その±1σ の信頼区間は(369MPa, 441MPa)である.また,次に小さ い誤差はベッドロックの初期値が 50MPa~1000MPa と きで0.00044,ベッドロックの弾性係数は372MPa,±1σ の信頼区間は(334MPa, 410MPa)である.これらのとき2 層目と 3 層目の弾性係数の大きさが逆転しているが,
DCPの結果より信頼できる.また,Case1とCase2では
1,2,3層目の弾性係数のばらつきも比較的小さい.以上の
ことから,ベッドロックの弾性係数は両者の平均値の範 囲372MPa~405MPa,1,2,3 層目の弾性係数もCase1と
Case2の間にあると思われる.
5.結論
本研究では,フォークトモデルで構成される多層構造
の理論解を用いて,FWD 試験データの構造評価を行っ た.本研究から次のような知見を得た.
(1)本理論で逆解析した応答と,ADINA の応答とが一致 した.本理論の妥当性を確認した.
(2)BALMの結果は,温度の影響を受けない路盤層の弾性
係数が時刻により大きく変動しており,実態を表して いるとは言えない.
(3) D-BALMと比較し,W-BALMは安定した動的解析が 行える.
(4)初期値の選定は信頼できる逆解析を行う上で重要で ある.特にベッドロック層の剛性の初期値は逆解析結 果に大きく影響するため,その値が予測できないとき は,より慎重に初期値を選定する必要がある.
参考文献
1) Kang, Y.V.: Multifrequency Back-Calculation of Pavement-Layer Moduli, Journal of Transportation Engineering, ASCE, Vol. 124, No. 1, pp.73-81, 1998.
2) Al-Khoury, R., Scarpas, A., Kasbergen, C. and Blaauwendraad, J.:
Spectral Element Technique for Efficient Parameter Identification of Layered Media. Part II: Inverse calculation, International Journal of Solids and Structures, Vol.38, pp. 8753-8772, 2001.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 200 400 600 800 1000
DCP推定弾性係数(MPa)
深さ(cm)
Asphalt Concrete Flexible base (no treatment)
Subgrade
図-11 DCP測定結果 表-3 LTPP逆解析結果
平均値 変動係数 平均値 変動係数 平均値 変動係数 平均値 変動係数 平均値 変動係数
1層目 1197 1.2 1165 1.7 1131 2.2 1105 2.0 1089 1.6
2層目 113 3.3 124 4.7 138 6.2 149 5.3 156 3.8
3層目 181 2.8 166 4.0 150 5.7 138 5.0 132 3.6
4層目 372 10.3 405 8.8 591 19.6 901 24.8 1258 23.2
1層目 4.11 4.3 4.15 5.1 4.14 4.6 4.11 4.0 4.09 3.8
2層目 0.30 9.6 0.29 14.0 0.27 16.6 0.26 16.6 0.26 15.6
3層目 0.16 8.6 0.18 11.9 0.20 11.7 0.21 8.6 0.22 6.4
4層目 1.27 27.5 2.22 19.6 3.70 25.9 6.07 27.2 8.82 22.2
0.00044 3.9 0.00043 4.5 0.00046 5.3 0.00049 4.5 0.00050 3.9
Er (cm)
Case5(4000-5000) Case1(50-1000) Case2(1000-2000) Case3(2000-3000) Case4(3000-4000)
弾性係数 (MPa)
減衰係数 (MPa・s)
3) Ji, Y., Wang, F., Luan, M., and Guo, Z.: A Simplified Method for Dynamic Response of Flexible Pavement and Application in Time Domain Backcalculation, The Journal of American Science, Vol.2, No.2, pp.70-81, 2006.
4) Chatti, K., Haider, W.S., Lee, H.S., Ji, Y.G. and Salama, H.:
Evaluation of Non-linear and Response under FWD Loading, International Journal of Pavements, Vol. 2, pp.88-99, 2003.
5) 菊田征勇,James Maina, 松井邦人,董勤喜:複数の時系列
データを用いた舗装構造の動的逆解析,土木学会論文集, No.760/V-63, pp.223-230, 2004.5
6) 小澤良明,松井邦人:フォークトモデルで構成された舗装構 造の波動伝播解析,土木学会論文集E, Vol.64, No.2, pp.314-322, 2008.4
7) LTTP Site. http://www.fhwa.dot.gov/pavement/ltpp/index.cfm
(2008. 3.31 受付)
STRUCTURAL EVALUATION OF MULTILAYERED VISCOELASTIC MEDIA USING WAVE PROPAGATION THEORY
Yoshiaki OZAWA, Yuki SHINOHARA, Kunihito MATSUI and Shigeo HIGASHI
The objective of this paper is to develop a new dynamic backcalculation method (Wave-BALM) for structural evaluation from FWD time series data. The main feature of the method lies in implementation of the theoretical solution for wave propagation in multilayered viscoelastic media composed of Voigt model due to an action of impulsive force. Viscoelastic layer parameters are estimated by backcalculation. In the backcalculation measured and computed deflections are matched by the Gauss Newton method coupled with truncated singular value decomposition. The results obtained by backcalculating measured FWD data using the method are compared with the results from Dyna-BALM. Both results are found similar but Wave-BALM surpasses Dyna-BALM in terms of variations of backcalculated results.