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4‑R/IETA/M:N/IA‑TBB レジンの 硬化条件が組織反応に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 川 村 直 人

     学位論文題名

4‑R/IETA/M:N/IA‑TBB レジンの 硬化条件が組織反応に及ぼす影響

学位論文内容の要旨

緒言

  4−META/MMA−TBBレジンは良好な接着性と生体親和性を有すると考えられてい ることから、歯根端切除時のrootーend sealingや垂直歯根破折の接着治療への応用が 検討されている。しかし、臨床に応用する場合には、様々な条件で硬化することが想 定 さ れ る が 、 硬 化 条 件 が 組 織 反 応 に 及 ば す 影 響 の 詳細 は 明 ら か で は な い 。   4−META/MMA−TBBレ ジン は空 気中 で硬化させたレジン表面と硬化後に表層を 一層研磨した面に歯根膜細胞を播種培養すると、研磨した面の方が歯根膜細胞の付 着増殖が多いことが報告されており、硬化条件によってその生体親和性が変化する可 能性が考えられる。また臨床では、レジンが空気中で硬化してから生体組織に接する 場合の他、直接骨や結合組織に接した状態で硬化する場合があり、これらの場合に 組織に対する親和性がどのように異なるかも明らかではない。そこで本研究では、生 体外で硬化条件を変えて硬化させて埋植したレジンと組織の反応および生体内で軟 組 織 お よ び 硬 組 織に 接し て硬 化し た場 合の 経時 的な 組織 の反応 を検 索し た。

材 料と 方法

  実 験 動 物 に は 11週 齢 の Wistar系 雄 性 ラ ッ ト40匹 、 実 験 材 料 に は 4‑METAMMA・TBBレ ジ ン ( ス ー パ ー ポ ン ドC&B@ 、以 下SB) を 用 い た 。生 体 外 で 硬 化 させ てか ら埋 植し た場 合の検 討と して 、SBをメ ーカ ー指 示の 粉液 比 で 混和 して セル ロイ ドス トリップス上に滴下、室温、空気中で硬化させ、直径     一810―

(2)

3. Omm、 厚さ0.5mmの 試験 片 を作製し た。硬化 体の上面 を非研磨 群、下面 を 圧 接群、両 面を砥石で 一層研磨 したもの を研磨群 として、 ラット背 部皮下結合 組 織内に移 植した。ま た、生体 内で硬化 させた場 合の検討 として、 ラット頭部 皮膚 および背 部皮膚に切 開し、10% クエン酸3%塩化第二鉄溶液(表面処理液グ リ ーン@) で処理後、 水洗、乾 燥して混 和したSBを ラット背 部皮下結 合組織あ る いは、頭 蓋骨表面に 直接滴下 したもの をそれぞ れ結合組 織内群、 および骨面 群 と した 。 非研 磨 群 、圧 接 群、 研磨群 は1,2,4週 後に、結 合組織群 と骨面群 は1、4、12週後に、試験片周囲結合組織を一塊として採取し、10%中性ホルマリン 固定,アセトンにてSBを溶解後に,通法に従ってパラフイン包埋して厚さ5umの薄切 標本を作製した。その後ヘマトキシリン・エオジン重染色し、光学顕微鏡下で組織学的 観察および計測を行った。

  標本画像をコンピューターに取り込み、画像解析ソフトを用いて試験片周囲の炎症 性細胞浸潤面積、試験片の長さを計測し、その割合を炎症性細胞浸潤距離として求 めた。また、SB周囲の多核巨細胞数、SBの外周を計測し、単位長さあたりの多核巨 細胞数を求めた。

  統計学的分析は、Mann−Whitneyび検定を用いて行った。.

  結果

1.生体外で硬化させてから埋植した場合の反応

非 研磨 群 は1週 後に り ンパ 球 を 中心 と し た炎 症 がSB周囲に 広範囲に 認められ 、 経 時的 に 軽 減し た が4週後 に も わず か に 認め ら れた 。圧 接群は実 験期間中 ほと ん ど炎 症 が なか っ た 。研 磨 群は1週 後 わ ずか に 炎症 が見 られ、経 時的に減 少し て4週 後にはほと んど消失 した。非 研磨群、 圧接群、 研磨群の 炎症性細胞浸潤距 離は、1週後は1602.5土352.8、89.4土18.6、295.6土118,9Um、2週後は632.6士373.2、 29.1土11.9、168.8土129.5pm、4週後は301.7土74.4、12.3士11.9、59.1土29.5pmで、

非 研磨 群 は 圧接 群 、 研磨群に 比較して 実験期間 中有意に 大きく、 研磨群は 圧接     ー811―

(3)

群に 比較 して1、2週後は有意に大きかったが、4週後は有意差がなかった。

2.生体内で硬化させた場合の組織反応

結合組織内群では結合組織とSBの界面にへマトキシリンに淡染する不定形な層が観 察さ れ、 その 周囲 には1週後 はり ンパ 球を 中心 とし た炎 症性 細胞 浸潤 が認めら れ た 。4週 後 に 炎 症 性 細 胞浸 潤は ほと んど 消退 した が、 多核巨 細胞 は1週か ら 12週まで観察された。結合組織内群の多核巨細胞数は、1、4、12週後にそれぞれ 9.3土0.3、10.8土2.4、14.5土5.3cells/mmで観察期間により有意差はなかった。

骨面群では、骨とSBの界面に骨やSBと異なる構造でへマトキシリンに淡染する層が 見ら れ、 骨面 とSBの間 に結 合組 織は 介在 せず、炎症性細胞浸潤や多核巨細胞な どは観察されなかった。骨面群の所見は1週から12週までほとんど変化をかった。

考察

  本研究では条件を変えて硬化させた、4―K4ETA/MMAーTBBレジン表面の生体親和 性を比較検討した。非研磨群では広範囲に炎症性細胞浸潤が認められ、圧接群、研 磨群に対して有意に高い炎症性細胞浸潤距離であった。このことから、SB表層では 空気により重合阻害が起こって未重合層が形成され、未重合モノマーが、炎症性細胞 浸潤を惹起した可能性が高いと思われる。

  また研磨群の1,2週後の炎症性細胞浸潤は非研磨群に比較すると少ないものの、

圧接群に比較すると大きかった。これは、研磨群では試験片の表面研磨を行った際に、

微小な凹面などに研磨が不十分な部分が残存して、未重合層が完全に除去できなか った部分があったためと考えられた。

非研磨群、圧接群、研磨群ともに経時的に炎症が消退し、特に非研磨群の炎症は1 週後に比較して4週後には大きく減少した。このことから表面の未重合層のモノマーが 生体 中 に 拡 散 して 減少し た可 能性 が考 えら れる 。ま たTBBを重 合促 進剤 とし て MMA−PMMAレジンを圧接重合させると、レジンの重合率が4週まで徐カに上がると 報告されており、移植後も経時的に重合率が上昇して、炎症が消退した可能性も考え     ―812ー

(4)

られる。

  結 合 組 織 内 群 で は ,結 合組 織やSBの 界面 にへ マト キシ リン に淡 染す る 不定 形な 層 が観察され、結合組織やSBと構造が異なることから、 ハイブリッド層を形成していると 考え られ た。 この 層の 周囲には炎症性 細胞浸潤は少なく、多核巨細胞iよ見られたが、

経時 的に 有意 な変 化は 認め られ なか った 。ま た歯 髄とSBのハイブ リッド層表面に多核 巨 細 胞 が 見 ら れ た 後 にも 長期 の観 察で 修復 象牙 質が 形成 され るこ とが 報 告さ れて い ることから、ハイブリッド層周囲に多核巨細胞が長期 間残存しても、組織への悪影響は 少ない可能性も考えられた。

  骨 面 を 表 面 処 理 し てSBを 塗 布 し た 骨 面 群 に お い て 、 骨 とSBは 結 合 組 織 が 介在 す ることなく接しており、炎症はほとんどみられなかった。さらに骨とSBの界面には骨とも SBとも異なる構造で、ヘマトキシリンに淡染する層が 見られ,骨とSBがハイブリッドし て接 着し てい るも のと 思わ れた 。ま た、 骨とSBの 界面付近に多核 巨細胞などは観察さ れず 、両 者間 に分 離す る傾 向は なく 、12週で はほ とんど組織所見 に差は認められず、

骨とSBの接着は安定している可能性が高いと思われた 。

  本 研究 結果 から 、SBをroot一end sealingや 破折 歯根 の接 着に 用い る際 の注 意点と し て 臨 床 応 用 す る 場 合 に は 、 空 気 に 触 れ た 状 態 でSBが 硬 化 し た 場 合 は 表 面 を一 層 研磨 した 方が 初期 の炎 症を 軽減 でき るこ と、 歯根 膜にSBが付着し た場合はハイブリッ ド 層 が 形 成 さ れ て 多 核巨 細胞 が長 期間 残存 する 可能 性が ある ので 、取 り 除い た方 が 良いこと、骨に付着した場合は骨と接着する可能性が あり、根と骨に付着している場合 は 両 者 が 固 定 さ れ 、 咬 合 カ が 加 わ っ た 時 に 歯 質 とSBの 界 面 で 破 壊 が 生 じ て 漏洩 の 原 因 に な る 可 能 性 が あ る た め 、 骨 面 か ら 除 去 し て お く こ と が 必 要 と 思 わ れ た 。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

4‑META/IVIl¥/IA‑TBB レ ジ ン の 硬化条件が組織反応に及ぼす影響

  審査は主査.、副査全員が一同に会して口頭で行った。はじめに申請者に対し 本 論 文 の 要 旨 の 説 明 を 求 めた と ころ 、 以下 の 内容 に つい て 論 述し た 。

  4‑META/MMA‑TBBレジンは、 歯質への高 い接着カに 加え生体親和性に優れ ていることから、root‑end seahngや破折歯根の接着治療などへの応用が検討さ れている。しかし、生体親和性の検討は硬化体やモノマーで検討された研究が 多く、空気や組織との接触状態など、硬化条件がどのように影響するかは明ら かでない。そこで本研究では硬化条件を変えてラットに移植し、組織反応を病 理組織学的に検討した。

  実 験 動 物 に は11週 齢 の ウ ィ ス タ ー 系 雄 性 ラ ッ ト40匹 、実 験 材 料に は 4‑META/MMA‑TBBレジ ン (ス ー パー ポ ンドC&B@ 、 以下SB) を 用い た 。S Bをメーカー指示の粉液比で混和してセルロイドストリップス上に滴下、室温、

空気中で硬化させ、直径3. Omm厚さ0.5mmの試験片を作製した。硬化体の上 面を非研磨群、下面を圧接群、両面を砥石で一層研磨したものを研磨群として、

ラット背部皮下結合組織内に移植した。また、混和したSBをラット背部皮下結 合組織、ラット頭蓋骨表面に直接滴下したものを結合組織内群、骨面群とした。

非研磨群 、圧接群、 研磨群は1,2,4週後に、結合組織群と骨面群は1,4, 12週 後 に 、 試 験 片 周 囲 の 組 織 反 応 を 病 理 組 織 学 的 に 検 討 し た 。   非研磨群は1週後にりンパ球を中心とした炎症が広範囲に認められ、経時的 に軽減したが4週後にもわずかに認められた。圧接群は実験期間中ほとんど炎 症がなかった。研磨群は1週後わずかに炎症が見られ、経時的に減少して4週 後にはほとんど消失した。炎症性細胞浸潤面積は、非研磨群は圧接群、研磨群 に比較して実験期間中有意に大きく、研磨群は圧接群に比較して1,2週は有

光 男

雅 隆

浪 後

川 向

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

意に大きかったが4 週後は有意差がなかった。一方、結合組織内群ではレジン と軟組織がハイブリッドしたと思われる層が観察され、1 週後にはりンパ球を 中心とした炎症性細胞浸潤が認められたが4 週後にはほとんど消退した。しか し試験片周囲の多核巨細胞数は 12 週間変化がなかった。骨面群はSB が骨面と 密接に接して炎症はほとんど見られず、骨とレジンが分離する傾向は12 週間見 られなかった。

   以上の結果から、SB は硬化時の空気の存在により起炎性が高くなることが 明らかとなった。また結合組織内で硬化すると炎症は少ないが多核巨細胞が長 期間認められ、骨面上で硬化するとハイブリッド様組織で結合して12 週間は変 化しないことが明らかとなった。したがって、スーパーボンドC&B をroot −end sealing や破折歯根の接着などに応用する場合には、これらの特性を十分に理解 し て 用 い る こ と が 治 療 成 績 の 向 上 に っ な が る と 思 わ れ た 。

引き続き審査担当者と申請者の間で論文内容および関連事項について質疑応答 が行われた。

   主な質問事項は

(1 )軟組織ハイブリッドについて

(2) 骨とレジンのハイブリッド様組織の吸収、分解 (3) 多核巨細胞について

(4) 生体内でのレジンの劣化について

(5) 他 の レ ジ ン や レ ジ ン 表 面 を 処 理 し た 場 合 に つ い て の 考 察 などであった。

   これらの質問に対し、申請者は適切な説明によって回答し、本研究の内容を 中心とした専門分野はもとより、関連分野についても十分な理解と学識を有し ていることが確認された。

   本研 究は 、臨 床で4‑META/MMA‑TBB レジン直接性体内に使用した場合の周

囲組織の反応を明らかにしたことにより、臨床成績向上に対して重要な指針を

与えたことが高く評価された。本研究の内容は、歯科医学の発展に十分貢献す

るものであり、博士(歯学)の学位を授与するに値するものと審査担当者全員

が認めた。

参照

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