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楠本浩一郎 論文内容の要旨 主 論 文

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Academic year: 2021

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楠本浩一郎 論文内容の要旨

主 論 文

Detection of HBV core promoter and precore mutations helps distinguish flares of chronic hepatitis from acute hepatitis B

B型急性肝炎症例とB型慢性肝炎急性増悪症例の鑑別における Precore領域及びCore promoter領域の遺伝子変異の意義

楠本浩一郎、八橋弘、中尾瑠美子、浜田るみこ、福田実可、玉田陽子、田浦直太、

小森敦正、大黒学、濱崎圭輔、中尾一彦、石橋大海、

宮川侑三、江口勝美

Journal of Gastroenterology and Hepatology 23 (2008) 790–793

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:江口勝美教授)

緒 言

現在、B型急性肝炎とB型慢性肝炎の急性増悪を鑑別するために、IgM-HBc抗体の 抗体価が用いられているが、診断に苦慮する例も少なくない。今回我々は、B型肝炎 ウイルスのPrecore領域及びCore promoter領域の遺伝子変異の有無が、B型急性肝炎 B型慢性肝炎急性増悪の鑑別に有用か否かを明らかにすることを目的として、研究 を計画した。

対象と方法

2000年から2004年までの期間、独立行政法人機構国立長崎医療センターに入院した B型急性肝炎は36例であった。その内訳は、急性肝炎の診断はHBs抗原が6ヶ月以 内に消失し、組織学的に慢性肝炎の所見がないものとした。男性は21例、女性は15 例、平均年齢38才、TB 5.6(mg/dl)、ALT 1792(IU/l)、PT 77(%)、IgM-HBc抗体の陽性 率は 97%であった。ジェノタイプは C 型が 89%であった。急性肝炎の重症度に関し ては、PT 40%以下、脳症2度以上を示した例を劇症肝炎、PT 40%以下で脳症1度ま での例を重症型肝炎、それ以外の例を通常型肝炎と定義した。一方、2000年から2004 年までの期間に当院に入院し、HBs 抗原が1年以上陽性で経過中 ALT 値が 500(IU/l) 以上を示したB型慢性肝炎36例をB型慢性肝炎急性増悪例と定義して検討した。そ の内訳は、男性は31例、女性は5例、平均年齢36才、TB 4.0(mg/dl)、ALT 1499(IU/l)、

PT 71(%)IgM-HBc抗体の陽性率は58%であった。ジェノタイプはC 型が92%であ った。

Precore変異とCore promoter変異の検出

HBV DNAの抽出は、血清50μlより、SMITEST EXR&D抽出キットを用いておこ なった。Precoreの変異は、ELMA法(enzyme linked mini-sequence assay)によるPrecore

(2)

変異判定キットを用いて対象者の入院時血清を測定した。Core promoter の変異は、

ELSPA法(enzyme linked specific probe assay)によるCore promoter変異判定キットを 用いて対象者の入院時血清を用いて測定した。測定結果の統計計算には統計計算ソフ SASを使用しP<0.05を有意とした。

結 果

Precore / Core promoter領域のHBV遺伝子変異

B型急性肝炎例でのPrecore変異株の検出率は2/366%)であったのに対して、B 慢性肝炎急性増悪例での検出率は21/36(58%)であった(P<0.0001)。Core promoter 変異株の検出率は、B型急性肝炎例で7/36(19%)、B型慢性肝炎急性増悪例で29/36

81%)であった(P0.0001

Precore領域及びCore promoter領域ともに野生型を呈した32例中29例(91%)がB 型急性肝炎例であったのに対して、Precore領域及びCore promoter領域ともに変異型 の症例では、19例中17例(89%)がB型慢性肝炎急性増悪例であった。B型急性肝 炎の重症型または劇症型の5症例中4例は、precoreまたはCore-promoter変異株が検 出された。

Logistic回帰分析

B型急性肝炎とB型慢性肝炎急性増悪との鑑別に有用な因子を明らかにするために、

単変量解析、多変量解析を行った。単変量解析で有意差を認めた因子は、性別、血小 板、Precore変異、Core promoter変異、IgM-HBc抗体であった。さらに、多変量解析 を行ったところ、性別、IgM-HBc抗体、Core promter変異が有意に寄与する因子であ った。中でも、Core promoterのオッズ比が26.37と最も重要な因子であった。

考 察

B型慢性肝炎では、Precore変異株やCore promoter変異株が高率に出現することが 知られているが、我々の検討でも、B型慢性肝炎急性増悪例での Precore領域とCore

promoter領域の変異株は、B型急性肝炎に比較して高頻度に検出された。Precore領域

及びCore promoter領域の変異パターンから考察すると、ともに変異型を示した19

17 例(89%)が B 型慢性肝炎急性増悪例であった。一方、Precore 領域及び Core

promoter領域がともに野生型を示した32例中29例(91%)がB型急性肝炎例であっ

た。また、多変量解析においても、Core promoter領域の変異は、B型急性肝炎とB 慢性肝炎急性増悪の鑑別に有意な因子であった。これらの結果から、HBs抗原陽性で ALT500(IU/l)以上の肝機能障害例においてPre core領域及びCore promoter領域の 遺伝子変異を検索することは、HBV の初感染か持続感染の急性増悪かの鑑別に有用 である可能性が強く示唆された。また、重症型、劇症型のB型急性肝炎では高頻度に

Precore、Core promoter変異株が検出されることが知られている。この点を踏まえた上

でもPrecore領域及びCore promoter領域の遺伝子変異をB型急性肝炎とB型慢性肝炎 急性増悪との鑑別に用いる必要があると考える。今後、その有用性に関して、さらな る検討が必要であると思われた。

(備考)※日本語に限る。2000 字以内で記述。A4 版。

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