Title アリ類における2型雄の繁殖行動( はしがき ) Author(s) 山内, 克典 Report No. 平成5年度-平成6年度年度科学研究費補助金 (一般研究(C) 課題番号05640709) 研究成果報告書 Issue Date 1994 Type 研究報告書 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/148 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
1.研究成果の概要 1993∼1994年にかけて沖縄でアリ類のフィールド調査を行なうとともに、2型雄をもつ アリ類のコロニーを採集し、2型雄の繁殖戦略を解明するために飼育、観察、実験を行な った。これまでに以下の知見が得られた。 1)トビニセハリアリにおいて、無週掛こ極めて顕著なサイズ2型があることを発見し た。これらの繁殖行動の観察から、大型無週雄同士あるいは小型無勉雄同士は、巣内で激 しく戦うことが分かった。その結果、典型的には各巣は単雄複雌のハレムを形成する。大 型無麹雄と小型無麹雄が同一巣に出現する場合は、それ等の間に戟いI■ま見られず、前者は ファイター、後者は雌ミミックと考えられた。(論文1) 2)クロニセハリアリでは、両性に週型2型がある。今回の研究で次のような新知見が 得られた。1)本種は多女王、他巣性コロニーを形成する。2)無題生殖虫はシーズンの 前半に出現し、巣内交尾を行ない、有麹生殖虫はシーズンの後半に出現して、結婚飛行後 巣外で交尾する。3)無麹雄の交尾行動はアリ類のなかでも極めて特異である。マユ内の 女王あるいは羽化直後の女王と交尾するのであるが、交尾の2時間も前からマユに抱接し、 女王の羽化を待つ。交尾時間も数十分から2時間以上にわたり、交尾栓の機能を果たして いると考えられた。無勉雄のマユに抱接した場合、マユ内の雄は50%以上が死亡した。こ れはライバル雄の排除と考えられるが、さらに詳しい研究が必要である。(論文2) 3)アシジロヒラフシアリにおいて、有効雄および無勉雄の交尾器を走査型電子顕微鏡 で比較したところ、それらの間に1.8倍以上のサイズ差があった。有麹女王と無題女王の 交尾器のサイズ差もほほ同様で、有勉生殖虫と無麹生殖虫の間の交尾ができないまでに交 尾器の分化が進んでいることが明らかになった。(論文3) 4.)沖縄本島の種々の生息地において実施したアリ群集の調査結果を、各種の地理的分 布、コロニー構造および繁殖システム上の特性との関連で分析した。その結果、森林地域 には特有種などの狭分布種、単女王性種が大きな比率をしめ、一方、オープンランドでは 放浪種など広分布種、多女王性、多巣性種の比率が高いことが明らかになった。したがっ て、アリの種多様性を保全するためには、森林、特に原生林の保護が極めて重要である。 (論文4) 5)今回研究対奉とした2型雄を有する種がアリの社会進化のなかで占める位置を考察 し、巣内交尾(同系交配)が雄の多型や行動の多彩な分化の極めて重要な要因であること を示唆した。2型雄を有する種は、多女王性、多巣性コロニーを形成し、放浪種の一貞と して、現在、世界中に分布を広げている。(論文4) - 2