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土木学会論文集 G( 環境 ),Vol.74,No.7,III_83-III_92,2018. 既存の汚泥処理設備を活用した余剰汚泥からの有用元素類の回収に関する研究 白岩卓也 1 伊藤歩 2 石川奈緒 3 金郁磨 4 佐々木正之 4 高舘尚史 4 笹本誠 5 海田輝之 6 1 学生会員岩手大学大学

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既存の汚泥処理設備を活用した余剰汚泥からの

有用元素類の回収に関する研究

1学生会員 岩手大学大学院総合科学研究科地域創生専攻(〒020-8551岩手県盛岡市上田4-3-5) E-mail:[email protected] 2正会員 岩手大学准教授 理工学部システム創成工学科社会基盤・環境コース(〒020-8551岩手県盛岡市 上田4-3-5) E-mail:[email protected] 3正会員 岩手大学助教 理工学部システム創成工学科社会基盤・環境コース. (〒020-8551岩手県盛岡市 上田4-3-5) E-mail:[email protected] 4非会員 (公財)岩手県下水道公社(〒020-0832岩手県盛岡市東見前3地割10-2) E-mail:[email protected] 5非会員 岩手大学技術部(〒020-8551岩手県盛岡市上田4-3-5) E-mail:[email protected] 6正会員 岩手大学教授 理工学部システム創成工学科社会基盤・環境コース(〒020-8551岩手県盛岡市上 田4-3-5) E-mail:[email protected] 初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥を嫌気性消化すると,MAPによる後段の送泥管や脱水機スクリーンの閉 塞を引き起こす場合がある.MAPの構成元素であるMgとPの消化槽への負荷量は余剰汚泥の方が3~4倍程 度高く,消化槽内でのMAP生成を抑制するには余剰汚泥中のMg量を低減する必要がある.余剰汚泥の嫌 気培養によってMg,P,Kが溶出し,それらの溶出速度は有機炭素源として初沈濃縮汚泥を添加すること で向上した.また,余剰汚泥の遠心分離液中のMg,P,Kは電気透析によって濃縮液として回収できた. さらに,既存の余剰汚泥貯留槽に初沈濃縮汚泥を添加し,6時間嫌気培養した後,既存のスクリュー式濃 縮機で機械濃縮することで濃縮汚泥中のMg,P,Kの40~50%程度を濃縮分離液に移行できた.

Key Words : surplus activated sludge, anaerobic release of elements, struvite formation inhibition, elements recovery, utilization of existing sludge treatment facilities

1. はじめに

下水汚泥の嫌気性消化において,汚泥中からリン酸イ オンやマグネシウムイオンが溶出し,汚泥中の有機物の 分解によって生じるアンモニウムイオンとの結合によっ てリン酸マグネシウムアンモニウム(MgNH4PO4・6H2O, 以下MAPとする)の沈殿物が生じる.この沈殿物は結 晶化して消化槽後段の送泥管の閉塞や脱水機スクリーン の目詰まりを引き起こす原因となる1), 2).下水処理場に よっては,下水の生物処理において,リン除去やバルキ ング抑制のために,反応タンクの好気ゾーンの前に嫌気 ゾーンが設けられている.その場合,活性汚泥中のポリ リン酸蓄積微生物によってリン(P),マグネシウム (Mg)およびカリウム(K)が過剰に摂取され,この 余剰汚泥が嫌気条件に曝されることで上記の元素類が微 生物体外に放出される3)-7).このようにMgを過剰に摂取 した余剰汚泥が初沈汚泥と共に消化槽に投入されること で,より多くのMAPが生じると考えられる.送泥管や 脱水機スクリーンに付着したMAPを除去するために, 数年に1回の頻度で高圧洗浄や薬品洗浄8)が行われており, その結果,運転を中断する必要があることや,洗浄費用 が必要になるといった維持管理上の問題が生じる. 土木学会論文集G(環境),Vol.74,No.7,III_83-III_92,2018.

白岩 卓也

1

・伊藤 歩

2

・石川 奈緒

3

・金 郁磨

4

・佐々木 正之

4

高舘 尚史

4

・笹本 誠

5

・海田 輝之

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一方,PやKは農業や工業等の分野にとって有用な元 素類であるが,これらの鉱石は日本国内から産せず,全 量を輸入に頼っていることや,枯渇しつつある限られた 天然資源であるため,汚泥から回収して再利用すること が望まれている.P回収に関しては,消化汚泥やその後 の脱水分離液からMAPとして回収する方法が実用化さ れている9)-11)が,消化槽内でのMAPの生成抑制やK回収 は考慮されていない.また,下水汚泥の焼却灰からPを 一旦溶出した後,リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)として 回収する方法も実用化されている10)が,Pを溶出するた めの設備を新たに導入する必要があり,必ずしも普及し やすい技術とは言い難い. 著者らは消化槽内でのMAPの生成抑制と汚泥からの 有用元素類回収の双方を目指し,下水汚泥処理の新規シ ステムの開発を検討している.消化槽の前段で汚泥中の Mg量を低減して消化槽へのMg負荷を低減できれば,消 化槽内でのMAPの生成を抑制できると考えられる.初 沈汚泥の重力濃縮汚泥と余剰汚泥の機械濃縮汚泥の双方 を嫌気性消化する場合,それぞれの負荷がどの程度であ るかを明らかにする必要があるが,余剰汚泥を対象とし た場合,既存の余剰汚泥貯留槽を活用して余剰汚泥を急 速に嫌気化し,Mg,PおよびKを余剰汚泥から溶出する とともに,既存の機械濃縮機を活用して元素類を分離液 として回収することで,機械濃縮汚泥のMg量を低減で きると考えられる.余剰汚泥に有機炭素源として酢酸ナ トリウムを加えて嫌気培養することで,酢酸ナトリウム を加えない場合と比べて,余剰汚泥からのMg,Pおよび Kの溶出速度が向上することが報告されている12).著者 らも同様の検討を行い,数時間程度で溶出がほぼ完了す ることを明らかにし,既存の余剰汚泥貯留槽の滞留時間 の範囲内で元素類を溶出できる可能性を示した13).さら に,酢酸ナトリウムの代替有機炭素源として初沈汚泥の 重力濃縮汚泥を利用できれば,安価に元素類を溶出でき ると考えられる.溶出した元素類はPとKの再利用を考 慮すると,リン酸マグネシウムカリウム(MgKPO4)と して回収することが望ましいが,その溶解度は大きく, 沈殿物としての回収が難しい.しかしながら,イオン類 を濃縮することができれば,その濃縮物を液肥として利 用したり,乾燥して固体肥料の原料として利用できると 考えられる.また,本提案システムの有効性を明らかに するためには,実処理場の既存設備を用いて機械濃縮汚 泥中の元素類含有量を低減できるか実証する必要がある. 以上の背景から,本研究では,岩手県北上川上流流域 下水道の浄化センターを対象として,まず,初沈汚泥の 重力濃縮汚泥,余剰汚泥の機械濃縮汚泥および嫌気性消 化汚泥のMgとPの負荷量調査を行った.次に,余剰汚泥 からの元素類の溶出に及ぼす初沈汚泥添加の効果と,溶 出した元素類の電気透析装置による濃縮の可能性につい て室内実験を通じて検討した.さらに,水沢浄化センタ ーと都南浄化センターの汚泥処理設備を利用して余剰濃 縮汚泥中の元素類の低減化の可能性を検討した.

2. 実験材料及び実験方法

2.1 消化槽へのMgとPの負荷源の把握 岩手県北上川上流流域下水道の都南浄化センターにお いて,初沈汚泥由来の重力濃縮汚泥(以下,初沈濃縮汚 泥とする),余剰汚泥由来の機械濃縮汚泥(以下,余剰 濃縮汚泥とする),初沈濃縮汚泥と余剰濃縮汚泥の混合 濃縮汚泥および嫌気性消化汚泥の4種類についてMgとP の負荷量を調査した.都南浄化センターでは,下水道法 施行令による計画放流水質としてのリンは規制されてお らず,下水は標準活性汚泥法によって処理されており, 特別なリン除去工程は組み込まれていない.ただし,一 部の系列ではバルキング対策のために反応タンクの初め に嫌気ゾーンが配置されている.汚泥試料の採取は, 2012年9月~2013年2月の期間に月一回のペースで行った (採泥の時間帯:8:30~9:30).汚泥試料は1 Lのポリエ チレン製容器に採取し,採泥後はクーラーボックスで冷 蔵保存して実験室に持ち帰った.実験室に持ち帰った試 料について,pH(東亜DKK ,IM-32P型)を測定した. そして,全固形物量(TS)および強熱減量(VS)の濃 度測定を下水試験方法14)に従って,汚泥試料の乾燥 (110℃,24時間)および強熱灰化(600℃,1時間)を 行った.また,元素類(Mg,PおよびCa)の溶解性濃度 を分析するために,試料採取当日に汚泥試料を遠心分離 (10,000 rpm)した後,その上澄液をろ過(ろ紙の孔 径:1 μm)した. 2.2 余剰汚泥からの元素類の溶出と濃縮に関する実験 的検討 (1) 余剰汚泥からの元素類の溶出実験 余剰汚泥貯留槽において余剰汚泥を嫌気化して数時間 程度で元素類を溶出させることを想定し,都南浄化セン ターで採取した余剰汚泥について元素類の溶出実験を行 った.有機炭素源として初沈濃縮汚泥も採取し,余剰汚 泥に添加した.初沈濃縮汚泥の添加の意図は,余剰汚泥 中のポリリン酸蓄積微生物に有機炭素源を供給し,元素 類の溶出を促進するためである.また,有機炭素源の比 較対照として酢酸ナトリウム溶液を余剰汚泥に加えた場 合についても実験を行った.採取した汚泥について, TS,VS,pH,酸化還元電位(ORP,東亜DKK,IM-32P 型),溶存有機炭素(DOC),アンモニア態窒素 (NH4-N)濃度,および汚泥中の元素の全量濃度と溶解 性濃度を測定した.

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3 溶出実験は試料採取日に開始した.容積約80 mLの遠 沈管に余剰汚泥と初沈濃縮汚泥の体積比が79.2:0.8, 76:4,72:8となるように加えた.また,余剰汚泥のみ の場合と,初沈濃縮汚泥の代わりに酢酸ナトリウムを濃 度が0.5 g/Lとなるように加えた場合の2条件についても試 験した.その後,恒温室内で振とう(120 rpm,25℃)を 行い,遠沈管を経時的(0,0.5,1,3,6 hr)に取り出し, pHとORPを測定した後,遠心分離(10,000 rpm,5 min) を行い,上澄み液をメンブレンフィルター(孔径:0.45 μm)でろ過した. (2) 電気透析による遠心分離液中の元素類の濃縮 都南浄化センターで採取した余剰汚泥を無酸素状態で 24時間振とうし,遠心分離後の上澄み液を分離液として 用いた. 図-1に本実験に用いた電気透析装置の構成と電気透析 のイメージを示す.装置は直流電源(AD8724D,エー・ アンド・ディ),電極,電解槽で構成され,イオン交換 膜には陽イオン交換膜(Nafion PFEA Membrane (N117), デュポン社)と陰イオン交換膜(ネオセプタ(AHA), (株)アストン)を用い,2枚の陽イオン交換膜(12 cm×12 cm)と2枚の陰イオン交換膜(12 cm×12 cm)をそ れぞれ交互に挟み,中間槽(550 mL),濃縮槽(陰極側, 110 mL),濃縮槽(陽極側,110 mL),外側の電極槽 (1,100 mL)の5部屋を作った.余剰汚泥の分離液を中間 槽と電極槽(いずれも供給槽とする)に加えた.濃縮槽 には超純水を加えた.また,本実験に使用した電気透析 装置では,中間槽に110 mLまでしか入らないため,ビー カーに分離液を440 mL用意し,中間槽とビーカーをチュ ーブで接続してローラーポンプでの循環を行った.図-1 に示すように,通電後のイメージとして,分離液中の陽 イオンは陰極,陰イオンは陽極に引き寄せられ,各イオ ン濃縮槽に移動する.このような方法で分離液中の元素 類を濃縮させた.試料は電気透析開始3時間後に各槽か ら採取し,通電後,各槽内の分離液の体積を測った. 図-1 電気透析装置の概略 2.3 実処理場での余剰濃縮汚泥中の元素類の低減化 (1) 水沢浄化センターでの調査 水沢浄化センターは,下水を標準活性汚泥法により処 理しており,反応タンクの最初に嫌気槽が配置されてい る.余剰汚泥は余剰汚泥貯留槽を経由して機械濃縮され, その後,初沈濃縮汚泥とともに嫌気性消化される.この 調査では,余剰汚泥貯留槽内の撹拌装置と機械(遠心) 濃縮機への給泥を48時間程度停止し,余剰汚泥貯留槽内 を嫌気状態にした.また,嫌気培養前後での余剰濃縮汚 泥とその分離液も採取した.調査は2016年10月,11月, 12月の3回実施した.10月と11月は24時間,12月は12日 から14日の48時間に渡って行った.採泥は経時的に行い, その際には貯留槽内の余剰汚泥濃度を均一にするため撹 拌機で30秒程度撹拌し,ハイロート採水器を用いて余剰 汚泥貯留槽の上部から行った.採水器内の余剰汚泥をポ リ瓶に移し,直ちに溶存酸素(DO,東亜DKK,DO-31P 型),ORP, pH及び水温を測定した. (2) 都南浄化センターでの調査 汚泥の遠心濃縮機では油状物質を含む初沈濃縮汚泥を 投入すると遠心機が故障する恐れがある.一方,都南浄 化センターには油状物質の影響を受けにくいスクリュー 式濃縮機が導入されているとともに,初沈濃縮汚泥を余 剰汚泥貯留槽に移送できるポンプとラインを有している. そこで,初沈濃縮汚泥を添加する調査は都南浄化センタ ーで実施した. まず,初沈濃縮汚泥を添加しない場合での余剰汚泥か らの元素類の溶出の程度を把握するために,2017年12月 5日に余剰汚泥貯留槽内の撹拌装置と機械濃縮機への給 泥を6時間程度停止し,貯留槽内の余剰汚泥を嫌気状態 にして経時的(0,3,6 h)に採泥した.採泥の際は貯 留槽内の余剰汚泥濃度を均一にするため撹拌機で10秒程 度撹拌し,貯留槽底部の排泥管からポリ瓶に採取した. また,嫌気状態にする前と 6 時間嫌気状態にした後の余 剰濃縮汚泥とその分離液を採取した. 次に,余剰汚泥からの元素類の溶出を促すために, 2017年12月19日に有機炭素源として,初沈濃縮汚泥を余 剰汚泥貯留槽に添加する実験を行った.まず,初沈濃縮 汚泥を加える前に,通常状態の貯留槽内の余剰汚泥,初 沈濃縮汚泥,余剰濃縮汚泥およびその分離液を採取した. その後,余剰汚泥貯留槽内の撹拌装置と機械濃縮機への 給泥を停止し,余剰汚泥量を 28.5 m3程度に調整した後, 余剰汚泥からの元素類の溶出を促すために,有機炭素源 として初沈濃縮汚泥を 3 m3加え,30 秒程度撹拌してから 嫌気培養を開始した後,経時的(0,1.5,3,6 h)に採 泥した.最初の余剰汚泥を採泥してから初沈濃縮汚泥の 投入直後の汚泥を採取するまでに1時間を要した.また, 陰 イ オ ン 交 換 膜 陽 イ オ ン 交 換 膜 陽 イ オ ン 交 換 膜 - - + H2O 分離液 O2 + H+ Mg2+ H2 + OH- H2O + MgK2+ + K+ 陰極 陽極 H2PO4- 陰 イ オ ン 交 換 膜 供 給 槽 ( 中 間 槽 ) 濃 縮 槽 ( 陽 ) 濃 縮 槽 ( 陰 ) 供 給 槽 ( 電 極 槽 ) 供 給 槽 ( 電 極 槽 ) HPO42- H2PO4- HPO42- Mg2+ MgK2+ + K+ H2PO4- HPO42- 分離液 分離液 H2PO4- HPO42- H2PO4- HPO42- MgK2+ + 濃縮液 濃縮液

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6時間嫌気状態にした後の余剰濃縮汚泥と分離液を採取 した.採取した余剰汚泥について直ちにDO,ORP,pH 及び水温を測定した. (3) 試料の前処理 採取した試料を浄化センター内の水質試験室に運び, 余剰汚泥の一部を遠心分離(3,000 rpm,10 min)し,上 澄み液を孔径0.45 μm のメンブレンフィルターでろ過し, ろ液を2本のポリ瓶に分けて採取した.一方のポリ瓶に 金属類の沈殿を防ぐため硝酸を少量加えて,これを元素 濃度分析用とした.もう一方のろ液には何も加えず, NH4-N濃度とDOC濃度の測定用とした. 2.4 分析方法 元素類分析用の前処理は各種試料(25 mL×3)をガラ スビーカー(3連)に採取し,下水試験方法15)に準拠し, 硝酸と塩酸を加え,ホットプレートで加熱分解を繰り返 し行った.分解液をメスアップし,直ちにメンブレンフ ィルター(0.45 μm)でろ過を行い,ろ液をポリ瓶に保存 した.残りのろ液についてもDOCとNH4-N濃度を測定す るために別のポリ瓶に保存し,DOCを全有機体炭素計 (Shimadzu,TOC-V CSH),NH4-N濃度をインドフェノ ール法によりオートアナライザー(ビーエルテック, AutoAnalyzer2)で測定した.酸処理後の試料中のCa,K, Mg,Pの濃度を内部標準法(内標準物質:Y)により誘 導結合プラズマ( ICP)発光分析装置(Shimadzu,ICPE-9000),As,Cd,Cr,Pbを内部標準法(内標準物質: Ge,Bi,In)によりICP質量分析装置(Thermo Fisher, iCAP-Qc)で測定した.

3. 実験結果及び考察

3.1 消化槽へのMgとPの負荷源の把握 図-2に都南浄化センターにおける各汚泥のMgとPの負 荷量の平均値を示す.負荷量は調査時の元素濃度に調査 月の汚泥発生量を乗じて時間当たりの元素量として算出 した.なお,エラーバーの上限と下限は最大値と最小値 をそれぞれ示している.また,横軸の「初沈+余剰」は 初沈濃縮汚泥と余剰濃縮汚泥の各負荷量の合計を示して いる.この合計量は基本的には混合濃縮汚泥での負荷量 と一致するはずであるが,「初沈+余剰」の汚泥発生量 に比べて「混合濃縮」の汚泥発生量の方が若干高い値を 示しており,この誤差が存在量の差に少なからず影響し ていると考えられる. まず,Mgの全量濃度に対する負荷量の平均値をみる と,初沈濃縮汚泥で0.5 t/月,余剰濃縮汚泥で2.1 t/月であ り,余剰濃縮汚泥の方が4倍程度大きかった.混合濃縮 汚泥と消化汚泥での平均値を比較すると,双方で約3 t/ 月であり,明らかな差はみられなかった.溶解性量で比 較すると,混合濃縮汚泥で1.1 t/月,消化汚泥で0.1 t/月で あり,両者に明らかな差がみられ,消化後に負荷量が低 下していることが分かった.これは, Mg2+ + NH4+ + HPO42- + OH- + 5H2O → MgNH4PO46H2O (1) のように溶解性のMg2+が共存するHPO42-およびNH4+と反 応し,不溶性のMgNH4PO4・6H2Oが生成されたためであ ると考えられる.また,消化汚泥中のマグネシウムの溶 解性量は全量の3%程度であり,これを濃度に換算する と平均で7 mg/Lとなる.これは後述の溶解性リン濃度 (約360 mg/L)と比較すると顕著に低い値であることか ら,消化槽におけるMgNH4PO4・6H2Oの生成において Mg2+が制限になっていることが分かる. Pの全量濃度に対する負荷量の平均値をみると,初沈 濃縮汚泥で2.9 t/月,余剰濃縮汚泥で8.7 t/月であり,余剰 濃縮汚泥の方が3倍程度大きかった.混合濃縮汚泥と消 化汚泥での平均値を比較すると,いずれも全量濃度で約 13 t/月程度であり,明らかな差はみられなかった.溶解 性量で比較すると,混合濃縮汚泥で4.6 t/月,消化汚泥で 5.5 t/月であり,Mgのような差はみられなかった. 以上の結果から,余剰濃縮汚泥のMg量を低減するこ とで消化槽へのMg負荷の低減に貢献できる可能性が示 された. 図-2 都南浄化センターでの各汚泥のMgとPの負荷量 0.5 2.1 2.6 3.1 3.1 0.2 0.4 0.6 1.1 0.1 0 1 2 3 4 5 6 初沈濃縮 余剰濃縮 初沈+余剰 混合 消化 Mg 量( t/ 月) 汚泥の種類 全量 溶解性量 2.9 8.7 11.6 13.2 12.7 0.3 1.9 2.1 4.6 5.5 0 5 10 15 20 25 初沈濃縮 余剰濃縮 初沈+余剰 混合 消化 P 量( t/ 月) 汚泥の種類 全量 溶解性量

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5 3.2 余剰汚泥からの元素類の溶出と濃縮に関する実験 的検討 (1) 余剰汚泥からの元素類の溶出実験 表-1に実験に用いた余剰汚泥と初沈濃縮汚泥の元素類 の全量濃度を示す.2つの汚泥のMg,P,K濃度は同程 度であったが,Ca濃度は初沈濃縮汚泥の方が高かった. 図-3に余剰汚泥のpHとORPの経時変化を示す.0時間 での値は有機炭素源を加えていない余剰汚泥のpHと ORPとし,すべての条件で共通の値とした.pHとORPは いずれの条件のときも時間の経過とともに減少しており, ORPが負の値を示していることから,より嫌気的になっ ていることが分かる.また,初沈濃縮汚泥の添加量が多 いほどORPの減少が速くなった. 図-4に余剰汚泥中の元素類の溶解性濃度の経時変化を 示す.元素類の溶解性濃度は時間の経過に伴い増加し, 余剰汚泥から元素類が溶出していることが分かる.元素 類の溶出速度は酢酸ナトリウムを添加した条件で最も大 きかったが,初沈濃縮汚泥の添加量が大きいほど,元素 類の溶出速度が向上し,より短時間で溶出した. 表-1の余剰汚泥の全濃度から酢酸ナトリウムを加えた 場合の元素類の溶出率(%)(=溶解性濃度÷全濃度× 100)を計算した.各元素の溶出率はMgが71.7 %,Pが 69.8 %,Kが86.4 %,Caが41.7 %であった.余剰汚泥と初 沈濃縮汚泥の比は最大でも72:8であり,溶出するMg, P, Kの多くは余剰汚泥由来のものであると考えられる. 前述したように,Caは初沈濃縮汚泥のほうが高い値と なっている.このため,Caの溶出濃度は酢酸ナトリウ ムを添加した条件より初沈濃縮汚泥を添加した条件の方 が高くなっていると考えられる.溶出時間を見ると,酢 酸ナトリウムを添加した場合,3時間でほぼ元素類が溶 出していることが分かる.初沈濃縮汚泥を添加した場合 表-1 余剰汚泥及び初沈濃縮汚泥の元素類の全濃度(mg/L) 表-2 電気透析前後の各元素類の濃度(mg/L) 元素 時間 (hr) 供給槽 濃縮槽 (陽) 濃縮槽 (陰) Mg 0 3 29.3 2.2 54.5 2.5 61.5 2.8 P 0 3 117 20 307 0 393 0 K 0 3 39.3 11.1 12.6 155 11.4 111 Ca 0 3 32.7 3.7 36.8 4.0 49.5 4.7 は酢酸ナトリウムを添加した場合よりも溶出速度は遅く なるが,余剰汚泥と初沈濃縮汚泥の混合比が72:8の場 合,3~6時間でほぼ最大濃度に達した. 以上の結果から,初沈濃縮汚泥は酢酸ナトリウムの代 替有機炭素源として利用でき,余剰汚泥貯留槽内におい て6時間程度の滞留時間で余剰汚泥から元素類を溶出で きる可能性が示された. (2) 分離液からの元素類の電気透析による濃縮 表-2に電気透析前後における各槽内の元素類濃度の変 化を示す.電気透析3時間後のMg,P,Kの濃度は供給 槽で減少するのに対して,濃縮槽で増加した.電気透析 前の供給槽と電気透析後の濃縮槽での濃度を比較すると, Mgで2倍程度,PとKで3~4倍程度になり,これらの元素 類は電気透析によって濃縮できることが分かった.一方, 図-3 余剰汚泥のpHとORPの経時変化 (凡例の比は余剰汚泥と初沈濃縮汚泥の混合体積比を示す) 図-4 余剰汚泥中の元素類の溶解性濃度の経時変化 (凡例の比は余剰汚泥と初沈濃縮汚泥の混合体積比を示す)

元素類

Mg

P

K

Ca

余剰汚泥

68.8

278

78.6

65.5

初沈濃縮汚泥

58.8

247

65.5

273

6.0 6.2 6.4 6.6 6.8 7.0 0 2 4 6 pH 経過時間(hr) -200 -150 -100 -50 0 0 2 4 6 OR P (m V) 経過時間(hr) -2000 0 5 O RP 経過時間(hr) 80:0 79.2:0.8 76:4 72:8 酢酸ナトリウム 0 50 100 150 200 0 2 4 6 P 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) 0 10 20 30 40 50 0 2 4 6 Mg 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) 0 20 40 60 80 0 2 4 6 K 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) -200 -100 0 0 O RP 経過時間(hr 80:0 79.2:0.8 76:4 72:8 酢酸ナトリウム

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図-5 電気透析前後での各元素類のモル量の比較 Ca は電気透析による各槽の濃度の増減はみられたが, 他の元素のような顕著な濃縮は観察されなかった. Wang らが行った嫌気性消化の返流水を見立てたサン プルでは,電圧62.0 V で 200 分程度の電気透析を行った 場合,供給槽ではリン酸塩は 86.1–94.4%の高い除去率を 示し,濃縮槽に濃縮していた16).本研究ではWang らの 実験条件よりも低い31.6 Vの電圧で 3時間の電気透析を 行ったが, Pの除去率にすると 82%程度であり,報告さ れていた結果と同程度の性能を示した. 電気透析前の中間槽及び供給槽の NH4-N 濃度は 30 mg/L程度であり,電気透析によってMg,P,NH4-Nが全 て濃縮槽に移動したと仮定すると,Mgが 9 mmol/L,Pが 28.5 mmol/L,NH4-Nが16.1 mmol/Lになり,濃縮槽内のMg とのモル比がMg : P : N=1 : 3.2 : 1.7となり,Mgに対して P とNH4-Nが過剰に存在していることがわかる.一方, 濃縮槽のpHは測定しなかったが,中間槽の pHは 3時間 の電気透析を通して6.5から 3.2程度まで低下した.その ため,中間槽から水酸化物イオンが濃縮槽に移動し,濃 縮槽中の溶液のpHが上昇し,MAP が生成する条件が整 っていた可能性が考えられる. 図-5は電気透析前後での各槽の元素のモル量を比較し ているが,全体の物質量の収支を見ると,電気透析後で Pが 1.6 mmol,Mgが 1.0 mmol 程度減少している.また, Mg より P の損失が多く,MAP に加えて他のリン酸塩の 沈殿物が生成していた可能性がある.したがって,濃縮 槽に移動した元素類の一部がMAP やリン酸カルシウム, リン酸マグネシウムの沈殿物を形成していたと考えられ る.しかしながら,濃縮槽のpH を上昇しないように調 整することにより,沈殿物の生成を防ぎ,元素を回収す ることができると考えられる. 3.3 実処理場での余剰濃縮汚泥中の元素類の低減化 (1) 水沢浄化センターでの調査 表-3に調査結果の例として12月12日から14日に採取し 表-3 余剰汚泥貯留槽からの採泥試料の水質 時刻 経過時間 (hr) 水温(℃) (mg/L) DO (mV) ORP pH 9:00 0 15.5 0.09 42 7.0 21:00 12 16.8 0.00 -165 6.8 9:00 24 16.1 0.04 -200 6.7 21:00 36 16.0 0.05 -215 6.6 3:00 42 16.0 0.06 -227 6.6 9:00 48 16.0 0.13 -215 6.6 表-4 水沢浄化センターでの採取試料のTSとVS 試料 余剰汚泥 余剰濃縮汚泥 分離液 経過時間 (hr) 0 48 0 48 0 48 TS(g/L) 3.0 5.5 34.8 33.4 0.1 1.3 VS(g/L) 2.1 4.8 28.1 29.9 - - た余剰汚泥の性状を示す.pHは時間の経過とともに若 干ではあるが低下した.DOは0.2 mg/L未満であり,ORP は採泥直後(0時間目)の42 mVから-215 mV 程度まで減 少した.この結果から,撹拌機の停止によって貯留槽内 の余剰汚泥が嫌気的な状態に変化したことが分かる.他 の月でも同様の傾向が見られた. 表-4に採取試料のTSとVSを示す.余剰濃縮汚泥のTS はほとんど変化せず,濃縮操作に及ぼす嫌気培養の影響 はみられなかった. 図-6に各月の余剰汚泥中の元素類の全量濃度及び溶解 性濃度を示す.Mg,PおよびKの溶解性濃度は36時間目 図-6 各月の余剰汚泥中の Mg,P,K,Caの全量および溶解性 濃度の経時変化 0 10 20 30 40 50 60 0 12 24 36 48 Mg 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) 0 50 100 150 200 0 12 24 36 48 P 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) 0 10 20 30 40 50 60 0 12 24 36 48 K 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) 0 10 20 30 40 50 60 70 0 12 24 36 48 Ca 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) (40) 60 0 12 24 36 48 Mg 濃 度 (m g/L ) 経過時間(hr) 全量(12月) 溶解性(12月) 全量(11月) 溶解性(11月) 全量(10月) 溶解性(10月) 0 1 2 3 4 5 6 7 前 後 前 後 前 後 前 後 P Mg K Ca 物質量 (m m ol) 供給槽(中間) 供給槽(左) 供給槽(右) 濃縮槽(陽) 濃縮槽(陰)

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7 図-7 各月の余剰汚泥中の DOCと NH4-N濃度の経時変化 表-5 48 時間の嫌気化前後における余剰濃縮汚泥及び分離液の 元素類濃度の変化と余剰濃縮汚泥からの元素類の除去率 (12月) 元素 Mg P 試料 余剰濃縮 分離液 余剰濃縮 分離液 濃度 (mg/L) 嫌気化前 嫌気化後 403 175 25.5 7.4 1590 740 79.9 6.2 除去率 (%) 56.6 53.5 元素 K Ca 試料 余剰濃縮 分離液 余剰濃縮 分離液 濃度 (mg/L) 嫌気化前 嫌気化後 398 202 17.8 35.5 342 305 19.9 26.1 除去率 (%) 49.2 10.8 まで徐々に増加し,48 時間目でほぼ最大値に達し,こ れらの元素類が余剰汚泥から溶出することが分かった. 一方,Ca の溶解性濃度ははほとんど増加せず,余剰汚 泥からのCaの溶出は確認できなかった.溶出率(=溶解 性濃度÷全濃度×100)に換算すると,Mg で 74%,P で 69%,K で 83%,Ca で 52%であった.Mg,P,K の溶出 は,余剰汚泥内のリン蓄積微生物の体内にポリリン酸化 合物として蓄えられていたものが,嫌気培養により体外 に放出されたためと考えられる.この結果より,余剰汚 泥貯留槽を余剰汚泥からの元素類の溶出槽として利用で きることが分かった. なお,余剰汚泥中の溶解性重金属(As,Cr,Pb,Cd) の濃度についても分析を行ったが,いずれの元素につい ても嫌気化前後での濃度の変化はほとんど無く,Asで 2 µg/L未満,Crで 4 µg/L未満,Pbで 3 µg/L未満,Cdで 0.4 µg/L未満であった. 図-7 に各月の余剰汚泥のろ液の DOC 濃度と NH4-N 濃 度の経時変化を示す.なお,10 月は DOC について測定 を行わなかったため,11 月と 12 月のみの結果を示す. DOC 濃度は時間経過とともに緩やかに上昇したが,嫌 気性消化過程の加水分解や酸生成にみられるような溶解 性有機物の顕著な増加はみられなかった.また,NH4-N 濃度も顕著な増加はみられず,48 時間の短い期間では 余剰汚泥中のタンパク質やアミノ酸の分解に伴うアンモ ニアの生成は観察されなかった.表-3 に示したように pH の上昇もみられなかったことから,嫌気培養により 溶出したMg や P が MAP として再沈殿するような水質 条件では無かったと考えられる. 表-5 に 48 時間の嫌気化前後における余剰濃縮汚泥と その分離液の元素類濃度の変化と余剰濃縮汚泥中の元素 類の除去率を示す.嫌気化後に余剰濃縮汚泥の元素類濃 度は減少するのに対して,分離液の元素濃度が増加して おり,余剰汚泥から溶出した元素類が機械濃縮操作によ って分離液に移行していることが分かる.Mg,P,K の 除去率(=(嫌気化前濃度-嫌気化後濃度)÷嫌気化前 濃度×100)は 50%前後であり,上述の溶出率に比べる と低い結果になった.これは機械濃縮機が稼動する際に 貯留槽内の撹拌機も稼働して余剰汚泥が好気的となり, 余剰汚泥中のリン蓄積微生物がMg,P,Kを再吸収した ことも一因として考えられる. (2) 都南浄化センターでの調査 表-6に余剰汚泥貯留槽から採取した余剰汚泥の水質の 経時変化を示す.初沈濃縮汚泥添加の有無にかかわらず pH は時間の経過とともにわずかに低下し,DO は 0.2 mg/L 未満であった.いずれの場合もORPは低下したが, その程度は初沈濃縮汚泥を添加した方が顕著であり,撹 拌機の停止によって貯留槽内の余剰汚泥が嫌気的な状態 に変化したことが確認された.また,採取した余剰汚泥 の TS に大きな変化がなかったことから,汚泥採取時に 汚泥が均一に混合されていたと言える. 表-6 余剰汚泥受槽から採取した余剰汚泥の水質の経時変化 (a) 初沈濃縮汚泥の添加無し 経過時間 (hr) 平均水温 (℃) (mg/L) DO (mV) ORP (g/L) TS pH 0 15.4 0.13 7 4.3 6.8 3 15.3 0.05 4 - 6.8 6 15.3 0.03 -75 4.7 6.7 (b) 初沈濃縮汚泥を3 m3添加した場合 経過時間 (hr) 平均水温 (℃) (mg/L) DO (mV) ORP TS (g/L) pH ‐1 14.5 0.06 9 5.8 7 0 14.6 0.06 -170 - 6.8 1.5 14.9 0.07 -188 - 6.7 3 14.8 0.04 -191 - 6.7 6 15 0.03 -223 6.8 6.6 0 5 10 15 20 25 30 0 12 24 36 48 DOC 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr) 0 50 0 6 12 18 24 30 36 42 48 N H 4 経過時間(hr) 10月 11月 12月 0 10 20 30 40 50 0 12 24 36 48 NH 4 -N 濃度 (m g/L ) 経過時間(hr)

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図-8 余剰汚泥中の元素類の全量および溶解性濃度の経時変化 図-8に初沈濃縮汚泥の添加の有無における余剰汚泥中 の元素類の全量および溶解性濃度の経時変化を示す.こ こでは,培養開始直後を 0 時間 とし,初沈濃縮汚泥投入 前を-1 時間とした.各元素の溶解性濃度は時間の経過と ともに増加した.初沈濃縮汚泥添加の有無を比較すると, 添加した場合,各元素の溶解性濃度の増加の程度は大き く,特に-1時間から0時間の傾きが大きかった. 表-7に初沈濃縮汚泥中の元素類の全量および溶解性濃 度を示す.初沈濃縮汚泥の添加の意図は,前述のとおり, 元素類の溶出を促進するためである.初沈濃縮汚泥中の 溶解性 P 濃度は 23.2 mg/L であり,余剰汚泥と初沈濃縮汚 泥の混合体積比は28.5:3 であるため,初沈濃縮汚泥の 添加による溶解性 P の流 入分は,0 時間目の増加量 18.2 mg/L のうち 2.21 mg/L となる.残りの 16.1 mg/L は初沈濃 縮汚泥の投入によって余剰汚泥中のポリリン酸蓄積細菌 が活発になり, P の溶出 が促進して増加した分であると 考えられる.K は増加分 4.2 mg/L に対して初沈濃縮汚泥 の寄与分が 3.5 mg/L,Mg も同様に増加分 3.9 mg/L に対し て 寄与分が 1.5 mg/L であった. 表-7 初沈濃縮汚泥中の元素類濃度 (単位:mg/L) Mg P K 全量 49.1 253 58.4 溶解性 14.8 23.2 34.5 表-8 余剰汚泥の元素類の溶出率 (単位:%) 初沈濃縮汚泥 P K Mg 無添加 17.4 39.4 19.9 添加 36.9 60.8 41.1 表-8に初沈濃縮汚泥の添加の有無における余剰汚泥か らの元素類の溶出率(=(6 h における溶解性元素濃度) ÷(6 h における全量元素濃度)×100%)を示す.各元 素とも,初沈濃縮汚泥を添加した場合での溶出率は,初 沈濃縮汚泥を添加しない条件に比べて約 2 倍となった. 余剰濃縮汚泥のTSは,無添加の条件では嫌気化前後 で41.8g/Lと45.8 g/Lであったのに対し,初沈濃縮汚泥を添 加した条件では39.0g/Lから60.1 g/Lと大きく増加した.こ のため,余剰濃縮汚泥については濃度ではなく,TS当 たりの元素量で比較を行った. 表-9に初沈濃縮汚泥の添加の有無での余剰濃縮汚泥の TS当たりの元素量および元素除去率(=(嫌気培養前元 素量―嫌気培養後元素量)÷嫌気培養前元素量×100 %) と,機械濃縮分離液に含まれる元素類濃度を示す.嫌気 培養によって余剰濃縮汚泥中の元素類の含有量が減少し た.減少の程度は,初沈濃縮汚泥無添加ではいずれの元 素に関しても1~2割程度であったが,添加した場合では 4割以上であった.嫌気培養後における分離液に関して, Mg 濃度は添加無しで 7.80 mg/L,添加した場合で 12.6 mg/L であり,濃度が増加した.同様にP濃度は,無添加 の場合では 25.1 mg/L,添加した場合では 45.1 mg/Lであり, K濃度は 17.6 mg/L から 24.2 mg/L となり,分離液に移行す る元素量は,初沈濃縮汚泥の添加によって向上した. 表-9 余剰濃縮汚泥のTS当たりの元素量および除去率と分離液 中の元素類濃度 元素 初沈濃 縮汚泥 試料 嫌気化 前 嫌気化 後 除去率 (%) Mg 無添加 余剰濃縮 (mg/g TS) 7.71 7.11 7.78 分離液 (mg/L) 5.47 7.80 3 m3 添加 余剰濃縮 (mg/g TS) 8.70 5.15 40.8 分離液 (mg/L) 3.67 12.6 P 無添加 余剰濃縮 (mg/g TS) 33.2 28.9 13.0 分離液 (mg/L) 7.49 25.1 3 m3 添加 余剰濃縮 (mg/g TS) 38.5 21.7 43.7 分離液 (mg/L) 4.58 45.1 K 無添加 余剰濃縮 (mg/g TS) 8.84 6.89 22.1 分離液 (mg/L) 12.2 17.6 3 m3 添加 余剰濃縮 (mg/g TS) 9.37 5.02 46.4 分離液 (mg/L) 15.1 24.2 0 10 20 30 40 50 -1 0 1 2 3 4 5 6 Mg 濃度 ( mg /L ) 時間(h) 0 40 80 120 160 200 -1 0 1 2 3 4 5 6 P 濃度( mg /L ) 時間(h) 全量(3m³ 添加) 全量(無添加) 溶解性(3m³ 添加) 溶解性(無添加) 0 10 20 30 40 50 60 -1 0 1 2 3 4 5 6 K 濃度 ( mg /L ) 時間(h)

(9)

9 3.2 (1)の室内実験の結果と比較する.初沈濃縮汚泥を 投入した実施設での汚泥混合比と最も近い条件である 72:8の室内実験の結果を比べると,Mg,P,Kのいずれ の元素についても溶出率が2割程度低くなった(Mg: 58.3%→41.1%,P:59.3%→36.9%,K:76.1%→60.8%). また,嫌気化前後の溶出率の差も各元素で1割以上低く なっていた(Mg:48.0%→32.9%,P:48.2%→33.4%, K:44.7%→29.2%). Wangらの研究では,35℃でのEBPR(生物学的リン除 去)汚泥の嫌気発酵において酢酸塩を投入することで, リン酸塩,Mg, Kの速い溶出が観測されている12).しか しながら,本調査はWangらの行った実験や本研究の室 内溶出実験(25℃)の条件と比べて大幅に低い15℃程度 の水温で行われたため,余剰汚泥中のポリリン酸蓄積微 生物の活性が抑えられ,元素類の溶出が進まなかった可 能性が考えられる.

4. まとめ

本研究では,岩手県北上川上流流域下水道の浄化セン ターを対象として,MAPの構成元素であるMgとPの嫌気 性消化槽への負荷源を調査した.また,初沈濃縮汚泥を 添加した余剰汚泥を嫌気培養して余剰汚泥からMg,Pお よびKを溶出させ,それら元素類を機械濃縮機で分離す る試みを行った.さらに,分離液からのMg,PおよびK の電気透析装置による濃縮を検討した.以下に得られた 結果を示す. 1) 消化槽へのMgとPの負荷は初沈濃縮汚泥に比べて余 剰濃縮汚泥の方が3~4倍程度大きく,消化槽内での MAP生成を抑制するためには,余剰汚泥に由来す るMg負荷量を低減する必要があることが分かった. 2) 余剰汚泥を余剰汚泥貯留槽内で嫌気培養することで Mg,PおよびKが溶出し,嫌気培養開始から36時間 程度で溶出率がほぼ最大値に達することが分かった. 3) 初沈濃縮汚泥を有機炭素源として余剰汚泥に加える ことで,元素類の嫌気的な溶出を短い時間で促進で きる可能性が示された. 4) 嫌気培養した余剰汚泥を機械濃縮機で分離すること で,元素類を機械濃縮分離液に移行させることが可 能であり,その結果,嫌気性消化過程における MAP生成の抑制につながると考えられる. 5) 嫌気培養後の余剰汚泥の遠心分離液に含まれる P, Mg および K は電気透析によって濃縮できることが 分かった. 今回の実処理場での調査は冬季の比較的水温の低い条 件で行われたことから,今後は夏季の水温が高い時季で の元素類の溶出特性を把握する必要がある.また,初沈 濃縮汚泥の添加量や機械濃縮時の高分子凝集剤添加量な どの最適操作条件についても検討する必要がある. 謝辞:本研究を遂行するにあたって,当時,岩手大学工 学部環境衛生工学研究室の卒論生であった舘伸也 氏と 菊池康太郎 氏に多大な協力を頂いた.ここに記して謝 意を表します. 参考文献

1) Doyle, J. D. and Parsons, S. A.: Struvite formation, control and recovery, Wat. Res., Vol.36, No.16, pp.3925-3940, 2002.

2) (公社)日本下水道協会:消化プロセス導入にともなうメリ ット・デメリット,www.jswa.jp/wp2/wp-content/uploads/pdf/ di-gestion_process_merit_demerit.pdf(最終アクセス:2018年5月15日) 3) Jardin, N. and Pöpel, H. J.: Phosphate release of sludges from enhanced

biolog-ical p-removal during digestion, Wat. Sci. Technol., Vol.30, No.6, pp.281-292, 1994.

4) Schönborn, C., Bauer, H D. and Röske, I.: Stability of enhanced biological phosphorus removal and composition of polyphosphate granules, Wat. Res., Vol.35, No.13, pp.3190-3196, 2001.

5) Barat, R., Montoya, T., Seco A. and Ferrer, J.: The role of potassium, magne-sium and calcium in the enhanced biological phosphorus removal treatment plants, Environ. Technol., Vol.26, No.9, pp.983-992, 2005.

6) Wu, Q., Bishop, P. and Keener, T. C.: Biological phosphate uptake and release: Effect of pH and magnesium ions, Wat. Environ. Res., Vol.78, No.2, pp.196-201, 2006.

7) Choi, H. J., Yu, S. W., Lee, S. M. and Yu, S. Y.: Effects of potassium and mag-nesium in the enhanced biological phosphorus removal process using a mem-brane bioreactor, Wat. Environ. Res., Vol.83, No.7, pp.613-621, 2011. 8) 松尾和正:消化汚泥系配管のMAPによる閉塞対策,再生と利 用,Vo.36,No.134,2012. 9) 大竹久夫:リン資源の回収と有効利用,サイエンス&テクノ ロジー,2009. 10) 国土交通省 都市・地域整備局下水道部:下水道におけるリ ン資源化の手引き,2010. 11) 国土交通省 国土技術政策総合研究所:B-DASH プロジェク ト No.6 消化汚泥からのリン除去・回収技術導入ガイドライ ン(案),国土技術政策総合研究所資料,2014.

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13) Ito, A., Kawakami, H., Ishikawa, N., Ito, M., Oikawa, T., Sato, A. and Umita T.: Accelerated anaerobic release of K, Mg and P from surplus activated sludge for element recovery and struvite formation inhibition, Wat. Sci. Tech-nol., Vol.75, No.9, pp.2149-2156, 2017.

14) (公社)日本下水道協会:下水試験方法 上巻-1997年版-, (公社)日本下水道協会,1997.

15) (公社)日本下水道協会:下水試験方法 下巻-1997年版-, (公社)日本下水道協会,1997.

(10)

16) Wang, X., Zhang, X., Wang, Y., Du, Y., Feng, H. and Xu, T.: Simultaneous recovery of ammonium and phosphorus via the integration of electrodialysis with struvite reactor, Chem. Eng. J., Vol.490, pp.65-71, 2015.

(2018. 5. 17 受付)

RECOVERY OF VALUABLE ELEMENTS FROM SURPLUS ACTIVATED

SLUDGE USING EXISTING SLUDGE TREATMENT FACILITIES

Loading of Mg and P into anaerobic digester from surplus activated sludge was 3 and 4 times greater than that from raw sludge, which indicates that surplus activated sludge would be a target in reducing Mg loading into anaerobic digester. Anaerobic release of Mg, P and K from the surplus activated sludge was accelerated by the addition of thickened raw sludge and these elements in the centrifugal separate liquid was concentrated using a prototype of electrodialyzer. Furthermore, anaerobic cultivation of surplus acti-vated sludge with thickened raw sludge in the existing storage tank during 6 hours decreased the contents of Mg, P and K in the thickened surplus activated sludge by 40 - 50%. These findings suggest that acceler-ated anaerobic release of the elements from surplus activacceler-ated sludge could provide an opportunity to recover Mg, K and P from the separate liquid discharged from the subsequent mechanical thickener and decrease the Mg loading into the digester for inhibiting a blockage of sludge transport pipes due to struvite.

Takuya SHIRAIWA, Ayumi ITO, Nao ISHIKAWA, Ikuma KON, Masayuki SASAKI,

Naoshi TAKADATE, Makoto SASAMOTO and Teruyuki UMITA

図 -8 余剰汚泥中の元素類の全量および溶解性濃度の経時変化 図 -8 に初沈濃縮汚泥の添加の有無における余剰汚泥中 の元素類の全量および溶解性濃度の経時変化を示す.こ こでは,培養開始直後を  0  時間 とし,初沈濃縮汚泥投入 前を -1  時間とした.各元素の溶解性濃度は時間の経過と ともに増加した.初沈濃縮汚泥添加の有無を比較すると, 添加した場合,各元素の溶解性濃度の増加の程度は大き く,特に -1 時間から 0 時間の傾きが大きかった. 表 -7 に初沈濃縮汚泥中の元素類の全量および溶解性濃 度

参照

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