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セタシジミ生殖巣の組織学的研究

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Academic year: 2021

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セタシジ

ミ生殖巣の組織学的研究*

Histological Studies on Gonad of Corbicula sandai REiNHARDT

Kazumasa Hayashi

 General histological observations of the gonads of C. sandai(shell Iength O.4cm−2.Oc皿) collected in the Seta River (Lake Biwa) frorn January of 1950 to December of 1954 were carried out with special reference to their reproductive season.  1 have itemized the particularies in the summary ef this paper.  本邦産Co7う泌臨は食用貝類として水産学的意義の 甚だ重要且つ面立ある研究材料であるが,分類学的研 究の他には生態学的並びに発生学的研究①⑤があり, 近年は特に彦根水産試験場の水本,古川両技師により この研究がなされてきたが,これら研究の基礎研究と もいうべき生殖巣の組織学的研究がまだなされていな いので,ここに本研究に着手することにした。  本研究はまだ不充分であるが,シジミの養殖に関係 深い生殖巣の成熟及び組織について明らかにした点を 報告する。本研究に使用したCOi b・iculαsαndaiは瀬 田川鉄橋附近で旧聞(!952年1月∼1954年12月)概ね 毎月,上旬と中旬に採集,弓長O.4∼2.OCmの凹き『さ で,この内,一番多く材料としたものはO.8∼1.Oc皿 のもので,旧殻後,生殖巣を切りとり固定液に入れ, 常法によりパラフィン切片(厚さ10の,DELAFIELD 氏ヘマトキシリンとエオシンの複染色プレパラーートと した。固定液としては90%アルコール,BOUIN氏液, CARNoY氏液, NAwAsHエN毒液等を使ったが, CARNOY 氏液が最良の結果を得た。

観察と考察

1産卵習性

宮崎④によれば淡水産のマシジミは雌雄同体で成熟 卵は体外に放出されず,受精後はMarsupiumに分化 せる内気葉中に成育し,仔介となるに及んで始めて母 体を離れ底棲i生活に入る。又,朝比奈①はヤマトシジ ミにあっては雌雄異体で一般海産貝類と同様に体外に 産卵し,自由滋藤の発生過程を経るものと考え,更に 水本と古川③はセタシジミの木製水憎中での飼育観察 に基づき,この種は,雌雄異体で体外に放冠絶精があ り,卵は水中で発生が進むが,自由画画期を省いて被 膜内で稚貝となり,後被膜が崩壊して底棲生活に入る ことを明らかにした。シジミとり漁夫の話によると, 川医に時に放三下精を見るとのことで,各個体を組織 標本として観察すると,殻長0.4∼0.6cm位のものに は性の未分化状態のものがあるが,これらを除いて所 謂成貝に於ては性は明らかに分れていて,上記漁夫の 言を裏づけ得る。 II生殖巣及び生殖細胞  雄一未熟の精巣は少し黄色味がかった白色でJ生 殖期に入ると精巣は内臓嚢に充満し,固定の際,乳白 色の液汁が出る。精子は頭部0.01mm,尾部0.05mm 位の大きさで,頭部は緩やかに曲った紡錘形をしてい る。  雌一未熟卵巣は灰白色で,産卵期になると紫色を *滋賀県産業開発研究費の補助を受く。 ①朝比奈英三:北海道に於ける蜆の生態学的研究。日本水産学会誌10(3),1941。 ② 水木三朗・古川優:セタシジミの増殖に関する研究(第2報)。滋賀県水産試験場報告第2号(1950)。 ③     〃    :セタシジミの生態学的研究正発生}こついて。日本水産学会誌,19(2),1953。 ④ 宮崎 一老:しじみノ発生二就イテQ日本水産学会誌,5(4),1936Q

(2)

42 滋 大 紀 要 第  5  号 1 9 5 6 おび内臓嚢に充満し,固定切開の折,卵塊の流出を見 る。卵の大ぎさは長径O.25 mm,短径0.18皿m位で 肉眼でも観察し得る。  ・    一

III生殖時期

 朝日奈①はヤマトシジミの生殖時期たついて1938年 3,月より10月にわたり北海道藻琴沼で採集したものの 生殖巣をパラフaン切片として観察したところ,5月下 旬までは何れも未熟であって6月中旬に及んで始めて 完熟を見,放卵は8月中旬が最盛期で,江尾では内臓嚢 が精巣で膨大しているものの多いこと,9月中入ると 雌雄ともに内臓嚢はやせ,10日ともなれば生殖巣甚し く縮小し,未熟期の状態に復することを明らかにした。  宮崎④は琵琶湖で採集したセタシジミで20/V工11935 年生殖巣完熟,7/1v 1936年生殖巣未熟,10/1v 1936 年と22/v放卵するも発育せず,24/vl 1936年生殖巣 完熟,放卵するも発育せずとのべ,水本と古川②は卵 巣の成熟度を該部の色調よりみて,産卵は6∼8月が最 盛期で,この前後の期にも多少の放卵を見ることから 軽度の産卵は周年性のものと思われると推論した。  筆者は生殖巣の組織標本を作り,内臓帳内に占める 生殖巣並びに生殖細胞の見かけの量から,その成熟期 を考えた。その資料を次に表示する。 こ.の結果を判りやすく図表すると次のようになる。 r ’ 生殖巣成熟度の比較1

〆等

...V :,N  ts   邑 6’N“t,.

    Xkpt. 1±.一pt. F.1 !

九パ・一・

ッ]採集朝則奮}響動巣・生rerw胞

・・周・i・952・…81・黒黒筆管あるも精

・・ ・…Cs回〃囮灘郷るが多く

e・小{・1・952・・…gl・樫麗繕あるも精

・・小・i〃国肝あり

・・小…952・・…3レ鮮儀警達するも

・・刈・レ園欝広く盤し卵子

・・砺・81・952・ ・・271・摺論難孕聯

・s ・i…園〃帥卵子多くあ・われ・

2  3  4  5  6  7  8 9 10 11 12月  生殖巣は4月に入ると徐々に発育し始め6∼10月に は生殖細胞が内臓嚢に充満し,8月頃その最盛を見, 11月より漸く該組織も衰え始める。精巣にあっては冬 期間中は精子を殆んど見ないが,卵巣にあっては冬期 聞といえ多少の卵子を見ることからセタシジミの♀に 於ては周年抱卵或は放卵をやっていると思える。 水本・古川③は放精貝の最小形は殻長1.42c皿との べているが.筆者の見るところでは既記のように殻長 1.Ocmですでに精巣は完熟している。

IV生殖禦の組織

t , IIB, l g i lgs2. 6.17

・…ぺ・i〃

一; s CIIi l gi1952. s. 4 1・7卵子多し

列精子多・

・懸子多・

・・エH・固・95・画〃精子多・

・・4 A3・1・952・・…1…1卵子多・ i’ 黷? 4 VCI 16[ l/

曝子多・

.生殖細胞(写真4,5,7,8) 子(写真7, 8)前述のように長径025皿m,短径 O.18 mm位の楕円体で,うすいゼラチン膜で包ま れ,中には明瞭な仁の入っている核がある。 子(写真4,5)長さ約0.05mmの尾の先に,槍の 穂先のように尖った頭(長さ約0.01mm)がある。 写真5は密集精子で黒いのはその頭部である。 .生殖巣(写真1∼3,6)* 内臓嚢には体部の位置によってちがうが,消化管, 臓,生殖巣があり.生殖期には生殖巣が大部分を占 るようになる。 巣(写真1∼3)複管状腺で,写真はいずれもその 断面である。 巣(写真6) これも複管状腺で1の胞内に数個の卵 子が美しく断面となって現われている。

       摘    要

.セタシジミの成貝は雌雄異体で放下,放精を体外 にする。 ,霊長0。5c皿以下のものには性別の判然としない ものがある。これは恐らく,この程度の幼貝は性的 に未分化であることを示すと思われる。 .生殖期は6月∼10月,但し8月頃が最:盛期と見え る。 、精巣は春4月より膨大し始め,6月∼8月は生殖 期,初秋9月から少しずつ萎縮し始め,冬期は完全 宮lll奇一老:二枚貝の育児習性及びその仔介}こ就て。植物及び動物,4(11),1936;6(7),1938。 マシジミ(1954年12.12採)殼長O.86∼2.00cm.全部孚で抱卵していた(50個休)。マシジミは雌雄同体であ が,この時期の材料はすべて♀のようであった,

(3)

セタシジミ生殖巣の組織学的研究(林)

43  写真説明(図版D  1,腹部の横断 ×20

 2.写真1のT部を

 稽々廓大する。精巣  の断面は, 「く」字:  型,「凹」型となる。

 ×50

 3.成貝(δ)の腹部  横断,精子が細管に  充満商集している。  ×20  4.細管を稽々廓大す  る.×200 5.精子(S)の密集し  ているところを更に  廓大する。黒く見え  るのが精子の頭部。  ×600 6,腹部の横断,卵巣  (0)内に卵が美しく  見える。×20 7.卵胞を稽々廓大す  る。未成熟卵(E)が  数個見える。仁(n)  を含んだ核(N)あ  り。×200 8,卵胞を更に廓大す  る。×600 9.成型(6)腹部横  断。1952年1.18採。  細管(t)の中に精  子はないG×15 10,眉山(の腹部横  断。1952年1.18採。  卵巣(0)の中には卵  がある。×15 11.成貝(6)腹部横  断。1952年4.13採。  細管内に精子を見る  も充滴されてはいな  い。×15 購、 ma?’t 慰

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(4)

44 滋 大 紀 要

第  5 号

1 9 5.一6 侍

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蓼爆

轟轟叢

23

  写真説明(図版∬) 12.成艮(9)腹部横断二,  1952年4.13採。卵巣(0)内  に多くの卵がある。×15 13。成貝(6)腹部横断。  1952年5.25採。精巣(T)  内に精子充漏する。×15 14.成貝(6)腹部横断。  1952年11.4採,精巣(T)  内に多数の精子がある。  ×15 15.写真9の一・部廓大。精  子なく,精原或は精母細  胞(Sg)がある,,×400 16.写真10の…部廓大。冬  期でも卵(E)がある。  ×400 17.写真11の・一部廓大。精  子の頭部の集合(Sh)が  処々に見える。×400 18.写真12の一部廓大。未  成熟卵多し。×400 19,写真13の.・部廓大。精  子の頭部の集合体(Sh)  が多く見える。×400 20.写真14の一・部廓大。精  子群(Gs)多し。×400 21.成貝( )卵巣内の卵。  1952年1L4採。×400 22.渇望(6)腹部横断。  1954年9.9採。×20 23.写真22の一.・部廓大。  × 300

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セタシジミ生殖巣.の組織学的研究(林)

45  にやせる。 5,卵巣は精巣同様4月から活動し始め,6月∼8月   を抱卵最盛期,9月から漸く抱卵数が滅るも,精巣   とちがって周年卵巣のどこかに常に卵子をもつ。 6.生殖巣は複管状腺で抱卵,抱精の最盛期には内臓 嚢は著しく肥大する。        Su皿mary  The results taken in this study may be su皿. rnarized in the following lines. 1. Adult mussels are dioecious. Ovulation and   ejaculation take place in water. 2. Some of them, shell length less than O.5cm,   seem to be not sexually seperate, and this   perhaps is based on the sexual “utndifferen−   tiation. 3. The season of reproduction extends from June  to October, and the maximum period is in  August. 4. Testis begin to swell from April, shrink little  by iittle fro皿September and beco皿e perfectly   thin in winter. 5. Ovaria begin to be active from April iike   testis, and its egg number gradually decreases   from September, but we can always observe   more or less some eggs in this organ. 6.Gonad consists of co皿pound tubular glands.   In the tep season of reproduction visceral sacs   are fu11 of mature gonads.       写真省略記号 E卵,g鯨, Gs精子群, h心臓,1腸管, N核, n仁,0卵巣,S精子, Sg精原或は精母細胞, Sh 精子の頭部集合体,丁精巣,t細管。

参照

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