千鳥配置された高力ボルト摩擦接合継手の 荷重伝達メカニズム
山階 清永
1・山口 隆司
2・高井 俊和
3・彭 雪
41学生会員 大阪市立大学大学院 工学研究科都市系専攻(〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138)
E-mail: [email protected]
2正会員 大阪市立大学大学院教授 工学研究科都市系専攻(〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138)
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3学生会員 大阪市立大学大学院 工学研究科都市系専攻(〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138)
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4学生会員 大阪市立大学大学院 工学研究科都市系専攻(〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138)
E-mail: [email protected]
鋼I型断面の下フランジ連結部では,千鳥配置と矩形配置を組み合わせた砲台配置と呼ばれるボルト配 置を採用した高力ボルト摩擦接合継手が多く見受けられる.砲台配置の継手では,継手外側において,抵 抗断面を大きく確保できるという利点がある.しかし,砲台配置において,ボルトが8列を越える,多列 となった場合の設計法は明確となっていない.本論文では,8列を超える砲台配置の設計法を検討するこ とを目的とし,砲台配置の継手に対して,弾塑性有限変位解析を行った.解析におけるパラメータはボル ト配置,ボルト列数およびすべり降伏耐力比とし,それぞれのパラメータが継手のすべり強度およびすべ り発生までの荷重伝達メカニズムに与える影響について検討した.その結果,多列砲台配置に対する現行 の設計法が安全側の設計であることを確認した.
Key Words : high strength bolted friction type joint, staggered bolted arrangements, FEM
1. はじめに
鋼橋の現場接合における部材の連結には,高力ボルト 摩擦接合継手が多く採用されている.一般にボルト配置 には,格子状にボルトを配置する矩形配置と互い違いに 配置する千鳥配置がある.鋼橋の設計では,引張力を受 ける継手部において,ボルト孔による断面欠損を考慮す る必要がある.そのため,母材の最外ボルト列において,
断面欠損を抑える目的で矩形配置と千鳥配置を組み合わ せたボルト配置(以下,砲台配置と呼ぶ)が採用される ことが多い.写真-1に砲台配置の例を示す.
石川らの研究 1)では,砲台配置における先端ボルト行 を最小である2行を採用した場合でも安全性は確保でき ることを解析的に確認している.さらに,千鳥配置の影 響に関して,すべり先行型の継手では,すべり強度が 5%程度低下し,降伏先行型の継手ではその大きな変化 は確認されなかったとしている.
土木研究所資料 2)では,ボルト配置が 1行(以下,1 行配置)の継手を対象とした解析および実験によりボル
ト列数が 8列を超える,または,すべり/降伏耐力比 β の値が大きくなることですべり係数が低下することが示 されている.この結果,現行の道路橋示方書 3)ではボル
ト列数が8列を超える場合に高力ボルトの許容力に乗じ
る低減係数が定められている.しかし,砲台配置された 高力ボルト摩擦接合継手において,設計における,千鳥 配置部のボルト列数の数え方が明確となっておらず,道 路橋示方書3)にも明記されていない.図-1に考えられる
写真-1 砲台配置の例
表-1 材料特性
図-2 解析モデルのモデル化範囲 解析対象
継手内側
継手外側 連結板
母板 ボルト
座金
図-1 設計におけるボルト列数の数え方の例
鋼種 ヤング率
(N/mm2) ポアソン比 降伏応力
(N/mm2) 母板
SM490Y 206,500 0.289 363.3
連結板
SM490Y 213,400 0.271 375.7
ボルトM22
F10T 200,000 0.300 900
0 200 400 600 800 1,000 1,200
0 20,000 40,000 60,000
ひずみ(×10-6) 応力(N/mm2 )
母板 連結板 ボルト
(a)上面図
(b)鳥瞰図
最小ボルト列数:5列
最大ボルト列数:11列
斜め方向を考慮しない ボルト列数:8列 CL
ボルト列数の数え方の例を示す.現在のところ千鳥部分 において斜め方向も考慮した最大ボルト列数(11列)
で設計を行うことで安全側の設計になると考えられるが,
その設計法を検討した研究はなされておらず,裏付けが 必要である.文献 4)では,実験結果をもとに,千鳥配置 の継手において,“1ボルト線上のボルト本数”つまり,
斜め方向のボルトを考慮しない列数をその継手のボルト 列数として考えて差しつかえないとしている.図-1 に 示す砲台配置の例では,最大ボルト列数では 11列,斜 め方向を考慮しない場合は8列,さらに,最小ボルト列
数では5列となる.
千鳥配置された高力ボルト摩擦接合継手に関しては,
石川らの研究 1),および土木研究所資料 4)にある程度で あり,実験的にも解析的にもその挙動を詳細に検討した 研究はほとんどなされていない.また,砲台配置におい て多列の場合を対象とした研究はなく,道路橋示方書 3) に示される,低減係数をそのまま適用するには不明確な 点が残されている.
そこで,本研究では,高力ボルト摩擦接合継手に関し て,砲台配置におけるすべり挙動および荷重伝達メカニ ズムを解析的に明確にするとともに,砲台配置,矩形配 置および1行配置のすべり耐力の関係を議論することで,
8列を超える砲台配置に関して,その最大ボルト列数に 基づくすべり耐力の設計法について検討することを目的 としている.
2. 解析モデルと解析手法
(1) 解析モデル
本研究では,汎用構造解析コードAbaqus/Standard5)を使 用し,弾塑性有限変位解析を行った.解析対象はプレー トガーダー橋の鋼I型断面主桁の引張側フランジにおけ る摩擦接合を仮定する.高力ボルトは F10T(M22)と している.解析モデルの作成にあたり,土木研究所共同 研究報書2)を参考にしている.図-2に解析モデルのモデ ル化範囲,全体形状,ボルト,および座金の詳細を示す.
継手の形状,荷重状態,および変形状態の対称性に基づ いて1/8モデルとした.母板および座金を8節点ソリッ ド低減積分要素,連結板およびボルトを8節点ソリッド 低減積分要素,および6節点ソリッド完全積分要素でモ デル化した.要素分割は,軸方向長さ 5mm程度の要素 を用いて行った.
各部材間の接触条件には文献6)を参考に以下のように 設定した.母板と連結板,ボルト軸部と座金・母板・連 結板,および座金と連結板には接触境界を設定し,接触,
離間,および固着状態を再現できるようにした.そのた め,解析は母板-連結板間のすべりが発生した後,ボル
ト軸部と母板及び連結板が接触する支圧状態へ移行する.
また,ボルト軸部はボルト孔の中心に配置した.接触面 におけるすべり現象に対しては,等方性クーロン摩擦モ デルを用いた.本研究では,すべり荷重,およびすべり までの挙動の解明を主な着目点としていることから,す べり後の挙動に関係する動摩擦係数については,静止摩 擦係数と等しいと仮定した.解析で設定した摩擦係数は,
接触面処理を無機ジンクリッチペイント塗装とした場合 に対応したすべり係数の推奨値7)である0.50を設定した.
結果として,解析におけるすべり係数は 0.50よりも小 さくなる.
解析モデルの母板および連結板の材料特性は,文献2) に基づき,SM490Yを想定して設定した.ボルトと座金 の材料特性はF10T(M22)の公称値8)を参考に設定した.
解析で用いた材料特性を表-1に示す.
(2) 解析手法
解析では,図-3に示すように,まず,STEP1で設計ボ ルト軸力(205kN)に相当する強制変位をボルト軸部対 称面にそれぞれ与える.STEP2では,引張荷重を母板外 側の面に強制変位により与える.
なお,解析モデルおよび解析方法の妥当性の検証につ いては,土木研究所資料2)を参照されたい.
解析におけるすべり発生の定義は「解析における最大 荷重発生時,もしくは図-3に示す継手内側位置での連 結板と母材間の相対変位が 0.2mmに達した時のうち継 手内側の相対変位が小さい方の時点」とした.このすべ
りの定義については文献 2),6)において,最大 12列ま での1行配置のすべり先行型および降伏先行型の継手を 対象に,すべり試験と解析においてすべり時の母板-連 結板間の相対変位を比較した上で定義されたものであり,
実現象との整合性は確認されている.
(3) 解析ケース
高力ボルト摩擦接合継手の限界状態は,すべり強度と 母材降伏強度の比に大きく影響される.そこで,解析モ デルのパラメータとして,ボルト配置,ボルト列数の他 にすべり/降伏耐力比 βを用いた.ここで,すべり/降伏 耐力比βおよび,表中の連結板/母板降伏耐力比γは,式 (1),および式(2)により求めている.砲台配置に関する 母板の純断面積を算出する位置は,純断面積が最小とな る,連結板との等幅部(図-4 参照)とした.また,ボ ルト間隔,および縁端距離は,道路橋示方書 3)を参考に
75mm,および40mmとした.表-2および図-4に解析ケ
ースを示す.解析ケースの名称は,先頭のアルファベッ トが配置を示し,St,G,およびSiは砲台配置,矩形配 置,1行配置をそれぞれ示す.また,その後に続く数字 は順にボルト列数,すべり/降伏耐力比 βの値を示して いる.なお,表-2における砲台配置のボルト列数は図- 1に示した最大ボルト列数を示している.
w n d
t
N n m
b b b
d
'
(1)
w n d
t
d n w t
b b b
s s s
' '
(2)
STEP1 ボルト軸力の導入
STEP2 引張荷重の載荷
(強制変位)
5mm
継手内側
CL
CL
図-3 解析ステップ
表-2 解析ケース
St8_1.09 St9_1.31 St11_1.74 St11_0.87 G8_1.74 G8_0.87 Si8_1.08 Si9_1.31 Si11_1.74
8 9 11 11 8 8 8 9 11
8,200 9,840 13,120 13,120 13,120 13,120 1,640 1,845 2,255
ボルト本数 n 40 48 64 64 64 64 8 9 11
導入軸力 N1 (kN/
本)
母材 SM490Y 板厚 tm(mm) 100* 50 100*
連結板 SM490Y 板厚 tc(mm) 52 26 52
108 102 96
1.09 1.31 1.74 0.87 1.74 0.87 1.08 1.31 1.74
1.08 1.08 1.08
(1)配置の影響 - - ○ ● ○ ● - - -
(2)βの影響 - - □ □ - - - - -
(3)列数の影響 △ △ △ - - - - - -
(4)最大ボルト列数 による設計法の検 討
○ ▲ ◇ - - - ○ ▲ ◇
比較項目
解析すべり/母板降伏耐力比 β
解析連結板/母材降伏耐力比 γ 1.08 1.08
摩擦係数 μ 0.50
50 50
26 26
試験体幅 W (mm) 610 610
ボルト行数 8 8 1
設計すべり耐力 (kN) ボルトM22(F10T)
孔径24.5mm 205 205 205
解析ケース
ボルト配置 砲台配置 矩形配置 1行配置
ボルト列数
ここに,
μ:すべり係数, m:接合面数 (=2),
n:ボルト本数,
Nd:設計ボルト軸力(=205kN), σb:母材降伏応力(N/mm2),
tb:母材板厚(mm), ts:連結板厚(mm),
σs:連結板降伏応力(N/mm2),
wb:母材板幅(mm), ws:連結板板幅(mm),
d:ボルト孔径(=24.5mm),
n’:等幅部1列に並ぶボルト本数(図-4参照)
図-5に鋼I型断面主桁の下フランジ摩擦接合継手部の 実績調査から算出したβ,およびγの分布を示す.実績 調査 1)では,β=0.70~2.20と幅広く分布している.本研究
図-4 解析ケースの形状および寸法(単位:mm)
砲台配置における母板降伏 耐力を算出した断面
CL
(a) St11_1.74及びSt11_0.87 (b) St9_1.31 (c) St8_1.08
(d) G8_1.74及びG8_0.87
(e) Si11_1.74 (f) Si9_1.31 (g) Si8_1.08
1130
61050
26
980
605 50
26
905
50
26
40
40
40
40
40
40
610 610
830 680 605
830 tm 680
ts
905
108
26 50
40
605 980
108
40
680 1130
108
40
830
50
26
50
26830 680 605
905 40
40
50
26 610
605 605
:解析のモデル化範囲
× 矩形配置実績
□ 砲台配置実績
○ 石川ら1)による解析 本解析
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 β値
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2
γ値
0 5 10 15 20 25 30 度数
05 10 15 2025 30
度数
図-5 実績調査1) 表-3 解析結果
St8_1.09 St9_1.31 St11_1.74 St11_0.87 G8_1.74 G8_0.87 Si8_1.08 Si9_1.31 Si11_1.74
7,106 8,044 8,535 12,357 8,570 12,388 1,359 1,323 1,275
206.8 207.1 206.3 206.4 206.7 205.9 204.6 205.1 203.1
0.430 0.404 0.323 0.468 0.324 0.470 0.415 0.358 0.285
解析ケース
すべり荷重(kN) 導入軸力(kN)
矩形配置
すべり係数
ボルト配置 砲台配置 1行配置
における砲台配置の解析モデルは,実績調査を参考に すべり先行型と降伏先行型の両者を対象とした.また,
本研究ではβのみに着目し,γはすべてのケースで一定 とした.白丸は石川ら1)による解析ケースを示しており,
その解析ケースには矩形配置と砲台配置が含まれる.
まず,配置によるすべり強度,およびすべり挙動へ の影響を検討するため,ボルト本数,および βを一定 とし,配置のみを変化させた継手で比較を行う(表-2 に示す比較項目(1)).また,砲台配置において,すべ り先行型および降伏先行型とした場合の同様の比較も 行う(比較項目(2)).
さらに砲台配置におけるボルト列数の影響を検討す るため,板厚,千鳥部分の配置および連結板形状を一 定とし,矩形部分の列数を変化させた解析モデルも設 定した(比較項目(3)).
また,砲台配置における最大ボルト列数による低減 係数の決定法を検討するため,砲台配置の最大ボルト 列数と同じボルト列数,およびすべり/降伏耐力比 βの もと,列数を変化させた 1行配置の解析モデルも設定 した(比較項目(4)).
3. 解析結果および考察
表-3,および図-6に解析結果を示す.砲台配置におい て千鳥部分のボルト配置を変化させずに矩形部分での み列数を増加させた結果,すべり係数は低下した.ま た,その低下率は8列と比較して,9列で6%,11列で 25%であった(比較項目(3)).ボルト本数を変化させず,
配置のみを変化させた場合(比較項目(1))では,すべ り先行型(図中A),および降伏先行型(図中B)のい ずれの場合においてもすべり係数は同等の結果となった.
さらに,砲台配置,矩形配置ともに,すべり先行型と 降伏先行型で比較すると降伏先行型の方がすべり係数が 大きく低下し,その低下率は約31%であった(比較項目 (2))
同じボルト列数で砲台配置と1行配置を比較すると,
ともに列数が増加するにつれてすべり係数は低下するが,
砲台配置の方が,1行配置に比べ,8列で4%,9列およ
び11列で13%程度高くなっている(比較項目(4)).
(1) ボルトの分担摩擦力
すべり時における砲台配置および1行配置の各列ボル
ト1本あたりの分担摩擦力を図-7に示す.図中の砲台配
(b) 9列
(c) 11列
図-7 各列ボルト1本あたりの分担摩擦力 (列数比較)
0 20 40 60 80 100 120
1 2 3 4 5 6 7 8 9
ボルト列
ボルト1本あたりの分担摩擦力(kN/本) 砲台配置(St9_1.31)
1行配置(Si9 1.31) Scr
St9_1.31(矩形部分)
St9_1.31(千鳥部分)
Si9_1.31
0 20 40 60 80 100 120
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
ボルト列
ボルト1本あたりの分担摩擦力 (kN/本) 砲台配置(St11_1.74) 1行配置(Si11 1.74) Scr
St11_1.74(矩形部分)
St11_1.74(千鳥部分)
Si11_1.74 0
20 40 60 80 100 120
1 2 3 4 5 6 7 8
ボルト1本あたりの分担摩擦力(kN/本)
ボルト列
Type-Ⅰ(砲台配置)
Type-Ⅲ(単列)
Scr
St8_1.09(矩形部分)
St8_1.09(千鳥部分)
Si8_1.08
(a) 8列 図-6 解析結果
0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50
7 9 11 13
すべり係数
ボルト列数
砲台配置(β変化) 1行配置(β変化)
砲台配置(β=0.87) 矩形配置(β=0.87) 矩形配置(β=1.74) β=1.74
β=1.31 すべり先行型(A)
降伏先行型(B) β=1.09
+4%
+13%
+13%
-6%
-25%
置の棒グラフは赤色が矩形部分の列を,橙色が千鳥部分 の列を示している.また,各列ボルト1本あたりの分担 摩擦力とは,図-8 に示すように,接合面を各ボルト列 で短冊状に分割し,その分割した接合面に作用するせん 断応力をその領域に存在するボルト本数で除した値であ る.
図-7より,1行配置の場合,継手中央部分で分担摩擦 力が低下しており,ボルト1本あたりのすべり耐力に達 していないことがわかる.ボルト1本あたりのすべり耐 力とは式(3)で求められる.一方,砲台配置の8列では,
1行配置ほど継手中央部での低下は大きくない.
Scr aNa (3) ここに,μa:摩擦係数 (=0.5),Na:目標導入軸力 しかしながら,ボルト列数が 9列,11列と増加する と砲台配置においても千鳥部分と矩形部分の境界前後 のボルト列でボルト 1本あたりの分担摩擦力が低下し ている.これは,砲台配置において母板および連結板 の板厚・板幅を一定とする条件のもと,矩形部分のボ ルト列数を増加させたケースを設定した結果,連結板 等幅部でのすべり/降伏耐力比 β の値が大きくなり,内 側の相対変位が大きくなることから,すべりが早期に
発生し,中央付近のボルト1本あたりの分担摩擦力が低 下したと考えられる.また,砲台配置の各ケースでは 4 列で最も分担摩擦力が低下している.これは,千鳥部分 での荷重伝達が高く,その結果,列数が増加するほど矩 形部分での分担摩擦力の低下が著しくなったと考えられ る.
砲台配置と1行配置を比較すると,砲台配置の矩形部 分と千鳥部分の境目から 2,3列程度外側のボルト列
(図中△印)の分担摩擦力は,同じボルト列数の1行配 置よりも高くなっている.したがって,砲台配置はこの 領域の分担摩擦力が高い分,すべり荷重が高くなり,砲 台配置の方がすべり係数が高くなったと考えられる.
図-8 接合面の分割方法(ボルト列)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
継手内側 継手外側
ボルト列
:矩形部分
:千鳥部分
:砲台配置
CL CL
(b) 降伏先行型
図-9 各列ボルト1本あたりの分担摩擦力 (配置比較)
1,276 995
1,212 1,075
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
各部分に作用する摩擦力(kN)
0 20 40 60 80 100 120 140
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
ボルト1本あたりの分担摩擦力(kN/本)
ボルト列(列)
砲台配置(St11_1.74) 矩形配置(G8_1.74) St11_1.74(矩形部分)
St11_1.74(千鳥部分)
G8_1.74 砲台配置 矩形配置
(a) すべり先行型
2,187
1,255 2,227
1,226
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
各部分に作用する摩擦力(kN)
0 20 40 60 80 100 120 140
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
ボルト1本あたりの分担摩擦力(kN/ 本)
ボルト列(列)
砲台配置(St11_0.87) 矩形配置(G8_0.87) St11_0.87(矩形部分)
St11_0.87(千鳥部分)
G8_0.87 砲台配置 矩形配置
図-9 にすべり時における矩形配置および砲台配置の 各列ボルト1本あたりの分担摩擦力の比較を示す.図の 右には砲台配置における千鳥部分(ボルト 24本分)が 分担する摩擦力と矩形配置における先端 3列(ボルト 24本)が分担する摩擦力の比較も示す.図-9(a)よりすべ り先行型では,砲台配置の矩形部分(1~5列)におけ るボルト1本あたりの分担摩擦力は矩形配置のそれとほ ぼ同じである.一方,砲台配置の千鳥部分(ボルト 24 本分)では,分担摩擦力の低下が大きい列とそうでない 列が交互に現れている.隣り合う列のボルト軸力の影響 を受け,短冊状に分割した接合面に作用する接触圧が大 きくなるためと考えられる.つまり,千鳥部分において 前後の列のボルト合計数が多い列ほど分担摩擦力は高く なると考えられる.なお,砲台配置における千鳥部分
(ボルト 24本)が分担する摩擦力と矩形配置における 外側3列(ボルト24本)が分担する摩擦力はほぼ等し くなっている.
図-9(b)より,降伏先行型においても,砲台配置の矩形
部分(1~5列)におけるボルト 1本あたりの分担摩擦 力は矩形配置のそれとほぼ同じである.さらに,砲台配 置における千鳥部分の分担摩擦力は,すべり先行型の場
合と同様に,矩形配置における外側 3列の分担摩擦力 とほぼ等しくなっている.
以上より,本論文で定義したように,継手内側にお いてすべりを定義する場合,すべり先行型,降伏先行 型ともに,矩形部分にある程度の列数および行数がある 多列砲台配置をボルト本数が同じ等価な矩形配置(ただ し,行数およびボルト中心間隔は同じ)に置き換え,そ のときのすべり係数を砲台配置のすべり係数として用い ることができる可能性を示唆している.
(2) 荷重-相対変位関係
図-10に内側相対変位が1.0mmに達するまでの荷重-
相対変位関係を示す.図-10(a)より,すべり先行型,お よび降伏先行型のそれぞれの場合において,同じボルト 本数の矩形配置と砲台配置を比較すると,内側相対変位 に着目した荷重-相対変位はよく一致している.また,
すべり先行型では最大荷重発生時に,降伏先行型では内 側相対変位が 0.2mmに達した時点で,それぞれすべり 発生と決定される.また,図-10(b)より列数が異なる砲 台配置(8列,9列,11列)において内側相対変位での 荷重-相対変位関係を比較するとすべてのケースで初期 剛性は一致しているが,列数が増えると剛性が低下する 荷重レベルが小さくなっていることがわかる.これは列 数が増加するにつれてすべり/降伏耐力比 βが大きくな
図-11 継手の伸び量
(a)すべり先行(β=0.87)
(b)降伏先行(β=1.74)
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
ΔL/L0(×10-6)
U/USL
継手伸び(砲台配置) 継手伸び(矩形配置) すべり発生
継手伸びが増加することな く,強制変位が増加.
すべり後,継手伸びの差が小 さい
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
ΔL/L0(×10-6)
U/USL 継手伸び(砲台配置) 継手伸び(矩形配置)
すべり発生
すべり後,配置によって継手の伸び量 が大きく異なる.
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
荷重(kN)
内側相対変位(mm) St11_1.74 G8_1.74 St11_0.87 G8_0.87 相対変位0.2mm
すべり先行型
降伏先行型 すべり発生
図-10 荷重-相対変位関係 (a) すべり先行型および降伏先行型
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
荷重(kN)
内側相対変位(mm) St11_1.74 St9-_1.31 St8_1.09 相対変位0.2mm
(b) 列数比較
(b) 連結板 (a) 母板
矩形配置(降伏先行) 砲台配置(降伏先行)
P/PSL=1.0P/PSL=0.8P/PSL=0.6
矩形配置(すべり先行) 砲台配置(すべり先行)
G8_1.74 St11_1.74
G8_0.87 St11_0.87
S, Mises (MPa)
図-13 ミーゼス応力分布 P/PSL=1.0P/PSL=0.8P/PSL=0.6
矩形配置(降伏先行) 砲台配置(降伏先行)
矩形配置(すべり先行) 砲台配置(すべり先行)
G8_1.74 St11_1.74
G8_0.87 St11_0.87
S, Mises (MPa)
り,降伏が支配的となるためと考えられる.さらに,砲 台配置の 8,9,11列の全てのケースにおいて内側相対
変位が 0.2mmに達した時点ですべり発生と決定される.
(3) 継手の伸び量(母板)
図-11に継手伸びLと母板端部に与えた強制変位量U との関係を示す.縦軸はL/L0で横軸はU/USLでそれぞれ 初期の継手長さL0,すべり時の強制変位量USLで無次元 化している.U/USL=1.0はすべり時を表している.初期 の継手長さL0を図-12に示す.
図よりすべり先行型において砲台配置と矩形配置では,
すべり発生までは,両者の継手伸びに差は見られず,す べり発生時の傾きは0となり,継手伸びが増加すること なく母板端部に与えた強制変位が増加している.このこ とは,いずれの配置についてもすべりが支配的であるこ とを表している.一方,降伏先行型では,すべり発生後,
砲台配置は継手長さが伸びることなく,強制変位が増加 している.しかし,矩形配置では,すべり発生後も継手 長さが増加し続けていることがわかる.これは,矩形配 置では母板外側ボルト列で純断面積が降伏するためと考 えられる.つまり,降伏先行型の砲台配置では,孔引き による断面欠損を低減できることで,すべり発生後に継 手外側の純断面の降伏が先行する矩形配置よりも,降伏
の進展が先端部に集中することなく,継手伸び量が抑え られると考えられる.
(4) すべり時における応力分布
砲台配置と矩形配置のすべり発生時までの母板および 連結板のミーゼス応力分布を図-13に示す.図中には,
載荷荷重Pとすべり強度PSLの比P/PSLを記載している.
ここでPSLは,表-3に示す解析におけるすべり荷重を示
図-12 継手伸び量の算出節点 母板内側節点
母板外側節点
継手伸び:2点の軸方向変位の差
している.
母板では,一般に外側ボルト列から内側ボルト列に向 けて荷重分担が小さくなるが,本解析においても砲台配 置および矩形配置ともに外側ボルト列で荷重分担が大き く,内側ボルト列で小さいことが確認できる.特に,降 伏 先 行 型 (β=1.74) の 矩 形 配 置 で は , す べ り 時
(P/PSL=1.0)に母板外側ボルト列で全断面が降伏してい
る.砲台配置の母板では,各行の外側ボルトでミーゼス 応力が高く,先端の3列で主に荷重を分担している.こ れは,外側のボルト本数が少ないため,母板から連結板 への荷重伝達がその少ない外側ボルトに集中し,ボルト 孔周辺で局所的に塑性化が進展すると考えられる.
一方,すべり先行型では,砲台配置および矩形配置と もに,連結板および母板の断面が降伏することなく,す べりが生じている.また,ボルト孔周辺の応力状態も降 伏先行型と比較して小さい.
連結板については,母板と異なり,継手外側から内側 に向けて荷重分担が次第に大きくなり,内側で最も荷重 分担が大きくなっていることがわかる.また,内側にお ける降伏域の進展状況などは配置によらず,同じである.
すべり発生時における継手外側のボルト孔近傍での軸 方向応力を図-14に示す.図中には着目したボルト孔の 位置と軸方向応力を出力した節点を示す.ここに,軸方 向応力は,式(4)により算出している.
2
2
1
a (4)
ここに, σ1,σ2:ボルト孔近傍での軸方向応力
(図-14に示す要素の節点)
図より矩形配置では各ボルト孔で軸方向応力は概ね 同じ値を示しているのに対し,砲台配置では最外ボルト 孔において最大となり,内側のボルト孔ほど,小さくな っている.しかし,最大値を比較すると砲台配置と矩形 配置とではほとんど差が見られない.
以上より,砲台配置は,矩形配置と比較して,先端の ボルト列数が少ないことによる過度な応力集中や局所変 形などの悪影響はないものと考えられる.
(a) 砲台配置
図-15 コバ面の相対変位分布 図-14 外側ボルト孔近傍の軸方向応力
Max:
388N/mm2 Min:
360N/mm2
Max:
391N/mm2 Min:
386N/mm2
0 1 2 3 4 5
200 250 300 350 400 450
ボルト行
軸方向応力(N/mm2) 砲台配置(St11_1.74)
矩形配置(G8_1.74) 1.01.52.02.53.03.54.00
1.00 1.52.0 2.53.0 3.54.0
ボルト行
応力算出位置
応力算出ボルト孔
応力算出ボルト孔
σ1
σ2
(b) 矩形配置
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
相対変位量(mm)
無次元化ボルト位置
St11_1.74 St11_0.87 St9_1.31 St8_1.09
●:変位算出位置
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
0 50
26830
(単位:mm)
0 0.5 1.0 横軸
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40
0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対変位量(mm)
ボルト列 降伏先行型(β=1.74)
すべり先行型(β=0.87)
●:変位算出位置
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 50
26680
(単位:mm)
(5) すべり性状
a) コバ面の相対変位分布
砲台配置と矩形配置のすべり発生時における母板およ び連結板コバ面の相対変位分布を図-15に示す.図中に は,変位算出位置とボルト列も同時に示している.なお,
砲台配置については,横軸を無次元化ボルト位置とし,
継手内側で0,外側ボルト列で1としている.
図より,配置の違いで比較すると,矩形配置では,継 手外側の方が内側よりも若干,相対変位が大きくなって いる.一方,砲台配置では,継手外側で相対変位が顕著 に大きくなっており,ボルト列数が多いケースほど,継 手外側の相対変位が大きくなっている.これは,砲台配 置の千鳥部分における連結板の伸び剛性が小さいことに 起因していると考えられる.また,砲台配置および矩形 配置ともに降伏先行型よりもすべり先行型の方が各位置 における相対変位が大きい傾向にある.
なお,降伏先行型の継手においても中央部で相対変位 が認められ,継手全体ですべりが発生しているというこ
とがわかる.
b) 接合面のすべり量
すべり発生時までの砲台配置および矩形配置の接合面 のすべり量のコンターを図-16に示す.図中には,載荷 荷重Pとすべり荷重PSLの比P/PSL(0.6~1.0 )を記載して いる.コンター内の黒色の部分は,すべり定義の基準の ひとつである相対変位が 0.2mm以上であることを示す.
なお,赤枠で囲んだ連結板の端部において,すべり量が ほぼゼロとなっているが,これは解析ソフトの機能上,
接合面に離間が発生するとゼロと表示されるためである.
したがって,それより内側の領域のすべり量に着目する と,各荷重レベルにおいて砲台配置と矩形配置で継手内 側の相対変位の分布に大きな差はないといえる.さらに,
離間が生じたと考えられる部分(図中の赤枠)は,降伏 先行型においてのみ確認され,すべり先行型では確認さ れなかった.これはすべり先行型の継手は,降伏先行型 に比べて,連結板の板厚が2倍程度厚くなっていること で連結板の剛性が高くなっているためであると考えられ
図-16 接合面の相対変位量のコンター
図-17 接合面の相対変位分布
(b) 矩形配置(G8_0.87) (a) 砲台配置(St11_0.87)
0 50 100 150 200 250 300 350
0 0.1 0.2 0.3
板幅方向の距離(mm)
相対変位量(mm)
変位算出位置A 変位算出位置B
A
0.13mm
0.07mm
B 0.06mm
0.01mm 0 305
図中の縦軸
板幅内側 板幅外側
継手外側 継手内側
変位算出位置
0 50 100 150 200 250 300 350
0 0.1 0.2 0.3
板幅方向の距離(mm)
相対変位量(mm)
変位算出位置A 変位算出位置B
A
0.14mm 0.18mm
0.05mm 0.07mm
B 変位算出位置
0 305
図中の縦軸
板幅内側 板幅外側
継手外側 継手内側
矩形配置(すべり先行)
砲台配置(すべり先行)
継手外側 継手内側 継手外側 継手内側
矩形配置(降伏先行)
砲台配置(降伏先行)
継手外側 継手内側 継手外側 継手内側
P/PSL=1.0P/PSL=0.8P/PSL=0.6
DSL(mm)
ボルト軸力により離間が 発生
各行で均等にすべりが 発生 各行ですべり量が
異なる
St11_0.87 G8_0.87 St11_1.74 G8_1.74
ボルト軸力により離間が 発生 部分すべり
発生 部分すべり
発生
る.
また,すべり時における砲台配置および矩形配置の板 幅方向の相対変位量の分布を図-17に示す.
図-17(a)より,砲台配置では,板幅の内側に比べてコ バ面側である外側の方が相対変位量が大きくなっている.
変位算出位置 Aにおいて板幅外側における相対変位量 は板幅内側の1.9倍であった.変位算出位置Bでは,そ の差はさらに大きく,板幅外側の相対変位は板幅内側の 約6.0倍になっている.一方,図-17(b)より,矩形配置に おいて,板幅外側の相対変位量は,変位算出位置 Aに おいて板幅内側の1.3倍,変位算出位置Bで板幅内側の 1.4倍程度である.
以上より,矩形配置に比べて砲台配置では,板幅内側 の相対変位量と板幅外側の相対変位量に大きな差が見ら れ,相対変位量は小さくなるものの,その差は継手中央 ほど大きくなっている.これは,砲台配置では各行でボ ルト列数が異なっていることが原因と考えられる.また,
ボルト列数が多い行ほど継手中央のすべり時の相対変位 量が小さくなると考えられる.
砲台配置と矩形配置において継手内側の相対変位量の 差が大きくなかったことから,砲台配置において,ボル トが多列となっても,矩形部分のボルト列数および行数 が確保できていれば,千鳥部分が継手内側の相対変位量 の分布に与える影響は小さくなると考えられる.
4. 砲台配置の最大ボルト列数に基づく設計法の 検討
本研究では,多列砲台配置のすべり係数を検討する上 で,砲台配置の最大列数と同じボルト列数および同じす べり/降伏耐力比を有する 1行配置のすべり係数を解析 により求め,砲台配置のそれと比較することで最大ボル ト列数に基づく砲台配置の設計法について検討する.
解析から得られた砲台配置および1行配置のすべり係 数の比較を図-18に示す.図より同じボルト列数および 同じすべり/降伏耐力比の砲台配置と 1行配置とを比較 すると8列で4%,9列,11列で13%砲台配置の方が高 いすべり係数を得た.したがって,砲台配置において,
斜め方向のボルトも考慮した最大ボルト列数に対して,
すべり係数を設定すれば,安全側のすべり係数を設定し たことになることがわかる.
上記を踏まえ,砲台配置の設計では,図-1に示した 斜め方向も考慮した最大ボルト列によりボルト列数を数 え(11列),さらにそれが 8列以上である場合は,道 路橋示方書3)にあるボルト1本が伝達できる許容力に乗 じる低減係数(図-19の場合,0.94)を考慮することで 安全側のすべり耐力を算出できると考えられる.図-19
に砲台配置のボルト列数の数え方の模式図を示す.
一方,図-1 に示した最小ボルト列数に基づき,すべ り係数の低減係数を評価する手法では,砲台配置のすべ り係数を過大に評価する場合があると考えられる.また,
文献6)では,ボルト間隔を含めた継手長さが長くなるこ とですべり係数が低下することが示されている.さらに,
本解析における11列の砲台配置のすべり係数は 8列の 矩形配置のそれと同等であった.以上のことから,"1 ボルト線上に並ぶボルト列数"で砲台配置のすべり係数 を評価する手法では,すべり係数を過小(安全側)に評 価することになると考えられる.
5. 結論
本研究では,高力ボルト摩擦接合継手に関して,砲台 配置におけるすべり挙動および荷重伝達メカニズムを明 確にするとともに,そのすべり耐力の設計法について,
解析的に検討した.以下に得られた結論をまとめる.
1) 8列を超え,列数,およびすべり/降伏耐力比βが等し
い条件下では,砲台配置と1行配置ともに列数が多い ほどすべり係数は低下し,その値は1行配置よりも砲 台配置の方が高くなった.
2) 砲台配置では,斜め方向に配置されたボルトも考慮 して数えた最大ボルト列数に対してすべり係数を決定 することで,安全側の設計となることがわかった.本
図-19 現行の砲台配置の設計例
図-18 砲台配置と1行配置の比較(すべり係数)
最大ボルト列数:11列 低減係数:0.94 全ボルトに乗じる.
CL 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50
St8_1.09 Si8_1.08 St9_1.31 Si9_1.31 St11_1.74 Si11_1.74
すべり係数
+4% +13%
+13%
研究で行った解析によると,本手法で設計した場合,
砲台配置の11列(β=1.74)および9列(β=1.31)で
13%,8列(β=1.08)で4%程度すべり耐力に余裕があ
ることを確認した.
3) 砲台配置のすべり係数の評価において,多列砲台配置 をボルト本数が同じ等価な矩形配置に置換え,そのす べり係数を砲台配置のすべり係数として用いることが できる可能性を示した.一方,砲台配置における最小 ボルト列数での評価はすべり係数を過大に評価し,最 大列数での評価では過小に評価する場合があることが わかった.
4) 砲台配置と矩形配置の比較では,継手内側における接 合面の相対変位に大きな差はなく,砲台配置の千鳥部 分がそれに及ぼす影響は見られなかった.このことは,
継手内側ですべりの発生を定義する場合,多列砲台配 置では,矩形部分のボルト列数および行数がある程度 確保できているならば,同じボルト本数の矩形配置と すべり係数は一致すると考えられる.
5) すべり発生時では,すべり先行型および降伏先行型そ れぞれの場合において,矩形配置と砲台配置を比較す ると継手伸びは同等であった.すべり発生以降,降伏 先行型において,矩形配置では母板外側ボルト列の純 断面積の降伏により,継手伸びは増加するが,砲台配 置では,降伏の進展が先端部に集中することがないた め,すべり後も継手伸びは矩形配置ほど増加しない.
6) 砲台配置では,ボルト列数が増加する,または,すべ り/降伏耐力比 β が大きくなることで,千鳥配置と矩 形配置の境界前後において,各列ボルト1本あたりの 分担摩擦力がボルト1本のすべり耐力を下回る.さら に,矩形部分の列数が増加するにつれて矩形部分での 各列ボルト1本あたりの分担摩擦力の低下が著しくな る.
7) 砲台配置では,矩形配置と異なり,継手外側のボルト 本数が少ないため,母板から連結板への荷重伝達がそ の少ない外側ボルトに集中することで母板の外側ボル ト孔周辺において塑性化が進展する.しかしながら,
継手内側では,矩形配置と砲台配置の応力状態に有意 な差異はみられなかった.
8) 砲台配置および矩形配置ともに降伏先行型よりもすべ り先行型の方が継手各位置における相対変位量が大き くなる傾向にある.降伏先行型においても中央部で相 対変位が生じており,継手全体ですべりが生じている.
砲台配置では,千鳥部分における連結板の伸び剛性 が小さいことが原因となり,継手内側よりも継手外側 の相対変位量が大きくなる.その差は継手長さが長い ほど大きくなる.さらに,各ボルト行でボルト列数が 異なるため,板幅方向の相対変位量にも差が生じ,相 対変位量は板幅内側よりも板幅外側の方が大きくなる.
今後は,砲台配置の継手を対象にすべり実験を実施し,
解析による再現の精度を確認することが必要である.ま た,解析ケースを追加し,砲台配置のすべり係数の評価 式を構造諸元を変数として提案する予定である.
参考文献
1) 石川誠,亀井義典,西村宣男,秋山寿行:千鳥配置 された高力ボルト摩擦接合継手の強度と荷重伝達機 構,構造工学論文集,Vol.48A,pp.1-9,2002.
2) 独立行政法人土木研究所,公立大学法人大阪市立大 学:高力ボルト摩擦接合継手の設計法の合理化に関 する共同研究報告書,共同研究報告書 428 号,2012.
3) 社団法人日本道路協会:道路橋示方書・同解説,II 鋼橋編,pp.229-256,2012.
4) 建設省土木研究所構造橋梁部・橋梁研究室:高力ボ ルト摩擦接合継手に関する試験調査(I)引張荷重を受 ける継手のすべり耐力,土木研究所資料第 1871号,
1982.
5) SIMULIA : Abaqus Analysis User’s Manual, Ver 6.9, 2009.
6) 彭雪,山口隆司,高井俊和,村越潤,澤田守:厚板 多列高力ボルト摩擦接合継手の構造諸元がすべり挙 動に与える影響に関する解析的研究,土木学会論文 集A1 (構造・耐震工学),Vol.69,No.3,pp.452-466,
2013.
7) 土木学会 鋼構造委員会:鋼構造シリーズ15 高力ボル ト摩擦接合継手の設計・施工・維持管理指針(案),
pp.35-51,2006.
8) 日本規格協会:JIS B 1186,摩擦接合用高力六角ボル ト・六角ナット・平座金のセット,1995.
(2014. 6. 3 受付)
LOAD TRANSFERRING MECHANISM OF HIGH STRENGTH BOLTED FRICTION JOINTS WITH STAGGERED BOLTS ARRANGEMENT
Kiyonori YAMASHINA, Takashi YAMAGUCHI, Toshikazu TAKAI and Xue PENG
In I-cross-section of a steel bridge subjected to tensile stress, high strength bolted friction type joints with staggered bolts arrangement are often used. Because the effective cross-sectional area can be large at the outside section of the joint by using staggered bolts arrangement. In this study, an elasto-plastic finite element analysis for high strength bolted friction joints is conducted. The analytical parameters consid- ered in this study are the bolt arrangement, the number of bolts in a line and a row, the ratio of the design slip strength to the design yield strength. The influence that these parameters give to strength and load transferring mechanism is discussed. Furthermore the design method of high strength bolted friction type joints with staggered bolts arrangement over 8 rows of bolts in a line is considered.