白水 元
1・佐々 真志
2・宮武 誠
3 1正会員 山口大学大学院 学術研究員 創成科学研究科(〒755-8611 山口県宇部市常盤台 2-16-1) E-mail: [email protected] 2正会員 (国研)海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所 グループ長 地盤研究領域 動土質研究グループ(〒239-0826 神奈川県横須賀市長瀬 3-1-1) 4正会員 函館工業高等専門学校 准教授 社会基盤工学科(〒042-8501 函館市戸倉町 14-1) 砂浜模型実験での底質サンプル分析から波の遡上に伴った底質内部のサクション動態が間隙変化を誘起 することが確認されている.しかし,底質のサンプリングは,破壊を伴い,高頻度で行うことができるも のではない.そこで,本研究では,新たに波作用下の砂浜を対象とした比抵抗計測による底質間隙の時間 連続的なモニタリング手法を開発する.砂浜模型を用いた底質間隙モニタリング実験から,提案する計測 手法の妥当性を検討し,また,遡上斜面の地下水分布による間隙変化特性について考察した.Key Words : Bulk density, Electrical resistivity, Suction dynamics, Beach morphology, Monitoring method
1. はじめに
海岸工学分野では汀線近傍の活発な流動と地形変化 に影響を与えるものとして,海水の流動に応答し複雑に
変化する地下水の取扱いがよく議論されている(例えば,
Cartwright et al, 20041),浅野・Hoque, 20072),宮武ら,20133)
など).しかしながら,地下水の媒質である底質の間隙そ のものが変化することについては考慮されていない事が 多い.そのような中,筆者らは砂質海浜底質の間隙水の 挙動の結果,間隙構造が変化し,底質表層のせん断抵抗 に影響を与えることを示してきた4),5),6).白水ら7), 8)は,複 数の砂浜模型に対して間隙水圧の連続的なモニタリング を行いながら,異なる作用時間の波を与えた後それぞれ の模型底質のサンプル採集を行い,波作用時間,つまり 間隙水変動の作用時間に応じて底質間隙が収縮する傾向 が有ることを示した.しかしながら,サンプル採集は破 壊を伴うと共に,底質間隙の変化する過程を時間連続的 に捉えることはできない.また,砂浜の底質内部の間隙 変化は地形変化の理解と精確な予測に重要不可欠である 一方,連続的にモニタリングする手法はこれまで提案さ れていない.そこで,本研究では,破壊を最小限に留め て高頻度で波作用下の砂浜の底質間隙変化を捉えること ができる簡便な手法を開発することを目的とする.
2. 比抵抗計測による底質間隙モニタリング
本研究では,比抵抗計測による底質の間隙状態のモニ タリングを検討した.底質砂を構成する鉱物の大部分を 占める二酸化ケイ素(SiO2)や間隙中の空気は電気抵抗性 が高く,底質の導電性は,間隙中の水分によるところが 大きい.Archie(1942)9)は塩水で飽和した砂岩の比抵抗を 計測する実験から間隙率と岩石・間隙水の比抵抗の関係 を整理した.今日ではArchieの法則と呼ばれるこの関係 は,下式のように表される. 𝜑𝑠 𝜑𝑤= 𝑎𝑛 −𝑚𝑆𝑟−𝑘 (1) ここで,𝜑𝑠は底質の比抵抗,𝜑𝑤は間隙水の比抵抗であ り,nは空隙率,Srは飽和度で,a,m,kは岩石・土の性 質に依存する定数で,それぞれ迂回係数,膠結係数,飽 和係数と呼ばれる.本研究で対象とする砂質底質の間隙 が飽和している場合は,砂粒子と水の2相となり,間隙率 に応じて底質の比抵抗が変化するため10),Archieの式は 下記のようになる. 𝜑𝑠 𝜑𝑤= 𝑎𝑛 −𝑚 (2)本研究では,定数a, mは下記の手順で求めている.JIS A 1210:2009で規格化されている突固めによる土の締固め 試験を参考に,突固め回数を変えた6つの異なる空隙率を 持つ底質試料を用意し,これらをバスケットに収容して, 水槽に浸し飽和状態にする.このとき,試料と,それら を浸す水(間隙水)の比抵抗を計測する.その後,試料 を炉乾燥させ,乾燥密度を測定する(図-1).乾燥密度ρd と既知の底質土粒子の密度ρsから間隙比eと間隙率nを求 め(式3, 式4),上述のArchieの式の定数a,mを決定する (図-2). 𝑒 = 𝜌𝑠 𝜌𝑑− 1 (3) 𝑛 = 𝑒 1+𝑒 (4) これにより底質間隙が飽和状態にある領域で計測された 比抵抗から間隙率を求めることができる.得られた較正 式から,砂浜遡上斜面での比抵抗の連続計測による底質 間隙率のモニタリングが可能となる.なお,本研究で対 象とする遡上斜面は干出時も表面張力により底質表面に メニスカスを形成し,間隙が飽和している状態を考慮す る.
3. 砂浜模型による実証実験
前章で提案した手法を用いて,室内模型の波作用中の 遡上斜面の間隙変化をモニタリングする実験を行った. 表-1 及び図-3 に示す物性値の底質砂を用いて砂浜模 型を造成した(図-4).このとき,水槽底面から0.3 m の 水位を一様に与えている.この遡上斜面表面から2 cm の 深さを計測するように斜面に平行に比抵抗計を設置し, 孤立波を180 s の間隔で複数回作用させ,その過程で波 作用中の底質表層の比抵抗を70 MHz で計測,2 Hz のバ 図-1 比抵抗-間隙率較正手順 a. 異なる突固め回数の試料を用意する b. バスケットに収容した試料を水に浸し 間隙の通水を待つ. c. 飽和試料の比抵抗と 水の比抵抗を計測する d. 比抵抗計測後試料を炉乾燥させる e.ケースの質量,炉乾燥後の試料の質量を計り乾燥密度を得るースト間隔で記録した.用いる比抵抗計は外部給電式の センサで,データロガーに有線接続されている.また, 土中に設置した水頭計と波高計を用いた地下水位・水位 の観測も同時に行った.計測レートはそれぞれ2 Hz と 5 Hz である.入射する孤立波は目標遡上高 15 cm とし,波 高5.6 cm,ピストン動作時間 4.1 s を設定した. 図-5a は図-4 中のWG3 で示される波高計,ST1 で示 される水圧計で取得した水位と地下水頭を示す.図-5b は底質の比抵抗,図-5c は比抵抗から求めた間隙率であ る.ここでは,繰り返される波の遡上と流下を経験し, 地下水位の変動と連動して間隙率の低下する様子が見て 取れる.具体的には10 波の作用前後で 2 %程度の間隙率 の低下が確認できた.これは現地観測 5),室内実験 7)で 示された,波作用下の地下水位変化に伴うサクション動 態下で,サクション上昇により土砂は収縮し,サクショ ン低下により土砂は膨張するが,前者の収縮傾向が後者 の膨張傾向を常に上回る,塑性収縮と弾性膨張の繰り返 しによる,繰返し弾塑性収縮現象によって土砂が高密度 化したことと定量的に対応している.また,遡上波の到 来に伴った比抵抗の低下は,電気伝導性の高い水塊が比 抵抗計周囲の電界に流入した影響も含まれると考えられ るが,本実験の結果では水位計の計測記録にあるスパイ ク状の水位上昇のイベントと対応していることも分かる. より正確に間隙率を推定しようとする場合,遡上斜面上 の測定点付近の水位観測を行った上で,外部流体の影響 下にある部分を除く等の対応が必要となる.
4. 間隙収縮に及ぼす地下水分布の影響
遡上斜面の地下水分布の変化が間隙収縮にどのよう な影響を与えるかを調べるために,砂浜模型の後浜水位 を天端高と同等の 0.6m まで上昇させた状態で再度実証 実験を行った. 図-6 はその結果を表す.図-6a は図-4 中の ST1 で示さ れる,汀線から100 cm 岸側に設置した水圧計で取得した 0 0.5 1 1.5 0 0.2 0.4 0.6 間隙率(×100%) 図-2 較正曲線 粒径(mm) 図-3 底質砂の粒径加積曲線 図-4 実験概況図 表-1 底質砂(硅砂・混合粒径)物理量 平均粒径D50 (mm) 0.18 土粒子密度ρs (g/cm3) 2.61 最小密度ρdmin (g/cm3) 1.43 最大密度ρdmax (g/cm3) 1.76地下水頭を示すが,後浜水位を0.3 m とした前ケースと ほぼ変わらない変動が見られる.図-6b は初期汀線から 100 cm 岸側で取得した底質の比抵抗,図-6c は比抵抗か ら換算した間隙率の履歴である.前ケースと比較して, 遡上波到来時のスパイク状の値の変動はその規模が小さ く,また,10 波を経験した前後の間隙率の差も 0.6 %程 度と,収縮が抑えられた結果となった.全体的に地下水 位分布が高いため,干出時に発揮されるサクション(間 隙水の負圧)が前ケースと比較して弱く,これによる収 縮の効果も受けにくいことを示す. 遡上時に底質内部に貯留された流体は,流下後に滲出 流として底質土砂に対して揚力をもたらし11),12),後浜水 位の上昇はこの滲出流の揚力効果を増大させることが示 されている 3).本研究では,遡上後の微小な値の変動が 観測されており,滲出流の影響が伺える.
5. おわりに
本研究では,比抵抗計測による砂浜底質の間隙変化モ 図-6 汀線から1m 岸側の地点の観測結果(後浜水位 0.6 m ケース) 0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440 1620 1800 0.032 0.034 0.036 0.038 0.04 時刻(s) 比抵抗 (kΩ ・ m )b)
0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440 1620 1800 0.48 0.5 0.52 0.54 0.56 時刻(s) 間隙率 ( × 1 0 0 % )c)
0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440 1620 1800 0.35 0.4 0.45 0.5 時刻(s) 水槽底面からの 地 下 水 頭 ( m )a)
0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440 1620 1800 0.35 0.4 0.45 0.5 時刻(s) 水槽底面からの 水位・地下水頭( m )ground water level water level
a)
0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440 1620 1800 0.48 0.5 0.52 0.54 0.56 時刻(s) 間隙率 ( × 1 0 0 % )c)
corresponding porosity 図-5 汀線から1m 岸側の地点の観測結果(後浜水位 0.3 m ケース) 0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440 1620 1800 0.032 0.034 0.036 0.038 0.04 時刻(s) 比抵抗 (kΩ ・ m ) electric resistivityb)
groundwater levelと見込まれる.しかしながら,比抵抗計設置点に遡上先 端の到達した後の数秒は激しい比抵抗の変化が記録され ており,波の遡上が電界に及ぼす影響も現れている可能 性がある.その為,必ずしも間隙率の変化のみを反映し た結果とは言えないため,今後は,水位の監視や最適な 設置深度や設置間隔を検討する必要がある. また,遡上斜面の地下水分布の変化が間隙収縮にどの ような影響を与えるかを調べるために,砂浜模型の後浜 水位を上昇させた状態で行った計測実験の結果は,上昇 させない場合と比べ,間隙の収縮が抑えられた結果とな った.これは地下水位分布が遡上斜面全体で高いため, 干出時に底質に働くサクションが弱くなっていることと 対応し,干出時サクションの厳しさに応じた間隙変化が 起こることを示す結果である. 謝辞:本研究は日本科学協会の笹川科学研究助成,およ び科研費JP15H02265 の助成を受けて実施された.ここ に記し謝意を表する. 参考文献
1) Cartwright, N., L. Li, and Nielsen, P.: Response of the salt–freshwater interface in a coastal aquifer to a wave-induced groundwater pulse: field observations and modelling, Advances in water resources, Vol. 27, No. 3, pp. 297-303, 2004.
2) 浅野 敏之, Md. Azharul Hoque: 境界層の変化を考慮 した透水性斜面上の漂砂の解析,海岸工学論文集Vol. 50, pp. 501-505, 2003.
3) 宮武 誠,阿部 翔太,木村 克俊,越智 聖志:"底質
butions of three amphipod and isopod species, Journal of
Sea Research Vol.85, pp. 336-342, 2014.
6) 白水元,佐々真志,宮武誠,外村隆臣,中條壮大,山 田文彦:多段バーの安定機構に関係する底質のサクシ ョン動態・密度・せん断強度の時空間変化,土木学会 論文集 B2(海岸工学) Vol. 70, No. 2 pp. I_536-I_540, 2014. 7) 白水元,佐々真志,宮武誠,本間大輔,成田郁史: 高 波作用下の前浜平衡勾配に及ぼす間隙サクション動 態効果の影響,土木学会論文集 B3 (海洋開発), Vol. 72, No.2, pp. I_712-I_717, 2016. 8) 白水元,佐々真志,宮武誠: サクション動態効果を考 慮した前浜地形変化の再現計算 ,土木学会論文集 B2(海岸工学),Vol. 72, No. 2 pp. I_79-I_84, 2016. 9) Archie, G. E.: The electrical resistivity log as an aid in
determining some reservoir characteristics, Transactions of
the AIME, Vol. 146, No. 1, pp. 54-62, 1942.
10) Jackson, P. D.: An electrical resistivity method for evalu-ating the in‐situ porosity of clean marine sands, Marine
Georesources & Geotechnology, Vol. 1, No. 2, pp. 91-115,
1975.
11) Butt, T., Russell, P., Turner, I. : The influence of swash infiltration–exfiltration on beach face sediment transport: onshore or offshore?, Coastal Engineering, Vol.42, No.1, pp. 35-52, 2001
12) Karambas, T., V.: Modelling of infiltration-exfiltration effects of cross-shore sediment transport in the swash zone,
Coastal Engineering Journal, Vol. 45, No. 1, pp. 63-82,
2003.
(2017.2.2 受付)
A CONTINUOUS MONITORING SYSTEM FOR POROSITY CHANGE
IN A SANDY BEACH DUE TO RUNUP WAVES
Hajime SHIROZU, Shinji SASSA and Makoto MIYATAKE
Sampling methods involve destruction of sediment and they cannot be implemented in high frequency. Therefore, in this study, we have developed and proposed a time continuous monitoring method of sedi-ment porosity change under wave action. The monitoring system consists of usage of inexpensive elec-trical resistivity sensors and calibration technique that is based on porosity-elecelec-trical resistivity logarith-mic relationship. The compaction effect of suction dynalogarith-mics on swash zone has been examined through a experiments by using the method proposed in this study.