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放射線被ばくに対する組織反応 特集によせて
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東京電力福島第一原子力発電所の事故をともない、
その結果、環境中に多量の放射性物質が放出されることになった。これにより、福島県内の住民 をはじめ、数多くの国民が放射線被ばくによる健康影響に不安を抱く結果となっている。とりわ け、自然放射線のレベルをやや上回るような低レベル放射線による慢性被ばくのリスクについて は、科学的に明確な結論が得られるほど十分な情報が蓄積されているとは言い難く、このことが、
放射線被ばくによる健康影響への不安をさらに増大させる原因の一端となっているといっても過 言ではない。もとより、特に医療分野での放射線の利用が近年急速に拡大し、生活の様々な面で 放射線の存在がより身近になっている現在、放射線による人体影響の理解は、以前にも増してそ の必要性を高めているところでもある。このような背景から、編集を担当するにあたり、副編集 委員長の甲斐倫明先生、ならびに大津山彰先生と相談し、2012年の9月号および12月号の特集に 引き続き、今回は、放射線被ばくに対する組織反応の特集を企画することとなった。
放射線影響の発現は、確定的影響であれ確率的影響であれ、放射線エネルギーの吸収に起因す るDNAあるいは細胞の障害に端を発する。しかしながら、放射線影響につながる個々の細胞の障 害が、臓器・組織の障害、ひいては個体の影響として顕在化するまでの過程は詳細に記述されて いない。とりわけ低線量放射線の影響を考える上では、このような細胞の障害に根ざした組織の 反応の理解は不可欠である。そこで、放射線発がんの標的になる臓器・組織において、放射線被 ばく後の組織反応について、特に、放射線の線量の違いによる組織反応の違いに着目して、現時 点で得られている情報を総覧するのが本特集の目的である。幸い、原稿をお願いした全ての先生 方から快い承諾の返事を頂戴し、ここに、『放射線被ばくに対する組織反応』の特集を、お手元に お届けできることとなった。この特集が、低線量率・低線量放射線被ばくによる健康影響の理解 のさらなる一助となれば幸いである。
赤本副編集委員長地区責任者 鈴木啓司